説明

車載用光ディスク装置

【課題】ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した光ディスク装置であっても、当該装置の非通電時に外力(振動、衝撃、遠心力)が加わったとしても、部品故障の発生を防止することができる車載用光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在するか否かを推定する推定部と、前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在すると推定される場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクを挿排してデータの記録・再生を行う装置である。特に自動車などに搭載される車載用光ディスク装置は、外部から常に振動および/または衝撃(以下単に「振動衝撃」と表記する)が加われることが想定されるため、当該装置の非通電時に振動衝撃が加わっても部品故障の発生を防止することができる対策が求められる。
【0003】
従来の車載用光ディスク装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1および特許文献2には、輸送時において光ピックアップを移動不能にロックする構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−006541号公報
【特許文献2】特開昭63−083982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術は、下記の理由により、非通電時の振動衝撃対策として不十分である。
【0006】
車載用光ディスク装置においては、輸送時のみならず、車両への装着後も、タイヤやサスペンションなどを介して伝達されるロードノイズや車の急加減速などによる振動衝撃、ならびにコーナリング時の遠心力などの外力を、通電時または非通電時によらず、常に受けることになる。
【0007】
また、近時のコストダウンの要求に従い、部品点数を削減し簡素な構成でローディング機構を設計した場合には、フローティング保持機構(いわゆるメカロック機構)が完全には成立せず、局所的に所定方向に対して遊びを生じることがある。遊びがあると、光ピックアップの位置によって振動衝撃耐久性が変化する。特に光ピックアップがトラバース方向の外周位置にあるとき、当該装置はより大きな振動衝撃を受ける。したがって、光ピックアップが外周位置にある状態において当該装置に大きな振動衝撃が連続して加わると、例えば、オイルダンパの破損や光ピックアップの4WSワイヤの断線など、部品の故障が生じ易くなる。
【0008】
特に、光ピックアップのトラバース機構として、ステッピングモータを用いたダイレクトドライブまたはラック・アンド・ピニオンを用いたトラバース機構を採用した場合には、光ピックアップの位置拘束力が弱いため、当該装置(光ディスク装置)の非通電時に外力(振動、衝撃、遠心力)が加わると、光ピックアップが不要に外周方向に移動してしまうことがある。一般的に、光ディスク装置の非動作時は、非通電状態であるため、光ピックアップの位置を制御することができない。したがって、外力を受け易い車載用途の場合、光ピックアップが不要に外周方向に移動してしまうと、次回の通電時まで、または、偶発的に内周方向への外力が加わらない限り、光ピックアップは外周位置に留まり続けることになるため、部品の故障が生じ易くなる。
【0009】
このように、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータによるトラバース機構を採用した光ディスク装置においては、輸送時以外の非通電時においても、光ピックアップが外周方向に移動した状態で外力(振動、衝撃、遠心力)を受け続けることによって、部品故障が発生する可能性が高くなるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、例えば、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した光ディスク装置であっても、当該装置の非通電時に外力(振動、衝撃、遠心力)が加わったとしても、部品故障の発生を防止することができる車載用光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車載用光ディスク装置は、光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在するか否かを推定する推定部と、前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在すると推定される場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、を有する。
【0012】
また、本発明の車載用光ディスク装置は、光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、前記光ピックアップがトラバース方向の内周位置に存在するか否かを検出する検出スイッチと、当該装置の非通電時に、前記検出スイッチにより前記光ピックアップがトラバース方向の内周位置に存在しないことが検出された場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、を有する。
【0013】
また、本発明の車載用光ディスク装置は、光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、車両に加わる振動衝撃を検出する振動衝撃検出手段の出力を入力する入力部と、当該装置の非通電時に、前記振動衝撃検出手段により検出された振動衝撃が所定方向に所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、を有する。好ましくは、前記振動衝撃検出手段は、加速度センサである。
【0014】
また、本発明の車載用光ディスク装置は、光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、車両に加わる遠心力を算出する遠心力算出部と、当該装置の非通電時に、前記遠心力算出部により算出された遠心力が所定方向に所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した光ディスク装置であっても、当該装置の非通電時に外力(振動、衝撃、遠心力)が加わったとしても、部品故障の発生を防止することができる。
