説明

転写干渉による遺伝子休止化に基づくダブル・ハイブリッド系

本発明は、新規ダブル・ハイブリッド系およびこの使用に関する。この系は、特に、タンパク質間相互作用の遮断の検出を可能にするツールをもたらす。開発した系は、タンパク質対の相互作用の破壊を検出するメカニズムとして転写干渉を用いる。開発したダブル・ハイブリッド系は、タンパク質間相互作用を破壊する分子の検出を可能にする、ならびにこのタンパク質間相互作用に関与するタンパク質の相互作用のない対立遺伝子の同定を可能にする分子のスクリーニングに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写干渉による遺伝子休止化に基づく新規ダブル・ハイブリッド系に関する。本発明は、タンパク質間相互作用に対して作用する生物活性化合物の同定のためのこの系の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ダブル・ハイブリッド系(Y2H:「酵母ツーハイブリッド系」)は、タンパク質間相互作用の同定のために酵母において広範に用いられている(特に、Chien,C.Tら、1991、Fields,S.およびO.Song,1989、Cagney,Gら、2000、6.Causier,B.およびB.Davies,2002、Coates,P.J.およびP.A.Hall.2003参照)。
【0003】
ダブル・ハイブリッド法は、別個のキメラタンパク質が含有するDNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインが、これら2つのドメインが互いに十分に近いとき、遺伝子の転写を活性化し得るという事実に基づく。酵母におけるダブル・ハイブリッド系の現行使用バージョンは、酵母サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL4pタンパク質の特性を利用している(Fields,S.およびO.Song、1989)。
【0004】
特に、タンパク質GAL4pは、酵母によるガラクトースの利用に必要なGAL1遺伝子の転写を活性化し、ならびにこのタンパク質は、次の2つのドメインから成る:DNA配列(酵母GAL遺伝子の上流活性化配列であるUAS)に特異的に結合するN末端ドメインおよび転写活性化を可能にする酸性領域を含有するC末端ドメイン。
【0005】
この第一のダブル・ハイブリッド系は、次の3つの作用因子を介入させる:2つの融合タンパク質と、プロモーター遺伝子がGAL1遺伝子のプロモーター(Pgal1)の制御下に置かれている1つの構築物。GAL4pタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)に融合した第一のタンパク質は、上で説明した構築物を有する酵母S.セレビジエ(S.cerevisiae)において発現される。GAL4pの転写活性化ドメイン(AD)に融合した第二のタンパク質は、この同じ酵母において共発現される。これら2つの融合タンパク質の相互作用の場合、GAL4−AD転写活性化ドメインとDNA結合ドメインを一緒にすることにより、Pgal1の制御下に置かれたレポーター遺伝子の発現を誘発することができる機能性GAL4p転写因子を、再構成することができる。
【0006】
(例えば、遺伝子HIS3のような)酵母の生存能に必須の遺伝子をレポーター遺伝子として選択することにより、レポーター遺伝子が発現される株、従って、2つのハイブリッドタンパク質の間に相互作用が発生する株を、容易にスクリーニングすることができる。このような相互作用が発生しない株は、Pgal1を活性化することができず、またこのレポーター遺伝子がこの酵母の生存能に必須の遺伝子である場合には成長することができない。
【0007】
より最近、いわゆる逆ダブル・ハイブリッド系が開発された(rY2H:「酵母逆ツーハイブリッド系」)。これらの系は、レポーター遺伝子の活性化が、タンパク質間相互作用不在の状態で誘発され、これは、パートナーと相互作用する能力を喪失した変異タンパク質の同定、ならびにタンパク質間相互作用を特異的に阻害する分子の同定に特に有用である。
【0008】
Youngらは、カルシウムチャネルモジュレーターを同定するために逆ダブル・ハイブリッド系に基づく高効率スクリーニングテストをかくして完成した(Young,K.ら、1998)。このrY2H系は、CYH2の特性を活用する。CYH2遺伝子は、シクロヘキシミドに対する感受性を細胞に付与するリボソームタンパク質L29、すなわちリボソームサブユニット60Sの一成分をコードする(Kaufer,N.F.ら、1983)。レポーターカセットPgal1−CYH2を、内因性変異CYH2遺伝子を有するシクロヘキシミドに耐性の酵母菌株に導入する。野生型の対立遺伝子CYH2が優勢である場合、二タンパク質間の相互作用が発生すると(従って、レポーターカセットが転写されると)、シクロヘキシミドを含有する培地ではレポーター細胞の成長が阻害される。この相互作用の遮断は、シクロへキサミドの毒性効果を減弱させ、シクロヘキシミドを含有する培地でのレポーター細胞の成長を可能にする(Leanna,C.A.,およびH.Hannink.1996)。
【0009】
しかし、mRNAの安定性およびタンパク質の安定性に関連した問題ならびに野生型CYH2pタンパク質および変異CYH2pタンパク質の活性レベルでの相違により、タンパク質間相互作用の解離(逆Y2H相互作用)の検出のためのこの系の使用が複雑になり、感度が不十分になる。
【0010】
加えて、この系には、使用して最大感度を得ることが比較的困難であるという欠点がある。逆Y2H相互作用に対するこの応答が、幾つかの分子に依存するためである。例えば、リボソームへの組み込みレベルでの野生型CYH2pと変異CYH2pの間の競合が、レポーターの感度に影響する。加えて、シクロヘキシミドの捕捉のレベルおよびリボソームに対するこの反応性のレベルでの変動は、この系の応答能力にまず間違いなく影響を及ぼす。
【0011】
レポーター遺伝子URA3とこの前毒性基質:5−フルオロオロチン酸(5−FOA)との併用に基づく、もう1つの逆ダブル・ハイブリッド系も説明されている(Huang,J.およびS.L.Schreiber.1997、Vidal,M.ら、1996、WO9632503)。この系では、タンパク質URA3pの発現の誘導が、細胞成長を阻害する。この時、5−FAOが、この毒性類似体:5−フルオロ−UTPに変換されるためである。これに対して、URA3の不活性化は、細胞の成長を可能にする。この時、5−FOAは、もはや代謝されず、細胞が、この培地に補足されたウラシルを使用するためである。この系は、通常のパートナーと相互作用する能力を喪失した変異タンパク質を同定するために使用される(Burke,T.W.ら、2001;Daros,J.A.ら、1999;Puthalakath,H.ら、1999)。
【0012】
この系の構造およびメカニズムは、上で説明した逆ダブル・ハイブリッド系のものに非常に類似している(Young,K.ら、1998)。このため、この系は、上に挙げた欠点を有する。加えて、5−FOAの使用に基づく系は、この系自体と関係がある偽陽性を生じさせる欠点を有する。実際、細胞成長は、野生型URA3の不活性化と関係がある。従って、URA3pタンパク質を阻害する化合物は、細胞成長を可能にする。このため、これらの化合物は、タンパク質間相互作用を特異的に阻害する分子の同定にこの系を使用している間に、偽陽性シグナルを発生させる。
【0013】
この系は、比較的高価な化学薬品である5−FOAを使用するという欠点も有する。
【0014】
最後に、2つのレポーター遺伝子のカスケードを含む、「スプリット・ハイブリッド(Sprit−Hybrid)」という名のリレー系も説明されている(WO9526400およびWO9813502)。このrY2H系は、CBPとの連結を遮断するタンパク質CREBの変異を同定するために使用されている(Crispino,J.D.ら、1999)。これらの系では、ダブル・ハイブリッド相互作用が、第一レポータータンパク質の発現を活性化し、これがまた、成長選択に使用される第二レポーター遺伝子の発現を制御する。しかし、この系は、逆Y2H相互作用の検出のためには使用が複雑であり、感度が不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、上で説明した系は、幾つかの分子(2つのレポーター遺伝子、レポーター遺伝子と毒性物質、野生型レポーター遺伝子と変異レポーター遺伝子)の活性に依存する。これは、特に最大感度が求められるとき、これらの利用の複雑さを増大させる。より単純であり、より経済的でもあると同時に良好な感度を有する系を有することが、望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、転写干渉による遺伝子の休止化(silencing)に基づく新規ダブル・ハイブリッド系に関する。本発明のダブル・ハイブリッド系は、単純であり、培地への毒性物質の添加を必要とせず、ならびにゲノムへの組み込みを必要とせずに使用することができる。
【0017】
本発明の第一の主題は、干渉DNA構築物を含有する細胞に関し、
前記構築物は、
