説明

転倒防止装置

【課題】移動時はキャスタを保護することが可能な転倒防止装置を提供する。
【解決手段】機器1の転倒を防止する転倒防止位置とキャスタ3による機器1の移動を許容する格納位置とを選択的に占める転倒防止部材5と、機器1に設けられ転倒防止部材5を移動自在に支持する支持部6とを有し、転倒防止部材5は格納位置においてキャスタ3を外力から保護する保護部5cを有することを特徴とする転倒防止装置4。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、複写装置、複合機等の底面にキャスタを有する機器の転倒を防止する転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷装置、複写装置、複合機等のOA機器90は、オペレータが立った状態で操作することを考え、図15に示すようにテーブル91の上面に載置された状態、あるいは図16に示すように給紙装置92の上面に載置された状態で使用される。このテーブル91あるいは給紙装置92の底部には、移動を容易にするためのキャスタ93が取り付けられている。従来のOA機器のように横幅よりも高さが高く構成された縦型の機器の場合には、地震等によって機器が転倒することを防止するための転倒防止装置が取り付けられている。この転倒防止装置としては、図17に示すようにキャスタ93を覆い隠す袴型の転倒防止装置94が一般的であり、機器が傾いた際にこの転倒防止装置94が設置面に接触することによって機器の転倒が防止される。
【0003】
しかし、上述の転倒防止装置94は機器の移動時あるいは運搬時においてテーブル91あるいは給紙装置92から取り外されるため紛失する虞があると共に、機器の移動時及び設置時において着脱しなくてはならず面倒であるという問題点があった。そこで、取付部と連結部と延出部とを有する補助スタンドを機器の底部に設け、この補助スタンドを機器の転倒を防止する転倒防止位置と機器の移動を邪魔しない収納位置とを選択的に占めるべく回動自在とした技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
また、機器底面より露呈する機能位置と機器底面に隠れる退避位置とを選択的に占めるべく機器の底部に回動自在に設けられた湾曲扇形の転倒防止部材を有し、転倒防止部材の回動位置に応じて転倒防止効果を変更可能とする技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。
また、通常時においてその端部が設置面より離間した伸縮自在かつ曲折自在な棒状体をキャスタの近傍に設け、機器が傾いた際に棒状体の端部が設置面に接触することにより機器の転倒を防止する技術が、例えば「特許文献3」に開示されている。
さらに、キャスタの近傍に設けられた固定ブラケットにより移動自在に支持された転倒防止部材を備え、この転倒防止部材を、固定ブラケットより突出させてその端部を設置面に接触させる位置と固定ブラケット内方に収納させて機器の移動を妨げない位置とに選択的に移動させる技術が、例えば「特許文献4」に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−185083号公報
【特許文献2】特開2002−252475号公報
【特許文献3】特開2005−162113号公報
【特許文献4】特開2003−218544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の各特許文献に記載された技術では、図18に示すようにキャスタ93が設置面95上を矢印Q方向に移動する際に、設置面95上にキャスタ93が乗り越えることができない障害物96が存在する場合には、キャスタ93が障害物96に衝突した際にその衝撃が直接キャスタ93に伝達されてしまうという問題点がある。また、障害物96に衝突したときの衝撃が大きすぎる場合には、図19に示すようにキャスタ93のテーブル91あるいは給紙装置92に対する取付部が曲がったり折れたりしてしまうという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、移動時はキャスタを保護することが可能な転倒防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、底面にキャスタを有する機器に設けられた転倒防止装置であって、前記機器の転倒を防止する転倒防止位置と前記キャスタによる前記機器の移動を許容する格納位置とを選択的に占める転倒防止部材と、前記機器に設けられ前記転倒防止部材を移動自在に支持する支持部とを有し、前記転倒防止部材は前記格納位置において前記キャスタを外力から保護する保護部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の転倒防止装置において、さらに前記キャスタと前記支持部とは前記機器の互いに異なる部位にそれぞれ取り付けられており、前記保護部に前記外力が作用した際に該外力は前記支持部に伝達され、前記キャスタには伝達されないことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の転倒防止装置において、さらに前記転倒防止部材が前記格納位置を占めたときの機器設置面から前記保護部までの高さは、前記機器設置面から前記キャスタの中心位置までの高さ以下となるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の転倒防止装置において、さらに前記転倒防止部材は前記格納位置を占めた際に少なくとも前記キャスタの一部を囲む形状であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の転倒防止装置において、さらに前記転倒防止部材が前記格納位置を占めた際に、前記保護部が前記機器の進行方向前面側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機器の設置面上にキャスタが乗り越えることができない障害物が存在する場合に、キャスタが障害物に衝突する前に保護部が障害物に衝突するので、キャスタの破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、複写装置あるいは孔版印刷装置等のOA機器、あるいはOA機器の下方に配設されるテーブルあるいは給紙装置等の機器1の底面1aには、機器1の設置面2上において機器1を移動させるための複数のキャスタ3が取り付けられている。キャスタ3は、矩形状を呈する機器1の底面1aの四隅にそれぞれ1個ずつ配設されており(各図にはそれぞれ1個のみ示す)、それぞれねじによって底面1aに固定されている。
【0013】
各キャスタ3の近傍には、機器1が転倒することを防止するための転倒防止装置4がそれぞれ配設されている。転倒防止装置4は、転倒防止部材5、支持部としてのブラケット6、ストッパ7等を有している。
転倒防止部材5は、金属や硬質樹脂等の弾性及び強度を有する材質からなる丸棒によって構成されており、コ字形状に折り曲げられている。転倒防止部材5の両腕部5aの両端部はさらにコ字形状に曲折形成されて係合部5bを構成しており、中央部はキャスタ3よりも機器1の進行方向前面側に位置して保護部5cを構成している。転倒防止部材5は、通常時において両腕部5aが保護部5cから係合部5bに向かうに連れて互いに拡開する習性を与えられている。
【0014】
ブラケット6は、板材をほぼコ字形状に折り曲げて形成されており、各立ち曲げ部6a,6bが機器進行方向に対して直列となるように底面1aに取り付けられる。立ち曲げ部6a側のほぼ中央には切欠部6cが形成されており、ブラケット6は切欠部6c内にキャスタ3が位置し、キャスタ3の機器進行方向前面側を除く3方を囲むように、ねじ止めあるいは溶接等の適宜の手段によって底面1aに固定されている。
【0015】
図3(a)に示すように、機器進行方向前面側に位置する立ち曲げ部6aにはキャスタ3を挟んで対称となる位置に腕部5aが摺動可能な2個の長穴6dが穿設されており、図3(b)に示すように、立ち曲げ部6bには腕部5aが摺動可能な2個の長穴6eが穿設されている。各長穴6eの穿設位置は、底面1aからの距離が各長穴6dにおける底面1aからの距離よりも近くなるように配置され、かつ互いの間隔が各長穴6d間の間隔よりも短くなるように設定されている。
断面L字形状をなすアングル材からなるストッパ7は、底面1aにねじ止めあるいは溶接等の適宜の手段によって固定されている。各長穴6dと各長穴6eとの位置関係及びストッパ7の配設位置に関しては後述する。
【0016】
上述の構成より、転倒防止部材5の各腕部5aを互いに狭めて転倒防止部材5を設置面2から離れる方向に移動させることにより、各腕部5aが各長穴6eの外側部によって拡開を規制されると共にその両端部がストッパ7に当接することで転倒防止部材5が図1に示す格納位置に位置決めされ、転倒防止装置4は保護部5cが設置面2より上方に移動することで機器1の移動を許容する。図1に示す状態から転倒防止部材5の各腕部5aを互いに狭めて転倒防止部材5を設置面2に近づく方向に移動させることにより、各腕部5aが拡開して各係合部5bが各長穴6eの外側部に係合して転倒防止部材5が図4に示す転倒防止位置に位置決めされ、転倒防止装置4は保護部5cが設置面2に接触あるいは近接することで機器1の転倒を防止する。
【0017】
さらに本発明によれば、転倒防止部材5が格納位置を占めた際に保護部5cの高さがキャスタ3の中心位置Oの高さ以下となるように、すなわち中心位置Oとほぼ同一または中心位置Oよりも下方に位置するように、各長穴6dと各長穴6eとの位置関係及びストッパ7の配設位置が設定されているので、図1に二点鎖線で示すように設置面2上にキャスタ3が乗り越えることができない障害物8が存在する場合に、キャスタ3が障害物8に衝突する前に保護部5cが障害物8に衝突し、保護部5cを有する転倒防止部材5を支持するブラケット6がキャスタ3を支持する部材とは別部材であることから衝突時における衝撃力(外力)がキャスタ3に及ぶことを防止でき、キャスタ3の破損を防止することができる。また、保護部5cを有する転倒防止部材5がキャスタ3を囲む形状であるので、キャスタ3の保護を効果的に行うことができる。
