説明

転倒防止装置及び転倒防止構造

【課題】振動による転倒防止装置の移動を抑制する。
【解決手段】転倒防止装置1は、家具130に対して変位不能に固定されるベース部2と、天井110に接触させられる接触部4と、接触部4のベース部2からの高さを調整する調整部3とを備えている。接触部4は、高さ方向に延びる回転軸回りに偏心回転可能であって天井110に接触させられる接触部本体41を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止装置及び転倒防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地震による家具等の転倒を防止する構造が種々知られている。例えば、特許文献1には、伸縮可能な支柱と、支柱の両端に設けられた接触部とを備えた転倒防止装置が記載されている。この転倒防止装置は、支柱を伸縮させて、両端の接触部をそれぞれ天井と家具の天板とに接触させる。こうして、転倒防止装置が家具と天井とを突っ張ることによって、家具の転倒を防止する。この転倒防止装置は、家具及び天井に完全に固定されるわけではないので、様々なタイプの家具や天井に柔軟に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−28489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記転倒防止装置は、支柱を突っ張らせることで、接触部と家具又は天井との接触を維持している。そのため、家具や天井が揺れると、転倒防止装置が移動し、突っ張り状態が維持できない虞がある。転倒防止装置の移動を防止する方策として、転倒防止装置の天井側の接触部を天井だけでなく壁にも接触させることが考えられる。こうすることで、転倒防止装置が振動することがあっても、少なくとも壁側への振動を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、天井側の接触部を天井だけでなく壁に接触させたとしても、転倒防止蔵置は天井及び家具に完全には固定されていないので、転倒防止装置が振動によって徐々に移動する虞がある。転倒防止装置が移動すると、天井側の接触部と壁との間に徐々に隙間が生じてしまう。その結果、天井側の接触部は、壁側へも振動するようになり、転倒防止装置がさらに移動し易くなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、振動による転倒防止装置の移動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、家具の転倒を防止するための転倒防止装置を対象としている。そして、この転倒防止装置は、家具に対して変位不能に固定されるベース部と、天井に接触させられる接触部と前記接触部の前記ベース部からの高さを調整する調整部とを備え、前記接触部は、高さ方向に延びる回転軸回りに偏心回転可能であって天井に接触させられる接触部本体を有しているものとする。
【0008】
前記の構成によれば、転倒防止装置は、ベース部を介して家具に対して変位不能に固定されるため、転倒防止装置と家具との位置関係を固定することができる。その結果、地震等によって転倒防止装置が振動しても、転倒防止装置が家具に対して移動することを防止することができる。
【0009】
その一方で、転倒防止装置と家具との位置関係が固定されると、転倒防止装置の接触部を天井に接触させる際に同時に壁に接触させることが難しくなる。すなわち、壁の上端部には、廻縁が設けられている場合がある。廻縁が設けられている場合には、天井側の接触部を廻縁に接触させることになる。しかしながら、廻縁の厚みは様々である。さらには、廻縁が壁に設けられていない場合もある。つまり、廻縁の種類及び廻縁の有無によって、壁に接触させるために必要な接触部の寸法が異なる。それにもかかわらず、転倒防止装置と家具との位置関係が固定されていると、接触部を壁に接触させるためには、廻縁の有無及び廻縁の種類に応じて、転倒防止装置を家具ごと動かす必要がある。
【0010】
それに対して、前記の構成によれば、前記接触部本体が前記回転軸に対して偏心回転可能に設けられている。そのため、回転軸から壁に直交する方向への接触部の寸法を、接触部を回転させることによって調整することができる。つまり、家具を動かさなくても、接触部の壁側への突出量を調整することができる。これにより、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、接触部を壁に接触させることができる。接触部が壁に接触していると、転倒防止装置は壁側への振動ができないため、転倒防止装置の振動を抑制することができる。その結果、接触部と天井との接触を適切な状態で維持することができる。
【0011】
