説明

車輪止め

【課題】非駐車時及び駐車時の何れにおいても、車輪受体と地面との間に段差ができることを防止することを目的とする。
【解決手段】車輪止め10を、凹部14に設けられた地面12と、凹部14に被さり、周縁部を凹部14の開口縁部に固定されたカバー16と、凹部14とカバー16との間に配設されたゲル状流動体18とで構成する。これにより、非駐車時及び駐車時の何れにおいても、カバー16と地面12との間に段差ができることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪止めに関する。
【背景技術】
【0002】
地面に設けられた凹部上に地面と面一となるように配設された載置板(車輪受体)が、車両から荷重を受けて変位する車輪止めが考案されている(例えば、特許文献1参照)。この車輪止めでは、載置板に車両から荷重がかかった状態で、載置板の一部が地面から起き上がる等、地面と載置板との間に段差ができるようになっている。
【特許文献1】特開平9−317235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事実を考慮し、非駐車時及び駐車時の何れにおいても、車輪受体と地面との間に段差ができることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の車輪止めは、凹部と、周縁部を前記凹部の開口縁部に固定されて前記凹部の少なくとも一部を被覆し、車両から荷重を受けると前記凹部の底側に少なくとも一部が移動する車輪受体と、を有することを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載の車輪止めでは、凹部の少なくとも一部を被覆する車輪受体が、車両から荷重を受けると凹部の底側へ少なくとも一部を移動させることで、車輪止めの機能が発揮される。ここで、車輪受体の周縁部が凹部の開口縁部に固定されており、車輪受体の周縁部が凹部の開口縁部に対して相対的に変位不能となっているので、車輪受体と地面との間に段差ができることを防止できる。
【0006】
請求項2に記載の車輪止めは、請求項1に記載の車輪止めであって、前記車輪受体は、前記凹部の表面を覆うシート状部材とされ、前記凹部と前記シート状部材との間に、車両から荷重を受けると変形し、車両から荷重を受けなくなると形状復元する形状復元手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の車輪止めでは、凹部と該凹部の表面を覆うシート状部材との間に配設された形状復元手段が、車両から荷重を受けると変形し、車両から荷重を受けなくなると形状復元する。これによって、車両から荷重を受けたときのシート状部材の凹部の底側への変形を妨げることなく、車両から荷重を受けなくなったときのシート状部材の形状復元を促進させることが可能である。
【0008】
請求項3に記載の車輪止めは、請求項2に記載の車輪止めであって、前記形状復元手段は、車両から荷重を受けると移動する流動体であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の車輪止めでは、形状復元手段を、車両から荷重を受けると移動する流動体とすることで、形状復元手段がゴムやスポンジ等のように繰り返しの使用によってへたることを防止している。これによって、形状復元手段の耐久性の向上が可能となり、以って、車輪止め全体の耐久性の向上が可能となる。
【0010】
請求項4に記載の車輪止めは、請求項2に記載の車輪止めであって、前記形状復元手段は、車両から荷重を受けると弾性収縮する弾性部材であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の車輪止めでは、形状復元手段を、車両から荷重を受けると弾性収縮する部材とすることで、車両から荷重を受けた形状復元手段の水平方向への広がりを抑制している。これによって、形状復元手段の設置スペースの狭小化が可能となり、以って、車輪止め全体の小型化が可能となる。
【0012】
請求項5に記載の車輪止めは、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車輪止めであって、前記シート状部材は、弾性を有する部材であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の車輪止めでは、シート状部材が弾性を有る部材となっていることによって、シート状部材を張られた状態で凹部の開口縁部に固定することが可能となっており、車両から荷重を受けていない状態のシート状部材を平坦に構成することが可能となっている。
【0014】
