説明

車載用ディスプレイ装置

【課題】装置全体の薄型化が容易であると共に、ディスプレイ本体に不所望な外力が加えられた際に懸念される破損を未然に防止できる「車載用ディスプレイ装置」を提供する。
【解決手段】モータ2の駆動力をギア列3を介してねじ棒4に伝達し、ねじ棒4の回転に伴って前後進するスライダ5に回動可能に連結されたディスプレイ本体10が格納位置と立ち上げ位置との間で移動可能な車載用ディスプレイ装置であって、ディスプレイ本体10を介してスライダ5に加えられた外力によってねじ棒4が回転するように該ねじ棒4のリード角を摩擦角よりも大きく設定しておく。また、入力側の第1ギア33と出力側の第2ギア34を凹凸嵌合させて、コイルばね6で第1ギア33を第2ギア34へ向けて弾性付勢することにより、コイルばね6に抗する第1ギア33の変位に基づき前記外力の大きさがフォースセンサ7によって検出されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されてテレビ放送やナビゲーションシステムの地図情報等を表示する車載用ディスプレイ装置に係り、特に、非使用時にディスプレイ本体が格納可能な車載用ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車載用ディスプレイ装置は、使用時にはユーザが見やすい位置にディスプレイ本体を立ち上げておき、非使用時にはディスプレイ本体をダッシュボード等の内部に格納しておくことができるため、非使用時のディスプレイ本体が邪魔にならず車内空間を広く使えるという利点がある。
【0003】
このようにディスプレイ本体が格納状態と立ち上げ状態との間で移動可能な車載用ディスプレイ装置においては、近年、モータの駆動力によってディスプレイ本体を移動させるように構成したものが一般的である。すなわち、ディスプレイ本体が所定の格納位置にあるときに、モータの回転駆動力をギアやレバー等からなる動力伝達機構を介してディスプレイ本体に伝達することにより、このディスプレイ本体を前進させて立ち上がらせるようになっている。また、立ち上がっているディスプレイ本体を格納するときには、モータの逆向きの回転駆動力を前記動力伝達機構を介してディスプレイ本体に伝達することにより、このディスプレイ本体を傾倒させて格納位置まで後進させるようになっている。
【0004】
ところで、モータの駆動力を利用した従来の車載用ディスプレイ装置においては、通常、多数のギアをレバーやラックと組み合わせて動力伝達機構を構成しており、ディスプレイ本体の左右両側には筋交い状の回動アーム(支持アーム)が取り付けられている。そのため、この種の車載用ディスプレイ装置は、動力伝達機構の構成が複雑で部品点数も多く、小型薄型化を図りにくいという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載されている従来の車載用ディスプレイ装置では、モータの駆動力で回転駆動される第1レバーの先端に第2レバーを回動可能に連結し、この第2レバーの先端にディスプレイ本体の背面下端部から延出するガイド部を回動可能に連結することにより、第1レバーを前方へ回転させるのに伴ってディスプレイ本体が斜め上方へせり上がるようになっている。それゆえ、かかる従来の車載用ディスプレイ装置は、ディスプレイ本体を移動させる動力伝達機構に多数のギアを用いる必要がなく、比較的構成が簡素になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−538774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の車載用ディスプレイ装置では、ディスプレイ本体を斜め下方へ引き込んで格納させるという構成になっており、鉛直面内で回転する第1および第2レバーやガイド部の回転スペースを確保しなければならないため、装置全体をそれほど薄型化することができなかった。
【0008】