第一プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、いわゆる干渉プロモーター[前記干渉プロモーターの活性化が、前記第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択されおよび配置され、その結果前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。]、
を含み、
前記細胞は、
第一キメラタンパク質(Y−AD)[前記第一キメラタンパク質は、パートナータンパク質Xと相互作用することができるタンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る。]、
第二キメラタンパク質(X−DBD)[前記第二キメラタンパク質は、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る。]
をさらに発現し、
前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。
【0018】
1つの実施形態によると、本発明は、レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターが、誘導性プロモーターであり、タンパク質Yが、2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができる、上で説明したものなどの細胞に関し、この細胞は、このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合したDNA結合ドメイン(DBD)から成る第三キメラタンパク質(Z−DBD)をさらに発現し、2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用が、このレポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターが、キメラタンパク質(Z−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含む、上で定義したものなどの細胞に関する。
【0020】
本発明は、レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターが、構成的プロモーターである、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0021】
本発明は、干渉DNA構築物によりおよびキメラタンパク質をコードするDNA構築物により形質転換または形質移入された宿主細胞である、上で説明したものなどの細胞にも関し、これらの構築物のすべてが、1つまたはそれ以上の非組み込みベクターに担持されたものである。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、キメラタンパク質をコードするDNA構築物により形質転換または形質移入された宿主細胞である、上で定義したものなどの細胞に関し、これらの構築物は、1つまたはそれ以上の非組み込みベクターに担持されており、干渉DNA構築物は、細胞のゲノムに組み込まれている。
【0023】
本発明は、干渉DNA構築物およびキメラタンパク質をコードするDNA構築物が、細胞のゲノムに組み込まれている、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明は、干渉DNA構築物が、摂動性ゲノム転写活性のない遺伝子座に組み込まれている、上で説明したものなどの細胞に関する。
【0025】
本発明は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および酵母細胞により形成された群から選択される、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0026】
本発明は、酵母細胞に関する、上で説明したものなどの細胞にも関する。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明は、サッカロミセス・セレビジエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)種の酵母に関する、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0028】
本発明は、レポーター遺伝子および第一プロモーターの下流に、後者とは反対の配向で配置された(DI)少なくとも1つの干渉プロモーターを有する、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0029】
本発明は、レポーター遺伝子および第一プロモーターの下流に、後者と同じ配向で配置された(nDI)少なくとも1つの干渉プロモーターを有する、上で説明したものなどの細胞にも関する。
【0030】
本発明は、レポーター遺伝子および第一プロモーターの上流に、後者と同じ配向で配置された(UI)少なくとも1つの干渉プロモーターを有する、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0031】
本発明のもう1つの態様は、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置された少なくとも1つの干渉プロモーターを有し、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターが、第一プロモーターに対して集中的な配向を有し、ならびに第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に配置された干渉プロモーターが、第一プロモーターのものと同一の配向を有する(UDI)、上で説明したものなどの細胞に関する。
【0032】
加えて、本発明は、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置された少なくとも1つの干渉プロモーターを有し、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターが、第一プロモーターに対して対状の配向を有し、ならびに第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に配置された干渉プロモーターが、第一プロモーターのものと同一の配向を有する(nUDI)、上で定義したものなどの細胞に関する。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明は、上で定義したものなどの細胞であって、レポーター遺伝子がこの細胞の生存に必須の遺伝子である細胞に関する。
【0034】
本発明は、上で説明したものなどの細胞であって、レポーター遺伝子が、一次代謝、細胞分裂、タンパク質合成、DNA合成またはRNA合成に不可欠な遺伝子である細胞にも関する。
【0035】
本発明は、レポーター遺伝子が、それ自体は、単独では細胞の生存に必須でないが、発現が転写干渉系により制御されるまたはされない同じタイプの1つまたはそれ以上のレポーター遺伝子に関連してこの転写が阻害されるときには細胞の生存に必須である、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明は、誘導性干渉プロモーターが、キメラタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列(X−DBD)を含む、上で説明したものなどの細胞に関する。
【0037】
本発明は、誘導性干渉プロモーターが、GAL4 UAS、LexAop、cIopおよびTetRopにより形成された群から選択されるDNA結合ドメイン(DBD)を有するタンパク質と相互作用することができる配列を含む、ならびにキメラタンパク質X−DBDのDNA結合ドメインが、対応するDBD(それぞれ、GAL4、LexA、cIまたはTetR)であるような、上で定義したものなどの細胞にも関する。
【0038】
本発明のもう1つの態様は、キメラタンパク質Y−ADの転写活性化ドメイン(AD)が、次のタンパク質:B42、VP16およびGAL4pの転写活性化ドメインにより形成された群から選択される、上で説明したものなどの細胞に関する。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、干渉DNA構築物が、この末端で、1つまたはそれ以上の一方向性または二方向性転写ターミネーターに隣接している、上で定義したものなどの細胞に関する。
【0040】
本発明のもう1つの態様は、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害する化合物を同定するためのプロセスに関し、このプロセスは、
a)上で定義したものなどの細胞を培養する段階、
b)被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
c)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下と不在下で比較する段階、
を含み、レポーター遺伝子の発現の増加は、被検化合物が、培養細胞によって発現されたタンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であることの指標となる。
【0041】
