説明

車輪支持機構、後処理装置及び画像形成装置

【課題】車輪に対する筐体の高さを調整し得る車輪支持機構において、簡易な構成で、車輪に対する筐体の高さを容易に調整できる車輪支持機構、並びに後処理装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】筐体の底面21aから突出する車輪31を筐体に支持し、車輪31に対する筐体の高さを調整し得る車輪支持機構15であって、車輪31からその回転軸方向に延びる車輪軸32と、車輪軸32を回転自在に支持する軸受を有すると共に第1端部41及び軸受を挟んで第1端部41とは反対側の第2端部42を有する軸受部材4と、軸受部材4における第1端部41の近傍に設けられ軸受部材4を筐体に対して回動自在に支持する回動支持部5と、軸受部材4における第2端部42の近傍を保持することにより軸受部材4の回動を規制する回動規制部材6と、回動規制部材6に連結されると共に車輪31に対する筐体の高さを固定する調整部材B1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の底面から突出する車輪を筐体に支持し、車輪に対する筐体の高さを調整し得る車輪支持機構、画像形成装置から排出される用紙の後処理を行う後処理装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機などの画像形成装置本体と組み合わされて、後処理装置が用いられている。後処理装置は、画像形成装置本体から排出される用紙の後処理(ステープル、パンチ等)を行うものであり、画像形成装置本体における用紙の排出口側に連結されて設置される。画像形成装置本体と後処理装置とが連結されて構成される画像形成装置が、比較的柔らかい床(例えば、カーペット等の敷かれた床)に設置される場合、画像形成装置本体と後処理装置とは重量が異なり(一般的に、画像形成装置本体の方が重い)、そのため、床に対して沈み込む程度が異なる。従って、画像形成装置本体と後処理装置との連結部分において、両者の高さ方向位置に大きなズレが生じ易い。その結果、両者の高さ方向位置の調整に要する手間が掛かり、両者の連結を円滑に行うことが困難となり、また、両者を連結する部品に無理な負荷が作用するという問題点が生じる。
【0003】
前述した種々の問題点を解決する技術として、例えば以下の技術が開示されている。
特開平9−77343号公報(特許文献1)には、後処理装置側の連結部材に長穴を設けることにより、画像形成装置本体と後処理装置との高さ方向位置のズレを吸収する技術が提案されている。
しかし、特許文献1に記載の技術では、画像形成装置本体と後処理装置との間における用紙の受け渡し位置における高さ方向位置のズレは改善されないため、画像形成装置本体から後処理装置への用紙の受け渡し時に紙詰まり(JAM)等の不具合が懸念される。
【0004】
特開2000−44111号公報(特許文献2)には、後処理装置の下方に、上ユニット及び下ユニットからなるテーブルを設け、上ユニットを下ユニットに対して上下動させることにより、後処理装置の高さ方向位置を調整する技術が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の技術によれば、上ユニット及び下ユニットからなるテーブルを備えているため、後処理装置全体の構成が複雑で、高コストとなっている。また、後処理装置の高さ方向位置を斜めに調整することが不可能である。
【0005】
特開2002−128369号公報(特許文献3)には、後処理装置側の連結部材を上下方向に移動可能に構成することにより、画像形成装置本体と後処理装置との高さ方向位置のズレを吸収する技術が開示されている。
しかし、特許文献3に記載の技術によれば、特許文献1に記載の技術と同様に、画像形成装置本体と後処理装置との間における用紙の受け渡し位置の高さ方向位置のズレは改善されないため、画像形成装置本体から後処理装置への用紙の受け渡し時に紙詰まり(JAM)等の不具合が懸念される。
【0006】
前述した問題点は、画像形成装置の後処理装置以外の機器にも生じる場合がある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−77343号公報
【特許文献2】特開2000−44111号公報
