軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造
【課題】 軟弱地盤において外的な要因による建築物の不同沈下を防止する好適な構造を提供する。
【解決手段】 建物部1と建物部1を支える基礎2とから成る建築物が占有する敷地占有エリア4の直下の空間である地中直下領域3を挟むようにして、一対のパネル状の外部補強部材5が埋設され、地中直下領域3内に一対のパネル状の内部補強部材8が埋設される。各補強部材5,8は、土に比べて十分に高い剛性を有する。外部補強部材5は基礎2に固定されておらず、基礎2は内部補強部材8に載っていない。外部補強部材5は、垂直な姿勢であり互いに平行に向かい合っている。内部補強部材8も垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合っており、地中直下領域3の中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている。
【解決手段】 建物部1と建物部1を支える基礎2とから成る建築物が占有する敷地占有エリア4の直下の空間である地中直下領域3を挟むようにして、一対のパネル状の外部補強部材5が埋設され、地中直下領域3内に一対のパネル状の内部補強部材8が埋設される。各補強部材5,8は、土に比べて十分に高い剛性を有する。外部補強部材5は基礎2に固定されておらず、基礎2は内部補強部材8に載っていない。外部補強部材5は、垂直な姿勢であり互いに平行に向かい合っている。内部補強部材8も垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合っており、地中直下領域3の中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、軟弱地盤に対して建築物を建築する際に施工される建築物の不同沈下防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部における地価高騰や用地不足等を背景として、以前は沼沢や田圃であった土地に建築物を建てることが多くなってきている。このような土地は、いわゆる軟弱地盤と呼ばれる土地であり、通常の工法では、建築物の沈下事故が発生し易い問題がある。
建築物の沈下は、建築基準法上はある程度許容されている。即ち、建築物の竣工後に建築物の自重によってある程度の深さまで同沈下することは、許容されている。この深さは、建築物の構造、形態、規模等によって異なるが、例えば鉄筋コンクリート構造でべた基礎の建築物の場合、10〜15cmである。尚、同沈下とは、建築物全体が傾かずに等しく沈下することである。一方、建築物が傾くことになる不同沈下は許容されておらず、軟弱地盤に建築物を建築する際には、不同沈下をいかに防ぐかが課題となっている。
【特許文献1】特開平9−275160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
不同沈下も含め、沈下を防ぐ構造として、地盤の土を軽量の人工地盤材で置換し、その下の地盤にかかる接地圧を軽減する構造が採用されることがある(例えば特開平9−275160号公報)。
しかしながら、このように軽量人工地盤材によって地盤置換を行っても、地中応力は不同分布になっているため、外的な要因による影響を受け、結果的に不同沈下を招くことがある。
本願の発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軟弱地盤における建築物の不同沈下を防止する好適が構造を提供するものであって、外的な要因による建築物の不同沈下を防止する好適な構造を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の外部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
一対の内部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設されているとともに、地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は内部補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
外部補強部材及び内部補強部材の各々は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0005】
以下に説明する通り、本願の各請求項の発明によれば、補強部材によって地盤が拘束される結果、地中応力の分布が均一になり、受働土圧抵抗が激減する。このため、外部的な要因によって建築物が不同沈下するのが効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面概略図、図2は図1に示す構造の平面概略図である。
図1に示す不同沈下防止構造は、軟弱地盤において建築される住宅等の建築物の不同沈下を防止する構造である。尚、実施形態の構造が適用される軟弱地盤ないし軟弱層については、例えばN値が1以下の地盤ないし層とすることができる。
【0007】
図1において、建築物は、建物部1と、建物部1を支える基礎2とから成っている。建物部1や基礎2の設計、施工自体は、特に制限されるものではなく、どのようなものでも良い。基礎2は、コンクリートのベタ基礎、布基礎等、任意のものを採用し得る。
まず、実施形態の構造を説明する際に用いられる概念である、地中直下領域について説明する。図3は、地中直下領域の説明図である。
【0008】
地中直下領域3は、ある仮想された三次元空間の領域であり、建築物の敷地占有エリア4からある深さの三次元の領域のことである。敷地占有エリア4は、その建築物が敷地において占有している二次元のエリア(水平面内の領域)のことである。通常は、基礎2の最下面の占有エリアが敷地占有エリア4となる。但し、基礎2より建物部1がはみ出した構造の建築物の場合、建物部1の最下面の占有エリアを敷地占有エリアとしても良い。尚、本実施形態の構造は、軟弱地盤における不同沈下防止構造であるため、地中直下領域3は軟弱層中となっている。但し、本実施形態の構造のすべてが軟弱層中である必要はなく、一部が軟弱層中であっても良い。
【0009】
次に、図1及び図2に戻り、本実施形態における不同沈下防止構造をより詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の不同沈下防止構造では、地中直下領域3を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材5が埋設されている。図1に示すように、一対の外部補強部材5は、垂直な姿勢であり、互いに平行に対向している。一対の外部補強部材5は、同じ形状寸法であり、本実施形態では方形パネル状となっている。尚、図1及び図2に示すように、一対の外部補強部材5は、左右に配置されているものの、上下方向の位置関係、奥行き方向の位置関係はいずれも同じになっている。
各外部補強部材5の上端は、図1に示すように地中(地表面GLより下)にあり、建物部1及び基礎2のいずれにも固定されていない。基礎2の最下面は地中にあるが、各外部補強部材5の上端は基礎2の最下面より上に位置している。
【0010】
このような外部補強部材5としては、必要な剛性があり、地中において腐食しない材質であることが好ましい。FRPのような合成樹脂製、アルミ製、スチール製、松や杉等の木製等が考えられる。特に、木は常水面下で腐食しないという特性があり、外部基礎部材5が常水面下に位置してしまうような場合に好適であり、松板等が好適に使用できる。尚、このような材質を用いてパネル状の外部補強部材5を得るには、幅の狭い板材を並べて連結し、一つのパネル状の外部補強部材5を得るようにしても良い。外部補強部材5の厚さは、材質にもよるが、5mm〜30mm程度で良い。あまり薄いと必要が剛性が得られなくなる恐れがあり、あまり厚くなると、後述する重機による施工の際に地盤への押し込みがやりづらくなる恐れがある。
【0011】
このような外部補強部材5の作用について、図4〜図6を使用して説明する。図4〜図6は、第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
地盤の支持力(地耐力)を考える際、特に軟弱地盤の支持力を考える際には地盤はある種の塑性体と捉えることができ、地盤の沈下や崩壊は大雑把には塑性変形の一種であると言える。地盤に力が働くと、地盤中にせん断力が生じる。これに抵抗するのが、地盤のせん断抵抗力、即ち、摩擦抵抗力と粘着力である。これらの抵抗力で抗しきれなくなると、そこに滑り面が発生してせん断が生ずる。
【0012】
地盤の支持力(地耐力)は、このようなせん断抵抗力のうち、上方からの力(建造物の加重による力)が働いた際の抵抗力の問題であるといえる。地盤の支持力については、土木学者テルツァギにより一般的なモデルが示されている。図4は、このテルツァギによる地耐力のモデルを示したものである。テルツァギは、無限長の連続フーチンを想定しているが、実施形態のような建築物の場合も基本的に同様である。
【0013】
尚、図4中の左側には、地中応力減衰ラインVLが示されている。地中応力減衰ラインVLは、敷地占有エリアの中央部で見た地中応力の深さ方向の分布であり、深くなるに従って地中応力が低下する様子を示すものである。また、図4中の下側には、土木学者ゲーグラーが提唱したモデルによる水平方向の地中応力分布SPがイメージ的に描かれている。
【0014】
図4において、建築物の荷重によって地盤が押し込まれるが、この際の応力分布は、基礎2の最下面の左側の端部が地盤を斜め右下方に押し込む力と、右側の端部が地盤を斜め左方向に押し込む力とを合成したものとなる。従って、左右の端の部分で二つの力が打ち消されることになるから、建築物の荷重が地盤を下方に押し込む力の分布はくさび状となる。このくさび状の領域を図4にR1で示す。
【0015】
また、領域R1の外側の領域R2,R3では、基礎2の両側の端部からの力が作用し、土を外側に押し広げ、さらに上に押し上げるよう土中圧力が分布する。この上方向に向かう応力は、地表面GLからある程度の深さにおいて、土の重力による上載圧(接地圧)と均衡した状態となる。つまり、領域R4の土の重量における荷重と、領域R3における押し上げの圧力が均衡した状態となる。
【0016】
もう少し詳しく説明すると、領域R1は、建築物の荷重を受けた土が周囲の領域R2,R3を押し広げるよう作用しているから、いわゆる主働土圧領域である。また、領域R3は、領域R1からの圧力によって押し広げられ、上方の領域R4による上載圧と均衡した領域であるから、いわゆるランキン領域(受働土圧領域)である。そして、領域R2は、領域R1と領域R3との過渡的な領域であり、遷移領域ないし過渡領域と呼ばれる(本明細書では、遷移領域と呼ぶ)。
【0017】
地盤(特に軟弱地盤)に建築物を建築した場合、建築物の荷重により領域R1では地盤が押し下げられ、領域R1と領域R2との間にせん断が生ずる。しかし、いつまでも、地盤が押し下げられる訳ではなく、地盤内のせん断抵抗力と荷重による接地圧とが平衡に達し、地盤内はある応力が分布した状態で安定する。この平衡状態は、塑性変形が平衡に達した状態であるから、以下、塑性平衡状態と呼ぶ。
テルツァギは、領域R1の断面形状が二等辺三角形であると仮定し、塑性平衡状態における釣り合いの条件から、極限支持力quについて一般解を求める式を以下の通り提示している。極限支持力quは、それを越えない範囲で塑性平衡状態に達するという値である。
テルツァギは、まず、釣り合い条件から、以下の式(数1)が得られるとしている。
【0018】
【数1】
【0019】
式(数1)において、ωは主働土圧領域の傾き(°)、Bは建築物の幅(m)、Ppは受働土圧抵抗力(kN)、Crは土の粘着抵抗力(kN)、γ2は基礎2より下の領域の地盤の単位体積重量(kN/m3)、φは地盤の内部摩擦角(°)である。
次に、テルツァギは、主働土圧領域R1の側面に働く粘着抵抗力Crが地盤の粘着力c等に比例することから、式(数1)より以下の式(数2)を導き出している。
【0020】
【数2】
【0021】
