説明

車輌用灯具

【課題】 車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図る。
【解決手段】 ランプハウジング2と該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバー3とを設け、ランプハウジングの少なくとも上端部に少なくとも上方及び後方に開口された凹部9を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用灯具に関する。詳しくは、ランプハウジングの少なくとも上端部に少なくとも上方及び後方に開口された凹部を形成して、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具には、カバーとランプハウジングによって形成された灯具外筐の内部に光源が配置されているものがある。
【0003】
このような車輌用灯具にあっては、万が一、車輌が歩行者に衝突したときに、歩行者に対するダメージを軽減する必要がある。
【0004】
車輌の歩行者との衝突時に、歩行者に対するダメージの軽減を図るようにした車輌用灯具として、カバーの一部に薄肉部を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された車輌用灯具は、ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーの一部に薄肉部を形成し、該薄肉部を脆弱部として機能させるようにしている。カバーが脆弱部を有することにより、万が一、車輌が歩行者に衝突したときに、脆弱部が破断又は屈曲されてカバーが後方又は下方へ変位し、歩行者に対するダメージが軽減される。
【0006】
【特許文献1】特開平2001−236813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された従来の車輌用灯具にあっては、カバーに薄肉部を形成して脆弱部として機能させるようにしているため、万が一、車輌が歩行者に衝突したときに、カバーは破断又は屈曲され易いが、その後方に位置するランプハウジングは破断又は屈曲され難い。従って、衝突時に、カバーは後方又は下方へ変位し易いが、ランプハウジングは後方又は下方へ変位し難く、歩行者に対するダメージの軽減が十分に図れないおそれがある。
【0008】
また、車輌が歩行者に衝突するときに、車輌が歩行者に対して衝撃を与え易い方向や衝撃を与え易い部分を考慮して、車輌用灯具の剛性が低い部分(脆弱部)を形成することが必要である。
【0009】
そこで、本発明車輌用灯具は、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの十分な軽減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用灯具は、上記した課題を解決するために、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとを備え、前記ランプハウジングの少なくとも上端部に少なくとも上方及び後方に開口された凹部を形成したものである。
【0011】
従って、車輌用灯具にあっては、凹部が形成された部分における一定以下の耐衝撃性が確保される。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用灯具は、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとを備えた車輌用灯具であって、前記ランプハウジングの少なくとも上端部に少なくとも上方及び後方に開口された凹部を形成したことを特徴とする。
【0013】
従って、万が一、車輌が歩行者に衝突したときに、ランプハウジングの少なくとも上端部に位置する凹部が形成された部分が、大きな衝撃によって破断又は屈曲され、車輌用灯具に対して斜め上方側から接触する場合が多い歩行者に対するダメージの十分な軽減を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載した発明にあっては、前記ランプハウジングを前後方向から見た形状で略矩形状に形成し、前記凹部を少なくとも一つの角部に形成したので、剛性が高くなり易い部分である角部の剛性を低下させることができ、車輌の歩行者への衝突時における歩行者のダメージの軽減を効率的に図ることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載した発明にあっては、前記ランプハウジングと前記カバーの各外周部に前記ランプハウジングと前記カバーを結合するシール部を設け、前記ランプハウジングのシール部の後面と前記凹部を形成する後面とを同一平面上に位置させるようにしたので、凹部が形成された部分が撓み易く、歩行者に対するダメージの一層の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明車輌用灯具を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
車輌用灯具1、1(図1に一方の車輌用灯具1のみ示す。)は、例えば、車輌用前照灯であり、それぞれ車体100の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0018】
車輌用灯具1は、図2及び図3に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2と該ランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。灯室5には放電ランプやハロゲンランプ等の光源6が配置されている。
【0019】
ランプハウジング2は外周部がカバー3に結合されるシール部7として設けられている。
【0020】
ランプハウジング2は前後方向から見て、例えば、横長の略矩形状に形成され(図2参照)、四つの角部8、8、・・・を有している。ランプハウジング2の少なくとも上端部には少なくとも上方及び後方に開口された凹部9が形成されている。凹部9が形成されることにより、車輌用灯具1の前後方向における厚みは、凹部9が形成された部分が他の部分より薄くされている。従って、車輌用灯具1の凹部9が形成された部分は、他の部分より剛性が弱くされ、大きな衝撃が付与されたときに破断又は屈曲が生じ易くされている。
【0021】
凹部9は、例えば、車体100の中央側に位置する角部8に形成されている。従って、凹部9が、角部8に形成されている場合には、凹部9は上方、後方及び側方(右方又は左方)に開口されている。凹部9を形成する前後方向を向く面9aは、例えば、シール部7の後面7aと同一平面上に位置されている(図3参照)。
【0022】
ランプハウジング2の後端部には前後方向に貫通された図示しない取付用開口が形成されている。取付用開口には図示しないバックカバーが取り付けられ、該バックカバーに光源8の後端部が支持されている。
【0023】
カバー3の外周部はランプハウジング2のシール部7に結合されるシール部10として設けられている。従って、ランプハウジング2とカバー3は、各外周部に設けられたシール部7とシール部10が、例えば、溶着等の適宜の手段によって結合されている。
【0024】
上記のように構成された車輌用灯具1は、ランプハウジング2に連結された図示しない複数のブラケットを介して車体100の図示しない取付部に取り付けられている。
【0025】
以上のように構成された車輌用灯具1において、万が一、車輌が歩行者に衝突したときには、衝突時の衝撃によって車輌用灯具1に一定以上の負荷が付与される。このとき、歩行者は車輌用灯具1に対して斜め上方側(図3に示す矢印F参照)から接触する場合が多い。従って、車輌用灯具1のように、ランプハウジング2の上端側に位置する凹部9が形成された部分が、大きな衝撃が付与されたときに破断又は屈曲が生じ易くされていることにより、この凹部9が形成された部分が破断又は屈曲され、車輌用灯具1が下方側又は後方側へ変位して歩行者に対するダメージが十分に軽減される。
【0026】
また、ランプハウジング2の角部8は他の部分より剛性が高くなり易いため、角部8に凹部9を形成することにより、剛性が高くなり易い部分である角部8の剛性を低下させることができ、車輌の歩行者への衝突時における歩行者のダメージの軽減を効率的に図ることが可能となる。
【0027】
さらに、車輌用灯具1にあっては、ランプハウジング2に設けられたシール部7の後面7aと凹部9を形成する前後方向を向く面9aとが同一平面上に位置されるようにしているため、凹部9が形成された部分が撓み易く、歩行者に対するダメージの一層の軽減を図ることができる。
【0028】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図2及び図3と共に本発明車輌用灯具の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具が車体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】車輌用灯具の概略斜視図である。
【図3】車輌用灯具の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…車輌用灯具、2…ランプハウジング、3…カバー、7…シール部、7a…後面、8…角部、9…凹部、9a…面、10…シール部、100…車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとを備えた車輌用灯具であって、
前記ランプハウジングの少なくとも上端部に少なくとも上方及び後方に開口された凹部を形成した
ことを特徴とする車輌用灯具。
【請求項2】
前記ランプハウジングを前後方向から見た形状で略矩形状に形成し、
前記凹部を少なくとも一つの角部に形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具。
【請求項3】
前記ランプハウジングと前記カバーの各外周部に前記ランプハウジングと前記カバーを結合するシール部を設け、
前記ランプハウジングのシール部の後面と前記凹部を形成する後面とを同一平面上に位置させるようにした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−301822(P2009−301822A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153884(P2008−153884)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】