【特許文献3】特開2002−128369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、筐体の底面から突出する車輪を筐体に支持し、車輪に対する筐体の高さを調整し得る車輪支持機構において、簡易な構成で、車輪に対する筐体の高さを容易に調整することができる車輪支持機構、並びに後処理装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筐体の底面から突出する車輪を該筐体に支持し、該車輪に対する該筐体の高さを調整し得る車輪支持機構であって、前記車輪から該車輪の回転軸方向に延びる車輪軸と、該車輪軸を回転自在に支持する軸受を有すると共に第1端部及び該軸受を挟んで該第1端部とは反対側の第2端部を有する軸受部材と、該軸受部材における該第1端部の近傍に設けられ該軸受部材を前記筐体に対して回動自在に支持する回動支持部と、前記軸受部材における前記第2端部の近傍を保持することにより前記軸受部材の回動を規制する回動規制部材と、該回動規制部材に連結されると共に前記車輪に対する前記筐体の高さを調整する調整部材と、を備えた車輪支持機構に関する。
【0010】
また、前記調整部材は、前記筐体の底面に設けられた貫通孔に挿通され、該筐体の高さ方向に移動可能な雄ネジからなり、前記軸受部材は、前記第2端部の近傍に第1係合部を備え、前記回動規制部材は、前記雄ネジに螺合する雌ネジ部及び前記第1係合部と係合する第2係合部を備え、該雌ネジ部と前記雄ネジとを螺合させることにより該雄ネジと一体となって前記筐体の高さ方向に移動し、前記車輪に対する前記筐体の高さを調整可能となっていると共に、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることにより前記軸受部材を保持可能となっていることが好ましい。
【0011】
また、前記雌ネジ部に対して前記雄ネジを回転させることにより前記車輪に対する前記筐体の高さを調整可能となっていることが好ましい。
【0012】
前記筐体は、前記軸受部材における前記第2端部の近傍を係止する係止部を備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記筐体は目盛りを備え、前記回動規制部材は目盛り指示部材を備え、前記目盛りに前記目盛り指示部材を位置合わせすることにより前記筐体に対する前記回動規制部材の高さを視認可能となっていることが好ましい。
【0014】
また、前記目盛り指示部材は、前記筐体に対して前記回動規制部材を保持する機能を備えていることが好ましい。
【0015】
また、前記軸受部材は、該軸受部材の上面を形成する上面部を有し、該上面部は、前記車輪の上側を該軸受部材の上面よりも上方に突出させ得る上面開口部を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記車輪は、前記筐体に複数設けられ、前記回動規制部材は、全ての前記車輪に対応して設けられ、それぞれ独立して前記軸受部材の回動を規制することが好ましい。
【0017】
また、本発明の後処理装置は、前記車輪支持機構が設けられた、画像形成装置の後処理装置に関する。
【0018】
また、本発明の画像形成装置は、画像形成装置本体と、前記後処理装置とが連結されて構成される画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筐体の底面から突出する車輪を筐体に支持し、車輪に対する筐体の高さを調整し得る車輪支持機構において、簡易な構成で、車輪に対する筐体の高さを容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1により、本発明の画像形成装置M1の一実施形態の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態の画像形成装置M1を示す正面図である。図2は、本発明の一実施形態の後処理装置1について、画像形成装置本体M2との連結部側から視た斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置M1は、画像形成装置本体M2と後処理装置1とが連結されて構成される。画像形成装置本体M2は、複写機、複合機などの画像形成装置M1における主要部であり、用紙に画像を形成すると共に、画像が形成された用紙を排出口(図示せず)から排出する。
後処理装置1は、画像形成装置本体M2における排出口側に連結されて設置される。後処理装置1は、画像形成装置本体M2から排出される用紙の後処理(ステープル、パンチ等)を行うものである。後処理装置1の下部(基台部2)に、本実施形態の車輪支持機構15が設けられる。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態の後処理装置1は、全体視で略箱形を呈する筐体11の内部に、画像形成装置本体M2から排出された用紙に対して後処理を施す各種の後処理用の部材(図示せず)が装着されることによって構成される。
