説明

転写因子モジュレーター

本発明は、転写因子活性を変調するために有用な新規作用物質に関する。特に、本発明は、(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は(iii)その組み合わせを含む転写因子モジュレーターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写因子活性を変調するために有用な新規作用物質に関する。特に、本発明は、ユビキチン化、SUMO化及びPIASタンパク質、並びにそれ故にSTAT、p53及び他の転写因子によるPIAS調節遺伝子発現の変調に影響を及ぼすことが可能な転写因子モジュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系の調節障害は、多数の病理に関与し、かつ疾患の形成、維持又は進行を促す因子であり得る。不十分な免疫応答又は免疫抑制は、感染症又は癌発生に対する動物の感受性を高めることが知られている。反対に、過剰又は不適切な免疫応答は、望ましくない炎症又は自己免疫状態の形成又は進行に関与する。従って、免疫応答を変調する作用物質を利用でき、かつ免疫機能不全が所与の病態の構成要素である時に、かかる機能不全を少なくとも部分的に改善できることが好都合である。
【0003】
腫瘍抑制タンパク質p53は、細胞周期停止及びアポトーシスを制御する遺伝子を活性化する転写因子の役割を果たす(例えば、Agarwal et al.,1998,J Biol Chem,273(1):p1−4;Lakin & Jackson,1999,Oncogene,18(53):p7644−55;Sionov & Haupt,1999,Oncogene,18(45):p6145−6157を参照)。p53腫瘍抑制タンパク質及びc−Junプロトオンコジーンの活性は、リン酸化又はユビキチン化のような翻訳後修飾によって調節される(Meek,1999,Oncogene,18(53):p7666−75)。具体的には、ユビキチン様修飾因子SUMOの共有結合は、その転写活性を変調するように見えるRodriguez et al.,1999,Embo J,18(22):p6455−61;Muller et al.,2000,J Biol Chem,275(18):p13321−9)。
【0004】
SUMO化は、ユビキチン化に機構的に類似するが、異なるE1活性化酵素及びUbc9、SUMO特異的E2抱合酵素を必要とする酵素経路を経由して進む(Lin et al.,2004,FEBS Lett,573(1−3):p15−8)。PIAS1は、生体外及び生体内でp53及びc−JunのSUMO化を促進する特異的E3様リガーゼの役を務める。PIASタンパク質は、p53及びc−Junの両方と物理的に相互作用し、かつPIAS1は、酵母ツーハイブリッド分析においてp53のC末端調節ドメイン及び四量化と相互作用する(Megidish et al.,2002,J Biol Chem,277(10):p8255−9)。その上、それらは、Ubc9に結合し、それらが、E2酵素をそのそれぞれの基質に補充することを示唆している。SUMOリガーゼ活性は、ユビキチンリガーゼのサブセット中に見出される、必須RINGフィンガーモチーフと遠縁である、保存された亜鉛フィンガードメインを必要とする。
【0005】
PIASタンパク質は、p53の転写活性を強力に抑制し、PIAS−SUMO経路が、p53及び他の転写因子の調節において重要な役割を果たすことを示唆している(Schmidt & Muller,2002,Proc Natl Acad Sci USA,99(5):p2872−7)。
【0006】
STAT−1転写因子は、細胞成長及びアポトーシス促進を阻害するその能力のために、腫瘍抑制因子として関与した。STAT−1は、最適なDNA損傷誘発アポトーシスに必要である。p53阻害Mdm2の基礎レベルは、STAT−1(−/−)細胞において増加し、STAT−1が、Mdm2発現の負の調節因子であることを示唆している。STAT−1は、p53と直接相互作用し、DNA損傷に続き強化される会合である。それ故に、負に調節するMdm2に加えて、STAT−1は、p53のコアクチベーターの役も務める。従ってSTAT−1は、p53活性化アポトーシス経路を変調することが可能なタンパク質パートナーの成長ファミリーのもう1つのメンバーである(Townsend et al.,2004,J Biol Chem,279(7):p5811−20)。
【0007】
シグナル伝達物質及び転写アクチベーター1(STAT1)は、サイトカイン及び成長因子に応答して遺伝子発現を媒介する。STAT1の活性化は、Jakチロシンキナーゼを関与させるプロセスである、そのチロシンリン酸化を通して達成される。これらのサイトカインの1種、IFN−ガンマは、STAT1リン酸化を誘発し、かつ複数の遺伝子及びアポトーシスの発現を引き起こす。
【0008】
ウイルスは、IFN活性化JAK−STAT経路の様々な構成要素を不活性化することによって宿主免疫系を回避できる。以前に記載したように、RNAウイルスのパラミクソウイルスファミリーのメンバーは、分解のためにSTATを標的とする。エプスタインバーウイルス(EBV)は、EBV前初期タンパク質、BZLF1の作用を通してIFN受容体の発現を阻害する(Morrison et a1.,2001,Immunity,15(5):p787−99)。ヒトサイトメガロウイルスは、分解のためにJAK1を選択的に標的とすることによってMHCクラスII分子のIFN誘発発現を阻害する(Miller et al.,1998,J Exp Med,187(5):p675−83)。対照的に、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症は、STAT1及びJAK2の発現を阻害するが、JAK1の発現は阻害しない(Abendroth et al.,2000,J Virol,74(4):p1900−7)。IFN−JAK−STAT経路における欠陥を有する個人は、ウイルス及び細胞内細菌に対する増加した感受性を示す。IFN受容体鎖に突然変異を有する患者は、マイコバクテリアによる感染症にかかりやすい(Dupuis et a1.,2000,Immunol Rev,178:p129−37)。最近、STAT1欠損を有する患者が、報告された(Dupuis et al.,2003,Nat Genet,33(3):p388−91)。これらの個人は、マイコバクテリア感染症を患い、かつ致死的なウイルス性疾患で死亡した。
【0009】
クローン病−慢性炎症性腸疾患−の原因病理学(aetiopathology)は、あまり理解されていない。造血中のStat3の組織特異的破壊を有するマウスは、クローン病のような発症を示す(Welte et a1.,2003,Proc Natl Acad Sci USA,100(4):p1879−84)。その上、構成的にチロシンリン酸化されたSTAT3は、クローン病患者の腸T細胞中に見出される(Lovato et al.,2003,J Biol Chem,278(19):p16777−81)。これらの結果は、STAT3シグナル伝達の調節障害が、クローン病の発症に関与したかもしれないことを示している。しかしながら、クローン病の発症におけるSTAT3の正確な役割は、理解されていない。
【0010】
JAK/STAT経路に対するその影響は別として、PIAS1は、NF−KBシグナル伝達の負の調節因子であることが示されている(Liu et al.,2005,Mol Cell Biol,25(3):p1113−23)。転写因子のNF−KBファミリーは、細胞過程のスペクトルを調節するために、多種多様なシグナルによって活性化される。NF−KB活性の適切な調節は、異常NF−KBシグナル伝達が、慢性炎症性疾患及び癌のような多数のヒト疾病に関連するので重大である。サイトカインを刺激すると、NF−KBのp65サブユニットは、核に転位し、そこでPIAS1と相互作用する。p65へのPIAS1の結合は、サイトカイン誘発NF−KB依存性遺伝子活性を阻害する。PIAS1は、生体外及び生体内の両方で、p65のDNA結合活性を遮断する。
【0011】
Hershko及びCiechanoverによって20年強前に発見されたユビキチンタンパク質分解系は、「古い」、損傷した、ミスフォールドした又は誤って集合した(misassembled)タンパク質を除去すると、当初は考えられた(Hershko & Ciechanover,1998,Annu Rev Biochem,67:p425−79;Hershko et al.,2000,Nat Med,6(10):p1073−81)。系は、全ての真核生物において高度に保存される、76−アミノ酸(aa)遍在的発現タンパク質からその名称を得た。ユビキチン経路は、階層的モード:すなわちユビキチン及び単一の保存されたユビキチン活性化酵素(E1)の間の高エネルギーチオエステル結合、及び幾つかのユビキチン抱合酵素(Ubc又はE2)の1つへのアシル基転移によるユビキチン移動をもたらす協調した二段階反応で、順次作用する幾つかの構成要素からなる。後者は、ユビキチン分子を基質のリジン残基のε−アミノ基に付着させることにおいて、大きな一連のE3(タンパク質−ユビキチンリガーゼ)と協働し、このようにして可逆性イソペプチド結合を作る。癌及び免疫調節に重大な経路は、幾つかのステップでポリユビキチン化によって調節される(Hershko & Ciechanover,1998,前掲;Ciechanover et a1.,2000,J Cell Biochem Suppl,34:p40−51;Schwartz & Hochstrasser,2003,Trends Biochem Sci,28(6):p321−8;Ben−Neriah,2002,Nat Immunol,3(1):p20−6)。
【0012】
系に対する最近の重点的な取り組みは、2つの作用モードを介する細胞過程を制御することにおけるその役割を強調した。それらは、多数の調節タンパク質を制御するためのタンパク質分解関連ポリユビキチン化、及び調節タンパク質のタンパク質分解非依存性ユビキチン化:モノ−、マルチ−又はポリユビキチン化である(Ciechanover et al.,2000,Bioessays,22(5):p442−51)。ユビキチンが、各ユビキチンの48位で見出されるリジンアミノ酸を通して相互に結合される時、標的タンパク質は、細胞廃棄物処分ユニット、プロテアソームに向けられる(Amit & Ben−Neriah,2003,Semin Cancer Biol,13(1):p15−28)。リジン63が、代わりに使用されるならば、他のタンパク質と集合する標的用のシグナルとして役立つことができる(Wang et al.,2001,Nature,412(6844):p346−51;Deng et al.,2000,Cell,103(2):p351−61)。
【0013】
タンパク質分解関連ユビキチン化に関して、更なる、特徴のあまりない触媒ステップが、必要とされる:すなわち第1ユビキチン分子を基質に付着させた同じE2−E3対によって、又は追加の酵素成分によって促進されるユビキチン鎖の重合である。ポリユビキチン鎖は、その場合、基質分解26Sタンパク質複合体、プロテアソームの認識マーカーの役目を果たす。
【0014】
「古典的な」ユビキチン化系と並行して、種々の目的でユビキチン様分子(Ubl)を標的タンパク質に共有結合する、他の関連した酵素経路がある(Hochstrasser,2000,Nat Cell Biol,2(8):pE153−7;Jentsch & Pyrowolakis,2000,Trends Cell Biol,10(8):p335−42)。Ublは、ユビキチンに構造的に関係があるだけでなく、ユビキチン化様酵素過程、すなわちUbl COOH末端グリシン及び標的タンパク質リジンのアミノ基の間のイソペプチド結合の形成を通してそのタンパク質標的に抱合する。その上、Ubl抱合は、ユビキチン経路E1及びE2に関係する酵素によってなされる(Hochstrasser,2000,前掲;Jentsch & Pyrowolakis,2000,前掲)。幾つかのUbl修飾は、タンパク質ユビキチン化を支持することがある:例は、強化されたIBユビキチン化を引き起こす、IB E3タンパク質のサブユニットへのNedd8 Ublの付着である(Read et al.,2000,Mol Cell Biol,20(7):p2326−33;Kawakami et al.,2001,Embo J,20(15):p4003−12)。他のUbl修飾は、タンパク質ユビキチン化、例えばそのユビキチン化を抑制する、IBへのSUMO(小型ユビキチン修飾因子)Ublの付着に干渉し得る(Hay,2001,Trends Biochem Sci,26(5):p.332−3)か、又は核タンパク質排出の調節のような、ユビキチン化非関連機能を有する(Mahajan et al.,1997,Cell,88(1):p97−107)。
【0015】
単一のE1が、ユビキチンを活性化する一方、多くの(哺乳動物において少なくとも25の)E2種は、真核生物毎に特徴付けされた。多数のE2酵素は、それらが個別のユビキチン化過程を専門とすることを示している;しかしながら、この推定上専門化のための生化学的基盤は、大部分が知られていない。E2タンパク質がその相同性によって識別される一方で、E3は、高度に不均一なクラスのタンパク質を構成し、それは、にもかかわらず3つの群に分類できる:すなわちHECT(E6−AP COOH末端と相同)、RING及びUfd2関係(Uボックス)E3である(Weissman,2001,Nat Rev Mol Cell Biol,2(3):p169−78;Jackson et al.,2000,Trends Cell Biol,10(10):p429−39)。HECT E3は、E6関連タンパク質(E6−AP)に関係し−パピローマウイルスE6タンパク質と複合したp53を標的とするE3−、かつ350−aa HECTドメインを共有する。HECT E3は、独特の作用モードを有する:すなわち、それらは、ユビキチン及びHECTドメイン中の保存されたシステインの間で中間チオールエステルを通した基質へのユビキチン移動に触媒作用を及ぼす。対照的に、RING E3が、基質へのユビキチンの化学転送に直接参加せず、その関連E2の活性を単に調整するように見える(Meroni & Diez−Roux,2005,Bioessays,27(11):p1147−57)。
【0016】
RING E3は、金属配位RINGフィンガーモチーフによって区別される。RING E3は、SH2ドメインのような基質標的モチーフを有する単一タンパク質であるか、又は基質標的及びRING機能が、異なるタンパク質によって実行されるマルチサブユニットタンパク質複合体である。ユビキチン分野での最も注目すべき最近の進歩の幾つかは、3つの大きなマルチサブユニットRING E3:すなわちAPC/C(後期促進複合体−サイクロソーム)、SCF(Skp1−cullin−1−F−bボックスタンパク質)及びVCB(VHL−elongin C−elongin B複合体)の組成物、部分的構造及び基質認識モードを特徴付けることにおいて行われた(Jackson et al.,2000,Trends Cell Biol,10(10):p429−39;Deshaies et al.,1999,Annu Rev Cell Dev Biol,15:p435−67;Zachariae & Nasmyth,1999,Genes Dev,13(16):p2039−58;Kondo & Kaelin,2001,Exp Cell Res,264(1):p117−25)。UボックスE3は、新規に識別されたクラスを構成し、その幾つかは、他のE3によってユビキチン化されたタンパク質上でのポリユビキチン鎖の集合を媒介できる(Hatakeyama et al.,2001,J Biol Chem,276(35):p33111−20)。
【0017】
真核生物毎に基本的な調節する役割を有するので、タンパク質分解関連ユビキチン化が、免疫系中で重要な役割を同様に果たすことは、意外ではない。タンパク質分解関連ユビキチン化は、転写活性化からアポトーシスまでの種々の免疫関連調節事象を推進する(Shmueli & Oren,2005,Cell,121(7):p963−5)。十分に確立されたタンパク質分解関連ユビキチン化と並行して、ユビキチン化の正確な役割がなおも不明である、重要なプロテオソーム媒介分解事象があり、後者の中で、抗原処理は、顕著な例である(Kloetzel,2001,Nat Rev Mol Cell Biol,2(3):p179−87;Yewdell,2001,Trends Cell Biol,11(7):p294−7)。
【0018】
転写因子のユビキチン化は、プロテオソーム分解と無関係にその活性を制御できる。例えば、メチオニン生合成に主に関与する多数の遺伝子を調節するbZIP因子である、Met4は、ユビキチン化されるが、高い細胞内濃度のS−アデノシルメチオニンの存在下では分解されない(Kaiser et al.,2000,Cell,102(3):p303−14)。ユビキチン化は、コアクチベーター、Cbf1の補充を排除するので、Met4を少なくとも部分的に不活性化し(Kaiser et al.,2000,前掲)、その上、その標的プロモーターのサブクラスへのMet4の結合は、ユビキチン化によって危うくされる(Kuras et al.,2002,Mol Cell,10(1):p69−80)。ユビキチン化は、Mdm2によるHIVTatタンパク質のユビキチン化がその転写を活性化する能力を増加させるので、転写因子を必ずしも阻害しない(Bres et al.,2003,Nat Cell Biol,5(8):p754−61)。同様に、Skp2によるMycのユビキチン化は、潜在的にMycが、転写活性化においてタンパク質分解非依存性の役割を有する、プロテアソームサブユニットを補充することを可能にすることによって、転写活性化に寄与する(Ferdous et al.,2001,Mol Cell,7(5):p981−91)。2つのシグナルは、ユビキチン化が分解を引き起こすかを決定することが知られている。タンパク質分解基質は、ポリユビキチン鎖によって修飾され、かつ約4つのユビキチン残基の最小鎖長が、プロテアソームに付着タンパク質の標的を定めるために必要とされるように見える(Flick et al.,2004,Nat Cell Biol,6(7):p634−41)。ポリユビキチン鎖形成に使用されるユビキチンのリジン残基は、第2シグナルを指定する。リジン48を通して結合される鎖は、通常プロテアソーム分解を引き起こす一方で、ユビキチンのリジン−63を通して結合されるものは、プロテアソームにタンパク質の標的を定めない(Bres et al.,2003,前掲)。
【0019】
TRIM/RBCCタンパク質は、RINGドメイン、1又は2つのBボックスモチーフ、及びコイルドコイル領域からなる三要素モチーフの存在によって定義される(Reymond et al.,2001,Embo J,20(9):p2140−51)。これらのタンパク質は、アポトーシス、細胞周期調節及びウイルス応答のような多大な細胞過程に関与する。常に、その変化は、多くの種々の病態をもたらす。これらのタンパク質の高度に保存された構造は、共通する生化学的機能が、その多種多様な細胞的役割の根底にあり得ることを示唆している。幾つかのTRIM/RBCCタンパク質は、ユビキチン化に関与し、かつこの巨大タンパク質ファミリーが新規なクラスの「単一タンパク質RINGフィンガー」ユビキチンE3リガーゼを表すことを提案する(Meroni & Diez−Roux,2005,前掲)。
【0020】
ユビキチンリガーゼは、細胞内のタンパク質局所化、転写変調及びタンパク質の代謝回転において重要な役割を演じる。これらの標的の変調は、細胞周期が異常である癌におけるように、正常な細胞過程が不均衡である、疾患を処置するための新規なアプローチを提示する。ユビキチンリガーゼ癌標的は、腫瘍性タンパク質及び腫瘍抑制遺伝子のような鍵となるタンパク質の安定性、局所化及び活性の調節において役割を果たす。ユビキチンリガーゼ標的は、多数であり、かつモジュール式である。このことは、疾患に、高度に特異的な方法で介在する能力を提供し、潜在的に有効性を高め、かつ副作用を最小限に抑える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
転写因子が、特に免疫系に対して恒常性において主要な役割を果たすことが分かる。従って、以上で論じたもののような転写因子のモジュレーター又は調節因子が、識別できるならば、細胞増殖、移動及び/又は分化を調節することが可能であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明者らは、HLS5が、ルシフェラーゼレポーターの上流に位置するIFN−ガンマ活性化部位(GAS)様要素に対する強力なアクチベーターであることを示した。同様に、HLS5は、PIASと免疫共沈降でき、かつその分解を誘発できる。これらの結果は、PIAS及びユビキチン化を調節することによって、HLS5が、STATのような転写因子によって遺伝子発現を変調することを証明する。
【0023】
従って、第1の形態において、本発明は、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を含む転写因子モジュレーターを提供する。
【0024】
第2の形態において、本発明は、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を含むユビキチンリガーゼを提供する。
【0025】
幾つかの実施態様において、HLS−5ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示される配列又はそれと実質的に相同のポリペプチド、又はその機能的断片を含む。
【0026】
本発明のHLS−5ポリペプチドが、以下のものを含むが、それらに限定されないポリペプチド類似体も含むことが明瞭に理解されるべきである。