請求項6に記載の車輪止めは、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車輪止めであって、人の重量を受けたときの前記車輪受体の変形速度が、車両から荷重を受けたときの前記車輪受体の変形速度よりも遅くなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の車輪止めでは、車輪受体が、人の重量を受けたときは、車両から荷重を受けたときよりもゆっくりと凹部の底側へ移動する。
【0016】
請求項7に記載の車輪止めは、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車輪止めであって、前記車輪受体が人の重量を受けてもほとんど変形しないように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の車輪止めでは、車輪受体に人の重量がかかった際に、車輪受体が凹部の底側へほとんど移動しない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、非駐車時及び駐車時の何れにおいても、車輪受体と地面との間に段差ができることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の車輪止めの一実施形態を図1乃至図5に従って説明する。
【0020】
なお、図中矢印Pは駐車スペースに駐車する車両の進行方向である駐車方向を、矢印Gは重力方向を示す。
【0021】
図1、図2に示すように、本発明の第1実施形態の車輪止め10は、公共駐車場用や家庭用等の駐車スペース11の地面12に設けられた凹部14と、凹部14に被せられた車輪受体としてのカバー16と、凹部14とカバー16との間に配設された形状復元手段、流動体としてのゲル状流動体18とを備えている。
【0022】
凹部14は、駐車スペース11の駐車方向と直交する方向(以下、横方向という)から見た断面形状が逆台形状となっており、略水平な底部14Aの駐車方向上流側に傾斜部14Bが形成され、下流側に傾斜部14Cが形成されている。傾斜部14Cは、傾斜部14Bよりも急勾配になっており、傾斜部14Bよりも車輪20が乗り越え難くなっている。
【0023】
また、図3に示すように、凹部14は、平面視にて、駐車スペース11の横方向を長手方向とする矩形状をしており、凹部14の長手方向の両端部に車両1の一対の後輪20A又は一対の後輪20Bが、落ち込むようになっている。
【0024】
また、図1、図2に示すように、凹部14には、凹部14の表面形状に倣った形状のフレーム22が嵌め込まれており、このフレーム22の周縁部にカバー16の周縁部が固定されている。カバー16は、弾性を有するゴム素材等の弾性変形可能な素材により形成されたシート状部材であり、張られた平坦な状態でフレーム22に固定されている。
【0025】
ここで、駐車スペース11の地面12は、土間24の上に仕上げ材層26を形成した構成となっているが、カバー16は、仕上げ材層26と面一となるように配設されており、カバー16と地面12との境界に段差ができないようになっている。
【0026】
また、ゲル状流動体18は、変形可能な袋28に封入されており、凹部14の長手方向の全域に渡って、凹部14とカバー16との間に充填されている。このゲル状流動体18の流動抵抗(硬度)は、車輪20から入力される車両1の荷重により圧迫されると直ちに流動し、人の体重程度の荷重を受けただけでは急速には流動しない程度に、設定されている。
【0027】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0028】
図3に示すように、車両1が後向き又は前向きに駐車スペース11に進入し、車輪20が車輪止め10上に来ると、図2に示すように、車輪20からカバー16、及びゲル状流動体18に車両1の荷重がかかり、ゲル状流動体18が圧迫される。
【0029】
これによって、ゲル状流動体18が、特に、車輪20の軸方向(凹部14の長手方向)へ流動して、ゲル状流動体18の荷重入力位置における量が減少し、ゲル状流動体18及びカバー16の荷重入力位置に、車輪20の形状に倣った形状の凹みができ、車輪20が凹部14の底部14Aまで沈み込む。
【0030】
この際、図3に示すように、ゲル状流動体18(斜線で図示)は、凹部14の長手方向中央側に偏り、凹部14の長手方向中央部において、膨れ上がる。
【0031】
そして、図2に示すように、さらに車両1が駐車方向に進み、車輪20が、傾斜部14Bよりも急勾配である傾斜部14Cに、カバー16を介して当ることによって、車輪止め10の機能が発揮されるようになる。
【0032】
