説明

車輌用前照灯

【課題】 光の利用効率の向上を図る。
【解決手段】 光を出射する光源17と、光源から出射された光を投影して照射すると共に光源から出射された光の一部を内面反射する投影レンズ11と、光源から出射された光を投影レンズに向けて反射する第1のリフレクター12と、投影レンズにおいて2回内面反射された光を反射して照射する第2のリフレクター13とを備え、投影レンズによって投影された光及び第2のリフレクターで反射された光により配光パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、第1のリフレクターと第2のリフレクターを設け投影レンズにおいて2回内面反射された光を第2のリフレクターによって反射させて配光パターンを形成する光として用いることにより光の利用効率の向上を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源と投影レンズとリフレクターを有するランプユニットが配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、光源から出射された光がリフレクターによって投影レンズに向けて反射され、この反射された光が投影レンズによって投影されて近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−317513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、投影レンズにおいては、入射された光の大部分が投影レンズを透過するが、入射された光の一部が投影レンズにおいて内面反射される。
【0006】
従って、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、光源から出射された光のうち投影レンズにおいて内面反射された光が配光パターンを形成する光として用いられないので、光源から出射された光の利用効率が低いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、光の利用効率の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を投影して照射すると共に前記光源から出射された光の一部を内面反射する投影レンズと、前記光源から出射された光を前記投影レンズに向けて反射する第1のリフレクターと、前記投影レンズにおいて2回内面反射された光を反射して照射する第2のリフレクターとを備え、前記投影レンズによって投影された光及び前記第2のリフレクターで反射された光により配光パターンが形成されるものである。
【0009】
従って、車輌用前照灯にあっては、光源から出射されて投影レンズによって投影された光と投影レンズにおいて2回内面反射され第2のリフレクターで反射された光とが配光パターンを形成する光として用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明車輌用前照灯は、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を投影して照射すると共に前記光源から出射された光の一部を内面反射する投影レンズと、前記光源から出射された光を前記投影レンズに向けて反射する第1のリフレクターと、前記投影レンズにおいて2回内面反射された光を反射して照射する第2のリフレクターとを備え、前記投影レンズによって投影された光及び前記第2のリフレクターで反射された光により配光パターンが形成されることを特徴とする。
【0011】
従って、投影レンズにおいて内面反射された光を配光パターンを形成する光として用いることができるので、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載した発明にあっては、前記投影レンズによって投影された光により第1の配光パターンが形成され、前記第2のリフレクターで反射された光により第2の配光パターンが形成される。
【0013】
従って、第1の配光パターンに加えて第2の配光パターンを形成することにより、車輌用前照灯によって形成される配光パターンの形状や明るさ等の自由度が高まり、配光の制御における自由度の向上を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載した発明にあっては、前記第1の配光パターンが近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンとして形成され、前記第2の配光パターンが前記第1の配光パターンの少なくとも左右の一方の領域を照射する配光パターンとして形成される。
【0015】
従って、近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンである第1の配光パターンの少なくとも左右の一方の領域が照射されるので、道路の側方における歩行者や車輌等の視認性が高く、光の利用効率の向上を図った上で視認性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載した発明にあっては、前記第1の配光パターンが近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンとして形成され、前記第2の配光パターンが前記第1の配光パターンの上方を照射する配光パターンとして形成される。
【0017】
従って、投影レンズにおいて内面反射され第2のリフレクターで反射された光を、主として、道路標識の視認性の向上を図る所謂オーバーヘッドサイン光として利用することができ、光の利用効率の向上を図った上で視認性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0020】
車輌用前照灯1は、図1及び図2に示すように、前方に開口する凹状に形成されたランプハウジング2とランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0021】
灯室5にはランプユニット6が配置され、ランプユニット6はランプハウジング2に光軸調整機構7によって傾動自在に支持されている。
【0022】
ランプユニット6は、光軸調整機構7が連結されたブラケット8と、ブラケット8に取り付けられた光源モジュール9と、ブラケット8の前端部に取り付けられたレンズホルダー10と、レンズホルダー10の前端部に取り付けられた投影レンズ11と、ブラケット8及びレンズホルダー10に跨って配置された第1のリフレクター12と、投影レンズ11の後方に配置された第2のリフレクター13とを有している。
【0023】
ブラケット8は、例えば、熱伝導性が高い金属材料によって形成され、前後方向を向く基部14と基部14の中央部から前方へ突出された取付突部15とを有している。
【0024】
基部14の後面には後方へ突出された放熱フィン14a、14a、・・・が左右に離隔して設けられている。放熱フィン14a、14a、・・・によって光源モジュール9の発光時に発生する熱が放出される。
