説明

車載用電子制御装置

【課題】放熱性を維持しつつ、電子部品の実装率を向上し、製品の小型化,軽量化を実現することができる車載用電子制御装置を提供する。
【解決手段】発熱部品3と、セラミック材料から成る非発熱部品4とを実装する電子回路基板2と、前記電子回路基板2を内蔵する筐体1と、前記回路基板2と前記筐体間を熱的に接続する伝熱材料6から構成し、前記回路基板2の一面には発熱部品3を実装し、前記回路基板2の他面の前記発熱部品3の実装位置と対称位置に前記非発熱部品4を実装し、前記非発熱部品4を前記伝熱材料6と熱的に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用電子制御装置の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車載用電子制御装置には、小型化・軽量化が求められている一方で、装置の高機能化・高速化に伴って、発熱量が増大している。さらに、装置の搭載位置がエンジンルーム内となり、製品環境温度も高くなっている。これらの背景から、車載用電子制御装置の放熱性と小型化・軽量化を両立させることが課題となっている。
【0003】
電子制御装置の小型化要求を満たす為に、実装部品の両面実装や高密度実装が進められている。両面実装回路基板の放熱性向上方法として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−115681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放熱性を向上させるには、発熱部品の熱を外界へ速やかに伝える必要がある。この為に、従来の放熱構造では、発熱部品から製品筐体間に介在する部材はできるだけ少なくし、また介在する部材の熱伝導率はできるだけ大きくすることで、放熱性を向上させている。また、従来構造では、発熱部品から製品筐体間に介在する部材を少なくする為に、発熱部品の裏面には電子部品を実装しない方式を採用することが多い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、電子制御装置の放熱性と小型化を両立させる為に、電子部品、特にセラミック系の電子部品に着目した。これらセラミック系電子部品を回路部品として使用すると同時に、放熱部材としても使用するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、車載用電子制御装置の放熱性と小型化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例を示す断面図。
【図2】従来の放熱構造を示す断面図。
【図3】第2の実施例。
【図4】第3の実施例。
【図5】第4の実施例。
【図6】第1の実施例の平面図。
【図7】回路基板のサーマルビア部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明を実施するための実施形態として、回路基板の一面に発熱部品を実装し、回路基板の他面の発熱部品と対称位置にセラミック部品を実装する。セラミックはアルミナ等を主成分とする材料であり、一般に熱伝導率は樹脂材料よりも優れる為、樹脂材料を主とするトランジスタやICを実装する場合に比べて、発熱部品から製品筐体への熱伝導を向上できる。つまり、セラミック部品を、熱伝導材料として利用することで、放熱性の向上,制御装置の小型化、および、熱伝導材料の使用量の低減およびコスト低減を図ることができる。
【0010】
他の実施形態としては、発熱部品の熱を効率良く、回路基板の一面から他面に伝えるためのビアの配置に関する発明である。これらビアをセラミック部品の電極の間に配置することで、セラミック部品の実装密度をより大きくでき、回路基板および製品の小型化に効果的である。
【0011】
更に他の実施形態としては、セラミック材料からなる非発熱部品の実装範囲を発熱部品と回路基板を挟んだ対称位置とすることで、効率よく発熱部品の熱を受取り、放熱部材および製品筐体へ伝熱する。
【0012】
以上の実施形態によれば、電子制御装置の回路を構成するセラミック部品類を熱伝達部材として兼用することで、従来では電子部品を実装しなかった範囲にも電子部品を実装可能とでき、小型化を図ることができる。
【0013】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の第一の実施例を示す断面図である。
