説明

軌道分岐部の異物除去装置

【課題】軌道分岐部の周辺において、ノズル噴射圧力の確保するために必要な仕様の空気源装置やタンクを設置するスペースの確保が困難な軌道分岐部であっても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供する。
【解決手段】第1ノズルユニット14は、軌道分岐部100の前方部に配置される。第1サブタンク13は、第1ノズル配管19を介して第1ノズルユニット14に圧縮空気を供給する。メインタンク12は、第1サブタンク13よりも容量の大きいタンクとして設けられ、タンク間配管18を介して第1サブタンク13に圧縮空気を供給する。空気源装置11は、メインタンク12に圧縮空気を供給する。軌道分岐部100に対して、第1サブタンク13が近傍に配置され、メインタンク12及び空気源装置11が遠方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本レールとこの基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部において設けられ、圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、降雪地方では、鉄道の軌道分岐部において、電熱式、熱風式、温水式等の融雪装置が用いられている。しかし、このような融雪装置によると、車両が軌道分岐部を通過する際にその振動によって落とされる落下雪氷を短時間で溶かすことが難しく、また、雪氷がバラスト(軌道において敷き詰められた砕石や砂利)上に落下した際の衝撃による飛石等を除去することはできない。そこで、圧縮空気を噴射することで軌道分岐部における基本レールとトングレールとの間に落下した異物を除去する異物除去装置が提案されている(特許文献1乃至特許文献6参照)。
【0003】
特許文献1乃至特許文献6においては、いずれも、ノズルが設けられた配管ユニットに対して、圧縮空気を供給する空気源装置が所定の配管を介して接続する異物除去装置が開示されている。そして、特許文献1乃至特許文献6においては、空気源装置が軌道分岐部の近傍の領域に配置されている構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−240605号公報(第3頁、第3図)
【特許文献2】特開平7−54317号公報(第3頁、第2図)
【特許文献3】特開2000−144602号公報(第3頁、第1図)
【特許文献4】特開2000−144670号公報(第3頁、第1図)
【特許文献5】特開平7−54318号公報(第3頁、第2図)
【特許文献6】特開2001−131935号公報(第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1乃至特許文献6に開示された異物除去装置は、いずれも、軌道分岐部の近傍に配置された空気源装置におけるタンクから配管を介してノズルに圧縮空気が供給されるように構成されている。このように、ノズルに対して軌道分岐部の近傍から圧縮空気を供給することで、空気を供給する配管が長くなって圧力損失が増大してしまうことによるノズルでの噴射圧力の降下を抑制することができる。しかしながら、配管長が長くなってしまうことによる圧力損失の増大によるノズル噴射圧力の低下を抑制するためには、上述のように軌道分岐部の近傍に空気源装置や圧縮空気を貯留するタンクを配置する必要があり、軌道分岐部の周囲にそのスペースが確保できることが必要となる。従って、異物除去装置を設置するそれぞれの軌道分岐部において要求されるノズル噴射圧力を確保することができる大型の仕様の空気源装置やタンクを配置するための十分なスペースを確保できない軌道分岐部に対しては、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を確保する異物除去装置を設置することが困難であるという問題がある。
【0006】
とくに、新幹線の線路構造等のように、地上より高い位置に架け渡された高架式軌道に配置された軌道分岐部などでは、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを確保することが困難である。また、新幹線の線路構造の場合、軌道分岐部が軌道方向に長く延びる大型の構造であるため、空気源装置やタンクからノズルまでの配管の長さが長くなってしまい、圧力降下が生じ易く、十分なノズル噴射圧力を確保することがさらに困難になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、軌道分岐部の周辺において、ノズル噴射圧力の確保するために必要な仕様の空気源装置やタンクを設置するスペースの確保が困難な軌道分岐部であっても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、基本レールと当該基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部に対して設けられ、圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置であって、前記軌道分岐部において前記基本レールと前記トングレールとが当接可能な前方側に位置する前方部に配置され、圧縮空気を噴射する第1ノズルユニットと、前記第1ノズルユニットに接続する第1ノズル配管と、前記第1ノズル配管に接続するとともに前記第1ノズルユニットに圧縮空気を供給する第1サブタンクと、前記第1サブタンクよりも容量の大きいタンクとして設けられ、前記第1サブタンクにタンク間配管を介して接続するとともに当該第1サブタンクに圧縮空気を供給するメインタンクと、前記メインタンクに圧縮空気を供給する空気源装置と、を備え、前記軌道分岐部に対して、前記第1サブタンクが近傍に配置され、前記メインタンク及び前記空気源装置が遠方に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、軌道分岐部の前方部において、空気源装置から供給された圧縮空気はメインタンク及び第1サブタンクを経て第1ノズルユニットから噴射されることになる。このため、第1ノズルユニットにおいて要求されるノズル噴射圧力にて所定の噴射量を少なくとも1回分確保するだけの容量が確保された小容量の第1サブタンクにより、十分な異物除去能力を発揮することができる。そして、第1ノズルユニットから圧縮空気が噴射されても、すぐに第1サブタンクよりも大容量のメインタンクから第1サブタンクに圧縮空気を供給して次回以降の噴射に備えることができる。さらに、軌道分岐部に対して、小型の第1サブタンクが近傍に、大型のメインタンクと空気源装置とが遠方に配置されるため、設置スペースが狭い軌道分岐部であっても、その軌道分岐部の近傍に大型のタンクや空気源装置を配置しなくても十分なノズル噴射圧力を確保することができる圧縮空気供給系統を備える異物除去装置を構成することができる。