【0025】
光源モジュール9は、例えば、取付突部15の上面における中央部に配置された回路基板16と回路基板16上に搭載され光源として機能する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)17とを有している。
【0026】
発光ダイオード17は、上面が光を出射する出射面17aとされ、下面が回路基板16に搭載される面とされている。
【0027】
レンズホルダー10はブラケット8の取付突部15の前面に取り付けられたベース部18とベース部18の前端部から前方へ突出された保持突部19とが一体に形成されて成る。
【0028】
投影レンズ11はレンズホルダー10の保持突部19の前端部に取り付けられ、レンズホルダー10によって光源モジュール9の前方において保持されている。投影レンズ11は、例えば、前方に凸の出射面11aと後方を向く入射面11bとを有する略半球状に形成され、発光ダイオード17から出射された光を前方へ投影する機能を有している。
【0029】
第1のリフレクター12は、例えば、前方及び下方に開口するように形成され、ブラケット8の取付突部15及びレンズホルダー10のベース部18の上面に配置されている。第1のリフレクター12は発光ダイオード17の上側、左右両側及び後側を覆うように配置されている。第1のリフレクター12は内面が反射面12aとして形成されている。反射面12aは、例えば、楕円面に近い自由曲面の形状に形成されている。第1のリフレクター12は発光ダイオード17から出射される光を投影レンズ11へ向けて反射する機能を有している。
【0030】
第2のリフレクター13は、例えば、第1のリフレクター12の上側における左方に配置されている。第2のリフレクター13は、例えば、前斜め左方を向く面を有し、この面が反射面13aとして形成されている。反射面13aは、例えば、略放物柱状面に形成されている。第2のリフレクター13は、後述するように、投影レンズ11において2回内面反射された光を反射して照射する機能を有している。
【0031】
光軸調整機構7はエイミングスクリュー20、20とレベリングアクチュエーター21とを有している。
【0032】
エイミングスクリュー20、20は、例えば、左右に離隔して位置され、それぞれブラケット8の上端部とランプハウジング2の上端部とを連結している。レベリングアクチュエーター21はブラケット8の下端部とランプハウジング2の下端部とを連結している。
【0033】
エイミングスクリュー20が回転されることによりランプユニット6が左右方向又は上下方向へ傾動され、ランプユニット6のエイミング調整が行われる。レベリングアクチュエーター21の駆動力によりランプユニット6が上下方向へ傾動され、ランプユニット6のレベリング調整が行われる。
【0034】
上記のように構成された車輌用前照灯1においては、光源モジュール9の発光ダイオード17における出射面17aから出射された光が第1のリフレクター12の反射面12aで反射されて投影レンズ11に入射面11bから入射される。
【0035】
投影レンズ11に入射された光の大部分は投影レンズ11を透過され出射面11aから出射されて投影される。投影レンズ11を透過された光は前方へ照射され、この投影レンズ11を透過された光によって第1の配光パターンP1が形成される(図3参照)。第1の配光パターンP1は、例えば、近距離の領域を照射するロービームの配光パターンである。
【0036】
なお、上記には、第1の配光パターンP1が近距離の領域を照射するロービームの配光パターンである例を示したが、第1の配光パターンは、例えば、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンであってもよい。
【0037】
一方、投影レンズ11に入射面11bから入射された光には、出射面11aにおいて内面反射され再度出射面11aにおいて内面反射されて後方へ向かう光が存在する(図1及び図2の光路L参照)。このように投影レンズ11の出射面11aにおいて2回内面反射されて後方へ向かった光は第2のリフレクター13で反射され、再び投影レンズ11に入射されることなく前斜め左方へ照射される。第2のリフレクター13で反射され前斜め左方へ光が照射されると、この光によって第2の配光パターンP2が形成される(図3参照)。第2の配光パターンP2は、例えば、第1の配光パターンP1の左側の領域を照射する配光パターンとして形成される。
【0038】
なお、第2の配光パターンP2は、図3に示すように、一部が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよく、また、全体が第1の配光パターンP1より左側に位置される配光パターン又は全体が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよい。
【0039】
また、上記には、第2のリフレクター13で反射された光によって第1の配光パターンP1の左側の領域を照射する第2の配光パターンP2が形成される例を示したが、第2のリフレクター13で反射された光によって第1の配光パターンP1の右側の領域を照射する第2の配光パターンP2Aが形成されるようにしてもよい(図3の2点鎖線参照)。この場合にも、第2の配光パターンP2Aは、第2の配光パターンP2と同様に、一部が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよく、また、全体が第1の配光パターンP1より右側に位置される配光パターン又は全体が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよい。第2の配光パターンP2Aが形成される場合には、第2のリフレクター13は、例えば、第1のリフレクター12の上側における右方において反射面13aが前斜め右方を向くように配置される(図2の2点鎖線参照)。
【0040】
さらに、第2のリフレクター13で反射された光によって第1の配光パターンP1の左右両側の領域を照射する第2の配光パターンP2Bが形成されるようにしてもよい。この場合にも、第2の配光パターンP2Bは、第2の配光パターンP2、P2Aと同様に、一部が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよく、また、全体が第1の配光パターンP1より左側及び右側に位置される配光パターン又は全体が第1の配光パターンP1に重なる配光パターンでもよい。第2の配光パターンP2Bが形成される場合には、例えば、二つの第2のリフレクター13、13が第1のリフレクター12の上側における左右にそれぞれ配置される。
【0041】
