説明

転がり案内装置

【課題】 ローラのスキューに伴う不具合を防止して、円滑なローラの循環運動を実現できる転がり案内装置を提供する。
【解決手段】 転がり案内装置10は、軌道部材11と、軌道部材11に対して長手方向に相対的に移動可能な状態で組み付けられる移動体12と、軌道部材11と移動体12との間に介在される多数のローラ16とを備えている。ローラ16は、軌道部材11と移動体12との間に形成される負荷転走路40と、負荷転走路40と並行して移動体12に設けられた戻し路41と、負荷転走路40と、戻し路41とを結ぶ方向転換路42とから構成される無限循環路に装填される。方向転換路42の負荷転走路40に対する接続部分には、ローラ16をその軸線方向の両端側から中心側に向かって押し付ける押圧部50,50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体を所定の軌道部材に沿って転がり案内する装置に係り、特に転動体としてのローラのスキュー現象等を効果的に防止できる転がり案内装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の装置は、一般に、軌道部材と、その軌道部材に転動体としての多数のローラを介して移動自在に取り付けられる移動体とを有している。ローラは、軌道部材と移動体との間に形成される負荷転走路と、その負荷転走路と並行して移動体に設けられる戻し路と、負荷転走路と戻し路とを結ぶ一対の方向転換路とから構成される無限循環路に装填される。移動体が軌道部材に沿って移動するのに伴って、ローラは移動体からの負荷を受けつつ負荷転走路をその一端から他端まで転走し、その後、一方の方向転換路を経て戻し路へ導かれ、さらに他方の方向転換路を介して負荷転走路の一端に戻される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した転がり案内装置において、無限循環路の幅(ローラの軸線方向における各転走路の隙間量をいう。)は負荷転走路においてローラの軸線方向の全長とほぼ等しいか僅かに広く、方向転換路においては負荷転走路よりも幾らか広い。そのため、負荷転走路と方向転換路との間でローラの引っ掛かりが発生する。また、無限循環路には幅があり、ローラを挟んだ一対の転走面は加工誤差や剛性不足による変形によって必ずしも平行ではない。このため、ローラが無限転走路と直交する方向に対して斜めに倒れることがある。この現象をスキューと呼ぶことがある。これを図11(b)を参照して説明する。
【0004】図11(b)は無限循環路の負荷転走路1と方向転換路2との接続部分をローラ3が移動する様子を模式的に示したものであり、ローラ3の移動方向は矢印Aで示したように方向転換路2から負荷転走路1へと向かう方向である。方向転換路2を移動してくるローラ3は負荷転走路1の近傍に達すると徐々に荷重を受けるが、そのときの荷重が不均一に作用するとローラ3がテーパころ状に弾性変形し、その姿勢が負荷転走路1の方向に対して斜めに傾くことがある。スキューを生じたローラ3は負荷転走路1を斜めに移動してその端面3a,3aが負荷転走路1の側壁1a,1aと擦れ合い、その結果として、ローラ3の転がり抵抗が増加したり、動作不良が生じたり、早期摩耗、発熱、騒音が発生する。
【0005】また、従来の負荷転走路1の側壁1aは移動体のブロック本体4に形成され、方向転換路2の側壁2a,2aはブロック本体4の端面に取り付けられる方向転換路形成部材(例えばエンドプレート)5に形成されている。そのため、ブロック本体4と方向転換路形成部材5との接合位置Cにて転走路の幅が不連続に変化して段差が生じ、方向転換路2にてスキューが生じたローラ3がその段差に引っ掛かって円滑な循環が阻害されるおそれもある。