後処理装置1は、画像形成装置本体M2の左側に連結されて使用される。後処理装置1において、前側とは所定の配置状態における手前側を意味し、背側(後ろ側)とは前側の反対側を意味する。右側とは、所定の配置状態における画像形成装置本体M2側を意味し、左側とは右側の反対側を意味する。下側とは、移動用の車輪31が位置する側であり、上側とは、下側の反対側である。
【0023】
図1及び図2に示すように、後処理装置1は、箱形のメインフレーム(図示せず)を備え、このメインフレームに様々な部材が取り付けられて構成されている。具体的には、メインフレームに、後処理装置1の前面11aを形成する前面部材、底面21aを形成する底面部材21、右側面11bを形成する右側面部材、左側面11cを形成する左側面部材、上面11dを形成する上面部材、背面を形成する背面部材(図示せず)が設けられている。
【0024】
後処理装置1の右側面11bにおける上部には、画像形成装置本体M2から排出された用紙を後処理装置1の内部に受け入れるための用紙受け入れ口12が設けられている。用紙は、用紙受け入れ口12を介して、後処理装置1の内部に導入される。
後処理装置1の左側面11cには、メイントレイ14及びサブトレイ13が設けられている。
【0025】
筐体11の下部は基台部2から構成される。基台部2に、本実施形態の車輪支持機構15(図6、図7など参照)が設けられる。車輪支持機構15は、筐体11の底面21aから突出する車輪31を筐体11(基台部2)に支持し、車輪31に対する筐体11の高さを調整し得る機構である。
【0026】
次に、図3から図12を参照して、本実施形態の車輪支持機構15が設けられた基台部2について説明する。図3は、図2に示す後処理装置1における基台部2を下方から視た斜視図である。図4は、外装板を外した状態の基台部2を上方から視た斜視図である。図5は、図3に示す基台部2の部分拡大図である。図6は、図4に示すVI−VI線断面図である。図7は、図5に示す状態から車輪包囲部材22を取り外した状態を示す図である。図8は、図7に示す状態から、底面部材21などを取り外した状態を示す図である。
【0027】
図9は、軸受部材4から回動規制部材6を分離させた状態を示す図である。図10(a)は、回動規制部材6を示す斜視図で、図10(b)は、図10(a)とは反対側から視た回動規制部材6を示す斜視図である。図11は、車輪31に対する基台部2の高さを低く調整した状態を示す断面図(図6対応図)である。図12は、車輪31に対する基台部2の高さを高く調整した状態を示す断面図(図6対応図)である。
【0028】
図3及び図4に示すように、基台部2の4隅には、それぞれ車輪31が計4個設けられている。
本実施形態の車輪支持機構15は、筐体11における基台部2の底面21aから下方に突出する車輪31を支持する機構であり、車輪軸32と、軸受部材4と、回動支持部5と、回動規制部材6と、調整部材である高さ調整雄ネジB1と、を備える。
【0029】
まず、基台部2の詳細について説明する。
図3から図5に示すように、基台部2の底面21aは底面部材21から形成されている。基台部2の底面21aは、筐体11全体の底面になる。なお、該底面の形状は、平面状でもよく、曲面状でもよい。
底面部材21は、その全体の外形が矩形であり、底面部材21の外縁は、底面21aから上方に折り曲げられて、前後方向に沿う第1外周壁21e及び左右方向に沿う第2外周壁21fを形成している。
【0030】
底面部材21は、第1外周壁21eから離間した中央部が開口し、矩形の開口部21dを形成している。開口部21dにおける前後方向に沿う外縁は、底面21aから上方に折り曲げられて、第1内壁21bを形成している。開口部21dにおける左右方向に沿う外縁は、底面21aから上方に折り曲げられて、第2内壁21cを形成している。
【0031】
底面部材21の前側及び背側には、それぞれ第2外周壁21fに沿って延びるように、車輪包囲部材22が設けられている。車輪包囲部材22は、底面部材21の左右方向の幅とほぼ同じ長さを有している。車輪包囲部材22は、下部が開放した略箱形状を有し、車輪31における底面部材21の底面21aから上方に位置する部分を略包囲している。車輪包囲部材22は、その上面を形成する上面部22aと、その前後方向の外面を形成する外面部22bと、その左右方向の外面を形成する側面部22c,22cと、その前後方向の内面を形成する内面部22dとを備える。車輪包囲部材22には、平面視で車輪31とほぼ重なる領域に、内面部22dから上面部22aを経て外面部22bに亘って開口する開口部22eが形成されている。
