説明

車載用温度調節装置

【課題】アイドリングストップにより資源浪費や環境汚染を抑制するとともに、冷却あるいは加温された空気を吹き出す冷凍ユニットの車内への取り付けを容易におこない、運転席後部の仮眠用キャビンだけでなく、運転席をも選択的に冷却あるいは加温することができる車載用温度調節装置を提供する。
【解決手段】蓄電池5により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結した冷凍サイクルにおける蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路と戻り風路とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに、圧縮機と凝縮器と放熱ファンとを機械室内に配設した冷凍ユニット(2)を運転席(3)後部の仮眠用キャビン(4)内に取り付け、蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記運転席または仮眠用キャビン内、あるいはその双方に吹き出して温度調節するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの運転台における仮眠用キャビンなどに設置して冷却あるいは加温された空気を吹き出す車載用温度調節装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックなどの自動車の運転台においては、キャビン内に睡眠をとるためのベッドルームが設けられており、長距離輸送など場合には、この仮眠用キャビン内に随時横になって休息や睡眠ができるように構成されている。睡眠をとる場合、季節や地域によって温度や湿度条件が異なるため、寝具は厚手の断熱性の高いものや薄手の吸湿性の高い物を使用するなどして調節し、さらに、夏場における高温多湿の熱帯夜などにおいては、カーエアコンを運転して室内を空調することで快眠を確保してきた。
【0003】
上記においては、年間を通した寝具の調整が煩雑であるとともに、カーエアコンの運転による部屋全体の空調では、大きな電力消費量となり、さらに、アイドリング運転が必要となって、電力消費のみでなく、膨大な炭酸ガスの排出にともなう地球温暖化への影響が大きいものである。
【0004】
このことから、自動車のアイドリングストップは炭酸ガス削減のための可能な施策として近年大きく叫ばれており、アイドリングストップ対応冷却装置として、運転中に保冷剤を冷却しておき、エンジン停止後は保冷剤による冷却をおこなうようにしたものがあるが、この保冷剤による方法では結露により湿度が高くなってしまうため、快適な雰囲気を設けることができなかったものであり、その他の方策についても目に見える成果が上がっておらず、大きな環境問題となっているのが現実である。
【0005】
一方、図12に示すように、内部に人間(A)が横たわる空間(54)を形成した寝袋(56)内に、熱交換器(65)と送風装置(70)とを有する空気調和装置(51)からの空気を循環させることで前記空間内を冷房するようにし、これにより、冷凍機自体を小電力で作動させることで、エネルギー資源の浪費や環境汚染を抑えるようにした構成が特許文献1に示されている。
【0006】
また、図13に示す特許文献2には、水平に平坦に延びるマット(76)の長手方向の一端部に、熱交換器を備えて熱交換空気を供給し、供給された空気が通気性マット内(77)を流動して人間(A)に対して快適な感覚が得られるようにした空気循環式マット(71)の構造が記載されている。
【特許文献1】特開2007−098044号公報
【特許文献2】特開2007−105084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の寝袋や特許文献2に記載のマット装置をトラックなどの車体に設置するに際しては、狭いキャビン空間に寝袋やマットとともに空調装置を据え付けねばならず、設置構成および据え付け作業がきわめて困難となり、また排気や結露水の処理、さらには外部からの騒音や熱の侵入を防ぐ構成が必要となるなど多くの解決すべき問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、アイドリングストップにより資源浪費や環境汚染を抑制するとともに、冷却あるいは加温された空気を吹き出す冷凍ユニットの車内への取り付けを容易におこない、運転席後部の仮眠用キャビンだけでなく、運転席をも選択的に冷却あるいは加温することができる車載用温