上記したように、投影レンズ11において内面反射され第2のリフレクター13で反射された光により第2の配光パターンP2(P2A、P2B)が形成され、第1の配光パターンP1の左右の少なくとも一方の領域が照射される。従って、近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンである第1の配光パターンP1の少なくとも左右の一方の領域が照射されるので、道路の側方における歩行者や車輌等の視認性が高く、光の利用効率の向上を図った上で視認性の向上を図ることができる。
【0042】
上記には、第1の配光パターンP1の左右の少なくとも一方の領域を照射する第2の配光パターンP2(P2A、P2B)の例を示したが、車輌用前照灯1においては、第1の配光パターンP1の上方を照射する第2の配光パターンP2Cを形成してもよい(図4参照)。
【0043】
第1の配光パターンP1の上方を照射する第2の配光パターンP2Cを形成する場合には、投影レンズ11において内面反射され第2のリフレクター13で反射された光を、主として、道路標識の視認性の向上を図る所謂オーバーヘッドサイン光として利用することができ、光の利用効率の向上を図った上で視認性の向上を図ることができる。
【0044】
また、上記には、投影レンズ11の出射面11aにおいて2回内面反射され第2のリフレクター13で反射された光が投影レンズ11に入射されることなく照射される例を示したが、投影レンズ11において2回内面反射された光を第2のリフレクター13によって再度投影レンズ11に入射させることも可能である。このように、投影レンズ11において2回内面反射された光を第2のリフレクター13によって再度投影レンズ11に入射させることにより、光の利用効率の向上を図り、例えば、第1の配光パターンP1を明るい配光パターンに形成することができる。
【0045】
また、このような光の利用効率の向上を図ることにより、光源モジュール9に供給する駆動電流の値を下げたときにも、第1の配光パターンP1の明るさを第1のリフレクター12で反射された光のみによって形成される第1の配光パターンP1と同等の一定以上の明るさに保持することが可能である。このように、光源モジュール9に供給する駆動電流の値を下げて第1の配光パターンP1の明るさを一定以上の明るさに保持する制御を行うことにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0046】
なお、上記では、第2のリフレクター13が第1のリフレクター12の上側における右方又は左方に配置された例を示したが、第2のリフレクター13は、投影レンズ11の出射面11aで2回内面反射された光を所要の領域へ向けて反射する構成にされていれば、上記と異なる任意の位置に配置することが可能である。
【0047】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、発光ダイオード17から出射され投影レンズ11において2回内面反射された光が第2のリフレクター13で反射されて照射され、投影レンズ11によって投影された光及び第2のリフレクター13で反射された光により配光パターンが形成される。
【0048】
従って、投影レンズ11において内面反射された光を配光パターンを形成する光として用いることができるので、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、投影レンズ11によって投影された光により第1の配光パターンP1が形成され、第2のリフレクター13で反射された光により第2の配光パターンP2、P2A、P2B、P2Cが形成される。
【0050】
従って、発光ダイオード17から出射された光を投影レンズ11によって投影された光による第1の配光パターンP1以外の領域に照射することが可能であるので、発光ダイオード17から出射された光の照射領域が広がり、光の利用効率の向上を図った上で光の照射領域を拡大することができる。
【0051】
さらに、第1の配光パターンP1に加えて第2の配光パターンP2、P2A、P2B、P2Cを形成することにより、車輌用前照灯1によって形成される配光パターンの形状や明るさ等の自由度が高まり、配光の制御における自由度の向上を図ることができる。
【0052】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図2乃至図4と共に本発明の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】車輌用前照灯の概略水平断面図である。
【図3】投影レンズにより投影された光及び第2のリフレクターで反射された光によって形成された配光パターンを示す図である。
【図4】投影レンズにより投影された光及び第2のリフレクターで反射された光によって形成された配光パターンの別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…車輌用前照灯、11…投影レンズ、12…第1のリフレクター、13…第2のリフレクター、17…発光ダイオード(光源)、P1…第1の配光パターン、P2…第2の配光パターン、P2A…第2の配光パターン、P2B…第2の配光パターン、P2C…第2の配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を投影して照射すると共に前記光源から出射された光の一部を内面反射する投影レンズと、
前記光源から出射された光を前記投影レンズに向けて反射する第1のリフレクターと、
前記投影レンズにおいて2回内面反射された光を反射して照射する第2のリフレクターとを備え、
前記投影レンズによって投影された光及び前記第2のリフレクターで反射された光により配光パターンが形成される
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記投影レンズによって投影された光により第1の配光パターンが形成され、
前記第2のリフレクターで反射された光により第2の配光パターンが形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記第1の配光パターンが近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンとして形成され、
前記第2の配光パターンが前記第1の配光パターンの少なくとも左右の一方の領域を照射する配光パターンとして形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記第1の配光パターンが近距離又は遠距離の領域を照射するロービーム又はハイビームの配光パターンとして形成され、
前記第2の配光パターンが前記第1の配光パターンの上方を照射する配光パターンとして形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33624(P2013−33624A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168900(P2011−168900)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】