したがって、前記の構成では、転倒防止装置を家具に変位不能に固定することによって、振動等に起因する転倒防止装置の家具に対する移動を防止することができる。それに加えて、接触部本体を高さ方向に延びる回転軸回りに偏心回転可能に構成することによって、転倒防止装置を家具に変位不能に固定する構成であっても、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、接触部を天井だけでなく壁にも接触させることができる。その結果、接触部と天井との接触を適切な状態で維持することができる。
【0012】
また、ここに開示された別の発明は、天井と、該天井に繋がる壁と、該壁に対向して設置される家具と、前記転倒防止装置とを備えた転倒防止構造が対象である。そして、前記転倒防止装置は、前記ベース部が前記家具に変位不能に固定されており、前記接触部本体は、前記天井に接触すると共に、前記壁に接触しているものとする。
【0013】
前記の転倒防止装置によれば、接触部本体を前記回転軸回りに回転させることによって、回転軸から壁に直交する方向への接触部の寸法を調整することができる。そのため、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、接触部本体を天井に接触させる際に壁に接触させることができる。この構成においては、地震等により転倒防止装置が振動することがあっても、転倒防止装置は壁側には振動できないため、転動防止具の振動を抑制することができる。その結果、接触部と天井との接触状態を可及的に維持することができ、転倒防止装置による突っ張り状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
前記転倒防止装置によれば、転倒防止装置の家具側は、ベース部を介して家具に変位不能に固定される。一方、転倒防止装置に天井側は、壁の構成にかかわらず、接触部を壁に接触させつつ天井に接触させることができる。その結果、転倒防止装置の移動を防止することができると共に、接触部と天井との接触を適切な状態に維持することができる。
【0015】
前記転倒防止構造によれば、前記転倒防止装置の家具側は、ベース部を介して家具に変位不能に固定される。一方、転倒防止装置に天井側は、壁の構成にかかわらず、接触部を壁に接触させつつ天井に接触させることができる。その結果、転倒防止装置の移動を防止することができると共に、接触部と天井との接触を適切な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る転倒防止構造を正面側から見た斜視図である。
【図2】転倒防止装置を取り付けた家具を背面側から見た斜視図である。
【図3】転倒防止装置を回転軸に沿った平面で切断した部分断面図である。
【図4】接触部をスペーサから抜き出した状態の転倒防止装置の斜視図である。
【図5】接触部の平面図である。
【図6】壁に廻縁が設けられている場合の転倒防止構造を示す図である。
【図7】壁に別の種類の廻縁が設けられている場合の転倒防止構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に、実施形態に係る転倒防止構造100を正面側から見た斜視図を、図2に、転倒防止装置1を取り付けた家具130を背面側から見た斜視図を示す。
【0018】
転倒防止構造100は、天井110と、天井110に繋がる壁120と、壁120に対向して設置させる家具130と、家具130の転倒を防止するための2つの転倒防止装置1,1とを備えている。
【0019】
壁120Aは、その上端縁が天井110に連結されている。天井110と壁120Aとのなす角は、略直角である。図1に示す壁120Aは、壁本体121で構成されており、後述する廻縁が設けられていない。
【0020】
家具130は、概略直方体状の木製の棚である。家具130は、略長方形状の天板131と、天板131の両短辺に連結された2つの側板132,132と、天板131の背面側の長辺に連結された背板133と、側板132,132との間に設けられる複数の棚板134,134,…とを少なくとも有している。尚、家具130の正面側を「前」、背面側を「後」と称することもある。側板132,132の後端部は、天板131よりも背面側に突出している。各側板132の、天板131よりも背面側に突出した部分に、転倒防止装置1が取り付けられている。
【0021】
図3に、転倒防止装置1を回転軸に沿った平面で切断した部分断面図を、図4に、接触部4をスペーサ32から抜き出した状態の転倒防止装置1の斜視図を、図5に、接触部4の平面図を示す。
【0022】
転倒防止装置1は、家具130に取り付けられるベース部2と、天井110に接触させられる接触部4と、接触部4のベース部2からの高さを調整する調整部3とを備えている。
【0023】
