説明

車輌用アース構造

【課題】 アース部での接触不良の発生を防止できる車輌用アース構造を提供する。
【解決手段】 一端部側に雄ネジ4を形成し他端部側にオス型タブ5を備えた接続端子3と、接続端子3と一体かした固定部材6とによって、オス側ハウジング7とともに車体のアース部材1に螺合して固定する。オス型タブ5を挿入するメス型タブ13を内部に立設固定したメス側ハウジング16をオス側ハウジング7に嵌合させることで、オス型タブ5とメス型タブ13とを確実に接触させることができ、車輌からの振動等によってオス型タブ5とメス型タブ13との接触不良が生じるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌のアース部材に固定される固定側アース端子部と負荷側に接続される負荷側アース端子部とを有する車輌用アース構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車輌における電気回路では、車体フレームやボディパネル等を接地部としたアース構造が用いられている。そのアース構造としては、例えば、特許文献1に記載されたアース端子の取付構造が提案されている。特許文献1に記載されたアース端子の取付構造を、本発明における従来例1として図15には、その取付前における分解斜視図を示している。
【0003】
図15に示すように、アース端子41の接続部42の先端側には、軸孔43の口縁から外周に開口するようにした所定幅の切欠溝44が形成されている。このアース端子41をボディ47に取り付けるボルト45には、その上端から少し下方の位置に、切欠溝44を通過可能とする縮径部46が形成されている。ボルト45を軸孔43に通して、ボディ47に形成したねじ孔48に締め込むことで、アース端子41をボディ47に固定することができる。
【0004】
また、取り外す場合には、ボルト45を所定量緩めて上動させると、切欠溝44の位置と縮径部46の位置とを対応させることができるので、電線49を持ってアース端子41を引っ張ると、切欠溝44を縮径部46から通過させることができる。これによって、ボルト45をボディ47から取外さなくても、アース端子41をボルト45から外すことができる構成となっている。
【0005】
しかし、この種のアース端子41の取付構造では、ボルト45の締め付け力が弱いと、ボルト45とボディ47との間に隙間が形成されてしまい、アース端子41がこの隙間内で自由に移動できるようになってしまう。このため、車輌からの振動や車輌の作動環境等の影響によって、アース端子41とボディ47との接触不良を生じてしまったり、アース端子41がボルト45から抜け出てしまうことになる。
【0006】
特に、アース端子41が大容量の電力を流す負荷に接続している場合に、このような接触不良やアース端子41が外れてしまうと、アースが行われなくなり火災を発生させたり、機器の誤動作を生じてしまったりする。また、作業車輌では、振動の影響が特に大きくなり、しかも、悪影響のでやすい環境で用いられることになるので、アース端子とボディとの接触不良が生じやすくなってしまう。
【0007】
また、従来から車輌におけるアース構造としては、例えば、特許文献2に記載された車輌用アース接続構造が提案されている。特許文献2に記載されたアース接続構造を、本発明における従来例2として、図16にはアース端子間の接続前の断面図を示している。
【0008】
特許文献2に記載されたアース接続構造では、車体51に固定された車体側アース端子52が、車体51と一緒に塗装されたときに、車体側アース端子52に塗装された塗装被膜を削り取りながらアース接続が行える構成を特徴としている。このため、タブ挿入空間53aの間口寸法t1が、タブ部52bのカチオン塗装被膜を含めた厚み寸法t2よりも狭い寸法に形成され、被膜削り部55として構成されている点に特徴を有している。
【0009】
しかし本発明との関係では、車体51に固定された車体側アース端子52の構成、及び車体側アース端子52のタブ部52bと負荷側アース端子53との接続構成が問題となるので、この点の構成に関して説明する。
【0010】
車体側アース端子52は、一端部側の溶接部52aが車体51に溶接固定され、他端部のタブ部52b が溶接部52a からL字クランク状に屈折した形状に構成されている。負荷側アース端子53のタブ圧接部54をタブ部52bに挿入圧接することで、負荷側アース端子53を車体51に導通させることができる。
【0011】
しかし、タブ部52bは車体51に対して片持ち支持された状態に構成されているため、タブ部52bは車体側からの振動の影響を受け易くなっている。特に、タブ部52bは細長く形成されているので、タブ部52bの先端部側は車体側からの振動を受けて大きく振動してしまうことになる。
【0012】