加えて、本発明は、タンパク質間相互作用を阻害する化合物を同定するための、上で定義したものなどの細胞の使用に関する。
【0042】
本発明は、タンパク質間相互作用を特異的に排除するペプチドまたはタンパク質因子を同定するためにcDNAバンクまたはペプチドバンクをスクリーニングするための、上で説明したものなどの細胞の使用にも関する。
【0043】
本発明のもう1つの態様は、ダブル・ハイブリッド系を作るためのキットに関し、このキットは、
第一DNA構築物[前期第一DNA構築物は、
第一プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター(前記誘導性プロモーターの活性化が、前記第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、その結果、前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。)
を含む。]、
第二DNA構築物[前記第二DNA構築物は、パートナータンパク質Xと相互作用することができるパートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る第一キメラタンパク質(Y−AD)をコードする。]、
第三DNA構築物[前記第三DNA構築物は、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る第二キメラタンパク質(X−DBD)
をコードする。]
を含み、前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記2つのキメラタンパク質が宿主細胞において発現されたときに干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。
【0044】
本発明は、レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターが、誘導性プロモーターであり、タンパク質Yが、2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができる、上で定義したようなキットにも関し、この場合のキットは、このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合したDNA結合ドメイン(DBD)から成る第三キメラタンパク質(Z−DBD)をコードする第四DNA構築物を含み、2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。
【0045】
本発明のもう1つの態様は、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害するが、このタンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用はまったく阻害しないか、あまり阻害しない化合物を同定するための方法に関し、この方法は、
a)上で定義した細胞を培養する段階、
b)被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
c)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下と不在下で比較する段階
を含み、レポーター遺伝子の発現の増加は、被検化合物が、タンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であること、しかし、この生成物が、タンパク質Yとタンパク質Zの間の相互作用をまったく阻害しないか、あまり阻害しないことの指標となる。
【0046】
最後に、本発明は、S.セレビジエ(S.cerevisiae)の遺伝子URA3のオープンリーディングフレームの上流および下流領域に相同な2つのフラグメントを含有し、これら2つのフラグメント間に挿入される配列の遺伝子座URA3のレベルでの相同組換えにより組み込むことができる、酵母組み込みベクターに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
発明の詳細な説明
本発明は、転写干渉による遺伝子の休止化に基づく新規ダブル・ハイブリッド系に関する。本発明のダブル・ハイブリッド系は、単純であり、培地への毒性物質の添加を必要とせず、ならびにゲノムへの組み込みを必要とせずに使用することができる。
【0048】
転写干渉は、第二プロモーターが活性化されたときの第一プロモーターの活性の摂動と定義される。例えば、あるプロモーターの転写活性が、他のプロモーターのレベルで開始される転写を減少させる。転写干渉は、例えば酵母に関して説明されている(Greger,I.H.,and N.J.Proudfoot.1998、Springer,C.O.ら、1997、Peterson,J.A.およびA.M.Myers,1993、Puig,S.ら、1999、Martensら、2004)。
【0049】
本発明の第一の主題は、特定のタンパク質間相互作用が不在の状態でレポーター遺伝子を発現することができるが、この相互作用が発生したとき、前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な低下が認められる、1つまたはそれ以上の構築物を有する細胞に関する。
【0050】
より詳細には、本発明の細胞は、1つまたはそれ以上のDNA構築物、いわゆる干渉構築物を含有し、前記構築物は、
第一プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、いわゆる干渉プロモーター[前記干渉プロモーターの活性化が、前記第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択されおよび配置され、その結果前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。]、
を含み、
前記細胞は、
第一キメラタンパク質(Y−AD)[前記第一キメラタンパク質は、パートナータンパク質Xと相互作用することができるタンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る。]、
第二キメラタンパク質(X−DBD)[前記第二キメラタンパク質は、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る。]
をさらに発現し、
前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。
【0051】
第一の実施形態において、本発明の細胞は、レポーター遺伝子を含むDNA構築物(干渉構築物)により形質転換または形質移入された宿主細胞であり、これらは、2つのキメラタンパク質の各々をコードする2つのDNA構築物によっても形質転換または形質移入される。これら3つの構築物は、同じDNAベクターに担持されていることがあり、または2つもしくは3つの異なるベクター上で見出される。すべての組み合わせが考えられる:同じベクター上に3つの構築物;3つの異なるベクター上に3つの構築物;同じベクター上に2つのキメラタンパク質をコードする2つの構築物、但し、3つ目の構築物は、別のベクター上で見出される;同じベクター上に2つのキメラタンパク質のうちの1つをコードする構築物と干渉構築物、しかし別のベクター上で見出される、もう1つのキメラタンパク質をコードする構築物。この第一の実施形態におけるベクターは、非組み込みベクターである。
【0052】
本発明の第二の実施形態において、干渉構築物は、細胞のゲノムに組み込まれており、これらの細胞は、2つのキメラタンパク質の各々をコードする2つのDNA構築物により形質転換または形質移入される。これらのキメラタンパク質をコードするDNA構築物は、同じDNAベクターに担持されていることがあり、または2つの異なるベクター上で見出され、このまたはこれらのベクターは、非組み込みベクターである。
【0053】
本発明の第三の実施形態において、干渉構築物、および2つのキメラタンパク質の各々をコードするDNA構築物は、細胞のゲノムに組み込まれている。2つのキメラタンパク質のうちの1つをコードする2つの構築物のうちの1つだけが、ゲノムに組み込まれており、もう1つの構築物が、非組み込みベクターに担持されていることもある。最後に、最後の実施形態では、干渉構築物、および2つのキメラタンパク質のうちの1つをコードする2つの構築物のうちの1つは、非組み込みベクターに担持されているが、もう1つのキメラタンパク質をコードする構築物は、細胞のゲノムに組み込まれている。
【0054】
レポーター遺伝子は、慣例的には、容易に検出できる産物をコードする遺伝子と定義される。優先的な実施形態において、本発明に関連して用いるレポーター遺伝子は、この発現が細胞の生存に必須である遺伝子である。これは、例えば、一次代謝、細胞分裂、タンパク質合成(リボソームなど)、DNA合成またはRNA合成などに不可欠な遺伝子である。
【0055】
このタイプの遺伝子の例として、酵母の生存に必須と記載されているすべての遺伝子、すなわち、このゲノムを構成する遺伝子の約1/6(Winzeler E.A.ら、1999)を挙げることができる。
【0056】
