説明

転写具用転写テープ

【課題】粗面の被転写体に対して粘着剤を低い押圧力でも確実に転写することができると共に、糸引きが生じることがない転写具用転写テープを提供する。
【解決手段】筐体内に設けられた、両面に離型処理が施されると共に該両面のうち一方面に較べて他方面の剥離強度が高い設定とされた基材の該一方面に粘着剤が塗布された転写テープを巻装した送出軸と、粘着剤を転写した後の基材を巻装する巻取軸と、筐体外に設けられた、粘着剤を被転写体に転写するための転写部とを備え、前記転写部を被転写体に押しつけた状態で全体を移動させて被転写体に粘着剤を転写し、所望の箇所で転写具全体を被転写体から離間させることで粘着剤を被転写体側と基材側との間で破断する転写具に用られる転写テープであって、粘着剤に弾性のある5〜60μmの平均粒径の中空樹脂粒子を0.3〜7.0wt%含有していることを特徴とする転写具用転写テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面の被転写体に対して低い押圧力で転写しても粘着剤を確実に該粗面の凹部に転写することができると共に、使用者の押圧力のばらつきを吸収することができ、さらには、粘着剤が基材と被転写体との間で糸を引いたような状態になることを防止できる転写具用転写テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着性を有する塗剤を基材上に塗布した転写テープが知られている。この転写テープは、転写テープの基材上の粘着剤を被転写体に転写し、基材を筐体内へ収容する転写具にて専ら用いられることも知られている。
【0003】
転写具は、未だ使用していない転写テープを巻装した送出軸と、粘着剤を転写した後の基材を巻き取る巻取軸とを筐体内に有し、粘着剤を被転写体に転写する転写部を、該送出軸と巻取軸との転写テープの搬送経路の途中箇所の筐体外に設けた構成とされている。
【0004】
上記構成の転写具は、転写部を被転写体に押しつけた状態で、全体を移動させて被転写体に粘着剤を転写し、所望の箇所で転写具(全体)を被転写体から離間させることで、転写部において基材上の粘着剤が被転写体側と該転写テープ側との間で破断する。
【0005】
転写具の普及が進み、例えば比較的粗い表面性状の被転写体に対しても使用されるようになってきている。また、使用に関しては、被転写体の表面性状によらず、該被転写体に強い押圧力を加える、比較的弱い押圧力を加える、早く移動させる、ゆっくり移動させる、といったように常にばらつきがある。
【0006】
ここで、粗い表面性状の被転写体において、比較的弱い押圧力を加えて使用する場合は被転写体の粗面の凹部にまで粘着剤が届かず、浮いた状態となり粘着剤の適正な転写が行えないという不具合がある。この点を解消するために、例えば以下の特許文献1,2が提案されている。
【0007】
特許文献1,2では、転写具側において柔軟性を有した転写部構成として、転写部を被転写体の粗面凹部へ追従(凹部形状に転写テープが倣う)ようにしている。ところが、特許文献1,2のような手法では、単に転写部が柔軟なだけで、粗面凹部に対して大きすぎて変形した転写部が粗面凹部に到達せず、結果、転写テープの粘着剤を粗面凹部にまで届かせることができない。
【0008】
そこで、粗面凹部へ追従させるべく、粘着剤に柔軟性を持たせることが想定され、粘着剤の塗布厚を大きくしたり、柔軟性の高い粘着剤を用いることも試みられた。しかし、柔軟性を有した粘着剤を転写具に用いた場合、所望の位置で粘着剤を破断しようとしても容易に破断できず、被転写体側と基材側との間で糸を引いた状態になることがある(以下、この現象を「糸引き」という)。
【0009】
糸引きが生じると、例えば被転写体側に糸引きの終端を有する場合は、被転写体において糸引きの終端部が集合した団子状の塊が生じ、被転写体と貼着体との貼着状態に段が生じたり、隙間が生じたりして良好に貼着できない。
【0010】
一方、例えば基材側に糸引きの終端を有する場合も同様に、次に使用する際に、上記団子状の塊が被転写体に転写されてしまったり、ときには所望の位置から粘着剤を転写開始することができない場合も生じる。さらには、転写具自体に粘着剤が付着して走行に悪影響を及ぼす虞がある。
【0011】