タブ部52bの先端部側が大きく振動すると、タブ部52bと圧接している負荷側アース端子53のタブ圧接部54との間で接触不良を起こしてしまったり、負荷側アース端子53がタブ部52bから外れてしまったりする。あるいは、タブ部52bと溶接部52aとの間で繰り返し発生する折れ曲りによって、タブ部52bが溶接部52aから取れてしまったりする。
【0013】
また、車体側アース端子52は溶接部52aにおいて車体51に固定されているが、溶接不良等があった場合には車体側アース端子52が車体51から外れてしまう事態が発生する。特に、作業車輌では、振動の影響が大きくしかも作業環境の影響を受け易いので、車体側アース端子と車体との溶接が取れてしまう事態も発生し易くなる。
【特許文献1】特開平9−199209号公報
【特許文献2】特開2005−108756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1、2に示すアース端子の取付構造やアース接続構造では、車体側のアース端子と負荷側のアース端子との接続状態が、振動等の影響や車体側のアース端子の取り付け不良等の影響で、接触不良を起こしてしまう危険性があった。特に、作業車輌において、特許文献1、2に示すアース端子の取付構造やアース接続構造を採用した場合には、車体側のアース端子と負荷側のアース端子との接触不良が起きてしまう危険性が高かった。
【0015】
特に、作業車輌においては、車体側のアース端子と車体との取付不良が発生しやすく、アース端子の接触不良に伴う火災の発生や危機の誤作動が生じ易くなるといった問題があった。
【0016】
本願発明では、従来技術において生じ易かったアース部での接触不良の発生を防止できる車輌用アース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明の課題は請求項1〜7に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明では、車輌のアース部材に固定される固定側アース端子部と負荷側に接続される負荷側アース端子部とを有し、負荷側アース端子部のメス型タブを固定側アース端子部のオス型タブに挿入結合させることで、双方のアース端子間が接続されてなる車輌用アース構造であって、
前記固定側アース端子部は、底面側に貫通孔を形成した凹状のオス側ハウジングと、一端部側に雄ネジが形成され、他端部側にオス型タブが形成された接続端子と、前記アース部材との間で前記オス側ハウジングと前記接続端子とを固定する固定部材と、を有し、前記負荷側アース端子部は、前記オス側ハウジングに嵌合する凹状のメス側ハウジングと、前記メス側ハウジング内に突出して収納固定され、前記オス型タブが挿入されるメス型タブと、を有し、
前記雄ネジは、前記貫通孔を介して前記オス側ハウジングから外部に突出して配設され、前記固定部材及び前記オス型タブは、前記オス側ハウジング内に配設され、前記メス型タブは、挿入された前記オス型タブを圧接するタブ圧接部が形成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0018】
また、本発明では、固定部材の構成を特定したことを主要な特徴となしている。
更に、本発明では、オス側ハウジングとメス側ハウジングとを係止する構成を備えてなることを主要な特徴となしている。
【0019】
更にまた、本発明では、固定部材とオス側ハウジングとの間に絶縁部材を配設した構成を主要な特徴となしている。
また、オス側ハウジングの周面形状とメス側ハウジングの周面形状とを特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0020】
本願発明では、固定側アース端子部の接続端子に形成した雄ネジを、車輌のアース部材に形成した雌ネジ部に螺合締結させることができる。これにより、接続端子を車輌のアース部材に確実に固定することができ、車輌側に発生する振動等によって接続端子が車輌のアース部材から外れることがない。従って、オス型タブは常に車輌のアース部材と導通状態にしておくことができるようになり、オス型タブに挿入圧接した負荷側アース端子部のメス型タブも、常に車輌のアース部材との導通状態が保持されることになる。
【0021】
また、本願発明では、オス型タブを取囲んでオス側ハウジングを配設することができ、オス側ハウジングを接続端子及び車輌のアース部材に固定することができる。しかも、メス型タブを収納固定したメス側ハウジングを、オス側ハウジングに嵌合させることができるので、負荷側アース端子部が固定側アース端子部から浮き上がった状態となることが防止でき、メス型タブとオス型タブとの挿入圧接状態を強固に維持しておくことができる。このため、本願発明の車輌用アース構造を、振動の影響が特に大きく、しかも、悪影響がでやすい環境で用いられる作業車輌に用いたとしても、メス型タブとオス型タブとの接触不良を生じさせることがない。
【0022】
従って、負荷側アース端子部が大容量の電力を流す負荷に接続している場合であったとしても、負荷側アース端子部と固定側アース端子部との間で接触不良が生じないので、火災の発生や機器の誤動作が生じてしまうのを確実に防止できる。
【0023】
接続端子の構成としては、ボルトの頭部にオス型タブを配設した構成とすることもできる。このとき、ボルトの頭部を固定部材として用いることができる。また、接続端子の一端部に形成した雄ネジを車輌のアース部材に形成した雌ネジ部に螺合締結し、オス側ハウジングの貫通孔を接続端子に通した後に、固定部材としてのナットを接続端子の雄ネジに螺合締結することができる。しかも、アース部材の雌ネジ部に螺合締結した雄ネジとナットとのダブルナット機構によって、接続端子及びオス側ハウジングをアース部材に対して強固に固定することができる。
【0024】
また、固定部材とオス側ハウジングと接続端子とを一体化して構成しておくこともできる。この場合、固定部材またはオス側ハウジングを回動させることで、雄ネジを介して一体化した固定側アース端子部をアース部材に対して強固に固定することができる。
【0025】
オス側ハウジングとメス側ハウジングとの間に両者を係止するロック機構を設けておくことにより、オス側ハウジングとメス側ハウジングとの嵌合状態をより強固にすることができ、メス型タブとオス型タブとの挿入圧接状態を強固に維持しておくことができる。
【0026】
固定部材とオス側ハウジングとの間に絶縁部材を介在させておくことにより、接続端子とオス側ハウジングとを電気的な絶縁状態にしておくことができる。このため、負荷側アース端子部から流れ込んで来る電力が大容量のものであったとしても、オス側ハウジングに大容量の電力が帯電したりすることがなくなる。
【0027】
また、オス側ハウジングに嵌合したメス側ハウジングが、オス側ハウジングに対して周方向に回動することができないようにしておくことにより、負荷側アース端子部に接続しているアース用の電線とメス側ハウジングのメス型タブとの間でねじれが発生せず、電線がメス型タブに対してねじ切れてしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の車輌用アース構造としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係わる固定側アース端子部2と負荷側アース端子部12の断面図を示しており、図2は、固定側アース端子部2と負荷側アース端子部12とを嵌合させた状態の断面図を示している。固定側アース端子部2が雄側として構成され、負荷側アース端子部12が雌側として構成されている。
【0030】
固定側アース端子部2は、例えば、車体フレーム等の車体におけるアース部材1に螺合して固定することができる。固定側アース端子部2としては、一端部側に雄ネジ4を形成し他端部側にオス型タブ5を備えた接続端子3と、オス型タブ5を内部に収納し一端面側を開口とした凹状のオス側ハウジング7と、アース部材1との間でオス側ハウジング7及び接続端子3を固定する固定部材6とから構成されている。
【0031】
接続端子3の構成としては、図4に示すように雄ネジ4と固定部材6とを一体にしたボルト20を用いて、ボルト20の頭部にオス型タブ5を設けた構成としておくこともできる。また、図5に示すように、一端部側を雄ネジ4として形成し、他端部側にオス型タブ5を形成した構成としておくこともできる。
【0032】
図5で示すように、接続端子3の雄ネジ4部は、オス側ハウジング7の底部に形成した貫通孔8内を挿通させて、オス側ハウジング7から外部に突出させておくことができる。図5では、固定部材としてナット21を用いた構成を示しているが、図1(a)に示すように、接続端子3の構成の一部としてボルト20を用いた場合には、雄ネジ4部をオス側ハウジング7の図示せぬ貫通孔に挿通させることができる。
【0033】
図1(a)に示すように、接続端子3を構成する一部としてボルト20を用いた場合には、雄ネジ4部を挿通したオス側ハウジング7とともに、ボルト20の頭部をレンチ等で締め付けることによって、固定側アース端子部2を車体のアース部材1に固定することができる。
【0034】
また、図5に示すように、接続端子3をアース部材1の雌ネジ部1aに螺合させて、アース部材1から立設させておく。立設した接続端子3に貫通孔8を介してオス側ハウジング7を挿入すると共に、オス型タブ5側から挿入したナット21を雄ネジ4に螺合させることにより、ダブルナット機構によってオス側ハウジング7と接続端子3とをアース部材1に対して固定することができる。
更に、図6に示すように接続端子3に固定した固定部材6に、回動用穴22を複数形成しておき複数形成した回動用穴22に締め付け具を挿入して、固定部材6を回動させることで固定側アース端子部2をアース部材1に螺合固定することもできる。