また、この種の車載用ディスプレイ装置においては、ディスプレイ本体が立ち上がっている使用中やディスプレイ本体の立ち上げ動作中に、ユーザの体が衝突したり子供のいたずら等によって、ディスプレイ本体を無理に格納させようとする外力や立ち上げ動作を阻害する外力が加えられることがある。その場合、車載用ディスプレイ装置の動力伝達機構を構成するギア等に無理な力が作用して破損する危険性があるため、かかる危険性を回避する対策として、動力伝達経路にクラッチ機構を介在させたものが知られている。しかしながら、クラッチ機構を追加すると大掛かりな構造になってしまうため、装置全体の薄型化が困難になる。また、ディスプレイ本体に加えられた不所望な外力の伝達経路をクラッチ機構によって遮断しているときに、クラッチ板等が摺動して耳障りな異音を発生する虞がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、装置全体の薄型化が容易であると共に、ディスプレイ本体に不所望な外力が加えられた際に懸念される破損を未然に防止できる車載用ディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、筐体の内部に、モータと、螺旋状に延びるねじ溝が設けられたねじ棒と、前記モータの駆動力を前記ねじ棒に伝達するギア列と、前記ねじ溝に螺合して前記ねじ棒の回転に伴って前後進するスライダとを配設し、前記スライダに回動可能に連結されたディスプレイ本体が前記モータの駆動力によって、前記筐体の内部に格納した状態と該筐体の前部に立ち上げられた状態との間で移動可能な車載用ディスプレイ装置であって、前記ディスプレイ本体を介して前記スライダに加えられた外力によって前記ねじ棒が回転するように該ねじ棒のリード角を摩擦角よりも大きく設定しておくと共に、前記ギア列に含まれて相対的に入力側の第1ギアと出力側の第2ギアとを対向させ、これら第1および第2ギアのいずれか一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌入させることによって該両ギアが同軸で一体的に回転するように設定し、且つ、前記第1ギアを前記第2ギアへ向けて弾性付勢するばね部材と、このばね部材に抗する前記第1ギアの軸線方向への変位に基づき前記外力の大きさを検出する検出手段とを備え、この検出手段の検出結果に応じて前記ディスプレイ本体を前記外力から退避させるように前記モータを制御するように構成した。
【0011】
このように入力側の第1ギアと出力側の第2ギアの対向面どうしを凹凸嵌合させ、ばね部材で第1ギアを第2ギアへ向けて弾性付勢しておけば、第1および第2ギアを同軸で一体的に回転させることができるため、モータの駆動力を第1ギアから第2ギアを介してねじ棒へ確実に伝達することができる。そして、ねじ棒の回転に伴って前後進するスライダにディスプレイ本体が回動可能に連結されているため、このディスプレイ本体は、カム溝等でガイドされながら倒伏姿勢の格納位置と起立姿勢の立ち上げ位置との間で円滑に移動することができ、よって装置全体の薄型化が容易である。
【0012】
また、立ち上げた状態のディスプレイ本体を無理に格納させようとする押し込み力が作用してスライダがねじ棒を回転させると、回転停止している第1ギアに対して第2ギアが回転するため、これら両ギア間で凸部が凹部内から徐々にはみ出していき、それに伴って第1ギアがばね部材に抗して第2ギアから離れる向きに変位していく。そして、この第1ギアの変位に基づき前記押し込み力の大きさが検出手段にて検出されるので、その検出結果に応じてモータを適宜制御することにより、ディスプレイ本体を押し込み力から退避させるために必要な動作を迅速に行わせることができる。同様に、ディスプレイ本体の立ち上げ動作を阻害する抵抗力が作用したときには、この抵抗力によってねじ棒や第2ギアが回転できなくなるため、第1ギアがモータの駆動力で回転するのに伴い凸部が凹部内から徐々にはみ出していき、それに伴って第1ギアがばね部材に抗して第2ギアから離れる向きに変位していく。この場合も、第1ギアの変位に基づき前記抵抗力の大きさが検出手段にて検出されるので、検出結果に応じてモータを適宜制御することにより、ディスプレイ本体を抵抗力から退避させるために必要な動作を迅速に行わせることができる。したがって、大掛かりなクラッチ機構を追加しなくても、押し込み力や抵抗力等の不所望な外力がディスプレイ本体に加えられた際に懸念される動力伝達機構の破損を未然に防止することができる。
【0013】