一方、車両1が駐車スペース11から退出する際に、車輪20が、傾斜部14Cよりも勾配が緩やかである傾斜部14Bを乗り越え、カバー16及びゲル状流動体18に車両1の荷重がかからなくなり、ゲル状流動体18が圧迫状態から開放されると、凹部14の長手方向中央側に偏って膨れ上がっていたゲル状流動体18が、凹部14の長手方向両端側へ流動することによって、ゲル状流動体18の荷重入力位置における凹みが無くなる。
【0033】
即ち、ゲル状流動体18が元の形状に復帰し、それに伴って、カバー16も元の平坦な状態に復帰する。
【0034】
また、カバー16上に人が乗った際には、ゲル状流動体18に急速な流動が起きることがなく、カバー16が急速に凹むことがないようになっている。
【0035】
以上、本実施形態では、カバー16の周縁部をフレーム22の周縁部を介して凹部14の開口縁部に固定したことによって、カバー16の周縁部が、地面12に対して相対的に重力方向に変位しないので、カバー16と地面12との間に段差や隙間ができることを防止できる。
【0036】
また、車両1の荷重を受けて潰れ変形し、車両1の荷重を受けなくなると形状復元するゲル状流動体18を、凹部14とカバー16との間に配設したことによって、車両1の荷重を受けたカバー16の凹部14の底側への変形を妨げることなく、車両1の荷重がかからなくなったカバー16の形状復元を促進することが可能である。
【0037】
また、凹部14とカバー16との間において車両1の荷重を受けると潰れ変形し、車両1の荷重を受けなくなると形状復元する形状復元手段をゲル状流動体18としたことによって、形状復元手段がゴムやスポンジ等のように繰り返しの使用によってへたることを防止できるので、形状復元手段の耐久性の向上が可能であり、以って、車輪止め10全体の耐久性の向上が可能である。
【0038】
また、カバー16を、弾性を有するシート状部材としたことによって、カバー16を張られた状態で凹部14の開口縁部に固定することが可能なので、車両1の荷重がかかっていない状態のカバー16を平坦に構成することが可能である。
【0039】
なお、本実施形態では、左側の車輪20に対して機能する車輪止めと、右側の車輪20に対して機能する車輪止めとを一体で構成したが、これらは分割しても良い。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0041】
図4に示すように、車輪止め100では、凹部14とカバー16との間に、形状復元手段としての弾性部材30が配設されている。この弾性部材30は、スポンジ等の発泡弾性体で形成されており、凹部14とカバー16との間に隙間無く充填されている。
【0042】
なお、弾性部材30としては、車両の荷重を受けた際に弾性収縮可能である部材であり、且つ、人の体重程度の荷重を受けて変形しない(ほとんど変形しない)、または、人の体重程度の荷重を受けた時には、車両の荷重を受けた時のような急速な変形をしないというばね性を有する部材であれば適用可能であり、樹脂製、ゴム製、及び金属製の弾性体等も適用可能である。
【0043】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0044】
車輪20からカバー16、及び弾性部材30に車両の荷重がかかると、弾性部材30が弾性収縮して、弾性部材30及びカバー16の荷重入力位置に、車輪20の形状に倣った形状の凹みができ、車輪20が凹部14の底部14Aまで沈み込む。これによって、車輪止め100の機能が発揮されるようになる。
【0045】
一方、カバー16及び弾性部材30に車両の荷重がかからなくなると、弾性部材30が弾性復帰し、弾性部材30の凹みが無くなって、カバー16も元の平坦な状態に復帰する。
【0046】
また、カバー16上に人が乗った際には、弾性部材30及びカバー16が、車両の荷重を受けた際のように急速に凹むことが無く、または、凹まない。
【0047】
以上、本実施例では、凹部14とカバー16との間において車両の荷重を受けると潰れ変形し、車両の荷重を受けなくなると形状復元する形状復元手段を弾性部材30としたことによって、車両の荷重入力時の形状復元手段の水平方向への広がりを抑制できるので、形状復元手段の設置スペースを狭小化でき、車輪止め100全体を小型化できる。
【0048】
次に、車輪止め10、100の変形例(開示例)について説明する。
【0049】
図5(A)、(B)に示すように、車輪止め200は、駐車スペース11の地面12に設けられた凹部32と、凹部32に被せられたカバー34とを備えている。凹部32は、駐車スペース11の横方向から見た断面形状が、駐車方向を長手方向とする矩形状となっている。また、カバー34は、弾性変形可能な板材であり、凹部32の開口縁部の駐車方向上流側に片持ち状態で略水平に支持されている。また、カバー34の凹部32の開口縁部に支持されている部分を除く周縁部と、凹部32の側壁との間には、隙間が空けられており、カバー34の弾性変形が凹部32の側壁によって妨げられることが無いようになっている。