従って、本発明によると、軌道分岐部の周辺において、ノズル噴射圧力の確保するために必要な仕様の空気源装置やタンクを設置するスペースの確保が困難な軌道分岐部であっても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0010】
第2発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明の軌道分岐部の異物除去装置において、地上より高い位置に架け渡された高架式軌道において配置された前記軌道分岐部に対して設けられ、前記メインタンク及び前記空気源装置は、前記高架式軌道の下方に配置され、前記第1サブタンクは、前記高架式軌道において、軌道方向と垂直な方向における中央部分に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、高架式軌道に配置された軌道分岐部において、大型のメインタンクや空気源装置は十分なスペースを確保し易い高架式軌道の下方に配置され、軌道分岐部の近傍における高架式軌道の中央部分の狭い領域を活用して、小型の第1サブタンクが配置される。このため、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを確保することが困難な高架式軌道の軌道分岐部においても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0012】
第3発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明の軌道分岐部の異物除去装置において、地上より高い位置に架け渡された高架式軌道において配置された前記軌道分岐部に対して設けられ、前記メインタンク及び前記空気源装置は、前記高架式軌道の下方に配置され、前記第1サブタンクは、前記高架式軌道において、軌道方向と垂直な方向における端部に設置される点検用通路の下方に配置されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、高架式軌道に配置された軌道分岐部において、大型のメインタンクや空気源装置は十分なスペースを確保し易い高架式軌道の下方に配置され、軌道分岐部の近傍における高架式軌道の端部の点検用通路の下方の狭い領域を活用して、小型の第1サブタンクが配置される。このため、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを軌道分岐部の近傍の領域に確保することが困難な高架式軌道の軌道分岐部においても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0014】
第4発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかの軌道分岐部の異物除去装置において、前記第1ノズル配管は、複数備えられ、前記第1サブタンクは、複数の前記第1ノズル配管のそれぞれに対応して接続するよう複数備えられていることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、第1ノズル配管及び第1サブタンクが複数備えられ、各第1ノズル配管に対応して各第1サブタンクが設けられる。このため、軌道方向に長く延びる大型の軌道分岐部であっても、第1ノズル配管及び第1サブタンクを軌道方向に沿って配置することで、軌道方向に長く沿って配置される各第1ノズルユニットにおいて十分なノズル噴射圧力を確保することができる構成を実現することができる。
【0016】
第5発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第4発明の軌道分岐部の異物除去装置において、複数の前記第1サブタンクは、軌道に沿って配置される複数の前記第1ノズル配管に沿って配置されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、軌道に沿って配置される各第1ノズル配管に沿って各第1サブタンクが配置される。このため、各第1ノズル配管が接続する各第1サブタンクを軌道に沿わせて軌道分岐部に近接するように配置することができ、第1ノズルユニットと第1サブタンクとを接続する第1ノズル配管の配管長さを短くする構成を実現し易くすることができる。これにより、第1ノズル配管での圧量損失をさらに抑制し、さらにノズル噴射圧力を確保し易い構成を実現することができる。
【0018】
第6発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明乃至第5発明のいずれかの軌道分岐部の異物除去装置において、前記軌道分岐部における前方側とは反対側の後方側でレールが交差するクロッシング部に配置され、圧縮空気を噴射する第2ノズルユニットと、前記第2ノズルユニットに接続する第2ノズル配管と、前記第2ノズル配管に接続するとともに前記第2ノズルユニットに圧縮空気を供給する第2サブタンクと、を更に備え、前記メインタンクは、前記第2サブタンクよりも容量の大きいタンクとして設けられ、前記第2サブタンクにタンク間配管を介して接続するとともに当該第2サブタンクに圧縮空気を供給し、前記軌道分岐部に対して、前記第2サブタンクが近傍に配置され、前記メインタンク及び前記空気源装置が遠方に配置されていることを特徴とする。