【0006】そこで、本発明はローラのスキューによってもたらされる不具合を未然に防止して、円滑なローラの循環運動を実現できる転がり案内装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】本発明は、軌道部材(11)と、前記軌道部材に対して該軌道部材の長手方向に相対的に移動可能な状態で組み付けられる移動体(12)と、前記軌道部材と前記移動体との間に介在される多数のローラ(16)とを備え、前記ローラは、前記軌道部材と前記移動体との間に形成される負荷転走路(40)と、前記負荷転走路と並行して前記移動体に設けられた戻し路(41)と、前記負荷転走路と前記戻し路とを結ぶ方向転換路(42)とから構成される無限循環路に装填された転がり案内装置(10)において、前記方向転換路の前記負荷転走路に対する接続部分には、前記ローラをその軸線方向の両端側から中心側に向かって押し付ける押圧手段(50,50)が設けられて上述した課題を解決する。
【0009】この発明によれば、方向転換路を負荷転走路に向かって移動してきたローラが負荷転走路に入る手前で押圧手段によりその軸線方向両端側から中心側に向かって押し付けられる。従って、仮にローラの軸線が本来の移動方向(負荷転走路の長手方向)に対して斜めに傾いても、押圧手段による押圧箇所をローラが通過することで各ローラの姿勢がそれぞれの軸線を移動方向と直交させた正しい姿勢へと修正される。従って、各ローラを負荷転走路に常に正しい姿勢で案内してローラのスキューを防止し、それに起因する各種の不具合の発生を回避することができる。
【0010】本発明の転がり案内装置において、前記方向転換路の前記負荷転走路に対する接続部分には、前記ローラの軸線方向に対向しつつ前記負荷転走路の長手方向に延びる一対の弾性材料製のガイド部(21cと30a、または21cと31a)が設けられ、これらガイド部に前記方向転換路の幅方向中心側へ突出して前記押圧手段として機能する押圧部(50,50)が設けられてもよい。この場合には、ローラの両端がガイド部に接触してガイド部が外側に開くように弾性変形し、その復元力でローラの両端が軸線方向の中心側に押されるようになる。ばねのような弾性体をガイド部とは別に用意する必要がないので、本発明の押圧手段を容易に実現できる。
【0011】前記一対のガイド部のうち、少なくとも一つのガイド部(30a,31a)は前記負荷転走路と前記方向転換路とにまたがって設けられた転走路形成部材(30,31)に形成されて前記負荷転走路から前記方向転換路まで連続してもよい。このようにすれば、方向転換路から負荷転走路まで連続したローラの案内壁を形成でき、不連続な段差をなくしてローラを円滑に案内できる。
【0012】本発明の転がり案内装置において、前記移動体(12)は、ブロック本体(20)と、そのブロック本体の両端面に固着される方向転換路形成部材(21,22,23)とを有し、前記一対のガイド部のうち、一方のガイド部(21c)は前記方向転換路形成部材(21)に形成され、他方のガイド部(30a,31a)は前記負荷転走路と前記方向転換路とにまたがって設けられた転走路形成部材(30,31)に形成されて前記負荷転走路から前記方向転換路まで連続してもよい。ブロック本体は一般に転がり案内装置に加わる負荷に耐えるよう鋼等の高剛性材料にて構成されるが、方向転換路形成部材は樹脂等の弾性材料にて構成されるので、上述したガイド部を形成するのに好都合である。しかも、方向転換路から負荷転走路まで連続したローラの案内壁を形成でき、不連続な段差をなくしてローラを円滑に案内できる。
【0013】本発明において、押圧手段として前記押圧部(50,50)は前記負荷転走路の幅方向中心側に弧を描くように突出させるとよい。このようにすれば、方向転換路から押圧部を経由して負荷転走路まで達する課程で方向転換路の溝幅が連続的に変化してローラの姿勢の修正を円滑に行える。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明が適用された転がり案内装置の全体構成を示す図である。図示の転がり案内装置10は、軌道部材11と、軌道部材11に対してその長手方向に相対的に移動可能に取り付けられる移動体12と、軌道部材11の上面11aを覆うプレートカバー14と、移動体12とプレートカバー14との間に設けられるインナーシール15とを有している。なお、図1ではプレートカバー14を軌道部材11よりも短く描いているが、実際には軌道部材11とプレートカバー14とは長手方向に関して略等しい長さを有している。