例えば、レポーター遺伝子は、一次代謝に関与し、一次代謝に不可欠であるか、細胞分裂に不可欠である遺伝子である場合がある。より詳細には、レポーター遺伝子は、添加できるか、培地から除去することができる必須代謝産物の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子である場合がある。
【0057】
このタイプの遺伝子の例としては、酵母の培地中のアミノ酸または対応する核酸塩基を容易に補足することができるため、酵母S.セレビジエにおいて幅広く用いられている遺伝子HIS3、URA3、LEU2、LYS2、TRP1、ADE2、MET15およびARG4を挙げることができる。代謝産物に基づく他のマーカーを用いてもよく、例としては、遺伝子HIS5(酵母S.ポンベ(S.pombe)の遺伝子)、遺伝子URA3およびLEU2(酵母K.ラクティス(K.lactis)の遺伝子)、URA3(酵母C.アルビカンス(C.albicans)の遺伝子)、LEU2(酵母A.ゴシピ(A.gossypii)の遺伝子)を挙げることができる。
【0058】
レポーター遺伝子は、一次代謝に関与し、一次代謝に必須でない遺伝子、または単独で使用されたとき、細胞分裂に必須でない遺伝子である場合もある。一方、これらの転写が同じタイプの1つまたはそれ以上のレポーター遺伝子に関連して阻害される場合、効果が併さることによって酵母の生存に必須の機能に対する阻害が導かれることがある。レポーター遺伝子は、例えば、これらの共伴的役割が一次代謝、細胞分裂、タンパク質合成(リボソームなど)、DNA合成またはRNA合成などに不可欠な機能を導く遺伝子の集合体である場合がある。
【0059】
このタイプの遺伝子の例としては、酵母の生存に必須ではないと記載されている遺伝子(すなわち、このゲノムを構成する遺伝子の約5/6(Winzeler E.A.ら、1999))であって、同じタイプの1つまたはそれ以上の遺伝子に関連して必須になる、すべての遺伝子を挙げることができる。
【0060】
しかし、他のレポーター遺伝子も、本発明に関連して使用することができる。例としては、酵素CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)をコードする遺伝子;ルシフェラーゼをコードする遺伝子luc;蛍光タンパク質、例えばGFP(「緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)」)、CFP(「シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescent Protein)」)、YFP(「黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescent Protein)」)またはRFP(「赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescent Protein)」)、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、β−グルクロニダーゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
【0061】
毒性生成物に対する耐性を付与するマーカー:トランスポゾン Tn903の遺伝子kan(ゲネチシン(G418)に対する耐性を付与)、トランスポゾン Tn5の遺伝子ble(フレオマイシンに対する耐性を付与)、遺伝子CYHr(シクロヘキシミドに対する耐性を付与)、pat(ビアラフォスに対する耐性を付与するS.ビリドクロモゲネス(S.viridochromogenes)の遺伝子)、nat1(ヌルセオトリシンに対する耐性を付与するS.ヌールセイ(S.noursei)の遺伝子、hph(ヒグロマイシンBに対する耐性を付与する大腸菌(E.coli)の遺伝子)である場合もある。これらの遺伝子すべてが、特に酵母において、機能性である(GutherieおよびFink,2002)。
【0062】
レポーター遺伝子は、第一プロモーターの制御下に置かれる。好ましい実施形態において、この第一プロモーターは、構成的プロモーターである。構成的プロモーターは、一般に認められているように、周囲の状況とは比較的無関係に発現することができるプロモーターである。
【0063】
一例として、酵母においてレポーター遺伝子を構成的変異プロモーター ADH1(700)(変異した遺伝子ADH1のプロモーター(Padh1))(Ruohonenら、1995)の制御下で発現させることができる。しかし、他の構成的プロモーターも、本発明に関連して酵母において使用することができる。例としては、プロモーターTPI(AlberおよびKawasaki,1982)、TEF1、TDH3、KEX2(Nackenら、1996)およびACT1(Ernst,1986)を挙げることができる。
【0064】
哺乳動物の細胞に関して言えば、例えば、プロモーターCMV(ヒトサイトメガロウイルス(CMV)即時−初期エンハンサー/プロモーター)(FoeckingおよびHofstetter,1986)(Kronmanら、1992)、プロモーターEF−1 α(MizushimaおよびNagata,1990)、プロモーターSV40(シミアンウイルス40初期エンハンサー/プロモーター)(Dasら、1985)、プロモーターUB(ユビキチンのヒト遺伝子C(hUbC)のプロモーター)(Nenoiら、1996;Schorppら、1996)、ラウス肉腫ウイルスのプロモーターRSV LTR(Rous Sarcoma Virus Long Terminal Repeat)(Yamamotoら、1980)を挙げることができる。
【0065】
このプロモーター、いわゆる「干渉プロモーター」は、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターは、これらの活性化が第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、この結果、レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。
【0066】
本発明に関連して利用することができる干渉プロモーターは、DNA結合ドメイン(DBD)を介してこのプロモーターの配列(DBDにより連結されるDNA配列)と相互作用する転写因子により活性化が誘導される誘導性プロモーターであり、前記転写因子は、このプロモーターにより支配される転写を開始させることができる。従って、本発明に関連して利用することができる干渉プロモーターは、考慮する生物においてダブル・ハイブリッド系を作るために適するすべてのプロモーターである。
【0067】
好ましくは、本発明の干渉プロモーターは、DNA結合ドメイン(DBD)を有するタンパク質と相互作用することができる配列(DBDにより結合されたDNA配列(UAS))を含む。より詳細には、本誘導性干渉プロモーターは、キメラタンパク質(X−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含む。
【0068】
これらは、例えば、転写因子GAL4pにより誘導可能なプロモーター Pgal1、Pgal10、Pgal5、Pgal80、Pmel1、Pgal2、Pgal7、Pgal3、Pgcy1、Plth1、Ppcl10およびPfur4(Renら、2000;SvetlovおよびCooper,1995)である(野生型細胞において、転写因子GAL4pは、ガラクトースにより誘導される遺伝子の発現に、特に関与する)。好ましくは、利用する誘導性プロモーターは、プロモーター Pgal1である。
【0069】
しかし、他の誘導性発現系を使用する本発明の他の実施形態も、本発明の範囲に入る。表1は、ダブル・ハイブリッド系において既に使用されている非常に多数の誘導性系を示す。文献に記載されているこれらの系の誘導性プロモーターも、本発明の意図では干渉プロモーターである。機能性ダブル・ハイブリッド系を得るために、表1中のDBDとADの間で可能なすべての組み合わせが考えられる。
【0070】
【表1】

【0071】
誘導性干渉プロモーターは、これらの活性化が第一プロモーターの転写干渉に影響するように配置され、この結果、レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。
【0072】
例えば、干渉性プロモーターは、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に配置することができる。この時、下流に位置する干渉プロモーターの活性化は、さらに上流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、下流干渉の事である。
【0073】
しかし、下流干渉に関連して、この干渉プロモーターは、2つの可能な配向を有することできる。第一の配向は、第一プロモーターに対して集中的な配向に相当し、この構造は、下流干渉(またはDI)と呼ばれている。この干渉プロモーターは、第一プロモーターに対して対状の配向を有することもあり、この第二の構造は、ナンセンス下流干渉(またはnDI)と呼ばれており、これもレポーター遺伝子の発現の阻害を示す(実施例セクション参照)。
【0074】