ベース部2は、概略直方体状をした金属製の部材である。ベース部2は、家具130に対して変位不能に固定される。具体的には、ベース部2は、側板132の、天板131よりも背面側に突出した部分と、背板133とで形成される隅部に配設される。ベース部2は、側板132にボルト締結されている。すなわち、ベース部2は、背板133の背面側であって且つ側板132の内側において、側板132に固定的に取り付けられている。ベース部2の上端面は、天板131と略面一となっている。また、ベース部2の後端面は、側板132の後端と略面一となっている。
【0024】
調整部3は、ベース部2に設けられた雄ネジ31と、雄ネジ31と螺合するスペーサ32とを有している。
【0025】
雄ネジ31は、ベース部2の上端面に設けられている。雄ネジ31は、ベース部2の上端面から上方に延びている。
【0026】
スペーサ32は、柱状の金属製の部材である。スペーサ32の断面は、概略六角形をしている。スペーサ32の下端面には、雌ネジ33がスペーサ32の軸方向に穿孔されている。この雌ネジ33は、雄ネジ31と螺合するように構成されている。つまり、スペーサ32は、雌ネジ33を雄ネジ31に螺合させることによって、ベース部2に取り付けられる。そして、スペーサ32をその軸回りに回転させることによって、スペーサ32が上下に移動する。こうして、スペーサ32の、ベース部2からの高さ方向位置が調整される。すなわち、調整部31は、雄ネジ31及び雌ネジ33で構成されるネジ機構を有し、このネジ機構によってスペーサ32の高さを調整することができる。一方、スペーサ32の上端面には、断面円形状の丸孔34がスペーサ32の軸方向に穿孔されている。この丸孔34を介して、接触部4がスペーサ32の上端に配設される。
【0027】
接触部4は、天井110に接触させられる接触部本体41と、接触部本体41に連結された回転シャフト42とを有している。
【0028】
接触部本体41は、平面視略長方形状をしており、4つの辺41a〜41dを有している。詳しくは、接触部本体41は、平面視略長方形状の金属板43と、平面視略長方形状の樹脂板44とを有している。樹脂板44は、金属板43よりも面積が小さい。樹脂板44は、金属板43の上面に接着されている。金属板43の4辺が、前記接触部本体41の4辺41a〜41dを構成する。接触部本体41が天井110に接触する際には、樹脂板44が天井110に接触する。樹脂板44は、例えば、エラストマで構成されており、天井110との間の滑り止めとして機能すると共に、振動を減衰させる機能も有している。
【0029】
回転シャフト42は、金属板43の下面に連結されている。回転シャフト42の外径は、スペーサ32の丸孔34の内径よりも小さい。回転シャフト42は、図5に示すように、金属板43の重心Gに対して偏心した位置に連結されている。回転シャフト42は、接触部本体41の4辺41a〜41dそれぞれまでの距離(回転シャフト42の接触部本体41との連結部から、各辺に下ろした垂線の方向への各辺までの距離)が互いに異なる。本実施形態では、回転シャフト42から辺41aまでの距離Laが最も長く、辺41bまでの距離Lb、辺41cまでの距離Lc、辺41dまでの距離Ldの順で短くなっている。
【0030】
このように構成された接触部4は、回転シャフト42がスペーサ32の丸孔34に挿入される。回転シャフト42は全て、スペーサ32内に挿入され、金属板43がスペーサ32の上端面に載置された状態となる。回転シャフト42は丸孔34よりも小径なので、接触部4は、スペーサ32に対して回転自在に設けられることになる。ここで、接触部本体41は回転シャフト42に対して偏心しているので、接触部本体41は、スペーサ32に対して、高さ方向に延びる回転軸X回りに偏心回転可能に構成されている。この回転軸Xは、丸孔34の軸に一致する。
【0031】
続いて、このように構成された家具130及び転倒防止装置1の設置について説明する。
【0032】
家具130は、背板133を壁120Aに対向させて設置される。このとき、家具130は、できる限り壁120Aに近接させて、好ましくは、壁120Aに接触させて設置される。この実施形態では、側板132,132の後端が壁120Aに接触している。この段階では、接触部本体41は、天井110よりも低く、天井110には接触していない。
【0033】
このとき、接触部本体41は、4辺41a〜41dのうち、回転シャフト42からの距離が最も長い辺41aが壁120Aと対向するように配設されている。この回転シャフト42から辺41aまでの距離Laは、壁120Aに直交する方向における、回転シャフト42から側板132の後端までの距離に等しい。そのため、側板132の後端が壁120Aに接触する状態においては、接触部本体41の辺41aも壁120Aに接触する。
【0034】
そして、スペーサ32をスパナ等を用いて、スペーサ32の軸回りに回転させる。このとき、スペーサ32が上方へ変位する向きに、スペーサ32を回転させる。スペーサ32の回転に伴って、スペーサ32は上方へ移動し、それと共に、接触部4も上方へ移動する。ここで、接触部4は、スペーサ32に対して回転自在に設けられているため、スペーサ32が回転しても、接触部4は回転せず、辺41aと壁120Aとの接触が維持される。