【0015】
本実施例の構成をまず説明する。
【0016】
電子制御装置100は、製品筐体1,回路基板2,発熱部品3,セラミックコンデンサ4,その他電子部品(セラミック抵抗等)5から成っている。発熱部品3,セラミックコンデンサ4,その他電子部品5ははんだによって回路基板2に接続されている。発熱部品3には、ヒートシンク3aが設けられ、回路基板2と熱的に接続された構成となっている。この接続にははんだを用いるのが一般的である。また、回路基板2には、発熱部品3の直下に位置する箇所に、サーマルビア2aを設け、発熱部品3から製品筐体1への放熱性の改善構造が設けられている。
【0017】
回路基板2にはプリント基板,フレキシブル基板,セラミック基板等の形態があり、本実施例は何れの場合にも有効であるが、本実施例の効果をより有効に利用するには、回路基板自体の熱伝導率も良好であることが好ましい為、セラミック基板やサーマルビア付きのプリント基板において、より有効である。以降では、プリント基板を例に説明する。
【0018】
発熱部品3とセラミックコンデンサ4は回路基板2を挟んで、対称位置に実装されている。図1の断面図では2個のセラミックコンデンサを示しているが、実装する個数は2個に限る訳ではなく、発熱部品が大きい場合には3個以上でもよく、また、発熱部品が小さい場合には1個でもよい。少なくともヒートシンク3aの全面を占めるように配置することが好ましい。図7の平面図では、8個の例を示す。尚、図7ではサーマルビアの図示を省略した。
【0019】
セラミックコンデンサ4と、製品筐体1の間には熱伝導材料6が設けられている。熱伝導材料6は、シリコーン系の樹脂にアルミナ粉末を混ぜたグリース,接着剤、またはシート状の材料が一般的である。実装数量が多い場合や、セラミックコンデンサ4同士の間隔が小さい場合には、接着剤またはグリースを用いて、部品の隙間に十分に流れ込むようにする。実装するセラミックコンデンサの数量が少ない場合や、セラミックコンデンサ同士の間隔が大きい場合にはシート材料でもよい。
【0020】
製品筐体1はアルミダイカストやプレス加工されたアルミ板のように放熱性に優れる材料を用いることが好ましい。製品筐体1の内部には小突起1aを設けてあり、熱伝導材料6の移動,流出を予防する壁を形成している。このような壁は、グリースのように硬化しない材料を用いる場合や、硬化前の接着剤の流出を防止するために有効である。尚、グリースのように流動体を囲う場合には、小突起1aは閉形状を成している(図6参照)。熱伝導材料6にシート材料を用いる場合でも、振動などによる位置ズレを防止する為に小突起1aを設けていても良い。
【0021】
製品筐体1には、筐体の強度を確保する為にリブを設けることが多く、これらリブの配置を工夫することで、新たに小突起1aを設ける必要は無くなる。
【0022】
回路基板2全体は、製品筐体1の両端に設けた突起部で筐体に固定されている。固定には図示していないが、ねじで固定する方法が一般的である。以降の実施例においても、回路基板全体の固定方法は同一である。
【0023】
従来の放熱構造を図2に示す。従来構造では、発熱部品3から製品筐体1までの放熱経路を短くする構造である。放熱経路を短くする為に、経路中の部材を少なく、薄くしている。この結果、回路基板2の一面に発熱部品3を実装した場合は、回路基板2の他面の発熱部品3と対称位置には部品を実装せずに、回路基板2と製品筐体1を熱的に接触させる構造が一般的である。図2では、製品筐体1にボス1bを設け、熱伝導材料6bを介して回路基板2と製品筐体1を熱的に接続させている。従来構造では、放熱性の観点からは有効だが、部品の実装率の観点では効率が下がる。つまり回路基板の小型化や製品筐体の小型化に不利である。
【0024】
次に、本実施例の効果を説明する。
【0025】
図1に示す本実施例では、回路基板2を挟んで対称位置に発熱部品3とセラミックコンデンサ4を実装していることが特徴である。従来では電子部品を実装していなかった、発熱部品3の対称位置にセラミックコンデンサ4を載せることで実装率を向上している。セラミックコンデンサは様々な用途で電子制御装置で利用されており、これらセラミックコンデンサを発熱部品の対象位置に実装できれば、回路基板の小型化と製品筐体の小型化に有効である。
【0026】