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の車載用温度調節装置は、蓄電池により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結した冷凍サイクルにおける前記蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路と戻り風路とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに前記圧縮機と凝縮器とこれらを冷却する放熱ファンとを機械室内に配設した冷凍ユニットを運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、前記蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記運転席または仮眠用キャビン内、あるいはその双方に吹き出して温度調節するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仮眠中はエンジンを停止した状態で快眠を得ることができるとともに、後部キャビンに限らず、運転席をも選択的に冷却あるいは加温することができ、短時間の休息や仮眠であれば人間が後部キャビン内に移動することなく、運転席でも容易に快適な雰囲気を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は、本発明の車載用温度調節装置(1)を搭載したトラック前部の側面図、図2はその平面図であって、前記車載用温度調節装置(1)は、仮眠室として使用される運転席(3)の後部キャビン(4)に設置された冷凍ユニット(2)と、この冷凍ユニット(2)を駆動する蓄電池(5)から形成されている。
【0012】
後部キャビン(4)には、助手席側の後部位置の外壁に沿って前記冷凍ユニット(2)を配設し、この冷凍ユニット(2)に対して車体の幅方向が長手方向となるように、使用者(A)が横臥するためのマット(6)を設置している。
【0013】
前記蓄電池(5)は、トラック用の蓄電池とは別に冷凍ユニット(2)の駆動電源用として専用に設けられており、自動車エンジンの駆動時に充電されるものであって、後部キャビン(4)外の車体下部に配設している。
【0014】
前記冷凍ユニット(2)は、正面図である図3、この図3の前面を破断して示す図4、および図3の側断面図である図5に示すように、薄鋼板製の外板(7)で箱体状の外郭を形成し、高さ方向のほぼ中央部を断熱仕切壁(8a)で上下の空間に区分されているとともに、前記後部キャビン(4)の床面である車体底板(4a)の上部に架台(9)を介してボルト固定されている。
【0015】
前記外板(7)の底部を形成する剛体の底板(7a)上には、冷凍サイクル(11)の一環をなす冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(12)と、吐出された高温高圧の冷媒を受けて放熱し凝縮する凝縮器(13)およびこれら圧縮機(12)や凝縮器(13)などの高温部品を冷却する放熱ファン(16)を設置し、機械室(10)としている。
【0016】
前記冷凍サイクル(11)は、図6に示すように、前記圧縮機(12)、凝縮器(13)、減圧器である毛細管(14)、蒸発器(15)を環状に連結し、前記圧縮機(12)の上流側と下流側とを連結するように四方弁(17)を設けることにより冷媒流路を切り換えて前記蒸発器(15)を冷暖切り換え可能な熱交換器とした蒸気圧縮式であり、前記蓄電池(5)により圧縮機(12)を駆動させることで冷媒を循環し、蒸発器(15)で蒸発させることによって冷気を生成し、あるいは、前記四方弁(17)により冷媒流路を切り換え、蒸発器(15)で凝縮作用をおこなわせることで蒸発器(15)を高温側の熱交換器とし、暖気を生成するものである。
【0017】
前記機械室(10)内における重量物である圧縮機(12)は、底板(7a)上の幅方向の一側に片寄らせ、振動吸収用のクッション体を介して固定しており、蛇行曲げした冷媒管を多数のフィンに嵌入させて奥行き寸法を薄くした直方体状の凝縮器(13)は、面積の大きなその前面を外板(7)の前面に形成した吸込み開口(7b)に沿わせて立設させ、この吸込み開口(7b)と凝縮器(13)との間には埃などを遮蔽するためにフィルター(18)を設けている。
【0018】