【0019】
この発明によると、軌道分岐部の後方側のクロッシング部において、空気源装置から供給された圧縮空気はメインタンク及び第2サブタンクを経て第2ノズルユニットから噴射されることになる。このため、前方部の第1ノズルユニットに圧縮空気を供給する空気源装置及びメインタンクをクロッシング部においても共通化して用いることができる。そして、小型の第2サブタンクを介して圧縮空気が供給されるため、設置スペースが狭いクロッシング部でも、第2ノズルユニットにおいて十分なノズル噴射圧力を確保することができる。従って、設置スペースが狭く軌道方向においても離れて位置する前方部とクロッシン部とにそれぞれ配置されている第1及び第2ノズルユニットに対して、共通の空気源装置及びメインタンクから効率よく圧縮空気を供給することができ、さらに十分なノズル噴射圧力を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、軌道分岐部の周辺において、ノズル噴射圧力の確保するために必要な仕様の空気源装置やタンクを設置するスペースの確保が困難な軌道分岐部であっても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態に係る軌道分岐部の異物除去装置は、軌道分岐部において設けられて圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した異物を除去する軌道分岐部の異物除去装置として広く適用できるものである。
【0022】
(軌道分岐部の構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る軌道分岐部の異物除去装置1(以下、単に「異物除去装置1」という)とこの異物除去装置1が設けられた軌道分岐部100とを模式的に示す平面図である。図1に示す軌道分岐部100は、地上より高い位置に架け渡された高架式軌道において配置されている。図2は、軌道分岐部100が配置される高架式軌道101についての軌道方向(レールが延びる方向)と垂直な断面を模式的に示した図であり、軌道分岐部100に対する軌道方向における近傍の位置における断面を示している。
【0023】
図2に示すように、高架式軌道101は、例えば、新幹線用の線路構造として設けられ、上部構造101a及び下部構造101bを備えて構成されている。上部構造101aは、地上より高い位置に設置されるとともに、軌道(路盤上に配置されるレール、まくらぎ、道床などの構造物)が配設されるよう構成されている。下部構造101bは、地上から上方に向かって延びるように設置されるとともに、上部構造101aを上方にて支持する脚部構造として構成されている。この高架式軌道101では、上部構造101aに設けられた軌道のレール102上を二点鎖線で示す車両103が通過することになる。また、高架式軌道101においては、軌道方向と垂直な方向における端部において、作業者が軌道の点検のために通行する点検用通路104が配置されている。尚、図1では、上部構造101aにおける軌道領域と地上における高架下領域とを二点鎖線の境界で区分けして示しており、軌道領域を二点鎖線に対して矢印Dで示す領域として、高架下領域を二点鎖線に対して矢印Eで示す領域として、それぞれ示している。
【0024】
図1に示すように、軌道分岐部100においては、一対の基本レール105、105、一対のトングレール106、106、リードレール107、一対の翼レール(ウィングレール)108、108、可動レール109、主レール110、転轍機111(図3にて二点鎖線で示す)、などが設置されている。尚、図3は、軌道分岐部100における一対の基本レール105、105及び一対のトングレール106、106の近傍の領域を示す平面図である。
【0025】
図1及び図3に示すように、一対の基本レール105、105は、所定の間隔を離間した状態で配設され、この一対の基本レール105、105間に、一対のトングレール106、106が配設されている。また、図3に示すように、基本レール105及びトングレール106は、まくらぎ上に床板やベアリング床板を介して配設されており、トングレール106はベアリング床板により移動可能に構成されている。これにより、各トングレール106は、各基本レール105に対して当接及び離間可能に設けられている。
【0026】
ここで、軌道分岐部100において基本レール105とトングレール106とが当接可能な側を前方側とし、軌道分岐部100におけるその反対側を後方側とする。図1では、軌道分岐部100における前方の方向を矢印Aで、後方の方向を矢印Bで示している。通常、軌道分岐部100に対して前方側から進入した車両が、軌道分岐部100において進行方向を規定され、軌道分岐部100の後方側へと走行していくことになる。
【0027】
また、図1に示すように、軌道分岐部100は、軌道方向において破線で区分けした各領域(ポイント部P、リード部L、クロッシング部C)に分けて把握することができる。ポイント部Pは、軌道分岐部100の前方側において基本レール105とトングレール106とが当接する部分を含む領域として構成されている。クロッシング部Cは、軌道分岐部100の後方側においてレールが交差する部分を含む領域として構成されている。リード部Lは、ポイント部Pとクロッシング部Cとの間でポイント部Pとクロッシング部Cとを結ぶ部分の領域として構成されている。これらの領域のうち、ポイント部P及びリード部Lが、軌道分岐部100において前方側に位置する本実施形態の前方部を構成している。尚、リード部Lにはリードレール107が配置され、クロッシング部Cには翼レール108や可動レール109が配置されている。
【0028】