上記の構成において、第2ギアがねじ棒と同軸で一体的に回転するものであっても良いが、ねじ棒と同軸で一体的に回転する第3ギアを備え、この第3ギアに第2ギアを噛合させていると、第1および第2ギアの軸心をねじ棒の軸心に対してオフセットさせることができるため、第1ギアがばね部材に抗して軸線方向へ変位したときに、その反力でねじ棒が軸線方向へずれる虞がなくなって信頼性が高まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車載用ディスプレイ装置では、モータの駆動力をギア列を介してねじ棒に伝達するようにし、このギア列に含まれる入力側の第1ギアと出力側の第2ギアの対向面どうしを凹凸嵌合させると共に、ばね部材で第1ギアを第2ギアへ向けて弾性付勢しているため、モータの駆動力を第1ギアから第2ギアを介してねじ棒へ確実に伝達することができる。また、ねじ棒の回転に伴って前後進するスライダにディスプレイ本体が回動可能に連結されているため、このディスプレイ本体を倒伏姿勢の格納位置と起立姿勢の立ち上げ位置との間で円滑に移動させることができる。さらに、不所望な外力がディスプレイ本体に加えられた際に、第1ギアがばね部材に抗して第2ギアから離れる向きに変位し、この第1ギアの変位に基づき前記外力の大きさが検出手段にて検出されるため、大掛かりなクラッチ機構を追加しなくても、動力伝達機構の破損を未然に防止することができる。それゆえ、この車載用ディスプレイ装置は、装置全体の薄型化が容易であると共に、不所望な外力がディスプレイ本体に加えられても破損したり異音を発生する虞がないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置でディスプレイ本体を格納している状態を示す斜視図である。
【図2】図1に対応する背面図である。
【図3】図1に対応する上面図である。
【図4】該車載用ディスプレイ装置に取り付けられるカバー部材の斜視図である。
【図5】第1実施形態例で用いられるギア列の要部説明図である。
【図6】該車載用ディスプレイ装置でディスプレイ本体を立ち上げている途中の状態を示す斜視図である。
【図7】図6と同じ状態を別角度から見た斜視図である。
【図8】該車載用ディスプレイ装置でディスプレイ本体を立ち上げた状態を示す斜視図である。
【図9】図8と同じ状態を別角度から見た斜視図である。
【図10】図8に対応する側面図である。
【図11】図8に対応する背面図である。
【図12】図8に対応する上面図である。
【図13】図4のカバー部材からディスプレイ本体を立ち上げた状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置で用いられるギア列の要部を示す分解斜視図である。
【図15】図14に対応する別角度から見た分解斜視図である。
【図16】図14,15に示すギアの断面形状を示す説明図である。
【図17】図14,15に示すギアの動作説明図である。
【図18】第2実施形態例においてフォースセンサが外力を検出していない通常時の状態を示す要部上面図である。
【図19】第2実施形態例においてフォースセンサが外力を検出した異常発生時の状態を示す要部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態例について図1〜図13を参照しながら説明する。
【0017】
第1実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置は、LCD等からなるディスプレイ本体10が筐体1の内部に倒伏姿勢で格納可能であると共に、このディスプレイ本体10が筐体1の前部に起立姿勢で立ち上げられるようになっている。ディスプレイ本体10を格納位置と立ち上げ位置との間で移動させる駆動源はモータ2であり、このモータ2の駆動力が動力伝達機構であるギア列3やねじ棒4やスライダ5等を介してディスプレイ本体10に伝達される。これらの動力伝達機構は図示せぬ回路基板等と共に筐体1の内部に配設されており、この回路基板にディスプレイ本体10の駆動回路等が設けられている。なお、この車載用ディスプレイ装置は、図4や図13に示すカバー部材20を取り付けた状態で使用される。
【0018】
