説明

転写パターン形成用ブランケット、転写パターン形成方法および転写装置

【課題】版の凹部が孤立していてもブランケットへのパターン転写を良好に行うこと。
【解決手段】本発明は、凸部11aが形成された硬質基材11と、硬質基材11より軟らかい材質から成り、硬質基材11と貼り合わされ、硬質基材11の凸部11aの位置の厚さが他より薄く設けられた軟質基材であるPDMS層12とを有する転写パターン形成用ブランケット(ブランケット1)である。ここで、硬質基材11の凸部11aの幅は、PDMS層12の表面に塗布されるインクを形成するパターンに対応して残すための版の凹部の幅より広く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写パターン形成用ブランケット、転写パターン形成方法および転写装置に関する。詳しくは、ブランケットに塗布したインクを版によって形成するパターンのみ残すように形成し、これを基板に転写するパターン形成方法に用いる転写パターン形成用ブランケット、転写パターン形成方法および転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反転オフセット印刷を用いたパターン形成方法としては、特許文献1〜3に示される技術が開示されている。いずれも、インクを塗布したブランケットとパターンに対応した凹部を有する版とを加圧接触させ、ブランケット側にパターンに対応したインクのみを残し、これを基板に加圧接触させることで、ブランケット側に残ったインクのパターンを基板に転写させている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−281486号公報
【特許文献2】特開2007−160769号公報
【特許文献3】特開2007−261144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブランケットから基板へインクのパターンを転写する際、孤立パターン部で転写不良が問題となっている。すなわち、ブランケットと版とを加圧接触させると、ブランケットが弾性変形するが、版に設けられた凹部のパターンが孤立している場合、ブランケットの変形量が孤立した凹部に集中してしまう。これにより、版の凹部の底にインクが到達してしまい、転写不良が発生することになる。
【0005】
本発明は、版に孤立したパターンがある場合でもブランケットへ良好な転写を行う技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凸部が形成された硬質基材と、硬質基材より軟らかい材質から成り、硬質基材と貼り合わされ、硬質基材の凸部の位置の厚さが他より薄く設けられた軟質基材とを有する転写パターン形成用ブランケットである。
【0007】
ここで、硬質基材の凸部の幅は、軟質基材の表面に塗布されるインクを形成するパターンに対応して残すための版の凹部の幅より広く形成されている。このような本発明では、硬質基材の凸部の位置に対応する軟質基材の厚さが他の部分より薄く設けられているため、版の凹部が孤立していても、凸部の位置に対応させることで軟質基材が版の凹部の底に到達しない状態となる。
【0008】
また、本発明は、凸部が形成された硬質基材と当該硬質基材より軟らかい軟質基材とが貼り合わされ、前記凸部の位置の前記軟質基材の厚さが他より薄く設けられたブランケットを用い、前記軟質基材の表面にインクを塗布する塗布工程と、形成するパターンの位置に凹部が設けられた版を用い、当該版の凹部と前記ブランケットの凸部との位置を合わせるようにして当該版とブランケットとを互いに向かい合わせ、これらを加圧接触させることにより、ブランケットのインクのうち版の凹部に対応する部分のみをブランケット側に残して転写させる第1転写工程と、第1転写工程後のブランケットと、パターンを形成する基板とを互いに向かい合わせるとともに、これらを加圧接触させることにより、ブランケット上に残っているインクを基板上に転写させる第2転写工程とを有する転写パターン形成方法である。
【0009】
このような本発明では、ブランケットを構成する硬質基材に凸部が形成され、凸部の部分の軟質基材が他より薄く設けられている。このブランケットの凸部と版の凹部とを位置合わせしてインクのパターンを転写すると、版の凹部が孤立していても軟質基材が版の凹部の底に到達しない状態となる。
【0010】
