説明

転写ローラ

【課題】良好な導電性を有し、かつ、環境依存性およびブルームが低減された転写ローラを提供することを課題とした。
【解決手段】上記の課題は、導電性芯材および導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層をを備えるローラにおいて、前記樹脂層が極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂混合物であって、該熱可塑性樹脂混合物には、さらに以下の(あ)および(い)が含有していることを特徴とする転写ローラ。
(あ)金属塩、
(い)−[O(AO)]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH基である有機化合物で解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の複写機およびプリンタに用いられる転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの電子写真装置における画像形成では、感光ドラムを均一に帯電させる帯電工程と、帯電された感光ドラムに露光して感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光工程と、静電潜像の形成された感光ドラムにトナーを付着させそれを紙上に転写して像を形成する転写工程と加熱・加圧を施して紙上にトナー像を定着させる定着工程とを基本的に含んでいる。
転写工程では感光ドラム上のトナー画像はコロナ転写方式やローラ転写方式によって紙上に転写されるが、コロナ転写方式ではコロナ放電にともなうオゾンの発生等の問題が生じるため、近年ではローラ転写方式が多く用いられている。このローラ転写方式に使用される転写ローラとしては、従来からゴムやエラストマなどの弾性材料にカーボンブラック、リン酸エステルの添加(特許文献1)、チタン酸カリウイスカ(特許文献2、3)等の導電性添加剤を配合した中抵抗を有する弾性ロールが使用されている。また、ゴム材料そのものを検討した特許文献4等もある。
【0003】
しかし、ゴム材料やエラストマ材料では、ローラの構成物質がローラから染み出して(ブリードアウト)感光ドラムに付着し、付着が進行するとドラムの汚染現象が生じて画像品質が低下させるという問題があり、表面へのブリードアウトを抑制するための保護層を設けた2層構造のローラ(例えば、特許文献5)によって解決されているが、製造工程の煩雑さおよびコスト高という新たな課題が生じている。
【0004】
また、転写ローラが長時間感光ドラムと接触した状態で放置されることによって永久変形が生じる問題がある。これらの問題点は弾性の比較的小さい熱可塑性樹脂材料を使用することで解決できるが、カーボンブラック等の導電性添加剤は温度安定性が悪く、熱可塑性樹脂に均一に分散させることが困難なため、良好でかつ均一な導電性を得ることはできなかった。その結果、得られる転写ローラは、転写性能が充分ではないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−192486号公報
【特許文献2】特開昭63−086205号公報
【特許文献3】特開平8−120176号公報
【特許文献4】特開平11−181286号公報
【特許文献5】特開2004−021019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記したような課題を解決することであり、その目的とするところは、良好な導電性(転写性能)を有し、かつ、環境依存性およびブリードアウトが低減された転写ローラを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
(1)導電性芯材および導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラにおいて、前記樹脂層が極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂混合物であって、該熱可塑性樹脂混合物には、さらに以下の(あ)および(い)が含有していることを特徴とする転写ローラ。
(あ)金属塩、
(い)−[O(AO)]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH基である有機化合物、
(2)さらに、熱可塑性樹脂混合物にカーボンブラックを熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、5重量部〜50重量部含有している上記(1)に記載の転写ローラ。
(3)金属塩がアルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成される上記(1)または上記(2)に記載の転写ローラ。
で解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂混合物に金属塩と有機化合物を含有させた組成物を、導電性芯材の外周に樹脂層として形成させているので、導電性(転写性能)が良好で、ブリードアウトを生じさせず、しかも環境依存性が抑制された転写ローラを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の転写ローラは、導電性芯材および導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラにおいて、前記樹脂層が極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂混合物であって、該熱可塑性樹脂混合物には、さらに(あ)金属塩、および(い)−[O(AO)]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH基である有機化合物が含有していることを特徴とする。本発明では、上記樹脂層を有することで、良好な帯電性を有し、ブリードアウトを抑制し、環境依存性が抑制された転写ローラを実現することができる。
【0010】
ここで、「良好な導電性」とは、樹脂層の体積抵抗率が1×10Ω・cm未満(好ましくは、1×10Ω・cm〜1×10Ω・cm)であることを指す。体積抵抗率が1×10Ω・cm以上であると、転写効率が悪くなり良好な転写性能が得られない。該体積抵抗率は、例えば、転写ローラに金属箔を巻きつけ、転写ローラの導電性芯材より直流電流を印加し、直列に接続した電流計の値から計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚(樹脂層の肉厚)から、体積低効率を換算する。
【0011】