式(数2)はテルツァギの極限支持力公式と呼ばれるものであり、式(数2)中のNc、Nγ、Nqは、支持力係数と呼ばれる。尚、Dfは、地表面から基礎2の最下面までの距離である。式(数1)から式(数2)を導き出すことの詳細は、森北出版(株)発行の「建設工学シリーズ 地盤工学」(澤孝平他著)の173〜174頁に説明されているので、割愛する。
尚、主働土圧領域R1は、くさび状となるため、くさび領域と呼ばれることもある。以下の説明において、主働土圧領域R1と遷移領域R2の境界面をくさび境界面と呼び、図4等において符号RB1で示す。また、遷移領域R2の最下面を符号RB2で示す。
【0022】
上記のような支持力のモデルにおいて、何らかの外的な要因で塑性均衡状態が崩れる場合を想定する。例えば、図5に示すように、建築物が擁壁6で擁護された敷地に建築されており、擁壁6が地滑り等により崩れた場合を想定する。
平常時では、建築物と擁壁6との間では、図5(1)に矢印で示すように、静止土圧が安定して分布している。そして、建築物の直下の地盤内では、前述したような塑性均衡状態となっている。
このような状態において、地震や大雨等により地滑りが生じ、図5(2)に示すように、擁壁6が側方に移動してしまう現象が起きたとする。この際、擁壁6の移動により擁壁6における受働土圧が弱まる。この結果、擁壁6と建築物との間の地盤において主働土圧が働き、図5(2)に示すように地盤が擁壁6に向けて移動しようとする動的な応力が発生し、不安定な状態となる。その後、移動後の擁壁6による受働土圧と地盤による主働土圧とがバランスし、地中応力は再び安定状態になるが、擁壁6付近の地盤は図5(2)に示すように崩れた状態となる。
一方、建築物の直下の領域では、擁壁6に向けて移動しようとする動的な応力が発生する結果、受働土圧領域R3での受働土圧が弱まり、受働土圧領域R3が擁壁6の側に広がってしまう。この結果、左右の受働土圧のバランスが崩れ、建築物の不同沈下が生ずる。つまり、擁壁6の付近での塑性不均衡化が建築物の直下の地盤にまで連鎖する結果、建築物の不同沈下が生ずる。
【0023】
このように、離れた場所の小規模の崩壊によっても不同沈下が発生してしまう理由は、地中応力の分布が均一ではないからである。即ち、建築物全体の荷重の分布をどんなに均一にしたとしても、上述したように、地盤中にはくさび状の主働土圧領域が発生する。主働土圧領域は、左右から受働土圧抵抗で押された状態であり、先細り状に狭くなる領域であって、最下点(LP)は最も主働土圧が集中した箇所である。このため、ケーグラーのモデルによれば、地中応力分布SPは図4に示すように上に凸の分布であり地中応力は不均一に分布している。このような主働土圧領域R1は、下方に尖った領域であり、左右から受働土圧で押されて平衡を保っている領域であるため、僅かでも左右の受働土圧のバランスが崩れると、せん断が生じて不同沈下が発生してしまう。
【0024】
本実施形態の外部補強部材5は、このような不均一な応力分布を緩和(均一に)し、それによって不同沈下を防止する意義を有するものである。図6には、この点が示されている。図6に示すように、外部補強部材5が存在すると、外部補強部材5によって地盤が拘束されるため、基礎2の端部から斜め下方への地中応力の分散が実質的に無くなる。この結果、建築物の荷重による主働土圧は、ほぼ均一に分布してそのまま下方にかかることになる。
【0025】
外部補強部材5の下端のレベルより下側では、中央部において主働土圧領域が僅かに突出し、同様にくさび形となるものの、ここまで深い位置になると、図4及び図6の左側に示すように、元々の地中応力の大きさが大きくないために、突出は僅かでしかない。
また、一対の外部補強部材5が地盤を拘束する結果、外部補強部材5の外側では、地盤の土による上載圧が相対的に大きくなり、受働土圧は相殺されてしまう。即ち、主働同圧領域R1の土は外部補強部材5を外側に向けて押し、これにより外部補強部材5はその外側の土を押すものの、外部補強部材5は剛性が高いため、連続した塑性体である場合(土が連続している状態の場合)に比べ、外側の土を押す力は小さい。したがって、この外部補強部材5が外側の土を押す力は、その外側における土の上載置(土がその重量により地盤を下方に押す力)により打ち消されてしまう。このため、外部補強部材5の外側では、受働土圧領域は実質的に形成されなくなってなる。
【0026】
このように、第一の実施形態の構造では、地中直下領域を一対の外部補強部材5で挟んで地盤を拘束し、建築物の荷重による地中応力がそのまま下方にかかるようにしたので、主働土圧領域がより均一なる。このため、外的要因により周辺の地盤の塑性均衡が崩れたとしても、建築物に不同沈下が発生する可能性が少なくなる。また、受働土圧領域が実質的に無くなるので、敷地から離れた箇所での擁壁の崩壊のような外的要因による不同沈下も生じなくなる。
【0027】
第一の実施形態において、外部補強部材5を基礎2からあまり離れた位置に配置しないようにすることが望ましい。外部補強部材5と基礎2との距離が離れると、基礎2の最下面の端部から斜め下方に地中応力が分散するようになり、主働土圧領域R1が下方により凸な形状になってしまう。外部補強部材5と基礎2との間隔(図1にDで示す)は、敷地占有エリアの幅Wにもよるが、10cm以下とすることが望ましい。
また、第一の実施形態において、外部補強部材5の上端の位置は、地表面GLより低い位置であることが望ましい。地表面GLより高くても不同沈下防止の面では特に問題はないが、外部補強部材5が地表面GLから露出した状態になるので、見栄えが悪い場合がある。
外部補強部材5の上端の位置が地表面GLよりあまり下に位置すると、地表面GLと外部補強部材5との間の隙間が大きくなり、地盤を拘束する効果が薄れてしまうから、注意を要する。少なくとも、外部補強部材5の上端は、基礎2の下端より上にすることが望ましい。
【0028】
外部補強部材5の下端の位置は、上記不同沈下防止効果を得る観点から重要である。この位置は、地中応力が十分に減衰する位置であるとすることができる。重量の大きな建築物の場合にはより深い位置まで外部補強部材5が達する必要があり、重量の小さな建築物であれば、浅い位置までで足りる。2〜3階程度の住居用の建築物の場合、外部補強部材5の下端が地表面GLから1m(メートル)程度の深さの位置であれば、不同沈下防止の効果を得るのに十分である。したがって、外部補強部材5の下端の位置は、1mかそれより深い位置ということになる。但し、これは平地の場合で、傾斜地に建っているような場合にはより深い位置まで外部補強部材5が達していることが望ましい。
より具体的な一例を示すと、建築物が2〜3階程度の木造住宅又は軽量鉄骨構造の建築物である場合、外部補強部材5としては高さ180cm程度のものを使用し、地表面GLより深さ50cm程度の位置に上端が位置するよう埋め込む構造とすることができる。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、外部補強部材5は、建物部1及び基礎2のいずれにも固定されていない。この点も、建築物の不同沈下を防止する意味で重要な意義を有している。以下、この点について、図7を使用して説明する。図7は、外部補強部材5が建物部1及び基礎2に固定されていないことの効果を説明するための図である。
橋脚のような大規模な構造物では、基礎(フーチン)の側部から下方に延びるようにして板状の補強材が設けられることがある。この補強部材は矢板と呼ばれ、基礎に対して固定される。本実施形態の外部補強部材5は、基礎2に対して固定されていない点で、矢板とは異なる。
【0030】
上記のような外的要因による塑性不均衡化の連鎖を遮断する効果は、外部補強部材5は基礎2又は建物部1に固定されていてもいないくてもほぼ同様である。しかしながら、発明者の研究によると、軟弱地盤における不同沈下を防止する場合、外部補強部材5が基礎2又は建物部1に固定されている場合とされていない場合では、顕著な相違が生ずる場合がある。
【0031】
即ち、軟弱地盤であるから、建築物の竣工後にある程度沈下することが予定されている。このような沈下は、前述したように建築基準法上ある程度の範囲で許容されている。
このような許容される範囲内の沈下において、図7(1)に示すように外部補強部材5が例えば基礎2に固定されていると、基礎2とともに外部補強部材5と沈下していくことになる。この際、地盤中には軟弱な層が一様に広がっている場合もあるが、そうではない場合もあり、部分的に硬い箇所や大きな岩(以下、硬質体と総称する)7が存在する可能性がある。もし、外部補強部材5の直下の位置に硬質体7があると、その部分で沈下が抑えられ、この結果、左右で沈下量が異なることになって不同沈下が生じてしまう。
【0032】
一方、図7(2)に示すように、外部補強部材5が建築物のいずれの箇所にも固定されていなければ、建築物が全体に沈下する際にも、外部補強部材5は沈下しない。したがって、万が一外部補強部材5の下側に硬質体7が存在したとしても、不同沈下にはつながらない。
尚、外部補強部材5は建築物の荷重によって建築物と一体に沈下しなければよいから、外部補強部材5は基礎2及び建物部1に固定されていなければよく、接触している場合だけであれば問題がないこともある。例えば、外部補強部材5が基礎2に接触していて、建築物が全体に同沈下する際、基礎2が外部補強部材5の表面を滑っていくような状態であってもよい。
【0033】
次に、このような不同沈下防止構造の施工方法について、図8を使用して説明する。図8は、第一の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した図である。
実施形態の不同沈下防止構造は、上記説明から解るように、地盤中に一対の外部補強部材5を埋設するものであり、極めて簡易な構造である。外部補強部材5の埋設は、溝を掘って溝内に配置した後に埋め戻す方法でも良いが、軟弱地盤であることが前提になっているので、重機等で地表面GLから押し込むだけで施工ができ、その方がより簡便である。
【0034】
まず、基礎の占有エリアより少し広いエリアを所定の深さまで掘り下げ、底面の突き固め等を必要に応じて行う(図8(1))。次に、重機で外部補強部材5の埋め込みを行う(図8(2))。重機で外部補強部材5の上端を掴みながら、所定の位置に押し込み、必要に応じて重機で叩く等する。埋め込み完了後の外部補強部材5の上端は、底面より突出し且つ地表面GLより低い所定の高さとされる。
その後、基礎2(ベタ基礎、布基礎等)の施工を行う(図8(3))。この部分は通常と同じで良い。そして、埋め戻しを行うと、基礎工事の完了とともに、外部補強部材5が所定の深さの地中に埋め込まれた状態となる(図8(4))。
【0035】
以上の説明から解るように、本実施形態の不同沈下防止構造によれば、外部要因の影響による建築物の不同沈下を効果的に防止することができ、一対の外部補強部材5を埋め込むだけなので、施工も容易でコストも安い。また、万が一硬質体7が存在していても不同沈下が生ずることもない。
尚、上記説明では、外部補強部材5の埋め込みを基礎2の施工前に行ったが、外部補強部材5の埋め込みを基礎2の施工完了後に行ったり、建物部1の施工完了後に行ったりすることも可能ではある。但し、重機の動きが制限されるため埋め込み作業が容易ではないことがあり得る。
【0036】
また、本実施形態の外部補強部材5は、硬い地盤(岩盤)に達するように施工される支持杭などとは異なる。建築物の沈下を防止する構造として、岩盤まで達するようにして杭を打ち込み、この杭に対して基礎を固定した上で建物部を建築することが行われている。杭に代えて、パネル状の部材を岩盤まで打ち込むことも考えられよう。
しかしながら、このような構造は、大がかりでコストがかかり、工期も長くなる。岩盤がかなり深い位置にあるような敷地では、この問題は顕著である。
本実施形態の構造は、このようなものではなく、岩盤まで外部補強部材5を打ち込むものではない。外部補強部材5は、軟弱層中に存在して上記の通り不同沈下を防止するものである。したがって、上記のような問題は全くない。
【0037】
また、岩盤まで杭やパネルを打ち込むと、地震対策の点で別の問題が生じる。岩盤まで杭を打つことは、沈下防止には効果的であるが、岩盤と建築物が連結された状態となるため、地震の揺れが建築物に直接伝わり、建築物の揺れが大きくなり易い。