干渉プロモーターは、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に配置することもできる。この時、上流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに下流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、上流干渉の事である。この時、干渉プロモーターは、第一プロモーターと同一の配向を有する(従って、これら2つのプロモーターは、対状の構造を有する)。この構造は、上流干渉(またはUI)と呼ばれている。
【0075】
もう1つの可能な構造は、上で説明した2つの構造の組み合わせ(UIおよびDI系)である。この場合、少なくとも1つの誘導性干渉プロモーターが、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置される。この時、上流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに下流に位置する第一プロモーターの活性に干渉し、また下流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに上流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、上流−下流干渉の事である。
【0076】
第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターに対して集中的な配向を有する(上記DI系参照)。第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターのものと同一の配向を有する(従って、これら2つのプロモーターは、対状の構造を有する)(上記UI系参照)。
【0077】
この構造は、上流−下流干渉(またはUDI)と呼ばれている。
【0078】
もう1つの可能な構造は、上で説明した2つの構造の組み合わせ(UIおよびnDI系)である。この場合、少なくとも1つの誘導性干渉プロモーターが、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置される。この時、上流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに下流に位置する第一プロモーターの活性に干渉し、また下流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに上流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、上流−下流干渉の事である。
【0079】
第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターに対して対状の配向を有する(上記nDI系参照)。第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターのものと同一の配向を有し(上記UI系参照)、従って、これら3つのプロモーターは、対状の構造を有する。
【0080】
この構造は、ナンセンス上流−下流干渉(またはnUDI)と呼ばれている。
【0081】
UIタイプの構築物の場合、干渉プロモーターの活性化は、転写干渉のため、第一プロモーターの活性の減少をもたらす。しかし、この上流干渉プロモーターの活性が、レポーター遺伝子のセンス転写産物を再び生じさせることがある。
【0082】
この機能性センス転写産物の翻訳を防止するために、好適には、短いオープンリーディングフレーム、これに続く1つまたはそれ以上(例えば2つまたは3つ)の停止コドンが、干渉プロモーターと第一プロモーターの間に挿入される。この時、UI系における転写干渉は、バイシストロン性メッセンジャーを生じさせ、ここから出発してこの最初の短いオープンリーディングフレームだけを翻訳する。
【0083】
これは、UDIおよびnUDIタイプの構造の場合も同様である。実際、UDIまたはnUDIタイプの構築物の場合、第一プロモーターの上流に位置する干渉プロモーターの活性化は、転写干渉のために第一プロモーターの活性の減少をもたらす。しかし、上流干渉プロモーターの活性が、レポーター遺伝子のセンス転写産物を再び生じさせることもある。
【0084】
この機能性センス転写産物の翻訳を防止するために、好適には、短いオープンリーディングフレーム、これに続く1つまたはそれ以上の停止コドンが、干渉プロモーターと第一プロモーターの間に挿入される。この時、UDIまたはnUDI系における転写干渉は、バイシストロン性メッセンジャーを生じさせ、ここから出発してこの最初の短いオープンリーディングフレームだけを翻訳する。
【0085】
好適には、上で説明した干渉構築物は、これらの末端で二方向性転写ターミネーターに隣接する。任意の機能性で二方向性の転写ターミネーターを使用して、本発明の構築物に隣接させることができる。例として、遺伝子CYC1の転写ターミネーター(Tcyc1)(1989年、Osborne,B.I.およびL.Guarente.,1989によって説明されたもの)ならびに遺伝子ADH1のターミネーター(Tadh1)(1991年、Irniger,S.らによって説明されたもの)を使用することができる。
【0086】
二方向性転写ターミネーターは、二方向様式で転写を停止させる。これは、第一プロモーターまたは干渉プロモーターにより命じられる転写がこの構築物を越えて拡大することを防止し、およびまた、この構築物の外部に位置する転写活性の起こり得る影響からこの系を保護する。
【0087】
同じ目的で、(二方向性ターミネーターを得るために、拡散的または集中的な配向で転写を阻止する2つの一方向性ターミネーターを組み合わせることにより)一方向性ターミネーターを二方向で転写を阻止する構造に組み合わせることもできる。一方向性ターミネーターの例としては、次のターミネーターを挙げることができる:Tpgk1(Picardら、1990)、Ttef(A.ゴシピからのもの)(SteinerおよびPhilippsen,1994)、This3(S.クルイベリ(S.kluyveri)からのもの)(WeistockおよびStrathern,1993)。
【0088】
本発明の干渉プロモーターは、誘導性プロモーターであり、ならびにこの活性化が第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、この結果、レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。
【0089】
この誘導性プロモーターは、条件付で活性化される。本発明に関連して、誘導プロモーターは、転写因子が活性であるとき、この転写因子によって活性化される。本発明によると、誘導性プロモーターを活性化する転写因子は、2つのキメラタンパク質(X−DBDおよびY−AD)の集合体によって形成され、これは、2つのキメラタンパク質 X−DBDおよびY−ADの間に相互作用が発生したとき、誘導性プロモーターを活性化することができる活性転写因子を再構成する。
【0090】
上に明記したように、本発明の細胞は、2つのキメラタンパク質:
−パートナータンパク質Xと相互作用することができる、パートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る、第一キメラタンパク質(Y−AD)、
−このタンパク質Yと相互作用することができる、このタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第二キメラタンパク質(X−DBD)
を発現し、2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用の結果、干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子が形成される。
【0091】
従って、第二キメラタンパク質X−DBDのDNA結合ドメイン(DBD)は、誘導性プロモーターの一機能として前記プロモーターのレベルでDNAに連結するように選択される。好ましくは、このキメラタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)は、前記プロモーター中に存在する配列(DBDにより連結されるDNA配列(UAS)(上流活性化配列))と相互作用するように選択される。
【0092】
この第一キメラタンパク質Y−ADの転写活性化ドメインにより、細胞内での誘導性プロモーターの転写を活性化することができる。例えば、干渉プロモーター(誘導性プロモーター)は、2つのキメラタンパク質 Y−ADおよびX−DBDの集合体(これらの間の相互作用)によって形成された機能性転写因子により誘導され、この機能性転写因子は、このDNA結合ドメイン(DBD)を介してこのプロモーターの配列と相互作用し、ならびにこのプロモーターにより支配される転写をこの転写活性ドメイン(AD)を介して開始させることができる。
【0093】
これは、まさしくダブル・ハイブリッド法の原理の構成要素であり、当業者は、本発明の実施を可能にする多彩なプロモーター/転写因子対を選択することができる。酵母におけるダブル・ハイブリッド系の現行使用バージョンは、酵母サッカロミセス・セレビジエのタンパク質GAL4p(Fields,S.およびO.Song,1989)およびこのプロモーターPgal1の特性を利用している。しかし、記載されている他のダブル・ハイブリッド系、特に、表1に記載されているものも、本発明に関連して使用することができる。