【0035】
やがて、接触部4は天井110に接触する。このとき、接触部4は、辺41aを介して壁120Aにも接触している。こうして、家具130及び転倒防止装置1の設置が完了する。
【0036】
こうして設置が完了すると、転倒防止装置1が家具130を天井110に対して突っ張った状態となる。そのため、家具130の転倒が防止される。さらに、転倒防止装置1の家具130側は、ベース部2を介して家具130に変位不能に固定されているため、地震等により転倒防止装置1が振動しても、転倒防止装置1が家具130に対して移動することを防止することができる。一方、転倒防止装置1の天井110側は、接触部4が天井110だけでなく壁120Aにも接触している。そのため、地震等により転倒防止装置1が振動しても、転倒防止装置1が壁120A側へ振動することができないため、転倒防止装置1の振動を抑制できる。それにより、転倒防止装置1と天井110との接触を適切な状態で維持することができる。こうして、転倒防止装置1による天井110及び家具130の突っ張り状態を維持することができる。その結果、地震等により転倒防止装置1が振動する場合であっても、家具130の転倒を防止することができる。
【0037】
さらに、接触部4は、辺41aを介して壁120Aに線接触している。そのため、転倒防止装置1が振動しても、接触部4は、回転シャフト42回りの回転が防止される。その結果、スペーサ32の回転も防止され、転倒防止装置1による天井110及び家具130の突っ張り状態が緩むことを防止することができる。すなわち、本実施形態のように、接触部4の高さをネジ機構で調整する構成においては、接触部4が回転してしまうと、ネジ機構も回転してしまい、転倒防止装置1による天井110及び家具130の突っ張り状態が緩む虞がある。それに対して、本実施形態では、ネジ機構によって高さ調整が可能な調整部3を備える転倒防止装置1において、天井110に接触する接触部本体41を壁120Aに線接触させることによって、接触部本体41が回転シャフト42回りに回転することを防止することができる。それにより、接触部本体41の回転に起因するスペーサ32の回転を防止することができる。ここで、転倒防止装置1が家具130に対して移動してしまうと、接触部4と壁120Aとが離間して、接触部本体41が回転可能な状態となってしまう。それに対して、転倒防止装置1を家具130に変位不能に固定することによって、接触部本体41が壁120Aに線接触して回転不能となった状態を維持することができる。こうして、転倒防止装置1による天井110及び家具130の突っ張り状態が緩むことを防止することができる。すなわち、接触部本体41を壁120Aに線接触させることによって、転倒防止装置1の振動を抑制する効果と、接触部本体41の回り止めの効果とを奏する。
【0038】
さらに、接触部4は、回転シャフト42を回転軸として偏心回転可能に構成されている。その結果、接触部4は、回転シャフト42からの距離が異なる4つの辺41a〜41dを有している。そのため、壁120Aの上端部の構成にかかわらず、接触部4を天井110に接触させつつ壁120Aにも接触させることができる。図1に示す壁120Aとは異なる壁の上端部の構成としては、壁に廻縁が設けられた構成がある。すなわち、図6に示す壁120Bは、壁本体121と、壁本体121の上端部に設けられた廻縁122Bとを有している。また、この廻縁は、一種類だけではなく、様々な種類がある。例えば、図7に示す壁120Cは、壁本体121と、壁本体121の上端部に設けられ、廻縁122Bよりも厚い廻縁122Cとを有している。尚、廻縁の有無及び廻縁の種類を区別するとき以外、即ち、壁一般について言及する際には、壁120A,120B,120Cを区別することなく、単に「壁120」と称する。これら廻縁122B,122Cは壁本体121の上端部に設けられているため、家具130は、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、壁本体121に接触した状態で設置される。すなわち、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、家具130と壁120との位置関係は一定である。一方、接触部4が、壁120の上端部に接触する構成においては、廻縁が設けられていない場合には接触部4は壁本体121に接触することになり、廻縁122B,122Cが設けられている場合には接触部4は廻縁122B,122Cに接触することになる。すなわち、回転シャフト42から壁120までの距離は、廻縁が設けられていない場合には、回転シャフト42から壁本体121までの距離となり、廻縁122B,122Cが設けられている場合には、回転シャフト42から廻縁122B,122Cまでの距離となる。