軌道分岐部100においては、図3に示すように、各トングレール106の前方側における端部同士は、転轍機111に備えられる転轍棒111aによって一定間隔が維持された状態で連結されている。そして、図示しない制御装置からの指令に基づいて転轍機111が作動することにより、基本レール105に対してトングレール106が当接又は離間する方向に移動し、軌道分岐部100における走行レールの切り換え動作(ポイントの切り換え動作)が行われるようになっている。また、このとき、図1に示すクロッシング部Cの可動レール109は、転轍機111の作動に伴いトングレール106と連動して変位するように構成され、固定部112を支点構造として揺動するように変位し、その前方側の端部が翼レール108に対して当接又は離間するように構成されている。
【0029】
(異物除去装置の構成)
次に、本実施形態に係る異物除去装置1の構成について説明する。異物除去装置1は、上述した軌道分岐部100に設けられ、圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した雪や飛石などの異物を除去するために設置される。図1乃至図3に示すように、異物除去装置1は、空気源装置11、メインタンク12、第1サブタンク13、第1ノズルユニット14、第2サブタンク15、第2ノズルユニット16、空気配管17、タンク間配管18、第1ノズル配管19、第2ノズル配管20等を備えて構成されている。
【0030】
図1及び図2に示すように、空気源装置11及びメインタンク12は、高架式軌道101の下方の領域である地上に配置されている。一方、第1サブタンク13及び第2サブタンク15は、高架式軌道101において、軌道分岐部100が設けられる上部構造101aに配設され、軌道方向と垂直な方向における中央部分に配置されている。これらの配置構成により、軌道分岐部100に対して、第1サブタンク13及び第2サブタンク15が近傍に配置され、空気源装置11及びメインタンク12が遠方に配置されることになる。また、第1ノズルユニット14は、軌道分岐部100の前方部における基本レール105とトングレール106との間の領域において、基本レール105が途中から緩やかに湾曲している分岐線側とその反対側で基本レール105が真っ直ぐに延びている基準線側とにそれぞれ配置されている。また、第2ノズルユニット16は、クロッシング部Cにおける一対の翼レール108の間の領域に配置されている。
【0031】
図1及び図2に示す空気源装置11は、コンプレッサとして構成されており、メインタンク12に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源として設けられている。空気源装置11とメインタンク12とは空気配管17を介して接続されており、空気源装置11にて生成された圧縮空気は、空気配管17を介してメインタンク12に供給されて貯留される。空気源装置11は、前述のように、地上に配置され、地上において容易に保守作業を行うことができるようになっている。
【0032】
図1及び図2に示すように、メインタンク12は、第1サブタンク13及び第2サブタンク15よりも容量の大きい大型のタンクとして設けられている。例えば、異物除去装置1が新幹線の線路構造において適用される場合であれば、第1サブタンク13の容量が約120リットル程度で、メインタンク12の容量が約2000リットル程度に設定されてもよい。このメインタンク12は、第1サブタンク13及び第2サブタンク15に対して途中から分岐する配管構造を有するタンク間配管18を介して接続している。これにより、メインタンク12は、第1サブタンク13及び第2サブタンク15に圧縮空気を供給するように構成されている。尚、タンク間配管18は、図2に示すように、下部構造101bに沿って地上から上方に向かって延びるように敷設され、メインタンク18と第1タンク13及び第2タンク15とを接続している。
【0033】
図1乃至図3に示すように、第1サブタンク13は複数設けられており、これらの複数の第1サブタンク13が軌道に沿って直列に配置されている。各第1サブタンク13には、タンク間配管18が分岐してメインタンク12から接続している。そして、第1サブタンク13は、第1ノズル配管19に接続しており、この第1ノズル配管19を介して第1ノズルユニット14に圧縮空気を供給するタンクとして設けられている。尚、第1サブタンク13の容量(例えば、前述した約120リットル)は、第1ノズルユニット14において異物除去能力の観点から要求されるノズル噴射圧力にて所定の噴射量を少なくとも1回分確保するだけの容量が確保されるように設定されている。
【0034】
図1及び図3に示すように、第1ノズル配管19は、第1ノズルユニット14と第1サブタンク13とを接続する配管として設けられており、圧縮空気が流動してくる上流側において第1サブタンク13に接続し、下流側において分岐して基準線側の第1ノズルユニット14と分岐線側の第1ノズルユニット14とにそれぞれ接続している。この第1ノズル配管19は複数備えられており、第1サブタンク13が複数の第1ノズル配管19のそれぞれに対応して接続している。そして、図1及び図3に示すように、複数の第1ノズル配管19は軌道に沿って配置されており、これらの複数の第1ノズル配管19に沿って複数の第1サブタンク13が配置されている。
【0035】
また、第1ノズル配管19には、その途中において電磁切換弁21が設けられており、図示しない制御装置からの指令に基づいてこの電磁切換弁21の作動が切り換えられるように構成されている。このため、第1ノズル配管19は電磁切換弁21により連通状態と遮断状態とのいずれかに切り換えられることになる。これにより、第1ノズル配管19を介した第1ノズルユニット14への圧縮空気の供給が制御され、第1ノズルユニット14から噴射される圧縮空気の噴射動作が制御されるように構成されている。尚、電磁切換弁21は、基準線側の第1ノズルユニット14及び分岐線側の第1ノズルユニット14のそれぞれに対応して設けられている。
【0036】