糸引きを生じないように、つまり粘着剤の破断性の向上を図る点だけに関しては、例えば特許文献3〜6に、いずれも粘着剤中に破断性を向上させる物質、すなわち特許文献3はガラス質の発泡球粒子を、特許文献4,5は中空状の発泡球粒子を、特許文献6は針状粒子を、各々粘着剤に混入させることが提案されている。
【0012】
ところが、特許文献3,6は、ガラス質の発泡球粒子(特許文献3)、針状粒子(特許文献6)、自体の弾力性に乏しいために糸引きの解消は可能であっても粗面の凹部への粘着剤の追従性が乏しいという問題がある。
【0013】
特許文献4,5は、中空状の発泡微粒子を混入させている点で粗面凹部への追従性に期待できる反面、転写具に用いる転写テープではないので、次の問題がある。
【0014】
特許文献4,5は、切断具による切断性を良好にしたり切断部位から粘着剤がはみ出す点を改善することを目的としている。つまり、該特許文献4,5固有の前記目的の達成に関しては、基材ごと粘着剤を切断する切断具の関係が大きく影響し、切断具を用いない転写具固有の問題である糸引きを解消できない可能性がある。
【0015】
転写具は、前述のように操作して、被転写体に粘着剤を押圧して転写した後に、粘着剤を破断するために転写具本体(筐体)を被転写体から離間させて、被転写体側の粘着剤と筐体側の粘着剤とをいわば引きちぎるようにして行う。
【0016】
さらに、転写具の粘着剤は、被転写体に対しては該被転写体全面に強固に粘着しなければならない一方、巻装された基材に対しては容易に剥離しなければならず、粘着剤が接触する対象に対して相反する条件を満たさなければならない。
【0017】
粘着剤が基材からあまりにも容易に剥離すると、転写具における粘着剤を引きちぎるように破断しようとした際に、基材側に本来残留すべき粘着剤までも基材から剥離して、基材と被転写体との間に架け渡されたような糸引きが発生する。また、前記とは逆に基材からの剥離が困難であると、転写具における粘着剤の破断時に、基材側に粘着剤が残留しようとして餅を引き延ばしたような糸引きが発生する。
【0018】
以上のことから、糸引きは粘着剤を引きちぎるようにして基材と被転写体と間で破断するという用途上の操作が影響する点で転写具の固有の問題であって、特許文献4,5は、粘着剤が基材ごと切断具で切断される点及び切断具の能力も関係する点でそもそも糸引きの問題は論外である。
【0019】
また、特許文献4,5は、転写具用の粘着剤に関してではないので、長尺化を図るべく、巻装状態では粘着剤(層)の厚みを薄くする必要も、基材から剥離する必要も、基材から剥離後に粘着剤の両面で粘着機能を有している必要も、ないので制限事項は少ない。
【0020】
結果的に、特許文献4,5では、中空状の発泡微粒子を混入させていれば、該特許文献4,5自体の課題の解消及び目的や作用効果の実現は可能であるものの、糸引きを含め、その他の転写具の転写テープにおける課題の解決や上記制限事項を満たす点での期待ができないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】実開平5−54469号公報
【特許文献2】特開2005−59241号公報
【特許文献3】特開2006−219606号公報
【特許文献4】特開平1−215879号公報
【特許文献5】特開2003−206458号公報
【特許文献6】特開2003−113353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
解決しようとする問題点は、従来の構成では、粗面の被転写体の凹部に粘着剤を追従させようとして粘着剤の層厚を大きくしたり、柔軟性の高い粘着剤を用いると糸引きが生じる点、及び粘着剤に中空状の発泡微粒子を混入させるだけでは転写具の転写テープに生じる特殊な課題、特に糸引きが改善されるわけではない点、である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、筐体内に設けられた、両面に離型処理が施されると共に該両面のうち一方面に較べて他方面の剥離強度が高い設定とされた基材の該一方面に粘着剤が塗布された転写テープを巻装した送出軸と、粘着剤を転写した後の基材を巻装する巻取軸と、筐体外に設けられた、粘着剤を被転写体に転写するための転写部とを備え、前記転写部を被転写体に押しつけた状態で全体を移動させて被転写体に粘着剤を転写し、所望の箇所で転写具全体を