【0035】
負荷側アース端子部12は、オス側ハウジング7に嵌合するメス側ハウジング16と、メス側ハウジング16内に突出して収納固定されたメス型タブ13と、から構成されている。メス型タブ13と負荷とは、電線14によって接続されている。また、メス型タブ13は、固定部材15a、15bによって、メス側ハウジング16に固定されている。
【0036】
固定部材15a、15bとしては、例えば、メス型タブ13の外周面に形成した雄ネジ部に螺合する一対のナットとして構成しておくことができる。溶接や接着等の固定手段を用いてメス型タブ13をメス側ハウジング16に固定した場合には、固定部材15a、15bとしては溶接箇所、接着箇所を示していることになる。メス型タブ13をメス側ハウジング16に固定する固定方法としては、適宜の固定手段を用いることができる。
【0037】
メス型タブ13は、オス型タブ5を挿入できる挿入部を有する形状に構成されており、メス型タブ13の一部には挿入したオス型タブ5を圧接するタブ圧接部13aが構成されている。即ち、タブ圧接部13aにおける挿入空間は、オス型タブ5の外径よりも狭く形成されている。メス型タブ13内に挿入したオス型タブ5によって、タブ圧接部13aにおける挿入空間が広げられることで、タブ圧接部13aに弾性力が発生し、メス型タブ13内に挿入したオス型タブ5をタブ圧接部13aによって圧接把持することができる。
【0038】
またこのとき、図2で示すようにメス側ハウジング16は、オス側ハウジング7に嵌合することになる。図示例では、オス側ハウジング7の外周面にメス側ハウジング16の内周面が嵌合する例を示しているが、オス側ハウジング7の内周面にメス側ハウジング16の外周面が嵌合する構成とすることもできる。
【0039】
図3で示すように、オス側ハウジング7の外周面の一部に回動防止面23を形成しておき、図示せぬメス側ハウジング16の内周面形状として、オス側ハウジング7の外周面における雄型に対して雌型で補完する面形状に形成しておくこともできる。このようにオス側ハウジング7とメス側ハウジング16とを、雄雌の型で互いに補完し合う面形状を形成しておくことで、嵌合させた後にメス側ハウジング16がオス側ハウジング7の周方向に回動してしまうのを防止できる。
【0040】
また、回動防止面23によって、オス側ハウジング7とメス側ハウジング16との嵌合位置を規制することができる。嵌合させた後にメス側ハウジング16とオス側ハウジング7との相対的な周方向への回動が防止されるので、負荷側アース端子部12に接続した電線14が捩じれてしまうのを防止できる。
【0041】
図3に示すように、固定部材6(20)とオス側ハウジング7との間に絶縁材17を注入しておくこともできる。絶縁材17としては、電気的な絶縁材として用いることができるものであれば、適宜の絶縁材を用いることができる。また、絶縁材17を事前に固定部材6(20)とオス側ハウジング7との間に注入しておくことも、固定側アース端子部2を車輌のアース部材1に固定した後に注入しておくこともできる。更には、図7で示すように単品の絶縁部材18として構成しておき、絶縁部材18を挿入する構成とすることもできる。
【0042】
オス側ハウジング7、メス側ハウジング16は合成樹脂材にて構成することも、金属材にて構成することもできる。特に、オス側ハウジング7を金属材にて構成した場合には、固定部材6(20)におけるオス側ハウジング7との当接面側にも絶縁材を介在させておくことができる。オス側ハウジング7を構成する材質が非導電性の金属材、合成樹脂材にて構成した場合には、絶縁材17又は絶縁部材18を設けることは必ずしも必要な構成というものではない。また、メス側ハウジング16とメス型タブ13との間を絶縁状態に構成しておくこともできる。
【実施例2】
【0043】
実施例2では、嵌合したオス側ハウジング7とメス側ハウジング16とをロックするロック機構を備えた構成に特徴を有している。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を備えることができる。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1において用いた部材符号と同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。
【0044】
図8(a)、(b)は、外周面に係合部27を形成したオス側ハウジング28を固定側アース端子部2に用いた断面図と、係合部27に係止する弾性係止部材26を外周面に形成したメス側ハウジング29を負荷側アース端子部12に用いた断面図をそれぞれ示している。また、図9には、図8(a)、(b)で示したオス側ハウジング28とメス側ハウジング29と嵌合させるとともに、弾性係止部材26を係合部27に係止させた断面図を示している。