一方、実施形態の構造では、外部補強部材5は基礎2等に固定されていないので、地震の揺れを建物部1に伝えることはなく、建物部1の揺れは大きくなりにくい。軟弱地盤というのは、沈下し易いという点ではやっかいであるが、耐震の観点では都合が良い面もある。即ち、岩盤のような硬い層と軟弱層とでは、固有振動数が違うので、硬い層を伝わってきた地震の揺れは、軟弱層に達した時点で反射し易く、その上に建っている建築物まで伝わりにくい。しかし、支持杭のようなもので硬い層と建築物を連結してしまうと、この軟弱層の長所を帳消しすることになってしまう。本実施形態の構造は、軟弱層の長所を地震対策に活かしつつ不同沈下を防止する意義を有している。
【0038】
次に、本願発明の第二の実施形態の不同沈下防止構造について説明する。
図9は、本願発明の第二の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図、図10は図9に示す構造の平面概略図である。
この第二の実施形態においても、軟弱層中に埋め込まれた内部補強部材8により不同沈下を防止する構造となっている。この第二の実施形態が第一の実施形態と異なるのは、地中直下領域3を挟む状態ではなく、地中直下領域3内に内部補強部材8が配置されている点である。
【0039】
本実施形態において、内部補強部材8は一対の部材であり、垂直な姿勢であって互いに平行である。各内部補強部材8は、完全に地中に埋没していて上端は地表面GLより下である。図9及び図10に示すように、一対の内部補強部材8は、左右に配置されていることを除き、上下方向の位置関係及び奥行き方向の位置関係はいずれも同じである。そして、図9及び図10に示すように、各内部補強部材8は、建物部1及び基礎2は各内部補強部材8には載っておらず、両者は離間している。尚、内部補強部材8は、基礎2にも建物物1にも固定されていない。
【0040】
また、図10に示すように、一対の内部補強部材8は、一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている。より具体的に説明すると、図10に示すように、この実施形態では敷地占有エリアは方形となっている。一対の内部補強部材8は方形の一方の辺の方向に沿って設けられており、したがって、一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向は、方形の他方の辺の方向である。そして、地中直下領域の中央部からの各内部補強部材8までの距離は同一となっている。
また、図10に示すように、一対の内部補強部材8は、内部補強部材8の幅方向(方形の一方の辺の方向)においても、敷地占有エリアの中央に設けられている。即ち、一対の内部補強部材8の幅方向の中央は、敷地占有エリアの一方の辺の方向の中央の位置と一致している。
【0041】
図11は、第二の実施形態の不同沈下防止構造の作用について示した正面断面概略図である。図11には、一対の内部補強部材8が埋め込まれた地盤中の塑性均衡状態が描かれている。図11中、内部補強部材8が無い状態の塑性均衡状態(以下、補強無し状態)が点線で示されており、内部補強部材8がある状態の塑性均衡状態が一点鎖線で示されている。点線で示す塑性均衡状態は、図4に示したのと同じである。
【0042】
第一の実施形態の構造では、一対の内部補強部材8が地中直下領域3を挟みながら地盤を拘束することで不同沈下を防止したが、この第二の実施形態では、一対の内部補強部材8が地中直下領域3内で地盤を拘束することで不同沈下を防止するものとなっている。
図11に示すように、一対の内部補強部材8は、内部補強部材8が無い場合に形成される主働土圧領域のくさび境界面RB1を寸断する状態となっている。このように寸断すると、一対の内部補強部材8が向かい合う間の空間では、地盤が強く拘束された状態となり、建築物の荷重による主働土圧はそのまま下方に作用する。このため、主働土圧領域は、図11に一点鎖線で示すように、ほぼ台形状となる。したがって、この第二の実施形態においても、主働土圧応力が集中する点は無くなり、図11の下側に示すように、より均一な地中応力の分布となる。このため、左右で多少塑性均衡が崩れても不同沈下が発生しにくくなっている。
【0043】
また、一対の内部補強部材8が地盤を拘束する結果、その外側において受働土圧が土の上載圧に打ち消され、受働土圧領域R3が実質的に無くなる。このため、敷地のごく近い箇所で擁壁の崩壊のような事故が生じない限り、不同沈下は生じない。
【0044】
次に、第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明する。図12は、第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明するための図である。
第二の実施形態において、内部補強部材8は、主働土圧領域R1が横方向に地盤を押し広げようとするのを防止するものであるから、補強無し状態におけるくさび境界面RB1よりも下に位置すること、即ち図12(1)に示すように、内部補強部材8がくさび境界面RB1を寸断するよう配置されることが望ましい。
【0045】
また、土中応力分布の平坦化のためには、図12(2)に示すように、内部補強部材8の下端が、補強無し状態における主働土圧領域R1の最下点LPかそれよりも下側に位置しているとより好ましい。主働土圧がこの深さまで作用しているからである。また、内部補強部材8の下端は、図12(3)に示すように、補強無し状態の遷移領域R2の下側境界面RB2かそれより下方に位置していることとさらに望ましい。受働土圧は、この深さまで作用しており、受働土圧を完全に拘束する観点からである。
【0046】
また、この第二の実施形態の構造で重要なことは、上記のように内部補強部材8には基礎2や建物部1が載っていないということである。この点も、第一の実施形態と同様、地盤中に万が一硬質体7が存在する可能性を考慮してのことである。但し、第二の実施形態では、内部補強部材8は基礎2の直下に位置するので、基礎2に固定されていないだけでは足らず、基礎2も建物部1も内部補強部材8に載っていないことが条件となる。つまり、基礎2から所定距離下方に離間した状態で埋め込まれていることが必須条件である。
基礎2から内部補強部材8の上端までの距離(図9にL1で示す)は、建築物の竣工後にどの程度同沈下して安定するかを見込んで設定する。例えば、建築物の荷重、地盤の軟弱度等のデータから5cm同沈下して安定すると見込まれる場合、安全を見て距離L1を10cmに設定する。
【0047】
また、一対の内部補強部材8が一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向で見た際の敷地占有エリアの中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている配置されている点は、左右の塑性均衡を安定的に確保する意義を有する。即ち、一対の内部補強部材8が敷地エリアの中央部から等距離であるということは、基礎2の端部からの距離(図9にL2で示す)が互いに等しいことを意味する。距離L2が等しいということは、中央部から同じ距離の所で地盤を拘束することになり、塑性均衡が安定的に確保される。
【0048】
周知のように、補強無し状態において基礎2の最下面とくさび境界面RB1の成す角は、π/+φ/2であるから、補強無し状態における主働土圧領域の深さは、B/2(tan(π/4+φ/2))である。Bは基礎2の幅、φは地盤の内部摩擦角である。従って、図12(1)や(2)の状態を得るための内部補強部材8の高さ及び埋込位置は、計算により容易に求めることができる。
また、補強無し状態における遷移領域R2の最下面RB2は、r・exp(εtanφ)で与えられることが知られている。rは、くさび境界面RB1の斜面の長さである。したがって、図12(3)の状態についても、計算により容易に得ることができる。
【0049】
次に、第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について図13を使用して説明する。図13は、第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した正面断面概略図である。
第二の実施形態の構造を施工する場合、まず、敷地占有エリアを所定の深さで掘り下げる(図13(1))。この所定の深さとは、基礎2の最下面が位置する深さよりも少し(図9に示すL1の分だけ)深い深さである。掘り下げて形成した凹部の底面の付き固め等の必要な作業をした後、重機を使用して押し込むようにして内部補強部材8を埋め込む(図13(2))。この際、埋め込んだ後の内部補強部材8の上端が凹部の底面に一致するようにする。
【0050】
その後、少し埋め戻しを行って、凹部の深さを基礎2の最下面が位置する深さに一致させる(図13(3))。そして再度突き固め等を行った後、基礎2を施工する(図13(4))。即ち、割石等を敷き詰めた後、コンクリートのベタ基礎や布基礎を施工する。その後、完全に埋め戻しを行うと、下側に内部補強部材8が埋め込まれた状態で基礎工事が完了する。
【0051】
次に、本願発明の他の実施形態に係る不同沈下防止構造について説明する。
図14は、第一の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
第一の実施形態において、まず図14(1)に示すように、二対の外部補強部材5が配置された構造であっても良い。即ち、方形の敷地占有エリア4の四つの辺に沿ってそれぞれ外部補強部材5が埋め込まれた構造でも良い。このようにすると、方形の二つの辺の方向についてそれぞれ地盤を拘束することになり、いずれの方向においても地中応力分布が均一化するので、不同沈下防止の効果がより高く得られる。
【0052】
また、図14(2)に示すように、一つの辺に沿って複数の外部補強部材5が配置されていても良い。隣接する外部補強部材5同士は、相互に連結されていても良いし、単に接触するだけでも良い。重機で埋め込みを行う場合には、連結されていないものの方が扱い易い。また、図示されたように、多少離間していても土は粘着力を有するので問題はない。但し、あまり離間すると、地盤の拘束による不同沈下防止効果が薄れるので、離間距離は20cm程度までとすることが好ましい。尚、図14(2)では四辺に外部補強部材5を設ける例であるが、二辺(一対のみ)に設ける例で各辺に複数の外部補強部材5を並べても良い。
また、図14(3)に示すように、敷地占有エリア4が細長い長方形である場合、どちらかというと、長辺の方向に沿って一対の外部補強部材5を配置する方が好ましい。これは、地盤の断面における塑性平衡状態を考慮すれば解るように、幅が狭い方の方向において地中応力分布の不均一が増長されるからである。
【0053】
図15は、第二の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
まず、図15(1)に示すように、一対の内部補強部材8のみが配置される構造の場合、一対の内部補強部材8の幅は、基礎2の幅に一致させることが望ましい。基礎2の幅よりも大きくしても構わない。
【0054】
また、図15(2)に示すように、二対の内部補強部材8を方形に配置するようにしてもよく、このようにすると、第二の実施形態に比べより効果がある。この場合、それぞれの対の内部補強部材8において、中央部から等距離の位置に配置される。尚、隣り合う内部補強部材8の角部は接触していもよく、離間していても良い。また、二対の内部補強部材8が成す方形は、敷地占有エリアと同心の相似形を成す配置とされる場合もある。
第二の実施形態においても、図15(3)に示すように、複数の内部補強部材8を一つの辺に並べても良い。この場合、隣り合う内部補強部材8は連結しても良く、接触しているのみでもよく、また所定の範囲内で離間していても良い。
【0055】
図16は、第一の実施形態と第二の実施形態とを組み合わせた第三の実施形態の正面断面概略図、図17は、図16に示す第三実施形態の平面概略図である。
この第三の実施形態では、図16及び図17に示すように、地中直下領域3を挟むようにして一対の外部補強部材5が設けられ、地中直下領域3内で中心部から等距離の位置に一対の内部補強部材8が設けられている。図16に示すように、内部補強部材8は、外部補強部材5に比べて下端の位置が低くなっている。
【0056】
