説明

車輪

【課題】走行性・安定性に優れる利点を保ちつつ、コンパクトに梱包できる車輪を提供する。
【解決手段】円周方向に複数個に均等分割された円弧部材3を、順次連結した円輪体4を備え、かつ、円輪体4の連結補強するための側盤2を有している。また、上記円輪体4は、同一形状を有する3個の円弧部材3をもって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手押式刈払機等の車両を作業者が操作する際に、窪地や悪路面を軽い手押し力で円滑に走行できるように、地面に転動する車輪を大きく形成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輪の直径を大きくしたことにより、凹凸の多い地面や斜面での走行性・安定性が増し、車両の操作が容易となる利点があった。
しかし、大径の樽型に形成された車輪は、箱詰めすると梱包が大型となり、輸送コストが嵩むという欠点があった。
解決しようとする課題は、直径の大きな車輪をコンパクトに梱包できない点である。
【0005】
そこで、本発明は、走行性・安定性に優れる利点を保ちつつコンパクトに梱包できる車輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る車輪は、円周方向に複数個に均等分割された円弧部材を、順次連結した円輪体を備え、かつ、該円輪体の連結補強するための側盤を有するものである。
また、上記円輪体は、同一形状を有する3個の円弧部材をもって構成されているものである。
【0007】
また、エンジンを保持するフレームと、作業者が歩きながら手で握るハンドルと、上記エンジンにて回転駆動される刈り刃と、を具備した手押式刈払機に使用されるものである。
また、上記側盤は、その外周端縁に複数の連結突片を有し、該連結突片を介して、上記円弧部材を順次連結するように構成しているものである。
【0008】
また、上記円弧部材は、トレッド壁部と、その両端に連設されるショルダー壁部とから成り、合成樹脂にて作製されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車輪によれば、分解状態での容積を減少でき、工場出荷の際にコンパクトに梱包できる。よって、コンテナに多数収容することが可能となり、輸送コスト及び在庫コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の車輪を使用した手押式刈払機の一例を示した側面図である。
【図2】手押式刈払機の一例を示した平面図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示した側面図である。
【図4】分解状態を示した側面図である。
【図5】車輪を示した正面図である。
【図6】分解状態を示した側面図である。
【図7】円弧部材を示した斜視図である。
【図8】図6のA−A断面図である。
【図9】車輪を示した要部破断正面図である。
【図10】側盤を示した側面図である。
【図11】側盤を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1及び図2に示すように、車輪1は、凹凸の多い地面や斜面を走行する農業用器械等に取着されて使用される。
本実施の形態に於て、車輪1は、エンジン11を保持するフレーム13と、作業者が歩きながら手で握るハンドル12と、エンジン11にて回転駆動される刈り刃14と、を具備した手押式刈払機10に取着されている。
【0012】
図3〜図8に於て、車輪1は、円周方向に(扇型に)均等分割された3個の円弧部材3,3,3を順次連結して円輪体4を形成し、円輪体4の左右両側面に側盤2,2を取り付けている。車輪1は、凹凸面や窪地での転動に適した直径の大きな(軸心方向寸法の小さな)樽型として形成されている。
【0013】
円弧部材3は、円周方向に湾曲するトレッド壁部31と、その両端に連設されるショルダー壁部32,32とから成り、合成樹脂の射出成型にて3個を同一形状に作製される。
トレッド壁部31は、所定の滑り止め構造を有するトレッドパターン部31aと、その両端に連設される傾斜面部31b,31bから成る。なお、トレッドパターン部31aは、円弧部材3の成型加工時に一体形成されるもよく、又は、円弧部材3…を順次連結して樽型の車輪1を形成した後に滑り止めが施された薄膜材を巻き付けるものとするも好ましい。