被転写体から離間させることで粘着剤を被転写体側と基材側との間で破断する転写具に用られる転写テープであって、粘着剤に弾性のある5〜60μmの平均粒径の中空樹脂粒子を0.3〜7.0重量%含有したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、粘着剤に平均粒子径が5〜60μmの弾性のある中空樹脂材料を0.3〜7.0重量%混入させることで、弾力性により使用者による被転写体に対する押圧力のばらつきを吸収でき、また、粗面状の被転写体の凹部に該粘着剤を追従させることができ、使用感を安定させることができるという利点がある。
【0025】
また、本発明は、粘着剤に上記粒径の中空樹脂材料を上記量だけ含有することで、従前の粘着主成分を例えば変更、増量、などすることなく、上記のように使用感を安定させることができると共に、糸引きを抑制することができるという利点もある。
【0026】
さらに、本発明は、上記利点と共に、中空樹脂材料の混入による粘着力の低下を抑制することと、粘着剤(層)厚みの増加による送出軸における巻装量(粘着剤の使用可能量)の低下を抑制する、という両者のバランスを保つことができるという利点もある。
【0027】
また、トレーシングペーパーのような被転写体に粘着剤を転写した場合、透過状にならず(転写した部分が視認しにくい状態)に転写できるという利点もある。これは、中空樹脂材料が光を乱反射させることとなるためと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の転写具用転写テープの構成を示し、(a)は転写テープが用いられる転写具の概略図、(b)は転写テープの概略図、である。
【図2】図2は、本発明の転写具用転写テープの状況を示し、(a)は粗面状の被転写体に粘着剤が転写された状況を、(b)は粘着テープの破断時の状況を、説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の効果を確認するための実験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、使用者の押圧力のばらつきを吸収して粗面状の被転写体の凹部に粘着剤を追従させ、かつ糸引き発生を回避するという転写具で達成すべき目的を、転写具で用いられる転写テープの構成において、基材の粘着剤が塗布される側の面よりこの反対側の面が容易に剥離する設定とし、また、粘着剤に平均粒子径が5〜60μmの弾性のある中空樹脂材料を0.3〜7.0重量%含有させることにより実現した。
【0030】
すなわち、以下、図1及び図2を参照して説明する本発明の転写テープ1は、後に詳述するが、基材2上に粘着剤3が塗布されて構成されている。本発明の転写テープ1は、次の構成の転写具11で使用されることが前提とされている。
【0031】
転写具11は、図1(a)に示すように、筐体内に、該転写テープ1を巻装した送出軸12と、粘着剤3を転写した後の基材1を巻き取る巻取軸13と、該送出軸12と巻取軸13との転写テープ1の搬送経路の途中箇所に設けられ、該筐体外部に露出した転写部14とを備えている。
【0032】
転写具11により粘着剤3を被転写体Pに転写するには、転写部14を被転写体Pに押しつけつつ全体を(被転写体P上の)所望の箇所まで平面移動させて被転写体Pに粘着剤3を転写し、その後、所望の箇所で、該転写具11全体を被転写体Pから離間させることで、粘着剤3を被転写体P側と基材2側の間で破断する。
【0033】
転写テープ1の基剤2は、粘着剤3が容易に剥離するように表裏の両面にいわゆる離型処理が施されており、さらに表裏面で剥離度合いが異なっている。すなわち、基材2は、粘着剤3が塗布される側の面2A(以下、塗布面2Aという)より、この反対側の面(以下、裏面2B)が容易に剥離する設定とされる。
【0034】
この理由は、塗布面2Aには粘着剤3が塗布されているが、転写テープ1は転写具11において巻取軸13に巻装され、外周に位置する基材2の裏面2Bと内周に位置する粘着剤3とが接触している。つまり基材2は、巻装状態では塗布面2Aにも裏面2Bにも粘着剤3が接触していることとなる。
【0035】
転写テープ1は巻装状態から転写部14へ搬送される際、巻装状態にある基材2の裏面2Bから剥離して、このとき(基材2と粘着剤3の)転写テープ1が転写部14へ送られることとなる。