【0094】
DNA結合ドメイン(DBD)および転写活性化ドメイン(AD)にそれぞれ融合したパートナータンパク質XおよびYは、(たとえこれがこれらの起源生物における場合でなくても)細胞内で相互作用して誘導性プロモーター、例えば上で定義したもの、を活性化する機能性転写因子(X−DBD/Y−AD)を結果的に形成する、DBDおよびADにそれぞれ融合した任意のタンパク質対と定義することができる。これは、完全タンパク質または完全タンパク質のフラグメントの事である。例えば、本発明に関連して、ダブル・ハイブリッドシグナルを発生するキメラタンパク質を使用することができる。すなわち、2つのパートナータンパク質(またはこれらのパートナータンパク質のフラグメント)が、使用される細胞内で、誘導性プロモーターを活性化する機能性転写因子を形成するために十分な親和性で互いに相互作用する、キメラタンパク質[この場合、前記転写因子は、第一キメラタンパク質のDNAにこの結合ドメインを介して結合し、第二キメラタンパク質の転写活性ドメイン(AD)により前記プロモーターを活性化する。]である。
【0095】
本発明の細胞は、組み込まれているまたは組み込まれていないベクターに担持された、DNA構築物とキメラタンパク質をコードする構築物とを有することができる。被組み込み干渉DNA構築物で最良の結果が得られることが、確認された。
【0096】
好適には、干渉DNA構築物は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。レポーターカセットの外側で開始される転写活性の起こり得る影響からこの干渉系を保護するために、この干渉構築物を潜在的摂動性ゲノム転写活性のない遺伝子座にターゲッティングすると有利である。
【0097】
これを行うために、酵母pRB2の新規組み込みベクターを構築した。この組み込みベクターにより、干渉構築物を潜在的摂動性ゲノム転写活性のない遺伝子座にターゲッティングする(図3参照)。
【0098】
非組み込みベクターに担持された本発明の干渉系が遺伝子的に安定であり、これにより、レポーターカセットが組み込まれた株を構築する必要がなくなることも明らかになった。この特徴は、医薬品のスクリーニングのために非常に興味深い。小分子の透過性を増大させるために、異なる変異を有する非常に多数の株を容易に評価することができるからである。
【0099】
本発明の主題であるダブル・ハイブリッド系の実現に利用することができる細胞は、上で説明した前記ダブル・ハイブリッド系において必要なキメラタンパク質を発現することができる任意の細胞、および上で説明した干渉DNA構築物によって/を用いて形質転換または形質移入することができる任意の細胞から成る。これらの宿主細胞は、真核性または原核性宿主であり、これらは、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、またはさらに好適には酵母細胞であり得る。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明の細胞は、真菌界から選択される。好適には、真菌界の生物は、子嚢菌門から選択され、さらに好ましくは、サッカロミコチナ(Saccharomycotina)亜門から選択され、さらにいっそう好ましくは、サッカロミセテス(Saccharomycetes)またはシゾサッカロミセテス(Schizosaccharomycetes)から選択され、さらにいっそう好ましくは、サッカロミセタレス(Saccharomycetales)目またはシゾサッカロミセタレス(Schizosaccharomycetales)目から選択され、さらにいっそう好ましくは、サッカロミセタセア(Saccharomycetaceae)科またはシゾサッカロミセタセア(Schizosaccharomycetaceae)科から選択され、さらにいっそう好ましくは、サッカロミセス属またはシゾサッカロミセス属から選択され;完全に好ましくは、本発明の真菌界の生物は、サッカロミセス・セレビジエ種またはシゾサッカロミセス・ポンベ種に属する。クルイベロミセス・ラクティス種、ピチア・パストリス種、サッカロミセス・カールスベルゲンシス種またはカンジダ・アルビカンス種の酵母も、本発明の範囲内に入る細胞である。
【0101】
これまでに説明されている系に反して、本発明のダブル・ハイブリッド系は、毒性または非毒性物質の添加を必要としない。このことは、これらが細胞生理に対して付加的効果をおそらく有するため、およびこれらが一定の逆Y2H相互作用の検出に干渉することがあるため、有利な要因である。しかし、毒性または非毒性物質の使用は、依然として可能である。例えば、生存に不可欠なレポーター遺伝子、例えば、一次代謝、細胞分裂、タンパク質合成(リボソームなど)、DNA合成またはRNA合成などに不可欠な遺伝子を使用する場合、レポーター遺伝子の生産を阻害する物質の使用は、興味深いはずである。実際、レポーター遺伝子が、転写干渉にもかかわらずなお十分に発現される場合、および細胞の成長の完全な不在が求められる場合、このようなレポーター遺伝子の生産を阻害する物質を使用して、ダブル・ハイブリッド系の感度を増すことができる。従って、例えば、レポーター遺伝子が、遺伝子HIS3である場合、干渉酵母(例えば、S.セレビジエ)株の細胞成長は、ヒスチジンを枯渇させた培地を用いて評価することができる。もしくは、タンパク質HIS3pの競合阻害剤(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3−AT))を培地に添加して、このレポーター遺伝子HIS3の活性のレベルのレベル差を観察してもよい。これによって、より大きな感度を実現することができ、またこの系を検量することができる(実施例6参照)。
【0102】
しかし、レポーター遺伝子が、転写干渉にもかかわらずなお十分に発現される場合、および細胞の成長の完全な不在が求められる場合、1つの可能性は、ダブル・ハイブリッド系の感度を増す効果を有する、上で説明した干渉系(UI、DI、nDI、UDIおよびnUDI)により制御されるまたはされない他のレポーター遺伝子の併用である。これらのレポーター遺伝子の発現の部分的な阻害であっても、これらの効果が加わることにより、成長の完全阻害につながる。従って、例えば、レポーター遺伝子のうちの1つが、遺伝子HIS3であり、他のもののうちの1つが、遺伝子URA3であり、これらの両方が干渉系により制御される場合、干渉酵母(例えば、S.セレビジエ)の成長は、ヒスチジンおよびウラシルを枯渇させた培地を用いて評価することができる。ヒスチジンまたはウラシルを一方だけ枯渇させた培地を用いると、レポーター遺伝子に対する部分的転写干渉を有する酵母は、なお成長することができるが、ウラシルとヒスチジンの両方を枯渇させた培地を用いると、成長を完全に廃止することができる。
【0103】
本発明のダブル・ハイブリッド系は、非常に多数の用途を有することができる。例えば、タンパク質間相互作用阻害活性を有する分子の選別に特に適する。
【0104】
病理に関与するタンパク質間相互作用の同定は、これらの相互作用が新規医薬品を開発するための潜在的ターゲットを提供するので、非常に興味深い。疾病に関与するタンパク質間相互作用が同定されたならば、複雑な生体系における一方ではこのタンパク質間相互作用の適所を確認するためにこの相互作用を特異的に解離させる利用可能な合成または天然分子を有すること、および医薬品の開発のための利用可能な候補分子を有することは、多くの場合、非常に興味深い(Vidal,M.およびH.Endoh,1999参照)。
【0105】
本発明のダブル・ハイブリッド系は、所与のタンパク質間相互作用の阻害剤スクリーニングのための単純な遺伝子系を提供する。例えば、本発明のダブル・ハイブリッド系では、タンパク質間相互作用を解離させる分子が、レポーター遺伝子の発現を引き起こし、これによりこれらを同定することができる。
【0106】
この発現が細胞の生存に必須であるレポーター遺伝子を選択することが、適切である場合もある。例えば、この必須遺伝子の再発現が可能である場合、この結果、細胞の成長を追跡することにより、タンパク質間相互作用を阻害する分子を容易に同定することができる。
【0107】
例えば、探索するタンパク質間相互作用の阻害剤スクリーニングは、例えば、相互作用を各阻害剤候補の濃度勾配について評価することができる、寒天での高出力拡散分析(Young,K.ら、1998)で行うことができる。
【0108】
従って、本発明は、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害する化合物の同定方法に関し、この方法は、
a)上で説明したものなどの細胞を培養する段階、
b)被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
c)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下および不在下で比較する段階、
を含み、レポーター遺伝子の発現の増加は、被検化合物が、培養細胞により発現されたタンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であることの指標となる。