1.1種以上のアミノ酸が、その対応するD−アミノ酸によって置き換えられるHLS−5ポリペプチド。当業者は、レトロインバーソ(retro−inverso)アミノ酸配列が、標準的な方法によって合成できることに気が付くであろう。例えば、Chorev and Goodman,1993,Ace Chem Res,26:266−273を参照;
2.ペプチド結合が、代謝分解に更に耐性を持つ構造によって置き換えられるHLS−5のペプチド模倣化合物。例えば、Olson et a1,1993,J.Med.Chem.,36,p3039−3049を参照。
3.個別のアミノ酸が、その電荷を修飾するために類似構造、例えば修飾末端又はアルキル、アシル若しくはアミン置換を有する又は有さない、gem−ジアミノアルキル基又はアルキルマロニル基によって置き換えられるHLS−5ポリペプチド。
【0027】
かかる代替的構造の使用は、生理的状態において分解に更に耐性を持つので、体内で著しく長い半減期を提供し得る。
【0028】
ポリペプチド類似体の組み合わせ合成、並びにポリペプチド及びポリペプチド類似体のスクリーニング方法は、当該技術分野において周知である(例えばGallop et al.,1994,J.Med.Chem.,37,pl233−1251を参照)。本発明のHLS−5ポリペプチドが、改善された活性、安定性及び生物学的利用能の化合物の設計及び合成のための鋳型として有用であることが特に予期される。
【0029】
好ましくはアミノ酸置換が使用される場合、置換は、保存的である、すなわちアミノ酸は、類似した寸法の、かつ類似した電荷特性を有するものによって置き換えられる。
【0030】
幾つかの実施態様において、HLS−5ポリペプチドは、HLS−5をコードするポリヌクレオチドを含むベクターから生体内で発現される。幾つかの実施態様において、HLS−5ポリヌクレオチドは、
(a)配列番号1、配列番号3又は配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又はその機能的断片を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号1、配列番号3又は配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又はその機能的断片に選択的にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(c)(a)又は(b)に定義されたポリヌクレオチドへの遺伝子コードの結果として縮退したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)(a)又は(b)のポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される。
【0031】
本発明は、本発明のHLS−5ポリヌクレオチドを含むベクター、例えば宿主細胞内に前記ポリヌクレオチドの発現を向けることが可能な調節配列に操作可能に結合された、本発明のHLS−5ポリヌクレオチドを含む発現ベクターも提供する。
【0032】
従って、第3の形態において、本発明は、宿主細胞内に本発明のHLS−5ポリヌクレオチドの発現を向けることが可能な調節配列に操作可能に結合された、本発明のHLS−5ポリヌクレオチドを含むベクターを含む転写因子モジュレーターを提供する。
【0033】
幾つかの実施態様において、転写因子モジュレーターは、ユビキチンリガーゼの役を務める。
【0034】
第4の形態において、本発明は、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を、それを必要とする被検者に投与するステップを含む、生体内で転写因子活性を変調する方法を提供する。
【0035】
幾つかの実施態様において、転写因子モジュレーターは、転写因子活性の負の制御を行い、すなわち転写因子機能及び/又は逆転写因子活性を直接又は間接的に妨げる。更に他の実施態様において、転写因子モジュレーターは、転写因子活性の正の制御を行い、すなわち転写因子活性を直接又は間接的にもたらすか、又は強化する。
【0036】
第5の形態において、本発明は、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を細胞に投与するステップを含む、生体外で転写因子活性を変調する方法を提供する。
【0037】
第6の形態において、本発明は、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
をそれを必要とする被検者に投与するステップを含む、転写因子調節障害に関連する状態を処置又は予防する方法を提供する。
【0038】
幾つかの実施態様において、状態は、転写因子によって直接的に影響を及ぼされるか、又は制御される。他の実施態様において、状態は、転写因子によって直接的に影響を及ぼされないか、又は制御されない;しかしながら、転写因子モジュレーターの投与は、状態と関連した、又は状態によって影響を及ぼされる転写因子を制御することによって状態を改善、軽減又は処置する。
【0039】
本発明の転写因子モジュレーターは、いかなる適切な経路によっても投与でき、かつ当業者は、処置すべき状態のための最も適切な経路及び用量を容易に決定できるであろう。投与量は、付き添い医師又は獣医の裁量により、かつ処置すべき状態の性質及び状況、処置すべき被検者の年齢及び全体的な健康状態、投与経路及び投与され得たいずれかの前処置によって決まる。
【0040】
転写因子モジュレーターは、医薬上許容し得る担体を更に含む組成物の形状で投与できる。これは、通常、例えば滅菌水、リン酸ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム及びそのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む。
【0041】
医薬組成物の調製のための方法及び医薬担体は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th Edition,Williams & Wilkins,Pennsylvania,USAのような教科書に示されるように、当該技術分野において周知である。
【0042】
担体又は希釈液、及び他の賦形剤は、投与経路によって決まり、かつこの場合も当業者は、各特定のケースのために最も適切な製剤を容易に決めることができる。
【0043】
被検者は、ヒトであっても良いか、又は家畜、伴侶若しくは動物園の動物でも良い。本発明の転写因子モジュレーターは、ヒトの医療処置での使用に適することが特に予期されるが、それは、イヌ及びネコのような伴侶動物、及びウマ、ウシ及びヒツジのような家畜、又はヒト以外の霊長類、ネコ科、イヌ科、ウシ科及び有蹄類のような動物園の動物の処置を含む獣医学処置にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、特に例示されたHLS−5配列、発現技術又は方法に限定されず、かつ当然に異なり得ることが理解されるべきである。本明細書中で使用される専門用語が、本発明の特定の実施態様を記載されるためだけであり、かつ限定することが意図されず、それが添付の請求項によってのみ限定されることも理解されるべきである。
【0045】
本明細書に引用された全ての公報、特許及び特許出願は、前掲又は後掲であれ、全体が参照によって、本明細書により組み込まれる。しかしながら、本明細書に言及された公報は、公報に報告され、かつ本発明に関連して使用されることがある手順及び試薬を記載及び開示する目的で引用される。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明により、かかる開示に先行する権利がないという自白として解釈されるべきでない。
【0046】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当該技術分野における技能の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、組み換えDNA、薬理学及び免疫学の従来の技術を用いる。かかる技術は、文献に記載されている。例えば、Bailey & Ollis,1986,「Biochemical Engineering Fundamentals」,2nd Ed.,McGraw−Hill,Toronto;Coligan et a1.,1999,「Current protocols in Protein Science」Volume I and II(John Wiley & Sons Inc.);「DNA Cloning:A Practical Approach」,Volumes I and II(Glover ed.,1985);Handbook of Experimental Immunology,Volumes I−IV(Weir & Blackwell,eds.,1986);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London, 1987),Methods in Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.1987);「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,2nd Ed.,(ed. by Sambrook,Fritsch and Maniatis)(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);「Nucleic Acid Hybridization」,(Hames & Higgins eds.1984);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait ed.,1984);Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,USA.;「The Merck Index」,12th Edition(1996),Therapeutic Category and Biological Activity Index;及び「Transcription & Translation」,(Hames & Higgins eds.1984)を参照。
【0047】
本明細書及び添付の請求項で使用されているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段の指図を明瞭にしない限り、複数の参照を含むことに注目されねばならない。それ故に、例えば「a nucleic acid molecule(1つの核酸分子)」の参照は、複数のかかる分子を含み、かつ「an agent(1種の作用物質)」の参照は、1種以上の作用物質の参照である、等々。別段の定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当該技術分野において通常の技能を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似した、又は同等のいかなる材料及び方法も、本発明を実施又はテストするために使用できるが、好ましい材料及び方法は、ここで記載される。
【0048】
本発明は、以下の形態を包含する:本発明の転写因子モジュレーターの調製;前記HLS−5ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は前記ポリヌクレオチドを運搬及び発現する組み換えベクターの調製;前記ベクターを運搬する形質転換体;前記形質転換体を生成する方法;HLS−5ポリペプチドを検出する方法;前記HLS−5ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はmRNAを検出する方法;及び調節されない転写因子活性によって引き起こされる又は悪化した状態を処置する方法が、以下に説明される。
【0049】
以下に続く記載において、指示がなければ、遺伝子組み換え技術、動物細胞、昆虫細胞、酵母及び大腸菌中で組み換えポリペプチドの生成、分子生物学的方法、発現されたHLS−5ポリペプチドの分離及び精製方法、アッセイ及び免疫学的方法のような技術が、この分野において周知であり、かついずれかのかかる技術が採用できると認識される。
【0050】
その最も広い形態において、本発明は、医薬的有効量のHLS−5、そのアイソフォーム又はその機能的断片を含む転写因子モジュレーターを提供する。
【0051】
本明細書で使用されるような用語「転写因子モジュレーター」は、転写因子の活性に直接又は間接的に影響を及ぼすことが可能な、物質の化合物又は組成物を指す。前掲で記載したように、転写因子は、各プロモーター中に含まれる、特定の組の短い保存された配列に結合することが可能である。これらの要素及び因子の幾つかは、一般的であり、かつ種々のプロモーター中に見出され、かつ構造的に使用される;他のものは、特異的であり、かつその使用は、調節される。幾つかの実施態様において、本発明の転写因子は、PIAS1と結合するものであり、かつ特にはp53経路である。可能な転写因子の非限定的な例には、PIAS1、c−jun、p53、STAT及びNF−KBを含む。
【0052】
幾つかの実施態様において、転写因子モジュレーター活性は、ユビキチンリガーゼとしてである。本明細書において使用されるような用語「ユビキチンリガーゼ」は、タンパク質のユビキチン化に直接又は間接的に影響を及ぼすことが可能な物質の化合物又は組成物を指す。それ故に、前掲で記載したように、例えば「ユビキチンリガーゼ」の活性に対するような、「ユビキチン化」活性を持つとして、本明細書で参照されるポリペプチドは、ユビキチンのC末端カルボキシル基を有するチオールエステル付加物を形成し、かつイソペプチド結合形成によってアクセプタータンパク質中のε−アミノ基にユビキチンを移動することが可能であると、理解される。
【0053】
本発明の幾つかの実施態様において、「転写因子モジュレーター」は、HLS−5である。HLS−5は、RINGフィンガーBボックスコイルドコイル(RBCC)タンパク質ファミリーのメンバーである(Lalonde et al.,2004,J Biol Chem,279,8181−8189)。この分子群は、より高い真核生物の間で保存される特性ドメイン構造のため、タンパク質の三要素モチーフファミリー(TRIM)とも呼ばれる(Reymond et al.,2001,Embo J,20,2140−2151)。マウス及びヒトゲノムの配列分析は、多くは未知の機能を有するRBCCタンパク質の多様な配列を識別した(Reymond et al.,2001、前掲)。PML、TIFlα及びRfpを含む幾つかのRBCCファミリーメンバーは、ヒト癌において突然変異し、細胞成長及び分化の重大な調節因子としてRBCCタンパク質を関与させる(de The et al 1991,Cell,66:675−684)。HLS−5は、種々の腫瘍において頻繁に欠失する領域である、8p21番染色体に位置し、かつHeLa細胞中の遺伝子の強制された発現は、細胞成長、クローン原性及び腫瘍原性を減少させた(Lalonde et al.,2004,前掲)。最近の研究により、若干のRBCCメンバーが、細胞内局所性又は翻訳後修飾に影響を及ぼすことによって、パートナータンパク質の活性又は定常レベルを調節することが証明された(Diamonti et al.,2002,Proc Natl Acad Sci USA,99,2866−2871;Pearson et al.,2000,Nature,406,207−210;Urano et al.,2002,Nature,417,871−875)。
【0054】
HLS−5は、J2E赤血球細胞種の赤血球から骨髄系統スイッチ中に著しく上方調節された遺伝子として当初、識別された(Klinken et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,85,8506−8510;Lalonde et al.,2004、前掲)。骨髄変異体は、単芽球様形態を示し、エリスロポイエチン(EPO)に応答せず、かつGATA−1及びEKLFを含む赤血球特異転写因子の発現減少を有した(Keil et al.,1995,Cell Growth Differ.,6,439−448;Williams et al.,1999,Embo J.,18,5559−5566)。意義深いことに、HLS−5は、骨髄細胞のマクロファージコロニー刺激因子開始の成熟中に誘発された遺伝子として独立して単離された(Kimura et al.,2003,J Biol.Chem.,278,25046−25054)。
【0055】
従って、本発明の幾つかの実施態様において、「転写因子モジュレーター」は、単離したHLS−5ポリペプチド全長を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸の重合体及びその同等物を指し、かつ生成物の特定の長さを指さない;それ故に、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等を指さないか、又は除外しない。定義には、例えば(天然アミノ酸等を例えば含む)アミノ酸の1つ以上の類似体を含むポリペプチド、置換結合、並びに自然及び非自然の両方で発生する、当該技術分野において公知の他の修飾を有するポリペプチドが含まれる。
【0056】
本発明のHLS−5ポリペプチド全長は、約500のアミノ酸を有し、動物、特に哺乳動物において腫瘍抑制因子をコードし、かつ対立遺伝子変異体又は相同体を含む。HLS−5ポリペプチド全長はまた、概してRINGフィンガーモチーフ、Bボックス、コイルドコイルモチーフ及びSPRYモチーフを含む。本発明のHLS−5ポリペプチドは、HLS−5ポリペプチド全長の断片及び誘導体、特に実質的に同じ生物学的活性を有する断片又は誘導体も含む。ポリペプチドは、組み換え又は化学合成法によって調製できる。幾つかの実施態様において、HLS−5ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列、又はその断片を含む対立遺伝子変異体若しくは相同体を含むものを含む。更なる実施態様において、HLS−5ポリペプチドは、配列番号4として示されるアミノ酸配列のアミノ酸12から504、又はその対立遺伝子変異体、相同体若しくは断片から本質的になる。
【0057】
本発明の文脈において、相同配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に示されたアミノ酸配列と、少なくとも20、50、100、200、300又は400のアミノ酸にわたるアミノ酸レベルで、少なくとも60、70、80、又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むように解釈される。特に、相同性は、非必須近接配列よりもむしろ、タンパク質の機能に必須であることが知られている配列の領域に対して概して考慮されるべきである。それ故に、例えば相同性比較は、好ましくは配列番号2、配列番号4又は配列番号8に示されたHLS−5アミノ酸配列のRINGフィンガー、Bボックス、コイルドコイル及び/又はSPRYドメインに対応する領域にわたってなされる。RINGフィンガーは、配列番号2のアミノ酸36から75にほぼ対応する。Bボックスは、配列番号2のアミノ酸111から152にほぼ対応する。コイルドコイルは、配列番号2のアミノ酸219から266にほぼ対応する。
【0058】
SPRYドメインは、配列番号2のアミノ酸368から507にほぼ対応する。幾つかの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸111から152、219から266若しくは368から507の1つ以上、又は配列番号4若しくは配列番号6の対応領域に対して50、60又は70%を超える相同性、更に好ましくは80又は90%を超える相同性を有する隣接配列を含む。
【0059】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸36から75、又は配列番号4若しくは配列番号6の対応領域に対して80又は90%を超える相同性を有する隣接配列を代わりに、又は追加で含むことができる。他のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1から35、76から110、153から218及び/又は267から367、又は配列番号4若しくは配列番号6の対応領域に対して40、50、60又は70%を超える相同性、更に好ましくは80又は90%を超える相同性を有する隣接配列を含む。相同性は、類似性(すなわち類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)に関しても考慮できるが、本発明の文脈において、配列同一性に関して相同性を表現することが好ましい。用語「実質的な相同性」又は「実質的な同一性」は、ポリペプチドを指す時に、問題のポリペプチド又はタンパク質が、自然発生タンパク質全体又はその一部と少なくとも約70%の同一性、通常少なくとも約80%の同一性、かつ好ましくは少なくとも約90又は95%の同一性を示すことを示す。
【0060】
相同性比較は、目測によって、又は大抵は、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて行うことができる。これらの市販されたコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同率を計算できる。
【0061】
相同率(%)は、隣接配列にわたって計算でき、すなわち一方の配列が、他方の配列と整列させられ、かつ同時に1つの残基で、一方の配列中の各アミノ酸が、他方の配列中の対応するアミノ酸と直接比較される。これは、「ギャップの無い」アラインメントと呼ばれる。概して、かかるギャップの無いアラインメントは、比較的低い数の残基にわたってのみ実行される(例えば50未満の隣接アミノ酸)。
【0062】
