説明

軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】本発明の目的は、スコーチが発生せず、環境へ悪影響を及ぼさない低密度かつフォームの硬化性が良好な軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【解決手段】ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)の存在下で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)が特定のポリオール(A1)及び/又は(A2)を含んでなり、(A1)又は(A2)の含有量が30重量%以上であり、発泡剤(D)が水及び沸点が0〜50℃の低沸点化合物を含んでなり、(A)100重量部に対する水の重量部が4.0〜8.0重量部であり、水の重量部xとイソシアネートと混合する前の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度y(℃)が下記式(1)の関係を満たしてなる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
y≧―4.29x+34.32 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、車両座席用、家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装の用途に適した軟質ポリウレタンフォームの製造方法、及びこの製造方法により得られる軟質ポリウレタンフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年コストダウンを目的に、軟質ポリウレタンフォームの低密度化が進んでいる。低密度にするためには発泡剤である水、塩化メチレン等を使用する必要がある(非特許文献1参照)。しかし、水の使用量を増やすとフォーム製造時のフォームの内部温度が上昇し、スコーチが発生する。また、塩化メチレンの使用量を増やすと環境へ悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】岩田敬治、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業、1987年5月20日発行、第1版、32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、スコーチが発生せず、環境へ悪影響を及ぼさない低密度かつフォームの硬化性が良好な軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討の末、特定のポリオールを使用し、イソシアネート混合前のポリオール成分等の混合物を低温にすることで、スコーチが発生しない、低密度かつフォームの硬化性が良好な軟質ポリウレタンフォームの製造方法を見いだし本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)の存在下で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)が下記ポリオール(A1)及び/又は(A2)を含んでなり、(A1)又は(A2)の含有量が(A)の重量を基準として30重量%以上であり、発泡剤(D)が水及び沸点が0〜50℃の低沸点化合物を含んでなり、ポリオール成分(A)100重量部に対する水の重量部が4.0〜8.0重量部であり、水の重量部xとイソシアネートと混合する前の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度y(℃)が下記式(1)の関係を満たしてなることを要旨とする。
ポリオール(A1):活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドが付加されてなるポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、末端に炭素数3〜12の1、2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が、下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール
ポリオール(A2):活性水素含有化合物に、炭素数3〜12の1、2−アルキレンオキサイド及びエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドが付加されてなり、末端がエチレンオキサイドがブロック付加されたポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、活性水素1個あたりの末端にブロック付加されたエチレンオキサイドの平均付加モル数が4以下であり、末端水酸基の1級水酸基化率が70%以上であるポリオール
y≧―4.29x+34.32 (1)
【0007】
【化1】

【0008】
〔一般式(1)中、Rはハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。〕
【0009】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、上記の製造方法により得られる車両座席用、家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装用軟質ポリウレタンフォームであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、スコーチが発生しない、低密度かつフォームの硬化性が良好な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法により得られる軟質ポリウレタンフォームは、スコーチがなく、低密度である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法に用いるポリオール成分(A)は、下記ポリオール(A1)又は(A2)を必須成分として含有する。
【0012】
ポリオール(A1)は、活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドが付加されてなるポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、末端に炭素数3〜12の1、2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が、下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオールである。
【0013】
【化2】

【0014】
