説明

車輌用前照灯

【課題】 車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図る。
【解決手段】 ランプハウジング2とカバー3によって形成された灯具外筐4の内部に配置され光源として放電灯8を有するランプユニット6と、放電灯を点灯しランプユニットの下方に配置された放電灯点灯装置18とを設け、放電灯点灯装置を、放電灯から出射される光の光軸Pを含む鉛直面Sより左方又は右方に位置させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置をランプユニットに対して左右の所定の位置に配置して、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプハウジングによって形成された灯具外筐の内部に、光源として用いられる放電灯を有するランプユニットが配置されているものがある(例えば、特許文献1参照)。放電灯は放電灯点灯装置によって点灯され、該放電灯点灯装置はランプユニットの真下に配置されている。
【0003】
車輌用前照灯にあっては、万が一、車輌(車輌用前照灯)が歩行者に衝突したときに、衝撃によってカバーが変形され、灯具外筐の内部に配置されたランプユニットが変形されたカバーによって下方側へ押圧されて変位され、衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図るようにする必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開平2004−179018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された従来の車輌用前照灯にあっては、上記したように、放電灯点灯装置がランプユニットの真下に配置されているため、万が一、車輌の歩行者への衝突時に、衝撃によってカバーが変形されランプユニットが下方側へ変位されたときに、ランプユニットが放電灯点灯装置に衝突し、それ以上のランプユニットの下方側への変位が妨げられてしまう。
【0006】
従って、車輌の衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージが十分に軽減されないと言う問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明車輌用前照灯は、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、ランプハウジングとカバーによって形成された灯具外筐の内部に配置され光源として放電灯を有するランプユニットと、前記放電灯を点灯し前記ランプユニットの下方に配置された放電灯点灯装置とを設け、前記放電灯点灯装置を、前記放電灯から出射される光の光軸を含む鉛直面より左方又は右方に位置させるようにしたものである。
【0009】
従って、車輌用前照灯にあっては、ランプユニットに対して放電灯点灯装置が左右にずれた位置に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明車輌用前照灯は、ランプハウジングとカバーによって形成された灯具外筐の内部に配置され光源として放電灯を有するランプユニットと、前記放電灯を点灯し前記ランプユニットの下方に配置された放電灯点灯装置とを備えた車輌用前照灯であって、前記放電灯点灯装置を、前記放電灯から出射される光の光軸を含む鉛直面より左方又は右方に位置させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
従って、車輌が歩行者に衝突したときに、ランプユニットが変位される方向には放電灯点灯装置が存在していないため、ランプユニットの変位が放電灯点灯装置によって妨げられず、車輌の衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載した発明にあっては、前記放電灯点灯装置を、前記ランプユニットの左端より左方又は前記ランプユニットの右端より右方に位置させるようにしたので、衝突時における車輌の歩行者に対する衝突の方向に拘わることなくランプユニットの変位が放電灯点灯装置によって妨げられず、車輌の衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明にあっては、前記放電灯点灯装置を、前記ランプユニットの前端より前方に位置させるようにしたので、車輌の歩行者に対する衝突時に、ランプユニットが真下に変位した場合にもランプユニットの変位が放電灯点灯装置によって妨げられず、歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載した発明にあっては、前記ランプハウジングの前記放電灯点灯装置より後方に位置する部分に、他の部分より剛性が低くされた脆弱部を設けたので、脆弱部が車輌の歩行者に対する衝突時に変位されるランプユニットの接触により破損又は屈曲され易く、ランプユニットが大きく変位し易いため、車輌の衝突時における歩行者に対するダメージの軽減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
車輌用前照灯1、1はそれぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0017】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2と該ランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0018】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通された取付用開口2aが形成されている。ランプハウジング2の下端部における前端部には上下に貫通された配置用開口2bが形成されている。
【0019】
ランプハウジング2の取付用開口2aと配置用開口2bの間の部分は、他の部分の厚みより薄く形成され剛性が低くされた脆弱部2cとして設けられている。
【0020】
灯室5にはランプユニット6が配置されている。ランプユニット6は図示しない支持機構によって左右方向及び上下方向へランプハウジング2に対して傾動自在に支持されている。
【0021】
ランプユニット6は、内面で光を反射するリフレクター7と、該リフレクター7の後端部に保持された放電灯8と、リフレクター7の前端に取り付けられたレンズホルダー9と、該レンズホルダー9の前端部に保持された投影レンズ10とを有している。
【0022】
リフレクター7は前方に開口された椀状に形成され、内面が反射面7aとして形成されている。反射面7aは放物面又は楕円面に形成されている。
【0023】
レンズホルダー9にはシェード9aが設けられ、該シェード9aはランプユニット6の内部に突出した状態で設けられている。シェード9aは放電灯8から出射された光の一部を遮蔽する機能を有している。
【0024】
ランプユニット6は上下に離隔して位置されレンズホルダー9の上下両端部にそれぞれ連結された支持軸11、12を介して水平方向へ回動可能に支持されている。支持軸11は灯室5に配置された支持部材13の上端側の部分に連結され、支持軸12はランプユニット6の下側に配置されたアクチュエーター14に連結されている。従って、アクチュエーター14の駆動により、支持軸12が回転され、該支持軸12の回転に伴ってランプユニット6が支持軸11、12を支点として水平方向へ回動される。ランプユニット6は車輌の進行方向に応じて水平方向(左右方向)へ回動され、放電灯8から出射される光が車輌の進行方向に追従するように照射される。