また、本発明は、インクが塗布されたブランケットを保持する第1のステージと、ブランケットと対向して配置される版もしくはインクのパターンを転写される基板を保持する第2のステージと、ブランケットを前記版の方向へ加圧する加圧手段とを備え、ブランケットとして、凸部が形成された硬質基材と、硬質基材より軟らかい材質から成り、硬質基材と貼り合わされ、硬質基材の凸部の位置の厚さが他より薄く設けられた軟質基材とを有するものが用いられている転写装置である。
【0011】
このような本発明では、転写装置に用いるブランケットとして、硬質基材に凸部が形成され、凸部の部分の軟質基材が他より薄く設けられているものを用いている。このため、ブランケットの凸部と版の凹部とを位置合わせしてインクのパターンを転写すると、版の凹部が孤立していても軟質基材が版の凹部の底に到達しない状態となる。
【0012】
ここで、硬質基材としては、例えばガラス基板や金属基板が適用され、軟質基材としては、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)が適用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板にブランケットからインクのパターンを転写するパターンの形成において、版の凹部が孤立していてもブランケットへのパターン転写を良好に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.転写パターン形成の概要(基本的な転写パターン形成の手順の例)
2.本実施形態に係る転写パターン形成用ブランケット(ブランケットの構成、ブランケットの製造方法の例)
3.本実施形態のブランケットを用いた転写パターンの形成方法
4.パターン転写装置(装置構成の一例)
【0015】
<1.転写パターン形成の概要>
[基本的な転写パターン形成の手順]
本実施形態の転写パターン形成方法を説明するに先立ち、基本的な転写パターン形成方法の手順を説明する。先ず、図1(a)に示すように、ブランケット1と版3とを用意する。ブランケット1は、硬質の基材11に軟質の基材であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)層12が貼り合わされたもので、このPDMS層12にインク2が一様に塗布されている。一方、版3は、形成するパターンの形状に合わせた凹部31が形成されたものである。ここでは、複数の凹部31が所定のピッチで配置されたものとなっている。
【0016】
次に、図1(b)に示すように、ブランケット1と版3とを加圧接触させる。すなわち、ブランケット1のインク面を版3の表面に接触させ、加圧圧縮する。これにより、版3の凹部31の周辺(凸部)にブランケット1のインク2が付着する状態となる。
【0017】
この状態で図1(c)に示すように、ブランケット1と版3とを分離すると、版3の凸部にインク2が付着し、ブランケット1側には版3の凹部31に対応したインク2のパターンが残る状態となる。ここで、ブランケット1と版3とを加圧接触させてブランケット1へインク2のパターンを残す転写を第1転写工程と言う。
【0018】
次に、図2(a)に示すように、インク2のパターンが残されたブランケット1と、表面に密着層41が形成されたパターン形成対象の基板4とを向かい合わせ、図2(b)に示すように、位置合わせした状態で加圧接触させる。そして、図2(c)に示すように、ブランケット1と基板4とを分離すると、ブランケット1に残されていたインク2のパターンが基板4上に転写されることになる。ここで、ブランケット1と基板4とを加圧接触させてブランケット1のインクのパターンを基板へ転写する工程を第2転写工程と言う。
【0019】
[孤立パターン転写の問題点]
図3は、孤立パターン部での反転オフセット印刷工程(第1転写工程)での問題点を説明する模式断面図である。先ず、図3(a)に示すように、ブランケット1と版3とを用意する。ブランケット1は、先と同様、硬質の基材11に軟質の基材であるPDMS層12が貼り合わされたもので、このPDMS層12にインク2が一様に塗布されている。一方、版3は、形成するパターンの形状に合わせた凹部31が形成されたものであるが、ここでは、周辺に凹部が設けられていない孤立したパターンとなっている。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、ブランケット1と版3とを加圧接触させ、ブランケット1のインク面を版3の表面に所定の圧力で接触させる。この際、ブランケット1のPDMS層12が弾性変形するが、版3の凹部31が孤立パターンとなっている場合、その変形量が孤立した凹部31に集中する。これにより、版3の凹部31の底までインク2が到達してしまうことになる