〔一般式(1)中、Rはハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。〕
【0015】
活性水素含有化合物としては、2〜8価またはそれ以上の活性水素含有化合物(例えば、多価アルコール、アミン、多価フェノール、ポリカルボン酸及びこれらの混合物)が含まれる。
【0016】
多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜18の2価アルコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコール等]、炭素数3〜18の3〜8価のアルコール[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フラクトース及びショ糖等]及びこれらの2種以上の併用が含まれる。
【0017】
アミンとしては、例えば、アンモニア;アルカノールアミン[モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン及びアミノエチルエタノールアミン等];炭素数1〜20のアルキルアミン[メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン及びオクチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレンジアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等];アルキレン基の炭素数が2〜6のポリアルキレンポリアミン(重合度2〜8)[ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等];炭素数6〜20の芳香族アミン[アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン及びジフェニルエーテルジアミン等];炭素数4〜15の脂環式アミン[イソホロンジアミン及びシクロヘキシレンジアミン等];炭素数4〜15の複素環式アミン[アミノエチルピペラジン及び特公昭55−21044号公報記載のもの等]及びこれらの2種以上の併用が含まれる。
【0018】
多価(2〜8価またはそれ以上)フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノン及びフロログルシン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールスルホン等のビスフェノール;フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック);並びに米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等が含まれる。
【0019】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸及びアゼライン酸等)、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びトリメリット酸等)及びこれらの2種類以上の混合物が含まれる。
【0020】
これらの活性水素含有化合物は2種類以上を併用してもよい。これらの中でイソシアネートとの反応性及び耐加水分解性の観点から、多価アルコールが好ましい。
【0021】
活性水素含有化合物に付加させるアルキレンオキサイド(以下、AOと略す)としては、炭素数2〜6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3−プロピレオキサイド及び1,4−ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、PO及びEOが好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の末端以外の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。なお、後述する様に(A1)の末端は炭素数3〜12の1、2−AOが付加されてなるものである。
【0022】
(A1)の末端は炭素数3〜12の1、2−AOが付加されてなる。
末端に付加するAOとしては、上記AOのうち、炭素数3〜12の1、2−AOが含まれる。これらの中で得られるポリウレタンフォームの耐湿物性の観点から、POが好ましい。
【0023】
(A1)の平均官能基数は、1.5〜4.0であり、ポリウレタンフォームのフォーム硬さ及び機械物性の観点から、好ましくは1.7〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.2である。
平均官能基数は、(A1)の1分子中の水酸基数の数平均を意味する。
【0024】
ポリオール(A1)は、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が、下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオールである。ポリウレタンフォームの硬化性及び機械物性の観点から、65〜85%が下記一般式(1)で表される1級水酸基であることが好ましく、さらに好ましくは68〜75%である。
【0025】
【化3】

【0026】
〔一般式(1)中、Rはハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。〕
【0027】
一般式(1)中、Rのうち、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基等の分岐アルキル基;フェニル基;p−メチルフェニル基等のアルキル置換フェニル基;クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基及びブロモエチル基等のハロゲン原子置換アルキル基;p−クロロフェニル基及びp−ブロモフェニル基等のハロゲン原子置換フェニル基等、並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらの中でイソシアネートとの反応性の観点から、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0028】
(A1)の末端に位置する水酸基含有基が、一般式(1)で表される1級水酸基である比率(末端水酸基の1級水酸基化率)は、予め試料をエステル化の前処理をした後に1H−NMR法により算出する。1H−NMR法の詳細を以下に具体的に説明する。
<試料調製法>
測定試料約30mgを直径5mmの1H−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し25℃で約5分間放置して、ポリオールをトリフルオロ酢酸エステルとし、分析用試料とする。