モータ2は筐体1の底板部上に設置されており、このモータ2の駆動力はウォーム2aからギア31,32を介して第1ギア33に伝達される。図5に示すように、この第1ギア33はねじ棒4の後端部に固着された第2ギア34と凹凸嵌合しており、第1および第2ギア33,34の軸心はねじ棒4の軸心と合致している。具体的には、第1ギア33は第2ギア34との対向面に凹部33aを有し、第2ギア34は第1ギア33との対向面に凹部33a内に嵌入する凸部34aを有する。これら凹部33aと凸部34aは、それぞれ軸心から同一半径上に複数(例えば3箇所)形成されており、図14,15に示すように、各凹部33aと各凸部34aの周方向両端部には周方向に傾斜したテーパ面が設けられ、このテーパ面どうしを密着させた状態で嵌合している。また、第1ギア33と一体のキャップ部33bの内部には、第2ギア34と一体のばね受け部34bに支持されたコイルばね6が圧縮状態で組み込まれており、このコイルばね6の弾発力によって第1ギア33が第2ギア34へ向けて常時付勢されている。そのため、モータ2の駆動力を第1ギア33から第2ギア34を介してねじ棒4へ確実に伝達することができる。
【0019】
第1ギア33のキャップ部33bには押圧突起33cが形成されており、この押圧突起33cによって押圧可能なフォースセンサ7が筐体1の支持壁部1cに取り付けられている。後述するように、ディスプレイ本体10に外力が加えられて第1ギア33がコイルばね6の弾発力に抗して軸線方向へ変位したとき、その変位量に応じた分だけ押圧突起33cがフォースセンサ7を押圧するため、フォースセンサ7によって前記外力の大きさが検出できるようになっている。このフォースセンサ7はピエゾ抵抗ベースの公知のデバイスであり、シリコン注入ピエゾ抵抗等のセンサ感知部に測定対象からの力が加わると、センサ感知部の抵抗が加えられた力の大きさに比例して増大するようになっている。なお、フォースセンサ7から出力される検出信号は、主としてモータ2の制御に用いられるが、ディスプレイ本体10に表示される警告画面や図示せぬスピーカ部から発せられる警告音等の制御信号としても利用される。
【0020】
図3に示すように、ねじ棒4の後端部と前端部は軸受部材8と軸受部材9にそれぞれ回動可能に支持されている。ねじ棒4には螺旋状に延びるねじ溝4aが設けられており、そのリード角が摩擦角よりも十分に大きく設定されている。ねじ棒4のねじ溝4aにはスライダ5の雌ねじ部5aが螺合しており、ねじ棒4が回転するのに伴ってスライダ5が筐体1の底板部に沿って前後進するようになっている。つまり、モータ2の正転駆動によってねじ棒4を順回転させるとスライダ5が前方へ直進移動し、モータ2の逆転駆動によってねじ棒4を逆回転させるとスライダ5が後方へ直進移動する。
【0021】
図7と図8に示すように、スライダ5には上下方向に延びる係合溝5bが設けられており、この係合溝5bに駆動レバー11の先端側に設けられた連結ピン11aが回動可能かつ摺動可能に挿入されている。この駆動レバー11の基端側はディスプレイ本体10に一体的に固定されているため、ディスプレイ本体10は駆動レバー11を介してスライダ5と回動可能に連結されている。そして、モータ2の駆動力でねじ棒4が回転してスライダ5が前後進するのに伴って、駆動レバー11の連結ピン11aが前後進してディスプレイ本体10にモータ2の駆動力が伝達されるようになっている。ただし、ねじ棒4はリード角が摩擦角よりも大きく設定されているため、ディスプレイ本体10を介してスライダ5に加えられた外力によってねじ棒4を回転させることも可能である。
【0022】
筐体1の左右の側板部には、緩やかに曲がりながら前後方向へ延びる上カム溝1aおよび下カム溝1bが設けられている。図10から明らかなように、上カム溝1aの前端部は下カム溝1bの前端部に比して急勾配であり、下カム溝1bの後端は上カム溝1aの後端の真後ろ付近まで延びている。また、図6,7に示すように、ディスプレイ本体10の左右両側に一体的に固定された一対のガイドレバー12に係合ピン12aおよび係合ピン12bが設けられており、各ガイドレバー12の係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bにそれぞれ摺動自在に挿入されている。そして、ガイドレバー12の前後進に伴って係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bに沿って移動し、この移動中に係合ピン12a,12bの相対位置がカム溝1a,1bの溝形状に応じて変化するため、ガイドレバー12の姿勢はカム溝1a,1bの後端側で倒伏して前端側で起立するようになっている。