【0032】
底面部材21の第2外周壁21fと車輪包囲部材22の外面部22bとがネジ止めされると共に、底面部材21の第2内壁21cと車輪包囲部材22の内面部22dとがネジ止めされることにより、底面部材21と車輪包囲部材22とは連結される。
車輪包囲部材22における外面部22b及び内面部22dには、一対の係止舌片(係止部)23が設けられている。一対の係止舌片23は、車輪31よりも左右方向外側の位置に、車輪包囲部材22の内側に向けて対向するように、外面部22bの内面及び内面部22dの内面からそれぞれ延出している。係止舌片23は、外面部22b又は内面部22dの一部をカタカナの「コ」字状に切り抜き、切り抜いた部分を折り曲げることにより形成される。係止舌片23は、後述するように、軸受部材4における上方向への過剰な回動を規制するために設けられる。
【0033】
基台部2には、筐体11の高さ方向に延びる高さ調整雄ネジB1が組み合わされる。高さ調整雄ネジB1は、回動規制部材6に連結されると共に、車輪31に対する筐体11の高さを調整する調整部材であり、筐体11の高さ方向に移動可能な雄ネジからなる。
図3及び図6に示すように、高さ調整雄ネジB1は、底面部材21(底面21a)に形成された貫通孔21gに挿通される。高さ調整雄ネジB1は、後処理装置1を床Fに載置した状態においては、後述するように、回動規制部材6の第1雌ネジ部65を介して上方に引き上げられた状態で、高さ調整雄ネジB1のネジ頭が底面部材21の底面21aに係合するため、底面21aから脱落しない。そのため、高さ調整雄ネジB1のネジ頭と第1雌ネジ部65との距離を調整することにより、軸受部材4の回動範囲を規制することができる。
【0034】
車輪包囲部材22の側面部22cには、上下方向に延びる長孔24が形成されている。長孔24には、後述する高さ固定雄ネジB2が上下方向に移動可能に挿通される。
車輪包囲部材22の側面部22cには、長孔24に近接して目盛り26が設けられている。目盛り26は、後述するように、長孔24における高さ固定雄ネジB2の位置を確認するために用いられる。
【0035】
次に、本実施形態の車輪支持機構15の構成について詳述する。
図3及び図4に示すように、4個の車輪31のうち、2個の車輪31が筐体11の前面側に配置されると共に、他の2個の車輪31が筐体11の背側に配置される。
車輪軸32は、車輪31から車輪31の回転軸方向にそれぞれ延びている。車輪軸32が延びる方向は、筐体11の前後方向となる。
【0036】
図6から図10に示すように、軸受部材4は、車輪軸32を回転自在に支持する軸受33を有すると共に、第1端部41及び第2端部42を有する長尺部材である。第2端部42は、軸受33を挟んで第1端部41とは反対側の端部である。つまり、軸受33は、第1端部41と第2端部42との間に位置しており、本実施形態においては、第1端部41と第2端部42との中間位置よりも第2端部42に近い位置に位置している。
車輪31は、車輪軸32が軸受33に回転自在に支持されることにより、軸受部材4に対して回転自在に支持される。
【0037】
軸受部材4は、下方が開放した略箱状の部材であり、その長手方向は、筐体11の左右方向と一致する。軸受部材4は、その長手方向に第1端部41及び第2端部42を有する。第1端部41は、筐体11の左右方向内側の端部である。第2端部42は、筐体11の左右方向外側の端部である。軸受部材4は、その上面を形成する上面部43と、一対の側面部44,44と、一対の対向舌片45,45とを備える。一対の側面部44は、上面部43における筐体11の前後側の辺からそれぞれ垂下する。一対の対向舌片45は、一対の側面部44,44における第2端部42側の辺から、それぞれ対向する方向に延出する舌片である。上面部43と対向舌片45の上縁との間は、回動規制部材6の第2係合部63(詳細は後述)を挿入し得る第1係合部46を形成する。つまり、第1係合部46は、第2端部42の近傍に設けられる。「第2端部42の近傍」とは、第2端部42から10mm以内の範囲をいう。
【0038】
上面部43には、車輪31に対応する領域に、上面開口部43aが設けられている。上面開口部43aは、車輪31の上部を軸受部材4の上面(上面部43)よりも上方に突出させるために設けられる。従って、車輪31の上部は、上面開口部43aを介して上面部43から突出している。
