説明

転がり軸受の製造方法及び転がり軸受

【課題】転がり軸受の内輪、外輪、転動体及び保持器等の構成部品の形状を変更しなくても、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することが可能となる。
【解決手段】内輪2、外輪3、これらの間に介在している複数のころ4、及び、複数のころ4を周方向等間隔に保持している保持器5を備えている。内輪2と外輪3との間に形成されている軸受空間8に、寒天を含む充填材7が設けられている。充填材7を設けるために、充填材7を融点以上に加熱して流動性を有する状態とし、これを軸受空間8に注入し、内輪2と外輪3とを相対回転させながら、注入した充填材8を凝固点以下の温度に冷却することにより軸受空間8において充填材7を凝固させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の製造方法及び転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には多くの転がり軸受が用いられているが、例えばデファレンシャルギヤ部に用いられる転がり軸受では、高速回転時に焼き付きが発生するのを防止するために、潤滑油を、回転するリングギヤの撥ねかけによって転がり軸受の内輪と外輪との間に形成されている軸受空間に供給している。
そのために、転がり軸受が設けられているボックス内には、焼き付き防止に本来必要となる量よりも多い潤滑油が溜められている。このため、軸受空間に過剰な潤滑油が供給されてしまうと、その潤滑油の撹拌抵抗が大きくなって、転がり軸受に大きな回転抵抗が生じ、燃費向上の妨げとなってしまうことがある。
【0003】
そこで、軸受空間に供給される潤滑油の量を制限するために、特許文献1に記載されているように、内輪と外輪との間に遮蔽部材を設け、この遮蔽部材によってラビリンス構造を構成した転がり軸受が提案されている。この転がり軸受によれば、ラビリンス構造によって、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができ、潤滑油の撹拌抵抗が大きくなるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−112070号公報(図1、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の転がり軸受は、遮蔽部材を軸受空間に設けるスペースが必要となることから、内輪及び外輪を新たに設計し直す必要がある。つまり、例えば規格品及び現行品などを含む様々な転がり軸受に対して、上記のような、潤滑油が軸受空間を通過する量を制限することが可能となる構成を付加することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、内輪、外輪、転動体及び保持器等の構成部品の形状を変更しなくても、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することが可能となる転がり軸受の製造方法、及び、このような転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の転がり軸受は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備え、前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、寒天を含む充填材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、寒天を含む充填材が軸受空間に設けられていることで、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、軸受空間のすきま(容積)を減らし、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができる。この結果、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。そして、充填材は寒天を含むので、例えば90℃以上で寒天を溶かすことができることから、この溶けた充填材(寒天)を軸受空間に注入し冷却すれば、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、簡単に軸受空間のすきま(容積)を減らすことができる。
【0009】
また、前記保持器には、前記転動体それぞれを収容しているポケットが複数形成され、前記充填材は、前記保持器のうち、前記ポケットにおける前記転動体との摺接面以外の面に付着しているのが好ましい。
この場合、充填材が軸受空間に滞在することができると共に、保持器に付着した充填材が、転動体の転走の抵抗となるのを防ぐことができる。
【0010】
また、前記転がり軸受において、前記保持器の前記摺接面以外の面に、前記充填材が入り込んでいる凹部が形成されているのが好ましい。
この場合、保持器に付着させた充填材の耐久性を高めることができる。
【0011】
また、本発明の転がり軸受の製造方法は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備えている軸受本体の、前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、充填材を充填して転がり軸受の完成品とする製造方法であって、前記充填材を融点以上に加熱して流動性を有する状態とし、この充填材を前記軸受空間に注入し、前記内輪と前記外輪とを相対回転させながら、注入した前記充填材を凝固点以下の温度に冷却することにより前記軸受空間において当該充填材を凝固させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、流動性を有する状態とした充填材を、軸受空間に注入し冷却することにより凝固させることで、充填材を軸受空間に設けることができる。この充填材によって軸受空間のすきま(容積)を減らし、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができる。この結果、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