図1及び図3に示すように、圧縮空気を噴射する第1ノズルユニット14は、軌道分岐部100における前方部に配置され、基準線側及び分岐線側のそれぞれにおいて基本レール105とトングレール106との間の領域に軌道に沿って複数配置されている。また、図4は、図3のF−F線矢視断面図である。尚、図4では、第1ノズル配管19については一部断面図として図示しており、トングレール106については基本レール105に当接した状態も二点鎖線で図示している。この図4によく示すように、第1ノズルユニット14は、トングレール106と干渉しない位置に配置されており、ノズルヘッダー22、連通部材23、取付部材24、上ノズル25、下ノズル26等を備えて構成されている。
【0037】
第1ノズル配管19の開口端部に対して、中空の円筒状部材として形成された連通部材23が接続し、この連通部材23にさらにノズルヘッダー22が接続して取り付けられている。そして、連通部材23は、その先端側が基本レール105に貫通形成された貫通孔105aを貫通するよう配置され、その周囲に取り付けられる取付部材24を介して基本レール105に対して固定して取り付けられている。
【0038】
ノズルヘッダー22は、両端部が閉じるとともに内部が中空の細長い直方体の管状に形成されており、その中空の内部が連通部材23を介して第1ノズル配管19と連通している。このノズルヘッダー22は、連通部材23を介して基本レール105の側部に沿って固定されている。また、ノズルヘッダー22の上下には、このノズルヘッダー22の長手方向に沿って直列に配置された複数の上ノズル25及び下ノズル26が設けられている。このため、複数の上ノズル25及び下ノズル26が基本レール105に沿って配置された状態になっている。そして、各上ノズル25には、前方側に向かって開口形成され、且つ、トングレール106側に向かって僅かに傾くとともに上方に向かって僅かに傾くように開口形成されたノズル孔が形成されている。これにより、基本レール105とトングレール106との間に落下してくる異物を効率よく前方側の上方に吹き飛ばして除去することができるように構成されている。一方、各下ノズル26には、前方側に向かって開口形成され、且つ、トングレール106側に向かって僅かに傾くとともに下方に向かって僅かに傾くように開口形成されたノズル孔が形成されている。これにより、基本レール105とトングレール106との間に落下した異物を前方側に向かって軌道面に跳ね返させるようにして効率よく吹き飛ばして除去することができるように構成されている。
【0039】
図5は、軌道分岐部100のクロッシング部Cにおける翼レール108とその近傍の領域を示す平面図である。図1及び図5に示すように、第2サブタンク15は、圧縮空気が流動してくる上流側でタンク間配管18を介してメインタンク12に接続し、下流側で第2ノズル配管20に接続している。これにより、第2サブタンク15は、第2ノズル配管20を介して第2ノズルユニット16に圧縮空気を供給するタンクとして設けられている。尚、第1サブタンク13の容量は、第2ノズルユニット16において異物除去能力の観点から要求されるノズル噴射圧力にて所定の噴射量を少なくとも1回分確保するだけの容量が確保されるように設定されている。
【0040】
図6は、図5において破線Gで囲んだ領域を拡大して示す拡大図(図6(a))と、図5のH−H線矢視断面図(図6(b))とを示したものである。図1、図5及び図6に示すように、第2ノズル配管20は、第2ノズルユニット16と第2サブタンク15とを接続する配管として設けられている。そして、第2ノズル配管20において第2ノズルユニット16に接続する先端側は、一対の翼レール108間に向かって延びるように配置されている。また、第2ノズル配管20には、その途中において電磁切換弁27が設けられており、図示しない制御装置からの指令に基づいてこの電磁切換弁27の作動が切り換えられるように構成されている。このため、第2ノズル配管20は電磁切換弁27により連通状態と遮断状態のいずれかに切り換えられることになる。これにより、第2ノズル配管20を介した第2ノズルユニット16への圧縮空気の供給が制御され、第2ノズルユニット16から噴射される圧縮空気の噴射動作が制御されるように構成されている。
【0041】
図1、図5及び図6に示すように、圧縮空気を噴射する第2ノズルユニット16は、軌道分岐部100におけるクロッシング部Cに配置されており、クロッシング部Cにおいては一対の翼レール108間に配置されている。そして、この第2ノズルユニット16は、内部が中空の筒状の部材として形成されており、筒状の一端側において第2ノズル配管20の先端に接続されている。一方、第2ノズルユニット16における筒状の他端側は翼レール108間で可動レール109の前方側の先端に対向するように後方側に向かって配置されている。また、第2ノズルユニット16の他端側には、プレート状の蓋部材28が取り付けられている。蓋部材28には、大径ノズル孔29と小径ノズル孔30とがそれぞれ複数形成され、小径ノズル孔30は大径ノズル孔29の周囲に配置されるように形成されている。これらの大径ノズル孔29及び小径ノズル孔30は、翼レール108間で可動レール109の先端に向かって後方側に圧縮空気を噴射するように開口形成されている。これにより、翼レール108と可動レール109との間に落下した異物を軌道分岐部100の後方側に向かって吹き飛ばして除去できるように構成されている。
【0042】
(異物除去装置の作動)
上述した異物除去装置1においては、空気源装置11にて圧縮空気が生成され、空気配管17を介してメインタンク12に供給されて貯留されている。また、メインタンク12からタンク間配管18を介して各第1サブタンク13及び第2サブタンク15に対して圧縮空気が供給されて貯留されている。このとき、第1サブタンク13及び第2サブタンク15においては、メインタンク12に貯留されている圧縮空気とほぼ同程度の圧力の圧縮空気が貯留されている。また、第1サブタンク13及び第2サブタンク15においては、前述のように、第1ノズルユニット14及び第2ノズルユニット16において異物除去能力の観点から要求されるノズル噴射圧力にて所定の噴射量を少なくとも1回分確保するだけの容積の圧縮空気が貯留されている。
【0043】
