説明

転写フィルム

【課題】 口紅や化粧筆、筆記具など、比較的曲率半径の比較的小さい軸筒の表面に前記の転写フィルムを巻回させた場合には、各層間に若干の位置ずれ発生し、白色隠蔽層が絵柄層から露出してしまう危険性があった。ここで、転写フィルムの始端の表面に転写フィルムの終端が被覆されている場合には、仮に前記の白色隠蔽層が露出していても、その白色隠蔽層は被覆される部分によって隠蔽され見えなくなっている。しかし、長期的な使用によって、その被覆されている部分が剥離してしまうと、白色隠蔽層が出現し、見えるようになってしまい、前記剥離による見栄えの悪さをさらに助長させてしまっていた。
【解決手段】 湾曲した部材の表面に転写される転写フィルムにおいて、その転写フィルムが少なくとも接着層と白色隠蔽層と絵柄層と剥離層とからなりと共に、前記白色隠蔽層の大きさを絵柄層の大きさよりも小さくした転写フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した部材の表面に転写される転写フィルムにおいて、その転写フィルムが少なくとも接着層と白色隠蔽層と絵柄層と剥離層とからなる転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
加飾が施された転写フィルムの1例として、接着層の表面にアンカー層を配置し、そのアンカー層の表面に白色隠蔽層を配置し、その白色隠蔽層の表面に絵柄層を配置した転写フィルムが知られている。
また、前記白色隠蔽層は、その表面に配置されている絵柄層を際立たせるために配置されている。そこで、一般的には、白色隠蔽層の大きさと絵柄層の大きさを同等とするか、或いは、寸法上のばらつきを考慮して、白色隠蔽層の大きさよりも絵柄層の大きさを約0.5mm〜1.0mm程度の範囲で小さくしている。即ち、絵柄層は、白色隠蔽層の内側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52999号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、白色隠蔽層の大きさよりも絵柄層の大きさを小さくしているため、転写した際に、白色隠蔽層が絵柄層から露出してしまい、具体的には、白色隠蔽層が線状となって露出してしまい、その結果、外観の見栄えを著しく悪くしてしまっていた。
また、白色隠蔽層の大きさと絵柄層の大きさが同等なものであっても、口紅や化粧筆、筆記具など、比較的曲率半径の比較的小さい軸筒の表面に前記の転写フィルムを巻回させた場合には、各層間に若干の位置ずれ発生し、白色隠蔽層が絵柄層から露出してしまう危険性があった。ここで、転写フィルムの始端の表面に転写フィルムの終端が被覆されている場合には、仮に前記の白色隠蔽層が露出していても、その白色隠蔽層は被覆される部分によって隠蔽され見えなくなっている(図4参照)。しかし、長期的な使用によって、その被覆されている部分が手脂などによって剥離してしまうと、前記の白色隠蔽層が出現し、見えるようになってしまい、前記剥離による見栄えの悪さをさらに助長させてしまっていた。特に、絵柄層の色が濃い場合には、露出した白色隠蔽層が際立ってしまい、より一層、見栄えを悪くしてしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、湾曲した部材の表面に転写される転写フィルムにおいて、その転写フィルムが少なくとも接着層と白色隠蔽層と絵柄層と剥離層とからなると共に、前記白色隠蔽層の大きさを絵柄層の大きさよりも小さくしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、湾曲した部材の表面に転写される転写フィルムにおいて、その転写フィルムが少なくとも接着層と白色隠蔽層と絵柄層と剥離層とからなりと共に、前記白色隠蔽層の大きさを絵柄層の大きさよりも小さくしたので、白色隠蔽層が絵柄層から露出することがなく、もって、外観見栄えが良好な転写フィルムを提供することができる。
また、転写フィルムを円筒状の部材に巻回し、万が一、剥離したとしてしまっても、白色隠蔽層が露出しないため、外観見栄えの損傷を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の1例を示す転写フィルムの縦断面図
【図2】図1のA―A線断面図。
【図3】転写フィルムを円筒状の部材に転写した縦断面図。
【図4】従来の技術を示す要部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1例を図1に示し説明する。参照符号1は、転写フィルム2が巻回されるボールペンやシャープペンシルなどの円筒状の軸筒である。
前記転写フィルムについて説明する。接着層3の表面には、その接着層3への手脂や水分などの侵入を防止するアンカー層4が配置されている。そのアンカー層4の表面には、白色隠蔽層5が配置されており、その白色隠蔽層5の表面にはその白色隠蔽層5よりも大きい絵柄層6が配置されている。具体的に説明すると、前記白色隠蔽層5の巻回される方向と直行する端部5aは、絵柄層6の端部6aよりも約0.3mm内側に位置しているが、0.1mm〜0.5mmの範囲であれば良い。また、巻回され方向と平行な端部5b、6bは、双方共に、その面が一致している。
前記絵柄層6には文字や絵柄などの模様が施されている。そして、その絵柄層6の表面には、剥離層7が配置されており、その剥離層7の表面には、転写終了後に除去されるフィルム8が配置されている。
尚、接着層3への手脂などの侵入をさらに防止するために、前記アンカー層4と白色隠蔽層5との間に、耐油性に優れた耐油バリア層を介在させても良い。
これら、接着層3やアンカー層4、白色隠蔽層5、絵柄層6などで構成される転写フィルム2が軸筒1に巻回され転写される。そして、その転写フィルム2の始端2aの近傍の表面、具体的には、剥離層7の始端7aの表面近傍領域には、転写フィル2の終端2b、具体的には、接着層3の終端3aの近傍領域が被覆している。
【0009】