【0016】
具体的には、本発明によれば、当該装置(光ディスク装置)の非通電時の光ピックアップの位置または移動を検出・把握して、光ピックアップがトラバース方向の外周位置に存在すると推定(予想)される場合には、光ピックアップを内周方向に送り常に内周近傍に位置させるため、光ピックアップがトラバース方向の最外周位置に存在し続ける状態を防止して、部品故障発生の確率を低下させることができる。したがって、簡素な構成のローディング機構でありかつステッピングモータを採用した場合であっても、外力(振動、衝撃、遠心力)に対して高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置の動作を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態3に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態3に係る光ディスク装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示す光ディスク装置100は、大別して、装置本体100aと、コントローラ170とを有する。装置本体100aは、光デッキ部110、ローディング機構120、フローティング保持機構(メカロック機構)130、防振機構140、筐体150、および制御部160を有する。
【0021】
光デッキ部110は、光ディスク(図示せず)に対して情報を記録または再生するための各種部品を搭載して構成されている。具体的には、光デッキ部110には、例えば、基本ベース部となるシャーシ111と、光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップ112と、光ディスクを回転させるスピンドル機構113と、光ピックアップ112をディスク半径方向に移動させるためのトラバース機構114と、光ピックアップ112のトラバース方向の最内周位置を検出するための内周スイッチ115と、光ディスクの有無を検出するための検出スイッチ116などが搭載されている。内周スイッチ115および検出スイッチ116は、それぞれ、例えば、物体を検知するとON(閉)状態になり、物体を検知しないとOFF(開)状態になる、いわゆるa接点(メイク接点)で構成されている。
【0022】
ローディング機構120は、光ディスクの挿排を行うための機構であり、光ディスクの搬送動作およびクランプ動作、ならびに後述するフローティング部のメカロック動作の機能を担う機構部である。
【0023】
光ディスク装置100は、一般的な車載用光ディスク装置と同様に、光デッキ部110をバネなどの弾性部材および防振ダンパ(防振機構140)によって筐体150に対して支持するフローティング構造を取っている。フローティング構造を取ることによって、筐体150に振動が加えられても、この振動を弾性部材および防振ダンパによって減衰および吸収することができる。これにより、車両走行中の振動によって光ディスク再生中に音飛びなどが発生することを防止することができる。
【0024】
また、光ディスク装置100は、一般的な車載用光ディスク装置と同様に、被フローティング部つまり光デッキ部110を筐体150に対してリジッドに拘束するフローティング保持機構(いわゆるメカロック機構)130を備えている。このメカロック機構130は、搬送する光ディスクと、光デッキ部110に設置されたスピンドル機構113のターンテーブルとの位置関係を正確に出すために、光ディスクが当該装置内に存在しない待機時および光ディスクを当該装置内に挿排する時に、光デッキ部110を筐体150に対して拘束する機能を有する。光ディスクの挿入とローディングの際には、光ディスクの搬送動作および光ディスクをスピンドル機構113のターンテーブルに固定するクランプ動作が行われる。このとき、光ディスクを正しくクランプするために、メカロック機構130は、筐体150に対する光デッキ部110の動作を上下方向、前後方向、および左右方向に規制(ロック)するようになっている。
【0025】
防振機構140は、一般的な車載用光ディスク装置の防振機構と同様に、オイルダンパ141および支持ばね142によって、光デッキ部110を筐体150に対してフローティングする構成を取っている。オイルダンパ141および支持ばね142の片端は、筐体150に取り付けられている。オイルダンパ141は、例えば、エラストマーの材料などで作られた容器内にシリコーンオイルなどが充填された防振ダンパである。図示しないが、オイルダンパ141とシャーシ111との嵌合は、シャーシ111に設置されたダンパ軸をオイルダンパ141の容器の穴部に差し込む形で組み込むのが一般的である。
【0026】
オイルダンパ141の個数と支持ばね142の個数は、前後・上下・左右方向に対して均等な耐振性能を得るために、各々3個以上で構成されている。組立を容易にするために、支持ばね142は、オイルダンパ141と同軸心位置でシャーシ111を下側から支持するように圧縮コイルバネを配置して構成されている。
【0027】
シャーシ111にトラバース機構114を配置する際、トラバース方向は、ディスク挿入方向に対して45度または同値に近い角度に設計される。ディスク全周の情報を読み取るための光ピックアップ112の移動距離は、ディスク径によって決まる。そのため、一般的に、多くの場合、光ディスク装置100を小型化するために上記のレイアウトが採用されている。
【0028】
トラバース機構114は、例えば、ステッピングモータで構成されている。ステッピングモータは、小型で、かつ回転時の静音性が高く、しかもパルス列に応じて微小回転角での位置決め制御が可能で、さらには高速回転が可能であるため、光ピックアップ112の送り機構に適している。なお、トラバース機構114として、ステッピングモータを用いたダイレクトドライブのほかに、リニアモータを用いたダイレクトドライブや、ラック・アンド・ピニオンによるトラバース機構などを採用することも可能である。
【0029】
