説明

転がり軸受けの予測保守

内側リングと外側リング及び両リング間に等角配分された転がり本体とを含む転がり軸受けの欠陥を予測する方法。この方法は、(DSPシステム8において)外側リングに対する内側リングの相対角度位置を表す位置信号(x(t))と転がり軸受けの速度に関係した振動を表す振動信号(y(t))(加速度メータ7による)を、これらの信号が隣接する転がり本体間角度ギャップの整数個に等しい転がり本体の角変位または外側リングに対する内側リングの整数個の完全回転かに対応するように処理すること;(A/D取得ボード9にて)処理された位置信号(x(t))に基づいて、処理された振動信号(y(t))をスペースサンプリングすること;及びそのスペースサンプリングされた振動信号(y(t))に基づいて転がり軸受における欠陥を予測することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に転がり軸受けの予測保守に関し、特に任意の可変低速度でかつ(周期的に)動き反転で動作するサーボモータにおける転がり軸受の保守指向で状態に基づく監視に関し、かかるサーボモータは充填機または食品製品を収容する封止パッケージを作るように設計されたパッケージラインの配送装置に採用されている。
【背景技術】
【0002】
周知のように食品パッケージプラントの工場床面上には入来食品とパッケージ材料の貯蔵、食品加工、食品パッケージおよびパッケージの倉庫搬入を含む数個の特定目的の処理が一般に行われる。特に多量の食品製品に関して、パッケージラインで食品パッケージ作業が行われ、各ラインはパッケージの作成と操作のための機械と装置との組立てであり、かつ封止パッケージ作成用充填機を含み、該充填機には、パッケージ取り扱いのためコンベヤを介して充填機に連結されるアキュムレータ、ストロウ付加器、フィルムラッパー、カードボードパッカーのような1つまたはそれ以上の区画された構成の下流の配送装置が付随している。
【0003】
このタイプのパッケージの代表例は、液体用平行六面体形状パッケージすなわちTetra Brik Aseptic(登録商標)として知られる多量の食品製品であり、パッケージ材料の積層ウエブを折り曲げかつ封止することによりつくられる。
【0004】
パッケージ材料は、典型的には、たとえばポリエチレンフィルムの多数の熱シールプラスチック材料層で両側を覆われた例えば紙の繊維材料か、またはミネラル充填ポリプロプレインからなる1つまたはそれ以上の補強強化基材層を実質的に含む多層シート構造をもつ。UHTミルクのような長期保存製品用の殺菌処理パッケージ品の場合には、パッケージ用材料は、例えばアルミフォイルのまたはエチルビニルアルコール(EVOH)フィルムのガスおよび光障壁材料層をも含み、その層は熱シールプラスチック材料層上に重畳され、かつ次いで最終的には食品製品を含むパッケージ品の内面を形成するもう1つの熱シールプラスチック材料層で被覆される。
【0005】
この種のパッケージは完全自動充填機上で作られる。そこでは、連続垂直管はウエブが供給されたパッケージ用材料から形成され;該管は水素過酸化物溶液のような化学消毒剤を施して消毒され、該溶液は一旦消毒が終わると例えば加熱蒸発によりパッケージ用材料の表面から除去され;かつ消毒済みのウエブは閉じた消毒環境の中に保持され、折り曲げられ縦方向に封止されて垂直管を形成する。該管は次いで下方で消毒済みまたは消毒処理された多量の食品製品を充填され、かつ形成ステーションへの垂直路に沿って供給される。ここで管は、管の上に周期的にかつ連続的に作用し、かつ横方向封止ストリップにより互いに接続された枕パックの連続ストリップを形成するよう管のパッケージ材料を封止する2つないしそれ以上の対の顎を含む顎(jaw)システムによって、等間隔の横断面に沿って握られている。枕パックは相対シールストリップを切断することにより互いから分離され、かつ例えばほぼ平行六面体形状パッケージの最終パッケージに機械的に折り曲げられる場合、最終折り曲げステーションに運ばれる。
その代わりにパッケージ材料は、スピンドルの形成時パッケージに形成されるブランクに切断されてもよい。またパッケージは食品製品を充填され封止される。この種のパッケージの一例はTetra Rex(登録商標)として知られるいわゆる「頂上が切妻形(gable−top)」パッケージである。
【0006】
これらのパッケージラインにおいて、数かずの部品が(電気)サーボモータによって作動され、該サーボモータはいくつかの点で有益であるけれども誤動作に影響される。その主な原因の1つはサーボモータのシャフトを支持する転がり軸受けが疲労または磨耗による破損である。疲労は所謂軸受けのL10定格に導く標準方法に統計学的に特徴付けることができるけれども、磨耗は局所的ダメージを生じる点食またはブリネリングとしての文献で知られる微妙な現象であり、ダメージの始まりは部品の期待寿命中に(擬似)ランダムに現れ次いで完全破損に導く比較的急速な劣化段階に到る。その結果、これらの部品を定期的に置き換えることは、疲労関係の故障を防止するだけには成功した戦略であるが、磨耗関係の故障に対抗するには殆ど役に立たない。
【0007】
クリーニングや減摩のような他種の予防的、定期的保守活動は、通常磨耗が軸受けの健全性を損なわせる軸受け注油の汚染によって特徴付けられるから軸受け磨耗を軽減するには有効であろう。かかる汚染は外部から到来するかも知れない(例えば軸受けが有害な環境に置かれる)が、内部原因によるかもしれない(例えば、回転要素が動作中に失う小片材に起因)。
【0008】
しかしながら究極的には、磨耗関係破損を防止する唯一方法は軸受け健全状態の状態に基づく監視であり;、一旦軸受けが故障に近づくと騒音を発し、差し迫った破損の警告サインとして振動する事実のお陰でかかる保守戦略が主として可能である。;もしこのサインが時宜よく検出されると、保守活動を計画しかつ生成時間と衝突することなく軸受けを交換するために典型的に(軸受けと用途に従って)数日から数週すら迄にわたる時間フレームを操作者は与えられる。
【0009】
振動解析が、転がり軸受けの磨耗やダメージが発見できかつ機械が破損する前に修理できて運転コストと保守コストを軽減する産業予測保守プログラムの重要部であることが認識されよう。
【0010】
軸受けの振動レベルの経験的な評価は、部品の残存寿命を有意的に過小評価ないしは過大評価し、かつ全く異なる原因(例えばシャフトアンバランス)によるノイズを軸受けダメージと間違えさせる誤り易い行動である。この理由で、科学界は軸受け欠陥の科学的特徴を得ることに躍起になっており、また現今このトピックには文献が豊富に見つかっている。
【0011】
基本概念は適切な解析を通して振動信号から抽出できる特徴的な周波数サインを持った軸受けの各故障モードに関連している。特に、伝統的な振動解析は、軸受け表面の1つに局所的なダメージがあれば、軸受け回転中の一連のインパクトを生じるし、さらにかかるインパクトはサーボモータが一定速度で回転しているとすれば周期的であるという事実に基づいている。事実、軸受けの運動解析は、スリップが存在しないと仮定すれば部品は遊星歯車と全く類似していることを示すし、言い換えれば、サーボモータシャフトと軸受けの他の運動部分全てとの間に固定の”伝達比(transmission ratio)が存在し、このことによって振動解析の基本式に導かれる。即ち
=k (1)
これは、ダメージ係数kにより(実際にかかるインパクトの周波数である)ダメージ周波数、fは回転周波数fに線形的に従うことを示しており、このダメージ係数kはサーボモータシャフトとダメージを受けている運動部分間の伝達比以外のものではない。かかる係数は文献でよく知られており次式で与えられる。
【数1】