この第三の実施形態では、地中直下領域3を両側から外部補強部材5で拘束しつつ内部で内部補強部材8でさらに補強している。このため、建築物の荷重による主働土圧がそのまま真下にかかる度合いがさらに高くなり、ケーグラーのモデルで示すように地中応力の分布はさらに均一になる。このため、不同沈下防止の効果がさらに高く得られる。
この第三の実施形態においても、各辺に複数の補強部材5,8を並べても良く、外部補強部材5や内部補強部材8を方形の配置(二対の配置)としても良い。
【0057】
第三の実施形態の構造を施工する場合、基礎2の占有エリアより少し広い領域で且つ基礎2の最下面より少し(L1の分だけ)深く掘り下げを行って底面の突き固めを行う。そして、前述したのと同様に内部補強部材8の埋め込みを行うとともに、外部補強部材5の埋め込みを行う。内部補強部材8の上端を溝の底面に一致させ、外部補強部材5の上端を地表面GLより少し低い位置とする。尚、外部補強部材5は、凹部の底面から突出した状態となる。その後、少し埋め戻しを行って基礎2の最下面の位置に凹部の深さを一致させ、再度突き固めを行った後、基礎2を施工する。そして、完全に埋め戻しを行って基礎工事を完了させる。
【0058】
次に、敷地占有エリアに関連して追加の説明をする。
以上の説明は、敷地占有エリア4が単純な方形の例であったが、そうではない場合もあり得る。この場合の実施形態を示したのが図18である。図18は、敷地占有エリア4が方形ではない場合の実施形態の平面概略図である。
外部補強部材5は地中直下領域3を挟むものであり、内部補強部材8は地中直下領域3内で補強無し状態でのくさび境界面RB1を寸断するよう設けられるものである。この趣旨からすると、敷地占有エリア4が方形ではない場合、図18(1)に示すように、敷地占有エリア4の輪郭に沿って外側に外部補強部材5を設け、輪郭に沿って内側に内部補強部材8を設ける構造が考えられる。
【0059】
また、図18(2)に示すように、敷地占有エリア4を包絡する方形のエリア(以下、方絡方形エリア)9を仮想し、この方絡方形エリア9の直下の領域について、前述と同様に、外部補強部材5を設けたり、内部補強部材8を設けたりしても良い。尚、内部補強部材8については、図18(2)に示すように、少なくとも一部分が地中直下領域3にあれば足り、一部が地中直下領域3をはみ出していても良い。尚、この場合の「包絡する方形」とは、敷地占有エリア4を内部に包含する方形であって、少なくとも一つの辺(直線)において敷地占有エリア4の辺と重なっている方形という意味である。
【0060】
上述した各実施形態において、第一の実施形態や第二の実施形態の構造は、比較的重量の軽い2〜3階建て程度の木造住宅や軽量鉄骨構造の建築物等を建築する際の不同沈下防止に適している。重量の重いRC構造の建築物を建築する際には、第三の実施形態の構造が適している。
【0061】
次に、第四の実施形態について図19を使用して説明する。図19は、第四の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
この第四の実施形態は、上述した各実施形態の構造において、軽量人工地盤材による地盤置換を併用した構造となっている。即ち、第四の実施形態においては、基礎2の下側に人工地盤組立体9が施工されている。人工地盤組立体9は、樹脂製の地盤置換用のブロック(以下、樹脂ブロック)91を多数敷き詰めて積み上げたものである。樹脂ブロック91は、瓶ビールの輸送用に使用されているようなポリプロピレン製であり、例えば、土木用として株式会社林物産(茨城県日立市)から販売されているカンカンブロック(商品名)が使用できる。
【0062】
樹脂ブロック91は、一種の骨格部材であって開口部を多数有する。したがって、大雨の際に地中水位が上昇した際、人工地盤組立体内に水が浸入する。尚、軽量人工地盤用のブロックとして発泡樹脂製のブロックを使用することも行われているが、発泡樹脂は排水性であるので、施工中に大雨が降った場合に、施工中の人工地盤組立体が浮き上がってしまう問題がある。射出成型等により製作されるポリプロピレンのような発泡樹脂ではない樹脂で形成されたブロックを使用すると、このような問題はない。
人工地盤組立体9は、地中直下領域のうち基礎より所定の深さの領域を占めるよう施工される。具体的な施工方法としては、特願2007−169760号の明細書に詳細に開示されている。
【0063】
この実施形態では、人工地盤組立体9の直下の地中直下領域3内に一対の内部補強部材8が設けられている。また、人工地盤組立体9が配置された領域を含んで地中直下領域3を挟むようにして一対の外部補強部材5が配置されている。この実施形態においても、方形の四つの辺に補強部材5,8が配置されていてもよく、一つの辺に複数の補強部材5,8が配置されていても良い。
【0064】
軽量人工地盤材による地盤置換は、先行重量としての土を取り払い、その取り払った場所に土に比べて十分に軽い構造材を配置して建築物を支えることで、地盤にかかる接地圧(上載圧)を軽減する技術である。人工地盤組立体9の最下面における接地圧が、同じ深さの位置の周囲の場所での接地圧とバランスする結果、建築物の沈下が防止される。尚、取り払う土の重量は、建築物全体の重量(建物部1、基礎2及び人工地盤組立体9の総重量)に見合う重量とされる。見合う重量とは、一致する重量とする場合もあるが、建築物全体の重量による接地圧がその地盤の地耐力を上回る分だけ取り払うようにする場合もある。
【0065】
このような地盤置換を行うことは、軟弱地盤に対してある程度大きな荷重の建築物を建築する場合、全体として接地圧を軽減する観点から重要である。しかしながら、接地圧は軽減されているものの、相当量の接地圧が人工地盤組立体の下側の地盤にかかっている。したがって、前述したように外部要因により周囲の土の塑性均衡が崩れた場合、不同沈下が発生する可能性がある。本実施形態では、この点を考慮し、補強部材5,8によって地盤を拘束し、不同沈下を防止している。
【0066】
この実施形態の方法は、全体として接地圧を軽減した上で、地盤拘束による不同沈下防止を行っているため、より軟弱な地盤(N値のより低い地盤)に大きな重要の建築物を建築する場合に特に好適である。
また、地盤置換は、補強部材5,8による地盤の拘束と補完的な関係も果たす。つまり、地盤置換により接地圧が軽減されているため、主働土圧や受働土圧も低減される。したがって、外側補強部材5のみで足りたり、内側補強部材8で足りたりする場合もある。また、方形の四つの辺に補強部材5,8を設ける必要はなくなり、一方の辺だけで足りる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本願発明の第一の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面概略図である。
【図2】図1に示す構造の平面概略図である。
【図3】地中直下領域の説明図である。
【図4】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図5】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図6】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図7】外部補強部材5が建物部1及び基礎2に固定されていないことの効果を説明するための図である。
【図8】第一の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した図である。
【図9】本願発明の第二の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
【図10】図9に示す構造の平面概略図である。
【図11】第二の実施形態の不同沈下防止構造の作用について示した正面断面概略図である。
【図12】第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明するための図である。
【図13】第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した正面断面概略図である。
【図14】第一の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
【図15】第二の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
【図16】第一の実施形態と第二の実施形態とを組み合わせた第三の実施形態の正面断面概略図である。
【図17】図16に示す第三実施形態の平面概略図である。
【図18】敷地占有エリア4が方形ではない場合の実施形態の平面概略図である。
【図19】第四の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 建物部
2 基礎
3 地中直下領域
4 敷地占有エリア
5 外部補強部材
8 内部補強部材
9 人工地盤組立体
91 樹脂ブロック
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、軟弱地盤に対して建築物を建築する際に施工される建築物の不同沈下防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部における地価高騰や用地不足等を背景として、以前は沼沢や田圃であった土地に建築物を建てることが多くなってきている。このような土地は、いわゆる軟弱地盤と呼ばれる土地であり、通常の工法では、建築物の沈下事故が発生し易い問題がある。
建築物の沈下は、建築基準法上はある程度許容されている。即ち、建築物の竣工後に建築物の自重によってある程度の深さまで同沈下することは、許容されている。この深さは、建築物の構造、形態、規模等によって異なるが、例えば鉄筋コンクリート構造でべた基礎の建築物の場合、10〜15cmである。尚、同沈下とは、建築物全体が傾かずに等しく沈下することである。一方、建築物が傾くことになる不同沈下は許容されておらず、軟弱地盤に建築物を建築する際には、不同沈下をいかに防ぐかが課題となっている。
【特許文献1】特開平9−275160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
不同沈下も含め、沈下を防ぐ構造として、地盤の土を軽量の人工地盤材で置換し、その下の地盤にかかる接地圧を軽減する構造が採用されることがある(例えば特開平9−275160号公報)。
しかしながら、このように軽量人工地盤材によって地盤置換を行っても、地中応力は不同分布になっているため、外的な要因による影響を受け、結果的に不同沈下を招くことがある。
本願の発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軟弱地盤における建築物の不同沈下を防止する好適が構造を提供するものであって、外的な要因による建築物の不同沈下を防止する好適な構造を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の外部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
一対の内部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設されているとともに、地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は内部補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
外部補強部材及び内部補強部材の各々は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0005】
以下に説明する通り、本願の各請求項の発明によれば、補強部材によって地盤が拘束される結果、地中応力の分布が均一になり、受働土圧抵抗が激減する。このため、外部的な要因によって建築物が不同沈下するのが効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面概略図、図2は図1に示す構造の平面概略図である。
図1に示す不同沈下防止構造は、軟弱地盤において建築される住宅等の建築物の不同沈下を防止する構造である。尚、実施形態の構造が適用される軟弱地盤ないし軟弱層については、例えばN値が1以下の地盤ないし層とすることができる。