機械室(10)部の平面図である図7に示すように、凝縮器(13)の背面には軸流ファンからなる前記放熱ファン(16)を配置し、冷却運転する際には、前記圧縮機(12)と放熱ファン(16)とを同期して駆動するものであり、外気を吸込み開口(7b)から内部に吸引して高温となる凝縮器(13)を冷却し、熱交換した空気を外板(7)の底面に形成した排気口(7c)からユニット外部に放出するようにしている。このとき、圧縮機(12)は機械室(10)内の側部に位置していることから放熱ファン(16)による冷却作用を直接受けにくく、過冷却による蒸発温度の低下を防ぐとともに、偏倚している分奥行き方向で放熱ファン(16)と圧縮機(12)とが重ならないように配置することで、機械室(10)の奥行き寸法の短縮化をはかっている。
【0019】
前記断熱仕切壁(8a)から上部の空間は、上面を含む全周壁を発泡スチロールなどの断熱壁(8)により断熱空間として冷却空気あるいは加温空気を生成する温調室(19)とし、そのほぼ中央部には、冷凍サイクル(11)の一部であって冷却運転時には前記凝縮器(13)からの冷媒を受けてこれを蒸発させることで、低温化し冷気を生成する蒸発器(15)を立設状態で配置している。
【0020】
この蒸発器(15)も前記凝縮器(13)と同様に、蛇行曲げした冷媒管と冷媒管に嵌着した多数のフィンとから奥行き寸法を薄くした直方体をなしており、その背部にはこの蒸発器(15)の幅寸法より幅狭の直径としたシロッコファンからなる送風ファン(20)およびケーシング(21)を断熱仕切壁(8a)の平面部位に前記蒸発器(15)に併置して立設している。
【0021】
蒸発器(15)を載置している前記断熱仕切壁(8a)の上面は、一側に向かって下方傾斜させて低温化した蒸発器(15)に付着する霜の融解水を受ける樋部(22)を形成しており、樋部(22)で集めた水を排水管(22a)に導き、下方の機械室(10)内を経由して前記排気口(7c)から外部に排出している。
【0022】
前記温調室(19)の一側壁を形成する断熱側壁(8b)における蒸発器(15)の立設位置のやや前方に位置する壁上部には、温度調節の対象物である前記後部キャビン(4)内の空気を温調室(19)内に吸引する戻り風路(23)を開口させており、送風ファン(20)のケーシング(21)からは冷風を後部キャビン(4)へ吹き出す吹き出し風路(24)を開口させている。
【0023】
そして、前記戻り風路(23)の一部には、温度センサー(27)を配設している。この温度センサー(27)は、後部キャビン(4)内を循環して戻ってきた空気温度を検知し、冷凍ユニット(2)における圧縮機(12)の運転を制御することで、使用者の希望する温度に冷却あるいは加温された空気を後部キャビン(4)内に供給するようにしており、外気との熱漏洩による負荷変動を検出して後部キャビン(4)内を常に快適な温度状態にコントロールするものである。
【0024】
また、前記温調室(19)の上面の断熱壁(8)の上部は、基板など電気部品収納部(28)とし、その前面には操作パネル(29)を配置して冷凍ユニット(2)の運転を制御操作する。そして、例えば、冷却運転する場合には、冷凍ユニット(2)における冷凍サイクル(11)の四方弁(17)により、圧縮機(12)からの冷媒を凝縮器(13)に吐出し、蒸発器(15)で蒸発するように流路制御することで温度調節された冷気を生成し、この冷気を送風ファン(20)によって吹き出し風路(24)から後部キャビン(4)内に送風して仮眠空間を冷却し、戻り風路(23)を介して温調室(19)内の蒸発器(15)に戻す循環をおこなうことで、高能力で高効率の冷却運転とともに温度調節をおこなうものである。また、加温運転の場合は、四方弁(17)により蒸発器(15)を凝縮側にして高温化し、熱交換によって循環空気を加温して後部キャビン(4)に吹き出すようにする。
【0025】
前記四方弁(17)の採用により、仮眠空間は冷却と加温の双方の温度調節効果を得ることができるが、冷却作用のみで使用する場合は、前記四方弁(17)を除去した冷凍サイクルにすればよい。
【0026】
以上のように構成された冷凍ユニット(2)は、前記のごとく、架台(9)を介して車体底板(4a)にボルト固定されている。前記冷凍ユニット(2)の底部に形成した前記排気口(7c)に対向する車体の底板(4a)には開口を穿設し、この開口と前記排気口(7c)に亙るように、角筒状の排気ダクト(30)を設置しており、排気ダクト(30)の下方側は前記車体底板(2a)の開口に嵌合させて所定寸法を車体底板(2a)の下面より下方に突出させて固定している。
【0027】
前記排気ダクト(30)は、架台(9)と車体底板(4a)との間に設置するようにしたので、機械室(10)からの排気は最短距離で車外に排出させることができるとともに、排気ダクト(30)のための別のスペースを要することなくキャビン空間をより効率よく活用することができる。