これは非常に簡易かつ一貫した方法であるが、例えば他の点では同一の配列対において、1つの挿入又は欠失によって、続きのアミノ酸残基がアラインメントから追い出されることになり、それ故に全体的なアラインメントが実行された時に相同%に大きな減少を引き起こす可能性があることが考慮されていない。従って、大部分の配列比較方法は、全体的な相同性スコアを不当に不利にすることなく、可能な挿入及び欠失を考慮する最適なアラインメントを生成するように設計されている。このことは、局所相同性を最大にすることを試みるために、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0063】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同数の同一のアミノ酸に関して、−2つの比較される配列間の高い関連性を反映する−できるだけ少ないギャップを有する配列アラインメントが、多くのギャップを有するものよりも高いスコアを達成するように、アラインメント中に発生する各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てている。ギャップの存在に比較的高いコストを、かつギャップ中の各々のその後の残基に小さなペナルティーを負わせる「アフィンギャップコスト」が、概して使用される。これが、最も一般に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然に少ないギャップを有する最適化されたアラインメントを生成する。大部分のアラインメントプログラムは、ギャップペナルティーが修正されることを可能にしている。しかしながら、かかる配列比較ソフトウェアを使用する時にはデフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する時、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップに関して−12であり、かつ各伸長に関して−4である。
【0064】
最大相同%の計算は、それ故にギャップペナルティーを考慮して、第1に最適なアラインメントの生成を必要とする。かかるアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージである(University of Wisconsin,USA;Devereux et al.,1984,Nucleic Acids Research,12:387)。配列比較を実行できる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,前掲を参照)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403−410)及び比較ツールのGENEWORKSスイートを含むが、それらに限定されない。BLAST及びFASTAの両方は、オフライン及びオンライン調査で利用可能である(Ausubel et al.,前掲、pages 7−58 to 760を参照)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0065】
最終相同%は、同一性に関して測定できるが、アラインメントプロセス自体は、概してオール・オア・ナッシングの対比較に基づかない。代わりに、化学的類似性又は進化距離に基づき、各一対比較にスコアを割り当てる、目盛り付きの類似性スコアマトリックスが一般的に使用される。一般に使用されるかかるマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス−プログラムのBLASTスイートのためのデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般デフォルト値、又は提供されるならばカスタム記号比較表を一般的に使用する(更なる詳細に関しては使用者マニュアルを参照)。GCGパッケージに関して一般デフォルト値を、又は他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62のようなデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0066】
一旦ソフトウェアが、最適なアラインメントを生成すると、相同%、好ましくは配列同一%を計算することが可能である。ソフトウェアは、概して配列比較の一部としてこれを行い、かつ数値結果を発生させる。
【0067】
HLS−5ポリペプチド相同体は、1つ以上のアミノ酸が、他のアミノ酸によって置換され、その置換が、分子の生物学的活性を実質的に変更しないアミノ酸配列を有するものを含む。
【0068】
本発明によるHLS−5ポリペプチド相同体は、好ましくは配列番号4又は配列番号6に示されるヒトHLS−5ポリペプチドアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有する。本発明の範囲内のHLS−5ポリペプチド相同体の例には、(a)1つ以上のアスパラギン酸残基がグルタミン酸によって置換される;(b)1つ以上のイソロイシン残基が、ロイシンによって置換される;(c)1つ以上グリシン、又はバリン残基が、アラニンによって置換される;(d)1つ以上のアルギニン残基が、ヒスチジンによって置換される;又は(e)1つ以上のチロシン、又はフェニルアラニン残基が、トリプトファンによって置換される、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0069】
「タンパク質修飾又は機能的断片」は、それがHLS−5ポリペプチドを指す時に、用語「転写因子モジュレーター」によって同様に包含される。一次構造配列に実質的に相同であるが、例えば生体内又は生体外化学及び生化学的修飾を含むか、又は異常アミノ酸を組み込む、HLS−5ポリペプチド又はその断片。かかる修飾は、当業者により容易に認識されるように、例えば放射性ヌクレオチド及び種々の酵素修飾による、例えばアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、標識化を含む。
【0070】
HLS−5ポリペプチド「断片」、「部分」又は「セグメント」は、前記「断片」、「部分」又は「セグメント」が、野生型HLS−5ポリペプチド全長と実質的に類似した機能を有する、少なくとも約5から7の隣接アミノ酸、多くの場合少なくとも約7から9の隣接アミノ酸、概して少なくとも約9から13の隣接アミノ酸、かつ非常に好ましくは少なくとも約20から30以上の隣接アミノ酸のアミノ酸残基のストレッチである。
【0071】
「実質的に類似した機能」は、野生型HLS−5ポリペプチドに関するHLS−5のポリペプチド相同体、変異体、誘導体又は断片の機能を指す。HLS−5の「断片」、「部分」又は「セグメント」は、(Boggio et al.,2004,Mol Cell,16,549−561)によって示されるようなSUMO化タンパク質を制御する能力を保持するべきである。幾つかの実施態様において、「断片」、「部分」又は「セグメント」は、機能に対して重要であるとして他のタンパク質中で識別された1つ以上のドメインを含む。例えば、TRIMモチーフのアミノ末端RING及びBボックス成分を含む、huTRIM5α中のB30.2/SPRYドメイン及び追加のドメインが、N−MLV制限活性に必要とされることが示され、他方で介在コイルドコイルドメインが、huTRIM5α多量体化に必要かつ十分である。N末端RING/Bボックス又はC末端のB30.2/SPRYドメインの一方又は両方を欠く、切断huTRIM5αタンパク質は、huTRIM5α全長とのヘテロマルチマーを形成し、かつそのN−MLV制限活性の優位な阻害剤であり、非損傷のhuTRIM5α単量体のホモ多量体化が、N−MLV制限に必要なことを示唆している。しかしながら、大きな細胞質体中での局所化は、huTRIM5αによるN−MLVの阻害、又はキメラ若しくはrhTRIM5αによるHIV−1の阻害のために必要でない(Yap et al.,2005,Curr Biol,15,73−78)。ジェミニン(Geminin)は、Cdtlと結合し、かつS期中にMcm2−7装填を阻害する細胞タンパク質である。それは、細胞周期当たり複数の複製サイクルを妨げ、かつエピソーム複製を妨げる。ジェミニンは、二量体界面中で非定型残基と、平行コイルドコイルホモダイマーを形成する。二量体化を中断させる点突然変異は、Cdtlによる相互作用及び複製の阻害を廃止する。この相互作用は複製阻害にとって必須である(Saxena et al.,2004,MoI Cell,15,245−258)。従って、HLS−5の機能的断片、部分又はセグメントが、以上に識別された領域の1つ以上を有する可能性が非常に高い。その上、これらの領域の活性を識別又はテストする、当該技術分野において周知の技術は、本発明のHLS−5断片、部分又はセグメントが、機能的であるならば、テスト又は識別するために使用できる。
【0072】
機能の類似性に加えて、修飾されたポリペプチドは、長い半減期のような他の有用な特性を有することができる。
【0073】
幾つかの実施態様において、HLS−5断片は、HLS−5のアイソフォームである。他のTRIMタンパク質のように、HLS−5は、一群の3つの異なるRBCC又はTRIMタンパク質モチーフ:すなわちシステインが豊富であり、かつ亜鉛を結合するRINGモチーフ;同じく亜鉛を結合する1つ又は2つのいわゆるBボックス;及びタンパク質複合体の形成におそらく関与するコイルドコイルドメインによって定義される。全ての個別のTRIMタンパク質のホモオリゴマー化及び若干は、他のTRIMタンパク質との連合(alliance)も形成することがある(ヘテロオリゴマー化)。ヒトには、少なくとも37のTRIMファミリーメンバーがある(Reymond et al.,2001,Embo J,20,2140−2151)。多くのTRIMファミリーメンバーは、交互スプライシングを有し、最も特徴付けされたメンバーは、TRIM39(PML)(Duprez et al.,1999,J Cell Sci,112,381−393)、TRIM18(MIDI)(Berti et al.,2004,BMC Cell Biol,5,9)、TRIM32(LGMD−2H)(Schoser et al.,2005,Ann Neurol,57,591−595)及びTRIM5(Xu et al.,2003,Exp Cell Res,288,84−93)である。種々のTRIMタンパク質の各々は、細胞中の特定の区画に局所化するように見え、それらが、潜在的に異なるサブセットのタンパク質を引き込む異なるアイソフォームを有し、かつ代替機能を有する他のタンパク質を引き付ける離散的構造を形成する(Reymond et al.,2001、前掲)。以上に基づき、HLS−5は、少なくとも1つのアイソフォームを有する。
【0074】
配列番号6に示されるHLS−5アイソフォームは、配列番号4に示されるHLS−5と比較して、フレームシフト及び初期終止コドンをもたらすコード領域に代替エキソンを含む。配列番号6のアイソフォームは、短く、かつ配列番号4中のHLS−5と比較して明白なC末端を有する。
【0075】
幾つかの実施態様において、HLS−5転写因子モジュレーターは、それらがタンパク質分解等に抵抗する又はより耐性を持つように修飾されたHLS−5の(ペプチド模倣薬を含む)ペプチジル化合物である。これらのペプチジル化合物は、必要に応じてセリン、システイン又はアスパラギン酸塩タイプのプロテアーゼの阻害を促進する切断可能なペプチド結合の例えば代わりに官能基を含むことがある。例えば、HLS−5ペプチジル化合物は、ペプチジルジケトン又はペプチジルケトエステル、ペプチドハロアルキルケトン、ペプチドスルホニルフルオリド、ペプチジルボロナート、ペプチドエポキシド、ペプチジルジアゾメタン、ペプチジルホスホナート、イソクマリン、ベンゾオキサジン−4−オン、カルバミン酸塩、イソシアン酸塩、イサト酸無水物等であっても良い。かかる官能基は、他のペプチド分子中で提供され、かつその合成の一般的経路は、知られている。例えば、Angelastro et al.,1990,J.Med Chem.33:11−13;Bey et al.,EPO363,284;Bey et al.,EPO364344;Grubb et al.,WO88/10266;Higuchi et al.,EPO393457;Ewoldt et al.,1992,Molecular Immunology,29(6):713−721;Hernandez et al.,1992,Journal of Medicinal Chemistry,35(6):1121−1129;Vlasak et al.,1989,J.Virology 63(5):2056−2062;Hudig et al.,1991,J.Immunol.,147(4):1360−1368;Odakc et al.,1991,Biochemistry,30(8):2217−2227;Vijayalakshmi et al.,1991,Biochemistry,30(8):2175−2183;Kam et al.,1990,Thrombosis & Haemostasis,64(1):133−137;Powers et al.,1989,J.Cell Biochem.,39(1):33−46;Powers et al.,Proteinase Inhibitors,Barrett et al.,Eds.,Elsevier,pp.55−152(1986);Powers et al.,1990,Biochemistry,29(12):3108−3118;Oweida et al.,1990,Thrombosis Research,58(2):391−397;Hudig et al.,1989,Molecular Immunology,26(8):793−798;Orlowski et al.,1989,Archives of Biochemistry & Biophysics,269(1):125−136;Zunino et al.,1988,Biochimica et Biophysica Acta.,967(3):331−340;Kam et al.,1988,Biochemistry,27(7):2547−2557;Parkes et al.,1985,Biochem J.,230:509−516;Green et al.,1981,J.Biol.Chem.,256:1923−1928;Angliker et al.,1987,Biochem.J.,241:871−875;Puri et al.,1989,Arch.Biochem.Biophys.27:346−358;Hanada et al.,Proteinase Inhibitors:Medical and Biological Aspects,Katunuma et al.,Eds.,Springer−Verlag pp.25−36(1983);Kajiwara et al.,1987,Biochem.Int.,15:935−944;Rao et al.,1987,Thromb.Res.,47:635−637;Tsujinaka et al.,1988,Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1201−1208)を参照。米国特許第4935493号;米国特許第5462928号;米国特許第5543396号;米国特許第5296604号;及び米国特許第6201132号も参照。
【0076】
他の実施態様において、HLS−5ポリペプチドは、例えば本明細書に記載されたような薬剤スクリーニングアッセイによって識別できる非ペプチジル化合物である。これらの非ペプチジル化合物は、単に例証のためであるが、合成有機物、天然生成物、核酸又は炭水化物であっても良い。
【0077】
オレフィン、ホスホナート、アザアミノ酸類似体等のようなペプチド模倣薬も含まれる。
【0078】
環状ジペプチド類似体、及びアセタール、ヘミアセタール、ケタール及びヘミケタールを含むカルボニル同等物、及びボロン酸エステル及びハロゲン化物を含む上述のHLS−5化合物のいずれかに加水分解的に変換できるいずれかのHLS−5を主成分とする化合物も同等物とみなされる。
【0079】
本発明は、例えば無毒性有機、又は無機酸からの化合物の従来の無毒性塩、又は第四級アンモニウム塩を含む、HLS−5化合物の医薬上許容し得る塩も包含する。例えば、かかる従来の無毒性塩には、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸から誘導されるもの;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル(salicyclic)酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタン二スルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸等のような有機酸から調製された塩を含む。
【0080】
本発明の医薬上許容し得る塩は、従来の化学的方法によって塩基又は酸性部分を含むHLS−5化合物から合成できる。一般的に、塩は、適切な溶剤中で遊離塩基又は酸を、化学量論量の、又は過剰の所望の塩形成無機又は有機酸又は塩基と反応させることによって調製される。
【0081】
上記HLS−5化合物の予期される同等物には、さもなければそれに相当し、かつその同じ一般的特性(例えばSUMO化を制御する能力)を有する化合物であって、予期される方法に使用中のHLS−5分子の有効性に悪影響を及ぼさない置換基の1つ以上の単純な変異が作られる化合物を含む。一般的に、本発明のHLS−5ポリペプチドは、容易に入手可能な出発原料、試薬及び従来の合成手順を使用して、下記の方法、又はその修正によって調製できる。これらの反応において、それ自体が公知であるが、本明細書に言及されない変異体を使用することも可能である。
【0082】
用語「アミノ酸残基」及び「ペプチド残基」により、そのカルボキシル基の−OHのないアミノ酸又はペプチド分子が意味される。一般的に、アミノ酸及び保護基を指し示すために本明細書で使用される略語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureの勧奨に基づく(Biochemistry(1972)11:1726−1732を参照)。例えばMet、Ile、Leu、Ala及びGlyは、それぞれメチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン及びグリシンの「残基」を表す。残基により、カルボキシル基のOH部分、及びαアミノ基のH部分を取り除くことにより対応するαアミノ酸から誘導される基が意味される。用語「アミノ酸側鎖」は、Kopple,1966,「Peptides and Amino Acids」,WA Benjamin Inc.,New York & Amsterdam,pp 2 and 33によって定義されたような、−CH(NH)COOH部分を除くアミノ酸のその部分である;共通アミノ酸のかかる側鎖の例は、−CHCHSCH(メチオニンの側鎖)、−CH(CH)−CHCH(イソロイシンの側鎖)、−CHCH(CH(ロイシンの側鎖)、又はH−(グリシンの側鎖)である。
【0083】
大部分において、本発明の出願に使用されるアミノ酸は、タンパク質中に見出される自然発生アミノ酸であるか、又はアミノ及びカルボキシル基を含むかかるアミノ酸の自然発生の同化又は異化生成物である。
【0084】
用語「アミノ酸残基」は、本明細書に参照されたいずれかの特定のアミノ酸の類似体、誘導体及び同族体、並びに(例えばN末端又はC末端保護基によって修飾された)C末端又はN末端保護されたアミノ酸誘導体を更に含む。例えば、本発明は、環化のためのカルボキシル、アミノ又は他の反応前駆体官能基をなおも提供しながら、側鎖が、延長又は短縮される、アミノ酸類似体、並びに適切な官能基を有する変異側鎖を有するアミノ酸類似体の使用を予期する。例えばHLS−5ポリペプチドは、例えばシアノアラニン、カナバニン、ジェンコール酸、ノルロイシン、3−ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5−ヒドロキシトリプトファン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸(diaminiopimelic acid)、オルニチン又はジアミノ酪酸のようなアミノ酸類似体を含むことができる。本明細書において適切な、側鎖を有する他の自然発生アミノ酸代謝物又は前駆体は、当業者によって認識され、かつ本発明の範囲に含まれる。
【0085】
アミノ酸の構造に立体異性体の余地がある時、かかるアミノ酸の(D)及び(L)立体異性体も含まれる。本明細書におけるアミノ酸及びアミノ酸残基の形態は、適切な記号(D)、(L)又は(DL)によって指し示され、更に形態が指し示されない時、アミノ酸又は残基は、(D)、(L)又は(DL)の形態を有し得る。本発明の化合物の幾つかの構造は、不斉炭素原子を含むことが注目される。従って、かかる不斉性から生じる異性体は、本発明の範囲内に含まれることが理解されるべきである。かかる異性体は、古典的な分離技術によって、かつ立体的に制御された合成によって実質的に純粋な形状で得ることができる。本出願のために、明示的に反対の言及をしない限り、指名されたアミノ酸は、(D)又は(L)立体異性体の両方を含むと解釈されるべきである。
【0086】
本明細書で使用されるような語句「保護基」は、反応性官能基を、望ましくない化学反応から保護する置換基を意味する。かかる保護基の例には、カルボン酸及びボロン酸のエステル、アルコールのエーテル並びにアルデヒド及びケトンのアセタール及びケタールを含む。例えば、本明細書で使用されるような語句「N末端保護基」又は「アミノ保護基」は、合成手順中の望ましくない反応からアミノ酸又はペプチドのN末端基を保護するために用いることができる種々のアミノ保護基を指す。適切な基の例には、例証のために、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル及びメトキシスクシニルのようなアシル保護基;例えばベンジルオキシカルボニル(Cbz)のような芳香族ウレタン保護基;及びt−ブトキシカルボニル(Boc)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)のような脂肪族ウレタン保護基を含む。