軸受33は、一対の側面部44,44に、車輪軸32に対応してそれぞれ(一対)設けられている。軸受33は、側面部44の下縁の一部が下方に半円状に延出し、延出した部分に車輪軸32に対応する大きさを有する孔部が設けられることにより形成される。
【0039】
次に、回動支持部5について説明する。
図6から図10に示すように、回動支持部5は、軸受部材4における第1端部41の近傍に設けられ、軸受部材4を筐体11(基台部2)に対して回動自在に支持する。「第1端部41の近傍」とは、第1端部41から15mm以内の範囲をいう。
【0040】
本実施形態においては、回動支持部5は、軸受部材4を車輪包囲部材22に対して回転自在に支持する。回動支持部5は、支持軸51と、第1孔部52、第2孔部53とから構成される。第1孔部52は、軸受部材4の側面部44における第1端部41近傍に設けられる。第2孔部53は、車輪包囲部材22の外面部22b及び内面部22dにそれぞれ設けられる。支持軸51は、第1孔部52及び第2孔部53に挿通され、回転自在に支持される。このように構成することにより、回動支持部5は、軸受部材4を車輪包囲部材22に対して回転自在に支持する。
【0041】
次に、回動規制部材6について説明する。
図6から図10に示すように、回動規制部材6は、軸受部材4における第2端部42の近傍を保持することにより、軸受部材4の回動を規制する。回動規制部材6は、高さ調整雄ネジB1に螺合する第1雌ネジ部(雌ネジ部)65及び第1係合部46と係合する第2係合部63を備える。回動規制部材6は、第1雌ネジ部65と高さ調整雄ネジB1とを螺合させることにより、車輪31に対する筐体11(基台部2)の高さを調整可能となっている。また、回動規制部材6は、第1係合部46と第2係合部63とを係合させることにより、軸受部材4を保持可能となっている。回動規制部材6は、全ての車輪31に対応して設けられ、それぞれ独立して前記軸受部材の回動を規制する。
【0042】
本実施形態においては、回動規制部材6は、底板部61と、側板部62と、上板部からなる第2係合部63とを主体とし、正面視で略カタカナの「コ」字状を有する部材である。底板部61は、略矩形状を有し、その中央部に、高さ調整雄ネジB1と螺合する第1雌ネジ部65を備えている。側板部62は、底板部61における筐体11の左右方向外縁から起立している。側板部62には、前後方向に2個の第2雌ネジ部66が設けられている。第2雌ネジ部66には、後述する、目盛り指示部材としての高さ固定雄ネジB2が螺合される。つまり、回動規制部材6は目盛り指示部材を備える。
なお、1個の回動規制部材6に2個の第2雌ネジ部66が設けられている理由は、回動規制部材6の共通化を図るためである。
【0043】
第2係合部63は、側板部62の上縁から筐体11の左右方向内側に延出している。つまり、側板部62に対して同じ方向に、底板部61は側板部62の下縁から延出すると共に、第2係合部63は側板部62の上縁から延出している。
第2係合部63の前後方向の中央部は、第2係合部63の左右方向内縁から外側に向けて凹んでおり、凹部63aを形成している。凹部63aは、第2係合部63と高さ調整雄ネジB1との接触(当たり)を回避する(逃げる)ために設けられる。
第2係合部63は、後述するように、軸受部材4における第1係合部46に挿入されて係合される。
【0044】
回動規制部材6は、更に規制板64,64を備えている。規制板64,64は、側板部62の前縁の下部及び後縁の下部それぞれから、左右方向内側に向けて延出している。規制板64は、高さ固定雄ネジB2を緩めた状態において、軸受部材4(の対向舌片45)との距離を確保(規制)する。
【0045】
回動規制部材6は、高さ調整雄ネジB1と第1雌ネジ部65とを螺合させることにより、高さ調整雄ネジB1と一体となって筐体11の高さ方向に移動し、車輪31に対する回動規制部材6の高さを調整可能となっている。その高さの調整は、第1雌ネジ部65に対して高さ調整雄ネジB1を回転させることにより、行うことができる。
回動規制部材6は、高さ固定雄ネジB2を第2雌ネジ部66に対して締め付けることにより、車輪包囲部材22の側面部22cに固定される。つまり、高さ固定雄ネジB2は、筐体11と回動規制部材6とを固定する機能も備えている。また、高さ固定雄ネジB2は、長孔24に挿入されているため、筐体11(詳細には、車輪包囲部材22)に対する高さを調整できる。
車輪支持機構15においては、目盛り26を利用して、筐体11に対する回動規制部材6の高さを視認可能となっている。つまり、目盛り26に高さ固定雄ネジB2を位置合わせすることにより、筐体11に対する回動規制部材6の高さを調整することができる。