【0023】
ディスプレイ本体10は、図1〜図3に示すように倒伏姿勢で筐体1の内部に格納することができ、また、図8〜図12に示すように筐体1の前部に立ち上げることができる。ディスプレイ本体10の格納状態における後端部(立ち上げ状態における下端部)には、略中央に駆動レバー11が固定されていると共に、左右両側にガイドレバー12が固定されている。前述したように、ディスプレイ本体10は駆動レバー11を介してスライダ5と回動可能に連結されているため、ねじ棒4の回転に伴って前後進するスライダ5が駆動レバー11を介してディスプレイ本体10を前後進させる。そして、ディスプレイ本体10が前後進すると、左右両側のガイドレバー12は係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bに沿って移動するのに伴って姿勢を変化させるため、ディスプレイ本体10の姿勢も同じように変化する。すなわち、ガイドレバー12が後退位置にあるとき、筐体1の後端部で係合ピン12bが下カム溝1bによって係合ピン12aの真後ろ付近へ押し上げられ、ガイドレバー12が倒伏姿勢となっているため、ディスプレイ本体10も倒伏姿勢となっている(図1参照)。しかるに、ガイドレバー12が後退位置から前進するのに伴って、係合ピン12bが下カム溝1bによって斜め下方へガイドされた後、係合ピン12aが上カム溝1aによって斜め上方へガイドされるため、ガイドレバー12は次第に起立していき、よってディスプレイ本体10も立ち上がっていく(図6,8参照)。
【0024】
なお、前述した回路基板は一対のガイドレバー12の間に位置して、筐体1の底板部と対向するように左右方向へ延在している。この回路基板は、ディスプレイ本体10の格納状態における後端部と回動可能に連結されており、スライダ5の前後進に伴ってほぼ水平に前後進する。
【0025】
次に、上記の如く構成された車載用ディスプレイ装置の動作について説明する。図1〜図3に示すように、ディスプレイ本体10が倒伏姿勢で筐体1の内部に格納されているとき、ディスプレイ本体10の表示画面10a(図9参照)は筐体1の底板部と対向しており、駆動レバー11と一対のガイドレバー12も倒伏姿勢になっている。また、ディスプレイ本体10が格納状態のとき、スライダ5はねじ棒4の後端部に位置しており、ガイドレバー12の係合ピン12a,12bはカム溝1a,1bの後端部にそれぞれ位置している。
【0026】
この状態でモータ2が正転駆動されると、ギア列3を介してモータ2の駆動力がねじ棒4に伝達されるため、ねじ棒4が順回転してスライダ5が前進する。前述したように、ギア列3に含まれて相対向する第1および第2ギア33,34は凹部33a内に凸部34aを深く嵌入させており、第1ギア33が回転すると第2ギア34は同軸で一体的に回転する(図5参照)。したがって、モータ2の駆動力はウォーム2aから各ギア31〜34を介してねじ棒4へ確実に伝達され、ねじ棒4の順回転に伴ってスライダ5が前進する。
【0027】
こうしてスライダ5が前進すると、その動きが駆動レバー11を介してディスプレイ本体10に伝達されるため、各ガイドレバー12の係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bに沿ってそれぞれ前進する。これにより、各ガイドレバー12の姿勢が徐々に上向きに変化していくため、図6,7に示すように、ディスプレイ本体10は前進するのに伴って倒伏姿勢から徐々に立ち上がっていく。
【0028】