【0028】
なお、前記排気ダクト(30)の内部中央には、上下の連通路を開閉するダンパー(31)を設けている。このダンパー(31)は、回転動作により排気ダクト(30)内の連通路を開放あるいは閉塞するものであり、冷凍ユニット(2)を駆動した場合には、手動操作、あるいは、前記操作パネル(29)のボタン操作に応じて電気的に回転させて自動的に連通路を開放し、上方の機械室(10)の空気を車外に排気できるように構成し、駆動させないときは、連通路を閉塞することにより、走行中に車外から侵入する騒音を遮断することができ、特に、冷凍ユニット(2)がエンジンルームの上部などに設置される場合には、遮熱効果も奏することができる。
【0029】
上記の構成により、後部キャビン(4)には、操作パネル(29)による使用者の設定に基づき、専用の蓄電池(5)で駆動される冷凍ユニット(2)によって温度調節された冷却あるいは加温空気が供給されるので、様々な使用環境条件下においても常に快適な睡眠空間を提供でき、またアイドリングをストップすることで炭酸ガスの排出量も大きく抑制できる効果を奏する。
【0030】
そして、冷凍ユニット(1)を駆動した際の排気を車外に排出できるので、車内に熱がこもることがなく、また、狭い後部キャビン(4)内においても排気ダクト(33)や冷凍ユニット(1)を容易に設置でき、外部からの騒音や雨水などの侵入も抑制することができる。
【0031】
また、冷凍ユニット(2)の機械室(10)は、運転時における圧縮機(12)や凝縮器(13)の発熱によって温度上昇するため、熱伝導で後部キャビン(4)も室内温度が上昇し、冷却作用で使用している場合、その冷却効果を阻害することになるので、本実施例においては、図8に示すように、冷凍ユニット(2)の周囲を断熱性のある遮蔽幕(32)で覆うようにしており、この遮蔽幕(32)によって、冷凍ユニット(2)と運転席(3)や仮眠用のキャビン(4)部分とを断熱区画し仕切ることにより熱伝導が遮断され、仮眠空間を効果的に冷却することができる。
【0032】
間仕切りとなる前記断熱性のある遮蔽幕(32)は、通常、遮音効果も有するものであり、この場合には、冷却ユニット(2)の駆動時の運転音についても遮断できることになり、より快適な睡眠環境を得ることができる。
【0033】
なお、前記遮蔽幕(32)は、間仕切りとして存在することにより、カーテン状の薄幕でもある程度の遮熱効果を有するものであり、特に大きな断熱力を有するものでなくてもよい。また、後部キャビン(4)の内壁面とは面ファスナーなどによって固着するようにすれば、隙間を少なくして遮熱や遮音効果を上げることができるとともに、開け閉めや取り外し作業も容易におこなうことができるものである。
【0034】
また、図9に示すように、前記冷凍ユニット(2)の温調室(19)からの吹き出し風路(24)に冷風あるいは暖風を送流する送気ダクトである延長ダクト(26)を接続し、後部キャビン(4)の天井部空間を経て運転席(3)の上部まで延設させ、その端部には風向き調整装置であるルーバー(33)を設け、吹き出し方向を変更することで、蒸発器(15)で熱交換された冷風あるいは暖風を運転席(3)の空間まで供給するようにしてもよい。
【0035】
このとき、前記延長ダクト(26)は柔軟に屈曲できる形状、例えば、軟質樹脂材で形成したチューブにスパイラル状の芯材を設けたものや蛇腹状の筒体など可撓性とともに断熱性を備えた材料でその長さ寸法を調整できるように形成し、前記遮蔽幕(32)に透孔(34)を穿設してこれに延長ダクト(26)を挿通させ、キャビン内に引き出してスポット的に冷風あるいは暖風を吹き出すようにする。
【0036】
なお、前記ルーバー(33)は、手動でその風向きを変更するようにしてもよいが、赤外線センサーなどで人の位置を検知し、自動的に、例えば、リクライニングの角度に応じた位置に冷風を送風するように調整するようにしてもよい。
【0037】
また、冷却あるいは加温された空気が供給される前記後部キャビン(4)は、比較的狭いスペースであることから、その周壁の断熱性を向上させれば、熱漏洩が少なくなって内部の温度変動を小さくできるとともに、少ない消費電力でより効率的に冷却あるいは加温効果を得ることができるものであり、前記図8に示すように、運転席(3)との間についても断熱性の高いカーテンなどの断熱幕(25)で仕切ってもよく、この場合は、前記遮蔽幕(32)の一部を兼ねることができ、運転席(3)と助手席(3′)との間にも同様の断熱幕(25′)を着脱可能に設けるようにすると仮眠空間の断熱性がより向上し、効果的な冷却あるいは加温をおこなうことができるとともに、運転席(3)を含むキャビン全体の冷却あるいは加温能力を必要とせず、最小限の電力消費量となって経済的である。