ここで、Bd、はボール直径とピッチ直径、Nは回転要素の数、θは装着動作の結果、内側リングと外側リング間(すなわちリング間に)不整列の可能性を示す角度(典型的な値は0度から10度間である)であり、サフィックスdは一般にダメージ周波数に関係し、他方サフィックスg、e、iおよびvはダメージの特定種類に関係している。すなわち、内側リングと外側リングにおいて、内側リングと外側リング間から等角度で隔置されたボール、およびボールを保持し、一緒にすなわちボールと同速度で回転するケージにおけるものである。
【0012】
振動信号のスペクトル上のこの現象の影響はフーリエ変換の基本性質を用いて容易に理解できる。すなわち、もし単一インパクトを考えると、時間ドメインにおいて、これはインパルス性の強制活動d(t)及び有限時間Tとして表すことができ、T→0になるにつれ理想的なDiracインパルス関数δ(t)になりやすい。同様に、前記信号のスペクトルD(f)は、d(t)が理想的インパルスケース(そのフーリエ変換は全周波数にわたり一定である)に接近するにつれ無限になりやすい帯域幅によって特徴づけられる。
【0013】
実際の部品動作中強制活動u(t)は、原パルスd(t)のダメージ周波数で周期的反復である。
【数2】


フーリエ変換の特性のため、時間的な周期的反復は周波数のサンプリングに等しく、局所的なダメージが軸受けに掛かる強制活動のスペクトルU(f)は離散的なスペクトルであって、原インパルススペクトルD(f)をサンプリングすることによって得られることを意味する。
【数3】