【0087】
本発明のある種のポリペプチドは、特に幾何学的又は立体異性的形状で存在できる。本発明は、本発明の範囲に入るようなシス及びトランス異性体、R及びSエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、そのラセミ混合物、及び他のその混合物を含む全てのかかる形状を予期する。追加不斉炭素原子は、アルキル基のような置換基中に存在しても良い。全てのかかる異性体、並びにその混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0088】
修飾されたHLS−5ポリペプチドの機能(活性)の類似性は、野生型HLS−5ポリペプチドの活性と実質的に同じであっても良い。あるいは、修飾されたポリペプチドの機能(活性)の類似性は、野生型HLS−5ポリペプチドの活性より高くても良い。野生型に対する相同体、変異体、誘導体又は断片の機能/生物学的活性は、例えば生物学的アッセイによって決定できる。例えば、HeLa又はCOS細胞に投与される時、HLS−5は、PIAS1、UBC9及びSUMO−1のレベルを減少させ、そのことは、幾つかのタンパク質生成物の全体的なSUMO化の減少及び他のものの誘発をもたらす。従って、1つの生体内アッセイは、HeLa又はCOS細胞の変異体、すなわち組織等の投与によるタンパク質SUMO化のHLS−5変調に関してテストすることと、ウェスタン分析によって、細胞が、個別のタンパク質生成物のSUMO化レベルを変えたか否かを決定することとを伴う。好ましい相同体、変異体及び断片は、HLS−5全長に対する少なくとも0.5の係数によって、好ましくは少なくとも0.9の係数によってSUMO化を阻害することが可能である。SUMO化機構の要素とのHLS−5の相互作用に基づくもう1つのテストは、生体外SUMO−1修飾アッセイを行うことである。基本的に、50mMのTris−HCl(pH7.5)、50mMのNaCl、10mMのATP、2mMのMgCl,及び0.1mMのジチオスレイトールを含む溶液中の、基質として興味の対象である1μgのタグタンパク質、並びに1μgのE1(GST−Uba2,His−Aos1)、2μgのE2(Ubc9)、及び1μgのSUMO−1を含有する20μgの反応混合物は、2時間30℃でインキュベートされる(例えば、Hatakeyama et al.,2001,J Biol Chem,276,33111−33120参照)。このアッセイは、HLS−5の存在下又は不存在下で行うことができる。反応は、5%のβ−メルカプトエタノールを含有するSDS試料緩衝液の添加及び88℃で5分間加熱することによって終結する。試料は、次に12%のゲル上でSDS−PAGEによって断片化でき、かつ使用されるタグに応じて、SUMO−1(2μg/ml、抗GMP−1)、Myc(1μg/ml、9E10)又はGST(1μg/ml)へのマウスモノクローナル抗体によるイムノブロット分析を受けることができる。免疫複合体は、マウス免疫グロブリンへの西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ウサギポリクローナル抗体によって検出できる。タンパク質基質の阻害の範囲を決定するために、生体外SUMO化アッセイにおけるHLS−5の変異体又は断片。好ましい相同体、変異体及び断片は、HLS−5全長に対する少なくとも0.5の係数によって、好ましくは少なくとも0.9の係数によってHLS−5に結合することが可能である。1つの基質がSUMO化機構の部品に加えられ、かつ修飾された又は「SUMO化」生成物が定量化又は観察される、「SUMO化」アッセイのような、適切な生体外SUMO化アッセイは、当業者に周知である。
【0089】
前掲に記載したように、幾つかの実施態様において、転写因子モジュレーター活性は、ユビキチンリガーゼとしてである。従って、幾つかの実施態様において、変異体又は修飾ユビキチンリガーゼは、生体外ユビキチン化アッセイを使用してテストできる。簡潔に言えば、対数的に成長するHeLa細胞は、6×10細胞/mlの密度で収集できる。細胞は、(O’Connor & Jackman,1995,in Cell Cycle−Materials and Methods,M.Pagano,ed.,Springer,N.Y.,Chap.6)に記載されたような、70μgのロバスタチンによる48時間の処理によってG1中に引き止められる。1μlの生体外翻訳された[35S]p27は、40mMのTris pH7.6、5mMのMgCl、1mMのDTT、10%のグリセロール、lμMのユビキチンアルデヒド、1mg/mlのメチルユビキチン、10mMのクレアチンリン酸、0.1mg/mlのクレアチンホスホキナーゼ、0.5mMのATP、1μMのオカダ酸、20−30μgのHeLa細胞抽出物を含む10μgのユビキチン化混合物中に、30℃で異なる時間(0−75分)インキュベートされる。ユビキチンアルデヒドは、p27からユビキチン鎖を除去するイソペプチダーゼを阻害するために、ユビキチン化反応に添加できる。メチルユビキチンの添加は、細胞抽出物中に存在するユビキチンと競合し、かつp27ユビキチン鎖を終結させる。かかる鎖は、高分子スミアの代わりに離散的な帯として現れる。これらの短いポリユビキチン鎖は、プロテアソームに関して低い親和力を有し、かつそれ故に安定している。反応は、ベータ−メルカプトエタノールを含むLaemmli試料緩衝液によって終結し、かつ生成物は、変性条件でタンパク質ゲルに関して分析できる。
【0090】
ポリユビキチン化p27形状は、オートラジオグラフィによって識別される。p27分解アッセイは、(i)メチル化ユビキチン及びユビキチンアルデヒドが省略される、(ii)HeLa抽出物の濃度が約7μg/μlである、(iii)抽出物が、窒素爆弾破壊手法よりも良くプロテアソーム活性を保存する低張性溶解(Pagano et al.,1995,Science 269:682)によって調製されることを除き、同様の方法で実行される。メチルユビキチンの不存在下で、p27ユビキチン化活性の代わりに、p27分解活性が測定できる。
【0091】
試料は、p27に対する抗体によって免疫沈降され、抗ユビキチン抗体による次の免疫沈降が続き、かつ8%のSDSゲルで実行される。このアッセイによって決定されるような高分子種は、ユビキチン化される。対照として、全ての13のリジンを欠くp27突然変異体が使用できる。
【0092】
ユビキチン化をテストする他の方法は、後掲の実施例に記載される。
【0093】
修飾されたポリペプチドは、従来の技術を使用して合成できるか、又は修飾された核酸によってコードされ、かつ従来の技術を使用して生成される。修飾された核酸は、従来の技術によって調製される。野生型HLS−5遺伝子機能と実質的に類似する機能を有する核酸は、上記の修飾されたタンパク質を生成する。
【0094】
実質的に全長のポリペプチドに加えて、本発明は、ポリペプチドの生物学的に活性な断片を提供する。生物学的に活性な断片は、転写変調活性を保持するポリペプチド断片である。
【0095】
本発明は、HLS−5ポリペプチド及び断片を含む融合ポリペプチドも提供する。相同ポリペプチドは、2つ以上のHLS−5ポリペプチド配列間、又はHLS−5及び関連タンパク質の配列間の融合であっても良い。同様に、誘導タンパク質の特性又は活性の組み合わせを示すであろう異種融合が、構築され得る。
【0096】
例えば、リガンド結合又は他のドメインは、異なる新規な融合ポリペプチド又は断片の間で「交換され」得る。かかる相同又は異種融合ポリペプチドは、例えば、変更された強度又は結合特異性を示すことがある。融合パートナーには、免疫グロブリン、細菌性βガラクトシダーゼ、trpE、Aタンパク質、β−ラクタマーゼ、アルファアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及び酵母アルファ接合因子を含む。
【0097】
融合タンパク質は、概して下記のような組み換え核酸方法によって作られるか、又は化学合成され得る。
【0098】
「タンパク質精製」は、HLS−5をコードする組み換え核酸によって形質転換された細胞からのような、他の生物学的材料からのHLS−5ポリペプチドの単離のための種々の方法を指し、かつ当該技術分野において周知である。例えば、かかるポリペプチドは、例えば本発明によって提供される抗体を用いる免疫アフィニティークロマトグラフィによって精製できる。タンパク質精製の種々の方法が、当該技術分野において周知である。
【0099】
用語「単離された」、「実質的に純粋な」及び「実質的に均質の」は、その自然の状態でそれを伴う成分から分離されたHLS−5ポリペプチドを記載するために同じ意味で使用される。単量体タンパク質は、少なくとも約60から75%の試料が単一のポリペプチド配列を示す時に実質的に精製される。実質的に精製されたタンパク質は、概して約60から90%W/Wのタンパク質試料、大抵は約95%を含み、かつ好ましくは約99%純粋を超える。タンパク質純度又は均質性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、それに続くゲル染色後の、単一のポリペプチド帯の視覚化のような、当該技術分野において周知の多数の手段によって示すことができる。ある種の目的で、HPLC、又は適用のために利用される当該技術分野において周知の他の手段を使用することによって、高い解像度が提供できる。
【0100】
HLS−5ポリペプチドは、その自然の状態でそれを伴う天然汚染物質から分離される時、自然結合された成分が実質的にない。
【0101】
従って、化学合成された、又はそれが自然発生する細胞と異なる細胞系中で合成されたHLS−5ポリペプチドは、その自然結合された成分を実質的に含まない。タンパク質は、当該技術分野において周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって自然結合された成分が実質的にないようにされ得る。
【0102】
単離及び操作された遺伝配列の発現生成物として精製されるHLS−5ポリペプチドは、相同細胞型中で発現されたとしても、本明細書で使用されるような、「単離ポリペプチド」である。異種細胞によって発現される、合成で作られた形状又は分子は、本質的に単離された分子である。
【0103】
本発明の幾つかの実施態様において、用語「HLS−5タンパク質」又は「HLS−5ポリペプチド」は、HLS−5ポリヌクレオチド配列、変異体又はその機能的断片によってコードされるタンパク質又はポリペプチドを指す。ポリヌクレオチドをコードするHLS−5に高い厳密な条件でハイブリダイズするDNAによってコードされるHLS−5ポリペプチド及びHLS−5タンパク質に抗血清によって回収される密接に関係したポリペプチドも含まれる。従って幾つかの実施態様において、用語「転写因子モジュレーター」は、HLS−5ポリペプチド、対立遺伝子変異体、又はその機能的断片を含む類似体をコードするHLS−5ポリヌクレオチド分子を含む。
【0104】
本発明による好ましいポリヌクレオチド分子には、配列番号1及び配列番号3に示されたポリヌクレオチド配列又はその機能的断片を含む。
【0105】
ポリヌクレオチドは、その自然状態で又は当業者に周知の方法によって操作された時に、それがRNA及び/又はポリペプチド又はその断片を生成するために転写及び/又は翻訳され得るならば、ポリペプチドを「コードする」と言われる。アンチセンス鎖は、かかる核酸の補体であり、かつコード化配列は、そこから推測できる。
【0106】
「単離された」又は「実質的に純粋な」核酸(例えばRNA、DNA又は混合重合体)は、天然ヒト配列又はタンパク質、例えばリボソーム、ポリメラーゼ、多くの他のヒトゲノム配列及びタンパク質を自然に伴う他の細胞成分から実質的に分離されたものである。用語は、その自然発生する環境から除去された核酸配列又はタンパク質を包含し、かつ組み換え又はクローン化DNA単離物、及び化学合成された類似体又は異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。
【0107】
「HLS−5遺伝子配列」、「HLS−5遺伝子」、「HLS−5核酸」又は「HLS−5ポリヌクレオチド」は、コード配列、介在配列、並びに転写及び/又は翻訳を制御する調節要素を含む。用語「HLS−5遺伝子配列」は、DNA配列の全ての対立遺伝子変異体を含むことが意図される。
【0108】
これらの用語は、核酸に適用される時、例えばタンパク質融合又は欠失を含む、HLS−5ポリペプチド、断片、相同体又は変異体をコードする核酸を指す。本発明の核酸は、天然HLS−5コード化遺伝子、又は天然HLS−5コード化遺伝子と実質的な相同性を有するもの、又はその一部から誘導されたか、又はそれに実質的に類似する配列を持つ。マウスHLS−5ポリペプチドのコード配列は、配列番号1に示され、アミノ酸配列が、配列番号2に示される。ヒトHLS−5ポリペプチドのコード配列は、配列番号3及び配列番号7に示され、アミノ酸配列が、配列番号4及び配列番号8に示される。
【0109】
核酸又はその断片は、他の核酸(又はその相補鎖)と、(適切なヌクレオチド挿入又は欠失によって)最適に整列された時、少なくとも約60%のヌクレオチド塩基、通常少なくとも約70%、大抵少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、かつ更に好ましくは少なくとも約95−98%のヌクレオチド塩基にヌクレオチド配列同一性があるならば、他方に対して「実質的に相同である」(又は「実質的に類似する」)。
【0110】
あるいは、実質的な相同性又は(同一性)は、鎖又はその補体への選択的ハイブリダイゼーション条件で、核酸又はその断片が、他の核酸(又はその相補鎖)にハイブリダイズする時に存在する。ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性の全体的欠落よりも実質的に選択的なハイブリダイゼーションが発生する時に存在する。概して、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも約14のヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約65%、更に好ましくは少なくとも約75%、かつ非常に好ましくは少なくとも約90%の同一性がある時に発生する。記載されたような相同性比較の長さは、長いストレッチにわたっていても良く、かつある種の実施態様において、多くの場合少なくとも約9のヌクレオチド、通常少なくとも約20のヌクレオチド、大抵少なくとも約24のヌクレオチド、概して少なくとも約28のヌクレオチド、大概少なくとも約32のヌクレオチド、かつ好ましくは少なくとも約36以上のヌクレオチドのストレッチにわたる。
【0111】
従って、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書の配列表に示された配列に対して、好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%の相同性を有する。更に好ましくは、少なくとも95%、更に好ましくは少なくとも98%の相同性がある。ヌクレオチド相同性比較は、ポリペプチドに関して下記のように行うことができる。好ましい配列比較プログラムは、下記のGCG Wisconsin Best fitプログラムである。デフォルトスコアリングマトリックスは、各同一のヌクレオチドに関して10、かつ各ミスマッチに関して−9のマッチ値を有する。デフォルトギャップ作成ペナルティーは、−50であり、かつデフォルトギャップ伸長ペナルティーは、各ヌクレオチドに関して−3である。
【0112】
本発明の文脈において、相同配列は、配列番号1又は配列番号3に示されたヌクレオチド配列と、少なくとも20、50、100、200、300、500又は1000のヌクレオチドにわたるアミノ酸レベルで、少なくとも60、70、80、又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であるヌクレオチド配列を含むように解釈される。特に、相同性は、非必須近接配列よりもむしろ、タンパク質の機能に必須であることが知られている、隣接アミノ酸配列をコードする配列の領域に対して概して考慮されるべきである。それ故に、例えば相同性比較は、好ましくは配列番号2、配列番号4又は配列番号8に示されたHLS−5アミノ酸配列のRingフィンガー、Bボックス、コイルドコイル及び/又はSPRYドメインに対応する領域にわたってなされる。
【0113】
本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸111から152、219から266若しくは368から507をコードする配列番号1のヌクレオチド配列、又は配列番号3中の同等のヌクレオチド配列の1つ以上に対して50、60又は70%を超える相同性、更に好ましくは80、90、95又は97%を超える相同性を有する隣接配列を含む。
【0114】
好ましいポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸36から75をコードする配列番号1の配列、又は配列番号3の対応ヌクレオチド配列に対して80、90、95又は97%を超える相同性を有する隣接配列を代わりに、又は追加で含むことができる。他の好ましいポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸1から35、76から110、153から218及び/又は267から367をコードする配列番号1の配列、又は配列番号3の対応ヌクレオチド配列に対して40、50、60又は70%を超える相同性、更に好ましくは80、90、95又は97%を超える相同性を有する隣接配列を含む。
【0115】
ヌクレオチド配列は、好ましくは長さが少なくとも15のヌクレオチドであり、更に好ましくは長さが少なくとも20、30、40、50、100又は200のヌクレオチドである。
【0116】
一般的にポリヌクレオチドの長さが短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るために必要とされる相同性が、大きくなる。従って、本発明のポリヌクレオチドが、約30未満のヌクレオチドからなる場合、同一%が、本明細書の配列表に示されたHLS−5ヌクレオチド配列と比較して、75%より高く、好ましくは90%又は95%より高いことが好ましい。
【0117】
反対に本発明のポリヌクレオチドが、例えば50又は100を超えるヌクレオチドからなる場合、本明細書の配列表に示されたHLS−5ヌクレオチド配列と比較した同一%は、低く、例えば50%超、好ましくは60又は75%超である。
【0118】
核酸ハイブリダイゼーションは、当業者によって容易に認識されるように、塩基組成、相補鎖の長さ、及びハイブリダイズする核酸の間のヌクレオチド塩基ミスマッチ数に加えて、塩濃度、温度、又は有機溶剤のような条件によって影響を及ぼされる。厳密な温度条件は、一般的に30℃を超える、概して37℃を超える、かつ好ましくは45℃を超える温度を含む。厳密な塩条件は、通常1000mM未満、概して500mM未満、かつ好ましくは200mM未満である。しかしながら、パラメータの組み合わせは、いかなる単一のパラメータの測定よりも遙かに重要である。厳密なハイブリダイゼーション条件の例は、65℃及び0.1×SSC(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)である。
【0119】
本発明の「ポリヌクレオチド」組成物は、当業者によって容易に認識されるように、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成型、及び混合重合体、センス及びアンチセンス両方の鎖を含み、かつ化学的又は生化学的に修飾されても良いか、又は非自然の、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むことができる。かかる修飾には、例えば、標識、メチル化、類似体による、自然発生ヌクレオチドの1つ以上の置換、非荷電結合(例えばメチルホスホネート、リン酸トリエステル、ホスホアミダート、カルバメート等)、荷電結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、懸垂部分(例えばポリペプチド)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート化剤、アルキル剤及び修飾結合(例えばアルファアノマー核酸等)のようなヌクレオチド間(internucleotide)修飾を含む。同様に、水素結合及び他の化学相互作用を介して指定された配列に結合するそれらの能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。
【0120】
かかる分子は、当該技術分野において公知であり、かつ例えばポリペプチド結合が分子の主鎖中でリン酸塩結合に置き換わるものを含む。本発明は、HLS−5領域の全部または一部を含む組み換え核酸を提供する。組み換え構成は、宿主細胞中で自律的に複製することが可能であっても良い。あるいは、組み換え構成は、宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるようになっても良い。かかる組み換えポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNA、半合成又は合成由来のポリヌクレオチドを含み、それは、その由来又は操作のために、1)それが事実上、結合されるポリヌクレオチドの全部又は一部と結合されない;2)それが事実上連結されるもの以外のポリヌクレオチドに連結される;又は3)事実上起こらない。
【0121】