【0039】
ここで、接触部本体41は、回転シャフト42回りに偏心回転可能に構成されている。つまり、接触部本体41を回転させることによって、回転シャフト42から壁120に直交する方向への接触部本体41の寸法を変化させることができる。ここで、回転シャフト42から接触部本体41の辺41bまでの距離Lbは、家具130の側板132の後端を壁120に接触させた状態における回転シャフト42から廻縁122Bまでの距離に設定されている。また、回転シャフト42から接触部本体41の辺41cまでの距離Lcは、家具130の側板132の後端を壁120に接触させた状態における回転シャフト42から廻縁122Cまでの距離に設定されている。さらに、回転シャフト42から接触部本体41の辺41dまでの距離Ldは、家具130の側板132の後端を壁120に接触させた状態における回転シャフト42から、廻縁122Cよりも厚い別の廻縁までの距離に設定されている。つまり、壁120が廻縁122Bを有する場合には、接触部本体41を回転させて、辺41bを壁120に対向させる。こうすることによって、図6に示すように、接触部本体41が天井110に接触するときには、接触部本体41は辺41bを介して廻縁122Bに接触する。また、壁120が廻縁122Cを有する場合には、接触部本体41を回転させて、辺41cを壁120に対向させる。こうすることによって、図7に示すように、接触部本体41が天井110に接触するときには、接触部本体41は辺41cを介して廻縁122Cに接触する。さらに、壁120が別の廻縁を有する場合には、接触部本体41を回転させて、辺41dを壁120に対向させる。こうすることによって、接触部本体41が天井110に接触するときには、接触部本体41は辺41dを介して該廻縁に接触する。このように、接触部本体41を回転シャフト42回りに回転させることによって、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、接触部本体41を壁120に接触させることができる。つまり、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、前述の如く、転倒防止装置1の振動を抑制することができる。さらに、回転シャフト42から接触部本体41の各辺までの距離を、廻縁の有無及び廻縁の種類に対応させることによって、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、接触部本体41を壁120に線接触させることができる。つまり、廻縁の有無及び廻縁の種類にかかわらず、前述の如く、接触部本体41が回転シャフト42回りに回転することを防止して、転倒防止装置1による天井110及び家具130の突っ張り状態が緩むことを防止することができる。
【0040】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0041】
例えば、前記家具130は、木製の棚であるが、これに限られるものではない。すなわち、家具130は、転倒を防止する必要がある道具であれば、どのような道具であってもよい。例えば、本発明における家具には、冷蔵庫等の家電製品も含まれ得る。
【0042】
また、家具130は、壁本体121に接触させた状態で設置されているが、壁本体121から離間して設置されてもよい。
【0043】
また、前記転倒防止装置1は、側板132の後端部に内側から取り付けられているが、これに限られるものではない。転倒防止装置1は、側板132に外側から取り付けられてもよいし、背板133に取り付けられてもよい。すなわち、転倒防止装置1は、家具130のどの部分に取り付けられてもよい。
【0044】
また、前記接触部本体41は、平面視略長方形状に形成されているが、これに限られるものではない。接触部本体41は、回転シャフト42に対して偏心している限りは、任意の形状に形成することができる。例えば、接触部本体41は、平面視略円形又は平面視略楕円形であってもよい。ただし、接触部本体41を様々な構成の壁120に接触させることだけでなく、接触部本体41の回り止めを実現する観点からは、接触部本体41は、辺を有する平面形状が好ましい。接触部本体41の辺を壁120に接触させることによって、接触部本体41の回転を防止することができるためである。例えば、接触部本体41は、平面視三角形状や六角形状であってもよい。ただし、様々な種類の廻縁に対して接触可能とするためには、回転軸からの距離が異なる辺を多数有する形状が好ましい。
【0045】
また、接触部本体41は、金属板43と樹脂板44とで構成されているが、これに限られるものではない。例えば、接触部本体41は、金属のみ、又は樹脂のみで構成されていてもよい。
【0046】