【0021】
この状態で図3(c)に示すように、ブランケット1と版3とを分離すると、版3の凸部にインク2が付着し、ブランケット1側には版3の凹部31に対応したインク2のパターンが残る状態となる。しかし、版3の凹部31の底にインク2が付着してしまい、凹部31のパターンに合わせたインク2の転写不良(パターン切れ)が発生するという問題が生じる。
【0022】
この問題を解決するには、版3の凹部31のアスペクト比(図4、深さD/幅W)を大きく、すなわち、深くすれば良い。図5は、版の凹部のアスペクト比を大きくする場合の製造方法を説明する模式断面図である。版を形成するには、先ず、図5(a)に示すように、ガラス(例えば、コーニング社のガラス#1737)等の基材30にフォトリソグラフィによって所定のフォトレジストマスクRを形成する。そして、このフォトレジストマスクRを介してフッ酸等を用いた湿式エッチングにより、基材30に凹部31を形成する。
【0023】
凹部31を深くするために湿式エッチングをさらに進めていく(図5(c)参照)。しかし、湿式エッチングではエッチングが等方的に進み、いわゆるサイドエッチングが発生し、得られる凹部アスペクト比は1程度が限界である。したがって、エッチングが進むと図5(d)に示すように、凹部31間の凸部までエッチングされてしまる。このため、高アスペクト比で高精細な凹部パターンを得ることができない。
【0024】
図6は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いて版を製造する方法を説明する模式断面図である。凹部を反応性イオンエッチングによって形成する場合、被エッチング材料としてはSiO2が好ましい。版3の基材30には石英板、または、ガラス板、金属板等の上にCVD、スパッタ、蒸着法などによりSiO2を成膜した基材を用いる。
【0025】
高アスペクト比で高精細パターンを形成するにはエッチングマスクとしてメタルマスクM(例えばCr)を用いる(図6(a)参照)。そして、フロン系のガス(CF4、C4F8等)を用いてRIEを施し、凹部31を形成する(図6(b)参照)。
【0026】
エッチングが進むにつれ、凹部の側壁に反応生成物が形成され、凹部31の断面形状が台形となり、得られるアスペクト比は3程度となる。RIEでは湿式エッチングに比べ高いアスペクト比が得られるが、エッチング時間が長くなるに従い、強固に付着した反応生成物が第1転写工程時等に剥離し、異物となり転写欠陥を生じ、問題となる。また、石英は非常に高価な事と、反応性イオンエッチング装置、成膜装置が非常に高価であり、生産コストが高くなる問題もある。
【0027】
<2.本実施形態に係る転写パターン形成用ブランケット>
[ブランケットの構造]
本実施形態は、上記のような問題を解消するため、次のようなブランケットの構造を採用している。図7は、本実施形態に係る転写パターン形成用ブランケット(以下、単に「ブランケット」と言う。)の構造を説明する模式断面図である。すなわち、図7(a)に示すように、本実施形態に係るブランケット1は、凸部11aが形成された硬質基材11と、硬質基材11より軟らかい材質から成り、硬質基材11と貼り合わされる軟質基材(PDMS層12)とを備えている。これにより、硬質基材11の凸部11aの位置の厚さdが他の厚さDより薄く設けられることになる。
【0028】
このブランケット1では、硬質基材11としてガラス基板や金属基板を用い、エッチングによって凸部11aを形成している。本実施形態では、ガラス基板を用いている。硬質基材11の厚みは、例えば10μm〜500μm程度とする。
【0029】
軟質基材として利用されるPDMS層12は、硬質基材11の凸部11aが形成された面の全面に貼り付けられている。
【0030】
PDMS層12は、例えば、SYLGARD(登録商標) 184(東レ・ダウコーニング株式会社)を用いる。この場合、PDMS層12の厚さDは、例えば20μm〜30μm程度であり、凸部11aの位置に対応したPDMS層12の厚さdは、例えば5μm〜10μm程度である。
【0031】
なお、PDMS層12は上記以外であってもよいが、厚さdは、厚さDの1/4〜1/3が望ましい。また、本実施形態では軟質基材としてPDMS層12を用いるが、これ以外の材質のものを用いてもよい。
【0032】