そして、上述した状態において、図示しない制御装置が、例えば、異物の落下検知センサ(図示せず)や降雪センサ(図示せず)等の各種センサでの検知結果、或いは転轍機111の動作信号(ポイントの切り換え信号)等の各種機器の動作指令信号などに基づいて、電磁切換弁21及び電磁切換弁27の切り換え指令が発せられることで作動して、異物除去動作が行われることになる。また、上記のポイント切り換え信号に伴って、トングレール106の前方側の端部が基本レール105に対して当接又は離間し、可動レール109が翼レール108に対して当接又は離間する。
【0044】
尚、車両運行中の時間帯等の異物除去動作が必要となる可能性のある時間帯においては、空気源装置11から供給される圧縮空気は、メインタンク12を介して第1サブタンク13及び第2サブタンク15に貯留されている。この状態から、前述のように、制御装置からの指令に基づいて電磁切換弁21、27が切り換えられることで、第1サブタンク13に貯留された圧縮空気が第1ノズル配管19を介して第1ノズルユニット14に流動し、第2サブタンク15に貯留された圧縮空気が第2ノズル配管20を介して第2ノズルユニット16に流動する。そして、第1ノズルユニット14における上ノズル25及び下ノズル26から圧縮空気が噴射され、この圧縮空気により、軌道分岐部100の前方部における基本レール105とトングレール106との間に落下した異物が前方側に吹き飛ばされて除去されることになる。また、第2ノズルユニット16におけるノズル孔(29、30)から圧縮空気が噴射され、この圧縮空気により、軌道分岐部100のクロッシング部Cにおける翼レール108と可動レール109との間に落下した異物が後方側に吹き飛ばされて除去されることになる。
【0045】
上述した圧縮空気の噴射動作が完了した後は、電磁切換弁21が切り換えられて第1ノズル配管19が遮断され、メインタンク12から供給された圧縮空気が第1サブタンク13に充填されて次回の噴射に備えて貯留されることになる。また、電磁切換弁27も切り換えられて第2ノズル配管20が遮断され、メインタンク12から供給された圧縮空気が第2サブタンク15に充填されて次回の噴射に備えて貯留されることになる。
【0046】
(異物除去装置の効果)
以上説明した異物除去装置1によると、軌道分岐部100の前方部において、空気源装置11から供給された圧縮空気はメインタンク12及び第1サブタンク13を経て第1ノズルユニット14から噴射されることになる。このため、第1ノズルユニット14において要求されるノズル噴射圧力にて所定の噴射量を少なくとも1回分確保するだけの容量が確保された小容量の第1サブタンク13により、十分な異物除去能力を発揮することができる。そして、第1ノズルユニット14から圧縮空気が噴射されても、すぐに第1サブタンク13よりも大容量のメインタンク12から第1サブタンク13に圧縮空気を供給して次回以降の噴射に備えることができる。さらに、軌道分岐部100に対して、小型の第1サブタンク13が近傍に、大型のメインタンク12と空気源装置11とが遠方に配置されるため、設置スペースが狭い軌道分岐部100であっても、その軌道分岐部100の近傍に大型のタンクや空気源装置を配置しなくても十分なノズル噴射圧力を確保することができる圧縮空気供給系統を備える異物除去装置1を構成することができる。
【0047】
従って、本実施形態によると、軌道分岐部100の周辺において、ノズル噴射圧力の確保するために必要な仕様の空気源装置やタンクを設置するスペースの確保が困難な軌道分岐部100であっても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、異物除去装置1を提供することができる。
【0048】
また、異物除去装置1によると、高架式軌道101に配置された軌道分岐部100において、大型のメインタンク12や空気源装置11は十分なスペースを確保し易い高架式軌道101の下方に配置され、軌道分岐部100の近傍における高架式軌道101の中央部分の狭い領域を活用して、小型の第1サブタンク13が配置される。このため、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを軌道分岐部100の近傍の領域に確保することが困難な高架式軌道101の軌道分岐部100においても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0049】
また、異物除去装置1によると、第1ノズル配管19及び第1サブタンク13が複数備えられ、各第1ノズル配管19に対応して各第1サブタンク13が設けられる。このため、軌道方向に長く延びる大型の軌道分岐部100であっても、第1ノズル配管19及び第1サブタンク13を軌道方向に沿って配置することで、軌道方向に長く沿って配置される各第1ノズルユニット14において十分なノズル噴射圧力を確保することができる構成を実現することができる。
【0050】
また、異物除去装置1によると、軌道に沿って配置される各第1ノズル配管19に沿って各第1サブタンク13が配置される。このため、各第1ノズル配管19が接続する各第1サブタンク13を軌道に沿わせて軌道分岐部100に近接するように配置することができ、第1ノズルユニット14と第1サブタンク13とを接続する第1ノズル配管19の配管長さを短くする構成を実現し易くすることができる。これにより、第1ノズル配管19での圧量損失をさらに抑制し、さらにノズル噴射圧力を確保し易い構成を実現することができる。
【0051】
また、異物除去装置1によると、軌道分岐部100の後方側のクロッシング部Cにおいて、空気源装置11から供給された圧縮空気はメインタンク12及び第2サブタンク15を経て第2ノズルユニット16から噴射されることになる。このため、前方部の第1ノズルユニット14に圧縮空気を供給する空気源装置11及びメインタンク12をクロッシング部Cにおいても共通化して用いることができる。そして、小型の第2サブタンク15を介して圧縮空気が供給されるため、設置スペースが狭いクロッシング部Cでも、第2ノズルユニット16において十分なノズル噴射圧力を確保することができる。従って、設置スペースが狭く軌道方向においても離れて位置する前方部とクロッシン部Cとにそれぞれ配置されている第1及び第2ノズルユニット(14、16)に対して、共通の空気源装置11及びメインタンク12から効率よく圧縮空気を供給することができ、さらに十分なノズル噴射圧力を確保することができる。