【0038】
このとき、図10に示すように、前記延長ダクト(26)とは別個の送気手段、例えば、前記温調室(19)の吹き出し風路(24)から分岐して直接後部キャビン(4)内にその端部を開口させた第2のダクト(34)を設けることで、冷却ユニット(2)の運転時には、延長ダクト(26)によって運転席(3)を冷却するとともに、第2のダクト(34)によって後部キャビン(4)冷却することができる。そして、後部キャビン(4)内を循環した冷風は、前記横臥マット(6)内に引き込み、マット(6)の外表面近傍の戻りダクト(35)を通過させながら戻り風路(23)に戻すようにしてもよいものである。
【0039】
なお、前記吹き出し風路(24)からの分岐部には、風路の切り替え開閉手段である切替ダンパー(36)を設けている。この切替ダンパー(36)は、バッフル板をステッピングモータなどの回動によって所定の位置に停止させることで、延長ダクト(26)と第2のダクト(34)のいずれか一方の風路に冷風を送流したり、双方の風路に流す制御が容易にできるものであり、これにより吹き出し位置を容易に変更したり選択でき、使い勝手が向上する。
【0040】
前記実施例構成に限らず、延長ダクト(26)あるいは第2のダクト(34)などの送気ダクトの端部は、図11に示す運転席(3)の座席シート(37)、またはこの座席シートに着脱可能に設けられる座席用マット(38)、あるいは、前記図10に示した後部キャビン(4)に設けられる仮眠用の横臥マット(6)まで延設させ接続するようにしてもよいことは言うまでもなく、また、特に図示しないが、前記送気ダクトを温調室(19)の吹き出し風路(24)と戻り風路(23)の双方に結合して、双方の端部を後部キャビン(4)に設けた空気循環式の寝具に延設し、冷凍ユニット(2)によって温度調節した冷風、あるいは暖風を前記空気循環式の寝具内に送風して循環させることにより、前記寝具内を快適な温度雰囲気に設定するようにしてもよい。
【0041】
次いで、これを運転席の前記座席用マット(38)に採用した例を図11に示す。座席マット(38)は、少なくともその外表面近傍に微少な透孔(39)を多数穿設するなどして、人がもたれても内部の通風路(40)との通気性を有するように形成し、延長ダクト(26)より吹き出した冷風が前記マット(38)の外表面近傍を通過し人体(A)に接触して流れるようにしたり、天井部への分岐風路(41)から運転席(3)に吹き出すように構成すれば、全身で冷風を感じることができ、暖風を供給した場合には、周囲から暖かさを感じることによりさらに快適な環境を得ることができる。そして、運転席(3)に流入した冷風は、戻りダクト(42)に吸い込まれ、前記戻り風路(23)から温調室(19)に戻るものである。
【0042】
上記実施例では、前記座席シート(37)や座席用マット(38)、横臥マット(6)の外表面近傍に通気性を有する構成としたが、前記シートやマットは、内部空間に通気性を有する構成であればよく、多孔質材料や繊維により形成することもできるものであり、これらのマットを通気性を有するカバーで覆うようにしてもよい。
【0043】
上記構成により、後部キャビン(4)に限らず、運転席(3)や助手席(3′)をも選択的に冷却あるいは加温することができ、短時間の休息や仮眠であれば人間が後部キャビン(4)内に移動する必要がなく、エンジンを切った状態で運転席(3)でも容易に快適な雰囲気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の1実施形態の車載用温度調節装置を設けたトラックの側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1における冷凍ユニットの正面からの設置状態図である。
【図4】図3の前面を破断した正面図である。
【図5】図4の側断面図である。
【図6】図3に配設した冷凍サイクルの概略構成図である。
【図7】図3における機械室の平面図である。
【図8】本発明の他の実施例を示す図2と同一部分の平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施例を示す図1と同一部分の側面図である。
【図10】複数の送気手段を設けた本発明の他の実施例を示すキャビン背面図である。
【図11】本発明を座席用マットに採用した実施例を示す側断面図である。