図6,7の状態からねじ棒4がさらに順回転すると、各ガイドレバー12の係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bに沿ってそれぞれ斜め上方へ前進していくため、駆動レバー11の連結ピン11aがスライダ5の係合溝5b内を上昇していく。また、この過程で係合ピン12aは係合ピン12bよりも大きく押し上げられるため、各ガイドレバー12およびディスプレイ本体10は起立角度を増大させていく。そして、スライダ5がねじ棒4の前端部まで前進すると、図8〜図12に示すように、係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bの前端部にそれぞれ位置して各ガイドレバー12の起立角度が最大となるため、ディスプレイ本体10を所望の起立姿勢に立ち上げることができる。
【0029】
なお、この車載用ディスプレイ装置を覆うカバー部材20にはスロット状の長孔21(図4参照)が開設されており、ディスプレイ本体10はこの長孔21を貫通して上方へ立ち上がっていく(図13参照)。
【0030】
また、この車載用ディスプレイ装置には、ディスプレイ本体10が立ち上がっている使用中や立ち上げ動作中に、ディスプレイ本体10を無理に格納させようとする外力や立ち上げ動作を阻害する外力が加えられた場合、およびディスプレイ本体10の格納動作中に、ディスプレイ本体10を無理に立ち上げようとする外力や格納動作を阻害する外力が加えられた場合に懸念される破損事故についても、その回避策が考慮されている。すなわち、ディスプレイ本体10が立ち上がっている使用中やディスプレイ本体10の立ち上げ動作中および格納動作中に、ユーザの体が衝突したり子供のいたずら等によって、ディスプレイ本体10を無理に格納させようとする外力や、立ち上げ動作、格納動作を阻害する外力が作用することがある。そこで本実施形態例では、図5に示すように、第1ギア33の凹部33a内に第2ギア34の凸部34aを嵌入させることによって両ギア33,34が一体的に回転できるようにしておくと共に、コイルばね6によって第1ギア33を第2ギア34へ向けて弾性付勢している。そのため、入力側の第1ギア33の回転を阻害したり逆向きに回転させようとする力が、出力側の第2ギア34から入力側の第1ギア33に作用したときに、コイルばね6を圧縮させながら凸部34aが凹部33a内から徐々にはみ出して第1ギア33が軸線方向へ変位し、その変位量に応じて押圧突起33cがフォースセンサ7を押圧するようになっている。したがって、ディスプレイ本体10に加えられた不所望な外力の影響をなくすべく、フォースセンサ7の検出結果に基づいてモータ2を適宜制御することができる。
【0031】
例えば、ディスプレイ本体10が立ち上がっている状態のときに、このディスプレイ本体10を無理に格納させようとする押し込み力がユーザ側から加えられると、スライダ5がねじ棒4を逆回転させる。その結果、回転停止している第1ギア33に対して第2ギア34が回転するため、これら両ギア33,34間では凸部34aが凹部33a内から徐々にはみ出していき、それに伴って第1ギア33がコイルばね6に抗して第2ギア34から離れる向きに変位していく。こうして第1ギア33が変位すると、キャップ部33bの押圧突起33cがフォースセンサ7を押圧し、その押圧量(第1ギア33の変位量)に比例した押し込み力がフォースセンサ7の抵抗値変化として出力される。それゆえ、フォースセンサ7の検出結果に応じて(所定量以上の抵抗値変化を検出した場合に)モータ2を適宜制御することにより、ディスプレイ本体10を押し込み力から退避させるために必要な動作(一時的な格納動作)を迅速に行わせることができる。その際、モータ2を制御する前のフォースセンサ7の抵抗値変化が上記所定量よりも小さいとき、すなわち、上記押し込み力がそれ程大きくない初期段階において、ディスプレイ本体10に警告画面を表示させたり図示せぬスピーカ部から警告音が発せられるように設定しておけば、ユーザに押し込み動作を止めるよう事前に喚起することができる。また、かかる警告報知を行った後に、モータ2を制御してディスプレイ本体10の格納動作を開始すれば、ディスプレイ本体10が格納動作を開始した理由をユーザが把握しやすくなる。
【0032】