【0036】
ここで、巻装状態にある基材2の裏面2Bと塗布面2Aの粘着剤3の剥離強度が同じ、例えば裏面2Bを、塗布面2A(剥離強度:低=剥離しにくい)に合わせて同じにすると、巻装状態において基材2,2間に挟まれた粘着剤3が、転写部14へ送られる際に裏面2B側から剥離しにくいために該粘着剤3が巻装側に残ってしまう(裏面2Bに粘着剤3が存在する状態で転写テープ1が転写部14へ送られる)可能性がある。
【0037】
また、塗布面2Aの剥離強度を裏面2Bより高くした場合(塗布面2A>裏面2B)も上記同様、巻装状態において基材2,2間に挟まれた粘着剤3が、転写部14へ送られる際に塗布面2Aとの相対関係で剥離強度の低い裏面2B側に残る可能性がある。
【0038】
裏面2Bを塗布面2A(剥離強度:低)に合わせて同じとする場合、及び塗布面2Aの剥離強度を裏面2Bより高くした場合は、転写具11の転写テープ1として一切機能しないことを意味する。
【0039】
さらに、例えば塗布面2Aを、裏面2B(剥離強度:高=剥離しやすい)に合わせて同じにすると、巻装状態において基材2,2間に挟まれた粘着剤3が転写部14へ送られる際に塗布面2Aか裏面2Bのいずれからも容易に剥離してしまうために該粘着剤3が巻装側に残ってしまうか、基材2から浮いてしまう可能性がある。
【0040】
上記、塗布面2Aを裏面2B(剥離強度:高)に合わせて同じにする場合は、塗布面2Aに粘着剤3が載った状態(転写テープ1)で転写部14へ送り出される可能性はある。しかし、仮に転写部14へ転写テープ1が送り出されたとしても、被転写体Pに転写された粘着剤3の粘着力により、転写テープ1(基材2)側の破断される箇所の粘着剤3が引っ張られて、塗布面2Aから粘着剤3が剥離し、基材2と被転写体Pとの間で架け渡されたような糸引きが生じることとなる。
【0041】
以上のことから、基材2の剥離強度は、塗布面2A<裏面2B、つまり、裏面2Bの方が剥離しやすく、塗布面2Aは裏面2Bよりも剥離しにくくしている。基材2における塗布面2Aと裏面2Bの剥離強度は、例えばシリコーン系樹脂の種類(分子構造、分子量等)を選択したり、さらにシリコーン系樹脂を架橋するための触媒や架橋剤の種類や量を選択することにより架橋密度を調整することで異ならせた離型処理を施すことで高低差を設けている。そして、基材2の剥離強度は、粘着剤3の粘着強度に対して、例えば塗布面2A:裏面2B=1:2〜6の割合(※数値が大きいほど剥離しやすい)としている。
【0042】
また、転写テープ1における粘着剤3は、粘着成分に平均粒子径が5〜60μmで弾性があると共に粒形状の中空樹脂材料3Aを0.3〜7.0重量%含有させている。この中空樹脂材料3Aは、例えば樹脂材料の内部に中空部(気泡)が存在するものを用いる。
【0043】
また、中空樹脂材料3Aは、上記のように弾性を有した樹脂材料の内部に中空部(気泡)が存在するものであればよいが、特に、基材2への塗布時に70〜200℃の環境下で中空部分を膨張させて上記平均粒子径(基材2への塗布前には1〜40μmの平均粒径)となるものを採用することが望ましい。
【0044】
粒子径が熱膨張する上記中空樹脂材料3Aは、液状の低沸点炭化水素を熱可塑性高分子殻で包んで構成され、加熱により内部の炭化水素が気化し、この気化時の膨張により粒子径が膨張するという特性を有するものである。
【0045】
中空樹脂材料3Aは、熱膨張するもの(以下、熱膨張型という)を採用する方が、弾性樹脂材料の内部に中空部を予め有したもの(以下、内部中空型という)を採用するより、次の点で有利である。
【0046】
内部中空型の中空樹脂材料3Aは、予め上記の平均粒径の状態となっているので、内部中空型の中空樹脂材料3Aを配合して粘着剤3を作成したり、粘着剤3を基材2に塗布するという製造工程において、中空樹脂材料3Aを均一に分散させたり、均一に塗布しようとする際の難易度が高い。
【0047】
一方、熱膨張型の中空樹脂材料3Aは、上記の平均粒径となるのは、基材2に塗布した後、乾燥(加熱)時であり、基材2へ塗布する段階では、内部中空型の中空樹脂材料3Aより平均粒径の小さい状態で含有されている点で、均一に分散や塗布しやすく、設備が従来の制御のままでよいので、製造面で有利である。
【0048】