【0018】
なお、この第1の実施形態においてブラケット6を金属等の強度を有する材質で構成することにより、ブラケット6をキャスタ3の保護部として機能させることが可能である。この構成により、図2における下側方向に機器1を移動させる場合でもキャスタ3を保護することができ、保護部5cと併せてあらゆる方向においてキャスタ3を保護することができる。
【0019】
図6ないし図14は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と比較すると、転倒防止装置4に代えて転倒防止装置9を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。転倒防止装置9は、転倒防止部材10、支持部としてのブラケット11,12,13、圧縮コイルバネ14等を有している。
【0020】
転倒防止部材10は、金属等の強度を有する材質からなる丸棒によって構成されており、図7に示すような形状に折り曲げられていて、腕部10a,10b、保護部10c,10d、接地部10e,10f,10gを有している。各腕部10a,10bの先端には、図9及び図10に示すように断面正方形状の面取部10h,10iが形成されており、面取部10hは細径部10jを介して形成されている。細径部10jは断面丸形状に形成されており、その直径は面取部10hの一辺よりも小さくなるように形成されている。
【0021】
各立ち曲げ部11a,11bを有し断面コ字形状を呈するブラケット11は底面1aに固着されており、図9に示すように立ち曲げ部11aには腕部10aが回動可能かつ摺動自在な丸穴11cが、また立ち曲げ部11bには面取部10hが摺動自在な角穴11dがそれぞれ形成されている。立ち曲げ部12aを有し断面L字形状を呈するブラケット12は、図9に示すように底面1aに固着されている。各立ち曲げ部13a,13bを有し断面コ字形状を呈するブラケット13は底面1aに固着されており、図10に示すように立ち曲げ部13aには腕部10bが回動可能かつ摺動自在な丸穴13cが、また立ち曲げ部13bには面取部10iが摺動自在な角穴13dがそれぞれ形成されている。
圧縮コイルバネ14は、面取部10hの端面と立ち曲げ部12aとの間に介装されており、図示しない固定手段によって落下しないように固定されている。
【0022】
上述の構成より、圧縮コイルバネ14の付勢力に抗して転倒防止部材10を図7に矢印Aで示す方向に移動させると、各面取部10h,10iが各角穴11d,13dより離脱して図12に示す状態となる。この状態より転倒防止部材10を図11に矢印Bで示す方向に90度回動させると、各接地部10e,10f,10gが設置面2に接触あるいは近接する位置を占める。転倒防止部材10は圧縮コイルバネ14の付勢力によって図14に矢印Cで示す方向に移動し、各面取部10h,10iが各角穴11d,13dに嵌合して転倒防止部材10が図13に示す位置に位置決めされる。
【0023】
転倒防止部材10が図13に示す転倒防止位置に位置決めされることにより、転倒防止装置9は各接地部10e,10f,10gが設置面2に接触あるいは近接することで機器1の転倒を防止する。また、転倒防止部材10が図6に示す格納位置に位置決めされることにより、転倒防止装置9は各接地部10e,10f,10gが設置面2より上方に移動することで機器1の移動を許容する。また、本発明によれば、転倒防止部材10が格納位置を占めた際に各保護部10c,10dの高さがキャスタ3の中心位置Oの高さ以下となるように、すなわち中心位置Oとほぼ同一または中心位置Oよりも下方に位置するように転倒防止部材10の形状が設定されているので、図6に二点鎖線で示すように設置面2上にキャスタ3が乗り越えることができない障害物8が存在する場合に、キャスタ3が障害物8に衝突する前に各保護部10c,10dが障害物8に衝突し、各保護部10c,10dを有する転倒防止部材10を支持する各ブラケット11,12,13がキャスタ3を支持する部材とは別部材であることから衝突時における衝撃力(外力)がキャスタ3に及ぶことを防止でき、キャスタ3の破損を防止することができる。