ただし、DCモータとウォームギヤなどを介したギヤ列とによるトラバース機構を採用する場合に比べて、ステッピングモータやリニアモータなどを用いたダイレクトドライブ、またはラック・アンド・ピニオンによるトラバース機構を採用した場合は、当該装置(光ディスク装置100)の非通電時に光ピックアップ112が半径方向に移動するのを妨げる位置拘束力が弱く、外部から加わる振動衝撃によって光ピックアップ112が意図せずに移動してしまう場合がある。
【0030】
制御部160は、光ディスク装置100全体を制御する、装置本体100aの内部に設けられたCPU(Central Processing Unit)である。コントローラ170は、操作者が光ディスク装置100を操作した際に、操作に対応する指令信号を光ディスク装置100に与えるCPUである。制御部160およびコントローラ170の構成および動作については、後で詳述する。
【0031】
上記のように、一般的に車載用光ディスク装置は、輸送時のみならず、車両への装着後も、ロードノイズや車の急加減速などによる振動衝撃、ならびにコーナリング時の遠心力などの外力を、通電時または非通電時によらず、常に受けることになる。
【0032】
また、上記のように、現在、光ディスク装置は、コストダウンの要求が厳しく、部品点数の削減が必須となっており、ローディング機構についても簡素化により廉価な構成とすることが求められている。部品点数を削減し簡素な構成でローディング機構を設計した場合には、メカロック機構が完全には成立せず、局所的に所定方向に対して遊びを生じることがある。
【0033】
例えば、図1に示す防振機構140(オイルダンパ141と支持ばね142)の配置、シャーシ111上のトラバース方向(ディスク挿入方向に対してほぼ45度)の構成、およびメカロック位置を採用した場合、メカロック機構130は、ディスク挿入口側の部分では、規制に効力を発揮するものの、光ピックアップ112位置外周側の部分では、上下方向に対する規制が緩くなってしまう。すなわち、後者の部分は、メカロック機構130によってではなく防振機構140(オイルダンパ141と支持ばね142)によってシャーシ111を支持する構造となるため、上下方向に揺動可能な状態になってしまう。
【0034】
通常、ディスクが挿入されクランプされた状態においては、防振機構140によって、外部から伝達される振動衝撃を減衰・吸収することができる。しかし、メカロックが不完全な状態においては、設置されたすべてのオイルダンパ141および支持ばね142が機能するわけではないため、十分に振動衝撃を減衰したり吸収したりすることができない。
【0035】
さらに、メカロックが不完全な状態で上下方向に振動が加わった場合、光ピックアップ112の位置によって光ピックアップ112自身に加わる振動衝撃が異なることになる。すなわち、光ピックアップ112がトラバース方向の最外周位置にあるとき、メカロック位置を支点として最も慣性モーメントが大きくなるため、光ピックアップ112自身や防振機構140などに加わる振動衝撃も大きくなる。この振動衝撃によってシャーシ111と筐体150との間の空間クリアランスを超える揺動があった場合には、部品同士の間で衝突が発生し、さらに大きな衝撃を生じることになる。
【0036】
したがって、メカロックが不完全であるために遊びがあると、光ピックアップ112のトラバース方向の位置が異なることにより、受ける振動衝撃が一様でなく、変化し、特に光ピックアップ112が最外周位置にあるときに、最も大きな振動衝撃を受けることになる。このとき、受ける振動衝撃により部品の耐久性が著しく低下し、例えば、上記のように、光ディスク装置100のオイルダンパ141の破損や光ピックアップ112の4WSワイヤ112aの断線などといった部品故障が発生し易くなる。
【0037】
また、上記のように、当該装置(光ディスク装置100)の非通電時、ステッピングモータはトラバース方向に対する位置拘束力が弱いため、振動や衝撃、遠心力などによる外周方向への外力によって、光ピックアップ112が外周方向に移動してしまうことがある。特に車載用途は、上記のような外力(振動、衝撃、遠心力)を受け易いため、光ピックアップ112が外周方向に移動してしまう頻度が高くなる。また、非通電状態であるため、次回の通電時まで、または偶発的に内周方向への外力が加わらない限り、光ピックアップ112は外周位置に留まり続けることになり、上記の理由により部品がダメージを受け易くなる。
【0038】
そのため、上記のように、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータによるトラバース機構を採用した光ディスク装置においては、当該装置の非通電時において、光ピックアップ112が外周方向に移動した状態で外力(振動、衝撃、遠心力)を受け続けることによって部品故障が発生し易くなるという問題がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置100)の非通電時には、所定の時間間隔毎に当該装置を起動して、光ピックアップ112の位置検出を行い、光ピックアップ112がトラバース方向の内周位置にないと判定されたときに、ステッピングモータ(トラバース機構114)に通電して内周方向に送り動作を行うようにしている。
【0040】
すなわち、本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置100)の非動作時(つまり、非通電時)には、一定の時間毎に内周スイッチ115の状態をモニタし、内周スイッチ115がOFF(開)状態のときには、光ピックアップ112が外周位置に存在する可能性があるため、内周送りの駆動信号(電圧)をステッピングモータ(トラバース機構114)に印加する。具体的には、当該装置の非通電時には、操作者が電源を入れなくても一定の時間毎に当該装置が起動し、シャーシ111上に設置された内周スイッチ115がON(閉)状態かOFF(開)状態かを検知する。そして、内周スイッチ115がOFF状態であった場合には、内周方向に光ピックアップ112を送る。これにより、当該装置の非通電時に光ピックアップ112が常時最外周位置に存在することを防止することができ、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、部品故障の発生を防止することができる。
【0041】