ここで重水素化溶媒とは、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
【0029】
<NMR測定>
通常の条件で1H−NMR測定を行う。
<末端水酸基の1級水酸基化率の計算方法>
1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号は4.3ppm付近に観測され、2級水酸基の結合したメチン基由来の信号は5.2ppm付近に観測されるから、末端水酸基の1級水酸基化率は下式〔1〕により算出する。
1級水酸基化率(%)=[r/(r+2s)]×100 〔1〕
ただし、
r:4.3ppm付近の1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号の積分値
s:5.2ppm付近の2級水酸基の結合したメチン基由来の信号の積分値
である。
【0030】
本発明に用いるポリオール(A1)の、水酸基価(mgKOH/g)は、成形時のハンドリング(ポリオール成分(A)の粘度)及び成形性の観点から、20〜200が好ましく、さらに好ましくは25〜90、特に好ましくは30〜60である。
【0031】
ポリウレタンフォームの機械物性の観点から、ポリオール(A1)で好ましいものは、上記水酸基含有化合物にAOが付加されてなるポリオールであり、より好ましいものは2〜4価の多価アルコールにAOが付加されてなるポリオールである。(A1)は、上記活性水素含有化合物に下記特定の触媒(α)の存在下に前記のAOを付加させて得ることができ、この方法で得られたポリオキシアルキレンポリオールが特に好ましい。
【0032】
特定の触媒(α)としては、特開2000−344881号公報に記載のものが挙げられ、具体的には、フッ素原子、(置換)フェニル基及び3級アルキル基からなる群より選ばれる官能基が結合したホウ素又はアルミニウム化合物であり、トリフェニルボラン、ジフェニル−t−ブチルボラン、トリ(t−ブチル)ボラン、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリ(t−ブチル)アルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム及びビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウム等が挙げられる。
これらの中でポリオールの末端1級水酸基化率の観点から、トリフェニルボラン、トリフェニルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及びトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウムが好ましく、さらに好ましいのはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及びトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウムである。
AOの付加条件についても上記公報に記載の方法と同様でよく、例えば、生成するポリオールに対して、好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%の上記触媒を用い、好ましくは0〜250℃、さらに好ましくは20〜180℃で反応させる。
【0033】
ポリオール(A2)は、活性水素含有化合物に、炭素数3〜12の1、2−AO及びEOを含むAOが付加されてなり、末端がEOがブロック付加されたポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、活性水素1個あたりの末端にブロック付加されたEOの平均付加モル数が4以下であり、末端水酸基の1級水酸基化率が70%以上であるポリオールである。
【0034】
活性水素含有化合物及び炭素数3〜12の1、2−AOは、前述の(A1)の説明で記載したものと同様のものが含まれる。
【0035】
炭素数3〜12の1、2−AO及びEOを含むAOにおいて、AO中の炭素数3〜12の1、2−AOの量は、ポリウレタンフォームの耐湿物性の観点から、AOの重量を基準として、75〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは80〜85重量%である。(A2)は、末端にEOがブロック付加されていることが必須である。末端のEOブロック付加されている以外の部分については、2種以上のAOを使用する場合、その付加方法はブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0036】
(A2)の平均官能基数は、1.5〜4.0であり、ポリウレタンフォームのフォーム硬さ及び機械物性の観点から、好ましくは1.7〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.2である。
【0037】
(A2)は、末端がEOがブロック付加されたポリオールであって、活性水素1個あたりの末端にブロック付加されたEOの平均付加モル数が4以下であり、得られるポリウレタンフォームの耐湿物性の観点から、好ましくは1〜4、さらに好ましくは2〜4である。
【0038】
(A2)は、末端水酸基の1級水酸基化率が70%以上であり、ポリウレタンフォームの硬化性及び機械物性の観点から、好ましくは70〜95%、さらに好ましくは75〜90%である。
なお、(A2)の末端水酸基の1級水酸基化率は、前述の(A1)の末端に位置する水酸基含有基が、一般式(1)で表される1級水酸基である比率と同様にして測定される。
【0039】
本発明に用いるポリオール(A2)の、水酸基価(mgKOH/g)は、成形時のハンドリング(ポリオール成分(A)の粘度)及び成形性の観点から、20〜200が好ましく、さらに好ましくは25〜90、特に好ましくは30〜60である。
【0040】
(A2)としては多価アルコールにAOを付加重合させてなるものが好ましい。AOとしてはPO及びEOが好ましい。
【0041】
(A2)は、前述の特定の触媒(α)の存在下にAO(好ましくは炭素数3〜8のAO)を付加した後に、従来のポリオールの製造方法に通常用いるアルカリ触媒(アルカリ金属の水酸化物等)の存在下でEOをブロック付加することにより得ることができ、この方法で得られるポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0042】
本発明において、ポリオール成分(A)中の(A1)又は(A2)の含有量は、ポリオール成分(A)の合計重量に基づいて、フォーム密度を低くする観点から、30%重量以上であり、さらに好ましくは31重量%以上、次にさらに好ましくは32重量%以上である。
【0043】