それ故に、さもなければ自然発生しない配列を含む組み換え核酸が、本発明により提供される。野生型配列を用いることができるが、それは、例えば欠失、置換、又は挿入により多くの場合変更される。
【0122】
「組み換え核酸」は、自然発生しないか、又は配列の、2つのさもなければ分離したセグメントの人工的な組み合わせによって作られる核酸である。この人工的な組み合わせは、多くの場合化学合成手段か、又は遺伝子工学技術による核酸の単離セグメントの人工操作によって達成される。そのようなことは、概して配列認識部位を導入又は除去しながら、同じ又は保存アミノ酸をコードする冗長コドンと、コドンを置き換えるために、通常行われる。あるいは、機能の所望の組み合わせを発生させるために、所望の機能の核酸セグメントを一緒に繋ぐことが実行される。種々のタイプのcDNA又はゲノムライブラリは、本発明の核酸の天然源としてスクリーニングできるか、又はかかる核酸は、例えばPCRによってゲノムDNA又は他の天然源中に常在する配列の増幅によって提供できる。cDNAライブラリの選択は、通常所望のタンパク質に関してmRNA中に豊富である組織源に対応する。ファージライブラリが、通常好ましいが、他のタイプのライブラリが使用できる。ライブラリのクローンは、プレートに広げられ、スクリーニングのために基質に移され、変性させられ、かつ所望の配列の存在に関して探査される。
【0123】
本発明で使用される核酸配列は、通常少なくとも約5のコドン(15のヌクレオチド)、大抵少なくとも約7−15のコドン、かつ非常に好ましくは少なくとも約35のコドンを含む。このヌクレオチド数は、通常、本明細書に記載されるような転写因子を変調することがなおも可能である、成功したHLS−5断片に必要とされるほぼ最小の長さである。
【0124】
核酸操作の技術は、一般的に例えば、Sambrook et al.,1989,前掲、又はAusubel et al.,1992,Current Protocols in Molecular Biologyに記載されている。制限酵素等のような、かかる技術の適用に有用な試薬は、当該技術分野において広く知られており、かつNew England BioLabs、Boehringer Mannheim、Amersham、Promega Biotec、US Biochemicals、New England Nuclearのような販売者及び多数の他のソースから市販されている。本発明の融合タンパク質を生成するために使用される組み換え核酸配列は、天然又は合成配列から誘導できる。多くの天然遺伝子配列は、適切なプローブを使用して、種々のcDNA又はゲノムライブラリから得ることができる。GenBank,National Institutes of Healthを参照。
【0125】
本明細書で使用されるような、用語「HLS−5遺伝子配列」は、遺伝子配列又は領域を含む二本鎖DNA、並びに遺伝子配列又は領域を含む一本鎖DNAのいずれかを指す(すなわちコード又は非コード鎖)。
【0126】
本明細書で使用されるような、HLS−5遺伝子配列又は領域の「一部」は、少なくとも約8のヌクレオチド、又は好ましくは約15のヌクレオチド、又は更に好ましくは少なくとも約25のヌクレオチドの最小寸法を有するとして定義され、かつ少なくとも約40のヌクレオチドの最小寸法を有することができる。
【0127】
HLS−5ポリペプチド又はその断片は、いかなる公知の分子技術を介しても得ることができる。PCRは、HLS−5遺伝子配列を得るために使用できる、1つのかかる技術である。この技術は、メッセンジャーRNAを含む、DNA又はRNAを例えば増幅でき、DNA又はRNAが、一本鎖又は二本鎖であっても良い。RNAが、鋳型として使用されるべき場合、DNAへの鋳型の転写を逆転させるために最適の酵素及び/又は条件が、利用できる。その上、各々の一本鎖を含むDNA−RNAハイブリッドが利用できる。核酸の混合物も、用いることができるか、又は同じ又は異なるプライマーを使用する、本明細書に記載された以前の増幅反応において生成された核酸が、このように利用できる。
【0128】
増幅されるべき特定の核酸配列、すなわちHLS−5遺伝子配列は、大きな分子の断片であっても良いか、又は離散分子として当初存在でき、その結果特定の配列が、核酸全体を構成する。増幅されるべき配列が、純粋な形状で当初存在することは、必要でない;それは、完全なヒトDNAに含まれるような、複雑な混合物の小さい断片であっても良い。
【0129】
本明細書で利用されるDNAは、Maniatis et al.1982、前掲によって記載されたような種々の技術によって血液、組織材料等のような身体試料から抽出できる。抽出された試料が、精製されなかったならば、試料の細胞、又は動物細胞膜を開放し、かつ核酸の鎖を露出及び/又は分離するために有効な試料の量によって増幅前に処理できる。鎖を露出及び分離するためのこの溶解及び核酸変性ステップは、増幅が、遙かに容易に起こることを可能にする。
【0130】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸dATP、dCTP、dGTP及びdTTPは、別個に、又はプライマーと一緒に合成混合物に添加される;適切な量で、かつ結果として生じた溶液は、約1から10分間、好ましくは1から4分間、約90°−100℃に加熱される。この加熱期間後、溶液は、冷却することが可能にされ、それはプライマーのハイブリダイゼーションに好ましい。冷却混合物に、プライマー伸長反応を行うために適切な作用物質(本明細書では「重合剤」と呼ばれる)が、添加され、かつ反応は、当該技術分野において公知の条件で起こることが可能にされる。重合剤は、耐熱性であるならば、他の試薬と一緒にも添加できる。この合成(又は増幅)反応は、それを超えると重合剤がもはや機能しない温度までの室温で起こり得る。
【0131】
従って、例えばDNAポリメラーゼが、作用物質として使用されるならば、温度は、一般的に約40℃以下である。非常に好都合には、反応は、室温で起こる。
【0132】
重合剤は、酵素を含むプライマー伸長生成物の合成を達成するために機能するいかなる化合物又はシステムであっても良い。
【0133】
この目的に適した酵素には、例えば大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、ポリメラーゼ突然変異タンパク質、逆転写酵素、耐熱酵素を含む他の酵素(すなわち変性を引き起こすために十分上昇した温度を受けた後に、プライマー伸長を実行する酵素)、例えばTaqポリメラーゼを含む。適切な酵素は、各HLS−5遺伝子配列核酸鎖に相補的であるプライマー伸長生成物を形成するために適切にヌクレオチドの組み合わせを促進する。一般的に、合成は、各プライマーの3’末端で開始され、かつ合成が終了するまで鋳型鎖に沿って5’方向に進み、異なる長さの分子を生成する。
【0134】
新規に合成されたHLS−5鎖及びその相補的核酸鎖は、上記ハイブリダイズ条件で二重鎖分子を形成し、かつこのハイブリッドは、プロセスのその後のステップにおいて使用される。次のステップにおいて、新規に合成されたHLS−5の二重鎖分子は、一本鎖分子を提供するために、上記手順のいずれかを使用する変性条件を受ける。
【0135】
変性、アニーリング及び伸長生成物合成のステップは、検出に必要な範囲で、標的多型遺伝子配列核酸配列を増幅するために必要な回数だけ反復できる。生成される特定の核酸配列量は、指数関数的に蓄積される。増幅は、「PCR.A Practical Approach」,ILR Press,Eds.McPherson et al.,1992に記載される。
【0136】
本発明の方法によって増幅される配列は、PCR、オリゴマー制限(Saiki et al.,1985,Bio/Technology,3:1008−1012)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Conner et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80:278)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landgren et al.,1988,Science,241:1007)等のような特定のDNA配列の検出に通常使用されるいかなる方法によっても、溶液中で、又は固体担体に結合した後に評価、検出、クローン化、配列決定等が更にできる。DNA分析のための分子技術は、総評された(Landgren et al.,1988,Science,242:229−237)。
【0137】
本発明のHLS−5ポリペプチドを得る方法は、本明細書に記載されたような、かつ当業者によって一般に使用されるようなPCRを含む。代替的増幅方法が、記載され、かつ本発明のプライマーを使用するPCRによって増幅されたHLS−5遺伝子配列が、代替手段によって同様に増幅される限りにおいて同様に用いることができる。かかる代替的増幅システムには、興味の対象である短いRNA配列から始まる、自律的配列複製、及びT7プロモーターを含むが、それらに限定されない。逆転写酵素はcDNAにRNAを複写し、かつRNAを分解させ、その後にDNAの第2鎖を重合する逆転写酵素が続く。他の核酸増幅技術は、逆転写及びT7RNAポリメラーゼを使用する核酸配列ベースの増幅(NASBA)であり、かつその循環スキームを標的とするための2つのプライマーを組み込む。NASBAは、DNA又はRNAから開始でき、かついずれで終了でき、かつ60から90分以内に108のコピーに増幅できる。
【0138】
あるいは、HLS−5ポリヌクレオチドは、ライゲーション活性化転写(LAT)によって増幅できる。LATは、部分的に一本鎖であり、かつ部分的に二本鎖である、単一のプライマーを有する一本鎖鋳型から機能する。増幅は、プロモーターオリゴヌクレオチドにcDNAを結紮することによって開始され、かつ数時間以内で増幅は108から109倍である。QBレプリカーゼシステムは、MDV−1と呼ばれるRNA配列を、興味の対象であるDNA配列に相補的なRNAに取り付けることによって利用できる。試料と混合した後、ハイブリッドRNAは、標本のmRNA中でその補体を発見し、かつ結合し、興味の対象である付随(tag−along)配列を複写するために、レプリカーゼを活性化する。もう1つの核酸増幅技術、リガーゼ連鎖反応(LCR)は、試料中の隣接配列の存在下でリガーゼによって共有結合される、興味の対象である配列の2つの異なる標識を付された半分を使用して機能し、新規標的を形成する。修復連鎖反応(RCR)核酸増幅技術は、2つの相補的、かつ標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ対、耐熱性ポリメラーゼ及びリガーゼ、並びにDNAヌクレオチドを使用して、標的配列を幾何学的に増幅する。2塩基ギャップは、オリゴヌクレオチドプローブ対を分離し、かつRCRは、ギャップを充填及び接合し、かつ正常なDNA修復を模倣する。鎖置換活性化(SDA)による核酸増幅は、標的DNAに結合する5’末端に短いオーバーハング(overhang)を有するHinc IIの認識部位を含む短いプライマーを利用する。DNAポリメラーゼは、硫黄含有アデニン類似体を有するオーバーハングの反対側にプライマーの一部を充填する。Hinc IIは、添加されるが、未修飾DNA鎖を切断するのみである。5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼは、切れ目の部位に入り、かつ重合を開始し、初期プライマー鎖を下流に移動させ、かつ更なるプライマーとして役立つ新規のものを構築する。SDAは、2時間、37℃で107倍を超える増幅を生成する。PCR及びLCRと異なり、SDAは、機器を備えた(instrumented)温度サイクルを必要としない。本発明の方法において有用なもう1つの増幅システムは、QBレプリカーゼシステムである。PCRは、本発明ならば好ましい増幅方法であるが、これら他の方法が本発明の方法に記載されたようなHLS−5遺伝子配列を増幅するためにも使用できる。
【0139】
大量の、本発明のHLS−5ポリヌクレオチドが、適切な宿主細胞中の複製によっても生成できる。所望の断片をコードする天然又は合成ポリヌクレオチド断片は、原核又は真核細胞への導入及びその中での複製が可能な、組み換えポリヌクレオチド構成、通常DNA構成に組み込まれる。通常ポリヌクレオチド構成は、酵母又は細菌のような単細胞宿主中の複製に適するが、(ゲノム内への組み込み有り及び無しで)培養された哺乳類又は植物又は他の真核細胞株への導入も対象とできる。
【0140】
二本鎖断片は、相補鎖を合成し、かつ適切な条件下で鎖を一緒にアニーリングすることによるか、又は適切なプライマー配列を有するDNAポリメラーゼを使用して、相補鎖を添加することによって、化学合成の一本鎖生成物から得ることができる。
【0141】
本発明のHLS−5ポリヌクレオチドは、原核生物又は真核生物宿主に導入するために、組み換え複製可能ベクターに組み込むことができる。かかるベクターは、所望のポリペプチドをコードする意図されたポリヌクレオチド断片を含む、宿主によって認識される複製システムを概して含むことができ、かつポリペプチドコード化セグメントに操作可能に連結される転写及び翻訳開始調節配列も好ましくは含む。発現ベクターは、例えば、複製開始点又は自律複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモーター、エンハンサー、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写性終止配列及びmRNA安定化配列のような必要な処理情報部位を含むことができる。タンパク質が、細胞膜を超え、かつ/又は内部に留まることを可能にし、かつそれ故にその機能トポロジーを達成するか、又は細胞から分泌される、分泌シグナルは、必要に応じて、天然HLS−5タンパク質からであれ、又は他の受容体からであれ、又は同じ若しくは関連種の分泌ポリペプチドからであれ、同様に含まれ得る。かかるベクターは、当該技術分野において周知であり、かつ例えばSambrook et al.,1989前掲、又はAusubel et al.1992前掲で論じられる標準的組み換え技術によって調製できる。
【0142】
適切なプロモーター及び他の必要なベクター配列は、宿主中で機能的であるように選択され、かつ必要な場合、HLS−5遺伝子と自然結合されるものを含むことができる。細胞株及び発現ベクターの実行可能な組み合わせの例は、Sambrook et al.,1989前掲、又はAusubel et al.1992に記載される。多くの有用なベクターが、当該技術分野において公知であり、かつStratagene、New England Biolabs、Promega、Biotech他のような販売者から得ることができる。trp、lac及びファージプロモーター、tRNAプロモーター及び解糖分解酵素プロモーターのようなプロモータは、原核生物宿主に使用できる。
【0143】
有用な酵母プロモーターには、メタロチオネイン、ホスホグリセリン酸キナーゼ、又はエノラーゼ又はグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼのような他の糖分解酵素、マルトース及びガラクトース利用の原因となる酵素他のためのプロモーター領域を含む。酵母発現での使用に適したベクター及びプロモーターは、Hitzeman et al.,1983,Science,219,pages 620−625に更に記載されている。
【0144】
適切な非天然哺乳類プロモーターには、SV40からの早期及び後期プロモーター、又はマウスモロニー白血病ウイルス、マウス腫瘍ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルス11、ウシパピローマウイルス又はポリオーマから誘導されたプロモーターを含むことがある。その上、構成は、遺伝子の複数のコピーが作られるように、増幅可能な遺伝子(例えばDHFR)に接合できる。
【0145】
かかる発現ベクターは、自律的に複製できるが、当該技術分野において周知の方法によって、宿主細胞のゲノムに挿入されることによっても複製できる。
【0146】
発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカー、ベクターによって形質転換された宿主細胞の生存又は成長のために必要なタンパク質をコードする遺伝子を含む可能性が高い。この遺伝子の存在は、挿入断片を発現するそれらの宿主細胞のみの成長を確実にする。典型的な選択遺伝子は、a)抗生物質又は他の毒性物質、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート等に耐性を与え、b)栄養要求性欠乏を補足し、又はc)複合培地、例えば桿菌のためのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子から入手可能でない重大な栄養素を供給するタンパク質をコードする。適切な選択可能なマーカーの選択は、宿主細胞によって決まり、かつ異なる宿主のための適切なマーカーは、当該技術分野において周知である。
【0147】
興味の対象である核酸を含むベクターは、生体外で転写でき、かつ周知の方法によって、例えば注射によって宿主細胞に導入された、結果として生じたRNA、又はベクターは、エレクトロポレーション;トランスフェクションを用いる塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン又は他の物質;微粒子銃;リポフェクション;感染(ベクターがレトロウイルスゲノムのような感染因子である場合);及び他の方法を含む、宿主細胞のタイプによって変わる、当該技術分野において周知の方法によって宿主細胞に直接導入できる。とりわけ上記のものを含む当該技術分野において公知のいずれかの方法による宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、本明細書において、「形質転換」と呼ばれる。上記核酸が導入された細胞は、かかる細胞の後代を含むことも意図される。
【0148】
従って、本発明は、本発明の核酸分子によって形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。好ましい宿主細胞には、細菌、酵母、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞及びヒト細胞を含む。
【0149】
例証として、かかる宿主細胞は、大腸菌、シュードモナス、桿菌、ストレプトマイセス、酵母、CHO、R1.1、B−W、L−M、COS 1、COS 7、BSC1、BSC40、BMT10及びSf9細胞からなる群から選択される。
【0150】
大量の、本発明のHLS−5ポリペプチドは、ベクター中にHLS−5ポリヌクレオチド若しくはその部分、又は適合性原核生物若しくは真核生物宿主細胞中の他の発現ビークルを発現することによって調製できる。最も一般に使用される原核生物宿主は、大腸菌株であるが、枯草菌又はシュードモナスのような他の原核生物も使用できる。
【0151】
HLS−5ポリペプチドコード化配列への機能的近傍に、発現調節配列を挿入することからなる相同組み換え事象によってHLS−5ポリペプチドの高度な発現を可能にするために、HLS−5ポリペプチドコード化DNA配列を含み、かつ生体外で修飾される哺乳類細胞も提供される。発現調節配列は、HLS−5ポリペプチド発現であっても、そうでなくても良く、かつ細胞中の変異HLS−5ポリペプチド調節配列を置き換えることができる。
【0152】
従って、本発明は、(a)HLS−5ポリペプチドの発現を提供する条件で、上記のように細胞を培養すること;及び(b)発現されたHLS−5ポリペプチドを回収することを含むHLS−5ポリペプチドを調製する方法も提供する。この手順は、(c)当該技術分野において公知のいずれかの適切な手段を使用してポリペプチドをクロマトグラフィを行うステップ;及び(d)例えばゲル濾過によってポリペプチドを精製するステップを伴うこともできる。
【0153】
酵母、糸状菌、植物、昆虫又は両生類若しくは鳥類のような、哺乳類又は他の真核生物宿主細胞も、本発明のタンパク質の生成に有用であり得る。培養中の哺乳類細胞の伝播は、それ自体が周知である。一般に使用される哺乳類宿主細胞株の例は、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及びW138、BHK、及びCOS細胞株であるが、熟練した実務家は、例えば、高度の発現、望ましいグリコシル化パターン又は他の特徴を提供するために、他の細胞株も適当であり得ることが認識されるであろう。
【0154】
クローンは、ベクター構造様式に応じて、マーカーを使用して選択される。マーカーは、同じ又は異なるDNA分子、好ましくは同じDNA分子上にあっても良い。原核生物宿主において、形質転換体は、例えばアンピシリン、テトラサイクリン又は他の抗生物質への耐性によって選択できる。
【0155】
感温性に基づく、特定の生成物の生成はまた、適切なマーカーとして役立ち得る。
【0156】
本発明のポリヌクレオチドによって形質転換された原核生物又は真核生物細胞は、核酸生成物にだけでなく、本発明のポリペプチドに有用である。
【0157】
幾つかの実施態様において、「転写因子モジュレーター」は、HLS−5の内因性レベル及び/又はHLS−5活性を調節することが可能な化合物又は組成物である。幾つかの実施態様において、これらの化合物及び組成物は、「制御因子」と称される。本発明において有用な制御因子は、標準的アッセイによって設置できる。かかるアッセイを実行する手順は、当業者にとって周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。本明細書で使用されるような、用語「制御因子」、又は「薬剤候補」又は「モジュレーター」又は「修飾剤」又は文法的同等物は、例えば核酸又はタンパク質配列である、HLS−5発現を直接又は間接的に制御する能力に関してテストされる、いかなる分子も、例えばタンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチド等も表す。幾つかの実施態様において、制御因子は、HLS−5の内因性量を減少させ、他方で、他の実施態様において、制御因子は、HLS−5の内因性量を増加させる。