【0109】
本発明の干渉系のもう1つの用途は、調査するタンパク質間相互作用を特異的に排除するペプチドまたはタンパク質因子を同定するための、cDNAバンクおよびペプチドバンクのスクリーニングである(Zutshi,R.ら、1998)。
【0110】
疾病のレベルで関係があるタンパク質間相互作用が、同定および確認されたならば、観察された相互作用の構造および調節を特性付けすることは、興味深い。相互作用しているタンパク質対の各パートナーのレベルでこの相互作用を遮断する変異の同定は、相互作用の構造成分を調査するためばかりでなく、インビボでの機能の特性付けのためのトランスドミナントネガティブ変異体(Serebriiskii,I.G.ら、2001)のような遺伝子ツールを作製する手段としても有用である。これは、多数の相互作用パートナーを有するタンパク質には特に重要である。本発明の干渉系は、相互作用を遮断する変異の同定のための変異誘発によるスクリーニングにおいて使用することができる。変異誘発を受けた相互作用パートナーのバンクを作製しなければならず、これらを細胞成長の修復に関して高出力形式でスクリーニングすることができる(Gutherie,C.およびG.R.Fink(編集)、2002)。このアプローチにより、相互作用のレベルで欠損した変異タンパク質、特にドミナントネガティブ特性を有する変異体、の集合体を迅速に同定することができる。変異体の集合体は、タンパク質間相互作用に関与するタンパク質の表面の限定に役立つこともあり、ならびに構造生物学者が構造と親和性の関係の研究中に阻害剤候補の構造を改善する助けになることもある。
【0111】
本発明は、上で説明したものなどのダブル・ハイブリッド系を作るためのキットにも関し、このキットは、
−上で定義したものなどの干渉DNA構築物;
−第二DNA構築物[これは、パートナータンパク質Xと相互作用することができるパートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る、第一キメラタンパク質(Y−AD)をコードする。];
−第三DNA構築物[これは、このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第二キメラタンパク質(X−DBD)をコードする。];
を含み、前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用が、2つのキメラタンパク質が宿主細胞において発現されたときに干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成を生じさせる。
【0112】
上で説明したキットの3つのDNA構築物は、同じDNA分子上に存在することがあり、または2つもしくは3つの異なるDNA分子上に存在することもある。従って、3つの構築物が、同じDNAベクターに担持されていることがあり、または2つもしくは3つの異なるベクター上で見出される。例えば、2つのキメラタンパク質をコードする2つの構築物を同じベクター上で見出すことができるが、3つ目の構築物は、別のベクター上で見出される。
【0113】
従って、本発明は、タンパク質間相互作用の遮断を誘導する変異および分子を同定するための単純な遺伝子系の集合体を提供する。本発明は、タンパク質間相互作用を特性付けるために、およびまた新規医薬品の開発のために有用なツールである。
【0114】
本発明は、タンパク質Yと他の2つのタンパク質XおよびZとの相互作用の場合、ならびにYとXの間の相互作用を阻害するが、YとZの間の相互作用を阻害しない分子を同定したい場合に非常に有用であると立証することもできる。このような選択を可能にする細胞は、例えば、図7にある遺伝子構築物を有し、ならびに図7に表されているもののような少なくとも3つのキメラタンパク質をさらに発現する。タンパク質Yがもう1つのタンパク質Zとも相互作用する場合、これらの細胞によってタンパク質Xとタンパク質Yの間の相互作用の特異的阻害剤を同定することができる。
【0115】
本発明は、DNA構築物、いわゆる干渉構築物、を含有する細胞にも関し、
前記構築物は、
−第一誘導性プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
−1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、いわゆる干渉プロモーター[この(これらの)干渉プロモーター活性化は前記第一誘導性プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、その結果前記レポーター遺伝子の発現が誘導されたときに前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。]、
を含み、
前記細胞は、
−2つのパートナータンパク質XおよびZと相互することができる、タンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る、第一キメラタンパク質(Y−AD)、
−このタンパク質Yと相互作用することができる、タンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第二キメラタンパク質(X−DBD)、
[前記2つのキメラタンパク質X−DBDとY−ADの相互作用の結果、前記干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子が形成される。]、
−このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合した、DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第三キメラタンパク質(Z−DBD)
[前記2つのキメラタンパク質Z−DBDとY−ADの相互作用の結果、前記レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子が形成される。]
をさらに発現する。
【0116】
第一の実施形態において、本発明の細胞は、レポーター遺伝子を含むDNA構築物(干渉構築物)により形質転換または形質移入された宿主細胞であり、これらは、3つのキメラタンパク質の各々をコードする3つのDNA構築物によっても形質転換または形質移入される。これら4つの構築物は、同じDNAベクターに担持されていることがあり、または2つもしくは3つの異なるベクター上で見出される。すべての組み合わせが考えられる:同じベクター上に4つの構築物;4つの異なるベクター上に4つの構築物;同じベクター上に3つのキメラタンパク質をコードする3つの構築物、しかし4つ目の構築物(干渉構築物)は、別のベクター上で見出される;同じベクター上に3つのキメラタンパク質のうちの1つをコードする構築物と干渉構築物、しかし、他の2つのキメラタンパク質をコードする構築物は別のベクター上で見出される、など。この第一の実施形態におけるベクターは、非組み込みベクターである。
【0117】
第二の実施形態において、干渉構築物は、細胞のゲノムに組み込まれており、これらの細胞は、3つのキメラタンパク質の各々をコードする3つのDNA構築物により形質転換または形質移入される。これらのキメラタンパク質をコードするDNA構築物は、同じDNAベクターに担持されていることがあり、または異なるベクター上で見出され、このまたはこれらのベクターは、非組み込みベクターである。
【0118】
本発明の第三の実施形態において、干渉構築物ならびにキメラタンパク質をコードするDNA構築物は、細胞のゲノムに組み込まれている。3つのキメラタンパク質のうちの1つまたは2つをコードする3つの構築物のうちの1つまたは2つだけが、ゲノムに組み込まれているという場合もあり、ならびに構築物(単数または複数)は、非組み込みベクターに担持されていることもあるが、干渉構築物は、ゲノムに組み込まれているという場合もある。最後に、最後の実施形態において、干渉構築物、および3つのキメラタンパク質のうちの1つまたは2つをコードする1つまたは2つの構築物は、非組み込みベクターに担持されているが、3つ目のキメラタンパク質をコードする構築物は、細胞のゲノムに組み込まれている。
【0119】
レポーター遺伝子は、上で定義したものなどである。レポーター遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下に置かれている。好ましくは、レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターは、DNA結合ドメイン(DBD)を有するタンパク質と相互作用することができる配列(DBDにより結合されるDNA配列(UAS))を含む。さらに詳細には、レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターは、キメラタンパク質(Z−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含む。
【0120】
プロモーター、いわゆる「干渉プロモーター」、も誘導性プロモーターである。この誘導性プロモーターは、これらの活性化が、第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、この結果、レポーター遺伝子の発現が誘導されたときにこのレポーター遺伝子の発現の検出可能な減少を導く。