【0050】
ここで、カバー34は、車輪20から車両の荷重を受けた際に、駐車方向下流側(非支持側)が垂れ下がるように弾性変形し、人の体重程度の荷重を受けた際には弾性変形しないように、ばね定数を設定されている。
【0051】
次に、本実施例による作用について説明する。
【0052】
車輪20からカバー34に車両の荷重がかかると、カバー34が、非支持側が垂れ下がるように弾性変形し、車輪20が凹部32の底側に沈み込む。これによって、車輪止め200が機能を発揮できるようになる。
【0053】
一方、カバー34に車両の荷重がかからなくなると、カバー34が元の略水平な状態に弾性復帰する。
【0054】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0055】
例えば、本実施形態では、車輪受体と形状復元手段とを別体としたが、請求項1に記載の発明の実施形態では、これらを一部材で構成しても良いし、或いは別体のものを接着等により一体化した構成にしても良い。例えば、前者の例としては、ブロック状の弾性部材の周縁部を凹部の開口縁部に固定したもの等を挙げることができる。
【0056】
また、本実施形態では、シート状部材を弾性を有する部材としたが、請求項2に記載の発明の実施形態では、シート状部材が弾性を有する部材であることは必須では無い。例えば、弛んだ状態の弾性が無いシート状部材の周縁部を凹部の開口縁部に固定したもの等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車輪止めを示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車輪止めを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車輪止めを示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車輪止めを示す断面図である。
【図5】(A)、(B)は、本発明の第1、第2実施形態に係る車輪止めの変形例(開示例)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 車輪止め
14 凹部
16 カバー(車輪受体、シート状部材)
18 ゲル状流動体(形状復元手段、流動体)
30 弾性部材(形状復元手段)
100 車輪止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部と、
周縁部を前記凹部の開口縁部に固定されて前記凹部の少なくとも一部を被覆し、車両から荷重を受けると前記凹部の底側に少なくとも一部が移動する車輪受体と、
を有することを特徴とする車輪止め。
【請求項2】
前記車輪受体は、前記凹部の表面を覆うシート状部材とされ、
前記凹部と前記シート状部材との間に、車両から荷重を受けると変形し、車両から荷重を受けなくなると形状復元する形状復元手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車輪止め。
【請求項3】
前記形状復元手段は、車両から荷重を受けると移動する流動体であることを特徴とする請求項2に記載の車輪止め。
【請求項4】
前記形状復元手段は、車両から荷重を受けると弾性収縮する弾性部材であることを特徴とする請求項2に記載の車輪止め。
【請求項5】
前記シート状部材は、弾性を有する部材であることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の車輪止め。
【請求項6】
人の重量を受けたときの前記車輪受体の変形速度が、車両から荷重を受けたときの前記車輪受体の変形速度よりも遅くなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車輪止め。
【請求項7】
前記車輪受体が人の重量を受けてもほとんど変形しないように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車輪止め。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−121364(P2008−121364A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308854(P2006−308854)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】