説明

軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体

【課題】表層処理用補強材を構成する複数本の袋体に、流動性固化材の充填の際の注入圧力を高めることなく一度に充填することができるようにするとともに、表層処理用補強材をロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することを可能にして、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上するようにした軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体を提供すること。
【解決手段】流動性固化材が導入される基端側袋体12a、13aと、この基端側袋体12a、13aに対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体12a、13aに連通して基端側袋体12a、13aから流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体12b、13bとで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体12、13を含む表層処理用補強材1を、軟弱地盤上に平面状に敷設し、表層処理用袋体12、13に流動性固化材を充填して剛性補強体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性土等の軟弱地盤上に表層処理用補強材を敷設して、覆土あるいは土構造物構築を行うための軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘性土の軟弱地盤上に直接土砂を撒き出した場合、土砂の荷重あるいは撒出し機械の重量によって、土砂が粘性土と混合して役に立たなくなったり、地盤が破壊して陥没したりすることがある。
このような現象を防ぐため、表層処理方法として、1966年に繊維製織布を敷設材料に使用したシート工法が発明され、その後、敷設材料として合成樹脂製ネットを用いる敷網工法が開発され(特許文献1参照)、さらに、シートの補強を目的としたロープシート工法、あるいは竹枠とシートやネットを組み合わせた工法など、いくつかの関連工法が開発されてきた。
また、セメント等の固化材を軟弱土に添加・混合することによって表層部分の安定処理を図ろうとする固化処理技術も発展してきている。さらに、陸上又は水中下の軟弱地盤表層改良技術として、強靱で引張強度がある素材で製作された広い面積の透水性を有するジオテキスタイル等の袋を軟弱地盤の表層に展開し、この袋内に貧配合のセメント系等の固化材を充填し、硬化した固化材が引張強度のある袋で一体的に包被された平板状固化層を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、新たに、軟弱地盤上にシートやネット等の可撓性の面状補強材を敷設するとともに、この面状補強材の上面と下面の少なくとも一方の面に脱水性を有し引張強度の高いホース等からなる可撓性の線状中空体を配設しあるいは予め取り付けておき、この線状中空体内にモルタル類を充填して格子状等の剛性補強体を形成し、敷設が容易で剛性の高い枠構造の剛性補強体により、面状補強材を介して載荷される土砂荷重を分散させ、軟弱地盤の破壊や変形を抑制して安定した覆士や盛土の土砂作業を行う工法が開発されている(特許文献3参照)。
さらに、本件出願人等の提案による、軟弱地盤上に可撓性の面状補強材を敷設するとともに、この面状補強材の上面と下面の少なくとも一方の面に筒状織物からなる格子状袋体を配設して、この格子状袋体内にモルタル等の固化材を充填して剛性補強体を形成する軟弱地盤の表層処理方法も開発されている(特願2003−401053号)。
【0003】
ところで、シートやネット等の可撓性の面状補強材を敷設する工法の成功の鍵を握っているのは、土砂の撒き出し方法である。このポイントは、不均一な盛土厚や局部的沈下による不同沈下をできるだけ生じさせないことにあり、第1層目の撒き出しで、層厚を大きくしたり、不均一な沈下の癖を付けたりすると、後続の第2層目の撒き出しでこの不均一状態を修正することが困難となる。
そのため、ジェットコンベアによる撒き出しや浚渫ポンプを使用した水搬撒き出しなどの工夫もされているが、一旦不均一な沈下による凹みが生じると、局所沈下の集中を助長することとなり、砂厚の管理・調整が困難になってくる。
このようなトラブルは、シートやネット等の可撓性の面状補強材の引張強さが少々大きければ防げるというものではなく、敷設する材料に剛性を与え、荷重分散効果を発揮させなければ、基本的に防止することはできない。
上記の長さ数mの竹を1m間隔の格子に組んで、その上にシートを敷設するという工法の原理は、まさに荷重分散効果を発揮させるものであるが、竹の調達や竹枠の形成、軟弱地盤上への設置等に係る施工性の問題がある。
一方、セメント等で軟弱地盤表層を格子状に直接固化処理して竹枠的な効果を期待する試みもあるが、別工程が増え、コスト的に高価となる。
また、表層部分を全面固化処理する工法や大きな袋内にセメント系等の固化材を充填する方法も、シートやネット等の可撓性の面状補強材を敷設する工法に比較して高価となる。
先の特許文献3記載の方法は、荷重分散により効果的に局部的沈下を抑制できるが、線状中空体毎にモルタル類を充填する必要があり、線状中空体が複数本ある場合は、1本ずつ線状中空体とモルタルポンプに接続されたホースの接続、モルタル充填、中空体端部の閉塞処理、接続の切り離しを行わねばならず、特に線状中空体の本数が多い場合は煩雑である上、施工時間も長くなりコストも上がるという問題がある。