実施例では、従来構造に比べて、放熱経路中にある部材としてセラミックコンデンサ4が増える。しかし、セラミックコンデンサの熱伝導率は従来の放熱構造で一般に利用されているシリコーン系の熱伝導材(1〜3W/mK)よりも優れる為、放熱経路全体での放熱性の低下は小さく、従来構造と同等の放熱性を確保できる。
【0027】
セラミックコンデンサの母材には幾つかの種類があるが、例えばチタン酸バリウムがある。チタン酸バリウムの熱伝導率は、6〜7W/mKであり、一般的なシリコーン系樹脂にアルミナ等を含有させた熱伝導材料(グリース,接着剤,シート等)の熱伝導率(1〜3W/mK)よりも優れており、熱伝導材としても期待できる。この結果、実装効率を向上しつつ、放熱性を維持することができ、回路基板2および電子制御装置100全体の小型化を図ることができる。また、製品筐体1のボス1bを無くす、または小さくできる為、製品筐体1の軽量化もできる。
【0028】
また、電子部品の高機能化,高速化に伴い、特にノイズ除去用のコンデンサは関連部品のできるだけ近くに実装することが望ましく、セラミックコンデンサを対象部品と回路基板を挟んで対象位置に実装することは、回路機能の性能を向上する上でも有効である。
【0029】
図7(a)〜(d)は発熱部品直下のサーマルビア2aの部分の断面図である。ヒートシンク3aとサーマルビア2aは、はんだ7によって接合されている。セラミックコンデンサ4とサーマルビア(またはビアと銅パターンで接続されている銅ランド)もはんだ7によって接合されている。これらはんだは電気的および熱的な導通の機能を持つ。尚、サーマルビア2bは一つのセラミックコンデンサの電極間に設けたサーマルビアであり、サーマルビア2cは異なるセラミックコンデンサの電極間に設けたサーマルビアである。
【0030】
セラミックコンデンサ4を回路的に接続する場合は、例えばグランド側のみをサーマルビア2aと接続することができる。図7(b)は、2列のセラミックコンデンサ列の隣り合う電極を同電位電極とし、発熱部品の熱をこれら電極へ導くためのパターン構成を示す例である。他方の電極はギャップ2gによってサーマルビア2bから切離されている。図7(b)では内側の電極を同電位に、図7(c)では外側の電極を同電位になるように銅ランドを配置している。図7(c)の例の様に、外列を同電位とするには、異電位に保つ必要のある電極と接続されたサーマルビア周囲をレジスト膜等(図示せず)によって覆うことで電気的に接続されることを防止できる。
【0031】
図7(d)は3列のコンデンサ列の例である。ヒートシンク3aおよびセラミックコンデンサ4がはんだ7によって回路基板2に接合されている構造は同じである。異電位に保つ必要のある電極を独立させ、さらにレジスト膜等で周囲を覆うことで、電気的に接続されることを防止できる。
【0032】
図7(b)〜(d)に示す様に、サーマルビアを独立させたり、レジスト等で覆うためには、サーマルビア径は使用するセラミックコンデンサの長さの1/2以下であることが好ましい。特に、サーマルビア2bをセラミックコンデンサ4の電極間に配置することで、ビア配置によるデッドスペースを削減できる。
【0033】
尚、実装するセラミックコンデンサは、必ずしも回路的に他部品と接続されている必要はなく、単に回路基板2と熱伝導材料6を熱的に接続する部材として使用することもできる。図7(a)はこのような例である。セラミックコンデンサを回路的に接続しない場合は、サーマルビア2の周囲の銅ランドをベタパターンとし、セラミックコンデンサ4の電極をはんだ等の接合材料によって接続し、熱をセラミックコンデンサへ導くこともできる。回路基板のサーマルビア径をセラミックコンデンサの電極間の寸法以下として、セラミックコンデンサの電極間に設置することでより実装効率を向上できる。
【0034】
本実施例ではサーマルビアとして貫通スルーホールを示しているが、これに限定されるものではなく、例えばビルドアップタイプのビアであっても良い。また、セラミック部材にはセラミック抵抗を用いることもできる。
【0035】
また、発熱部品の熱を効果的に筐体へ伝達するには、セラミック部品はヒートシンクの範囲内にあることが望ましいが、パターン配線の制約等によって直下への配置が困難な場合は、ヒートシンク外周にあってもよい。
【0036】