【0014】
実際、これは振動信号におけるダメージの周波数サインはダメージを受けた軸受け部分の特徴的なダメージ周波数によって分離した一連のピークであることを意味する。
【0015】
しかしながら、一般に軸受けで取得された振動信号のスペクトルは正確にはU(f)を再現せず、むしろこれは次式のように表すことができる。
Y(f)=G(f)H(f)U(f)+N(f) (5)
ここで、G(f)は機械組立ての伝達関数、H(f)はセンサ(通常加速度計)感応関数、及びN(f))は欠陥信号に重畳された任意種の雑音である。かかるようなY(f)のスペクトルは、それ故ダメージサインを識別する目的で見る最良の信号ではないかもしれない。よりよい信号対雑音比の信号を得る通常の手順は包絡線解析と呼ばれ、次の仮定に基づいている。すなわち次のような周波数帯[f1,f2]が存在する。
・|G(f)|>>1,我われは機械的共振の近くにいること。
・|H(f)|>>1,我われはセンサの動作範囲にいること。
・|N(f)|<<1,実際我われは信号U(f)の高調波を探す必要があることを意味する。
【0016】
通常、機械的雑音は低周波数で高いという事実によって後者のステートメントは動機付けされている。このルールには若干の例外があり、例えばモータに取り付けられた歯車に起因する雑音がある。この場合、さらに進んだ周知のフィルタリング(ろ波)技術に依存する必要がある。もし、周波数帯[f1,f2]での帯域通過ろ波とY(f)の復調とによって上記仮定条件が満足されるならば、fの間隔を置いた若干のピークが明確に可視の場合の信号を得ることが可能である。
【0017】
要約すると、古典的な振動解析は次の仮説に基づいている。
・軸受けには局所的なダメージが存在し、
・軸受けが取り付けられたモータは一定速度で回転、
・軸受け素子の相対運動中にはスリップは存在せず、
・モータ動作中はダメージが一連の短期間インパクトを起こし、そのインパクトによってある周期性を持った振動信号の周波数スペクトルにスパイク列を生じ、かつ
・信号対雑音比はインパルス列が検出可能なものである周波数帯域がある。
もし、これらの条件が検証されなければ、ピーク列は損なわれピーク列はもはや認識できずまたは他種雑音の中に隠されてしまう。更に、式(2)の角度θが実際環境の下で測定が殆ど不可能であるという事実は、各fが許容されるθの範囲で実際可変であるためこの仕事(タスク)に若干の困難性を加えている。この分野の大方の研究はよりよき信号対雑音比を得るためまたは速度の小さな揺らぎまたはスリップの存在に起因するピークの損ないを克服するため、信号処理技術に焦点を絞ってきた。
【0018】
サーボモータの定回転速度の基本仮定は依然多くのアプリケーションに対して真のままであるけれども、自動機械の分野では巨大な制限となっていることが証明されている。そこでは通常多数のサーボモータが電気カムとして採用され、作動された素子の可変速度プロフィールを得る目的で、可変速度で作動されている。特に、サーボモータとして通常AC無ブラシモータが最近の機械設計でますます頻繁に現れる傾向があり、動きプロフィールの再構成に要する時間では機械的動きに対する機械的解決よりもはるかに高い該モータの性能のお陰であり、これらのアプリケーションにおいて、上述の古典的振動解析を通して求められた周波数サインに基づくいかなる転がり軸受け欠陥予測も要求を満たさないことがわかった。
【0019】
サーボモータの回転速度が時間とともに変化するアプリケーションに打ち勝つように定回転速度仮定に基づく上述の古典的振動解析を拡張する目的で、所謂オーダトラッキング(Order Tracking (OT))振動解析が提案されてきており、これは周波数ベースとして絶対周波数(Hz)の代わりに回転速度の、オーダと呼ぶ倍数を用いる周波数解析であり、シャフト欠陥や軸受け磨耗のような速度関係振動を容易に識別できるため機械状態監視に有用である。この技術の詳細論議のため、R.Potter,A new order tracking method for rotating machinery,Sound and Vibration 24,1990,30−34,and K.Fyfe,E.Munck,Analysis of computed order tracking,Mechanical System and Signal Processing 11(2),1997,187−205に言及することができる。
【0020】
オーダトラッキングは一定空間サンプリング方法に基づいており、この方法に従えば、振動信号は一定角度増分〈すなわち一様△θ〉で従って、軸受け回転速度に比例する頻度でサンプリングされる。伝統的なオーダトラッキングは可変時間データ取得システムを用いてこの仕事を達成しており、そこでは時間サンプリングは軸受け回転速度に比例して変化する頻度で行われる。代わりに、計算されたオーダトラッキング(COT)は一定時間データ取得システムを用いてこの仕事を達成しており、そこでは、振動信号は一定頻度で〈すなわち一様△tの一定時間サンプリングで〉最初に時間サンプリングされ、次いでサンプリングされたデータは一定角度増分でディジタル的空間的に再サンプリングされて〈すなわち一様△θの一定スペースサンプリング〉所望の一定△θデータを得る。それ故、オーダトラッキングは実時間基準tを修正時間基準τにマップし、それは振動信号があたかも一定速度の軸受け回転により区分的に発生されるように見える。このマッピングは修正振動信号をもたらし、そこではダメージの所与の象徴である周波数サインがわかり、また結果として転がり軸受けの欠陥が満足に予測される。
【発明の概要】
【0021】
その問題ない値に拘わらず、計算済みのオーダトラッキングは、依然高回転速度(>500rpm)動作、欠陥検出に必要な数個のシャフト回転、動き無反転のような、サーボモータ動作についての更なる仮定に基づいており、該仮定によってその教示が、任意可変低回転速度で動作し、周期的な動き反転を受け、かつ食品製品パッケージ分野で顎システムを稼動するため採用されるサーボモータのような、サイクル当り約1シャフト回転を実行するサーボモータには満足に適用できなくしていることを本出願人は経験してきた。
【0022】
従って、本発明の目的は、任意可変低回転速度で動作し、周期的な動き反転を受け、かつ食品製品パッケージ分野で顎システムを稼動するため採用されるサーボモータのような、サイクル当り約1シャフト回転で実行するサーボモータにも計算済みのオーダトラッキングが適用出来るようにしてサーボモータの転がり軸受けの欠陥が満足に予測されその結果現在の機械保守プログラムの効果を向上させる技術を提供することである。
【0023】
この目的は、本発明が転がり軸受けの欠陥を予測する方法に関し、該方法を実施するようにプログラムされたディジタル信号処理システムに関し、また添付請求項に規定されるように、実行時に該方法を実施するように設計されたソフトウエア製品に関する点で本発明によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のよりよい理解のため、純粋に例示を意図し、かつ限定的に見なすべきではない好適実施例を、添付図面〈全て実寸ではない〉を参照してここに説明する。
【0025】
【図1】本発明に従う修正計算済みオーダトラッキングを実施するように構成されたデータ取得システムの全般的なブロック図を示す。
【図2】本発明に従う修正計算済みオーダトラッキングの概略の流れ図を示す。
【図3】8個のボール軸受けの横断面を模式的に示す。
【図4】外側リングの欠陥に対して転がり軸受けをテストするため、取得位置信号x(t)と、フィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第1実施例による「カット及びペースト(cut&paste)」動作を示す。
【図5】外側リングの欠陥に対して転がり軸受けをテストするため、取得位置信号x(t)と、フィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第1実施例による「カット及びペースト(cut&paste)」動作を示す。
【図6a】それぞれ時間に対してプロットされた転がり軸受けの外側リングに対する内側リングとボールケージ組立ての相対位置を示す。
【図6b】それぞれ時間に対してプロットされた転がり軸受けの外側リングに対する内側リングとボールケージ組立ての相対位置を示す。
【図7】内側リングの欠陥に対して転がり軸受けをテストするため、取得位置信号x(t)とフィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第1実施例による「カット及びペースト」動作を示す。
【図8】内側リングの欠陥に対して転がり軸受けをテストするため、取得位置信号x(t)とフィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第1実施例による「カット及びペースト」動作を示す。
【図9a】外側リンクに対する内側リングの相対位置を示し、かつ個別に時間に対してプロットされた転がり軸受けの内側リングに対するボールケージ組立ての相対位置を示す。
【図9b】外側リンクに対する内側リングの相対位置を示し、かつ個別に時間に対してプロットされた転がり軸受けの内側リングに対するボールケージ組立ての相対位置を示す。
【図10】取得位置信号x(t)とフィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第2実施例による「カット及びペースト」動作を示す。
【図11】取得位置信号x(t)とフィルタを通した振動信号y(t)で実行されるべき、本発明の第2実施例による「カット及びペースト」動作を示す。
【図12a】それぞれ「カット及びペースト」動作後に取得の処理済み位置信号
【数4】