また、この問題を解決するために開発された、前述の特願2003−401053号による表層処理方法は、1箇所からのモルタル充填作業で格子状袋体全体にモルタルを行き渡らせることができる点で、施工性に優れたものであった。
しかしながら、敷設面積が著しく大きくなると、1箇所からの注入では、格子状袋体の交点部分でのモルタルの流動に対する抵抗が次第に積み重なり充填に要する注入圧力が次第に高くなり、袋体の交点部分の破損や、袋体からのモルタルの脱水による流動不良が生じたりする問題があった。
【特許文献1】特開2002−227178号公報
【特許文献2】特開平11−152735号公報
【特許文献3】特開2004−137778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これら従来の軟弱地盤の表層処理方法が有する問題点に鑑み、表層処理用補強材を構成する複数本の袋体に、流動性固化材の充填の際の注入圧力を高めることなく一度に充填することができるようにするとともに、表層処理用補強材をロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することを可能にして、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上するようにした軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の軟弱地盤の表層処理方法は、流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体を含む表層処理用補強材を、軟弱地盤上に平面状に敷設し、前記表層処理用袋体内に流動性固化材を充填して剛性補強体を形成することを特徴とする。
【0006】
この場合において、表層処理用袋体が、前記表層処理用袋体の長さ方向と幅方向とに配設され、かつそれぞれの一端が連通した2本の前記基端側袋体と、該2本の基端側袋体にそれぞれ連通した複数の分岐側袋体とで格子状に構成することができる。
【0007】
また、前記分岐側袋体が、表層処理用補強材を構成する面状補強材の全面に亘って部分的に結合することができる。
【0008】
また、上記本発明の軟弱地盤の表層処理方法に用いられる軟弱地盤の表層処理材は、 流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体と、表層処理用袋体の上面又は下面に配列された面状補強材と、前記表層処理用袋体内に充填、固化された流動性固化材とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
また、前記面状補強材の長さ方向と幅方向とに配設され、かつそれぞれの一端が連通した2本の前記基端側袋体と、該2本の基端側袋体にそれぞれ連通した複数の分岐側袋体とで格子状に構成された表層処理用袋体を含むようにすることができる。
【0010】
また、前記分岐側袋体が、前記面状補強材の全面に亘って部分的に結合することができる。
【0011】
また、上記本発明の軟弱地盤の表層処理方法に用いられる軟弱地盤の表層処理用袋体は、流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、前記基端側袋体に大径部を形成し、該大径部において分岐側袋体と接合するようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体によれば、流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体を含む表層処理用補強材を、軟弱地盤上に平面状に敷設し、前記表層処理用袋体内に流動性固化材を充填して剛性補強体を形成することにより、袋体への流動性固化材の注入圧力を極端に高めることなく、また、袋体の破損や袋体を通じた流動性固化材からの局所的な脱水による流動不良が生じることなく、一度に充填することができ、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上することができる。
また、表層処理用補強材全体がフレキシブルで部分的にかさばる部分がないため、表層処理用補強材をロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することができる。
【0014】
また、表層処理用袋体が、前記表層処理用袋体の長さ方向と幅方向とに配設され、かつそれぞれの一端が連通した2本の前記基端側袋体と、該2本の基端側袋体にそれぞれ連通した複数の分岐側袋体とで格子状に構成することにより、格子状袋体を構成する分岐側袋体内に、流動性固化材を一度に充填することができ、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上することができる。
【0015】
また、前記分岐側袋体を、表層処理用補強材を構成する面状補強材の全面に亘って部分的に結合することにより、面状補強材上に撒き出された土の荷重が、流動性固化材が充填され剛性を有する分岐側袋体により支持されることにより荷重分散が図られ、不均一な沈下の発生を防止することができる。
また、逆に、軟弱地盤の周囲の地盤が隆起する場合も、その隆起の力を面状補強材を介して流動性固化材が充填され剛性を有する分岐側袋体により支持することにより荷重分散が図られ、不均一な隆起の発生を防止することができる。