ここで、前記接着層3の基本的な組成は、高分子材料、粘着付与剤、固体可塑剤から成る。常温では粘着性がないが加熱によって粘着性がでて、それが冷却後もかなりの時間持続する接着層である。ここで、前記高分子材料は接着力を与える成分であり、ポリ酢酸ビニル、コポリエチレン−酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル系、ポリ塩化ビニル系、天然ゴム、合成ゴム、コポリ酢酸ビニル−アクリル酸エステル、ポリエステル系、ポリウレタン系等の高分子化合物類である。粘着付与剤は加熱により活性化された際に粘着性を増強するための成分であり、ロジン誘導体、テルペン樹脂系、石油樹脂系、フェノール樹脂系、キシレン樹脂系等の樹脂類である。
また、前記固体可塑剤は、常温で固体であって、その融点以上に加熱させると溶解し、高分子材料や粘着付与剤を膨潤・溶解し、粘・接着性を発現させ、一旦溶解した後はなかなか結晶化しないで、熱活性化後の粘着保持時間を長くとることができる。具体例としては、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、イソフタル酸ジメチル、安息香酸スクロース、ジ安息香酸エチレングリコール、トリ安息香酸トリメチロールエタン、トリ安息香酸グリセリド、テトラ安息香酸ペンタエリエット、オクタ酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−P−トルエンスルホンアミド等である。
この接着層3の厚さとしては、0.5μm〜300μmの範囲であればよいが、0.5μm〜10μmとするのが好ましい。10μmを超えると、転写後に段差が確認されやすくなってしまう。
【0010】
前記アンカー層4は、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニロン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリアミド系樹脂を挙げることができ、各層との密着性に応じて、適宜、好ましい材料を選択する。
このアンカー層4の厚さとしては、0.5μm〜50μmの範囲であればよいが、0.5μm〜5μmとするのが好ましい。5μmを超えると、転写後に段差が確認されやすくなってしまう。
【0011】
前記白色隠蔽層5は、二酸化チタン等の白色不透明顔料とバインダーとして、ワックス、樹脂及び分散剤等の添加剤とからなる。
この白色隠蔽層5の厚さとしては、0.5μm〜50μmの範囲であればよいが、0.5μm〜5μmとするのが好ましい。5μmを超えると、転写後に段差が確認されやすくなってしまう。
尚、5μm以下の薄い層の厚さに白色不透明にするには、一般的に、白色隠蔽層中の顔料濃度を高くする必要がある。これにより、相対的にバインダー樹脂が少なくなるため、汗や溶剤に侵されやくなる傾向にある。また、汗や溶剤などは、表層からの侵入により、層の断面から侵入しやすいことも知られている。
そこで、本実施例においては、白色隠蔽層をアンカー層と絵柄層とで挟み込んでいるため、汗や溶剤などが侵入しにくい構成を採っている。
【0012】
前記絵柄層6は、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂等のバインダーに各色の顔料を添加し、さらに必要に応じて、可塑剤、安定剤、ワックス、乾燥剤、硬化剤、増粘剤等を添加した後、溶剤あるいは希釈剤で十分に混練した着色塗料あるいはインキを用いて、公知の塗布方法、印刷方法により形成することができる。
この絵柄層6の厚さとしては、0.5μm〜50μmの範囲であればよいが、0.5μm〜5μmとするのが好ましい。5μmを超えると、転写後に段差が確認されやすくなってしまう。
【0013】
前記剥離層7は、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂の1種又は2種以上を用いる。
この剥離層7の厚さとしては、0.5μm〜50μmの範囲であればよいが、0.5μm〜2.0μmとするのが好ましい。2.0μm以上であると、印刷時にバリが発生し易くなってしまい、生産性が落ちてしまうこともある。
【0014】
前記フィルム8は、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、セロハンなどのプラスチックフィルムや紙、あるいはこれらの複合フィルムなど、通常の転写シートの基体シートとして用いられるものを使用する。基体シート2表面にメラミン樹脂などをコートするようにして離型処理が施されていてもよい。
このフィルム8の厚さとしては、12μm〜50μmの範囲であればよい。
【0015】
尚、前記耐油バリア層としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂を用いるとよい。これらの硬化性樹脂を硬化させる手段としては、加熱、紫外線照射、電子線照射などの方法がある。
また、この耐油バリア層を剥離層7として使用しても良く、その剥離性を有する耐油バリア層(剥離層7)としては、紫外線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂からなるものなどがある。
【符号の説明】
【0016】
1 軸筒
2 転写フィルム
3 接着層
4 アンカー層
5 白色隠蔽層
6 絵柄層
7 剥離層
8 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した部材の表面に転写される転写フィルムにおいて、その転写フィルムが少なくとも接着層と白色隠蔽層と絵柄層と剥離層とからなりと共に、前記白色隠蔽層の大きさを絵柄層の大きさよりも小さくした転写フィルム。
【請求項2】
前記湾曲した部材が円筒状であって、その円筒状の部材に転写フィルムを巻回させると共に、その転写フィルムの始端の上面に終端を被覆させた転写フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251413(P2011−251413A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124975(P2010−124975)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】