【0046】
以上の構成を有する本実施形態の後処理装置1においては、床F(図1参照)に載置されると、床Fからの反力が、車輪31、車輪軸32及び軸受33を介して、軸受部材4に伝わり、軸受部材4における軸受33の部分が、上方に押圧される。軸受部材4は、第1端部41の近傍において、回動支持部5に回動自在に支持されているため、回動支持部5の支持軸51を回転中心として第2端部42側が上方に回動する。
【0047】
一方、軸受部材4の第1係合部46に回動規制部材6の第2係合部63が挿入されて、両者が係合している。また、回動規制部材6は、高さ調整雄ネジB1と第1雌ネジ部65との螺合により所定の高さに位置した状態で、高さ固定雄ネジB2と第2雌ネジ部66との締結により、車輪包囲部材22の側面部22cに固定されている。ここで、高さ調整雄ネジB1は、回動規制部材6の第1雌ネジ部65を介して上方に引き上げられた状態で、高さ調整雄ネジB1のネジ頭が底面部材21の底面21aに係合する。
そのため、軸受部材4の対向舌片45の上縁が、回動規制部材6の第2係合部63の下面に当接する。従って、回動支持部5を回動中心とする軸受部材4の回動は、回動規制部材6によって規制される。その結果、車輪31に対する軸受部材4における第2端部42の近傍の高さが定まり、延いては、回動支持部5を介して軸受部材4を支持している筐体11(基台部2)の高さが定まる。
【0048】
次に、本実施形態の後処理装置1における、車輪31に対する筐体11の高さを調整する手順について説明する。
例えば、図1に示すように、後処理装置1を床Fに載置した場合に、画像形成装置本体M2に対する後処理装置1の高さが所望の高さよりも高くなる場合がある。このような場合においては、車輪31に対する後処理装置1の筐体11の高さを下げることが望ましい。例えば、以下の手順により、車輪31に対する筐体11の高さを下げることができる。
【0049】
図11に示すように、まず、高さ固定雄ネジB2を緩め、回動規制部材6を上下方向に移動可能とする。なお、回動規制部材6の移動の自由度は、長孔24の形状などによって規制される。次に、回動規制部材6の第1雌ネジ部65に対して高さ調整雄ネジB1を緩める方向に回転させる。これにより、高さ調整雄ネジB1のネジ頭と第1雌ネジ部65とが離間する。回動規制部材6は、第2係合部63が軸受部材4の第1係合部46(対向舌片45)に上方に押圧されることにより、高さ調整雄ネジB1のネジ頭が基台部2の底面21aに当接するまで上方に移動する。従って、軸受部材4における第2端部42の近傍が基台部2の底面部材21から離間する。相対的に、車輪31に対する、基台部2の底面21aの近傍の高さが低くなる。
【0050】
なお、軸受部材4における第2端部42の近傍は、上面部43が係止舌片23に係止すると、それ以上の高さに移動することはない。また、高さ固定雄ネジB2を締め付け、回動規制部材6を側面部22cに固定することにより、目盛り26を利用して、車輪31に対する軸受部材4における第2端部42の近傍の高さ、延いては車輪31に対する筐体11(基台部2)の高さを設定することができる。
【0051】
反対に、以下の手順により、車輪31に対する筐体11(基台部2)の高さを高くすることができる。
まず、高さ固定雄ネジB2を緩め、回動規制部材6を上下方向に移動可能とする。次に、回動規制部材6の第1雌ネジ部65に対して高さ調整雄ネジB1を締め付ける方向に回転させる。これにより、高さ調整雄ネジB1のネジ頭と第1雌ネジ部65とが接近する。回動規制部材6は、第2係合部63が軸受部材4の第1係合部46(対向舌片45)に上方に押圧されることにより、高さ調整雄ネジB1のネジ頭が基台部2の底面21aに当接するまで上方に移動する。従って、軸受部材4における第2端部42の近傍が基台部2の底面部材21に接近する。相対的に、車輪31に対する、基台部2の底面21aの近傍の高さが高くなる。
【0052】
なお、軸受部材4における第2端部42の近傍は、回動規制部材6の底板部61が底面部材21の上面に当接すると、それ以上下側に移動することはない。また、高さ固定雄ネジB2を締め付け、回動規制部材6を側面部22cに固定することにより、目盛り26を利用して、車輪31に対する軸受部材4における第2端部42の近傍の高さ、延いては車輪31に対する筐体11(基台部2)の高さを設定することができる。
【0053】
本実施形態の後処理装置1によれば、以下に示す各効果が奏される。