と、処理済み位置信号
【数5】


の一定スペースサンプリングによって取得のスペースサンプリングされた位置信号
【数6】


を示す。
【図12b】それぞれ「カット及びペースト」動作後に取得の処理済み位置信号
【数7】


と、処理済み位置信号
【数8】


の一定スペースサンプリングによって取得のスペースサンプリングされた位置信号
【数9】


を示す。
【図13】それぞれ、図5、図7、図11に図示されたスペースサンプリングされた位置信号
【数10】


の立下り傾斜(ランプ)に対応するペースサンプリングされた位置信号と振動信号
【数11】


及び
【数12】


の部分を反転することにより取得した処理済みのスペースサンプリングされた位置及び振動信号を示す。
【図14】それぞれ、図5、図7、図11に図示されたスペースサンプリングされた位置信号
【数13】


の立下り傾斜(ランプ)に対応するペースサンプリングされた位置信号と振動信号
【数14】


及び
【数15】


の部分を反転することにより取得した処理済みのスペースサンプリングされた位置及び振動信号を示す。
【図15】それぞれ、図5、図7、図11に図示されたスペースサンプリングされた位置信号
【数16】


の立下り傾斜(ランプ)に対応するペースサンプリングされた位置信号と振動信号
【数17】


及び
【数18】


の部分を反転することにより取得した処理済みのスペースサンプリングされた位置及び振動信号を示す。
【図16】図13に図示の反転振動信号周波数スペクトルを図示し、外側リング欠陥と内側リング欠陥に関するダメージ周波数が描かれている。
【図17】図13に図示の反転振動信号周波数スペクトルを図示し、外側リング欠陥と内側リング欠陥に関するダメージ周波数が描かれている。
【実施例】
【0026】
以下の説明は当業者が本発明を実施かつ使用できるように提示されている。実施例に対する種々の修正は、請求項に記載の発明の範囲を逸脱することなく当業者には明白だろう。従って、本発明は図示の実施例に限定されず、ここに開示した原理と特徴に合致しかつ添付の請求項に規定した広範囲と一致すべきものである。
【0027】
本発明の根底にある基本思想は、特定の動きプロフィールすなわち、食品パッケージラインに採用のサーボモータの周期的な動き反転とサイクル当りおおよそ1シャフト回転を考慮に入れ従来の計算済みオーダトラッキングを適当に修正して、修正計算済みオーダトラッキング(MCOT)と以後呼ぶものを提供することである。
【0028】
図1は本発明によるMCOTを実施するように構成されたデータ取得システムの全般的なブロック図を図示する。特に、図1おいて、参照数字1は転がり軸受け3〈図3〉により回転可能に支持されたシャフトつきのサーボモータを表す。その軸受けは内側リング3a、外側リング3b及び内側リングと外側リング3a、3bとの間にケージ3dにより保持されかつ等角配分された転がり本体3cを含み、その欠陥はMCOTを介して予測されるべきものであり、周期的に1方向かつ同方向にすなわち回転反転なしにか、またはその回転方向を周期的に逆転するように動作させてもよい。参照数字4は電力ケーブル5を介して電力をサーボモータに供給し、フィードバックケーブル6を介してサーボモータから、サーボモータシャフト2と関連した高解像度エンコーダ(図示せず)によって発生されるフィードバック信号を受け、かつ位置信号x(t)を出力するサーボモータドライブを表し、その位置信号はサーボモータ1からフィードバック信号に基づいて発生され、サーボモータシャフト2の角度位置、従って転がり軸受け3の外側リング3bに関して内側リング3aの角度位置を表す。参照数字7は加速度メータを表し、監視された転がり軸受けと関連し、転がり軸受け3の振動強度を表す振動信号y(t)を出力する。参照数字8は本発明によるMCOTを実行するように構成されたディジタル信号処理システムを表す。特に、ディジタル信号処理システム8はA/D取得ボード9を含み、そのボードは接続ケーブル10を介して加速度メータ7から振動信号y(t)を受け、また位置及び振動信号x(t)、y(t)を同時に一定時間サンプリングするように構成され、その結果、x=[x(t1),−−−,x(tns)]とy=[y(t1),−−−,y(tns)]が互いに同期するように各サンプリング時間tに一対の値
【数19】