【0045】
弾性係止部材26は、支柱26bを介してメス側ハウジング29に取り付けられており、一端部側には係合部27に係止する係止爪26aが形成されている。メス側ハウジング29をオス側ハウジング28に挿入するとき、支柱26bが弾性変形することで係止爪26aは、係合部27上を乗り越えることができる。メス側ハウジング29が更にアース部材1側に挿入されると弾性変形していた支柱26bが復元し、係止爪26aと係合部27との係合を行うことができる。
【0046】
また、弾性係止部材26における係止爪26aが形成されている端部とは反対側の端部を、メス側ハウジング29側に押圧することで、係止爪26aと係合部27との係合状態を解除することができる。
【0047】
尚、メス側ハウジング29をオス側ハウジング28に挿入するとき、係合部27によってメス側ハウジング29の挿入が停止しないようにするため、支柱26bの下方側からメス側ハウジング29の開口端縁まで直線状のスリット溝が形成されている。スリット溝の幅としては、係合部27における周方向の幅部を通過させることができる幅として形成されている。
【0048】
図示例では、弾性係止部材26及び係合部27をそれぞれ1か所づつ形成した例を示しているが、弾性係止部材26及び係合部27を周方向にそれぞれ複数個所形成しておくこともできる。また、オス側ハウジング28及びメス側ハウジング29の周面形状を、図3を用いて説明したように、オス側ハウジング28とメス側ハウジング29とが周方向に回動しない面形状に構成しておくこともできる。この場合、メス側ハウジング29はオス側ハウジング28に対して、抜き取り方向及び周方向において相対的な移動が禁止された状態となることができる。
【0049】
図8及び図9では、弾性係止部材26及び係合部27を設けた構成を示しているが、弾性係止部材26の代りに、図10、図11に示すようにオス側ハウジング28またはメス側ハウジング29の一方の周面部を一部切り欠いて弾性片25を形成し、他方の周面部に切り欠いて形成した弾性片25が係合する係止孔24を形成しておく構成とすることもできる。
【0050】
弾性片25としては、周面部の一部を切り欠く代りに、図12に示すように凸部31を構成しておくこともできる。この場合、凸部31に係合する他方の周面側に凹部32を形成しておくこともできる。また、周面部に形成する凸部としては、半球状のポッチとすることも、図13で示すような所定の長さを有する凸条部33として構成することもできる。
所定の長さを有する凸条部33として構成した場合には、相手側の周面にはこの凸条部33と係合する凹条溝34を形成しておくことが必要である。また、図14に示すように、メス側ハウジング29の内周面側に突出させた凸部31を案内するガイド溝30をオス側ハウジング28の外周面に形成し、ガイド溝30の端部又は途中にメス側ハウジング29の凸部31が係合する凹部32を形成しておくこともできる。
【0051】
実施例2では、幾つかの例を挙げてオス側ハウジング28とメス側ハウジング29とを係合させてロックする機構を説明したが、これ以外にもオス側ハウジング28とメス側ハウジング29とを係合させてロックする機構であれば、それらのロック機構を用いることができる。また、ロック解除片をオス側ハウジング28とメス側ハウジング29との隙間に挿入して、ロック機構を解除することも、メス側ハウジング16の係合孔24等から外部に露呈した弾性片25等を押し込むことで、ロック機構を解除する構成とすることもできる。
【0052】
このように、本願発明ではオス型タブ5が車輌のアース部材1に確実に固定することができ、しかも、オス側ハウジング28とメス側ハウジング29とを嵌合させることができるので、固定側アース端子部2と負荷側アース端子部12とが接触不良を生じることがなく、負荷側アース端子部12に接続した負荷に対して常にアース状態を維持しておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】固定側アース端子部と負荷側アース端子部との断面図である。(実施例1)
【図2】固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを嵌合させた状態を示す断面図である。(実施例1)
【図3】固定側アース端子部の斜視図である。(実施例1)
【図4】接続端子と固定部材とを一体化した例を示す斜視図である。(実施例1)
【図5】固定側アース端子部の変形例を示す分解斜視図である。(実施例1)
【図6】固定側アース端子部の他の変形例を示す斜視図である。(実施例1)
【図7】絶縁部材を示す斜視図である。(実施例1)
【図8】固定側アース端子部と負荷側アース端子部との断面図である。(実施例2)