そして、内輪と外輪とを相対回転させながら、注入した充填材を冷却することにより軸受空間においてこの充填材を凝固させるので、転動体の表面、及び、内輪の外周面と外輪の内周面とのうち転動体が転走する軌道面では、注入した充填材が吐き出され(押し出され)、充填材が付着するのを防ぐことができる。すなわち、仮に、転動体の表面及び内外輪の軌道面に充填材が付着して固まると、転がり軸受の回転に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本発明によれば、これを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転がり軸受によれば、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、寒天を含む充填材によって軸受空間のすきま(容積)を減らし、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができる。
また、本発明の転がり軸受の製造方法によれば、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、充填材を軸受空間に設けることができるので、この充填材によって軸受空間のすきま(容積)を減らし、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができる。
以上、これら転がり軸受及び製造方法によれば、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の転がり軸受の実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】保持器の斜視図である。
【図3】図2の矢印Aにおける断面で切断した柱部を示す説明図である。
【図4】転がり軸受の製造方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の転がり軸受の実施の一形態を示す縦断面図である。本実施形態の転がり軸受1は、円錐ころ軸受であり、内輪2、外輪3、これら内輪2と外輪3との間に介在している複数の円錐ころ4(転動体)、及び、複数のころ4を周方向等間隔に保持している保持器5を備えている。
また、本実施形態では、この転がり軸受1は、自動車のデファレンシャルギヤ部に用いられる転がり軸受であり、高速回転時に焼き付きが発生するのを防止するために、潤滑油が、回転する軸(図示せず)と一体回転するリングギヤ(図示せず)の撥ねかけによって、転がり軸受1の軸受内部(軸受空間8)に供給される。
【0016】
内輪2の外周には、円錐面からなる内輪軌道面21が形成されている。さらに、内輪2の外周には、径方向外側に突出している鍔部22,23が設けられている。
外輪3の内周には、円錐面からなる外輪軌道面31が形成されている。そして、ころ4は、鍔部22,23によって、軸方向の移動が規制され、内輪軌道面21及び外輪軌道面31を転走することができる。本実施形態では、内輪2、外輪3及びころ4は、鋼製からなる。
【0017】
図2は、保持器5の斜視図である。保持器5の全体形状は環状であり、軸方向一方側の円環部11と、軸方向他方側の円環部12と、これら円環部11,12を連結している複数の柱部13とを有している。柱部13は周方向に等間隔で複数設けられている。
保持器5には、ころ4それぞれを収容しているポケット14が複数形成されており、円環部11,12と周方向隣り合う柱部13,13との間に形成される空間がポケット14となる。各ポケット14にころ4(図2では図示省略)が一つ収容され、各ポケット14において、ころ4に対向する面がポケット面15となる。保持器5は、樹脂製又は金属製である。
【0018】
図1において、内輪2の外周面2aと、外輪3の内周面3aとの間には、環状であってほぼ円錐形である空間が形成されており、この空間を軸受空間8と呼ぶ。ころ4は、この軸受空間8に存在しており、また、このころ4を保持している保持器5(のほぼ全体)も、この軸受空間8に存在している。保持器5の外周面5aと、外輪3の内周面3aとの間には、すきまd1が形成されており、また、保持器5の内周面5bと、内輪2の外周面2aとの間にも、すきまd2が形成されている。
【0019】
そして、本実施形態の転がり軸受1では、軸受空間8に充填材7が設けられており、この充填材7は寒天を含む。本実施形態では、充填材7の全てが、寒天(水分を含ませた寒天)である。なお、充填材7は、寒天(水分を含ませた寒天)を主成分として含み、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、潤滑油に対して耐性を高めることができる添加剤である。
寒天は、アガロースなどの多糖類を主成分としたものであり、寒天を水と共に、寒天の融点以上の温度に加熱することで、寒天の溶液(ゾル)となる。
そして、この寒天の溶液を、寒天の凝固点以下の温度まで冷却することによって凝固する(ゲル化する)。
【0020】
寒天の凝固点は約30〜35℃であり、融点は約80〜95℃である。このように、本実施形態では、軸受空間8に充填される充填材7は寒天からなることにより、充填材7は、凝固点と融点とが異なるヒステリシスの特性を有している。そして、一度固まった寒天は溶けにくく、転がり軸受1を使用する環境下の温度では固体状にあり、固化した形状が維持される。