実装するセラミックコンデンサが回路的に他部品と接続されている場合に限らず、セラミックコンデンサやはんだ接続部への過度な応力による破損や接続寿命の低下を防ぐ為に、熱伝導材料6にはグリースやシート材料の様に柔らかい材料を使うことが好ましい。グリースやシート材料を使うことで、加熱硬化が不要となり、生産性の向上を図ることもできる。さらに、接着する場合には比べて解体も容易となり、リサイクル性も向上することができる。
【実施例2】
【0037】
図3は第2の実施例を示す断面図である。
【0038】
本実施例では、第1の実施例に加えて、発熱部品3の反対面の対称位置に実装するセラミックコンデンサ4周囲に、製品筐体1と回路基板2を熱的に接続する為のボス1cを設けてある。さらに、このボス1cの上面には熱伝導接着剤6cが塗布されており、回路基板2と熱的に接着・固定されている。この為、回路基板2と製品筐体1間の固定箇所を増やすことができ、回路基板2および製品全体の耐振性を向上することができる。本実施例は、耐振性が必要な製品環境においてより有効である。
【0039】
本実施例では、製品筐体1に設けるボス1cがグリースや接着剤の流出を防止する為、第1の実施例で示した小突起1aを設ける必要はない。しかし、セラミックコンデンサ4からの熱を製品筐体1へ伝達する為の熱伝達材料6の使用範囲および使用量を制限して材料コストを低減する場合や、シート状材料の振動による位置ずれを防ぐ為には、小突起1aを残しておくことが有効である。
【0040】
サーマルビア2a,セラミックコンデンサ4の配置の詳細は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0041】
図4は第3の実施例を示す断面図である。
【0042】
本実施例では、製品筐体の底面に凹みを設け、セラミックコンデンサ4の一部が凹み内に入る構造になっている。凹みの面積は、発熱部品直下のセラミックコンデンサ全数を収納できる面積としてある。深さはセラミックコンデンサのほぼ1/2が収まる深さである。深さを決める為にはセラミックコンデンサの高さばらつき、回路基板固定面の高さばらつき等を考慮する必要があり、この構造を採用するには、セラミックコンデンサの高さは1mm以上であることが好ましい。高さの凹みの底面にはグリース,接着剤、又はシート状の熱伝導材料6が備付けてある。本実施例は、製品全体の高さを低く抑えたい場合に有効である。
【0043】
サーマルビア2a,セラミックコンデンサ4の配置の詳細は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0044】
図5は第4の実施例を示す断面図である。
【0045】
本実施例は実施例2と実施例3を組み合わせた実施例であり、製品全体の耐振性の向上と薄型化を両立できる。サーマルビア2a,セラミックコンデンサ4の配置の詳細は実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0046】
1 製品筐体
1a 小突起
1b,1c ボス
2 回路基板
2a,2b,2c サーマルビア
2g ギャップ
3 発熱部品
3a ヒートシンク
4 セラミックコンデンサ
5 その他電子部品
6,6a,6b 熱伝導材料
7 はんだ
100 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、セラミック材料から成る非発熱部品とを実装する電子回路基板と、前記電子回路基板を内蔵する筐体と、前記回路基板と前記筐体間を熱的に接続する伝熱材料から成る車載用電子制御装置において、
前記回路基板の一面には発熱部品が実装されており、
前記回路基板の他面の前記発熱部品の実装位置と対称位置に前記非発熱部品を実装してあり、
前記非発熱部品は前記伝熱材料と熱的に接触していることを特徴とする車載用電子制御装置。
【請求項2】
前記セラミック材料から成る非発熱部品を前記回路基板に実装するための回路基板に設けた1組の電極ランド間には、導電および/または伝熱のためのビアを設けていることを特徴とする請求項1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項3】
前記セラミック材料から成る非発熱部品は、前記発熱部品の外形を前記回路基板へ投影した範囲内に実装されていることを特徴とする請求項1,2に記載の車載用電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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