【0007】
図1において、建築物は、建物部1と、建物部1を支える基礎2とから成っている。建物部1や基礎2の設計、施工自体は、特に制限されるものではなく、どのようなものでも良い。基礎2は、コンクリートのベタ基礎、布基礎等、任意のものを採用し得る。
まず、実施形態の構造を説明する際に用いられる概念である、地中直下領域について説明する。図3は、地中直下領域の説明図である。
【0008】
地中直下領域3は、ある仮想された三次元空間の領域であり、建築物の敷地占有エリア4からある深さの三次元の領域のことである。敷地占有エリア4は、その建築物が敷地において占有している二次元のエリア(水平面内の領域)のことである。通常は、基礎2の最下面の占有エリアが敷地占有エリア4となる。但し、基礎2より建物部1がはみ出した構造の建築物の場合、建物部1の最下面の占有エリアを敷地占有エリアとしても良い。尚、本実施形態の構造は、軟弱地盤における不同沈下防止構造であるため、地中直下領域3は軟弱層中となっている。但し、本実施形態の構造のすべてが軟弱層中である必要はなく、一部が軟弱層中であっても良い。
【0009】
次に、図1及び図2に戻り、本実施形態における不同沈下防止構造をより詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の不同沈下防止構造では、地中直下領域3を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材5が埋設されている。図1に示すように、一対の外部補強部材5は、垂直な姿勢であり、互いに平行に対向している。一対の外部補強部材5は、同じ形状寸法であり、本実施形態では方形パネル状となっている。尚、図1及び図2に示すように、一対の外部補強部材5は、左右に配置されているものの、上下方向の位置関係、奥行き方向の位置関係はいずれも同じになっている。
各外部補強部材5の上端は、図1に示すように地中(地表面GLより下)にあり、建物部1及び基礎2のいずれにも固定されていない。基礎2の最下面は地中にあるが、各外部補強部材5の上端は基礎2の最下面より上に位置している。
【0010】
このような外部補強部材5としては、必要な剛性があり、地中において腐食しない材質であることが好ましい。FRPのような合成樹脂製、アルミ製、スチール製、松や杉等の木製等が考えられる。特に、木は常水面下で腐食しないという特性があり、外部基礎部材5が常水面下に位置してしまうような場合に好適であり、松板等が好適に使用できる。尚、このような材質を用いてパネル状の外部補強部材5を得るには、幅の狭い板材を並べて連結し、一つのパネル状の外部補強部材5を得るようにしても良い。外部補強部材5の厚さは、材質にもよるが、5mm〜30mm程度で良い。あまり薄いと必要が剛性が得られなくなる恐れがあり、あまり厚くなると、後述する重機による施工の際に地盤への押し込みがやりづらくなる恐れがある。
【0011】
このような外部補強部材5の作用について、図4〜図6を使用して説明する。図4〜図6は、第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
地盤の支持力(地耐力)を考える際、特に軟弱地盤の支持力を考える際には地盤はある種の塑性体と捉えることができ、地盤の沈下や崩壊は大雑把には塑性変形の一種であると言える。地盤に力が働くと、地盤中にせん断力が生じる。これに抵抗するのが、地盤のせん断抵抗力、即ち、摩擦抵抗力と粘着力である。これらの抵抗力で抗しきれなくなると、そこに滑り面が発生してせん断が生ずる。
【0012】
地盤の支持力(地耐力)は、このようなせん断抵抗力のうち、上方からの力(建造物の加重による力)が働いた際の抵抗力の問題であるといえる。地盤の支持力については、土木学者テルツァギにより一般的なモデルが示されている。図4は、このテルツァギによる地耐力のモデルを示したものである。テルツァギは、無限長の連続フーチンを想定しているが、実施形態のような建築物の場合も基本的に同様である。
【0013】
尚、図4中の左側には、地中応力減衰ラインVLが示されている。地中応力減衰ラインVLは、敷地占有エリアの中央部で見た地中応力の深さ方向の分布であり、深くなるに従って地中応力が低下する様子を示すものである。また、図4中の下側には、土木学者ゲーグラーが提唱したモデルによる水平方向の地中応力分布SPがイメージ的に描かれている。
【0014】
図4において、建築物の荷重によって地盤が押し込まれるが、この際の応力分布は、基礎2の最下面の左側の端部が地盤を斜め右下方に押し込む力と、右側の端部が地盤を斜め左方向に押し込む力とを合成したものとなる。従って、左右の端の部分で二つの力が打ち消されることになるから、建築物の荷重が地盤を下方に押し込む力の分布はくさび状となる。このくさび状の領域を図4にR1で示す。
【0015】
また、領域R1の外側の領域R2,R3では、基礎2の両側の端部からの力が作用し、土を外側に押し広げ、さらに上に押し上げるよう土中圧力が分布する。この上方向に向かう応力は、地表面GLからある程度の深さにおいて、土の重力による上載圧(接地圧)と均衡した状態となる。つまり、領域R4の土の重量における荷重と、領域R3における押し上げの圧力が均衡した状態となる。
【0016】
もう少し詳しく説明すると、領域R1は、建築物の荷重を受けた土が周囲の領域R2,R3を押し広げるよう作用しているから、いわゆる主働土圧領域である。また、領域R3は、領域R1からの圧力によって押し広げられ、上方の領域R4による上載圧と均衡した領域であるから、いわゆるランキン領域(受働土圧領域)である。そして、領域R2は、領域R1と領域R3との過渡的な領域であり、遷移領域ないし過渡領域と呼ばれる(本明細書では、遷移領域と呼ぶ)。
【0017】
地盤(特に軟弱地盤)に建築物を建築した場合、建築物の荷重により領域R1では地盤が押し下げられ、領域R1と領域R2との間にせん断が生ずる。しかし、いつまでも、地盤が押し下げられる訳ではなく、地盤内のせん断抵抗力と荷重による接地圧とが平衡に達し、地盤内はある応力が分布した状態で安定する。この平衡状態は、塑性変形が平衡に達した状態であるから、以下、塑性平衡状態と呼ぶ。
テルツァギは、領域R1の断面形状が二等辺三角形であると仮定し、塑性平衡状態における釣り合いの条件から、極限支持力quについて一般解を求める式を以下の通り提示している。極限支持力quは、それを越えない範囲で塑性平衡状態に達するという値である。
テルツァギは、まず、釣り合い条件から、以下の式(数1)が得られるとしている。
【0018】
【数1】
【0019】
式(数1)において、ωは主働土圧領域の傾き(°)、Bは建築物の幅(m)、Ppは受働土圧抵抗力(kN)、Crは土の粘着抵抗力(kN)、γ2は基礎2より下の領域の地盤の単位体積重量(kN/m3)、φは地盤の内部摩擦角(°)である。
次に、テルツァギは、主働土圧領域R1の側面に働く粘着抵抗力Crが地盤の粘着力c等に比例することから、式(数1)より以下の式(数2)を導き出している。
【0020】
【数2】
【0021】
式(数2)はテルツァギの極限支持力公式と呼ばれるものであり、式(数2)中のNc、Nγ、Nqは、支持力係数と呼ばれる。尚、Dfは、地表面から基礎2の最下面までの距離である。式(数1)から式(数2)を導き出すことの詳細は、森北出版(株)発行の「建設工学シリーズ 地盤工学」(澤孝平他著)の173〜174頁に説明されているので、割愛する。
尚、主働土圧領域R1は、くさび状となるため、くさび領域と呼ばれることもある。以下の説明において、主働土圧領域R1と遷移領域R2の境界面をくさび境界面と呼び、図4等において符号RB1で示す。また、遷移領域R2の最下面を符号RB2で示す。
【0022】
上記のような支持力のモデルにおいて、何らかの外的な要因で塑性均衡状態が崩れる場合を想定する。例えば、図5に示すように、建築物が擁壁6で擁護された敷地に建築されており、擁壁6が地滑り等により崩れた場合を想定する。
平常時では、建築物と擁壁6との間では、図5(1)に矢印で示すように、静止土圧が安定して分布している。そして、建築物の直下の地盤内では、前述したような塑性均衡状態となっている。
このような状態において、地震や大雨等により地滑りが生じ、図5(2)に示すように、擁壁6が側方に移動してしまう現象が起きたとする。この際、擁壁6の移動により擁壁6における受働土圧が弱まる。この結果、擁壁6と建築物との間の地盤において主働土圧が働き、図5(2)に示すように地盤が擁壁6に向けて移動しようとする動的な応力が発生し、不安定な状態となる。その後、移動後の擁壁6による受働土圧と地盤による主働土圧とがバランスし、地中応力は再び安定状態になるが、擁壁6付近の地盤は図5(2)に示すように崩れた状態となる。
一方、建築物の直下の領域では、擁壁6に向けて移動しようとする動的な応力が発生する結果、受働土圧領域R3での受働土圧が弱まり、受働土圧領域R3が擁壁6の側に広がってしまう。この結果、左右の受働土圧のバランスが崩れ、建築物の不同沈下が生ずる。つまり、擁壁6の付近での塑性不均衡化が建築物の直下の地盤にまで連鎖する結果、建築物の不同沈下が生ずる。
【0023】
このように、離れた場所の小規模の崩壊によっても不同沈下が発生してしまう理由は、地中応力の分布が均一ではないからである。即ち、建築物全体の荷重の分布をどんなに均一にしたとしても、上述したように、地盤中にはくさび状の主働土圧領域が発生する。主働土圧領域は、左右から受働土圧抵抗で押された状態であり、先細り状に狭くなる領域であって、最下点(LP)は最も主働土圧が集中した箇所である。このため、ケーグラーのモデルによれば、地中応力分布SPは図4に示すように上に凸の分布であり地中応力は不均一に分布している。このような主働土圧領域R1は、下方に尖った領域であり、左右から受働土圧で押されて平衡を保っている領域であるため、僅かでも左右の受働土圧のバランスが崩れると、せん断が生じて不同沈下が発生してしまう。
【0024】
本実施形態の外部補強部材5は、このような不均一な応力分布を緩和(均一に)し、それによって不同沈下を防止する意義を有するものである。図6には、この点が示されている。図6に示すように、外部補強部材5が存在すると、外部補強部材5によって地盤が拘束されるため、基礎2の端部から斜め下方への地中応力の分散が実質的に無くなる。この結果、建築物の荷重による主働土圧は、ほぼ均一に分布してそのまま下方にかかることになる。
【0025】
外部補強部材5の下端のレベルより下側では、中央部において主働土圧領域が僅かに突出し、同様にくさび形となるものの、ここまで深い位置になると、図4及び図6の左側に示すように、元々の地中応力の大きさが大きくないために、突出は僅かでしかない。
また、一対の外部補強部材5が地盤を拘束する結果、外部補強部材5の外側では、地盤の土による上載圧が相対的に大きくなり、受働土圧は相殺されてしまう。即ち、主働同圧領域R1の土は外部補強部材5を外側に向けて押し、これにより外部補強部材5はその外側の土を押すものの、外部補強部材5は剛性が高いため、連続した塑性体である場合(土が連続している状態の場合)に比べ、外側の土を押す力は小さい。したがって、この外部補強部材5が外側の土を押す力は、その外側における土の上載置(土がその重量により地盤を下方に押す力)により打ち消されてしまう。このため、外部補強部材5の外側では、受働土圧領域は実質的に形成されなくなってなる。
【0026】
このように、第一の実施形態の構造では、地中直下領域を一対の外部補強部材5で挟んで地盤を拘束し、建築物の荷重による地中応力がそのまま下方にかかるようにしたので、主働土圧領域がより均一なる。このため、外的要因により周辺の地盤の塑性均衡が崩れたとしても、建築物に不同沈下が発生する可能性が少なくなる。また、受働土圧領域が実質的に無くなるので、敷地から離れた箇所での擁壁の崩壊のような外的要因による不同沈下も生じなくなる。
【0027】
第一の実施形態において、外部補強部材5を基礎2からあまり離れた位置に配置しないようにすることが望ましい。外部補強部材5と基礎2との距離が離れると、基礎2の最下面の端部から斜め下方に地中応力が分散するようになり、主働土圧領域R1が下方により凸な形状になってしまう。外部補強部材5と基礎2との間隔(図1にDで示す)は、敷地占有エリアの幅Wにもよるが、10cm以下とすることが望ましい。