また、熱膨張型の中空樹脂材料3Aは、乾燥(加熱)時に5〜60μmに膨張するが、この際に中空を形成する樹脂殻(シェル)の膜厚が薄くなって弾力性が増すというメリットもある。ちなみに、樹脂殻の膜厚が厚いと弾性に欠け、膜厚が薄いと弾性に富む。
【0049】
中空樹脂材料3Aの平均粒子径は、5〜60μmの範囲内であることが好ましく、10〜50μmの範囲内とすることがより好ましい。60μmより大きいと弾力性が高すぎて使用者の使用圧力を過度に吸収してしまい大きな押圧力でなければ転写できない可能性があると共に、粘着力の均一性が損なわれる可能性がある。一方、5μmより小さいと十分な弾力効果が得られず粗面の被転写体Pに対して小さい押圧力では確実に転写できない可能性があると共に、糸引きが生じやすくなる。
【0050】
中空樹脂材料3Aの粘着成分に対する含有量は、転写性能との関係では0.3重量%より低いと、粗面状の被転写体Pの凹部Paに対する追従性が乏しくなると共に、使用者の押圧力のばらつきを吸収することができず、7.0重量%より高いと粘着剤3自体の粘着強度が低下するので、上記含有量としている。
【0051】
中空樹脂材料3Aの粘着成分に対する含有量は、上記基材2との関係では、0.3重量%より低いと破断性が乏しいと共に、基材2の塗布面2Aに残りやすいために、餅を引っ張ったような糸引きが生じやすくなり、一方、7.0重量%より高いと粘着力にやや欠けるため、被転写体Pにも基材2の塗布面2Aからも剥離しやすくなり、粘着剤3が基材2にも被転写体Pにも貼着せず、被転写体Pと基材2との間に架け渡されたような糸引きが生じやすくなる。
【0052】
ここで、本発明の転写テープ1の使用状況について説明する。本発明の転写テープ1は、上記構成の転写具11により上記条件下で使用される。図2(a)に示すように、使用者は転写具11を介した被転写体Pへの押圧力にばらつきがある。また、粗面状の被転写体Pは、表面に凹部Paが存在し、ここに粘着剤3を追従させる必要がある。
【0053】
本発明の転写テープ1は、高い押圧力の場合には中空樹脂材料3Aが変形し、該中空樹脂材料3Aで押圧力が吸収され、該中空樹脂材料3Aを介して粘着剤3の粘着成分が凹部Paに入り込み(追従して)、確実な転写が可能となる。
【0054】
本発明の転写テープ1において、特筆すべきは、通常又は低い押圧力の場合であっても、高い押圧力の場合と同様に、中空樹脂材料3Aは大きく変形しなくても、中空樹脂材料3Aを介して粘着剤3の粘着成分を凹部Paへ入り込ませる(追従させる)ことになり、この作用により確実に転写が可能となる点である。
【0055】
そして、本発明の転写テープ1は、破断時には、図2(b)に示すように、低い押圧力でも粘着剤3が、被転写媒体Pへ確実に転写されると共に、基材2(の塗布面2A)に残留(剥離しない)し、基材2と被転写体Pの両者の間への相対的な引張力により該中空樹脂材料3Aの部分の粘着剤3の層厚が薄くなり、この層厚が薄くなった粘着剤3の部位を中心に糸引きを生じることなく確実に破断できる。
【0056】
以下に、本発明の転写テープ1の効果を確認するために行った実験の結果を図3の表を参照して説明する。実施例、比較例構成、及び実験方法並びに評価方法は各々次のとおりである。なお、基材2は上記条件で全例同一としているので記していない。また、図3の表には、下記のうち粘着剤組成に関しては記していない。なお、転写テープの構成における中空樹脂材料の含有量(wt%)は、粘着剤の組成中の水分が基材塗布後の乾燥工程で蒸発した状態での換算量である。
【実施例1】
【0057】
(実施例1)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :0.14重量部
主粘着成分 :37.86重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :30.0μm(平均)
中空樹脂材料の含有量 :0.30wt% ※下限値
【実施例2】
【0058】
(実施例2)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :30.0μm(平均)
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt% ※略中央
【実施例3】
【0059】