【0014】
ショルダー壁部32には、円弧部材3の一端3a寄りに、2つの連結孔32a,32bが貫設され、かつ、他端3b寄りに、連結孔32cが貫設されている。最も一端3a側に配設された連結孔32aと、他端3b側の連結孔32cとは、円弧部材3の円弧の中心角αが120°と成る位置に配設されている。
円弧部材3の他端3bは、他の円弧部材3の一端3aに嵌合するように形成されている。円弧部材3の他端3bを、一端3aに嵌入すると、一端3a側の連結孔32aと、他端3b側の連結孔32cと、が重なって、連通するように構成されている。つまり、円輪体4の連結状態では、一の円弧部材3の一端3aに、他の円弧部材3の他端3bが、連結孔32aと連結孔32cとが重なる深さ寸法まで挿入される。
【0015】
また、円弧部材3の一端3aには、複数の差込片部33…が凸設され、かつ、他端3bには、差込片部33…を挿入可能な複数の差込スリット部34…が形成されている。円輪体4は、一の円弧部材3の差込片部33…を、他の円弧部材3の差込スリット部34…に、挿入して、左右方向にがたつくことの無いよう連結状態を保持している(図8参照)。
【0016】
図9〜図11に示すように、側盤2は、略円形に形成され、その中心O付近には、軸受孔部22が形成され、軸受孔部22の周りに放射状の凸状リブ部21…が突設されている。側盤2は、その外周端縁に3つの連結突片5,5,5を一体状に突設している。連結突片5には、2つの締結孔5a,5aが円周方向に並べて貫設されている。側盤2,2は、連結突片5を介して円弧部材3に取着され、連結孔32a,32b(図4参照)の位置に対応するように締結孔5a,5aを配設している。
車輪1は、円輪体4の左右両側に取着された側盤2,2(図6では左側を図示省略した)を、パイプ部材6及び(図示省略の)車軸を介して相互に連結している。なお、軸受孔部22には、外方から摺接軸受部材23を嵌入している。この摺接軸受部材23の孔部に、車軸が挿入される。また、パイプ部材6の両端開口部に、軸受孔部22を形成する内方突状の円筒部を挿入して、パイプ部材6によって、車輪1の剛性と強度を向上している。
【0017】
上述した本発明の車輪の使用方法(作用)について説明する。
図1及び図2に示すような手押式刈払機10は、分解した状態で箱に梱包されて輸送される。一般的に、梱包に用いられる箱は、直方体であり、エンジン11と、ハンドル12と、フレーム13等の部品が入れられた箱の内部には、多くの隙間が生じる。他の構成部品に比べて小さく薄い円弧部材3,3,3及び側盤2,2を、その隙間を埋めるように収容する。
【0018】
図3に示すような車輪1を組み立てる工程としては、先ず、箱から取り出した一の円弧部材3の一端3aに、他の円弧部材3の他端3bを接続し、3個の円弧部材3,3,3を順次連結して、タイヤ状の円輪体4を形成する。この際、円弧部材3は、一端3aの差込片部33を、他の円弧部材3の他端3bに設けられた差込スリット部34に挿入して、円輪体4の連結状態を補強する。
【0019】
次に、円輪体4の両側面に、2枚の側盤2,2を取着する。この際、側盤2は、連結突片5,5,5を介して、円輪体4を構成する全ての円弧部材3,3,3を一体状に連結する。円弧部材3の連結孔32bには予めナット部材を装入しておき、その後、側盤2の締結孔5aからボルトを螺進させて、側盤2と円輪体4とを螺着する。なお、側盤2は、連結突片5の締結孔5a,5aから円弧部材3の連結孔32a,32bにリベットを挿通して鋲着し、円輪体4を強固な連結状態としてもよい。
【0020】
このようにして、3個の円弧部材3,3,3と、2枚の側盤2,2と、を組み立てて車輪1を形成する。車輪1は、外周面に滑り止めのためのトレッドパターン部31aが全周に渡って連続し、かつ、トレッド壁部31及びショルダー壁部32,32と側盤2,2とによって包囲された中空樽型に形成される。
【0021】
その後、車輪1の軸受孔部22,22に、車軸を通し、手押式刈払機10のフレーム13に枢着する。車輪1は、摺接軸受部材23,23を介して、フレーム13に回転自在に枢着され、手押式刈払機10の下端にて、地面Gに転動しつつ手押式刈払機10の荷重を支持する。車輪1の両側面は、側盤2,2の放射状の凸状リブ部21…により補強され、エンジン11等の機械部品を積載した手押式刈払機10の荷重を十分に支持する強度を有する。