が発生され、またシステム8は、接続ケーブル13を介してA/D取得ボード9に接続され、依然x(t)とy(t)で表される位置信号及び振動信号を受信するディジタル信号処理(DSP)ユニット12を含み、本発明のMCOTによるこれらの信号を処理するようにプログラムされており、図2に示す全般的な流れ図を参照して以下に説明される。
【0029】
図2に示されるように、MCOT〈ブロック100〉の第1ステップは欠陥に対してテスト対象候補の軸受け部品〈例えば内側リングや外側リング他〉を識別している。特に、欠陥に対してテスト対象候補の軸受け部品は、ディジタル信号処理システム8によって実行される図形ユーザインタフェース(GUI)を介してオペレータによって示され、かつ、MCOTの第3ステップを説明する時に後で読者によく理解されるように、欠陥のいろいろな軸受け部品のテストにMCOTの別々の実行が要求されるため必要である。
【0030】
MCOTの第2ステップ〈ブロック200〉は、時間サンプル振動信号y(t)について包絡線解析を行う場合適当な周波数帯[f1,f2]を識別する。すなわちこれはサーボモータが置かれている組立体における共振周波数を識別することを意味し、それはシミュレーションまたは測定のいずれかによって行うことができる。かかる情報はアプリケーションに特定的であり、従って、サーボモータを置き換えることによってもまたは同モデルの別の機械に移動したとしてもおそらく変らない。一旦適当な周波数帯が識別されると、時間サンプリングされた位置信号x(t)と時間サンプリングされた振動信号y(t)は、所定の取得時間に亘り例えば50秒間取得され、次いで、時間サンプル振動信号y(t)は[f1,f2]の帯域通過のフィルタを受けかつ復調される、こうして以下フィルタ通過振動信号yf(t)と呼ぶものを得る。
【0031】
時間サンプリングされた振動信号y(t)のフィルタ動作と復調が実行される、その理由はフィルタ通過振動信号yf(t)が時間サンプリングされた振動信号y(t)の帯域よりきわめて低いf2−f1に等しい帯域を有るからであり、このため特に雑音著しい環境で結果の読取り力を著しく向上することが出来る。
【0032】
MCOTの第3ステップ〈ブロック300〉は、本発明の2つの異なる代替実施例による時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の処理である。
【0033】
本発明の第1実施例において、軸受けの動作サイクル中に欠陥軸受けに何が起っているかの深度解析から由来する特定信号処理が行われる。例えばサーボモータのアプリケーションを考えよう。この例ではサーボモータは周期的にその動きを400度毎に反転する。すなわち、サーボモータは動作サイクルを有し、そのサイクル中、サーボモータシャフトは1つの完全回転より広い1つの方向に角変位(ラウンド角、すなわち360度)を行い、その後サーボモータシャフトはその回転方向を反転する。転がり軸受けが図3に示された8ボールタイプであり、各対の隣接ボールが45度の角度ギャップで間隔を設けられている場合を考えよう。図3において、内側リングと外側リング及びケージの絶対回転速度はそれぞれω、ω、ωで表され、かつ中間のボールケージ組立体に対する内側リングと外側リングの相対回転速度はそれぞれωI−C、ωO−Cによって表される。
【0034】
検討されたサーボモータアプリケーションにおいて、転がり軸受けは8ボールタイプでサーボモータシャフトを支持し、従って、内側リングの回転速度は、サーボモータの回転速度に等しく、また外側リングは一定(ω=0)、ωI−C=ω−ω=ω−Jω=(1−J)ω=0.616ωここでJ=0.384は8ボール軸受けにおける内側リングとボールケージ組立体間回転速度の伝達比である、また、ωO−C=ω−ω=ω
【0035】
さらに、内側リングに対するボールケージ組立体の相対角変位RI−C=ωI−CT=(1−J)ωT=0.616・400°=246.4°であり、ここでTはサーボモータの動作サイクルの時間間隔でありそれ故ω・Tはサーボモータの動作サイクル中の内側リングの角変位であり、また外側リングに対するボールケージ組立体の相対角変位RO−C=ωO−CT=ωT=JωT=0.384・400°=153.6°である。
【0036】
上記に照らし、もし内側リングまたは外側リングのいずれかに欠陥が存在すれば、ボールと欠陥リング間に或る数のインパクトが生じ、またこの数は明らかに欠陥があるところ(内側リングまたは外側リング)に依存しかつボール間の角度ギャップに依存することが理解されよう。特に、もし欠陥が内側リングにあると、インパクト数はint(RI−C/45)=int(246.4/45)=int(5.475)=5に等しい。一方もし欠陥が外側リングにあると、インパクト数はint(RO−C/45)=int(153.6/45)=int(3.413)=3に等しい。
【0037】
上記に照らし次のことが理解されよう。すなわち、一般にRI−C/45とRO−C/45は整数でないという事実により、サーボモータの動作サイクルは一般にインパクトをもって終了しない結果となる。すなわち、インパクト後に(上に考えられている例では第3または第5)回転方向を反転する前に付加的な角変位をサーボモータが行う結果となる。
【0038】
この現象は、上述の振動解析、特に計算済みオーダトラッキングが不満足となる程度にまで取得振動信号y(t)に悪影響を与えることを出願人は経験した。
【0039】
それ故、本発明の第1実施例による信号処理の目的は、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)があたかもそれらの信号が1方向または同方向に、すなわち、外側リングに対し回転方向の反転なしに連続回転する内側リングによって発生されるように見えさせることであって、その間ボールケージ組立体はそれぞれ内側リングと外側リングに対して角変位を行い、各変位は、転がり軸受けにおける2つの連続インパクト間の整数倍の角変位に等しい。
【0040】
この目的は以下に述べるように、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)を次のように処理することによって達成される。すなわち、これらの信号はサーボモータの各動作サイクルで、それぞれ内側リングに対するまた外側リングに対するボールケージ組立体の角変位に対応し、それらの各変位は軸受けの2つの隣接転がり要素間角度ギャップの整数倍に等しい。
【0041】
上記信号処理は、「カット動作及びペースト動作」を時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)に行い達成すべき上述の結果を可能とする該信号の部分を除去(一部を取り除く)することによって完遂される。
【0042】
この動作は図4から図6までと図7から図9までに図示されており、前者の3図は外側リングの欠陥の検索に関し、他方後者の3図は内側リングの欠陥の検索に関る。特に図4と図7は時間サンプル位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)及びそれら信号から一部を取り除くべき部分であって灰色の矩形で範囲を区切った部分を示し、他方、図5と図8は処理された位置信号と振動信号
【数20】