【0158】
用語「薬剤候補」は、多数の化学クラスを含むが、それらは、概して有機分子であり、好ましくは100を超え、かつ約2500ダルトン未満の分子量を有する小有機化合物である。好適な小分子は、2000ダルトン未満、又は1500未満、又は1000未満、又は500未満である。候補制御因子は、タンパク質との構造的相互作用のために必要な官能基、特に水素結合を含み、かつ概して少なくともアミン、バルボニル(barbonyl)、ヒドロキシル又はカルボキシル基、好ましくは官能化学基の少なくとも2つを含む。候補制御因子は、多くの場合上記官能基の1つ以上によって置換された、環状炭素又は複素環構造、及び/又は芳香族若しくは多環芳香族構造を含む。候補制御因子は、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はその組み合わせを含む生体分子中でも見出される。ペプチドが、特に好まれる。
【0159】
HLS−5の内因性レベルに関して本明細書で使用されるような、用語「調節する」は、野生型及び/又は正常レベルと比較した、HLS−5の内因性レベル及び/又はHLS−5活性を増加又は減少させる化合物又は組成物の能力を指す。幾つかの実施態様において、HLS−5の内因性レベル及び/又はHLS−5活性を調節することが可能な、本発明の制御因子は、生体外細胞に基づくアッセイを使用して最初に識別できる。例えば、Chroma−Luc(商標)、Luc(商標)又はGFP(商標)レポーター遺伝子のようなシステムが、複数の異なるクローニングベクターフォーマットで提供できる。ベーシックベクターバージョン(Basic vector version)は、真核生物プロモーター及びエンハンサー配列を欠き、レポーター遺伝子の5’末端でのHLS−5プロモーターのような、クローニング推定調節配列を可能にする、例えばpGL3−ベーシックベクターの設計に基づく、汎用レポーターベクターである。ルシフェラーゼ、又はいずれかのレポーター遺伝子の発現、この「pGL3−プロモーターベクター」によってトランスフェクトされた細胞中の活性は、HLS5プロモーターのような、興味の対象であるクローン化プロモーターを通した発現を直接又は間接的に誘発することが可能な要素又は化合物によって決まる。基本ベクター形態に加えて、Chroma−Luc(商標)遺伝子のような他のシステムが、pGL3−コントロールベクターと類似する、SV40プロモーター及びSV40エンハンサーを含むベクター形態において入手可能である。SV40プロモーター及びエンハンサー配列の存在は、多くの哺乳類細胞型中でluc+の強い発現をもたらす。従って、この技術及び他のいずれかのベクター修飾は、HLS−5プロモーターの下流でレポーター遺伝子を測定することにより、HLS−5タンパク質発現を修飾することが潜在的に可能な化合物のアッセイへのハイスループット適用において、かつ複数ウェルプレート中の迅速な計量に適している。これらの識別された化合物は、次に内因性HLS−5プロモーター、及びウェスタンブロットのような方法によって検定されたタンパク質発現によって、細胞中でテストできる。一般的に、濾過されたルミネセンスを測定することが可能な、いかなるルミノメーターも、二色アッセイを実行することが可能であるべきであり、かつ当該技術分野において熟練したいかなる科学者も、これらのアッセイを再現できる。
【0160】
一旦、HLS−5の内因性レベル及び/又はHLS−5活性を調節することが可能な、適切なベクター又は化合物/組成物中の転写因子モジュレーター、例えばHLS−5ポリペプチド、HLS−5ポリヌクレオチドが、得られたならば、それらは、転写因子活性を変調するために、それを必要とする被検者に次に投与される。従って幾つかの実施態様において、本発明は、「転写因子関連障害」、すなわち転写因子活性によって影響を及ぼされ、制御され、又は悪化する障害を患う被検者を処置する方法を提供し、かつそれ故に、投与ステップは、状態の処置に役立つ。
【0161】
一般的に、用語「処置する」、「処置」等は、本明細書において、所望の薬理学的及び/又は生理的効果を得るために、被検者、例えばヒト個人又は動物、その組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味するために使用される。効果は、転写因子関連障害又は兆候又はその症状を完全に又は部分的に予防することに関して予防的であっても良く、かつ/又は転写因子関連障害を部分的又は完全に治癒することに関して治療的であっても良い。本明細書に使用されるような「処置する」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトにおける転写因子活性に関連した、又はそれによって悪化した状態のいかなる処置又は予防もカバーし、かつ(a)転写因子関連障害を患う傾向があり得るが、それを有するとまだ診断されていなかった被検者において状態が起こることを予防すること;(b)転写因子関連障害を阻害すること、すなわちその発生を止めること;又は(c)状態を軽減又は改善すること、すなわち症状の退縮を引き起こすことを含む。
【0162】
本明細書で使用されるような用語「被検者」は、転写因子活性の変調が望ましい動物被検者を指す。被検者は、ヒトであっても良いか、又は家畜、伴侶若しくは動物園の動物でも良い。本発明の転写因子モジュレーターは、ヒトの医療処置での使用に適することが特に予期されるが、それは、イヌ及びネコのような伴侶動物、及びウマ、ウシ及びヒツジのような家畜、又はヒト以外の霊長類、ネコ科、イヌ科、ウシ科及び有蹄類のような動物園の動物の処置を含む獣医学処置にも適用できる。
【0163】
転写因子モジュレーターは、当該技術分野において周知であるように、処置すべき状態、並びに被検者の年齢、状態及び体重に応じて、種々の形状で投与できる。例えば、転写因子モジュレーターが、経口投与されるべきならば、それは、錠剤、カプセル、顆粒、粉末又はシロップとして処方でき、あるいは非経口投与に関して、それは、注射(静脈内、筋肉内、又は皮下)、点滴製剤又は坐薬として処方できる。眼の粘膜経路による適用のために、それは、点眼液又は眼軟膏剤として処方できる。これらの製剤は、従来の手段によって調製でき、かつ所望であれば、活性成分は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁補助剤、乳化剤又はコーティング剤のようないかなる従来の添加剤とも混合できる。投与量は、被検者の症状、年齢及び体重、治療又は予防すべき状態の性質及び重症度、投与経路及び転写因子モジュレーターの形状に応じて変わるが、一般的に、0.01から2000mgの転写因子モジュレーターの1日投与量が、成人のヒト被検者に勧められ、かつこれは一回量又は分割量で投与できる。
【0164】
転写因子モジュレーターを投与するために有効な時間は、識別される必要がある。これは、日常的実験によって達成できる。例えば、動物において、転写因子モジュレーターによる転写因子活性の制御は、1日の特定の時間に転写因子モジュレーターを投与し、かつ転写因子活性と関連した1つ以上の指数を測定することによって投与の効果(もしあれば)を測定し、かつこれらの指数の処置後の値を、処置前の同じ指数の値と比較することによって評価できる。
【0165】
所与の被検者における処置の有効性に関して最も有効な結果を生じる、転写因子モジュレーターの正確な投与時間及び/又は量は、特定の転写因子モジュレーターの活性、薬物動態学及び生物学的利用能、(年齢、性別、疾患タイプ及び段階、一般的な物理的状態、所与の投与量に対する応答性及び薬物のタイプを含む)被検者の生理的条件、投与経路等によって決まる。しかしながら、上記の指針は、処置を微調整するための、例えば被検者を監視し、かつ投与量及び/又はタイミングを調整することからなる、日常的実験の域を出ないものを必要とする投与の最適な時間及び/又は量を決定するための基盤として使用できる。
【0166】
本明細書で使用されるような、語句「医薬的有効量」及び「治療的有効量」は、ある所望の治療効果、例えばいかなる医療処置にも適用できる妥当な利益/危険率でのタンパク質の転写因子活性の阻害を生成するために有効である転写因子モジュレーターの量を意味する。
【0167】
語句「医薬上許容し得る」は、健全な医学判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答又は他の問題又は合併症なしに、妥当な利益/危険率と釣り合った、人間及び動物組織との接触する使用に適した、転写因子モジュレーター、材料、組成物及び/又は剤形を指すために本明細書において用いられる。
【0168】
本明細書において使用されるような語句「医薬上許容し得る担体」は、転写因子モジュレーターを一方の器官又は身体部分から、他方の器官又は身体部分に運搬又は輸送することに関与する、液体又は固体充填剤、希釈液、賦形剤、溶剤又は封入材料のような、医薬上許容し得る材料、組成物又はビークルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性を持つという意味において「許容でき」なければならず、かつ被検者に有害であってはならない。医薬上許容し得る担体として役立ち得る材料の幾つかの例には:(1)ラクトース、グルコース及びショ糖のような糖;(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプンのようなデンプン;(3)カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂及び坐薬ワックスのような賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合物質を含む。
【0169】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香料、及び芳香剤、防腐剤、及び抗酸化剤も、組成物中に存在し得る。
【0170】
医薬上許容し得る抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチンのような油溶性抗酸化剤;没食子酸プロピル、α−トコフェロール等;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート化剤を含む。
【0171】
本発明の方法に有用な製剤には、経口、経鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸、膣内、エアロゾル及び/又は非経口投与を含む。製剤は、好都合には、単位剤形で提供でき、かつ薬学技術分野において周知のいかなる方法によっても調製できる。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置されている宿主、特定の投与様式に応じて変わる。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的に治療効果を生成する化合物の量である。一般的に、100パーセントの中から、この量は、約1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、非常に好ましくは約10パーセントから約30パーセントの有効活性に及ぶ。
【0172】
これらの製剤又は組成物を調製する方法には、転写因子モジュレーターを、担体、及び任意には1種以上の副成分と結合させるステップを含む。一般的に、製剤は、転写因子モジュレーターを、液体担体、又は微粉化した固体担体、又は両方と均一かつ密接に結合させ、かつ次に必要ならば生成物を成形することによって調製される。
【0173】
経口投与に適した製剤は、カプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、菓子錠剤(香料添加主成分、通常ショ糖及びアカシア又はトラガカントを使用する)、粉末、顆粒の形状で、又は水性若しくは非水性液体中での溶液若しくは懸濁液として、又は水中油形若しくは油中水形液状エマルジョンとして、又はエリキシル剤若しくはシロップとして、又はトローチ(ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシアのような不活性主成分を使用する)として、かつ/又は口内洗剤等としてでも良く、各々が活性成分として所定量の転写因子モジュレーターを含む。化合物は、ボーラス、舐剤又はペーストとしても投与できる。
【0174】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、粉末、顆粒等)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような1種以上の医薬上許容し得る担体、及び/又は以下:(1)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸のような充填剤又は増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアのような結合剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカテンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解遅延剤;(6)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)例えばアセチルアルコール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物のような潤滑剤;及び(10)着色剤のいずれかと混合される。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含むことができる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中で充填剤としても用いることができる。
【0175】
錠剤は、任意に1種以上の副成分と共に圧縮又は成形によって、作ることができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えばナトリウムデンプングリコレート又は架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を使用して調製できる。成形錠剤は、不活性液体希釈液によって湿らせた粉末ペプチド又はペプチド模倣薬の混合物を適切な機械中で成形することによって作ることができる。
【0176】
錠剤、及び糖衣錠、カプセル、丸薬及び顆粒のような他の固体剤形は、任意に刻み目を付けられるか、又は腸溶コーティング及び医薬製剤技術において周知の他のコーティングのようなコーティング及びシェルによって調製できる。それらは、所望の放出プロフィール、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の比率で使用して、内部の活性成分の徐放又は制御放出を提供するようにも処方できる。それらは、例えば細菌を保持するフィルタを通して、又は滅菌水中に溶解できる滅菌の固体組成物、若しくは他の何らかの滅菌の注射可能な培地の形状で、使用直前に滅菌剤を組み込むことによる濾過によって滅菌できる。これらの組成物は、任意に乳白剤も含むことができ、かつ活性成分のみを、又は優先的には胃腸管のある部分において任意に遅延して放出する組成物であっても良い。使用できる埋設組成物の例には、高分子物質及びワックスを含む。活性成分は、適当であるならば、上記の賦形剤の1種以上を有するマイクロカプセルの形状であっても良い。
【0177】
経口投与用の液体剤形には、医薬上許容し得るエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般に使用される、例えば水又は他の溶剤のような不活性希釈剤、エチルアルコール、イソドロピル(isodropyl)アルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールのような可溶化剤及び乳化剤、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタン脂肪酸エステル及びその混合物を含むことができる。
【0178】
不活性希釈剤の他に、口腔用組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤及び防腐剤のようなアジュバントも含むことができる。
【0179】
懸濁液は、活性転写因子モジュレーターに加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント及びその混合物のような懸濁剤を含むことができる。
【0180】
転写因子モジュレーターの局所又は経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤を含む。活性成分は、滅菌条件下で、医薬上許容し得る担体、及び必要とされ得るいかなる防腐剤、緩衝液、又は推進剤とも混合できる。
【0181】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、転写因子モジュレーターに加えて、動物性、及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛又はその混合物のような賦形剤を含むことができる。
【0182】
粉末及びスプレーは、転写因子モジュレーターに加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含むことができる。スプレーは更に、クロロフルオロ炭化水素のような慣習的な推進剤、並びにブタン及びプロパンのような揮発性の非置換の炭化水素を含むことができる。
【0183】
転写因子モジュレーターは、あるいはエアロゾルによって投与できる。これは、化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム製剤又は固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えばフッ化炭素推進剤)懸濁液が、使用できる。音響噴霧器は、化合物の分解をもたらし得る、剪断すべき作用物質の露出を最小限に抑えるので、好ましい。
【0184】
通常、水性エアロゾルは、従来の医薬上許容し得る担体及び安定剤と共に作用物質の水溶液または懸濁液を処方することによって作られる。担体及び安定剤は、特定の化合物の要件によって異なるが、概して非イオン性界面活性剤(ツイーン、プルロニック又はポリエチレングリコール)、無害性のタンパク質、例えば血清アルブミン、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸、緩衝液、塩、糖又は糖アルコールを含む。エアロゾルは、一般的に等張液から調製される。
【0185】
経皮パッチは、身体への転写因子モジュレーターの制御送達を提供するという追加された利点を有する。かかる剤形は、適切な培地中で作用物質を溶解又は分散させることによって作ることができる。吸収促進薬は、皮膚を横切るペプチド模倣薬の流束を増加させるためにも使用できる。かかる流束の速度は、速度制御膜を提供するか、又はポリマーマトリックス若しくはゲル中でペプチド模倣薬を分散させることによって制御できる。
【0186】
眼科製剤、眼軟膏剤、粉末、溶液等は、同様に本発明の範囲内にあると予期される。
【0187】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種以上の医薬上許容し得る滅菌の等張性水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、又は意図された受容者の血液又は懸濁剤又は増粘剤によって製剤を等張性にする、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、溶質を含むことができる、使用直前に滅菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成できる滅菌粉末と組み合わせて、1種以上の転写因子モジュレーターを含む。
【0188】
本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性、及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール、(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びその適切な混合物、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散液の場合に必要な粒径の維持によって、かつ界面活性剤の使用によって維持できる。
【0189】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤のようなアジュバントも含むことができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の包含によって確実にできる。糖、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物に含むことも望ましいことがある。その上、注射可能な医薬形状の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の包含によってもたらされることがある。
【0190】
幾つかの場合において、転写因子モジュレーターの効果を延ばすために、皮下、又は筋肉注射からの作用物質の吸収を遅くすることが望ましい。これは、低い水溶性を有する結晶質又は非晶質材料の液体懸濁液を使用することによって達成できる。薬剤の吸収速度は、次にその溶解速度によって決まり、溶解速度は、次に結晶の寸法及び結晶形状によって決まり得る。あるいは、非経口投与された剤形の遅延吸収は、モジュレーターを油ビークル中で溶解又は懸濁することによって達成される。