また、本発明の構成とすることで、長時間(1000時間〜10000時間程度)使用してもブリードアウトする物質もなく、また、感光ドラムに接触する部分の永久変形も生じにくい。さらに、本発明の転写ローラは、環境依存性に優れ、高温高湿(50℃×80%RH:HH)と低温低湿(10℃×15%RH:LL)での体積抵抗率の比(LL/HH)が30以下(好ましくは15以下)で、安定した導電性(転写性能)を得ることができる。このため、ブリードアウトを防止するための層や環境から保護するための層を設ける必要もなく、1層という簡略な構成にて転写ローラを実現することも可能である。このように導電性芯材と該導電性芯材の外周に隣接してこれを覆う単層の樹脂層という形態にて実現すると、製造工程を最小限に抑えつつ高品位な転写ローラを形成することができるので好ましい。
【0012】
本発明の転写ローラに使用される導電性芯材の形成材料としては、当分野で金属芯材として従来から使用されている鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを特に制限なく用いることができる。中でも、強度、コスト、加工性の観点から、鉄または鉄合金(具体的には、炭素鋼、ステンレス鋼)製の導電性芯材を使用するのが好ましい。
【0013】
本発明の転写ローラの樹脂層に使用される樹脂材料としては、成形性の観点、リサイクル性の観点から熱可塑性樹脂が好ましく、その中でも導電性(転写性能)の観点より、極性基を有する熱可塑性樹脂(以下、「成分(A)」ということがある。)を含有する熱可塑性樹脂混合物であることが好ましい。
上記成分(A)としては、分子構造内に極性基を有するものであれば特に制限されない。極性基としては、例えば、アミド基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。成分(A)としては、具体的には、ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA樹脂)、ポリエステルエラストマ、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマ、ポリアミドエラストマ、などが例示され、中でも、熱可塑性エラストマであるポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエラストマ、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマまたはポリアミドエラストマが好ましく、ポリエーテルエステルアミド樹脂が導電性(転写性能)の点で特に好ましい。
【0014】
上述したように本発明における樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、上記成分(A)を含有する熱可塑性樹脂混合物であるのが好ましいが、かかる熱可塑性樹脂混合物における成分(A)以外の熱可塑性樹脂(以下、「成分(B)」という)としては、成分(A)として上述した中で採用した以外の熱可塑性樹脂(極性基の有無は問わない)であれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、などのポリα−オレフィン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のα−オレフィン同士もしくはα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体;ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンオキシド等の芳香族ポリエーテル;ポリカーボネート:ポリイミド;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのスルホン系ポリマーなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも樹脂層の耐衝撃性、耐クリープ性、温熱安定性、易成形性などの物性に優れることから、ABS樹脂を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂混合物を構成する成分(A)および成分(B)の好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルエラストマ、脂肪族ポリエステル、ポリウレタンエラストマ、ポリアミドエラストマより選ばれた1種以上と、ABS樹脂との組み合わせが挙げられる。中でも、PEEA樹脂とABS樹脂との組み合わせが導電性(転写性能)と耐衝撃性、耐クリープ性、温熱安定性、易成形性とのバランスがとれた転写ローラが得られる点で特に好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂混合物において、成分(A)と成分(B)との混合割合は特に制限されるものではないが、成分(A):成分(B)=3〜25:75〜97(重量比)であるのが好ましく、成分(A)の重量比が3より小さいと充分な導電性(転写特性)が得られ難くなる傾向にあり、成分(A)の重量比が75を超えると成形性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明に使用する金属塩としては、カチオン成分として金属(好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)を用いたものが好ましい。かかるカチオン成分としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Caなどが挙げられる。カチオンとしては、導電性が得られ易いことから、イオン半径の小さいLi、Na、Kが好ましい。
また、本発明における金属塩は、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成されるのが好ましい。上記アニオン成分としては、例えば、Cl、Br、F、I、NO、SCN,ClO、CFSO、BF、(CFSO、(CFSO、などが挙げられ、中でもClO、CFSO、BF、(CFSO、(CFSOが好ましい。
上記カチオン成分およびアニオン成分によって構成される金属塩としては、具体的には、LiClO、NaClO、Mg(ClO、KClO、LiCFSO、LiN(CFSO、NaN(CFSO、LiC(CFSO、NaC(CFSOが挙げられ、中でも体積抵抗率を制御し易い点から、LiClO、LiCFSO、LiC(CFSOが好ましい。なお本発明においては、上述した中から選ばれる2種以上の金属塩を使用してもよい。
【0018】
上記金属塩の配合量に制限はなく、使用する熱可塑性樹脂混合物、上記カチオン成分およびアニオン成分の組み合わせによって適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し0.01重量部〜20重量部であるのが好ましく、5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。金属塩が熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、0.01重量部未満であると、導電性の効果が得られ難くなる傾向にあり、また熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、20重量部を超えても、導電性の特性が飽和状態となって顕著な導電性向上を得難い傾向にある。