【図12】本発明の従来例の寝袋を示す断面図である。
【図13】本発明のさらに他の従来例を示す空気循環式マットの断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車載用温度調節装置 2 冷凍ユニット 3 運転席
4 後部キャビン 4a 車体底板 5 蓄電池
6 横臥マット 7 外板 7a 底板
7b 吸込み開口 7c 排気口 8 断熱壁
8a 断熱仕切壁 8b 断熱側壁 9 架台
10 機械室 11 冷凍サイクル 12 圧縮機
13 凝縮器 15 蒸発器 16 放熱ファン
17 四方弁 18 フィルター 19 温調室
20 送風ファン 22 樋部 23 戻り風路
24 吹き出し風路 25、25′ 断熱幕 26 延長ダクト
27 温度センサー 28 電気部品収納部 29 操作パネル
30 排気ダクト 31 ダンパー 32 遮蔽幕
33 ルーバー 34 第2のダクト 35、42 戻りダクト
36 切替ダンパー 37 座席シート 38 座席用マット
39 透孔 40 通風路 41 分岐風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結した冷凍サイクルにおける前記蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路と戻り風路とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに前記圧縮機と凝縮器とこれらを冷却する放熱ファンとを機械室内に配設した冷凍ユニットを運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、前記蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記運転席または仮眠用キャビン内、あるいはその双方に吹き出して温度調節するように構成したことを特徴とする車載用温度調節装置。
【請求項2】
圧縮機の駆動時に生じる排気を車外に排出する手段を設けるとともに、温調室内の吹き出し風路あるいは戻り風路の少なくとも一方に送気ダクトを接続したことを特徴とする請求項1記載の車載用温度調節装置。
【請求項3】
送気ダクトは、運転席まで供給可能な延長ダクトであることを特徴とする請求項2記載の車載用温度調節装置。
【請求項4】
送気ダクトは、キャビン天井部空間に延設し、端部に風向き調節装置を設けたことを特徴とする請求項2記載の車載用温度調節装置。
【請求項5】
風向き調節装置を人間の位置検出手段によって制御するようにしたことを特徴とする請求項4記載の車載用温度調節装置。
【請求項6】
送気ダクトとともにこの送気ダクトとは別個の送気手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の車載用温度調節装置。
【請求項7】
送気ダクトとこの送気ダクトとは別個の送気手段との分岐部に風向きを切り替えるダンパーを配置したことを特徴とする請求項6記載の車載用温度調節装置。
【請求項8】
送気ダクトの他端は、運転席の座席シート、またはこの座席シートに着脱可能に設けられる座席マット、あるいは仮眠用キャビンに設けられる仮眠用の横臥マット部まで延設させたことを特徴とする請求項2記載の車載用温度調節装置。
【請求項9】
座席シート、または座席マット、あるいは横臥マットの少なくともそれらの外表面近傍の通気性をよくし送気ダクトよりの通風が得られるようにしたことを特徴とする請求項8記載の車載用温度調節装置。
【請求項10】
圧縮機の駆動時に生じる排気を車外に排出する手段を設けるとともに、仮眠用キャビン内に取り付けられた冷凍ユニットを間仕切りで覆い仮眠用キャビンと区画したことを特徴とする請求項1記載の車載用温度調節装置。
【請求項11】
運転席と仮眠用キャビンとの間を間仕切りで区画したことを特徴とする請求項1記載の車載用温度調節装置。
【請求項12】
間仕切りは、断熱性または遮音性、あるいはそれら双方の性能を有する幕で形成したことを特徴とする請求項10または11記載の車載用温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−132370(P2009−132370A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229394(P2008−229394)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】