【0191】
注射可能な貯蔵形状は、ポリ乳酸ポリグリコリドのような生分解性高分子中で転写因子モジュレーターのマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作られる。モジュレーターの重合体に対する比、及び用いられる特定の重合体の性質に応じて、モジュレーター放出速度が、制御できる。他の生分解性高分子の例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)を含む。貯蔵注射可能製剤は、身体組織と適合性を持つリポソーム又はミクロエマルジョン中にモジュレーターを取り込むことによっても調製される。
【0192】
本明細書で使用されるような、語句「非経口投与」及び「非経口投与される」は、通常、注射による、腸内及び局所投与以外の投与様式を意味し、かつ静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び輸液を含むが、それらに限定されない。
【0193】
本明細書で使用されるような、語句「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、及び「末梢投与される」は、転写因子モジュレーターを中枢神経系に直接以外に、それが被検者の系に入り、かつ従って代謝及び他の同様のプロセスを受けるように、投与すること、例えば皮下投与を意味する。
【0194】
本発明のもう1つの形態は、1つ以上の他の治療剤が、転写因子モジュレーターと投与される、共同治療を提供する。かかる共同治療は、処置の個別の成分の同時、順次又は別個の投薬によって達成できる。
【0195】
幾つかの実施態様において、転写因子モジュレーターは、抗癌剤、又は処置される状態の処置に有用であることが知られている他の治療剤と共同で投与される。例えば、抗癌剤と一緒にHLS−5発現ベクターを使用する遺伝子治療。
【0196】
もう1つの例証的な実施態様において、被検者制御因子は、転写因子作用剤又は拮抗剤と共同で投与できる。
【0197】
前掲で記載したように、幾つかの実施態様において、生体内送達又は発現のための本発明のHLS−5ポリヌクレオチド及びベクター。このアプローチは、「遺伝子治療」とも呼ばれ、かつそのようなものとして当該技術分野において周知である。遺伝子治療手順は、インフルエンザウイルス感染前、実質的に同時期、又は後に、HLS−5ポリペプチドの発現を被検者に向けることが可能な、治療的有効量のHLS−5ポリヌクレオチドベクターを投与することを含むことができる。代替的に、又は前述のものと組み合わせて使用できるもう1つのアプローチは、細胞、例えば幹細胞又は免疫系細胞の集団を被検者から単離し、任意に組織培養中で細胞を拡大し、かつHLS−5の発現を生体外で細胞に向けることが可能な、HLS−5ポリヌクレオチドベクターを投与することである。細胞は、次に被検者に戻されても良い。任意に、HLS−5ポリヌクレオチドを発現する細胞は、それらを被検者に導入する前に、生体外で選択できる。本発明の幾つかの実施態様において、細胞株から、又は被検者でない個人からの細胞であっても良い、細胞の集団が、使用できる。幹細胞、免疫系細胞等を被検者から単離し、かつそれらを被検者に戻す方法は、当該技術分野において周知である。かかる方法は、例えば化学治療を受けている患者において、骨髄移植、末梢血幹細胞移植等で使用される。
【0198】
更にもう1つのアプローチにおいて、経口遺伝子治療が、使用できる。例えば、米国特許第6248720号は、プロモーターの制御下の遺伝子が、微小粒子中に保護されて含まれ、かつ細胞に操作形状で送達され、それにより非侵襲性遺伝子送達を達成する、方法及び組成物を記載している。微小粒子の経口投与に続き、遺伝子は、吸収腸上皮細胞を含む上皮細胞に取り込まれ、腸管関連リンパ組織に取り込まれ、かつ粘膜上皮から離れた細胞に輸送もされる。そこに記載されたように、微小粒子は、遺伝子を粘膜上皮から離れた部位に送達できる、すなわち上皮バリアを通過し、かつ全身循環に入ることができ、それにより細胞を他の位置でトランスフェクトする。
【0199】
本明細書で使用されるような、用語「状態」は、細胞中の転写因子の機能によって引き起こされるか、又はそれと関連する疾患、障害又は状態を含む、用語「転写因子関連障害」と同じ意味で使用される。転写因子関連障害は、転写因子誘発の遺伝子転写を介して、直接又は間接的に進む、疾患、障害又は状態を含む。
【0200】
現在、癌(例えば異常な細胞アポトーシス)、ウイルス感染症及びクローン病を含むが、それらに限定されない、異常転写因子活性によって影響を及ぼされることが知られている多くの状態/障害がある。それ故、例えば、転写因子関連障害は、(a)虚血性疾患、例えば器官の虚血性疾患(例えば、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全のような虚血性心疾患、脳梗塞のような虚血性脳疾患、及び肺梗塞のような虚血性肺疾患)、器官移植又は器官手術の予後悪化(例えば、心臓移植、心臓手術、腎臓移植、腎臓手術、肝臓移植、肝臓手術、骨髄移植、皮膚移植、角膜移植及び肺移植の予後悪化)、再灌流障害及びPTCA後再狭窄、(b)炎症性疾患、例えば腎炎、肝炎、関節炎、急性腎不全、慢性腎不全及び動脈硬化、及び(c)自己免疫性疾患、例えばリウマチ、多発硬化症及び橋本甲状腺炎のようなNF−KB関連障害であり得る。本発明のNF−KB含有転写因子モジュレーターは、虚血性疾患における再灌流障害、器官移植又は器官手術の予後悪化、PTCA後再狭窄、癌転移及び浸潤、及び癌の発症に続く体重減少のような悪液質の治療及び予防に、特に適している。
【0201】
転写因子関連障害は、アンドロゲン関連障害、すなわちアンドロゲン受容体誘発の遺伝子転写を介して、直接又は間接的に進む、疾患、障害又は状態でもあり得る。アンドロゲン関連障害には、良性前立腺肥大症、男性型禿頭症、座瘡、特発性多毛症、及びシュタイン−レーベンタール症候群を含む。アンドロゲン関連障害には、成長がアンドロゲンによって促進される癌、例えば前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、大腸癌、肝癌、子宮内膜癌、膵臓癌、肺癌、食道癌、喉頭癌及び乳癌を更に含む。他のアンドロゲン関連障害には、アンドロゲン不感性症候群、不妊性、子宮内膜癌、及びX連鎖脊髄延髄性筋萎縮症(SMBA)を含む。部分的アンドロゲン不感性症候群の例には、不完全睾丸女性化症侯群、ライフェンシュタイン症候群、リューブス(Lubs)症候群、ジルベール(Gilbert)−ドライフス(Dreifus)症候群、及びローズウォーター(Rosewater)症候群を含む。
【0202】
転写因子関連障害は、エストロゲン受容体関連障害、すなわちエストロゲン受容体誘発の遺伝子転写を介して、直接又は間接的に進む、疾患、障害又は状態でもあり得る。エストロゲン受容体関連障害の例には、乳癌、骨粗鬆症、子宮内膜症、心臓血管疾患、高コレステロール血症、前立腺肥大症、前立腺癌、肥満、一過性熱感、表皮効果、気分変動、記憶喪失、更年期症候群、脱毛(脱毛症)、II型糖尿病、アルツハイマー病、尿失禁、消化管状態、精子形成、血漿中脂質レベル、座瘡、多毛症に関連した障害、(結腸、肺、卵巣、精巣、黒色腫、 CNS及び腎臓のような)他の固形癌、多発性骨髄腫、白内障、リンパ腫、及び環境化学物質に対する曝露に関連した有害な生殖影響を含む。
【0203】
他の実施態様において、転写因子関連障害は、異常(異常に増加又は減少した)アポトーシス過程に関連した障害である。これらは、減少したアポトーシス過程に関連した障害、例えば細胞増殖障害、又は細胞分化障害、例えば癌、自己免疫不全、又は乾癬、及び増加するアポトーシスに関連した障害、例えば(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、虚血性脳損傷、及びハンチントン病のような神経変性障害を含む)変性障害を伴う障害、緑内障、年齢関連性黄斑変性(AMD)、
末梢神経障害、卒中、鬱病、ダイアモンド−ブラックファン貧血(DBA)、ファンコニー貧血(FA)、シュバッハマン−ダイヤモンド症候群(SDS)、虚血性傷害(心筋梗塞)及び(例えばHIV/AIDSと関連した)ウイルス誘発リンパ球枯渇を含む。
【0204】
細胞増殖及び/又は分化障害の例には、癌、例えば上皮癌、肉腫、転移性障害、又は造血腫瘍性障害、例えば白血病を含む。転移性腫瘍は、前立腺、結腸、肺、乳房及び肝臓由来のそれを含むが、それらに限定されない複数の原発腫瘍型に起因することがある。
【0205】
本明細書で使用されているように、用語「癌」、「高増殖性」及び「腫瘍性」は、自律的成長、すなわち急速に増殖する細胞成長を特徴とする異常な状態又は条件のための能力を有する細胞を指す。高増殖性、及び腫瘍性の病態は、病的、すなわち病態を特徴付けるか、又は構成するとして分類できるか、又は非病的、すなわち正常からの偏向であるが、病態と関連しないとして分類できる。用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲性の段階にかかわりなく全てのタイプの癌成長又は腫瘍発生過程、転移性組織、又は悪性形質転換細胞、組織、又は器官を含むことが意図される。「病的高増殖性」細胞は、悪質な腫瘍成長を特徴とする病態において起こる。非病的高増殖性細胞の例には、傷の修復に関連する細胞増殖を含む。
【0206】
増殖障害の追加の例には、造血腫瘍性障害を含む。本明細書で使用されるような、用語「造血腫瘍性障害」は、造血由来の、例えば、骨髄、リンパ球、又は赤血球系列又はその前駆細胞に起因する、過形成/腫瘍性細胞を伴う疾患を含む。幾つかの実施態様において、疾患は、低分化急性白血病、例えば赤芽球白血病及び急性巨核芽球性白血病に起因する。追加の代表的な骨髄障害には、急性前骨髄白血病(APML)、急性骨髄白血病(AML)、及び慢性骨髄白血病(CML)を含むが、それらに限定されない;リンパ性悪性疾患は、B−系列ALL及びT−系列ALLを含む、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含むが、それに限定されない。悪性リンパ腫の追加の形状は、その非ホジキンリンパ腫及びその変異体、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大型顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病及びリード−スタンバーグ病を含むが、それらに限定されない。
【0207】
増殖及び/又は分化障害の他の例には、皮膚障害を含む。皮膚障害は、真皮、上皮又は下皮層の細胞又は細胞群又は層の異常活性、又は真皮−上皮接合部における異常を伴うことがある。
【0208】
皮膚障害の例には、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎(湿疹)、例えば剥脱性皮膚炎又はアトピー性皮膚炎、毛孔性紅色粃糠疹、バラ色粃糠疹(pityriasis rosacea)、類乾癬、苔癬状粃糠疹(pityriasis lichenoiders)、扁平苔癬、光沢苔癬、魚鱗癬様皮膚病、角皮、皮膚病、円形脱毛症(alopecia greata)、壊疽性膿皮症、白斑、類天ぽうそう(例えば、眼瘢痕性類天疱瘡又は水疱性類天疱瘡)、じんま疹、プロ角化症(prokeratosis)、過剰増殖及び関節嚢の覆いになる上皮関連細胞の炎症を伴うリウマチ性関節炎;アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎又は日光皮膚炎のような皮膚炎;脂漏性角化症、老人性角化症、光線性角化症、光誘発角化症及び毛包性角化症のような角化症;尋常性座瘡;ケロイド及びケロイド形成予防;母斑;ゆうぜい、コンジローム又は尖圭コンジロームを含むいぼ及び性病いぼのようなヒトパピローマウイルス性(HPV)感染症;白板症;扁平苔癬;角膜炎及びウイルス感染症を含む。
【0209】
従って、例えば転写因子関連障害は、(a)虚血性疾患、例えば器官の虚血性疾患(例えば、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全のような虚血性心疾患、脳梗塞のような虚血性脳疾患、及び肺梗塞のような虚血性肺疾患)、器官移植又は器官手術の予後悪化(例えば、心臓移植、心臓手術、腎臓移植、腎臓手術、肝臓移植、肝臓手術、骨髄移植、皮膚移植、角膜移植及び肺移植の予後悪化)、再灌流障害及びPTCA後再狭窄、(b)炎症性疾患、例えば腎炎、肝炎、関節炎、急性腎不全、慢性腎不全及び動脈硬化、及び(c)自己免疫性疾患、例えばリウマチ、多発硬化症及び橋本甲状腺炎のようなNF−KB関連障害であり得る。本発明のNF−KB含有転写因子モジュレーターは、虚血性疾患における再灌流障害、器官移植又は器官手術の予後悪化、PTCA後再狭窄、癌転移及び浸潤、及び癌の発症に続く体重減少のような悪液質の治療及び予防に、特に適している。
【0210】
本発明は、(その参照が、上記のように相同体、変異体、誘導体、及び断片を含む)HLS−5ポリペプチドに結合する物質を識別することに適したアッセイも提供する。その上、SUMO化に関与する細胞成分へのHLS−5結合を妨げる物質、例えばHLS−5と相互作用するとして酵母ツーハイブリッドスクリーンにおいて識別されるタンパク質を識別することに適したアッセイが提供される。全細胞アッセイでの非損傷細胞に対する予備生体外アッセイで識別された候補物質の効果をテストするアッセイも提供される。
【0211】
例えば、HLS−5ポリペプチドとの相互作用の結果として転写因子活性を変える物質は、幾つもの方法で、それを行うことができる。それは、例えばHLS−5に結合し、かつ他の成分との相互作用部位を遮蔽又は変えることによって、細胞周期機構の細胞成分へのHLS−5の結合を直接分断させることができる。このタイプの候補物質は、例えば以下に記載され、かつ次に以下に記載するような全細胞アッセイで例えばテストされるような生体外結合アッセイによって好都合には予めスクリーニングできる。
【0212】
ユビキチンリガーゼ発現及び活性を分断又は抑える能力に関する潜在的作用物質をスクリーニングする方法は、その公知の、かつ潜在的な基質に基づき設計できる。例えば、候補化合物は、HLS−5及びSkp1の相互作用、又はE2F−1とのSkp2、Cks1とのSkp2、Cks1及びp27とのSkp2、又はβ−カテニンとのFBP1/Cull/Skp1複合体の特異的相互作用を変調するその能力に関してスクリーニングできる。原則として、当業者に公知である多くの方法が、本発明の設計されたアッセイに容易に適し得る。
【0213】
本発明のスクリーニングアッセイは、HLS−5発現及び活性のモジュレーターを識別するための高スループットスクリーン及びアッセイも包含する。この実施態様によれば、以下に記載するシステムは、キットに構成できる。そのために、HLS−5を発現する細胞及びユビキチンリガーゼ複合体の構成要素、及びユビキチン化経路、又はその細胞溶解物は、種々の容器、例えばバイアル、管、マイクロタイターウェルプレート、ビン等に包装できる。他の試薬は、別個の容器に含まれることがあり、かつキット、例えば正の対照試料、負の対照試料、緩衝液、細胞培養基を備えることができる。
【0214】
本発明は、タンパク質及びHLS−5遺伝子及びその遺伝子生成物に結合されるか、又は他の方法で直接相互作用する他の化合物の識別に有用な、スクリーニング方法論を提供する。スクリーニング方法論は、当該技術分野において周知である(例えば、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、1996年10月31日に公開された国際特許公開第WO96/34099号を参照)。タンパク質及び化合物は、生体内で識別された遺伝子及びタンパク質と相互作用し、かつそれ故に医薬及び治療的介入のための新規な標的を提供し得る内因性細胞成分、並びに結合能力を有することがあり、かつそれ故に医薬剤の候補であり得る、組み換え、合成及び他の方法で外因性の化合物を含む。従って、一連の実施態様において、細胞溶解物又は組織ホモジネートは、正常又は突然変異HLS−5遺伝子及びHLS−5タンパク質の1つに結合する、タンパク質及び他の化合物に関してスクリーニングできる。
【0215】
あるいは、自然発生及び/又は合成の両方の、種々の外因性化合物のいずれも(例えば、小分子又はペプチドのライブラリ)は、結合能力に関してスクリーニングできる。これらの方法の全ては、テスト化合物と、HLS−5タンパク質又は断片を混合するステップを含み、いずれかの結合が起こる時間を取り、かついずれかの結合された複合体を検定する。全てのかかる方法は、実質的に純粋なHLS−5タンパク質、実質的に純粋な機能ドメイン断片、融合タンパク質、抗体、及びそれを製造及び使用する方法の現在の本開示によって可能にされる。
【0216】
前述のように、細胞に投与される時、又はその発現レベルが高い時、HLS−5が、PIAS1、UB1、BUC9及びSUMO−1のレベルを減少させ、幾つかのタンパク質標的の全体的なSUMO化の減少及び他の誘発をもたらす。従って、生体内SUMO化アッセイは、本発明のHLS−5転写因子モジュレーターに対する候補化合物の効果に関するテストであり、かつこのことは、例えばHeLa又はCOS細胞の変異体等を投与することによって行うことができ、かつウェスタン分析によって細胞が、個別のタンパク質生成物のSUMO化レベルを変えたかを決定できる。
【0217】
幾つかの実施態様において、本発明の制御因子は、HLS−5によってコード化される、1つ以上のmiRNAの発現を減少させるための、RNA干渉(RNAi)の使用に関する。RNAi構成は、標的遺伝子、例えばHLS−5の発現を特異的に遮断できる、二本鎖RNAを含む。「RNA干渉」又は「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が特異的かつ転写後に遺伝子発現を遮断する、植物及び虫において観察された現象に当初適用された用語である。RNAiは、生体外又は生体内で遺伝子発現を阻害する有用な方法を提供する。RNAi構成は、HLS−5核酸配列と同一又は実質的に同一のdsRNAの長いストレッチ、又はHLS−5核酸配列の領域のみと同一又は実質的に同一のdsRNAの短いストレッチを含むことができる。
【0218】
本明細書で使用されるような、用語「RNAi構成」は、低分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びsiRNAを形成するために生体内で分割できる、他のRNA種を含む一般名称である。RNAi構成は、本明細書において、細胞中にdsRNA又はヘアピンRNAを形成する転写、及び/又は生体内でsiRNAを生成できる転写を生じさせることが可能な(RNAi発現ベクターとも呼ばれる)発現ベクターも含む。ある種の実施態様において、RNAi構成は、非酵素的核酸である。
【0219】
任意にRNAi構成は、HLS−5遺伝子のmRNA転写の少なくとも一部のヌクレオチド配列に、細胞の生理的状態でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。二本鎖RNAは、RNAiを媒介する能力を有するように、天然RNAに十分に類似する必要があるのみである。従って、本明細書に記載されるRNAi構成は、遺伝子突然変異、菌株の多型性、又は進化的分岐のために予期され得る配列の変動に許容できるという利点を有する。標的配列及びRNAi構成配列の間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中で1以下、又は10塩基対中で1、又は20塩基対中で1、又は50塩基対中で1である。siRNA二本鎖の中心でのミスマッチは、非常に重大であり、かつHLS−5RNAの分割を本質的に廃止することがある。対照的に、HLS−5RNAに相補的である、siRNA鎖の3’末端でのヌクレオチドは、標的認識の特異性に著しく寄与しない。配列同一性は、当該技術分野において公知の配列比較及びアラインメントアルゴリズムによって(Gribskov and Devereux,Sequence Analysis Primer,Stockton Press,1991及びそこに引用された参考文献を参照)、かつ例えばデフォルトパラメータを使用する、BESTFITソフトウェアプログラムに実装されたようなスミス−ウォーターマン・アルゴリズムによってヌクレオチド配列間の差の割合を計算することによって最適化できる(例えばUniversity of Wisconsin Genetic Computing Group)。阻害RNA及び標的遺伝子の一部の間の90%、95%、96%、97%、98%又は99%を超える配列同一性、又は100%の配列同一性でも、好まれる。あるいは、RNAの二本鎖領域は、標的遺伝子転写の一部による、特異的な条件下でハイブリダイズすることが可能な、ヌクレオチド配列として機能的に定義できる(例えば、400mMのNaCl、40mMのPIPES pH6.4、1mMのEDTA、50@C又は70@C。12−16時間のハイブリダイゼーション、洗浄が続く)。
【0220】
二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖又は2つの相補的RNA鎖によって形成できる。RNA二本鎖形成は、細胞内側又は外側で開始できる。RNAは、細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入できる。高い用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000のコピー)の二本鎖材料は、より効果的な阻害を引き起こすことができ、他方で低い用量も、特異的な適用に有用なことがある。阻害は、RNAの二本鎖領域に対応するヌクレオチド配列が、遺伝子阻害のために標的とされることにおいて配列特異的である。
【0221】