【数21】


を図示し、これらの信号は対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の残存部を1つずつ張り合わせること(一緒に併合する)により得られる。
【0043】
特に、図4は外側リングの欠陥検索に関し、ボールケージ組立体に対する外側リングの相対角変位は153.6°であり、その検索中欠陥とボールとの間に3個のインパクトが生じる。それ故、ボールケージ組立体が外側リングにおける2連続インパクト間で整数倍の角変位に等しい角変位を行うようにするため、かかる角変位は3・45°=135°(軸受けの2つの隣接ボール間整数倍の角度ギャップ)となる必要がある。その角変位は次いで135°/0.384=351.6°の内側リングの角変位に対応する。それ故、時間サンプリングされた位置信号x(t)が351.6°の内側リングの角変位に対応するようにするため内部リングの400°−351.6°=48.4°の角変位に対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は取り除く必要がある。
【0044】
時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の維持部分が、サーボモータシャフトが回転方向を反転し、従って遷移回転状態中にある場合のその部分を避けるよう、サーボモータのそれぞれの動作サイクルにおいて中心に置かれるようにするため、その一部を取り除かれる時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、サーボモータの動作サイクルの最初と最後の両方に等分に対応するものであり、図4に示す例ではそれらの部分は、0°から24.2°迄と375.8°から400°迄の範囲であり、従って24.2°から375.8°迄の範囲の部分を維持する。
【0045】
図4に示されるもの以外の時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)から取り除いてよく、それにより達成すべき結果を可能にすることを当業者は評価できよう。例えば、原動作サイクルの最初部または最後部、すなわちそれぞれ、0°から48.4°迄または351.6°から400°迄の範囲に対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分を取り除いてよい。
【0046】
サーボモータシャフトのドメインの代わりに、ボールケージ組立体の角変位のドメインに同じ計算がなされてよい。特に、時間サンプリングされた位置信号x(t)が135°の軸受けケージの角変位に対応しかつ時間サンプリングされた位置信号x(t)の維持部分が動作サイクルの中心に置かれるようにするために、0°から9.3°迄と144.3°から153.6°迄の範囲のこれらの部分(サーボモータシャフトのドメインでは前に示した範囲、0°から24.2°迄と375.8°から400°迄に対応する)は取り除く必要があり、また、9.3°から144.3°迄の範囲の部分(サーボモータシャフトのドメインでは前に示した範囲、24.2°から375.8°迄に対応する)は維持する必要がある。
【0047】
上記範囲は図6aと図6bに描かれており、内側リングの位置(図6a)と外側リングに対するボールケージ組立体(図6b)の両方の位置が時間に対してプロットされている。
【0048】
図7は、代わりに内側リングの欠陥検索に関し、ボールケージ組立体に対するその相対角変位は246.4°であり、また欠陥とボールとの間に5インパクトが生じる。それ故、ボールケージ組立体が内側リングで2つの連続インパクト間角変位の整数倍に等しい角変位を行うように、かかる角変位は5・45°=225°(軸受けの2つの隣接ボール間角ギャップの整数倍)である必要があり、かかる角変位は同様に225°/0.0616=365.2°内側リングの角変位に対応する。それ故、時間サンプリングされた位置信号x(t)が365.2°の内側リングの角変位に対応するようにするため内側リングの400°−365.2°=34.8°の角変位に対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は取り除く必要がある。
【0049】
時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の維持部分が、サーボモータシャフトが回転方向を反転し従って遷移回転状態中にある場合にかかる維持分を避けるよう、サーボモータのそれぞれの動作サイクルにおいて中心に置かれるようにするため、その一部を取り除かれるべき時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、サーボモータの動作サイクルの最初と最後の両方に等分に対応するもので、図7に示す例ではかかる部分は、0°から17.4°迄と382.6°から400°迄の範囲であり、従って、17.4°から382.6°迄の範囲の部分を維持する。
【0050】
図7に示されるもの以外の時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)から取り除かれてよく、それにより同じ結果が達成できるようにすることを当業者は評価できよう。例えば、原動作サイクルの最初部と最後部、すなわちそれぞれ、0°から34.8°迄または362.2°から400°迄の範囲に対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分を取り除いてよい。
【0051】
サーボモータシャフトのドメインの代わりに、ボールケージ組立体の角変位のドメインに同じ計算がなされてよい。特に、時間サンプリングされた位置信号x(t)が225°の軸受けケージの角変位に対応しかつ時間サンプリングされた位置信号x(t)の維持部分が動作サイクルの中心に置かれるようにするために、0°から10.7°迄と235.7°から246.4°迄の範囲のこれらの部分(サーボモータシャフトのドメインでは前に示した範囲、0°から17.4°迄と382.6°から400°迄に対応する)は取り除かれる必要があり、また、10.7°から235.7°迄の範囲の部分(サーボモータシャフトのドメインでは前に示した範囲、17.4°から382.6°迄に対応する)は維持する必要がある。
【0052】
上記範囲は図9aと図9bに描かれており、そこには外側リングに対する内側リングの位置(図9a)と内側リングに対するボールケージ組立体(図9b)の両方の位置が時間に対してプロットされている。
【0053】
上記に照らし、軸受けの2つの隣接転がり要素間の角度ギャップは転がり軸受けのタイプ及び幾何に依存し、従って、以上の信号処理は、いずれの軸受け部品が欠陥のテスト対象であるか(内側リングかまたは外側リング)に加えて、軸受けの幾何的パラメータにも依存することが評価されよう。
【0054】
本発明の第2実施例において、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)は以下のように処理されている。すなわち、これらの信号は外側リングに対して内側リングの完全回転(360°)の整数倍に相当し、すなわちあたかもこれらの信号は、外側リングに関し、同方向にすなわち回転方向の反転なしに連続的に回転する内側リングによって発生され、その間内側リンクは外側リングに対し整数倍の完全回転を行うように見えるものである。明らかに完全回転数が高ければ高いほど、振動解析が行われる根拠となる情報はより豊富になる。
【0055】
更にこの第2実施例では、この仕事は、本発明の第1実施例を参照して前に説明したものに類似した時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)への「カット及びペースト」動作の実行により完遂される。
【0056】
この動作は、図4と図5に類似の図10と図11に示されており、取り除く必要がある時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、原動作サイクルの最後部即ち360°を超える部すなわち360°から400°迄の範囲に対応している。
【0057】
図10示されるもの以外の時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の部分は、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)から取り除かれてよく、それにより同じ結果が達成できるようにすることを当業者は評価できよう。
【0058】
例えば、原動作サイクルの部分、すなわちそれぞれ、0°から40°迄の範囲、または原動作サイクルの最初部と最後部の両部、便宜的には等分に、例えば0°から20°迄と380°から400°迄の範囲の部分に対応する時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)部分を取り除いてよく、こうした結果、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)の維持部分はそれぞれの動作サイクルの中心に置かれる。
【0059】
時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)にある数の完全回転がある限り、テスト中の軸受け回転が単調でありかつ直線登り状であれば、「カット及びペースト」動作は余分かも知れないが、周期的動きの場合きわめて重要になることは一考に価する。この動作は(2)式の伝達係数の助けを借りて行われかつ実際には結果として2つのベクトル
【数22】