【0052】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
【0053】
(1)本実施形態においては、圧縮空気を噴射する構成が軌道分岐部の前方部及びクロッシング部の両方に配置されている場合を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよく、圧縮空気を噴射する構成が前方部のみに設けられている異物除去装置であってもよい。また、第1ノズルユニット及び第2ノズルユニットの形態については、本実施形態で例示したものに限られず、適宜設計を変更して実施してもよい。
【0054】
(2)本実施形態においては、高架式軌道に配置された軌道分岐部に対して適用される場合を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよく、高架式軌道以外の軌道において配置された軌道分岐部に対して本発明が適用されてもよい。
【0055】
(3)本実施形態では、高架式軌道における軌道分岐部の近傍に配置される第1サブタンク及び第2サブタンクについて、高架式軌道の軌道方向と垂直な方向における中央部分に配置されている場合を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよく、他の配置構成であってもよい。図7は、第1サブタンク及び第2サブタンクの配置構成についての変形例を説明するための高架式軌道の模式的断面図であり、本実施形態の図2に対応する図である。尚、図7においては、第1サブタンクの配置構成のみを例示しており、また、本実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示す変形例においては、第1サブタンク31は、高架式軌道101において、軌道方向と垂直な方向における端部に設置される点検用通路104の下方に配置されている。また、図示しない第2サブタンクも点検用通路104の下方に配置されている。通常、点検用通路104の下方のスペースは、狭いスペースであり、大型の空気源装置を配置することが困難だが、小型の第1サブタンク31や第2サブタンクであれば、かかる狭いスペースを利用して配置することができる。
【0057】
従って、図7に示す変形例に係る異物除去装置によると、高架式軌道101に配置された軌道分岐部において、大型のメインタンク12や空気源装置11は十分なスペースを確保し易い高架式軌道101の下方に配置され、軌道分岐部100の近傍における高架式軌道101の端部の点検用通路104の下方の狭い領域を活用して、小型の第1サブタンク31及び第2サブタンクが配置される。このため、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを軌道分岐部の近傍の領域に確保することが困難な高架式軌道101の軌道分岐部においても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0058】
(4)また、第1サブタンク及び第2サブタンクの配置構成については、他の変形例を実施することもできる。図8は、第1サブタンク及び第2サブタンクの配置構成についての他の変形例を説明するための高架式軌道の模式的断面図であり、本実施形態の図2に対応する図である。尚、図8においては、図7の変形例と同様に、第1サブタンクの配置構成のみを例示しており、また、本実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図8に示す変形例においては、第1サブタンク32は、高架式軌道101において、軌道方向と垂直な方向における端部に設けられた上部構造101aの側壁101cのさらに外側に取り付けられたタンク設置デッキ33に配置されている。また、図示しない第2サブタンクもタンク設置デッキ33に配置されている。このように、上部構造101aの側壁101cの外側において小スペースのタンク設置デッキ33を設けることで、小型の第1サブタンク32や第2サブタンクを配置することができる。
【0060】
従って、図8に示す変形例に係る異物除去装置によると、高架式軌道101に配置された軌道分岐部において、大型のメインタンク12や空気源装置11は十分なスペースを確保し易い高架式軌道101の下方に配置され、高架式軌道101の上部構造101aの側壁101cの外側に設けられたタンク設置デッキ33に小型の第1サブタンク32及び第2サブタンクが配置される。このため、要求される異物除去能力を発揮するノズル噴射圧力を達成するために十分な仕様の大型の空気源装置やタンクを設置するスペースを軌道分岐部の近傍の領域に確保することが困難な高架式軌道101の軌道分岐部においても、十分なノズル噴射圧力を確保することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0061】
(5)第1サブタンクや第2サブタンクの形状については、種々変更して実施することができる。例えば、直径が大きい配管状に形成されたヘッダー配管構造として第1サブタンクや第2サブタンクを形成することもできる。図9は、変形例に係る第1サブタンク34を示す模式図である。尚、図9(a)においては第1サブタンク34に対して1つの第1ノズル配管19aが接続された例を、図9(b)においては第1サブタンク34に対して複数の第1ノズル配管19bが接続された例をそれぞれ示している。
【0062】