【0019】
本発明に使用する有機化合物としては、−{O(AO)}−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH基)を有するものであれば特に制限はない。
具体的には、以下の一般式(1)〜(3)で表される少なくともいずれかの有機化合物が好適である。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
[上記一般式(1)〜(3)中、Rは、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基、および、炭素数2〜9の直鎖または分岐のアシル基のうちいずれか1種を示し、同一でも異なっていてもよい。Aは同一または異なる炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは同一または異なる1〜7の整数である。また、Xは炭素数2〜10からなる、アルキレン基、芳香族基を含む炭化水素基、または脂環式炭化水素基、Yは炭素数6〜10からなる、芳香族基を含む炭化水素基である。]
中でも特に、トリエチレングリコールジアセチルまたはアジピン酸ジブトキシエトキシエチルが好適である。
【0024】
また、上記有機化合物の配合量についても特に制限はないが、熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し0.03重量部〜15重量部であるのが好ましく、0.5重量部〜10重量部であるのがより好ましい。上記有機化合物が熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し0.03重量部未満であると、金属塩のブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあり、また上記有機化合物が熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し15重量部を超えても、上記ブリードアウト抑制の効果が低減する傾向にあるためである。
【0025】
本発明の転写ローラの樹脂層には、導電性を安定させるために、さらにカーボンブラックを含有させてもよい。使用するカーボンブラックブラックとしては、一般に使用されるものであれば特には限定はない。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独または2種類以上組み合わせて用いられる。中でも、比較的少量の配合量(熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、5重量部〜15重量部)であっても1×10Ω・cm未満の上記体積抵抗率を達成できることからアセチレンブラックが好ましい。少量の配合の場合、成形が良好に行われる。
【0026】
上記カーボンブラックの配合量に制限はなく、用いる熱可塑性樹脂混合物、金属塩、有機化合物の組み合わせによって適宜決定すればよいが、熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し5重量部〜50重量部であるのが好ましく、15重量部〜20重量部であるのがより好ましい。カーボンブラックの配合量が熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、5重量部未満であると、体積抵抗率が最適な値に安定しない傾向があり、また熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し50重量部を超えると、環境依存性が顕著に発現する傾向になり、成形性が低下する傾向にある。
【0027】
本発明の転写ローラにおいては、上述したような熱可塑性樹脂混合物、金属塩および有機化好物、を少なくとも含有する組成物(さらに、カーボンブラックを適宜含有させた組成物)を、上述した導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層として形成する。ここで、「導電性芯材の外周を覆う」とは、樹脂層が導電性芯材の外周面に隣接してこれを被覆するように形成されていてもよく、導電性芯材との間に他の層(導電性を有する層)を介在した構造で導電性芯材を覆うように形成されていてもよいことを指すが、製造工程簡略化できることから、導電性芯材に隣接してこれを覆う単層の樹脂層として形成されるのが好ましい。なお、上記「円筒状」は、その軸線方向におけるいずれの断面もが略合同な円形である中空の形状をいう。
【0028】
本発明の転写ローラの製造方法に特に制限はなく、当分野において従来公知の手法にて製造することができる。例えば、熱可塑性樹脂混合物(成分(A)、成分(B)と金属塩、有機化合物を少なくとも含有する組成物を、バンバリミキサ、ロール混練機などの公知の混練機を用いて混練したあと、公知の射出成形機にて導電性芯材の外周を覆う樹脂層として射出成形することで、製造することができる。なお上述のように導電性芯材の外周に隣接して単層の樹脂層を形成することで、製造工程を最小限で実施することができ、製造コストも低く押さえることができるという利点もある。
【0029】
本発明における金属塩の良好な分散性を実現し得る観点からは、予め、熱可塑性樹脂混合物と上記金属塩と有機化合物(さらには、カーボンブラック)とからなるマスターバッチを作製しておき、該マスターバッチを熱可塑性樹脂混合物と混合させると金属塩の分散性が向上するので好ましい。
また、射出成形の条件に特に制限はないが、通常200℃〜250℃の成形温度、50mm/秒〜150mm/秒の射出速度の各範囲内で成形を行う。
【0030】
本発明の転写ローラは、その長さ、ロール径(外径)。シャフト径(内径)などに特に制限はなく、適用する複写機などに応じて適宜選択すればよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック5重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0032】
(実施例2)
アセチレンブラックの配合量を15重量部とした以外は実施例1と同様にして、転写ローラのサンプルを作製した。
【0033】
(実施例3)
アセチレンブラックの配合量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして、転写ローラのサンプルを作製した。
【0034】
(実施例4)