を出力する。
【0060】
上記に照らし、時間サンプリングされた位置信号x(t)とフィルタ通過振動信号yf(t)が上述したように処理されるようにするために欠陥に対するテスト対象の軸受け候補部品はいずれかを前もって知ることはもはや必要ではなく、従ってこの第2実施例ではこのステップは省略してよいことが認識されよう。
【0061】
転がり軸受けがサーボモータを支持し外側リングがサーボモータの固定部分に固定されている一方、内側リングはサーボモータシャフトに回転可能に結合され、従って外側リングに対してサーボモータと同速度で回転するサーボモータのアプリケーションを参照して本発明の2つの実施例が説明されていることもまた注目に値する。それ故、考慮されたこのアプリケーションでは、外側リングに対する内側リングの相対速度はサーボモータシャフトの回転に対応している。しかしながら、考慮アプリケーションを参照して前に説明したことは一般に他の任意のアプリケーションに適用されてよいことが認識されよう。かかる他のアプリケーションでは、内側リングと外側リングは一方が他方に対して相対的に回転し即ち、内側リング固定部材に固定されまた外側リングは回転部材に回転可能に結合され、また、内側リングと外側リング両方が同方向かまたは異方向に回転する回転部材に回転可能に結合されている。
【0062】
本発明の教示は前述したものと構造的に異なっても動作上それと均等な転がり軸受けには適用できる、特に、転がり本体が維持され、かつ上述のケージ以外の手段を維持することによって等角度で間隔を置いた転がり軸受け、または内側リングまたは外側リングなしの転がり軸受け、即ち転がり本体が直接静止し、内側かまたはそれぞれ外側回転部材、これは従って相当する欠落リングの役割をする該回転部材によって半径方向に維持されている転がり軸受けにも適用されることが当業者にはよく理解されよう。
【0063】
図2に図示の流れ図を再度参照すると、MCOT(ブロック400)の第4ステップは処理された位置と振動信号
【数23】


【数24】


のスペースサンプリング、特に一定スペースサンプリングであり、これらはそれぞれ非線形再サンプリング法則の下に、スペースサンプリングされた位置信号と振動信号
【数25】


【数26】


に変換される。該法則は
【数27】


のマッピングとして定義され、これらの引数は:
【数28】


ここで、△xはスペースサンプリング期間を表し、これはアルゴリズムによって検出可能な欠陥の最小物理的寸法に関係し、10または100のオーダ角の大きさである。
【0064】
擬似コードで表すと、マッピングFは:
【数29】


これは簡単な言葉で、
【数30】


における点は変化時間スパンによって分離されるが固定回転であることを意味する。もし所望の回転スペースに対応する
【数31】


における点を求めることができないと、アルゴリズムは2つの近接値間で線形に補間する。
【0065】
図12aと図12bに示されるように、処理された位置信号
【数32】


が時間tに関し単調増大するにつれ(図12a)スペースサンプリングされた位置信号
【数33】


は修正時間τに対してプロットされるとき、スロープ状直線であり、その直線は動きが周期的に反転する場合立ち上がり傾斜と立ち下がり傾斜を持つ三角波となり、そのスロープはモジュラス(対数係数で)一定しかも符号を異にする(図12b)。
【0066】
マッピングFのお陰で、欠陥の所与の象徴である周波数サインがわかっている場合(もう1つの前述の仮定が維持されると)スペースサンプリングされた振動信号
【数34】


を生成することが可能である。特に、スペースサンプリングされた振動信号
【数35】


の周波数サインを識別するために(1)式に基づいてダメージ周波数fを計算する必要があり、その計算はサーボモータシャフトの(またはその代わりに、外側リングに対する内側リングの)回転周波数fの予備計算を要する。スペースサンプリングされた位置信号
【数36】


は一定スペースサンプリングにより「わかるように」シャフト位置を表すから、スペースサンプリングされた位置信号
【数37】


の(一定)スロープの絶対値は求められている回転周波数fであり、これはまた取得期間における回転速度の絶対値の平均に相当する。しかしながら、図12を参照して前述したように、サーボモータシャフトの回転が即ち外側リングに対する内側リングの回転が周期的に反転するとき、スペースサンプリングされた位置信号
【数38】


は三角波の時間展開を有し、そのスロープはモジュラス一定しかも符号を異にする。それ故、回転周波数fを計算するため、従ってスペースサンプリングされた位置信号
【数39】


とスペースサンプリングされた振動信号
【数40】


があたかもそれの信号が1方向かつ同方向即ち回転方向の反転なしでかつ取得期間を通して一定速度の外側リングに対する内側リングの連続回転により生成するように見えるようにする必要があり、こうして、全体の取得期間に亘り一定サインの回転周波数fを確実にしている。
【0067】
それ故、MCOT(ブロック500)の第5ステップは反転しており、即ち折り返し(上側で降下転回)し、スペースサンプリングされた位置及び振動信号
【数41】


及び
【数42】


の部分はスペースサンプリングされた位置信号
【数43】


の2グループの立ち上がり傾斜と立ち下がり傾斜のいずれかに対応している。このように、スペースサンプリングされた位置信号
【数44】


のプロフィールは、三角状プロフィールから鋸歯状プロフィールに変化し、そのスロープ全取得期間に亘りモジュラスと符号の両方で一定であり、そのようにして全取得期間に亘り一定の符号を持つ回転周波数fを確実にしている。この反転(ひっくり返し)動作は図13と図14に示された反転位置信号と振動信号をもたらし、前者の図13は本発明の第1実施例であり、従って図5に図示された処理済み位置信号及び振動信号
【数45】