【0015】軌道部材11は鋼等の剛性の高い材料で構成され、その上面11aには多数のボルト取付孔11b…11bが開口している。ボルト取付孔11bは軌道部材11を機械部品に固定するためのものであり、軌道部材11を上下に貫通する。軌道部材11の両側面11c,11cには、転動体としての多数のローラ16…16(図2〜図7参照)が走行する転走面11d…11dが2つずつ形成される。
【0016】移動体12は、ブロック本体20と、ブロック本体20の両端面にボルト24(図2、図3参照)を介して取り付けられるエンドプレート23,23と、各エンドプレート23の外表面にねじ26…26を利用して固定されるエンドシール25,25とを有している。
【0017】図2及び図3は移動体12の端部の構成を示す図で、各図において中心線CLの右側はエンドプレート23の外側からの外観を、左側はエンドプレート23の内部の構造をそれぞれ示している。図4は図2のIV部の拡大図、図5は図3のV部の拡大図である。さらに、図6(a)は移動体12を軌道部材11から抜き取って下面側からみた様子を示す斜視図、同(b)は図6(a)から転動体としてのローラ16を省略した斜視図、図7は図6(b)のVII部を拡大して示す図である。
【0018】図2〜図5から明らかなように、移動体12は多数のローラ16…16を介して軌道部材11に取り付けられる。各ローラ16はベルト状のリテーナ17に整列状態(互いの軸線が平行でかつその軸線と直交する方向に並べられた状態)で収納されている。所定数のローラ16と一本のリテーナ17とによって一組のローラアッセンブリ13が構成される。各ローラ16はリテーナ17に保持された状態で、それぞれの軸線を中心として自転可能である。ローラアッセンブリ13は一つの移動体12に対して4つ使用される。
【0019】図6に示すように、エンドプレート23とブロック本体20との間には、ローラ16の方向転換路を形成するための中間プレート21,22が装着される。なお、図6ではブロック本体20の左側のみ中間プレート21,22を示しているが、右側にも同様に中間プレート21,22が装着される。中間プレート21はブロック本体20の端面に密着し、中間プレート22はその中間プレート21の外側に重ね合わされる。
【0020】図2及び図3に示すように、ブロック本体20にはローラ16の戻し路を形成するための戻しパイプ27が取り付けられる。また、図6〜図8に示すように、中間プレート21,21の間には転走路形成部材28,30,31が設けられる。中間プレート21,22、エンドプレート23、戻しパイプ27及び転走路形成部材28,29,30,31はいずれも樹脂の成形品である。中間プレート21,22及びエンドプレート23は方向転換路形成部材として機能する。戻しパイプ27は一つのブロック本体20に対して4本が使用される。
【0021】ブロック本体20は軌道部材11と同様に鋼等の剛性の高い材料で構成され、その下面側には軌道部材11を受け入れるための凹部20a(図6参照)が形成される。凹部20aの両側の内壁には軌道部材11の転走面11dと対向するようにしてローラ16の転走面20b,20bが2つずつ形成される。また、ブロック本体20の転走面20bよりも外側の領域には、左右2つずつ貫通孔20c…20cが形成されている。各貫通孔20cはブロック本体20を軌道部材11の長手方向に貫いている。
【0022】中間プレート21,22及びエンドプレート23をブロック本体20に取り付ける際、各中間プレート21の間に戻しパイプ27及び転走路形成部材28,30,31が組み付けられる。一方、戻しパイプ27はブロック本体20の貫通孔20cに挿入される。
【0023】図2及び図3に示すように、軌道部材11の上面11aと移動体12との間にはインナーシール15が介装される。インナーシール15は、鋼板等を利用して構成された基材15aの下面にシールリップ(不図示)を、上面に緩衝用のリップ15b…15bをそれぞれ設けたものである。インナーシール15は、その両端部がエンドプレート23の内面の凹部23a,23a(図10参照)に差し込まれることにより、軌道部材11の長手方向に関してエンドプレート23,23の間に拘束され、移動体12から長手方向に抜け出ないようになっている。但し、エンドプレート23の凹部23aは上下方向(軌道部材11の上面11aと直交する方向)に関してインナーシール15の両端部の厚さよりも大きく設定され、それによりエンドプレート23,23の間でインナーシール15は上下方向に遊動可能である。インナーシール15の下面側のリップがプレートカバー14と密着して負荷転走路40(図2参照)への異物の進入及び負荷転走路40からの潤滑剤(グリース)の漏れが防がれる。