本実施形態の後処理装置1においては、車輪軸32を回転自在に支持する軸受33を有すると共に第1端部41及び軸受33を挟んで第1端部41とは反対側の第2端部42を有する軸受部材4と、軸受部材4における第1端部41の近傍に設けられ軸受部材4を筐体11に対して回動自在に支持する回動支持部5と、軸受部材4における第2端部42の近傍を保持することにより軸受部材4の回動を規制する回動規制部材6と、回動規制部材6に連結されると共に車輪31に対する筐体11の高さを固定する高さ調整雄ネジB1と、を備えている。そのため、簡易な構成でありながら、前述した手順などにより、車輪31に対する筐体11の高さを容易に調整することができる。
【0054】
また、高さ調整雄ネジB1は、筐体11の底面21aに設けられた貫通孔21gに挿通され、筐体11の高さ方向に移動可能な雄ネジからなり、軸受部材4は、第2端部42の近傍に第1係合部46を備え、回動規制部材6は、高さ調整雄ネジB1に螺合する第1雌ネジ部65及び第1係合部46と係合する第2係合部63を備えている。また、回動規制部材6は、第1雌ネジ部65と高さ調整雄ネジB1とを螺合させることにより高さ調整雄ネジB1と一体となって筐体11の高さ方向に移動し、車輪31に対する筐体11の高さを調整可能となっていると共に、第1係合部46と第2係合部63とを係合させることにより軸受部材4を保持可能となっている。
そのため、例えば、第1雌ネジ部65に対して高さ調整雄ネジB1を回転させることにより、車輪31に対する筐体11の高さを容易に調整することができる。
【0055】
また、筐体11は、軸受部材4における第2端部42の近傍を係止する係止舌片23を備えている。そのため、筐体11に対して回動規制部材6が保持されていない状態においても、軸受部材4における上方向への過剰な回動を規制することができる。
【0056】
また、筐体11は目盛り26を備え、回動規制部材6は高さ固定雄ネジB2を備え、目盛り26に高さ固定雄ネジB2を位置合わせすることにより、筐体11に対する回動規制部材6の高さを視認可能となっている。そのため、例えば、1個の車輪31に対応する回動規制部材6を所望の高さに設定する目盛り26の値を定め、その値を他の3個の車輪31に対応する回動規制部材6に対して適用することにより、全ての車輪31それぞれに対応する回動規制部材6の高さを容易に調整することができる。
【0057】
また、高さ固定雄ネジB2は、筐体11に対して回動規制部材6を保持する機能を備えているため、例えば、車輪支持機構15を備えた後処理装置1を移動させるときに、車輪31がガタつきにくいという効果が得られる。
【0058】
また、軸受部材4の上面部43に、車輪31の上側を軸受部材4の上面よりも上方に突出させ得る上面開口部43aを備えているため、例えば、軸受部材4の大きさに制限されずに車輪31の径を大きくできるという効果が得られる。
【0059】
また、回動規制部材6は、全ての車輪31に対応して設けられ、それぞれ独立して軸受部材4の回動を規制する。そのため、車輪31ごとにその近傍の筐体11の高さを独立して調整することができる。例えば、凹凸のある床Fや傾斜した床Fに後処理装置1を載置したときに効果的である。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、ネジの螺合を利用して回動規制部材6と筐体11との相対的位置の調整、相対的な位置の固定などを行い、車輪31に対する筐体11の高さを調整可能に構成されているが、該高さを調整する構成は、これに制限されない。
高さ調整雄ネジB1の軸方向は、鉛直上向きに制限されず、鉛直線に対して若干傾いていてもよい。
画像形成装置M1(画像形成装置本体M2)の種類は、特に制限されず、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機などでもよい。
本発明の車輪支持機構は、後処理装置1以外の装置などにおける車輪支持機構に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の画像形成装置M1を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の後処理装置1について、画像形成装置本体M2との連結部側から視た斜視図である。
【図3】図2に示す後処理装置1における基台部2を下方から視た斜視図である。
【図4】外装板を外した状態の基台部2を上方から視た斜視図である。
【図5】図3に示す基台部2の部分拡大図である。
【図6】図4に示すVI−VI線断面図である。
【図7】図5に示す状態から車輪包囲部材22を取り外した状態を示す図である。