同様に、ディスプレイ本体10の立ち上げ動作や格納動作を阻害する抵抗力が作用したときには、この抵抗力によってねじ棒4や第2ギア34が回転できなくなるため、モータ2の駆動力で第1ギア33が回転するのに伴って、凸部34aが凹部33a内から徐々にはみ出していき、それに伴って第1ギア33がコイルばね6に抗して第2ギア34から離れる向きに変位していく。したがって、フォースセンサ7に対する押圧突起33cの押圧量(第1ギア33の変位量)に基づいて、上記抵抗力の大きさがフォースセンサ7の抵抗値変化として出力され、その検出結果に応じて(所定量以上の抵抗値変化を検出した場合に)モータ2を適宜制御することにより、ディスプレイ本体10を抵抗力から退避させるために必要な動作(一時的な格納動作、または一時的な立ち上げ動作)を迅速に行わせることができる。この場合も、フォースセンサ7の抵抗値変化が上記所定量よりも小さい初期段階において、ディスプレイ本体10に警告画面を表示させたり図示せぬスピーカ部から警告音が発せられるように設定しておけば、ユーザに立ち上げ動作の阻害行為を止めるよう事前に喚起することができ、ディスプレイ本体10の立ち上げ動作が阻害されたことをユーザが把握しやすくなる。
【0033】
なお、本実施形態例では、入力側の第1ギア33に設けた凹部33a内に出力側の第2ギア34に設けた凸部34aを嵌入させているが、これとは逆に、第1ギア33の凸部を第2ギア34の凹部内に嵌入させる構成にしても良い。ここで、凸部と凹部の嵌入量(嵌入高さ)は、第1ギア33が第2ギア34に対して最大限移動した場合でも互いの嵌合状態が解除されない量に設定されている。よって、第2ギア34に対して第1ギア33が空転することはなく、凸部と凹部とが断続的に嵌合/離脱を繰り返すことに起因して発生する異音を防止することができる。
【0034】
また、図8〜図12に示す状態で立ち上がっているディスプレイ本体10を格納させる際には、モータ2を逆転駆動してねじ棒4を逆回転させることにより、スライダ5を後進させれば良い。すなわち、スライダ5が前進位置から後退位置に向かって移動すると、各ガイドレバー12の係合ピン12a,12bがカム溝1a,1bに沿ってそれぞれ後進するため、各ガイドレバー12の姿勢が徐々に下向きに変化していく。したがって、ディスプレイ本体10は傾倒しながら後進していき、スライダ5がねじ棒4の後端部まで後進した時点で、ディスプレイ本体10は図1〜図3に示すように倒伏した姿勢で筐体1の内部に格納される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置においては、入力側の第1ギア33と出力側の第2ギア34の対向面どうしを凹凸嵌合させ、コイルばね6で第1ギア33を第2ギア34へ向けて弾性付勢しており、これら両ギア33,34を同軸で一体的に回転させることができるため、モータ2の駆動力を第1ギア33から第2ギア34を介してねじ棒4へ確実に伝達することができる。そして、ねじ棒4の回転に伴って前後進するスライダ5にディスプレイ本体10を回動可能に連結しているため、このディスプレイ本体10をカム溝1a,1bでガイドしながら倒伏姿勢の格納位置と起立姿勢の立ち上げ位置との間で円滑に移動させることができる。
【0036】
また、立ち上げた状態のディスプレイ本体10を無理に格納させようとする押し込み力や、ディスプレイ本体10の立ち上げ動作や格納動作を阻害する抵抗力等の不所望な外力が作用したときには、第2ギア34の凸部34aが第1ギア33の凹部33a内から徐々にはみ出していき、それに伴って第1ギア33がコイルばね6の付勢力に抗して第2ギア34から離れる向きに変位していく。そのため、フォースセンサ7に対する押圧突起33cの押圧量(第1ギア33の変位量)に基づいて、かかる不所望な外力の大きさをフォースセンサ7で検出することができ、このフォースセンサ7の検出結果に応じてモータ2を適宜制御することにより、ディスプレイ本体10をこの種の外力から退避させるために必要な動作を迅速に行わせることができる。したがって、この車載用ディスプレイ装置は、大掛かりなクラッチ機構を追加しなくても、動力伝達機構の破損を未然に防止することができ、クラッチ機構を採用した場合の、動力伝達経路の断続的に切り離しにより生じる異音の発生も防止することができる。
【0037】
それゆえ、この車載用ディスプレイ装置は、装置全体の薄型化が容易であると共に、不所望な外力がディスプレイ本体10に加えられても破損したり異音を発生する虞がない。
【0038】