また、第一の実施形態において、外部補強部材5の上端の位置は、地表面GLより低い位置であることが望ましい。地表面GLより高くても不同沈下防止の面では特に問題はないが、外部補強部材5が地表面GLから露出した状態になるので、見栄えが悪い場合がある。
外部補強部材5の上端の位置が地表面GLよりあまり下に位置すると、地表面GLと外部補強部材5との間の隙間が大きくなり、地盤を拘束する効果が薄れてしまうから、注意を要する。少なくとも、外部補強部材5の上端は、基礎2の下端より上にすることが望ましい。
【0028】
外部補強部材5の下端の位置は、上記不同沈下防止効果を得る観点から重要である。この位置は、地中応力が十分に減衰する位置であるとすることができる。重量の大きな建築物の場合にはより深い位置まで外部補強部材5が達する必要があり、重量の小さな建築物であれば、浅い位置までで足りる。2〜3階程度の住居用の建築物の場合、外部補強部材5の下端が地表面GLから1m(メートル)程度の深さの位置であれば、不同沈下防止の効果を得るのに十分である。したがって、外部補強部材5の下端の位置は、1mかそれより深い位置ということになる。但し、これは平地の場合で、傾斜地に建っているような場合にはより深い位置まで外部補強部材5が達していることが望ましい。
より具体的な一例を示すと、建築物が2〜3階程度の木造住宅又は軽量鉄骨構造の建築物である場合、外部補強部材5としては高さ180cm程度のものを使用し、地表面GLより深さ50cm程度の位置に上端が位置するよう埋め込む構造とすることができる。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、外部補強部材5は、建物部1及び基礎2のいずれにも固定されていない。この点も、建築物の不同沈下を防止する意味で重要な意義を有している。以下、この点について、図7を使用して説明する。図7は、外部補強部材5が建物部1及び基礎2に固定されていないことの効果を説明するための図である。
橋脚のような大規模な構造物では、基礎(フーチン)の側部から下方に延びるようにして板状の補強材が設けられることがある。この補強部材は矢板と呼ばれ、基礎に対して固定される。本実施形態の外部補強部材5は、基礎2に対して固定されていない点で、矢板とは異なる。
【0030】
上記のような外的要因による塑性不均衡化の連鎖を遮断する効果は、外部補強部材5は基礎2又は建物部1に固定されていてもいないくてもほぼ同様である。しかしながら、発明者の研究によると、軟弱地盤における不同沈下を防止する場合、外部補強部材5が基礎2又は建物部1に固定されている場合とされていない場合では、顕著な相違が生ずる場合がある。
【0031】
即ち、軟弱地盤であるから、建築物の竣工後にある程度沈下することが予定されている。このような沈下は、前述したように建築基準法上ある程度の範囲で許容されている。
このような許容される範囲内の沈下において、図7(1)に示すように外部補強部材5が例えば基礎2に固定されていると、基礎2とともに外部補強部材5と沈下していくことになる。この際、地盤中には軟弱な層が一様に広がっている場合もあるが、そうではない場合もあり、部分的に硬い箇所や大きな岩(以下、硬質体と総称する)7が存在する可能性がある。もし、外部補強部材5の直下の位置に硬質体7があると、その部分で沈下が抑えられ、この結果、左右で沈下量が異なることになって不同沈下が生じてしまう。
【0032】
一方、図7(2)に示すように、外部補強部材5が建築物のいずれの箇所にも固定されていなければ、建築物が全体に沈下する際にも、外部補強部材5は沈下しない。したがって、万が一外部補強部材5の下側に硬質体7が存在したとしても、不同沈下にはつながらない。
尚、外部補強部材5は建築物の荷重によって建築物と一体に沈下しなければよいから、外部補強部材5は基礎2及び建物部1に固定されていなければよく、接触している場合だけであれば問題がないこともある。例えば、外部補強部材5が基礎2に接触していて、建築物が全体に同沈下する際、基礎2が外部補強部材5の表面を滑っていくような状態であってもよい。
【0033】
次に、このような不同沈下防止構造の施工方法について、図8を使用して説明する。図8は、第一の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した図である。
実施形態の不同沈下防止構造は、上記説明から解るように、地盤中に一対の外部補強部材5を埋設するものであり、極めて簡易な構造である。外部補強部材5の埋設は、溝を掘って溝内に配置した後に埋め戻す方法でも良いが、軟弱地盤であることが前提になっているので、重機等で地表面GLから押し込むだけで施工ができ、その方がより簡便である。
【0034】
まず、基礎の占有エリアより少し広いエリアを所定の深さまで掘り下げ、底面の突き固め等を必要に応じて行う(図8(1))。次に、重機で外部補強部材5の埋め込みを行う(図8(2))。重機で外部補強部材5の上端を掴みながら、所定の位置に押し込み、必要に応じて重機で叩く等する。埋め込み完了後の外部補強部材5の上端は、底面より突出し且つ地表面GLより低い所定の高さとされる。
その後、基礎2(ベタ基礎、布基礎等)の施工を行う(図8(3))。この部分は通常と同じで良い。そして、埋め戻しを行うと、基礎工事の完了とともに、外部補強部材5が所定の深さの地中に埋め込まれた状態となる(図8(4))。
【0035】
以上の説明から解るように、本実施形態の不同沈下防止構造によれば、外部要因の影響による建築物の不同沈下を効果的に防止することができ、一対の外部補強部材5を埋め込むだけなので、施工も容易でコストも安い。また、万が一硬質体7が存在していても不同沈下が生ずることもない。
尚、上記説明では、外部補強部材5の埋め込みを基礎2の施工前に行ったが、外部補強部材5の埋め込みを基礎2の施工完了後に行ったり、建物部1の施工完了後に行ったりすることも可能ではある。但し、重機の動きが制限されるため埋め込み作業が容易ではないことがあり得る。
【0036】
また、本実施形態の外部補強部材5は、硬い地盤(岩盤)に達するように施工される支持杭などとは異なる。建築物の沈下を防止する構造として、岩盤まで達するようにして杭を打ち込み、この杭に対して基礎を固定した上で建物部を建築することが行われている。杭に代えて、パネル状の部材を岩盤まで打ち込むことも考えられよう。
しかしながら、このような構造は、大がかりでコストがかかり、工期も長くなる。岩盤がかなり深い位置にあるような敷地では、この問題は顕著である。
本実施形態の構造は、このようなものではなく、岩盤まで外部補強部材5を打ち込むものではない。外部補強部材5は、軟弱層中に存在して上記の通り不同沈下を防止するものである。したがって、上記のような問題は全くない。
【0037】
また、岩盤まで杭やパネルを打ち込むと、地震対策の点で別の問題が生じる。岩盤まで杭を打つことは、沈下防止には効果的であるが、岩盤と建築物が連結された状態となるため、地震の揺れが建築物に直接伝わり、建築物の揺れが大きくなり易い。
一方、実施形態の構造では、外部補強部材5は基礎2等に固定されていないので、地震の揺れを建物部1に伝えることはなく、建物部1の揺れは大きくなりにくい。軟弱地盤というのは、沈下し易いという点ではやっかいであるが、耐震の観点では都合が良い面もある。即ち、岩盤のような硬い層と軟弱層とでは、固有振動数が違うので、硬い層を伝わってきた地震の揺れは、軟弱層に達した時点で反射し易く、その上に建っている建築物まで伝わりにくい。しかし、支持杭のようなもので硬い層と建築物を連結してしまうと、この軟弱層の長所を帳消しすることになってしまう。本実施形態の構造は、軟弱層の長所を地震対策に活かしつつ不同沈下を防止する意義を有している。
【0038】
次に、本願発明の第二の実施形態の不同沈下防止構造について説明する。
図9は、本願発明の第二の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図、図10は図9に示す構造の平面概略図である。
この第二の実施形態においても、軟弱層中に埋め込まれた内部補強部材8により不同沈下を防止する構造となっている。この第二の実施形態が第一の実施形態と異なるのは、地中直下領域3を挟む状態ではなく、地中直下領域3内に内部補強部材8が配置されている点である。
【0039】
本実施形態において、内部補強部材8は一対の部材であり、垂直な姿勢であって互いに平行である。各内部補強部材8は、完全に地中に埋没していて上端は地表面GLより下である。図9及び図10に示すように、一対の内部補強部材8は、左右に配置されていることを除き、上下方向の位置関係及び奥行き方向の位置関係はいずれも同じである。そして、図9及び図10に示すように、各内部補強部材8は、建物部1及び基礎2は各内部補強部材8には載っておらず、両者は離間している。尚、内部補強部材8は、基礎2にも建物物1にも固定されていない。
【0040】
また、図10に示すように、一対の内部補強部材8は、一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている。より具体的に説明すると、図10に示すように、この実施形態では敷地占有エリアは方形となっている。一対の内部補強部材8は方形の一方の辺の方向に沿って設けられており、したがって、一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向は、方形の他方の辺の方向である。そして、地中直下領域の中央部からの各内部補強部材8までの距離は同一となっている。
また、図10に示すように、一対の内部補強部材8は、内部補強部材8の幅方向(方形の一方の辺の方向)においても、敷地占有エリアの中央に設けられている。即ち、一対の内部補強部材8の幅方向の中央は、敷地占有エリアの一方の辺の方向の中央の位置と一致している。
【0041】
図11は、第二の実施形態の不同沈下防止構造の作用について示した正面断面概略図である。図11には、一対の内部補強部材8が埋め込まれた地盤中の塑性均衡状態が描かれている。図11中、内部補強部材8が無い状態の塑性均衡状態(以下、補強無し状態)が点線で示されており、内部補強部材8がある状態の塑性均衡状態が一点鎖線で示されている。点線で示す塑性均衡状態は、図4に示したのと同じである。
【0042】
第一の実施形態の構造では、一対の内部補強部材8が地中直下領域3を挟みながら地盤を拘束することで不同沈下を防止したが、この第二の実施形態では、一対の内部補強部材8が地中直下領域3内で地盤を拘束することで不同沈下を防止するものとなっている。
図11に示すように、一対の内部補強部材8は、内部補強部材8が無い場合に形成される主働土圧領域のくさび境界面RB1を寸断する状態となっている。このように寸断すると、一対の内部補強部材8が向かい合う間の空間では、地盤が強く拘束された状態となり、建築物の荷重による主働土圧はそのまま下方に作用する。このため、主働土圧領域は、図11に一点鎖線で示すように、ほぼ台形状となる。したがって、この第二の実施形態においても、主働土圧応力が集中する点は無くなり、図11の下側に示すように、より均一な地中応力の分布となる。このため、左右で多少塑性均衡が崩れても不同沈下が発生しにくくなっている。
【0043】
また、一対の内部補強部材8が地盤を拘束する結果、その外側において受働土圧が土の上載圧に打ち消され、受働土圧領域R3が実質的に無くなる。このため、敷地のごく近い箇所で擁壁の崩壊のような事故が生じない限り、不同沈下は生じない。
【0044】
次に、第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明する。図12は、第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明するための図である。
第二の実施形態において、内部補強部材8は、主働土圧領域R1が横方向に地盤を押し広げようとするのを防止するものであるから、補強無し状態におけるくさび境界面RB1よりも下に位置すること、即ち図12(1)に示すように、内部補強部材8がくさび境界面RB1を寸断するよう配置されることが望ましい。
【0045】