上記の機能を実現すべく、制御部160は、光ディスク検出部161、トラバース内周位置検出部162、およびトラバース内周送り部163を有する。また、コントローラ170は、光ディスク装置操作部171、光ディスク装置起動部172、およびタイマ173を有する。制御部160とコントローラ170とは、有線または無線によって接続されている。コントローラ170には、車両始動部180が接続されている。
【0042】
光ディスク検出部161は、検出スイッチ116の出力(ON/OFF)に応じて、当該装置内の光ディスクの有無を検出する。
【0043】
トラバース内周位置検出部162は、内周スイッチ115の出力(ON/OFF)に応じて、光ピックアップ112がトラバース方向の最内周位置に存在するか否かを検出する。
【0044】
トラバース内周送り部163は、トラバース内周送りの駆動信号(電圧)を所定時間発生し、ステッピングモータ(トラバース機構114)に出力する。ここで、「所定時間」は、例えば、光ピックアップ112がトラバース方向の最外周位置から内周スイッチ115を押下する位置(ここでは、最内周位置)まで移動するのに必要な時間に設定されている。一例として、例えば、所定時間は、光ピックアップ112を確実に最内周位置まで移動させるために駆動トルクに余裕のある低パルスレートに設定する必要があることから、数秒(2〜3秒)に設定されている。
【0045】
光ディスク装置操作部171は、当該装置(光ディスク装置100)に対する操作者の電源ON/OFFなどの操作を受けて、当該装置の操作を行う。
【0046】
光ディスク装置起動部172は、タイマ173が発生する出力信号などを受けて、当該装置(光ディスク装置100)を起動する。
【0047】
タイマ173は、当該装置(光ディスク装置100)の非通電時に、所定時間毎に出力信号を発生する。ここで、所定時間は、例えば、制御の負荷や効果の実効性などを考慮して、車両の使用環境などに応じて、適切な値(例えば、数分〜十数分程度)に設定される。例えば、業務用車両など長時間の利用が予想され使用条件が厳しい環境下では、所定時間を短めに設定し、一般車両が一般道を走行するような使用環境下では、所定時間を許容できる最大時間に設定してもよい。
【0048】
車両始動部180は、車両に対する操作者のON/OFF操作を受けて、車両の運転開始および停止を行う。車両に対する操作者のON/OFF操作は、例えば、イグニション(IG)スイッチなどの車両始動キーによって行われる。
【0049】
次いで、上記構成を有する光ディスク装置100の動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
まず、ステップS1000では、光ディスク装置操作部171にて、車両始動部180の車両始動キー(イグニションスイッチ)がON操作されたか否かを判断する。この判断の結果として、車両始動キーがON操作された場合は(S1000:YES)、ステップS1100に進み、車両始動キーがON操作されていない、つまり、OFF状態のままの場合は(S1000:NO)、車両始動キーがON操作されるまで待機する。なお、車両始動キーがON操作されると、車両始動部180により車両運転が開始される。
【0051】
ステップS1100では、光ディスク装置操作部171にて、当該装置(光ディスク装置100)が非通電状態か否かを判断する。この判断の結果として、当該装置が非通電状態である場合は(S1100:YES)、ステップS1200に進み、当該装置が非通電状態でない、つまり、通電状態である場合は(S1100:NO)、直ちにステップS1900に進む。
【0052】
ステップS1200では、光ディスク装置操作部171からの指令により、タイマ173をリセットする。
【0053】
そして、ステップS1300では、光ディスク装置操作部171からの指令により、タイマ173を起動する。これにより、タイマ173は、経過時間のカウントを開始する。
【0054】
そして、ステップS1400では、タイマ173にて、カウントしている経過時間が所定値を超えたか否かを判断する。この判断の結果として、経過時間が所定値を超えた場合は(S1400:YES)、ステップS1500に進み、経過時間が所定値を超えていない場合は(S1400:NO)、経過時間が所定値を超えるまで待機する。
【0055】
ステップS1500では、当該装置(光ディスク装置100)を起動する。具体的には、経過時間が所定値を超えた時、タイマ173は、その旨の信号を光ディスク装置起動部172に出力する。そして、光ディスク装置起動部172は、タイマ173からの出力信号を受けて、当該装置(光ディスク装置100)を起動する。
【0056】
そして、ステップS1600では、光ディスク検出部161にて、光ディスクが当該装置内にあるか否かを判断する。この判断は、検出スイッチ116の出力(ON/OFF)に応じて当該装置内の光ディスクの有無を検出することによって行われる。この判断の結果として、光ディスクが当該装置内にある場合は(S1600:YES)、直ちにステップS1900に進み、光ディスクが当該装置内にない場合は(S1600:NO)、ステップS1700に進む。
【0057】
ステップS1700では、さらに、トラバース内周位置検出部162にて、内周スイッチ115がON(閉)状態か否かを判断する。この判断は、内周スイッチ115の出力(ON/OFF)に応じて光ピックアップ112がトラバース方向の最内周位置に存在するか否かを検出することによって行われる。この判断の結果として、内周スイッチ115がON状態である場合は(S1700:YES)、直ちにステップS1900に進み、内周スイッチ115がON状態でない、つまり、OFF(開)状態の場合は(S1700:NO)、光ピックアップ112が外周位置に存在する可能性があると判断して、ステップS1800に進む。
【0058】
ステップS1800では、トラバース内周送り部163にて、トラバース内周送りの制御動作を実行する。具体的には、トラバース内周送り部163は、トラバース内周送りの駆動信号(電圧)を所定時間発生し、ステッピングモータ(トラバース機構114)に出力する。ここで、所定時間は、上記のように、例えば、光ピックアップ112がトラバース方向の最外周位置から内周スイッチ115を押下する位置(ここでは、最内周位置)まで移動するのに必要な時間(2〜3秒)に設定されている。
【0059】