【0021】
なお、寒天は、粉末寒天、固形寒天、フレーク寒天のいずれであってもよい。
また、充填材7に添加剤を含ませる場合、寒天の溶液に添加剤を加えればよく、これにより、固化した充填材7には、寒天以外に添加剤が含まれる。
【0022】
本実施形態に係る転がり軸受1では、軸受空間8に充填材7が設けられているが、軸受空間8の全体が充填材7によって満たされているのではなく、軸受空間8の一部に充填材7が充填されている。
具体的に説明すると、本実施形態では、内輪2の外周面2aと外輪3の内周面3aとの間であって、これら外周面2aと内周面3aとが対向している空間(ころ4及び保持器5を除く空間)のうち、10%程度を占める領域に、充填材7が設けられている。なお、内輪2の外周面2aには、内輪軌道面21の他に鍔部22,23の外周面も含まれる。
また、充填材7が占める割合は、前記空間のうち5〜15%程度(本実施形態では10%)とする以外に、30〜40%としてもよい。
【0023】
軸受空間8の一部に充填材7が充填されているが、充填材7が主に存在している領域について説明する。
充填材7は、ころ4、内輪軌道面21及び外輪軌道面31(図1参照)には、付着しておらず、図2において、充填材7は、保持器5のうち、ポケット14におけるころ4(図2では図示せず)との摺接面16以外の面17に付着している。
【0024】
摺接面16以外の面17としては、円環部11,12の外周面11a,12a及び内周面11b,12b、円環部11,12の軸方向外側面11c,12c、柱部13の径方向外側面13a及び径方向内側面13bであるが、本実施形態では特に、充填材7は、円環部11,12の内周面11b,12b、及び、柱部13の径方向内側面13bに付着している。
【0025】
摺接面16以外の面17のうち、柱部13の径方向内側面13bは、全体が円錐形状である保持器5の内周面5bの一部であることから、図3に示すように、柱部13の径方向内側面13bには、円弧形状の凹部18が形成されている。そこで、この凹部18に、固化した充填材7の一部が入り込んで、充填材7は保持器5に付着している。つまり、保持器5の摺接面16以外の面17である径方向内側面13bに、充填材7の一部が入り込んでいる凹部18が形成されている。この凹部18により、保持器5に付着させた充填材7の耐久性を高めることができる。また、保持器5の内周面5b側に付着した充填材7は、保持器5の回転による遠心力で、保持器5から剥がれることもない。
【0026】
以上の構成を備えている転がり軸受1の製造方法について説明する。
図1において、保持器5のポケット14にころ4を保持させる前に、また、保持器5を内輪2と外輪3との間に組み付ける前に、保持器5が単独にある状態で、この保持器5に充填材7を付着させてもよいが、本実施形態の製造方法では、内輪2の外周側に、ころ4、保持器5及び外輪3を組み付けた状態にある軸受本体(半完成品)に対して、充填材7を設ける。すなわち、本実施形態の製造方法は、組み立てられた軸受本体の内輪2と外輪3との間に形成されている軸受空間8に、充填材7を充填して転がり軸受1の完成品とする製造方法である。図4は、この製造方法を説明するフロー図である。
【0027】
図1において、内輪2、ころ4、保持器5及び外輪3を組み付けた状態の軸受本体を準備する(図4の準備工程S1)。
そして、本実施形態では、充填材7は寒天からなるため、軸受本体の外部の容器(図示せず)において、寒天を水に浸し、これを寒天の融点以上の温度に加熱し、流動性を有する寒天の溶液とする(準備工程S1)。充填材7は寒天からなるので、例えば90℃以上で寒天を水に溶かすことができる。
そして、この寒天の溶液(流動性を有する状態とした充填材7)を、軸受空間8に注入する(注入工程S2)。充填材7の注入は、潤滑油を軸受空間8に注入するために一般的に用いられる注入器(封入機)を用いることが可能である。
【0028】
そして、内輪2に対して外輪3を回転させながら、又は、外輪3に対して内輪2を回転させながら、注入した充填材7を、寒天の凝固点以下の温度も冷却することにより、軸受空間8において充填材7を凝固させる(冷却工程S3)。
この冷却工程S3では、内輪2と外輪3とを相対回転させながら、注入した充填材7を冷却することにより軸受空間8においてこの充填材7を凝固させるので、転走するころ4の表面、及び、このころ4が転走する内輪軌道面21及び外輪軌道面31では、注入した充填材7が吐き出され、充填材7が付着するのを防ぐことができる。
すなわち、仮に、ころ4の表面、内輪軌道面21及び外輪軌道面31に充填材7が付着して固まると、転がり軸受1の回転に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の冷却工程S3によれば、これを防ぐことができる。
【0029】
そして、この冷却工程S3により、保持器5に充填材7を付着させることができる。なお、注入工程S2において軸受空間8に注入された充填材7は、保持器5と内輪2との間、及び、保持器5と外輪3との間にも、充填される。しかし、冷却工程S3では内輪2と外輪3とが相対回転することで、保持器5も内輪2及び外輪3とは異なる回転数で回転することから、この保持器5に付着し硬化が進む充填材7と、内輪2の外周面2a及び外輪3の内周面3aとの間には、すきまが生じる。したがって、転がり軸受1の軸方向一方側から他方側へは、貫通したすきまが形成され、このすきまを潤滑油が流れることができる。
【0030】
以上の本実施形態に係る製造方法によれば、流動性を有する状態とした充填材7を、軸受空間8に注入し冷却することにより凝固させることで、充填材7を軸受空間8に簡単に設けることができる。