【数46】


をスペースサンプリングすることにより得られたスペースサンプリングされた位置及び振動信号
【数47】


及び
【数48】


を描く。一方、後者の図14は本発明の第2実施例であり、従って図8に図示された処理された位置信号及び振動信号
【数49】



【数50】


を空間サンプリングすることにより得られたスペースサンプリングされた位置及び振動信号
【数51】


及び
【数52】


を描く。そこでは、ひっくり返えされたスペースサンプリングされた位置及び振動信号
【数53】


及び
【数54】


の部分はスペースサンプリングされた位置信号
【数55】


の立下り傾斜に対応するものである。
【0068】
サーボモータシャフト、従って関連転がり軸受けがその回転方向を周期的に反転するよう作動されるときのみ、この「ひっくり返し」動作は必要であるが、一方、サーボモータシャフト、従って関連転がり軸受けがその回転方向を反転することなく周期的に作動されるときは「ひっくり返し」動作は全く不要であることを強調するに値する。
【0069】
周期的な動きに対して(1)式が当てはまる事実は再サンプリング前のカット動作に依存しており、このことは各サイクルに対して潜在的にダメージを受けた部品への整数個のインパクトが存在することを保証しているからであることも注目に値する。
【0070】
最後に、MCOT(ブロック600)の第6の最終ステップは、回転周波数fを、次いで反転位置信号に基づくダメージ周波数fを計算しており、後者を高速フーリエ変換し、次いで旧来解析におけるように、ダメージ周波数fに等しい量だけ周波数を分離した反転振動信号の周波数スペクトルのピークを検索することによって反転振動信号の周波数スペクトルを計算している。
【0071】
図15と図16は、内側リングと個別に外側リングにおける転がり軸受けを欠陥としてテストするため本発明の第1実施例によるMCOTを2度実行することにより得られた反転振動信号の2つの周波数スペクトルを図示する。特に、内側リング欠陥に関する周波数サイン(ダメージ周波数f及びその対応第1高調波)図15に四角で描かれており、一方、外側リング欠陥に関する周波数サインは図16に丸で描かれている。よく理解されるように、図15では、内側リング欠陥に関するダメージ周波数は周波数スペクトルの包絡線が相対最大値を有する値であって、内側リング欠陥を表示し、他方図16では、外側リング欠陥に関するダメージ周波数は周波数スペクトルの包絡線が相対最大値を有する値で存在し、こうして外側リングの無欠陥を表示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側リングと外側リング(3a、3b)とそれらの間に等角に配分された転がり本体(3c)とを含む転がり軸受け(3)の欠陥を予測する方法であって、
外側リング(3b)に対し内側リング(3a)の相対角位置を表す位置信号(x(t))と、転がり軸受け(3)の速度に関係した振動を表す振動信号(y(t))とを、それらの信号が、隣接転がり本体(3c)間角度ギャップの整数個に等しい転がり本体(3c)角変位かまたは外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の整数個の完全回転に対応するように処理すること;
処理された位置信号
【数1】


に基づいて処理された振動信号
【数2】


をスペースサンプリングすること;および
スペースサンプリングされた振動信号
【数3】


に基づいて転がり軸受け(3)の欠陥を予測すること、
を含む方法。
【請求項2】
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理は、
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))から、該信号が隣接転がり本体(3c)間角度ギャップの整数個に等しい転がり本体(3c)角変位かまたは外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の整数個の完全回転に対応しないようにする該信号の部分を除去すること;及び
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の残存部を次々と併合すること、
を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
転がり軸受け(3)が外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の相対回転方向を反転せずに周期的に作動されるとき、位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理は、
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))が、隣接転がり本体(3c)間角度ギャップの整数個に等しい転がり本体(3c)角変位かまたは外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の整数個の完全回転に各動作サイクルで対応するようにこれらの信号を処理すること、
を含む請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
転がり軸受け(3)が外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の相対回転方向を周期的に反転するように作動されるとき、位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理は、
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))が、隣接転がり本体(3c)間角度ギャップの整数個に等しい転がり本体(3c)角変位かまたは外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の整数個の完全回転に各動作サイクルで対応するようにこれらの信号を処理すること、及び
スペースサンプリングされた振動信号
【数4】


が1方向かつ同方向で一定速度の外側リング(3b)に対する内側リング(3a)の連続回転に対応するよう該信号を処理すること、
を含む請求項1または請求項2の方法。
【請求項5】
スペースサンプリングされた振動信号
【数5】


の処理は、
処理された位置信号
【数6】


をスペースサンプリングし、それにより立ち上がり及び立ち下がり傾斜をもつ実質的に三角状の時間展開を有するスペースサンプリングされた位置信号
【数7】


を発生すること、及び
スペースサンプリングされた位置信号
【数8】


の立ち上がり傾斜または立ち下がり傾斜のいずれかに対応するスペースサンプリングされた振動信号
【数9】


の部分を反転すること、
を含む請求項4の方法。
【請求項6】
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理は更に、
隣接転がり本体(3c)間角度ギャップの整数個に等しくなるよう内側リングと外側リング(3a、3b)の選択された1つに対する転がり本体(3c)の相対角変位を、位置信号(x(t))に基づいて計算すること、及び
転がり本体(3c)の計算された相対角変位に基づいて振動信号(x(t)、yf(t))処理すること、
を含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項7】
スペースサンプリングは一定スペースサンプリングを含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項8】
転がり軸受け(3)の欠陥の予測が、
スペースサンプリングされた振動信号
【数10】


を高速フーリエ変換し、それによってスペースサンプリングされた振動信号
【数11】


の周波数スペクトルを生成すること、及び
欠陥の周波数サイン特性を検索すること、
を含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項9】
内側リングと外側リング(3a、3b)の1つを選択すること、及び
選択されたリング(3a、3b)の欠陥対して転がり軸受け(3)をテストするために先行請求項の任意の1つの方法を実行すること、
を更に含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項10】
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理が、
位置信号及び振動信号(x(t),y(t)を時間サンプリングすること、
を含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項11】
位置信号及び振動信号(x(t),y(t))の処理が、
振動信号(y(t))に帯域通過フィルタをかけかつ該信号の包絡線解析を実行すること、
を含む先行請求項の任意の1つの方法。
【請求項12】
先行請求項の任意の1つによる方法を実施するようにプログラムされたディジタル信号処理システム(8)。
【請求項13】
先行請求項1から12までの任意の1つによる方法を、実行時実施するように設計された、ディジタル信号処理システム(8)にロード可能なソフトウエアプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−519837(P2012−519837A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552462(P2011−552462)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052818
【国際公開番号】WO2010/100253
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】