前記ベース部2は、家具130にボルト締結されているが、これに限られるものではない。すなわち、ベース部2は、家具130に対して変位不能に固定される限りにおいては、任意の方法で家具130に取り付けることができる。例えば、ベース部2は、家具130に接着により取り付けられてもよい。また、ベース部2は、家具130に一体成形されていてもよい。
【0047】
前記調整部3は、雄ネジ31とスペーサ32とで構成されているが、これに限られるものではない。すなわち、調整部3は、接触部4の高さを調節できる構成であれば、任意の構成を採用することができる。例えば、雄ネジ31の代わりにベース部2の上端面に雌ネジが穿孔される一方、スペーサ32の下端に雄ネジが設けられる構成であってもよい。かかる構成であっても、スペーサ32の雄ネジをベース部2の雌ネジに螺合させることによって、スペーサ32の高さを調節することが可能であり、ひいては、接触部4の高さを調節することができる。また、ネジ機構としては、一条ネジに限らず、二条ネジを採用してもよい。二条ネジを採用することによって、ネジを緩み難くすることができる。また、調整部3は、金属製に限られず、樹脂製であってもよい。スペーサ32の外周面から半径方向内方にタッピングネジをねじ込んで、スペーサ32と雄ネジ31を締結することが好ましい。こうすることで、スペーサ32の回転を防止することができる。また、調整部3は、ネジ機構ではなく、エアシリンダやスプリングによって高さ調整可能に構成されていてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、接触部4を天井110だけでなく、壁120にも接触させているが、これに限られるものではない。例えば、接触部本体41を天井110に接触させるものの、壁120との間には隙間を設けていてもよい。ただし、このとき、接触部本体41の辺を壁120と対向させると共に、接触部本体41と壁120との隙間を、接触部本体41が回転すると、接触部本体41の辺の端部が壁120に接触して、接触部本体41の回転が妨げられる隙間以下に設定する。こうすることで、接触部本体41を壁120に接触させなくても、接触部本体41の回転を防止することができる。さらに、接触部本体41の壁120側への変位は、壁120により制限される。つまり、接触部本体41を壁120に接触させなくても、接触部本体41の壁120側への変位を抑制することができるため、転倒防止装置1の振動を抑制することができる。
【0049】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、転倒防止装置及び転倒防止構造について有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 転倒防止構造
110 天井
120 壁
130 家具
2 ベース部
3 調整部
4 接触部
41 接触部本体
41a 辺
41b 辺
41c 辺
41d 辺
X 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具の転倒を防止するための転倒防止装置であって、
家具に対して変位不能に固定されるベース部と、
天井に接触させられる接触部と、
前記接触部の前記ベース部からの高さを調整する調整部とを備え、
前記接触部は、高さ方向に延びる回転軸回りに偏心回転可能であって天井に接触させられる接触部本体を有している転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転倒防止装置において、
前記調整部は、回転させることによって高さ調整が可能なネジ機構を有している転倒防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の転倒防止装置において、
前記接触部本体は、回転中心からの距離が異なる複数の辺を有している転倒防止装置。
【請求項4】
天井と、該天井に繋がる壁と、該壁に対向して設置される家具と、請求項1乃至3の何れか1つに記載の転倒防止装置とを備えた転倒防止構造であって、
前記転倒防止装置は、前記ベース部が前記家具に変位不能に固定されており、
前記接触部本体は、前記天井に接触すると共に、前記壁に接触している転倒防止構造。
【請求項5】
天井と、該天井に繋がる壁と、該壁に対向して設置される家具と、請求項3に記載の転倒防止装置とを備えた転倒防止構造であって、
前記転倒防止装置は、前記ベース部が前記家具に変位不能に固定されており、
前記接触部本体は、前記天井に接触すると共に、前記複数の辺のうちの一の辺が前記壁に接触している転倒防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−70975(P2013−70975A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214825(P2011−214825)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】