そして、ステップS1900では、光ディスク装置操作部171にて、車両始動部180の車両始動キー(イグニションスイッチ)がOFF操作されたか否かを判断する。この判断の結果として、車両始動キーがOFF操作された場合は(S1900:YES)、上記一連の処理を終了し、車両始動キーがOFF操作されていない、つまり、ON状態のままの場合は(S1900:NO)、ステップS1100に戻る。なお、車両始動キーがOFF操作されると、車両始動部180により車両運転が停止される。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、当該装置(光ディスク装置100)の非通電時に、定期的に光ピックアップ112の位置をモニタし、光ピックアップ112がトラバース方向の内周側所定位置(ここでは、最内周位置)にないときには、光ピックアップ112の内周送りを行う。このため、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、光ピックアップ112のトラバース外周方向への位置変化の発生によって生じる外部振動衝撃増幅の影響を除去して、部品故障の発生を防止することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、定期的に光ピックアップ112の位置(つまり、内周スイッチ115の状態)をモニタするために、タイマ173を用いているが、これに限定されない。例えば、他の例として、タイマ173の代わりに、当該装置(光ディスク装置100)を制御するホストCPUと所定時間毎に通信を行って、当該装置を起動し上記所定の場合にトラバース内周送りを行わせるようにコマンドを発行してもよい。
【0062】
(実施の形態2)
実施の形態2は、光ディスク装置の非通電時に、光ピックアップを外周方向に移動させる力(ここでは、振動衝撃力を示す加速度)を検出することにより、光ピックアップの移動の可能性を判定する場合である。
【0063】
図3は、本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。なお、図3に示す光ディスク装置200は、図1に示す実施の形態1に対応する光ディスク装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置200)の外部に、振動衝撃を検出する加速度検出手段(加速度センサ)を備え、当該装置の非通電時に、外部からの振動衝撃を検出し、検出値が所定値以上の場合に、ステッピングモータ(トラバース機構114)に通電して内周方向に送り動作を行うようにしている。
【0065】
すなわち、本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置200)の非動作時(つまり、非通電時)には、加速度センサの出力をモニタし、所定方向(トラバース方向外周向き)に所定値以上の加速度を検出したときには、光ピックアップ112が外周方向に移動する可能性があるため、内周送りの駆動信号(電圧)をステッピングモータ(トラバース機構114)に印加する。具体的には、当該装置の非通電時には、外部から光ピックアップ112を外周方向に移動させるような所定値以上の外力を、当該装置の外部に設置された加速度センサが検出した場合には、内周方向に光ピックアップ112を送る。これにより、当該装置の非通電時に光ピックアップ112が常時最外周位置に存在することを防止することができ、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、部品故障の発生を防止することができる。
【0066】
上記の機能を実現するべく、コントローラ210は、光ディスク装置操作部171および光ディスク装置起動部172に加えて、加速度算出・判定部211を有する。制御部160とコントローラ210とは、有線または無線によって接続されている。コントローラ210には、車両始動部180に加えて、第1加速度センサ221および第2加速度センサ222がそれぞれ接続されている。
【0067】
第1加速度センサ221および第2加速度センサ222は、好ましくは、当該装置(光ディスク装置200)の外部に設置され、例えば、車両進行方向および車両進行方向に垂直な方向の加速度をそれぞれ検出し電気信号として出力する。加速度センサ221、222の具体例としては、例えば、運転席エアバッグ用の前後方向加速度検出を行う加速度センサを第1加速度センサ221として用い、サイドエアバッグ用の左右方向加速度検出を行う加速度センサを第2加速度センサ222として用いることができる。
【0068】
加速度算出・判定部211は、第1加速度センサ221と第2加速度センサ222の出力を合成して、トラバース方向の加速度成分を算出し、所定値と比較する。ここで、所定値は、例えば、トラバース機構114において光ピックアップ112が外周方向に動き出す加速度を実験的に求めた値である。加速度算出・判定部211は、算出したトラバース方向の加速度成分が所定値を超えると、光ピックアップ112が外周方向に移動する可能性があると判断して、その旨の信号を光ディスク装置起動部172に出力する。
【0069】
なお、本実施の形態では、加速度算出・判定部211をコントローラ210に設けているが、これに限定されない。例えば、加速度算出・判定部211は、エアバッグECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に、トラバース方向の合成出力を算出して所定値との比較結果を出力できる機能を付加することによっても実現することができる。また、例えば、加速度算出・判定部211の算出機能(トラバース方向の加速度成分の算出)と判定機能(トラバース方向の加速度成分と所定値との比較判定)とを分離して、前者をエアバックECUに、後者をコントローラ210に、それぞれ分担させることも可能である。
【0070】
次いで、上記構成を有する光ディスク装置200の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