【0024】移動体12は、各転走面20bとその周囲に配置される転走路形成部材28,30,31とによって規定されるローラ16の負荷転走路40と、各戻しパイプ27の中部に形成される戻し路41と、中間プレート21と中間プレート22との間及び中間プレート22とエンドプレート23との間にそれぞれ形成される方向転換路42とを備えている。方向転換路42には、上側の負荷転走路40と斜め下の戻し路41を結ぶ方向転換路42と、下側の負荷転走路40と斜め上の戻し路41を結ぶ方向転換路42とが存在する。一方の方向転換路42は中間プレート21,22の間に、他方の方向転換路42は中間プレート22とエンドプレート23との間にそれぞれ形成されている。従って、各方向転換路42,42はほぼ90°の角度をもって立体交差している。
【0025】一つの戻し路41とその両端に接続される一対の方向転換路42,42とによって一つの無負荷転走路が構成され、その無負荷転走路と負荷転走路40とによって一つの無限循環路が形成される。ローラアッセンブリ13は各無限循環路内にループを形成するようにして装填される。移動体12が軌道部材11に対して長手方向に相対的に移動すると、ローラアッセンブリ13が無限循環路を移動し、移動体12が軌道部材11の長手方向に転がり案内される。
【0026】図4〜図7から明らかなように、ブロック本体20の各転走面20bの一方の側部には転走面20bとほぼ直交する突きあて面20dが形成される。ローラ16は突きあて面20dに接するようにして負荷転走路40を移動する。また、図7から明らかなように、負荷転走路40と方向転換路42との接続部分には、これらの通路の幅方向中心側に膨らんでローラ16を軸線方向の両端から中心側へ押し込む押圧部50,50(図7にハッチングを付して示す。)が形成されている。一方の押圧部50は転走路形成部材30又は31に、他方の押圧部50は中間プレート21にそれぞれ形成されているが、その詳細は図8以下を参照することにより明らかになる。
【0027】図8は中間プレート21,21の間に転走路形成部材28,30及び31を組み付けた状態を示し、図9はその組み立て構造を図8の矢印IX方向からみた状態を示している。
【0028】これらの図から明らかなように、転走路形成部材30及び31はそれぞれ中間プレート21,21の一側部の上端及び下端に装着され、転走路形成部材28は中間プレート21の一側部のほぼ中央に装着される。転走路形成部材28の上下の側縁には薄肉のガイド部28a,28aが設けられ、転走路形成部材30,31の一側縁にも同様に薄肉のガイド部30a,31aが設けられる。中間プレート21,21及び転走路形成部材28,30,31がブロック本体20に組み付けられると、ガイド部28a,28aとガイド部30a,31aとは転走面20bの長手方向に沿った両縁にそれぞれ配置されて負荷転走路40の幅方向にローラ16の軸線方向の全長よりわずかに大きい程度の隙間(但し、方向転換路42の幅よりも狭い。)を開けて対向する。これにより、負荷転走路40を移動するローラ16の端面がガイド部28a,30a,31aにて案内される。なお、図7から明らかなように、ガイド部28aとブロック本体20との間にはリテーナ17を案内するためのリテーナ案内溝43が形成される。
【0029】中央の転走路形成部材28はその両端に設けられた軸部(不図示)が中間プレート21の嵌合穴(不図示)にはめ込まれて中間プレート21,21の間に固定される。これに対して、上下の転走路形成部材30,31は中間プレート21よりもそれらの長手方向に突出する。そして、ガイド部30a,31aの突出部分に上述した押圧部50が形成される(図7参照)。