また、硬質基材11に設けられる凸部11と隣接する平坦領域は、凸部11の端部から1mm以上設けられている。すなわち、転写するインクのパターンについて周辺に1mm以上別のパターンが存在しない孤立パターンに対応したものとなっている。孤立パターンに対応した第1転写工程では、上記に説明した問題点が発生する。したがって、このような孤立パターンに対応した第1転写工程での問題点を解消するため、本実施形態では凸部11も孤立した状態となっている。
【0033】
[ブランケットの製造方法]
ブランケット1を製造するには、先ず、図7(b)に示すように、例えばガラス基板から成る硬質基材11の所定位置に凸部11aを形成する。凸部11aは、フォトリソグラフィ技術によって硬質基材11の凸部形成位置以外をエッチングすることで形成される。具体的には、硬質基材11の、版の凸部以外の位置をエッチングして凸部11aを形成する。深さは、パターン形成対象の基板の窪みの深さにもよるが、5μm〜200μm程度とする。
【0034】
なお、パターンを転写する基板との位置合わせ用のマークもエッチングにより同時に形成してもよい。すなわち、凸部11aを形成する際のエッチングによって同時に位置合わせ用のマークも形成する。通常は、第1転写工程でブランケット1にインクのパターンを転写するのと同時にインクによるマークも形成するが、インクの厚さが例えば10nm以下といった極薄く形成される場合にはマークとして視認性が悪くなる。そこで、硬質基材11の凸部11aをエッチングによって形成する工程と同時にマークもエッチングによって形成しておく。これにより、インクをマークとして利用できない場合でもエッチングによるマークを利用できるようになる。
【0035】
次に、図7(c)に示すように、硬質基材11の凸部11aを形成した面にPDMS層12を20〜300μm厚程度で塗布する。PDMSは自己平滑化作用が強く、表面が平坦な凸部パターン付きのブランケット1が構成される。これにより、凸部11aの位置では他の位置に比べてPDMS層12が薄く形成されたブランケット1が形成されることになる。
【0036】
ここで、ブランケット1の凸部11aの幅は、後述する転写パターン形成方法における第1転写工程で用いる版の凹部の幅より広くなっている。これにより、第1転写工程において版との加圧接触を行う際、版の凹部との関係ではPDMS層12の弾性変形量を小さくでき、PDMS層12が版の凹部の底に接触してしまうことを回避して転写不良を解消できることになる。
【0037】
また、ブランケット1の凹部11aの幅は、第1転写工程で用いる版の凹部の幅より広くなっている。これにより、第1転写工程において版との加圧接触を行う際、PDMS層が弾性変形して版の凹部内に入り込む際の変形量の規制が成される。
【0038】
このような特性を利用して、本実施形態では第1転写工程でのパターン転写不良を解消する。
【0039】
<3.本実施形態のブランケットを用いた転写パターンの形成方法>
図8〜図9は、本実施形態のブランケットを用いた転写パターンの形成手順を説明する模式断面図である。先ず、図8(a)に示すように、先に説明した本実施形態のブランケット1を用意する。そして、ブランケット1のPDMS層12の表面にインク2を一様に塗布する。インク2としては、例えば、銀、ニッケル、金、銅、その他金属を含有する材料を用いる。
【0040】
その後、ブランケット1のインク2を塗布した面と版3とを向かい合わせで配置する。この際、ブランケット1の凸部11aと版3の凹部31との位置が合うよう位置決めする。
【0041】
次に、図8(b)に示すように、ブランケット1と版3とを加圧接触させる。すなわち、ブランケット1のインク面を版3の表面に加圧圧縮によって接触させる。加圧圧縮による接触は、圧縮気体加圧法を用いる。圧縮気体加圧法とは、接触させる対象であるブランケット1と版3とをそれぞれ向かい合わせて近接しつつ、所定のステージ上に固定する。そして、この状態でブランケット1および版3のうち一方の背面側から圧縮気体を噴射させて押し出すこれにより、ブランケット1と版3とを接触させる方法である。
【0042】
これによって、版3の凹部31の周辺(凸部)にブランケット1のインク2が付着する状態となる。この際、版3の凹部31の位置では、ブランケット1のPDMS層12が凹部31内に押し込まれ湾曲する状態となる。しかし、ブランケット1の凸部11aの幅W1を、版3の凹部31の幅W0より広くしておくと、版3の凹部31の縁ではPDMS層12の薄い部分(図中矢印d参照)と当接することになる。
【0043】
また、ブランケット1の凸部11aの幅W1が、版3の凹部31の幅W0より広いと、ブランケット1と版3との位置合わせのマージンを持たせることができる。ここで、幅W1と幅W0との差は、数百μm(例えば、マージンが左右にある場合、片側約200μmの合計約400μm)程度である。