ポリオール成分(A)には、(A1)又は(A2)の他に、その他のポリオール(A3)を含有してもよい。(A3)としては、下記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等の公知のポリオールが含まれる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、前記活性水素含有化合物の前記のAO付加物であって、(A1)又は(A2)に該当しないもの(多価アルコールにアルカリ金属触媒を用いてAOを付加して得られる末端1級OH化率が40%未満のポリオール等)が挙げられる。
【0045】
ポリエステルポリオールとしては、多価水酸基含有化合物(前記の多価アルコール及び前記ポリエーテルポリオール)と前記ポリカルボン酸、その無水物及び低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及びテレフタル酸ジメチル等)との縮合反応生成物;前記多価アルコールの前記カルボン酸無水物及びAOの付加反応物;これらのAO(EO、PO等)付加反応物;ポリラクトンポリオール(例えば前記多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの);並びにポリカーボネートポリオール(例えば前記多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物)等が挙げられる。
【0046】
これら以外の各種ポリオールとしては、重合体ポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリジエンポリオール及びそれらの水添物;アクリル系ポリオール、特開昭58−57413号公報及び特開昭58−57414号公報等に記載された水酸基含有ビニル重合体;ヒマシ油等の天然油系ポリオール;天然油系ポリオールの変性物;等が挙げられる。
【0047】
本発明に用いるポリオール(A)の、平均水酸基価(mgKOH/g)は、成形時のハンドリング(ポリオール成分(A)の粘度)及び成形性の観点から、20〜200が好ましく、さらに好ましくは25〜90、特に好ましくは30〜60である。平均官能基数は、1.5〜4.0が好ましく、フォーム硬さ、機械物性の観点から、好ましくは1.7〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.2である。
【0048】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)の存在下に反応させてポリウレタンフォームを形成させる。
【0049】
ポリイソシアネート成分(B)としては、通常ポリウレタンフォームに使用される有機ポリイオシアネートはすべて使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0050】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物等が挙げられる。具体例としては、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート並びにトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDI等が挙げられる。
【0054】
これらの中で、反応性及びポリウレタンフォームの機械物性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、さらに好ましくは、TDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI及びこれらのイソシアネートの変性物、特に好ましくは、TDIである。
【0055】
触媒(C)としては、ウレタン化反応を促進するすべての触媒を使用でき、3級アミン(トリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル及びN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等)、カルボン酸金属塩(酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ及びオクチル酸鉛等)が挙げられる。
(C)の使用量は、反応性及びポリウレタンフォームの硬化性の観点から、ポリオール成分(A)100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。
【0056】
発泡剤(D)としては、水及び沸点が0〜50℃の低沸点化合物が含まれる。
【0057】
低沸点化合物には、水素原子含有ハロゲン化炭化水素及び低沸点炭化水素等が含まれる。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素及び低沸点炭化水素の具体例としては、塩化メチレン、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)(HCFC−123、HCFC−141b及びHCFC−142b等);HFC(ハイドロフルオロカーボン)(HFC−152a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa及びHFC−365mfc等)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)(HFE−245pc等)、ペンタン及びシクロペンタン等が挙げられる。
これらのうち、成形性の観点から、塩化メチレン、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、HFC−365mfc及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0058】
(D)のうち、水の使用量は、フォーム密度を低くする及びスコーチの発生を抑制する観点から、ポリオール成分(A)100重量部に対して、4.0〜8.0重量部であり、さらに好ましくは5.5〜7.0重量部である。
低沸点化合物の使用量は、成型不良を抑制する観点から、(A)100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量部、次にさらに好ましくは6〜14重量部である。
【0059】
本発明において、ポリオール成分(A)100重量部に対する水の重量部xとイソシアネートと混合する前の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度y(℃)は、下記式(1)の関係を満たす。
0≦y≦―4.29x+34.32 (1)
フォームに発生するスコーチを低減する観点から、下記式(2)の関係を満たすことがさらに好ましい。
0≦y≦―4.29x+32.18 (2)