【0016】
また、本発明の軟弱地盤の表層処理材によれば、流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体と、表層処理用袋体の上面又は下面に配列された面状補強材と、前記表層処理用袋体内に充填、固化された流動性固化材とを備えてなることにより、充填された流動性固化材が硬化後、剛性を有する荷重支持構造体の一部として機能するようにすることができる。
【0017】
また、本発明の軟弱地盤の表層処理用袋体によれば、流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成することにより、全体がフレキシブルで部分的にかさばる部分がないため、ロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することができる。
【0018】
また、前記基端側袋体に大径部を形成し、該大径部において分岐側袋体と接合することにより、接合部分の縫製加工や接着加工を行い易く、接合部分の強度が高く、また、接合部分における流動性固化材の流通を円滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に、本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体の一実施例を示す。
この軟弱地盤の表層処理方法は、表層処理用補強材1として、織布や合成樹脂製のシート材等からなる面状補強材11と、モルタル類等の流動性固化材が充填される袋体で構成された表層処理用袋体12、13とを用いるようにし、この表層処理用補強材1を、軟弱地盤G上に平面状に敷設し、表層処理用袋体12、13内に流動性固化材を充填して剛性補強体を形成するようにしたものである。
そして、このうち、流動性固化材が充填される表層処理用袋体12、13は、流動性固化材が導入される基端側袋体12a、13aと、この基端側袋体12a、13aに対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体12a、13aにそれぞれ連通して基端側袋体12a、13aから流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体12b、13bとで各々櫛状に構成するようにしている。
【0021】
この表層処理用補強材1を、軟弱地盤G上に平面状に敷設するに当たっては、軟弱地盤Gの性状等に合わせて種々の方法を採用することができるが、ここでは、ロール状に巻かれた表層処理用補強材1を、この表層処理用補強材1の基端側袋体12a内に流動性固化材流体を導入するとともに、この基端側袋体12aから分岐側袋体12b内に流動性固化材流体を導入することによって、分岐側袋体12bを順次膨張させることにより、軟弱地盤G上に平面状に展開、敷設するようにしている。
【0022】
ところで、本実施例においては、合成繊維製織布からなる面状補強材11と、櫛状に構成された表層処理用袋体12、13からなる格子状の表層処理用袋体とを、袋体の格子点等の任意の位置でベルトやコード等により結合したものを用いるようにしている。
これにより、面状補強材11上に撒き出された土の荷重が、充填された流動性固化材が固化することによって剛性を有する袋体12、13、具体的には、分岐側袋体12b、13bで支持されることにより荷重分散が図られ、不均一な沈下の発生を防止することができる。
また、逆に、軟弱地盤Gの周囲の地盤が隆起する場合も、その隆起の力を面状補強材11を介して流動性固化材が充填され剛性を有する分岐側袋体12b、13bで支持することにより荷重分散が図られ、不均一な隆起の発生を防止することができる。
なお、上記結合に用いる結合部材としては、例えば、引張強度:200kgf、直径:3mm、長さ:500〜1000mmのコードを用い、面状補強材11に形成された2個の穴を通して分岐側袋体12b、13bを結び付ける。ネット状の面状補強材11の場合には、コードを通すための穴を形成する必要はない。分岐側袋体12b、13bは、流動性固化材が充填されることにより膨らむのでその分余裕を持って結び付けるようにする。分岐側袋体12b、13bの格子点は、長めのコードを交点に斜めにかけて結び付ける。その他の箇所は短めのコードで結び付ける。
このほか、結合部材としては、例えば、引張強度:400kgf、幅:7mm、長さ:500〜1000mmのベルトを用いることもでき、ベルトの中央部分を予め面状補強材11の所定の位置に縫製しておくようにする。ネット状の面状補強材11の場合も同様に縫製しておいてもよい。
【0023】
面状補強材11と格子状の表層処理用袋体とを結合する他の方法としては、図2に示すように、面状補強材11に2箇所のスリット11aを形成し、このスリット11aに分岐側袋体12b、13bを貫通させる方法や、図3に示すように、面状補強材11を織る際に、例えば、モノフィラメントが複数本織り込まれたベルト状二重織部分11bを形成し、このベルト状二重織部分11bに分岐側袋体12b、13bを貫通させる方法を採用することができる。
後者のベルト状二重織部分11bを形成する結合方法は、面状補強材11に穴やスリットを形成しないことから、結合部において面状補強材11の強度を低下させない利点がある。
なお、これらの結合方法に、ベルトやコード等の結合部材を用いる結合方法を併用することもできる。
【0024】
本実施例において、面状補強材11を構成する合成繊維製織布は、例えば、経糸・緯糸は共にポリエステル繊維からなり、寸法:12m×12m、厚さ:0.38mm、目付:320g/m、強度:250kgf/3cmのものを用いるようにしている。