【0030】中間プレート21には転走路形成部材28と接続される突出部21bが一体に形成されている。突出部21bの横断面の形状は転走路形成部材28のそれに略等しく、突出部21bの上下の側縁にも薄肉のガイド部21c,21cが形成される。中間プレート21と転走路形成部材28とを組み合わせたとき、ガイド部21c,21cは転走路形成部材28のガイド部28a,28aを継ぎ足すようにして中間プレート21の外側に延びる。各ガイド部21c,21cには、ガイド部30a,31aの押圧部50と対向する押圧部50が形成される。なお、中間プレート21の外端面21dからのガイド部21c,21c,30a,31aの突出量は外端面21dに接合される中間プレート22の厚さと同一である。
【0031】なお、図10はエンドプレート23の内端面(ブロック本体20との接合面)側の正面図である。エンドプレート23には、中間プレート21,22がはまり込む凹部23c,23cが形成される。
【0032】以上の構成によれば、図7に詳しく示したように、方向転換路42の負荷転走路40に対する接続部分において、一対のガイド部21c及び30a(図7では図示を省略。)、31aが負荷転走路40を真っ直ぐ延長したように入り込み、それらの間の押圧部50,50によって方向転換路42の幅が負荷転走路40の手前で一旦狭められるようになる。図11(a)はこの負荷転走路40と方向転換路42との接続部分を平面上に展開して示し、そこをローラ16が矢印Aの方向、すなわち方向転換路42から負荷転走路40に向かって移動する様子を示している。方向転換路42を負荷転走路40に向かって移動してきたローラ16は、負荷転走路40に進入する手前でガイド部21cと30a又は31aの間に導かれ、押圧部50によって軸線方向に押し込まれる。このとき、ローラ16の姿勢が走行方向に対して斜めに傾いていても、押圧部50の力でローラ16がその軸線を移動方向に対して直交させた正しい姿勢に整列された上で負荷転走路40に進入する。従って、スキュー現象が未然に防がれる。押圧部50は樹脂製の中間プレート21又は転走路形成部材30,31に設けられた薄肉のガイド部21c,30a又は31aに形成されているので、ローラ16が接触する力で容易に弾性変形するとともに、その復元力でローラ16を軸線方向に軽度に押圧する。従って、押圧部50,50の間でローラ16が強く挟まれてその移動が阻害されるおそれはない。
【0033】図11(a)から明らかなように、方向転換路42の幅W2は負荷転走路40の溝幅W1よりも幾らか広く形成され、押圧部50,50の間の最も狭い部分の間隔(但し、ローラ16が接触していない無負荷状態)は負荷転走路40のそれよりも幾らか狭い。押圧部50は負荷転走路40の幅方向中心側に向かって膨らむ緩やかな円弧を描いており、押圧部50,50の方向転換路42側の端部の間隔は方向転換路42の幅W2に等しく、押圧部50,50の負荷転走路40側の端部の間隔は負荷転走路40の幅W1に等しい。従って、方向転換路42と負荷転走路40との接続部分において不連続な段差がなくなり、ローラ16の円滑な循環が保証される。さらに、ガイド部30a,31aは負荷転走路40と方向転換路42とにまたがって延びているので、これを基準にローラ16の端面を案内すれば、負荷転走路40と方向転換路42との間に全く段差のないローラ案内面を形成でき、ローラ16の移動がより円滑に行われるようになる。
【0034】本発明は上述した実施形態に限定されず、種々の形態にて実施できる。例えば方向転換路42,42は立体交差していなくてよい。本発明は、ローラ16がリテーナ17に保持された転がり案内装置に限定されない。方向転換路形成部材はブロック本体にインサート成形等を利用して一体に固着されたものでもよい。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転がり案内装置によれば、方向転換路を負荷転走路に向かって移動してきたローラを負荷転走路に対して常に正しい姿勢で案内できるので、ローラのスキューを防止し、スキューに伴う各種の不具合現象の発生を未然に防止できる。また、特に方向転換路の負荷転走路に対する接続部分に一対のガイド部を設け、それらガイド部のうち、少なくとも一つのガイド部を負荷転走路と前記方向転換路とにまたがって設けられた転走路形成部材に形成して負荷転走路から方向転換路まで連続させた場合には、方向転換路から負荷転走路まで連続したローラの案内壁を形成でき、不連続な段差をなくしてローラをさらに円滑に案内できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された転がり案内装置の全体構成を示す図。