【0060】
イソシアネートと混合する前の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度y(℃)は、イソシアネートと混合する直前の温度を意味する。
(A)、(C)、(D)及び(E)を複数の混合成分として分けて使用してイソシアネートと混合する場合には、温度yは、(A)、(C)、(D)及び(E)を混合した後にイソシアネートと混合すると仮定した場合の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度を意味する。
【0061】
式(1)を満たす場合、フォーム内部の最高到達温度が低下するため、発泡剤中の水の使用量を増やし、低沸点化合物の使用量を減らすことができる。yが上限以上ではスコーチが発生する。yが下限以下では、粘度の点からポリウレタンフォーム作成時のハンドリングが悪くなる。
【0062】
整泡剤(E)としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用でき、ジメチルシロキサン系整泡剤[東レダウコーニングシリコーン(株)製の「SRX−253」、「PRX−607」等]及びポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[東レダウコーニングシリコーン(株)製の「L−540」、「SZ−1142」、「L−3601」、「SRX−294A」及びデグサジャパン(株)製「B−4900」等]が挙げられる。ポリウレタンフォームの通気性の観点から、「L−540」、「SRX−294A」及び「PRX−607」が好ましい。
(E)の使用量は、ポリウレタンフォームの通気性及び成形性の観点から、ポリオール成分(A)100重量部に対して、0.5〜3重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜2重量部である。
【0063】
本発明の製造方法においては、必要により、さらに以下に述べるその他の添加剤を用い、その存在下で反応させてもよい。
その他の添加剤としては、着色剤(染料及び顔料)、難燃剤(リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステル等)、老化防止剤(トリアゾール及びベンゾフェノン等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン等)等の公知の補助成分が挙げられる。ポリオール成分(A)100重量部に対するこれらその他の添加剤の使用量に関しては、着色剤は、1重量部以下が好ましく、難燃剤は、5重量部以下が好ましく、さらに好ましくは2重量部以下であり、老化防止剤は、1重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.5重量部以下であり、酸化防止剤は、1重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0064】
本発明の製造方法において、ポリウレタンフォームの製造に際してのイソシアネート指数(インデックス)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、成形性の観点から、70〜130が好ましく、さらに好ましくは80〜125、特に好ましくは90〜120である。
【0065】
本発明の方法による軟質ポリウレタンフォームの製造方法の具体例の一例を示せば、下記の通りである。まず、ポリオール成分(A)、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)並びに必要によりその他の添加剤を所定量混合する。次いでポリウレタン発泡機又は攪拌機を使用して、この混合物とポリイソシアネート成分(B)とを急速混合する。得られた混合液(発泡原液)を連続発泡して軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。また、密閉型又は開放型のモールド(金属製又は樹脂製)に注入し、ウレタン化反応を行わせ、所定時間硬化後、脱型して軟質ポリウレタンフォームを得ることもできる。本発明は、低密度化とスコーチの発生抑制を両立できる観点から、特に連続発泡して軟質ポリウレタンフォームを得る方法として好適である。
【0066】
本発明の方法で得られた軟質ポリウレタンフォームは、車両座席用、家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装用として好適に使用され、さらに好適には家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装用として好適に使用される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0068】
実施例1〜8、比較例1〜3
表1に示した配合処方に従って、下記の発泡条件により発泡して軟質ポリウレタンフォームを得、一昼夜放置後のフォームの物性を測定した。
【0069】
(発泡条件)
BOX SIZE:250mm×250mm×250mm
材質 :木材
ミキシング方法 :ハンドミキシング
ミキシング時間 :6秒
撹拌羽回転数 :5000回転/分
【0070】
実施例及び比較例におけるポリウレタンフォーム原料は次の通りである。
(1)ポリオール成分(A)
ポリオールa1−1:グリセリン1モルに特開2006−063344号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO50.1モルを付加して得られたポリエーテルポリオール。水酸基価=56.1、1級OH化率=70%。
ポリオールa1−2:プロピレングリコール1モルに特開2006−063344号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO33.1モルを付加して得られたポリエーテルポリオール。水酸基価=56.1、1級OH化率=70%。
ポリオールa2−1:グリセリン1モルに特開2006−063344号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO50.1モルを付加し、さらに水酸化カリウムを触媒として、EO11.4モルをブロック付加し、常法により水酸化カリウムを除去して得られたポリエーテルポリオール。水酸基価=48.1、オキシエチレン単位(以下EO単位と略記)の含有量=14.3重量%、1級OH化率=85%。
ポリオールa2−2:グリセリン1モルに特開2006−063344号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO50.1モルを付加し、さらに水酸化カリウムを触媒として、EO3.0モルをブロック付加し、常法により水酸化カリウムを除去して得られたポリエーテルポリオール。水酸基価=53.8、EO単位の含有量=4.2重量%、1級OH化率=75%。