そして、この充填材7によって軸受空間8のすきま(容積)を減らし、軸受空間8を通過する潤滑油の量を制限することができる。この結果、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受1に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
【0031】
また、充填材7は寒天からなるために、製造時において環境負荷がかからず、また、廃棄する際に焼却しても有害物質を排出しないことから、環境面でも優れている。
さらに、この転がり軸受1がデファレンシャルギヤ部(各機器)に組み込まれた状態で、周辺のギヤなどの摩耗によって発生した金属製の異物を、寒天に付着させ取り込むことができ、転がり軸受1の耐異物性を向上させることができ、長寿命化に貢献することが可能となる。
【0032】
そして、本実施形態に係る製造方法によって製造された転がり軸受1によれば、寒天からなる充填材7が軸受空間8に設けられていることで、内輪2、外輪3、ころ4及び保持器5の形状を変更しなくても、つまり、規格品及び現行品などを含む様々な転がり軸受において、軸受空間8のすきま(容積)を減らし、軸受空間8を通過する潤滑油の量を制限することができる。なお、図1に示している実施形態では、潤滑油が軸受空間8を軸方向一方側から他方側へと通過する方向(流れる方向)は、矢印Vに示す方向であり、この転がり軸受1は円すいころ軸受であることから、潤滑油は、径方向内側から外側へと進む方向でもある。
そして、この転がり軸受1によれば、上記のとおり、充填材7によって軸受空間8のすきま(容積)を減らし、軸受空間8を通過する潤滑油の量を制限することができるので、転がり軸受1において、潤滑油による撹拌抵抗を低減することができ、大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
【0033】
さらに、冷却工程S3では内輪2と外輪3とを相対回転させていることで、ころ4が内輪軌道面21及び外輪軌道面31を転走し、この際、ころ4は保持器5のポケット面15と摺接する。このため、ポケット面15のうち、ころ4と摺接する摺接面16では、充填材7は吐き出され(押し出され)摺接面16に付着しないが、この摺接面16以外の面17に付着することができる。このため、充填材7が保持器5に付着して軸受空間8に滞在することができると共に、その充填材7がころ4の転走の抵抗となるのを防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態の転がり軸受1は、自動車のデファレンシャルギヤ部に用いられることから、使用により温度が上昇するが、潤滑油による冷却効果により、寒天の融点未満の使用温度(例えば60℃)となる。つまり、本実施形態の寒天からなる充填材7は、この使用温度以上の融点を有していることから、使用温度以下では固体化(ゲル化)した状態に保たれる。
【0035】
また、本発明の転がり軸受及び本発明の製造方法は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。前記実施形態では、円錐ころ軸受の場合として説明したが、円筒ころ軸受であってもよく、また、転動体はころ以外に玉であってもよい。
また、前記実施形態(図3参照)では、保持器5(柱部13)が保持器5の凹部18を、元来有している場合として説明したが、保持器5に充填材7取り付け用として、新たに形成した凹部であってもよい。凹部は独立した部分であってもよく、また、保持器5は樹脂製であるため、凹部を形成する加工は容易である。この場合であっても、内輪、外輪及びころには、加工を施す必要がなく、内輪、外輪及びころの形状を変更しなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:転がり軸受 2:内輪 3:外輪 4:ころ(転動体) 5:保持器 7:充填材 8:軸受空間 14:ポケット 17:摺接面以外の面 18:凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備え、
前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、寒天を含む充填材が設けられていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記保持器には、前記転動体それぞれを収容しているポケットが複数形成され、
前記充填材は、前記保持器のうち、前記ポケットにおける前記転動体との摺接面以外の面に付着している請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記保持器の前記摺接面以外の面に、前記充填材が入り込んでいる凹部が形成されている請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備えている軸受本体の、前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、充填材を充填して転がり軸受の完成品とする製造方法であって、
前記充填材を融点以上に加熱して流動性を有する状態とし、
この充填材を前記軸受空間に注入し、
前記内輪と前記外輪とを相対回転させながら、注入した前記充填材を凝固点以下の温度に冷却することにより前記軸受空間において当該充填材を凝固させることを特徴とする転がり軸受の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104488(P2013−104488A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248591(P2011−248591)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】