また、各保護部10c,10dを有する転倒防止部材10がキャスタ3を囲む形状であるので、キャスタ3の保護を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に用いられる転倒防止装置が格納位置を占めた状態を示す部分概略正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に用いられる転倒防止装置が格納位置を占めた状態を示す部分概略底面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられるブラケットを説明する分図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に用いられる転倒防止装置が転倒防止位置を占めた状態を示す部分概略正面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に用いられる転倒防止装置が転倒防止位置を占めた状態を示す部分概略底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置が格納位置を占めた状態を示す部分概略正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置が格納位置を占めた状態を示す部分概略底面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置が格納位置を占めた状態を示す部分概略側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止部材を説明する部分概略側面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止部材を説明する部分概略側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置の移動を説明する部分概略正面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置の移動を説明する部分概略底面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置が転倒防止位置を占めた状態を示す部分概略正面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に用いられる転倒防止装置が転倒防止位置を占めた状態を示す部分概略底面図である。
【図15】従来のOA機器を示す概略斜視図である。
【図16】従来のOA機器を示す概略斜視図である。
【図17】従来の転倒防止装置を示す概略正面図である。
【図18】従来の転倒防止装置における問題点を示す概略正面図である。
【図19】従来の転倒防止装置における問題点を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 機器
1a 底面
2 設置面
3 キャスタ
4,9 転倒防止装置
5,10 転倒防止部材
5c,10c,10d 保護部
6,11,12,13 支持部(ブラケット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面にキャスタを有する機器に設けられた転倒防止装置であって、
前記機器の転倒を防止する転倒防止位置と前記キャスタによる前記機器の移動を許容する格納位置とを選択的に占める転倒防止部材と、前記機器に設けられ前記転倒防止部材を移動自在に支持する支持部とを有し、
前記転倒防止部材は前記格納位置において前記キャスタを外力から保護する保護部を有することを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の転倒防止装置において、
前記キャスタと前記支持部とは前記機器の互いに異なる部位にそれぞれ取り付けられており、前記保護部に前記外力が作用した際に該外力は前記支持部に伝達され、前記キャスタには伝達されないことを特徴とする転倒防止装置。
【請求項3】
請求項2記載の転倒防止装置において、
前記転倒防止部材が前記格納位置を占めたときの機器設置面から前記保護部までの高さは、前記機器設置面から前記キャスタの中心位置までの高さ以下となるように設定されていることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の転倒防止装置において、
前記転倒防止部材は前記格納位置を占めた際に少なくとも前記キャスタの一部を囲む形状であることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項5】
請求項4記載の転倒防止装置において、
前記転倒防止部材が前記格納位置を占めた際に、前記保護部が前記機器の進行方向前面側に位置することを特徴とする転倒防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−196769(P2007−196769A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15606(P2006−15606)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】