また、土中応力分布の平坦化のためには、図12(2)に示すように、内部補強部材8の下端が、補強無し状態における主働土圧領域R1の最下点LPかそれよりも下側に位置しているとより好ましい。主働土圧がこの深さまで作用しているからである。また、内部補強部材8の下端は、図12(3)に示すように、補強無し状態の遷移領域R2の下側境界面RB2かそれより下方に位置していることとさらに望ましい。受働土圧は、この深さまで作用しており、受働土圧を完全に拘束する観点からである。
【0046】
また、この第二の実施形態の構造で重要なことは、上記のように内部補強部材8には基礎2や建物部1が載っていないということである。この点も、第一の実施形態と同様、地盤中に万が一硬質体7が存在する可能性を考慮してのことである。但し、第二の実施形態では、内部補強部材8は基礎2の直下に位置するので、基礎2に固定されていないだけでは足らず、基礎2も建物部1も内部補強部材8に載っていないことが条件となる。つまり、基礎2から所定距離下方に離間した状態で埋め込まれていることが必須条件である。
基礎2から内部補強部材8の上端までの距離(図9にL1で示す)は、建築物の竣工後にどの程度同沈下して安定するかを見込んで設定する。例えば、建築物の荷重、地盤の軟弱度等のデータから5cm同沈下して安定すると見込まれる場合、安全を見て距離L1を10cmに設定する。
【0047】
また、一対の内部補強部材8が一対の内部補強部材8に対して垂直な水平方向で見た際の敷地占有エリアの中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられている配置されている点は、左右の塑性均衡を安定的に確保する意義を有する。即ち、一対の内部補強部材8が敷地エリアの中央部から等距離であるということは、基礎2の端部からの距離(図9にL2で示す)が互いに等しいことを意味する。距離L2が等しいということは、中央部から同じ距離の所で地盤を拘束することになり、塑性均衡が安定的に確保される。
【0048】
周知のように、補強無し状態において基礎2の最下面とくさび境界面RB1の成す角は、π/+φ/2であるから、補強無し状態における主働土圧領域の深さは、B/2(tan(π/4+φ/2))である。Bは基礎2の幅、φは地盤の内部摩擦角である。従って、図12(1)や(2)の状態を得るための内部補強部材8の高さ及び埋込位置は、計算により容易に求めることができる。
また、補強無し状態における遷移領域R2の最下面RB2は、r・exp(εtanφ)で与えられることが知られている。rは、くさび境界面RB1の斜面の長さである。したがって、図12(3)の状態についても、計算により容易に得ることができる。
【0049】
次に、第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について図13を使用して説明する。図13は、第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した正面断面概略図である。
第二の実施形態の構造を施工する場合、まず、敷地占有エリアを所定の深さで掘り下げる(図13(1))。この所定の深さとは、基礎2の最下面が位置する深さよりも少し(図9に示すL1の分だけ)深い深さである。掘り下げて形成した凹部の底面の付き固め等の必要な作業をした後、重機を使用して押し込むようにして内部補強部材8を埋め込む(図13(2))。この際、埋め込んだ後の内部補強部材8の上端が凹部の底面に一致するようにする。
【0050】
その後、少し埋め戻しを行って、凹部の深さを基礎2の最下面が位置する深さに一致させる(図13(3))。そして再度突き固め等を行った後、基礎2を施工する(図13(4))。即ち、割石等を敷き詰めた後、コンクリートのベタ基礎や布基礎を施工する。その後、完全に埋め戻しを行うと、下側に内部補強部材8が埋め込まれた状態で基礎工事が完了する。
【0051】
次に、本願発明の他の実施形態に係る不同沈下防止構造について説明する。
図14は、第一の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
第一の実施形態において、まず図14(1)に示すように、二対の外部補強部材5が配置された構造であっても良い。即ち、方形の敷地占有エリア4の四つの辺に沿ってそれぞれ外部補強部材5が埋め込まれた構造でも良い。このようにすると、方形の二つの辺の方向についてそれぞれ地盤を拘束することになり、いずれの方向においても地中応力分布が均一化するので、不同沈下防止の効果がより高く得られる。
【0052】
また、図14(2)に示すように、一つの辺に沿って複数の外部補強部材5が配置されていても良い。隣接する外部補強部材5同士は、相互に連結されていても良いし、単に接触するだけでも良い。重機で埋め込みを行う場合には、連結されていないものの方が扱い易い。また、図示されたように、多少離間していても土は粘着力を有するので問題はない。但し、あまり離間すると、地盤の拘束による不同沈下防止効果が薄れるので、離間距離は20cm程度までとすることが好ましい。尚、図14(2)では四辺に外部補強部材5を設ける例であるが、二辺(一対のみ)に設ける例で各辺に複数の外部補強部材5を並べても良い。
また、図14(3)に示すように、敷地占有エリア4が細長い長方形である場合、どちらかというと、長辺の方向に沿って一対の外部補強部材5を配置する方が好ましい。これは、地盤の断面における塑性平衡状態を考慮すれば解るように、幅が狭い方の方向において地中応力分布の不均一が増長されるからである。
【0053】
図15は、第二の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
まず、図15(1)に示すように、一対の内部補強部材8のみが配置される構造の場合、一対の内部補強部材8の幅は、基礎2の幅に一致させることが望ましい。基礎2の幅よりも大きくしても構わない。
【0054】
また、図15(2)に示すように、二対の内部補強部材8を方形に配置するようにしてもよく、このようにすると、第二の実施形態に比べより効果がある。この場合、それぞれの対の内部補強部材8において、中央部から等距離の位置に配置される。尚、隣り合う内部補強部材8の角部は接触していもよく、離間していても良い。また、二対の内部補強部材8が成す方形は、敷地占有エリアと同心の相似形を成す配置とされる場合もある。
第二の実施形態においても、図15(3)に示すように、複数の内部補強部材8を一つの辺に並べても良い。この場合、隣り合う内部補強部材8は連結しても良く、接触しているのみでもよく、また所定の範囲内で離間していても良い。
【0055】
図16は、第一の実施形態と第二の実施形態とを組み合わせた第三の実施形態の正面断面概略図、図17は、図16に示す第三実施形態の平面概略図である。
この第三の実施形態では、図16及び図17に示すように、地中直下領域3を挟むようにして一対の外部補強部材5が設けられ、地中直下領域3内で中心部から等距離の位置に一対の内部補強部材8が設けられている。図16に示すように、内部補強部材8は、外部補強部材5に比べて下端の位置が低くなっている。
【0056】
この第三の実施形態では、地中直下領域3を両側から外部補強部材5で拘束しつつ内部で内部補強部材8でさらに補強している。このため、建築物の荷重による主働土圧がそのまま真下にかかる度合いがさらに高くなり、ケーグラーのモデルで示すように地中応力の分布はさらに均一になる。このため、不同沈下防止の効果がさらに高く得られる。
この第三の実施形態においても、各辺に複数の補強部材5,8を並べても良く、外部補強部材5や内部補強部材8を方形の配置(二対の配置)としても良い。
【0057】
第三の実施形態の構造を施工する場合、基礎2の占有エリアより少し広い領域で且つ基礎2の最下面より少し(L1の分だけ)深く掘り下げを行って底面の突き固めを行う。そして、前述したのと同様に内部補強部材8の埋め込みを行うとともに、外部補強部材5の埋め込みを行う。内部補強部材8の上端を溝の底面に一致させ、外部補強部材5の上端を地表面GLより少し低い位置とする。尚、外部補強部材5は、凹部の底面から突出した状態となる。その後、少し埋め戻しを行って基礎2の最下面の位置に凹部の深さを一致させ、再度突き固めを行った後、基礎2を施工する。そして、完全に埋め戻しを行って基礎工事を完了させる。
【0058】
次に、敷地占有エリアに関連して追加の説明をする。
以上の説明は、敷地占有エリア4が単純な方形の例であったが、そうではない場合もあり得る。この場合の実施形態を示したのが図18である。図18は、敷地占有エリア4が方形ではない場合の実施形態の平面概略図である。
外部補強部材5は地中直下領域3を挟むものであり、内部補強部材8は地中直下領域3内で補強無し状態でのくさび境界面RB1を寸断するよう設けられるものである。この趣旨からすると、敷地占有エリア4が方形ではない場合、図18(1)に示すように、敷地占有エリア4の輪郭に沿って外側に外部補強部材5を設け、輪郭に沿って内側に内部補強部材8を設ける構造が考えられる。
【0059】
また、図18(2)に示すように、敷地占有エリア4を包絡する方形のエリア(以下、方絡方形エリア)9を仮想し、この方絡方形エリア9の直下の領域について、前述と同様に、外部補強部材5を設けたり、内部補強部材8を設けたりしても良い。尚、内部補強部材8については、図18(2)に示すように、少なくとも一部分が地中直下領域3にあれば足り、一部が地中直下領域3をはみ出していても良い。尚、この場合の「包絡する方形」とは、敷地占有エリア4を内部に包含する方形であって、少なくとも一つの辺(直線)において敷地占有エリア4の辺と重なっている方形という意味である。
【0060】
上述した各実施形態において、第一の実施形態や第二の実施形態の構造は、比較的重量の軽い2〜3階建て程度の木造住宅や軽量鉄骨構造の建築物等を建築する際の不同沈下防止に適している。重量の重いRC構造の建築物を建築する際には、第三の実施形態の構造が適している。
【0061】
次に、第四の実施形態について図19を使用して説明する。図19は、第四の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
この第四の実施形態は、上述した各実施形態の構造において、軽量人工地盤材による地盤置換を併用した構造となっている。即ち、第四の実施形態においては、基礎2の下側に人工地盤組立体9が施工されている。人工地盤組立体9は、樹脂製の地盤置換用のブロック(以下、樹脂ブロック)91を多数敷き詰めて積み上げたものである。樹脂ブロック91は、瓶ビールの輸送用に使用されているようなポリプロピレン製であり、例えば、土木用として株式会社林物産(茨城県日立市)から販売されているカンカンブロック(商品名)が使用できる。
【0062】
樹脂ブロック91は、一種の骨格部材であって開口部を多数有する。したがって、大雨の際に地中水位が上昇した際、人工地盤組立体内に水が浸入する。尚、軽量人工地盤用のブロックとして発泡樹脂製のブロックを使用することも行われているが、発泡樹脂は排水性であるので、施工中に大雨が降った場合に、施工中の人工地盤組立体が浮き上がってしまう問題がある。射出成型等により製作されるポリプロピレンのような発泡樹脂ではない樹脂で形成されたブロックを使用すると、このような問題はない。
人工地盤組立体9は、地中直下領域のうち基礎より所定の深さの領域を占めるよう施工される。具体的な施工方法としては、特願2007−169760号の明細書に詳細に開示されている。
【0063】
この実施形態では、人工地盤組立体9の直下の地中直下領域3内に一対の内部補強部材8が設けられている。また、人工地盤組立体9が配置された領域を含んで地中直下領域3を挟むようにして一対の外部補強部材5が配置されている。この実施形態においても、方形の四つの辺に補強部材5,8が配置されていてもよく、一つの辺に複数の補強部材5,8が配置されていても良い。
【0064】
軽量人工地盤材による地盤置換は、先行重量としての土を取り払い、その取り払った場所に土に比べて十分に軽い構造材を配置して建築物を支えることで、地盤にかかる接地圧(上載圧)を軽減する技術である。人工地盤組立体9の最下面における接地圧が、同じ深さの位置の周囲の場所での接地圧とバランスする結果、建築物の沈下が防止される。尚、取り払う土の重量は、建築物全体の重量(建物部1、基礎2及び人工地盤組立体9の総重量)に見合う重量とされる。見合う重量とは、一致する重量とする場合もあるが、建築物全体の重量による接地圧がその地盤の地耐力を上回る分だけ取り払うようにする場合もある。