ステップS2000およびステップS2100は、実施の形態1における図2に示すフローチャートのステップS1000およびステップS1100と同様であるため、その詳しい説明は省略する。ここでは、車両始動部180により車両運転が開始されると(S2000:YES)、まず、光ディスク装置操作部171によって当該装置(光ディスク装置200)が非通電状態か否かを検出する(S2100)。そして、当該装置が非通電状態である場合は(S2100:YES)、以下の処理を行う。
【0072】
ステップS2200では、加速度算出・判定部211にて、第1加速度センサ221の出力と第2加速度センサ222の出力を常時モニタして、トラバース方向の加速度成分を算出する。
【0073】
そして、ステップS2300では、加速度算出・判定部211にて、ステップS2200で算出したトラバース方向の加速度成分が所定値を超えたか否かを判断する。ここで、所定値は、上記のように、トラバース機構114において光ピックアップ112が外周方向に動き出す加速度を実験的に求めた値である。この判断の結果として、算出した加速度成分が所定値を超えた場合は(S2300:YES)、ステップS2400に進み、算出した加速度成分が所定値を超えていない場合は(S2300:NO)、ステップS2200に戻る。
【0074】
ステップS2400では、当該装置(光ディスク装置200)を起動する。具体的には、算出したトラバース方向の加速度成分が所定値を超えた時、加速度算出・判定部211は、その旨の信号を光ディスク装置起動部172に出力する。そして、光ディスク装置起動部172は、加速度算出・判定部211からの出力信号を受けて、当該装置(光ディスク装置200)を起動する。
【0075】
ステップS2500、ステップS2600、およびステップS2700は、実施の形態1における図2に示すフローチャートのステップS1600、ステップS1800、およびステップS1900と同様であるため、その詳しい説明は省略する。ここでは、まず、光ディスク検出部161により当該装置内の光ディスクの有無を検出する(S2500)。そして、光ディスクが当該装置内にあれば(S2500:YES)、処理を終了する。これに対し、光ディスクが当該装置内にない場合は(S2500:NO)、トラバース内周送り部163により、トラバース内周送りの駆動信号(電圧)を所定時間発生し、ステッピングモータ(トラバース機構114)に出力する(S2600)。ここで、所定時間は、上記のように、例えば、光ピックアップ112がトラバース方向の最外周位置から内周スイッチ115を押下する位置(ここでは、最内周位置)まで移動するのに必要な時間(2〜3秒)に設定されている。そして、上記一連の処理は、車両始動キーがOFF操作されるまで(S2700:YES)、繰り返される。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、当該装置(光ディスク装置200)の非通電時に、光ピックアップ112を外周方向に移動させるような外力の発生を、当該装置(光ディスク装置200)の外部に設置された加速度センサ221、222により検出し、検出値(ここでは、具体的には、トラバース方向の加速度成分の算出値)が所定値よりも大きい場合には、光ピックアップ112の内周送りを行う。このため、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、光ピックアップ112のトラバース外周方向への位置変化の発生によって生じる外部振動衝撃増幅の影響を除去して、部品故障の発生を防止することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、加速度センサとして、車両進行方向および車両進行方向に垂直な方向の加速度をそれぞれ検出する2つの加速度センサ221、222を用いているが、検出する加速度の方向はこれに限定されない。例えば、検出する加速度の方向は、広く、トラバース方向を含む同一平面内の互いに垂直な方向であってもよい。また、加速度の個数も、2個に限定されず、3個以上であってもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、第1加速度センサ221および第2加速度センサ222はコントローラ210にそれぞれ接続されているが、これに限定されない。コントローラ210は、例えば、別のECUから、第1加速度センサ221および第2加速度センサ222の出力を入力するようにしてもよい。
【0079】
(実施の形態3)
実施の形態3は、光ディスク装置の非通電時に、光ピックアップを外周方向に移動させる力(ここでは、車両に加わる遠心力)を検出することにより、光ピックアップの移動の可能性を判定する場合である。
【0080】
図5は、本発明の実施の形態3に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。なお、図5に示す光ディスク装置300は、図1に示す実施の形態1に対応する光ディスク装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置300)の外部に、車両の進行方向を制御するステアリングの操作角度を検出する手段と、車両の走行速度を検出する手段とを備え、当該装置の非通電時に、ステアリングの操作角度および車両の走行速度から遠心力を算出し、算出値が所定値以上の場合に、ステッピングモータ(トラバース機構114)に通電して内周方向に送り動作を行うようにしている。
【0082】
すなわち、本実施の形態では、当該装置(光ディスク装置300)の非動作時(つまり、非通電時)には、ステアリングの操作角度と車速センサの値(車速パルス)とを検出し、この検出値から車両(ひいては当該光ディスク装置300)に加わる遠心力を算出(推定)し、所定方向(トラバース方向)に所定値以上の遠心力が算出されたときには、光ピックアップ112が外周方向に移動する可能性があるため、内周送りの駆動信号(電圧)をステッピングモータ(トラバース機構114)に印加する。具体的には、当該装置の非通電時で、かつ、車両のコーナリング中の際に、遠心力により光ピックアップ112を外周方向に移動させるような所定値以上の外力が加わると推定される場合には、内周方向に光ピックアップ112を送る。これにより、当該装置の非通電時に光ピックアップ112が常時最外周位置に存在することを防止することができ、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、部品故障の発生を防止することができる。
【0083】