【0025】
表層処理用袋体12、13の分岐側袋体12b、13bは、長さ方向に一定の直径部分と該直径より大きな大径部分を有する筒状織物であり、小径部の直径:100mm、大径部の直径:150mmで透水性を有している。筒状織物の経糸・緯糸は共にポリエステル繊維製で、繊度(d):1100、より本数:2、タテ総本数768、密度(本/cm):経糸小径部24.5、経糸大径部16.3、緯糸小径部4.7、緯糸大径部8.5である。この筒状織物は、長さ方向の経糸と該経糸にスパイラル状に織り込まれた緯糸とからなる織物であって、該織物の経糸方向の引張強度が緯糸方向の引張強度の1/2倍以上である必要があり、本実施例では小径部で4倍以上、大径部で約2倍である。
【0026】
基端側袋体12a、13aと分岐側袋体12b、13bとの接合部分は、基端側袋体12a、13aに長さ150mmのスリットが設けられており、分岐側袋体12b、13bの端部がそこに接合するように組み立てられている。両者の接合は、縫合によるか、ホットメルト樹脂等による接着により行うことができる。
【0027】
基端側袋体12a、13aは、柔軟で薄い厚さの合成繊維製織布からなる筒状織物でもよいが、分岐側袋体12b、13bに使用したのと同じ合成繊維製織布からなる筒状織物を使用することにより、充填された流動性固化材が硬化後、剛性を有する荷重支持構造体の一部として機能するようにすることができる。
この場合、基端側袋体12a、13aの大径部において分岐側袋体と接合するようにすることにより、接合部分の縫製加工や接着加工が行い易くなり、接合部分の強度が高く、また、接合部分における流動性固化材の流通を円滑にすることができる。
【0028】
ところで、本実施例においては、2つの櫛状に構成した表層処理用袋体12、13を組み合わせることにより、格子状の表層処理用袋体を構成するようにしている。
すなわち、流動性固化材が導入される基端側袋体12aと、この基端側袋体12aに対して直角方向に2列以上(本実施例においては、5列。間隔は、約2mに設定するようにしている。)に並んで配置されるとともに、基端側袋体12aに連通して基端側袋体12aから流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体12bとで、一方の櫛状の袋体12を構成するようにし、これにより、分岐側袋体12bへの流動性固化材の導入を効率よく行うことができるようにしている。
また、基端側袋体12aには、必要に応じて、バルブ25を介して、流動性固化材が導入されるもう一方の基端側袋体13aを接続し、この基端側袋体13aと、基端側袋体13aに対して直角方向(基端側袋体12aと平行)に2列以上(本実施例においては、6列。間隔は、約2mに設定するようにしている。)に並んで配置されるとともに、基端側袋体13aに連通して基端側袋体13aから流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体13bとで、他方の櫛状の袋体13を構成するようにし、これにより、分岐側袋体13bへの流動性固化材の導入を効率よく行うことができるようにしている。
なお、本実施例においては、分岐側袋体12bの先端部を、この先端部に配設した分岐側袋体13b’に連通して、分岐側袋体12bの先端部から分岐側袋体13b’に流動性固化材が導入されるようにしているが、分岐側袋体12bの先端部と分岐側袋体13b’とを遮断することもできる。
【0029】
基端側袋体12a、13aには、櫛状に構成した表層処理用袋体12、13にモルタル類等の流動性固化材を導入するための流動性固化材供給手段2として、ミキサー21、ホッパー22、ポンプ23及び流量計24並びにバルブ25を接続するようにする。
そして、袋体12、13の流動性固化材の注入口14の対角位置にロードセル27を配設し(この場合、必要に応じて、他の位置や複数位置にロードセルを配設することもできる。)、このロードセル27により検出した流動性固化材の圧力と、流動性固化材の供給側に配設したロードセル28により検出した流動性固化材の圧力とを、データ処理、制御装置26により処理し、流動性固化材供給手段2による流動性固化材の供給状態を把握したり、制御することができる。
ここで、流動性固化材供給手段2による流動性固化材の供給は、両袋体12、13に同時に行うこともできるが、基端側袋体12aのみに先に流動性固化材を導入することによって順次膨張させることにより、表層処理用補強材1を軟弱地盤G上に平面状に展開、敷設する場合には、次の順序で行うようにすることが好ましい。
表層処理用補強材1の展開時には、流動性固化材の注入を0°方向のみ(袋体12のみ)とし、表層処理用補強材1が展開後、バルブ25を切り替えて、90°方向(袋体13)にも注入を行う。そして、流動性固化材が両袋体12、13全体に行き渡った後、バルブ25の切り替えを4〜5回程度繰り返し、流動性固化材の供給(ケーキ層の形成)を行う。
流動性固化材供給手段2による流動性固化材の供給圧力及び流量は、流動性固化材の性状等によっても変化するが、例えば、供給圧力:0.5MPa、流量:50リットル/分程度に設定するようにする。
ちなみに、図1に示す表層処理用補強材1は、流動性固化材供給手段2による基端側袋体12aへの流動性固化材の供給開始後、3分程度で分岐側袋体12bの展開が開始し、以降、2.5〜3m/分の速度で展開が進み、分岐側袋体12bの先端部から分岐側袋体13b’に流動性固化材が導入されて、表層処理用補強材1を完全に展開することができた。