(実施例3)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :3.08重量部
主粘着成分 :34.92重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :30.0μm(平均)
中空樹脂材料の含有量 :7.0wt% ※上限
【実施例4】
【0060】
(実施例4)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :5.0μm(平均) ※下限
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【実施例5】
【0061】
(実施例5)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :10.0μm(平均) ※好ましい下限
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【実施例6】
【0062】
(実施例6)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :50.0μm(平均) ※好ましい上限
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【実施例7】
【0063】
(実施例7)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :60.0μm(平均) ※上限
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【0064】
(比較例1)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :0.05重量部
主粘着成分 :37.95重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :30.0μm(平均)
中空樹脂材料の含有量 :0.11wt% ※下限を超える
【0065】
(比較例2)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :3.96重量部
主粘着成分 :34.04重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :30.0μm(平均)
中空樹脂材料の含有量 :9.0wt% ※上限を超える
【0066】
(比較例3)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :3.0μm(平均) ※下限を超える
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【0067】
(比較例4)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :1.32重量部
主粘着成分 :36.68重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :70.0μm(平均) ※上限を超える
中空樹脂材料の含有量 :3.0wt%
【0068】
(比較例5)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :3.96重量部
主粘着成分 :34.04重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :3.0μm(平均) ※下限を超える
中空樹脂材料の含有量 :9.0wt% ※上限を超える
【0069】
(比較例6)
○粘着剤組成
中空樹脂材料 :0.05重量部
主粘着成分 :37.95重量部(固形分換算)
粘着付与剤 :6.0重量部(固形分換算)
水 :56.0重量部
○転写テープ構成
基材塗布後坪量 :40.0g/m2
中空樹脂材料の粒径 :70.0μm(平均) ※上限を超える
中空樹脂材料の含有量 :0.11wt% ※下限を超える
【0070】
(実験方法)
幅が8.4mmの上記転写テープを転写部がローラ状となった転写具を用いて、ベック平滑度が28秒の粗面状の被転写体に対して、3人の使用者により、A)20mm/秒と、B)40mm/秒の速度で、被転写体に対する「転写性」を、3人の使用者毎に目視にて評価した。