【図2】図1の転がり案内装置に設けられた移動体の端面側の構成を示す図。
【図3】図2とは異なる位置で移動体の端面側の構成を示す図。
【図4】図2のIV部の拡大図。
【図5】図3のV部の拡大図。
【図6】負荷転走路と方向転換路との接続部分の構成を示す斜視図で、(a)はローラアッセンブリが装着された状態を、(b)はローラアッセンブリを省略した状態をそれぞれ示している。
【図7】図6(b)のVII部を拡大して示す図。
【図8】中間プレートの間に転走路形成部材を組み付けた状態を示す図。
【図9】図8の矢印IX方向からの側面図。
【図10】エンドプレートをブロック本体に対する接合面側からみた状態を示す図。
【図11】方向転換路から負荷転走路へローラが移動する様子を示す図で、(a)は本発明の場合を、(b)は従来の場合をそれぞれ示している。
【符号の説明】
10 転がり案内装置
11 軌道部材
11d 転走面
12 移動体
13 ローラアッセンブリ
15 インナーシール
16 ローラ
17 リテーナ
20 ブロック本体
20b 転走面
20d ローラの突きあて面
21,22 中間プレート(方向転換路形成部材)
21c ガイド部
23 エンドプレート(方向転換路形成部材)
28,30,31 転走路形成部材
28a,30a,31a ガイド部
40 負荷転走路
41 戻し路
42 方向転換路
43 リテーナ案内溝
50 押圧部(押圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 軌道部材と、前記軌道部材に対して該軌道部材の長手方向に相対的に移動可能な状態で組み付けられる移動体と、前記軌道部材と前記移動体との間に介在される多数のローラとを備え、前記ローラは、前記軌道部材と前記移動体との間に形成される負荷転走路と、前記負荷転走路と並行して前記移動体に設けられた戻し路と、前記負荷転走路と前記戻し路とを結ぶ方向転換路とから構成される無限循環路に装填された転がり案内装置において、前記方向転換路の前記負荷転走路に対する接続部分には、前記ローラをその軸線方向の両端側から中心側に向かって押し付ける押圧手段が設けられていることを特徴とする転がり案内装置。
【請求項2】 前記方向転換路の前記負荷転走路に対する接続部分には、前記ローラの軸線方向に対向しつつ前記負荷転走路の長手方向に延びる一対の弾性材料製のガイド部が設けられ、これらガイド部に前記方向転換路の幅方向中心側へ突出して前記押圧手段として機能する押圧部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の転がり案内装置。
【請求項3】 前記一対のガイド部のうち、少なくとも一つのガイド部は前記負荷転走路と前記方向転換路とにまたがって設けられた転走路形成部材に形成されて前記負荷転走路から前記方向転換路まで連続していることを特徴とする請求項2に記載の転がり案内装置。
【請求項4】 前記移動体が、ブロック本体と、そのブロック本体の両端面に固着される方向転換路形成部材とを有し、前記一対のガイド部のうち、一方のガイド部は前記方向転換路形成部材に形成され、他方のガイド部は前記負荷転走路と前記方向転換路とにまたがって設けられた転走路形成部材に形成されて前記負荷転走路から前記方向転換路まで連続していることを特徴とする請求項2に記載の転がり案内装置。
【請求項5】 前記押圧部は前記方向転換路の幅方向中心側に弧を描くように突出することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の転がり案内装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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