【図8】図7に示す状態から、底面部材21などを取り外した状態を示す図である。
【図9】軸受部材4から回動規制部材6を分離させた状態を示す図である。
【図10】(a)は、回動規制部材6を示す斜視図で、(b)は、(a)とは反対側から視た回動規制部材6を示す斜視図である。
【図11】車輪31に対する基台部2の高さを低く調整した状態を示す断面図(図6対応図)である。
【図12】車輪31に対する基台部2の高さを高く調整した状態を示す断面図(図6対応図)である。
【符号の説明】
【0062】
1……後処理装置、11……筐体、15……車輪支持機構、21a……底面、21g……貫通孔、23……係止舌片(係止部)、26……目盛り、31……車輪、32……車輪軸、33……軸受、4……軸受部材、41……第1端部、42……第2端部、43……上面部、43a……上面開口部、46……第1係合部、5……回動支持部、6……回動規制部材、63……第2係合部、65……第1雌ネジ部(雌ネジ部)、B1……高さ調整雄ネジ(調整部材、雄ネジ)、B2……高さ固定雄ネジ(目盛り指示部材)、M1……画像形成装置、M2……画像形成装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底面から突出する車輪を該筐体に支持し、該車輪に対する該筐体の高さを調整し得る車輪支持機構であって、
前記車輪から該車輪の回転軸方向に延びる車輪軸と、該車輪軸を回転自在に支持する軸受を有すると共に第1端部及び該軸受を挟んで該第1端部とは反対側の第2端部を有する軸受部材と、該軸受部材における該第1端部の近傍に設けられ該軸受部材を前記筐体に対して回動自在に支持する回動支持部と、前記軸受部材における前記第2端部の近傍を保持することにより前記軸受部材の回動を規制する回動規制部材と、該回動規制部材に連結されると共に前記車輪に対する前記筐体の高さを調整する調整部材と、を備えた車輪支持機構。
【請求項2】
前記調整部材は、前記筐体の底面に設けられた貫通孔に挿通され、該筐体の高さ方向に移動可能な雄ネジからなり、
前記軸受部材は、前記第2端部の近傍に第1係合部を備え、
前記回動規制部材は、前記雄ネジに螺合する雌ネジ部及び前記第1係合部と係合する第2係合部を備え、該雌ネジ部と前記雄ネジとを螺合させることにより該雄ネジと一体となって前記筐体の高さ方向に移動し、前記車輪に対する前記筐体の高さを調整可能となっていると共に、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることにより前記軸受部材を保持可能となっている請求項1に記載の車輪支持機構。
【請求項3】
前記雌ネジ部に対して前記雄ネジを回転させることにより前記車輪に対する前記筐体の高さを調整可能となっている請求項2に記載の車輪支持機構。
【請求項4】
前記筐体は、前記軸受部材における前記第2端部の近傍を係止する係止部を備えている請求項1から3のいずれかに記載の車輪支持機構。
【請求項5】
前記筐体は目盛りを備え、前記回動規制部材は目盛り指示部材を備え、
前記目盛りに前記目盛り指示部材を位置合わせすることにより前記筐体に対する前記回動規制部材の高さを視認可能となっている請求項1から4のいずれかに記載の車輪支持機構。
【請求項6】
前記目盛り指示部材は、前記筐体に対して前記回動規制部材を保持する機能を備えている請求項5に記載の車輪支持機構。
【請求項7】
前記軸受部材は、該軸受部材の上面を形成する上面部を有し、該上面部は、前記車輪の上側を該軸受部材の上面よりも上方に突出させ得る上面開口部を備える請求項1から6の何れかに記載の車輪支持機構。
【請求項8】
前記車輪は、前記筐体に複数設けられ、
前記回動規制部材は、全ての前記車輪に対応して設けられ、それぞれ独立して前記軸受部材の回動を規制する請求項1から7のいずれかに記載の車輪支持機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の車輪支持機構が設けられた、画像形成装置の後処理装置。
【請求項10】
画像形成装置本体と、請求項1から9の何れかに記載の後処理装置とが連結されて構成される画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−217182(P2009−217182A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63367(P2008−63367)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】