アセチレンブラックの配合量を40重量部とした以外は実施例1と同様にして、転写ローラのサンプルを作製した。
【0035】
(実施例5)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiCFSO(金属塩)7重量部、トリエチレングリコールジアセチル(有機化合物)5重量部、ケッチェンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0036】
(実施例6)
ポリエチレン85重量部、PEEA樹脂15重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiCFSO(金属塩)7重量部、トリエチレングリコールジアセチル(有機化合物)5重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0037】
(実施例7)
ABS樹脂95重量部、PEEA樹脂5重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0038】
(実施例8)
ABS樹脂の配合量を78重量部、PEEA樹脂の配合量を22重量部とした以外は実施例1と同様にして、転写ローラのサンプルを作製した。
【0039】
(実施例9)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)3重量部、LiCFSO(金属塩)2重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック20重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0040】
(実施例10)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック50重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0041】
(実施例11)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)3重量部、LiCFSO(金属塩)2重量部、トリエチレングリコールジアセチル(有機化合物)1重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラックを20重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0042】
(実施例12)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0043】
(比較例1)
ABS樹脂100重量部のみからなる組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラを作製した。
【0044】
(比較例2)
ABS樹脂100重量部に対し、LiClO(金属塩)15重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0045】
(比較例3)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アセチレンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0046】
(比較例4)
ABS樹脂90重量部、PEEA樹脂10重量部からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対し、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0047】
(比較例5)
ABS樹脂100重量部に対し、LiClO(金属塩)5重量部、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(有機化合物)3重量部、アセチレンブラック15重量部を混合した組成物を、バンバリーミキサで混練した後、ステンレス鋼製の金属芯(導電性芯材)上に射出成形(温度:230℃、射出速度:100mm/秒)し、ロール径12mm(シャフト径:8mm、長さ350mmの転写ローラのサンプルを作製した。
【0048】
(評価試験)
上記で作製した実施例1〜12、比較例1〜5の転写ローラのサンプルについて、以下の手順で測定し、(1)〜(3)全ての基準を満足するものを合格とし、いずれか1つでも満足しないものを不合格と総合判定した。表1に結果を示す。
【0049】
(1)体積抵抗率(測定条件:温度23℃、湿度50%RH)
各サンプルに金属箔を巻きつけ、導電性芯材(金属芯)から100Vの直流電圧を印加し、直列に接続した電流計の値の読みから計算して抵抗値を求め、金属箔の面積、ローラ被覆厚から体積抵抗率を換算した。1×10Ω・cm未満であったものを合格とした。
【0050】
(2)ブリードアウト
各サンプルを40℃×90%RH雰囲気中に7日間放置し、その後、目視によってローラ表面のブリードアウトの有無を判定した。
【0051】
(3)耐環境性
LL(低温低湿=10℃×15%RH)およびHH(高温高湿=50℃×80%RH)雰囲気での体積抵抗率(Ω・cm)を測定(方法は上記と同じ)する。LL/HHを求め、その値が0.033〜30のものを合格とした。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材および導電性芯材の外周を覆う円筒状の樹脂層を備えるローラにおいて、前記樹脂層が極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂混合物であって、該熱可塑性樹脂混合物には、さらに以下の(あ)および(い)が含有していることを特徴とする転写ローラ。
(あ)金属塩、
(い)−[O(AO)]−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、かつ分子鎖末端がCH基である有機化合物、
【請求項2】
さらに、熱可塑性樹脂混合物にカーボンブラックを熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、5重量部〜50重量部含有している請求項1に記載の転写ローラ。
【請求項3】
金属塩がアルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンおよびイオン解離可能なアニオンとによって構成される請求項1または請求項2に記載の転写ローラ。





【公開番号】特開2006−91581(P2006−91581A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278361(P2004−278361)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】