【0065】
このような地盤置換を行うことは、軟弱地盤に対してある程度大きな荷重の建築物を建築する場合、全体として接地圧を軽減する観点から重要である。しかしながら、接地圧は軽減されているものの、相当量の接地圧が人工地盤組立体の下側の地盤にかかっている。したがって、前述したように外部要因により周囲の土の塑性均衡が崩れた場合、不同沈下が発生する可能性がある。本実施形態では、この点を考慮し、補強部材5,8によって地盤を拘束し、不同沈下を防止している。
【0066】
この実施形態の方法は、全体として接地圧を軽減した上で、地盤拘束による不同沈下防止を行っているため、より軟弱な地盤(N値のより低い地盤)に大きな重要の建築物を建築する場合に特に好適である。
また、地盤置換は、補強部材5,8による地盤の拘束と補完的な関係も果たす。つまり、地盤置換により接地圧が軽減されているため、主働土圧や受働土圧も低減される。したがって、外側補強部材5のみで足りたり、内側補強部材8で足りたりする場合もある。また、方形の四つの辺に補強部材5,8を設ける必要はなくなり、一方の辺だけで足りる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本願発明の第一の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面概略図である。
【図2】図1に示す構造の平面概略図である。
【図3】地中直下領域の説明図である。
【図4】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図5】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図6】第一の実施形態の不同沈下防止構造の作用について説明するための断面概略図である。
【図7】外部補強部材5が建物部1及び基礎2に固定されていないことの効果を説明するための図である。
【図8】第一の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した図である。
【図9】本願発明の第二の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
【図10】図9に示す構造の平面概略図である。
【図11】第二の実施形態の不同沈下防止構造の作用について示した正面断面概略図である。
【図12】第二の実施形態における内部補強部材8の高さ(下端部の位置)について説明するための図である。
【図13】第二の実施形態の不同沈下防止構造の施工方法について示した正面断面概略図である。
【図14】第一の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
【図15】第二の実施形態の不同沈下防止構造を変形した各実施形態について示した平面概略図である。
【図16】第一の実施形態と第二の実施形態とを組み合わせた第三の実施形態の正面断面概略図である。
【図17】図16に示す第三実施形態の平面概略図である。
【図18】敷地占有エリア4が方形ではない場合の実施形態の平面概略図である。
【図19】第四の実施形態に係る不同沈下防止構造の正面断面概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 建物部
2 基礎
3 地中直下領域
4 敷地占有エリア
5 外部補強部材
8 内部補強部材
9 人工地盤組立体
91 樹脂ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の外部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項2】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
一対の内部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられていることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項3】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設されているとともに、地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は内部補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
外部補強部材及び内部補強部材の各々は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられていることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項4】
前記敷地占有エリアの輪郭は方形であり、前記外部補強部材は二対設けられていて前記敷地占有エリアの方形の輪郭に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項5】
前記敷地占有エリアは方形ではなく、この敷地占有エリアを包絡する仮想の方形のエリアの直下の領域を前記一対の外部補強部材が挟んだ構造であることを特徴とする請求項1又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項6】
前記一対の外部補強部材の下端の位置は、地表面より1mかそれより深い位置であることを特徴とする請求項1、3、4又は5に記載の不同沈下防止構造。
【請求項7】
前記一対の外部補強部材の上端の各々と基礎の側面までの距離は、10cm以下であることを特徴とする請求項1、3、4、5又は6に記載の不同沈下防止構造。
【請求項8】
前記敷地占有エリアの輪郭は方形であり、前記内部補強部材は二対設けられていて前記敷地占有エリアの方形の輪郭に沿って配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項9】
前記敷地占有エリアは方形ではなく、この敷地占有エリアを包絡する仮想の方形のエリアの直下の領域内に前記一対の内部補強部材が埋設された構造であることを特徴とする請求項2又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項10】
前記一対の内部補強部材と基礎の最下面との距離は、10cm以上であることを特徴とする請求項2、3、8又は9に記載の不同沈下防止構造。
【請求項11】
前記一対の内部補強部材は、その内部補強部材が存在しない場合において建築物の荷重により基礎の下方に形成される主働土圧領域と遷移領域との境界面を寸断する位置に設けられていることを特徴とする請求項2、3、8、9又は10に記載の不同沈下防止構造。
【請求項12】
前記一対の内部補強部材の下端は、内部補強部材が存在しない場合において建築物の荷重により基礎の下方に形成される主働土圧領域の最下点と同じ深さかそれより深い位置に位置していることを特徴とする請求項2、3、8、9、10又は11に記載の不同沈下防止構造。
【請求項1】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の外部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項2】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
一対の内部補強部材は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられていることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項3】
建物部と建物部を支える基礎とから成る建築物の軟弱地盤における不同沈下を防止する構造であって、
地中直下領域を挟むようにして一対のパネル状の外部補強部材が埋設されているとともに、地中直下領域内に一対のパネル状の内部補強部材が埋設された構造であり、
地中直下領域は、建築物が占有する敷地内のエリアである敷地占有エリアからある深さの三次元空間であって、この地中直下領域は軟弱層中であり、
一対の外部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているともに、建物部及び基礎には固定されておらず、
一対の内部補強部材の各々は、垂直な姿勢であって互いに平行に向かい合った姿勢で地中に埋め込まれているとともに、建物部及び基礎は内部補強部材に載っておらず、また内部補強部材は建物部にも基礎にも固定されておらず、
外部補強部材及び内部補強部材の各々は、土に比べて十分に高い剛性を有するものであり、
一対の外部補強部材の上端は、地中に位置する基礎の最下面より高い位置であり、
一対の外部補強部材の下端は、地中に位置する基礎の最下面より低い位置であり、
一対の内部補強部材は、一対の内部補強部材に対して垂直な水平方向で見た際の地中直下領域の中央部を挟んで設けられており、この中央部から互いに等間隔離間した位置に設けられていることを特徴とする軟弱地盤における建築物の不同沈下防止構造。
【請求項4】
前記敷地占有エリアの輪郭は方形であり、前記外部補強部材は二対設けられていて前記敷地占有エリアの方形の輪郭に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項5】
前記敷地占有エリアは方形ではなく、この敷地占有エリアを包絡する仮想の方形のエリアの直下の領域を前記一対の外部補強部材が挟んだ構造であることを特徴とする請求項1又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項6】
前記一対の外部補強部材の下端の位置は、地表面より1mかそれより深い位置であることを特徴とする請求項1、3、4又は5に記載の不同沈下防止構造。
【請求項7】
前記一対の外部補強部材の上端の各々と基礎の側面までの距離は、10cm以下であることを特徴とする請求項1、3、4、5又は6に記載の不同沈下防止構造。
【請求項8】
前記敷地占有エリアの輪郭は方形であり、前記内部補強部材は二対設けられていて前記敷地占有エリアの方形の輪郭に沿って配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項9】
前記敷地占有エリアは方形ではなく、この敷地占有エリアを包絡する仮想の方形のエリアの直下の領域内に前記一対の内部補強部材が埋設された構造であることを特徴とする請求項2又は3記載の不同沈下防止構造。
【請求項10】
前記一対の内部補強部材と基礎の最下面との距離は、10cm以上であることを特徴とする請求項2、3、8又は9に記載の不同沈下防止構造。
【請求項11】
前記一対の内部補強部材は、その内部補強部材が存在しない場合において建築物の荷重により基礎の下方に形成される主働土圧領域と遷移領域との境界面を寸断する位置に設けられていることを特徴とする請求項2、3、8、9又は10に記載の不同沈下防止構造。
【請求項12】
前記一対の内部補強部材の下端は、内部補強部材が存在しない場合において建築物の荷重により基礎の下方に形成される主働土圧領域の最下点と同じ深さかそれより深い位置に位置していることを特徴とする請求項2、3、8、9、10又は11に記載の不同沈下防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−133162(P2009−133162A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311653(P2007−311653)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(507216892)
【出願人】(507396219)株式会社家・スタイル (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(507216892)
【出願人】(507396219)株式会社家・スタイル (1)
【Fターム(参考)】
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