【0030】
この軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体によれば、表層処理用補強材1を構成する表層処理用袋体12、13の基端側袋体12a、12bから流動性固化材を2列以上に並んで配置された分岐側袋体12b、13bに、流動性固化材の充填の際の流動性固化材の注入圧力を極端に高めることなく、また、袋体12、13の破損や袋体12、13を通じた流動性固化材からの局所的な脱水による流動不良が生じることなく、一度に充填することができ、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上することができる。
また、表層処理用補強材1全体がフレキシブルで部分的にかさばる部分がないため、表層処理用補強材1をロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することができる。
【0031】
以上、本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体は、表層処理用補強材を構成する複数本の袋体に、流動性固化材の充填の際の注入圧力を高めることなく一度に充填することができるようにするとともに、表層処理用補強材をロール状に巻いたり、折り畳んでコンパクトな状態にして搬送することを可能にして、軟弱地盤の表層処理工事の作業効率を向上することができ、海等の水上を含む軟弱地盤の表層処理工法に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の軟弱地盤の表層処理方法並びにそれに用いる表層処理材及び袋体の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は表層処理用補強材の敷設方法の一例を示す断面図である。
【図2】面状補強材と表層処理用袋体との結合方法の第1変形例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図3】面状補強材と表層処理用袋体との結合方法の第2変形例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 表層処理用補強材
11 面状補強材
12 表層処理用袋体
12a 基端側袋体
12b 分岐側袋体
13 表層処理用袋体
13a 基端側袋体
13b 分岐側袋体
13b’分岐側袋体
14 流動性固化材の注入口
2 流動性固化材供給手段
21 ミキサー
22 ホッパー
23 ポンプ
24 流量計
25 バルブ
26 データ処理、制御装置
27 ロードセル
28 ロードセル
G 軟弱地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体を含む表層処理用補強材を、軟弱地盤上に平面状に敷設し、前記表層処理用袋体内に流動性固化材を充填して剛性補強体を形成することを特徴とする軟弱地盤の表層処理方法。
【請求項2】
表層処理用袋体が、前記表層処理用袋体の長さ方向と幅方向とに配設され、かつそれぞれの一端が連通した2本の前記基端側袋体と、該2本の基端側袋体にそれぞれ連通した複数の分岐側袋体とで格子状に構成されたことを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の表層処理方法。
【請求項3】
前記分岐側袋体が、表層処理用補強材を構成する面状補強材の全面に亘って部分的に結合されていることを特徴とする請求項1又は2記載の軟弱地盤の表層処理方法。
【請求項4】
流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されてなる表層処理用袋体と、表層処理用袋体の上面又は下面に配列された面状補強材と、前記表層処理用袋体内に充填、固化された流動性固化材とを備えてなることを特徴とする軟弱地盤の表層処理材。
【請求項5】
前記面状補強材の長さ方向と幅方向とに配設され、かつそれぞれの一端が連通した2本の前記基端側袋体と、該2本の基端側袋体にそれぞれ連通した複数の分岐側袋体とで格子状に構成された表層処理用袋体を含むことを特徴とする請求項4記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項6】
前記分岐側袋体が、前記面状補強材の全面に亘って部分的に結合されていることを特徴とする請求項4又は5記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項7】
流動性固化材が導入される基端側袋体と、該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置されるとともに、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が導入されるようにした分岐側袋体とで櫛状に構成されたことを特徴とする軟弱地盤の表層処理用袋体。
【請求項8】
前記基端側袋体に大径部を形成し、該大径部において分岐側袋体と接合することを特徴とする請求項7記載の軟弱地盤の表層処理用袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−348481(P2006−348481A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172526(P2005−172526)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】