【0025】
灯室5の前端側にはランプユニット6の一部を遮蔽するエクステンション15が配置されている。
【0026】
ランプハウジング2の後端部には取付用開口2aを閉塞するバックカバー16が取り付けられている。
【0027】
ランプハウジング2の下端部には配置用開口2bを閉塞する取付カバー17が取り付けられている。取付カバー17は上方に開口された箱状に形成されている。
【0028】
取付カバー17には、その内部に放電灯点灯装置18が取り付けられている。放電灯点灯装置18は放電灯8を点灯するための装置であり、内部に点灯回路を有している。放電灯点灯装置18はランプユニット6より前方、即ち、ランプユニット6の前端(図1に示す線分H)より前方に位置されている。従って、放電灯点灯装置18は、後面18aが線分Hより前方に位置されている。
【0029】
放電灯点灯装置18は放電灯8にケーブル19によって接続され、該ケーブル19はランプユニット6の後方から下方に亘って配置されている。
【0030】
また、放電灯点灯装置18はランプユニット6の放電灯8から出射される光の光軸P(図1及び図2参照)を含む鉛直面S(図2参照)より左方又は右方に位置されている。従って、放電灯点灯装置18は、左側面18bが鉛直面Sより右方又は右側面18cが鉛直面Sより左方に位置されている。
【0031】
上記のように構成された車輌用前照灯1は、ランプハウジング2に連結された図示しない複数のブラケットを介して車体に取り付けられている。
【0032】
以上のように構成された車輌用前照灯1において、万が一、車輌(車輌用前照灯1)が歩行者に衝突したときには、衝突によって車輌用前照灯1に後斜め下方側への負荷F(図1参照)が付与され、負荷Fによってカバー3が変形され該カバー3に押圧されてランプユニット6が後斜め下方側へ変位される。このとき、放電灯点灯装置18が鉛直面Sの左方又は右方に配置されておりランプユニット6が変位される方向には放電灯点灯装置18が存在していないため、ランプユニット6の変位が放電灯点灯装置18によって妨げられず、変位されたランプユニット6はランプハウジング2を突き破って後斜め下方側へ大きく変位することが可能である。
【0033】
従って、車輌用前照灯1にあっては、車輌の衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図ることができる。
【0034】
また、車輌用前照灯1にあっては、上記したように、ランプハウジング2における放電灯点灯装置18の後側の部分が厚みの薄い脆弱部2cとして設けられている。従って、脆弱部2cが後斜め下方側へ変位されるランプユニット6の接触により破損又は屈曲され易く、ランプユニット6が大きく変位し易いため、車輌の衝突時における歩行者に対するダメージの軽減に寄与する。
【0035】
尚、車輌の歩行者に対する衝突の方向によっては、ランプユニット6が後斜め下方側へ変位せず真下に変位する可能性もあるが、車輌用前照灯1にあっては、上記したように、放電灯点灯装置18がランプユニット6の前方に位置されているため、ランプユニット6が真下に変位した場合にもランプユニット6の変位が放電灯点灯装置18によって妨げられない。従って、この場合にも、歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図ることができる。
【0036】
また、上記には、放電灯点灯装置18が鉛直面Sより左方又は右方に位置されている例を示したが、放電灯点灯装置18の鉛直面Sに対する左右方向における位置は、車輌の歩行者に対する衝突の方向の頻度等を考慮して任意に設定することが可能である。例えば、図3に示すように、放電灯点灯装置18をランプユニット6の右端より右方又は左端より左方に位置させるようにしてもよい。この場合には、放電灯点灯装置18は、左側面18bがランプユニット6の右端を通る鉛直面Srより右方又は右側面18cがランプユニット6の左端を通る鉛直面Slより左方に位置されている。
【0037】
このように放電灯点灯装置18をランプユニット6の右端より右方又は左端より左方に位置させることにより、衝突時における車輌の歩行者に対する衝突の方向に拘わることなくランプユニット6の変位が放電灯点灯装置18によって妨げられず、車輌の衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図ることができる。
【0038】
尚、上記には、脆弱部2cの例としてランプハウジング2を他の部分より厚みを薄く形成した例を示したが、脆弱部2cの例は厚みを薄く形成する例に限られることはなく、例えば、ランプハウジング2の一部に溝を形成したり、ランプハウジング2の一部を他の部分より剛性の低い材料によって形成する等の適宜の方法で脆弱部を形成することが可能である。
【0039】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図2及び図3と共に本発明車輌用前照灯の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の縦断面図である。
【図2】ランプユニットと放電灯点灯装置の位置関係を示す概略正面図である。
【図3】ランプユニットと放電灯点灯装置の別の位置関係を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、2c…脆弱部、3…カバー、4…灯具外筐、6……ランプユニット、8…放電灯、18…放電灯点灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングとカバーによって形成された灯具外筐の内部に配置され光源として放電灯を有するランプユニットと、前記放電灯を点灯し前記ランプユニットの下方に配置された放電灯点灯装置とを備えた車輌用前照灯であって、
前記放電灯点灯装置を、前記放電灯から出射される光の光軸を含む鉛直面より左方又は右方に位置させるようにした
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記放電灯点灯装置を、前記ランプユニットの左端より左方又は前記ランプユニットの右端より右方に位置させるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記放電灯点灯装置を、前記ランプユニットの前端より前方に位置させるようにした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記ランプハウジングの前記放電灯点灯装置より後方に位置する部分に、他の部分より剛性が低くされた脆弱部を設けた
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−3613(P2010−3613A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163016(P2008−163016)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】