【0044】
版3の凹部31内に押し込まれるPDMS層12の量は版3の凹部31の縁でのPDMS層12の厚さd起因するため、同じ加圧力であれば版3の凹部31の縁でのPDMS層12の厚さが薄いほど版3の凹部31内へ押し込まれるPDMS層12の量を少なくできる。したがって、本実施形態では、ブランケット1の凸部11a、すなわちPDMS層12の薄い部分によって、版3の凹部31内に押し込まれるPDMS層12の量を制限し、PDMA層12が版3の凹部31の底部まで達しないことになる。
【0045】
次に、図8(c)に示すように、ブランケット1と版3とを分離すると、版3の凸部にインク2が付着し、ブランケット1側には版3の凹部31に対応したインク2のパターンが残る状態となる。この図8(a)〜(c)に示す工程が、ブランケット1側へのインク2のパターンの転写工程、すなわち、第1転写工程となる。
【0046】
次に、図9(a)に示すように、インク2のパターンが残されたブランケット1と密着層41が形成された基板4とを向かい合わせ、位置合わせした状態で加圧接触させる。ブランケット1を基板4に位置合わせする際、本実施形態では、ブランケット1の凸部11aとともに形成したマーク(図示せず)を利用する。すなわち、ブランケット1に形成したマークと基板4に予め設けられたマークとを合わせることで、正確な位置合わせが成される。
【0047】
その後、図9(c)に示すように、ブランケット1と基板4とを分離する。これにより、ブランケット1に残されていたインク2のパターンが基板4上に転写されることになる。図9(a)〜(c)に示す工程が、ブランケット1から基板4へのパターンの転写工程、すなわち、第2転写工程となる。
【0048】
これにより、基板4上で孤立しているパターンであってもパターン切れを起こすことなく確実に転写でき、パターン転写の不良を回避できることになる。
【0049】
<4.パターン転写装置>
[装置構成:主として第1転写工程での適用例]
図10は、パターン転写装置の例を示す模式断面図である。このパターン転写装置は、先に説明した圧縮気体加圧法による加圧圧縮を行う装置である。パターン転写装置によるパターンの転写は、第1転写工程および第2転写工程のいずれでも用いることができる。
【0050】
ブランケットに版のパターンを転写する第1転写工程で用いるパターン転写装置では、例えば図10(a)に示したように、ブランケットの外周部を、下部ステージ51、Oリング53A,53Bおよび固定フレーム54A,54Bにより機械的に固定する。また、版3を上部ステージ52により固定し、下部ステージ51の中心付近に設けられた開口部510(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させてブランケット1を押し出すようにする。
【0051】
なお、例えば図10(b)に示したように、ブランケット1の外周部を、下部ステージ51Aに設けられた開口部511A,511Bにより、図中の符号P2,P3で示したように真空吸着させて固定するようにしてもよい。
【0052】
また、例えば図11に示したように、版3が下部ステージ51上に固定されるものでもよい。この転写装置は、版3を下部ステージ51上に固定するとともに、ブランケット1の外周部を固定フレーム54C,54Dにより固定する。さらに膨張可能であり柔軟性を有する伸縮性フィルム55を、Oリング53A,53B、固定フレーム54A,54Bおよび上部ステージ52Aにより固定する。そして、上部ステージ52Aの中心付近に設けられた開口部520(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させて伸縮性フィルム55およびブランケット1を押し出すようにしている。この場合、ブランケット1の外周部を機械的に固定するだけでよい。
【0053】
なお、これらの場合において、ブランケット1と版3とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインクの転写が可能となる。なお、これら図10および図11においては、インクの図示は省略している。
【0054】
[第2転写工程での適用例]
また、パターン転写装置によってブランケット1から基板4へのインクのパターンの転写、すなわち第2転写工程を行う場合には、上記第1転写工程で用いるパターン転写装置において、版3を基板4に置き換えるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】基本的な転写パターン形成の手順を説明する模式断面図(その1)である。