次に、図14〜図19を参照しながら、本発明の第2実施形態例について説明する。ただし、図14〜図19において、前述した第1実施形態例と対応する部分には同一符号を付すことで重複説明を適宜省略する。
【0039】
この第2実施形態例では、凹凸嵌合して同軸で一体的に回転可能な第1および第2ギア33,34を、ウォーム2aに噛合するギア35とねじ棒4の後端部に固着された第3ギア36との間に配設することでギア列3を構成している点が、第1実施形態例と異なっている。すなわち、第2実施形態例においては、モータ2の駆動力がウォーム2aからギア35に伝達され、このギア35が第1ギア33に噛合していると共に、図18,19に示すように、第1ギア33と凹凸嵌合して同軸回転する第2ギア34がねじ棒4と同軸回転する第3ギア36に噛合している。ただし、第2実施形態例においても第1実施形態例と同様に、キャップ部33b内に組み込まれたコイルばね6は入力側の第1ギア33を出力側の第2ギア34へ向けて弾性付勢しており、第1ギア33が軸線方向へ変位すると、キャップ部33bの押圧突起33cがフォースセンサ7を押圧するようになっている(図17参照)。
【0040】
このようにディスプレイ本体10に加えられた不所望な外力をフォースセンサ7に検出させるために凹凸嵌合させてあるギア33,34の軸心が、ねじ棒4の軸心に対してオフセットさせてあると、第1ギア33がコイルばね6の付勢力に抗して軸線方向へ変位したときに、その反力でねじ棒4が軸線方向へずれる虞がなくなるため、信頼性が高まる。
【符号の説明】
【0041】
1 筐体
1a,1b カム溝
2 モータ
2a ウォーム
3 ギア列
4 ねじ棒
4a ねじ溝
5 スライダ
6 コイルばね(ばね部材)
7 フォースセンサ(検出手段)
10 ディスプレイ本体
11 駆動レバー
11a 連結ピン
12 ガイドレバー
12a,12b 係合ピン
31,32,35 ギア
33 第1ギア
33a 凹部
33c 押圧突起
34 第2ギア
34a 凸部
36 第3ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に、モータと、螺旋状に延びるねじ溝が設けられたねじ棒と、前記モータの駆動力を前記ねじ棒に伝達するギア列と、前記ねじ溝に螺合して前記ねじ棒の回転に伴って前後進するスライダとを配設し、前記スライダに回動可能に連結されたディスプレイ本体が前記モータの駆動力によって、前記筐体の内部に格納した状態と該筐体の前部に立ち上げられた状態との間で移動可能な車載用ディスプレイ装置であって、
前記ディスプレイ本体を介して前記スライダに加えられた外力によって前記ねじ棒が回転するように該ねじ棒のリード角を摩擦角よりも大きく設定しておくと共に、前記ギア列に含まれて相対的に入力側の第1ギアと出力側の第2ギアとを対向させ、これら第1および第2ギアのいずれか一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌入させることによって該両ギアが同軸で一体的に回転するように設定し、且つ、前記第1ギアを前記第2ギアへ向けて弾性付勢するばね部材と、このばね部材に抗する前記第1ギアの軸線方向への変位に基づき前記外力の大きさを検出する検出手段とを備え、この検出手段の検出結果に応じて前記ディスプレイ本体を前記外力から退避させるように前記モータを制御することを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ねじ棒と同軸で一体的に回転する第3ギアを備え、この第3ギアに前記第2ギアを噛合させていることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記検出手段が前記外力の大きさに比例した検知信号を出力するフォースセンサであることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−224124(P2012−224124A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91354(P2011−91354)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】