上記の機能を実現するべく、コントローラ310は、光ディスク装置操作部171および光ディスク装置起動部172に加えて、遠心力算出・判定部311を有する。制御部160とコントローラ310とは、有線または無線によって接続されている。コントローラ310には、車両始動部180に加えて、ステアリング操作角度検出部321および車両速度検出部322がそれぞれ接続されている。
【0084】
ステアリング操作角度検出部321は、車両走行中に運転者が操作したステアリング操作角度を検出する。
【0085】
車両速度検出部322は、車両の所定場所に設置されており、例えば、車軸や車輪などの回転速度に応じて出力されるパルス信号を読み取ることによって、車両の走行速度を検出する。車両速度検出部322は、例えば、車速センサで構成されている。
【0086】
遠心力算出・判定部311は、ステアリング操作角度検出部321の出力および車両速度検出部322の出力から、トラバース方向の遠心力を算出し、所定値と比較する。ここで、所定値は、例えば、トラバース機構114において光ピックアップ112が外周方向に動き出す遠心力を実験的に求めた値である。
【0087】
ここで、遠心力の算出原理について説明する。
【0088】
ステアリング基準角度θを直進状態でのステアリング操作角度とすると、ステアリング変位角Δθ(=θ―θ)と、車両のタイヤ操舵角度Δθとは、次の式(1)の関係にある。ここで、kは、比例定数である。
Δθ=k・Δθ …(1)
【0089】
また、車両走行軌跡のコーナー半径Rは、車両のタイヤ操舵角度Δθとほぼ反比例の関係にあるため、次の式(2)が成り立つ。ここで、kは、比例定数である。
1/R≒k・Δθ=k・k・Δθ …(2)
【0090】
一方、車両速度検出部322により検出された車両走行速度Vを用いると、光ピックアップ112に加わる遠心力Fは、次の式(3)で表される。ここで、mは、光ピックアップ112の質量[g]である。また、ここでは、トラバース方向は、ディスク挿入方向(車両の直進方向)に対して45度であると仮定している。
F=m・V/R・cos(90°−(Δθt+45°))
=m・V・(k・k・Δθ)・sin(k・Δθ+45°) …(3)
【0091】
次いで、上記構成を有する光ディスク装置300の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
ステップS3000およびステップS3100は、実施の形態1における図2に示すフローチャートのステップS1000およびステップS1100と同様であるため、その詳しい説明は省略する。ここでは、車両始動部180により車両運転が開始されると(S3000:YES)、まず、光ディスク装置操作部171によって当該装置(光ディスク装置300)が非通電状態か否かを検出する(S3100)。そして、当該装置が非通電状態である場合は(S3100:YES)、以下の処理を行う。
【0093】
ステップS3200では、ステアリング操作角度と車両速度から遠心力を算出する。具体的には、ステアリング操作角度検出部321は、ステアリング操作角度θを検出し、基準角度θからのステアリング変位角Δθを出力する。ここで、基準角度θは、上記のように、直進状態でのステアリング操作角度である。車両速度検出部322は、車両速度Vを検出する。遠心力算出・判定部311は、ステアリング操作角度検出部321からのステアリング変位角検出値Δθと車両速度検出部322からの車両速度検出値Vとを用いて、上記の式により、当該装置(光ディスク装置300)ひいては光ピックアップ112に作用するトラバース方向の遠心力Fを算出する。
【0094】
そして、ステップS3300では、遠心力算出・判定部311にて、ステップS3200で算出したトラバース方向の遠心力Fが所定値を超えたか否かを判断する。ここで、所定値は、上記のように、トラバース機構114において光ピックアップ112が外周方向に動き出す遠心力を実験的に求めた値である。この判断の結果として、算出した遠心力Fが所定値を超えた場合は(S3300:YES)、ステップS3400に進み、算出した遠心力Fが所定値を超えていない場合は(S3300:NO)、ステップS3200に戻る。
【0095】
ステップS3400では、当該装置(光ディスク装置300)を起動する。具体的には、算出したトラバース方向の遠心力Fが所定値を超えた時、遠心力算出・判定部311は、その旨の信号を光ディスク装置起動部172に出力する。そして、光ディスク装置起動部172は、遠心力算出・判定部311からの出力信号を受けて、当該装置(光ディスク装置300)を起動する。
【0096】
ステップS3500、ステップS3600、およびステップS3700は、実施の形態1における図2に示すフローチャートのステップS1600、ステップS1800、およびステップS1900と同様であるため、その詳しい説明は省略する。ここでは、まず、光ディスク検出部161により当該装置内の光ディスクの有無を検出する(S3500)。そして、光ディスクが当該装置内にあれば(S3500:YES)、処理を終了する。これに対し、光ディスクが当該装置内にない場合は(S3500:NO)、トラバース内周送り部163により、トラバース内周送りの駆動信号(電圧)を所定時間発生し、ステッピングモータ(トラバース機構114)に出力する(S3600)。ここで、所定時間は、上記のように、例えば、光ピックアップ112がトラバース方向の最外周位置から内周スイッチ115を押下する位置(ここでは、最内周位置)まで移動するのに必要な時間(2〜3秒)に設定されている。そして、上記一連の処理は、車両始動キーがOFF操作されるまで(S3700:YES)、繰り返される。
【0097】
このように、本実施の形態によれば、当該装置(光ディスク装置300)の非通電時に、光ピックアップ112を外周方向に移動させるような遠心力の発生を、車両のステアリング操作角度と車両速度から算出し、算出値(ここでは、具体的には、トラバース方向の遠心力)が所定値よりも大きい場合には、光ピックアップ112の内周送りを行う。このため、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した場合にも、光ピックアップ112のトラバース外周方向への位置変化の発生によって生じる外部振動衝撃増幅の影響を除去して、部品故障の発生を防止することができる。