【図2】基本的な転写パターン形成の手順を説明する模式断面図(その2)である。
【図3】孤立パターン部での反転オフセット印刷工程(第1転写工程)での問題点を説明する模式断面図である。
【図4】版の凹部のアスペクト比を説明する図である。
【図5】版の凹部のアスペクト比を大きくする場合の製造方法を説明する模式断面図である。
【図6】反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いて版を製造する方法を説明する模式断面図である。
【図7】本実施形態に係る転写パターン形成用ブランケットの構造を説明する模式断面図である。
【図8】本実施形態のブランケットを用いた転写パターンの形成手順を説明する模式断面図(その1)である。
【図9】本実施形態のブランケットを用いた転写パターンの形成手順を説明する模式断面図(その2)である。
【図10】パターン転写装置の例を示す模式断面図(その1)である。
【図11】パターン転写装置の例を示す模式断面図(その2)である。
【符号の説明】
【0056】
1…ブランケット、11a…凸部、2…インク、3…版、4…基板、11…硬質基材、12…PDMS層、31…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部が形成された硬質基材と、
前記硬質基材より軟らかい材質から成り、前記硬質基材と貼り合わされ、前記硬質基材の凸部の位置の厚さが他より薄く設けられた軟質基材と
を有する転写パターン形成用ブランケット。
【請求項2】
前記硬質基材の凸部の幅は、前記軟質基材の表面に塗布されるインクを形成するパターンに対応して残すための版の凹部の幅より広い
請求項1記載の転写パターン形成用ブランケット。
【請求項3】
前記凸部の位置に対応する前記軟質基材の厚さは、前記凸部に隣接する位置に対応する前記軟質基材の厚さの1/3〜1/4である
請求項1または2記載の転写パターン形成用ブランケット。
【請求項4】
前記硬質基材における前記凸部に隣接する平坦領域が前記凸部の端部から1mm以上設けられている
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の転写パターン形成用ブランケット。
【請求項5】
前記軟質基材は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)である
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の転写パターン形成用ブランケット。
【請求項6】
凸部が形成された硬質基材と当該硬質基材より軟らかい軟質基材とが貼り合わされ、前記凸部の位置の前記軟質基材の厚さが他より薄く設けられたブランケットを用い、前記軟質基材の表面にインクを塗布する塗布工程と、
形成するパターンの位置に凹部が設けられた版を用い、当該版の凹部と前記ブランケットの凸部との位置を合わせるようにして当該版と前記ブランケットとを互いに向かい合わせ、これらを加圧接触させることにより、前記ブランケットのインクのうち前記版の凹部に対応する部分のみを前記ブランケット側に残して転写させる第1転写工程と、
前記第1転写工程後のブランケットと、パターンを形成する基板とを互いに向かい合わせるとともに、これらを加圧接触させることにより、前記ブランケット上に残っているインクを前記基板上に転写させる第2転写工程と
を有する転写パターン形成方法。
【請求項7】
インクが塗布されたブランケットを保持する第1のステージと、
前記ブランケットと対向して配置される版もしくは前記インクのパターンを転写される基板を保持する第2のステージと、
前記ブランケットを前記版の方向へ加圧する加圧手段とを備え、
前記ブランケットとして、
凸部が形成された硬質基材と、
前記硬質基材より軟らかい材質から成り、前記硬質基材と貼り合わされ、前記硬質基材の凸部の位置の厚さが他より薄く設けられた軟質基材とを有するものが用いられている
転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−143103(P2010−143103A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323365(P2008−323365)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】