【0022】
また、車輪1は、大径であるため、窪みや出っ張り、又は、砂利などが混じった凹凸の多い地面Gであっても、手押式刈払機10を軽い手押し力でスムーズに走行させる。さらに、車輪1は、合成樹脂製であり、十分な強度を確保しつつ軽量に作製される。
【0023】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、車輪1は、手押式刈払機10での使用に限定されるものではなく、簡易耕運機や子供用乗物等の車両を支持する用途で使用するも望ましい。
【0024】
以上のように、本発明は、円周方向に(扇型に)複数個に均等分割された円弧部材3を、順次連結した円輪体4を備え、かつ、円輪体4の連結補強するための側盤2,2を有するので、直径の大きな車輪1であっても、分解状態での容積を減少できるため、コンパクトに梱包できる。よって、コンテナに多数収容することが可能となり、輸送コストが低減できる。
【0025】
また、円輪体4は、同一形状を有する3個の円弧部材3,3,3をもって構成されているので、車輪1の強度と剛性が向上し、耐久性に優れる。また、円弧部材3の製作が安価かつ容易に行える。
【0026】
また、エンジン11を保持するフレーム13と、作業者が歩きながら手で握るハンドル12と、エンジン11にて回転駆動される刈り刃14と、を具備した手押式刈払機10に使用されるので、箱詰め出荷される際に、他の構成部品と比較して大きな容積を占める車輪1を、円弧部材3,3,3及び側盤2,2に分解した状態として、効率よく収納することができる。即ち、車輪1は、地面Gの凹凸、又は、窪みや出っ張りを容易に乗り越えるための大きさを保ちつつ、コンパクトに梱包して効率よく輸送及び在庫することが可能となる。
【0027】
また、側盤2は、その外周端縁に複数の連結突片5を有し、連結突片5を介して、円弧部材3…を順次連結するように構成しているので、円輪体4の連結を補強することができ、車輪1の耐久性を向上できる。
【0028】
また、円弧部材3は、トレッド壁部31と、その両端に連設されるショルダー壁部32,32とから成り、合成樹脂にて作成されているので、車輪1が中空に形成され軽量である。
【符号の説明】
【0029】
2 側盤
3 円弧部材
4 円輪体
5 連結突片
10 手押式刈払機
11 エンジン
12 ハンドル
13 フレーム
14 刈り刃
31 トレッド壁部
32 ショルダー壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に複数個に均等分割された円弧部材(3)を、順次連結した円輪体(4)を備え、かつ、該円輪体(4)の連結補強するための側盤(2)(2)を有することを特徴とする車輪。
【請求項2】
上記円輪体(4)は、同一形状を有する3個の円弧部材(3)(3)(3)をもって構成されている請求項1記載の車輪。
【請求項3】
エンジン(11)を保持するフレーム(13)と、作業者が歩きながら手で握るハンドル(12)と、上記エンジン(11)にて回転駆動される刈り刃(14)と、を具備した手押式刈払機(10)に使用される請求項1又は2記載の車輪。
【請求項4】
上記側盤(2)は、その外周端縁に複数の連結突片(5)を有し、該連結突片(5)を介して、上記円弧部材(3)…を順次連結するように構成している請求項1,2又は3記載の車輪。
【請求項5】
上記円弧部材(3)は、トレッド壁部(31)と、その両端に連設されるショルダー壁部(32)(32)とから成り、合成樹脂にて作製されている請求項1,2,3又は4記載の車輪。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−55735(P2011−55735A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206662(P2009−206662)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000112934)ブイアイブイエンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】