【図9】固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを嵌合させた状態を示す断面図である。(実施例2)
【図10】他のロック機構を用いた固定側アース端子部と負荷側アース端子部との断面図である。(実施例2)
【図11】図10における固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを嵌合させた状態を示す断面図と負荷側アース端子部の断面図である。(実施例2)
【図12】更に他のロック機構を用いた固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを示す断面図である。(実施例2)
【図13】別のロック機構を用いた固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを示す斜視図である。(実施例2)
【図14】更に別のロック機構を用いた固定側アース端子部と負荷側アース端子部とを示す斜視図である。(実施例2)
【図15】アース端子の取付前の状態を示す分解斜視図である。(従来例1)
【図16】アース端子間の接合前の状態を示す断面図である。(従来例2)
【符号の説明】
【0055】
1・・・アース部材、2・・・固定側アース端子部、3・・・接続端子、5・・・オス型タブ、6・・・固定部材、7・・・オス側ハウジング、12・・・負荷側アース端子部、13・・・メス型タブ、13a・・・タブ圧接部、16・・・メス側ハウジング、28・・・オス側ハウジング、29・・・メス側ハウジング、41・・・アース端子、43・・・軸孔、44・・・切欠溝、46・・・縮径部、47・・・ボディ、51・・・車体、52・・・車体側アース端子、52a・・・溶接部、52b・・・タブ部、53・・・負荷側アース端子、54・・・タブ圧接部、55・・・被膜削り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌のアース部材に固定される固定側アース端子部と負荷側に接続される負荷側アース端子部とを有し、
負荷側アース端子部のメス型タブを固定側アース端子部のオス型タブに挿入結合させることで、双方のアース端子間が接続されてなる車輌用アース構造であって、
前記固定側アース端子部は、底面側に貫通孔を形成した凹状のオス側ハウジングと、一端部側に雄ネジが形成され、他端部側にオス型タブが形成された接続端子と、前記アース部材との間で前記オス側ハウジングと前記接続端子とを固定する固定部材と、を有し、
前記負荷側アース端子部は、前記オス側ハウジングに嵌合する凹状のメス側ハウジングと、前記メス側ハウジング内に突出して収納固定され、前記オス型タブが挿入されるメス型タブと、を有し、
前記雄ネジは、前記貫通孔を介して前記オス側ハウジングから外部に突出して配設され、前記固定部材及び前記オス型タブは、前記オス側ハウジング内に配設され、
前記メス型タブは、挿入された前記オス型タブを圧接するタブ圧接部が形成されてなることを特徴とする車輌用アース構造。
【請求項2】
前記固定部材は、前記接続端子と一体化して構成されてなることを特徴とする請求項1記載の車輌用アース構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記雄ネジに螺合するナットであることを特徴とする請求項1記載の車輌用アース構造。
【請求項4】
前記固定部材と前記オス側ハウジングと前記接続端子とが、一体化して構成されてなることを特徴とする請求項1記載の車輌用アース構造。
【請求項5】
前記オス側ハウジングと前記メス側ハウジングとの間に、両者を係止するロック機構を設けてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車輌用アース構造。
【請求項6】
前記固定部材と前記オス側ハウジングとの間に、絶縁部材を配設してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車輌用アース構造。
【請求項7】
前記オス側ハウジングの周面と前記メス側ハウジングの周面とが、雄雌の型で互いに補完し合う面形状を有し、嵌合した前記メス側ハウジングと前記オス側ハウジングとは周方向への相対的な回動が阻止されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車輌用アース構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−152960(P2008−152960A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337211(P2006−337211)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】