【0098】
なお、本実施の形態では、ステアリング操作角度検出部321および車両速度検出部322はコントローラ310にそれぞれ接続されているが、これに限定されない。コントローラ310は、例えば、別のECUから、ステアリング操作角度検出部321および車両速度検出部322の出力を入力するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る光ディスク装置は、例えば、ローディング機構を簡素化しかつステッピングモータを採用した光ディスク装置であっても、当該装置の非通電時に外力(振動、衝撃、遠心力)が加わったとしても、その影響を抑制し、部品故障の発生を防止する(つまり、部品故障の発生確率を低下させる)ことができ、高信頼性を確保することができるという効果を有し、車載用音響機器や車載用ナビゲーション装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0100】
100、200、300 光ディスク装置
100a 装置本体
110 光デッキ部
111 シャーシ
112 光ピックアップ
112a 4WSワイヤ
113 スピンドル機構
114 トラバース機構
115 内周スイッチ
116 検出スイッチ
120 ローディング機構
130 フローティング保持機構(メカロック機構)
140 防振機構
141 オイルダンパ
142 支持ばね
150 筐体
160 制御部
161 光ディスク検出部
162 トラバース内周位置検出部
163 トラバース内周送り部
170、210、310 コントローラ
171 光ディスク装置操作部
172 光ディスク装置起動部
173 タイマ
180 車両始動部
211 加速度算出・判定部
221 第1加速度センサ
222 第2加速度センサ
311 遠心力算出・判定部
321 ステアリング操作角度検出部
322 車両速度検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、
前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、
前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在するか否かを推定する推定部と、
前記光ピックアップが当該装置の非通電時にトラバース方向の外周位置に存在すると推定される場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、
を有する車載用光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、
前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、
前記光ピックアップがトラバース方向の内周位置に存在するか否かを検出する検出スイッチと、
当該装置の非通電時に、前記検出スイッチにより前記光ピックアップがトラバース方向の内周位置に存在しないことが検出された場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、
を有する車載用光ディスク装置。
【請求項3】
前記検出スイッチは、
前記光ピックアップのトラバース方向の最内周位置を検出する内周スイッチである、
請求項2記載の車載用光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、
前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、
車両に加わる振動衝撃を検出する振動衝撃検出手段の出力を入力する入力部と、
当該装置の非通電時に、前記振動衝撃検出手段により検出された振動衝撃が所定方向に所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、
を有する車載用光ディスク装置。
【請求項5】
前記振動衝撃検出手段は、
加速度センサであり、
前記制御部は、
当該装置の非通電時に、前記加速度センサにより検出された加速度がトラバース方向に所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する、
請求項4記載の車載用光ディスク装置。
【請求項6】
前記振動衝撃検出手段は、
複数の加速度センサであり、
前記制御部は、
当該装置の非通電時に、前記複数の加速度センサにより検出された加速度からトラバース方向の加速度成分を算出し、得られた加速度成分が所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する、
請求項5記載の車載用光ディスク装置。
【請求項7】
前記複数の加速度センサは、
トラバース方向を含む同一平面内の互いに垂直な方向の加速度を検出する2つの加速度センサである、
請求項6記載の車載用光ディスク装置。
【請求項8】
光ディスクに情報の読み書きを行う光ピックアップと、
前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させるトラバース機構と、
車両に加わる遠心力を算出する遠心力算出部と、
当該装置の非通電時に、前記遠心力算出部により算出された遠心力が所定方向に所定値以上の場合、前記光ピックアップを内周方向に移動させるよう、前記トラバース機構を制御する制御部と、
を有する車載用光ディスク装置。
【請求項9】
前記遠心力算出部は、
ステアリングの操作角度および車両の走行速度からトラバース方向の遠心力を算出する、
請求項8記載の車載用光ディスク装置。
【請求項10】
前記トラバース機構は、
ステッピングモータにより前記光ピックアップをディスク半径方向に移動させる、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の車載用光ディスク装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−210302(P2011−210302A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75264(P2010−75264)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】