【0071】
また、粘着剤を被転写体(上質紙)に転写した後、転写具を被転写体に対して45度傾斜させて、15cmだけ転写し、転写後に転写具を被転写体に対して垂直上方に引き上げて、粘着剤を破断するという操作を行った際における破断時の糸引きの有無についての「破断性」を、3人の使用者毎に目視にて評価した。
【0072】
さらに、上質紙(貼着体)を被転写体に粘着剤を介して貼着し、2kgの押圧力をかけつつローラを2往復させた後、3分経過後、貼着体を剥離した際の貼着体の貼着面の状態(「粘着性」)についても評価した。
(評価内容)
【0073】
「転写性」については、転写具を引き上げて粘着剤を破断させる動作を行った際に被転写体に対して粘着剤の状況を3段階で評価しており、「○」は完全に転写されていることを、「△」はごくわずかに転写されていない箇所はあるが実用上は問題無いことを、「×」は転写されていない箇所があり実用上に問題が有ることを、各々示している。なお、「○」「△」「×」は3人の使用者の評価を総合したものである。
【0074】
「破断性」については、転写具を引き上げて粘着剤を破断させる動作を行った際に被転写体と転写部(の基材)との間における粘着剤の糸引きの有無を3段階で評価しており、「○」は糸引きが生じなかったことを、「△」はわずかな糸引きは生じたが実用上は問題が無いことを、「×」は糸引きが生じ、実用上に問題が有ることを、各々示している。なお、「○」「△」「×」は3人の使用者の評価を総合したものである。
【0075】
「粘着性」については、被転写体から(粘着剤で該被転写体に貼着されている)貼着体を剥離した際の状況を3段階で評価しており、「○」は約90%以上の貼着面が破れたことを、「△」は約70%〜約89%の貼着面が破れ、実用上は問題が無いことを、「×」は約69%以下の貼着面しか破れず、実用上に問題が有ることを、各々示している。なお、「○」「△」「×」は3人の使用者の評価を総合したものである。
【0076】
(実験結果)
実験結果は、次のようになった。実施例1〜7、すなわち本発明の範囲内にある転写テープ1は、粘着剤3の被転写体Pに対する転写性A)B)共に、実用上問題ないレベル以上となり、また、破断性及び粘着性に関しても同様に実用上問題ないレベルであった。
【0077】
一方、比較例1〜6は、中空樹脂材料の粒径、含有量の一方又は両方が本発明範囲から外れていることで、転写性、破断性、粘着性、のいずれか又は複数の実験項目において実用上問題のあるレベルとなった。
【符号の説明】
【0078】
1 転写テープ
2 基材
2A 塗布面
2B 裏面
3 粘着剤
3A 中空樹脂材料
11 転写具
12 送出軸
13 巻取軸
14 転写部
P 被転写体
Pa 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられた、両面に離型処理が施されると共に該両面のうち一方面に較べて他方面の剥離強度が高い設定とされた基材の該一方面に粘着剤が塗布された転写テープを巻装した送出軸と、粘着剤を転写した後の基材を巻装する巻取軸と、筐体外に設けられた、粘着剤を被転写体に転写するための転写部とを備え、前記転写部を被転写体に押しつけた状態で全体を移動させて被転写体に粘着剤を転写し、所望の箇所で転写具全体を被転写体から離間させることで粘着剤を被転写体側と基材側との間で破断する転写具に用られる転写テープであって、粘着剤に弾性のある5〜60μmの平均粒径の中空樹脂粒子を0.3〜7.0wt%含有していることを特徴とする転写具用転写テープ。
【請求項2】
中空樹脂粒子が、熱膨張性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の転写具用転写テープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−87245(P2013−87245A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230917(P2011−230917)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(306029349)ゼネラル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】