被検者RNAi構成は、「低分子干渉RNA」又は「siRNA」であっても良い。これらの核酸は、長さが約19−30ヌクレオチドであり、かつ更に好ましくは長さが約21−23ヌクレオチドである。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体を補充し、かつ特異的配列に対合することによって複合体を標的mRNAに誘導することが理解される。結果として、標的mRNAは、タンパク質複合体中のヌクレアーゼによって分解される。特殊な実施態様において、21−23ヌクレオチドsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。ある種の実施態様において、siRNA構成は、例えば酵素ダイサーの存在下で、長い二本鎖RNAを処理することによって発生させることができる。
【0222】
あるいは、RNAi構成は、(ヘアピンRNAと呼ばれる)ヘアピン構造の形状である。ヘアピンRNAは、外部から合成できるか、又は生体内でRNAポリメラーゼIIIプロモーターから転写することによって形成できる。哺乳類細胞中での遺伝子サイレンシングのために、かかるヘアピンRNAを製造及び使用する例は、例えば、Paddison et al.,2002,Genes Dev,16:948−58;McCaffrey et al.,2002,Nature,418:38−9;McManus et al.,2002,RNA,8:842−50;Yu et al.,2002,Proc Natl Acad Sci USA,99:6047−52)に記載される。好ましくは、かかるヘアピンRNAは、連続的かつ安定したHLS−5抑制を確実にするために、細胞又は動物中で操作される。siRNAが、細胞中でヘアピンRNAを処理することによって生成できることは、当該技術分野において公知である。
【0223】
もう1つの実施態様において、制御因子は、mRNAの翻訳を妨げるために、HLS−5mRNA転写を触媒作用により分割するように設計された、リボザイム分子である(例えば、1990年10月4日に公開された国際特許公開WO90/11364;Sarver et al.,1990,Science 247:1222−1225;及び米国特許第5093246号参照)。mRNAを部位特異的認識配列で分割するリボザイムは、HLS−5mRNAを破壊するために使用できるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、mRNAを、標的mRNAとの相補的塩基対を形成する隣接領域によって指示される位置で分割する。唯一の要件は、標的mRNAが、2つの塩基の次の配列を有することである:5’−UG−3’。ハンマーヘッド型リボザイムの構造及び生成は、当該技術分野において周知であり、かつHaseloff and Gerlach,1988,Nature,334:585−591に、より完全に記載されいている。本発明のリボザイムは、(IVS又はL−19 IVS RNAとして知られている)テトラヒメナ好熱菌中で自然発生し、かつ広範囲に記載された(例えば、Zaug et al.,1984,Science,224:574−578;Zaug and Cech,1986,Science,231:470−475;Zaug et al.,1986,Nature,324:429−433;University Patents Inc.による国際特許公開第WO88/04300号;Been and Cech,1986,Cell,47:207−216を参照)ような、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以下で「Cechタイプリボザイム」)も含む。
【0224】
もう1つの実施態様において、制御因子は、組み換え手段を使用して容易に合成できるか、又は生体外で合成されるアンチセンス核酸である。かかる合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む、幾つもの製造供給元から販売されている。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体のような他のオリゴヌクレオチドの調製は、同様に当業者に周知である。
【0225】
本明細書で使用されるようなアンチセンス分子は、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを含む。センスオリゴヌクレオチドは、例えばアンチセンス鎖への結合によって転写を遮断するために用いることができる。アンチセンス及びセンスオリゴヌクレオチドは、PKCアイソザイム分子のための標的mRNA(センス)又はDNA(アンチセンス)配列に結合することが可能な一本鎖核酸配列(RNA又はDNA)を含む。本発明によるアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に少なくとも約14のヌクレオチド、好ましくは約14から30のヌクレオチドの断片を含む。所与のタンパク質をコード化する、cDNA配列に基づくアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを誘導する能力は、例えばStein & Cohen(Cancer Res.48:2659(1988及びvan der Krol et al.,1988,Bio Techniques,6:958)に記載されている。
【0226】
「含む(comprising)」によって、単語「含む」に続くどのようなものも含むが、それに限定されないことが意味される。従って、用語「含む」の使用は、列挙された要素が、必要又は必須であるが、他の要素が、任意であり、かつ存在しても、しなくても良いことを示す。「からなる」によって、語句「からなる」に続くどのようなものも含み、かつそれに限定されることが意味される。従って語句「からなる」は、列挙された要素が、必要又は必須であり、かつ他の要素が存在できないことを示す。「から本質的になる」によって、この語句の後に列挙されたいかなる要素も含み、かつ列挙された要素の開示に特定された活性又は作用を妨げないか、又はそれに寄与する他の要素に限定されることが意味される。従って、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が、必要又は必須であるが、他の要素が、任意であり、かつそれらが列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在しても、しなくても良いことを示す。
【0227】
代表的な技術及び実験結果を記載する、以下の実施例は、本発明を例証する目的で提供され、かつ限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0228】
実施例1 活性化STAT(PIAS)のタンパク質阻害剤及びE3系列HLS−5の共同結合(CO−ASSOCIATION)
餌としてHLS5全長を使用して、酵母ツーハイブリッドスクリーニングが、実行され、新規なHLS5結合タンパク質として、活性化Stat1(PIAS1)のタンパク質阻害剤を識別した。この相互作用を更に特徴付けるために、HLS5タンパク質の異なる機能ドメインの欠失変異体が、PIAS1に結合するその能力に関してテストされた。図1は、HLS5のN末端部分の不存在下で、相互作用が失われ、かつCCドメインが、これら2つのタンパク質間の相互作用に必須であることを示す。
【0229】
HLS5及びPIASの間の生体内結合は、免疫共沈降アッセイによって調査された。図2は、FlagタグPIAS3及びHLS5−GFPの同時トランスフェクションを示し、GFPに対する抗体の免疫沈降がそれに続き、HLS5とのFlag−PIAS3の免疫共沈降が引き起こされた。この共沈降は、プロテアソーム阻害剤MG132への細胞の曝露によって強化された。これらの結果は、HLS5及びPIASが、一時的であるが、生体内で相互作用することを証明する。
【0230】
これら2種のタンパク質の局所化を評価するために、COS7細胞が、HLS−5−GFPの存在下で、FLAG−PIAS1又はFLAG−PIAS3によってトランスフェクトされた。プロテアソーム阻害剤MG132の存在下又は不存在下での細胞のインキュベーションに続き、細胞は、蛍光顕微鏡検査を受けた。図3に示すように、FLAG−PIAS1及びFLAG−PIAS3は、核焦点でHLS−5によって共局所化された。この共局所化は、プロテアソーム阻害剤MG132による細胞のインキュベーションによって増加した。これらの実験は、HLS5及びPIASファミリーメンバーの間の分子相互作用に加えて、これらのタンパク質が、転写調節部位で共局所化することを証明する。
【実施例2】
【0231】
実施例2 HLS5によるPIASの物理的及び機能的な標的設定
HLS−5共局所化及びPIASとの相互作用の生物学的意義を評価するために、PIAS及びHLS5プラスミド構成との細胞の同時トランスフェクションに続く、PIAS発現及びPIAS活性のレベルが、検査された。図4に示すように、外因性HLS5の発現は、トランスフェクトされたPIAS1タンパク質レベルの特異的な減少をもたらした。
【0232】
転写調節におけるPIASの役割に照らして、HLS−5によるPIASレベルの変調は、遺伝子発現に影響を与えることができた。
【0233】
PIAS1は、最初に活性化STAT1のタンパク質阻害剤(Protein Inhibitor of Activated STAT1)として単離された。PIAS活性を評価するために、γ−インターフェロン活性化配列(GAS)及びSTAT媒介転写のインターフェロン配列応答要素(ISRE)ルシフェラーゼレポーターが、使用された。図5に示すように、Hela細胞中の外因性HLS5の発現は、GASプロモーター要素の転写活性を非常に増加させたが、ISREプロモーターに関しては、認められる効果を有さなかった。これらの結果は、HLS5が、JAK/STATシグナル伝達系の特異的な転写アクチベーターとして動作することを証明する。
【0234】
PIAS1レベルは、より成熟したマクロファージにおいて低いことが示され、その減少は、STAT1が、この分化過程で中心的な役割を演じることを可能にするために必要とされることを示唆している(Coccia et al.,2002,Cell Signal,14(6):p537−45)。図6において、M1骨髄細胞中のIL−6及びHL−60細胞中のPMAのような骨髄分化を誘発する因子が、HLS5タンパク質発現の有意な増加を引き起こしたことが示される。STAT1及びSTAT3は、インターフェロン−γ及びインターロイキン−6ファミリーメンバー(IL−6、CT−1又はLIF)シグナル伝達を介した活性化を受けることが長い間報告された。このことは、HLS−5がPIASを標的とでき、それによりSTAT活性化、並びにアポトーシス、細胞周期制御、及び分化のようなサイトカインへのSTAT媒介細胞応答の多様な集合をもたらすという我々の発見によって説明できる。
【0235】
これらの結果は、HLS5の標的としてPIASを識別する。HLS5は、PIASタンパク質レベルを抑制し、かつPIASが転写に影響を及ぼすので、HLS5は、STATのPIAS媒介調節及びNF−KB/IKB及びp53を含む、他の転写因子に影響を及ぼすことによって、細胞増殖、移動、及び分化に役割を演じることを導くことができる。
【実施例3】
【0236】
実施例3 HLS5の自己ユビキチン化
HLS5は、単一のタンパク質RINGフィンガーユビキチンE3リガーゼのクラスを表す、巨大タンパク質ファミリーの一部である、RBCCタンパク質である。図7は、HLS5の構造ドメインを示し、かつ生体外又は生体内のE3ユビキチンリガーゼ活性を有する、他のヒトTRIM/RBCCタンパク質を記載する。図8に示すように、HLS5が、E3ユビキチンリガーゼ活性も示すかが、検査された。このことは、生体内でのHLS−5自己ユビキチン化のアッセイによって行われた。RING欠失(ΔN61、ΔN150)又は不活性化(C2124)HLS5に対して、免疫沈降したHLS5全長の抗HAユビキチンウェスタンブロットでの高分子量生成物によって証明されるように、HLS5は、自己ユビキチン化を受けることが発見された。
【実施例4】
【0237】
実施例4 HLS−5のE3系列基質としてのPIAS
実施例2は、HLS5が、PIAS1レベルを生体内で減少できることを示すので、HLS5が、PIAS1を本当にユビキチン化するかも検査された。Flag−PIAS1及びHAタグユビキチンによる細胞のトランスフェクションに続き、PIAS1は、免疫沈降され、かつユビキチン化は、抗HA−ウェスタンブロットによって決定された。図9に示すように、GFPでなく、HLS5−GFPの存在が、PIASのユビキチン化をもたらした。
【0238】
従って、HLS5及びPIASが、核中の転写調節部位に標的とされることが発見された。更にHls5及びPIASは、物理的に相互作用し、PIASのユビキチン化及びプロテアソーム標的設定を引き起こす。結果として生じたPIASレベルの減少は、STAT、及びPIASによって調節される他の因子による転写増加を引き起こす。
【実施例5】
【0239】
実施例5 HLS5発現のsiRNA媒介阻害によるHLS−5の標的設定
真核細胞中のRNA干渉(RNAi)の発見は、分子及び細胞生物学における主要な最近の大発見であった。低分子干渉RNA(siRNA)及びミクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現の調節で、重要な役割を演じる長さ18−25のヌクレオチド(nt)の小型RNAである。それらは、RNA誘発サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、かつ相補的塩基対合に基づき、その対応する標的mRNAのサイレンシングのためのガイドの役割を果たす。
【0240】
転写のsiRNA媒介標的設定によるノックダウン(knock−down)は、生物医学研究における最も重要な新規技術発展の1つとして現れた。この技術は、過剰発現によるよりもむしろノックダウンにより標的遺伝子の役割及び機能の検査を可能にする。このことは、実験アーチファクトの可能性を著しく減少させる。更に、遺伝子発現の選択的サイレンシングを可能にすることによって、siRNAは、治療剤としての大きな潜在能力も保持する。この技術をHLS5に適用するために、プールされたRNAオリゴヌクレオチドが、細胞中でHLS5タンパク質レベルをノックダウンするその能力に関してテストされた。このノックダウンは、Cos細胞中でのGFPタグHLS5の発現に続き検定された。Cos細胞中でのHLS5−GFPの発現は、抗GFPウェスタンブロッティングによるその発現の検定を可能にした。この実験システムの利点は、それがGFPに対して向けられた、予め認証されたsiRNAを使用して容易にテストできることである。
【0241】
このアッセイシステムを使用して、我々は、HLS5−GFPレベルをノックダウンできた第2世代siRNA Smartpool(Dharmacon D−006952)を識別した(RMS、実験#151)。このノックダウン結果は、このSmartpoolに含まれる個別のRNAオリゴヌクレオチドの活性の検査によって更に発展させられた。同じHLS5−GFPアッセイシステムを使用して、オリゴ06が、GFP−HLS5レベルを再現可能にノックダウンすることが、発見された(図10参照)。この結果は、HLS5機能を変調するために、HLS5 siRNAを使用する道を開いている。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】HLS5のドメイン構造と、PIAS1との酵母ツーハイブリッド相互作用とを示す。
【図2】免疫共沈降によるHLS−5とのPIAS1の生体内結合を示すウェスタンブロットを表す。
【図3】プロテオソーム分解が阻害される時、核焦点でのHLS−5による広範なFLAG−PIAS1共局所化を証明する蛍光顕微鏡検査画像を表す。
【図4】PIAS1及びHLS5が、COS細胞に同時トランスフェクトされる時に起こるPIAS1発現の減少を示すウェスタンブロットを表す。
【図5】Hela細胞への外因性HLS−5の導入が、ISREプロモーターでなく、GASプロモーターからのインターフェロンリガンドへの転写応答を強力に活性化することを示すルシフェラーゼプロモーターレポーター活性を提示する。
【図6】M1骨髄細胞中のIL−6、及びHL−60細胞中のPMAが、HLS−5タンパク質発現を強力に増加させることを示すウェスタンブロットを表す。
【図7】HLS5の構造ドメインを示す。「B Box」は、「Bボックス」、「COILED COIL」は、「コイルドコイル」、「ACIDIC DOMAIN」は、「酸性ドメイン」である。 生体外(In Vitro)又は生体内(In Vivo)でのE3活性を有するヒトTRIM/RBCCタンパク質を記載する。「E2 Involved」は、「関与したE2」であり、「Substrate」は、「基質」である。 UBC9、Cezanne、UBA52と選択的に名付けられたタンパク質をコードする、単一遺伝子からの複数の重複クローンを示す。
【図8】細胞溶解物のウェスタンブロット(下方パネル)及びHA−ユビキチン発現細胞からのHLS5免疫沈降物(上方パネル)を表す。上方パネル中の高分子量抗HAシグナルの変化は、自己ユビキチン化におけるRINGフィンガーモチーフの役割を強調する。
【図9】HA−ユビキチン発現細胞から免疫沈降したFLAG−PIASのウェスタンブロットを表し、かつ外因性HLS−5の存在下で、トランスフェクトされたPIAS1が、ポリユビキチン化されることを示す。
【図10】オリゴ06が、β−アクチンに対してGFP−HLS5レベルを減少させることを示すウェスタンブロットを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を含む転写因子モジュレーター。
【請求項2】
前記モジュレーターが、
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を含むユビキチンリガーゼである請求項1に記載の転写因子モジュレーター。
【請求項3】
前記HLS−5ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示される配列又はそれと実質的に相同のポリペプチド、又はその機能的断片を含む請求項1又は2に記載の転写因子モジュレーター。
【請求項4】
前記HLS−5ポリペプチドが、HLS−5をコードするポリヌクレオチドを含むベクターから生体内で発現される請求項1から3のいずれかに記載の転写因子モジュレーター。
【請求項5】
前記HLS−5ポリヌクレオチドが、
(a)配列番号1、配列番号3又は配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又はその機能的断片を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号1、配列番号3又は配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又はその機能的断片に選択的にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(c)(a)又は(b)に定義されたポリヌクレオチドへの遺伝子コードの結果として縮退したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)(a)又は(b)のポリヌクレオチドに相補的であるポリヌクレオチド
からなる群から選択される請求項4に記載の転写因子モジュレーター。
【請求項6】
宿主細胞内に、請求項5に記載のHLS−5ポリヌクレオチドの発現を向けることが可能な調節配列に操作可能に結合された、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む転写因子モジュレーター。
【請求項7】
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を、それを必要とする被検者に投与するステップを含む、生体内で転写因子活性を変調する方法。
【請求項8】
前記転写因子モジュレーターが、転写因子機能又は活性を直接又は間接的に妨げる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記転写因子モジュレーターが、転写因子活性を直接又は間接的にもたらすか、又は強化する請求項7に記載の方法。
【請求項10】
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
を細胞に投与するステップを含む、生体外で転写因子活性を変調する方法。
【請求項11】
(i)医薬的有効量のHLS−5ポリペプチド、そのアイソフォーム、その機能的断片又はその医薬組成物;又は
(ii)HLS−5の内因性レベル又はその活性を調節することが可能な化合物又は組成物;又は
(iii)その組み合わせ
をそれを必要とする被検者に投与するステップを含む、転写因子調節障害に関連する状態を処置又は予防する方法。
【請求項12】
前記状態が、転写因子によって直接的に影響を及ぼされるか、又は制御される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記転写因子モジュレーターの投与が、前記状態と関連した、又は前記状態によって影響を及ぼされる前記転写因子を制御することによって前記状態を改善、軽減又は処置する請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−532038(P2009−532038A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503373(P2009−503373)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000459
【国際公開番号】WO2007/115364
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508105865)バイオファルミカ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】