ポリオールa3−1:グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒として、PO39.8モル付加し、その後、EO13.6モルをブロック付加し、常法により水酸化カリウムを除去したポリエーテルポリオール。水酸基価=56.1、EO単位の含有量=20%、1級OH化率=85%。
ポリオールa3−2:グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒として、PO8.2モル付加し、その後、PO38.6モルとEO4.4モルをランダム付加し、常法により水酸化カリウムを除去したポリエーテルポリオール。水酸基価=56.1、EO単位の含有量=6.5%、1級OH化率=2%。
ポリオールa3−3:プロピレングリコール1モルに水酸化カリウムを触媒として、PO33.1モル付加し、常法により水酸化カリウムを除去したポリエーテルポリオール。水酸基価=56.1、1級OH化率=2%。
(2)イソシアネート成分(B)
TDI:NCO%=48.3(商品名:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業(株)製)
(3)触媒(C)
触媒c−1:トリエチレンジアミンの33重量%エチレングリコール溶液〔商品名:TEDA−L33、東ソー(株)製〕
触媒c−2:オクチル酸スズ(商品名:ネオスタンU−28、日東化成(株)製)
触媒c−3:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70重量%ジプロピレングリコール溶液〔東ソー(株)製TOYOCAT ET〕
(4)発泡剤(D)
発泡剤d−1:水
発泡剤d−2:塩化メチレン
発泡剤d−3:シクロペンタン
発泡剤d−4:HFC−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)
(5)整泡剤(E)
整泡剤e−1:東レ・ダウコーニング製「L−540」
整泡剤e−2:東レ・ダウコーニング製「SRX−294A」
整泡剤e−3:東レ・ダウコーニング製「PRX−607」
整泡剤e−4:東レ・ダウコーニング製「SZ−1142」
【0071】
<試験例>
<1>:コア密度(kg/m3)。
<2>:通気性(cc/cm2/sec)
<3>:フォーム硬さ(kgf/314cm2
<1>、<3>はJIS K6400(1997年版)に準拠した。<2>はフラジール型通気度試験機にて測定した。スコーチ性は、フォーム内部の着色を目視で確認した。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1、3、4、5、6と比較例1、実施例2、7と比較例2は、それぞれ水部数が同じであるが、比較例1、2の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度が式(1)を満たしていないため、スコーチが発生(フォーム内部が着色)している。
実施例1、3、4、5、6は、ポリオール(A1)又は(A2)を30重量%以上含有しているが、比較例3は30重量%未満であるためフォームの硬化性が悪く密度が高くなっている。
実施例8は、ポリオール(A1)を30重量%以上含有しているが、比較例4は30重量%未満であるためフォームの硬化性が悪くクラックが発生している。
したがって、本発明の実施例のみが、スコーチが発生しない、低密度かつフォームの硬化性が良好な軟質ポリウレタンフォームが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のポリウレタンフォームは、車両座席用、家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装用等の軟質ポリウレタンフォームの用途で好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)の存在下で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)が下記ポリオール(A1)及び/又は(A2)を含んでなり、(A1)又は(A2)の含有量が(A)の重量を基準として30重量%以上であり、発泡剤(D)が水及び沸点が0〜50℃の低沸点化合物を含んでなり、ポリオール成分(A)100重量部に対する水の重量部が4.0〜8.0重量部であり、水の重量部xとイソシアネートと混合する前の(A)、(C)、(D)及び(E)の混合物の温度y(℃)が下記式(1)の関係を満たしてなる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
ポリオール(A1):活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドが付加されてなるポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、末端に炭素数3〜12の1、2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が、下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール
ポリオール(A2):活性水素含有化合物に、炭素数3〜12の1、2−アルキレンオキサイド及びエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドが付加されてなり、末端がエチレンオキサイドがブロック付加されたポリオールであって、平均官能基数が1.5〜4.0であり、活性水素1個あたりの末端にブロック付加されたエチレンオキサイドの平均付加モル数が4以下であり、末端水酸基の1級水酸基化率が70%以上であるポリオール
y≧―4.29x+34.32 (1)
【化1】

〔一般式(1)中、Rはハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。〕
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により得られる車両座席用、家具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用又は包装用軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2011−74103(P2011−74103A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223769(P2009−223769)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】