図9に示すように、直径が大きい配管状に形成されたヘッダー配管構造として第1サブタンク34を形成することもできる。この第1サブタンク34には、タンク間配管18を介して圧縮空気が供給され、この圧縮空気が大径の配管内部に貯留される。この第1サブタンク34は、その長手方向が軌道方向に沿うように配置される。そして、図9(a)に示す変形例では、電磁切換弁21aが作動することで、図示しない各第1ノズルユニットに分岐して接続する第1ノズル配管19aを介して圧縮空気が供給されることになる。一方、図9(b)に示す変形例では、各電磁切換弁21bが作動することで、図示しない各第1ノズルユニットにそれぞれ接続する各第1ノズル配管19bを介して圧縮空気が供給されることになる。このように、大径のヘッダー配管構造として形成された第1サブタンク34によると、軌道方向に沿った細長い領域に配置することができるため、少ないスペースであってもさらに容易に第1サブタンクを配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、軌道分岐部に設けられ、圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軌道分岐部の異物除去装置とこの異物除去装置が設けられた軌道分岐部とを模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す軌道分岐部が配置される高架式軌道についての模式的断面図である。
【図3】図1に示す軌道分岐部における基本レール及びトングレールの近傍の領域を示す平面図である。
【図4】図3のF−F線矢視断面図である。
【図5】図1に示す軌道分岐部におけるクロッシング部における翼レールとその近傍の領域を示す平面図である。
【図6】図5における一部拡大図及び図5のH−H線矢視断面図である。
【図7】第1サブタンク及び第2サブタンクの配置構成についての変形例を説明するための高架式軌道の模式的断面図である。
【図8】第1サブタンク及び第2サブタンクの配置構成についての他の変形例を説明するための高架式軌道の模式的断面図である。
【図9】第1サブタンクの変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 軌道分岐部の異物除去装置
11 空気源装置
12 メインタンク
13 第1サブタンク
14 第1ノズルユニット
18 タンク間配管
19 第1ノズル配管
100 軌道分岐部
105 基本レール
106 トングレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本レールと当該基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部に対して設けられ、圧縮空気を噴射することでレールとレールとの間に落下した異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記軌道分岐部において前記基本レールと前記トングレールとが当接可能な前方側に位置する前方部に配置され、圧縮空気を噴射する第1ノズルユニットと、
前記第1ノズルユニットに接続する第1ノズル配管と、
前記第1ノズル配管に接続するとともに前記第1ノズルユニットに圧縮空気を供給する第1サブタンクと、
前記第1サブタンクよりも容量の大きいタンクとして設けられ、前記第1サブタンクにタンク間配管を介して接続するとともに当該第1サブタンクに圧縮空気を供給するメインタンクと、
前記メインタンクに圧縮空気を供給する空気源装置と、
を備え、
前記軌道分岐部に対して、前記第1サブタンクが近傍に配置され、前記メインタンク及び前記空気源装置が遠方に配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
地上より高い位置に架け渡された高架式軌道において配置された前記軌道分岐部に対して設けられ、
前記メインタンク及び前記空気源装置は、前記高架式軌道の下方に配置され、
前記第1サブタンクは、前記高架式軌道において、軌道方向と垂直な方向における中央部分に配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項3】
請求項1に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
地上より高い位置に架け渡された高架式軌道において配置された前記軌道分岐部に対して設けられ、
前記メインタンク及び前記空気源装置は、前記高架式軌道の下方に配置され、
前記第1サブタンクは、前記高架式軌道において、軌道方向と垂直な方向における端部に設置される点検用通路の下方に配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記第1ノズル配管は、複数備えられ、
前記第1サブタンクは、複数の前記第1ノズル配管のそれぞれに対応して接続するよう複数備えられていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
複数の前記第1サブタンクは、軌道に沿って配置される複数の前記第1ノズル配管に沿って配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記軌道分岐部における前方側とは反対側の後方側でレールが交差するクロッシング部に配置され、圧縮空気を噴射する第2ノズルユニットと、
前記第2ノズルユニットに接続する第2ノズル配管と、
前記第2ノズル配管に接続するとともに前記第2ノズルユニットに圧縮空気を供給する第2サブタンクと、
を更に備え、
前記メインタンクは、前記第2サブタンクよりも容量の大きいタンクとして設けられ、前記第2サブタンクにタンク間配管を介して接続するとともに当該第2サブタンクに圧縮空気を供給し、
前記軌道分岐部に対して、前記第2サブタンクが近傍に配置され、前記メインタンク及び前記空気源装置が遠方に配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−7422(P2010−7422A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170581(P2008−170581)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(594034832)東北交通機械株式会社 (7)
【Fターム(参考)】