【0121】
利用することができる干渉プロモーターは、上で定義したものなどの誘導性プロモーターである。好ましくは、利用することができる干渉プロモーターは、DNA結合ドメイン(DBD)を有するタンパク質と相互作用することができる配列(DBDにより結合されるDNA配列(UAS))を含む。より詳細には、この誘導性干渉プロモーターは、キメラタンパク質(X−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含む。
【0122】
干渉プロモーターは、上で説明したように配置することができる。例えば、これらは、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に配置することができ、こういうわけで、これは下流干渉の事である。干渉プロモーターは、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に配置することもできる。こういうわけで、これは、上流干渉の事である。
【0123】
しかし、下流干渉に関連して、干渉プロモーターは、2つの可能な配向を有することができる。第一の配向は、第一プロモーターに対して集束的な配向に相当し、この構造は、下流干渉(またはDI)と呼ばれる。干渉プロモーターは、第一プロモーターに対して対状の配向を有することもあり、この第二の構造は、ナンセンス下流干渉(またはnDI)と呼ばれている。
【0124】
干渉プロモーターは、第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に配置することもできる。この時、干渉プロモーターは、第一プロモーターと同一の配向を有する(従って、これら2つのプロモーターは、対状の構造を有する)。この構造は、上流干渉(またはUI)と呼ばれている。
【0125】
もう1つの可能な構造は、上で説明した2つの構造の組み合わせ(UIおよびDI系)である。この場合、少なくとも1つの(誘導性)干渉プロモーターが、第一誘導性プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置される。この時、上流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに下流に位置する第一プロモーターの活性に干渉し、下流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに上流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、上流−下流干渉の事である。
【0126】
第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターに対して集中的な配向を有する(上記DI系参照)。第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターのものと同一の配向を有する(従って、これら2つのプロモーターは、対状の構造を有する)(上記UI系参照)。
【0127】
この構造は、上流−下流干渉(またはUDI)と呼ばれている。
【0128】
もう1つの可能な構造は、上で説明した2つの構造の組み合わせ(UIおよびnDI系)である。この場合、少なくとも1つの誘導性干渉プロモーターが、第一誘導性プロモーターおよびレポーター遺伝子の両側に配置される。この時、上流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに下流に位置する第一プロモーターの活性に干渉し、下流に位置する干渉プロモーターの活性化が、さらに上流に位置する第一プロモーターの活性に干渉するため、これは、上流−下流干渉の事である。
【0129】
第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターに対して対状の配向を有する(上記nDI系参照)。第一プロモーターおよびレポーター遺伝子の上流に位置する干渉プロモーターは、この第一プロモーターのものと同一の配向を有し(上記UI系参照)、従って、これら3つのプロモーターは、対状の構造を有する。
【0130】
この構造は、ナンセンス上流−下流干渉(またはnUDI)と呼ばれている。
【0131】
UI、UDIおよびnUDIタイプの構築物の場合、上で説明したように、好適には、短いオープンリーディングフレーム、これに続く1つまたはそれ以上(例えば2つまたは3つ)の停止コドンが、干渉プロモーターと第一プロモーターの間に挿入される。
【0132】
好適には、干渉構築物は、これらの末端で、上で説明したものなどの二方向性転写ターミネーターに隣接する。
【0133】
この干渉プロモーターは、条件付で活性化される誘導性プロモーターである。本発明に関連して、これは、転写因子が活性であるときにこの転写因子によって活性化される。本発明によると、誘導性プロモーターを活性化する転写因子は、2つのキメラタンパク質(X−DBDおよびY−AD)の集合体によって形成され、これは、これら2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの間に相互作用が発生したときにこの誘導性プロモーターを活性化することができる活性転写因子を再構成する。
【0134】
上で明記したように、本発明のこの特定の実施形態における細胞は、3つのキメラタンパク質を発現する。従って、これらは、
−2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができる、パートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る、第一キメラタンパク質(Y−AD)、
−このタンパク質Yと相互作用することができる、タンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第二キメラタンパク質(X−DBD)、
を発現し、前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用の結果、干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子が形成され、
−発現された第三キメラタンパク質(Z−DBD)は、このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合した、DNA結合ドメイン(DBD)から成り、上記2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用の結果、レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子が形成される。
【0135】
第二キメラタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)は、干渉プロモーターの一機能として前記プロモーターのレベルでDNAに結合するように選択される。好ましくは、この第二キメラタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)は、前記プロモーター中に存在する配列(DBDによって見出されるDNA配列(UAS)(上流活性化配列))と相互作用するように選択される。この誘導性干渉プロモーターは、キメラタンパク質(X−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含む。
【0136】
第一キメラタンパク質の転写活性化ドメイン(Y−ADのドメインAD)は、細胞内での干渉プロモーターの転写を活性化することができる。従って、前記干渉プロモーター(誘導性プロモーター)は、互いに相互作用する2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADによって形成された機能性転写因子により誘導される。この機能性転写因子は、このDNA結合ドメイン(DBD)を介して干渉プロモーターの配列と相互作用し、ならびにこの転写活性化ドメイン(AD)を介してこのプロモーターにより支配される転写を開始させることができる。
【0137】
上で明記したように、これは、まさしくダブル・ハイブリッド法の原理の構成要素であり、当業者は、本発明の実施を可能にする多彩なプロモーター/転写因子対を選択することができる。
【0138】
第三キメラタンパク質(Z−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)は、レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターの一機能として、前記プロモーターのレベルでDNAに結合するように選択される。好ましくは、キメラタンパク質Z−DBDのDNA結合ドメイン(DBD)は、レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーター中に存在する配列(DBDによって結合されるDNA配列(UAS)(上流活性化配列))と相互作用するように選択される。
【0139】
レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターと干渉プロモーターは、異なるプロモーターである。特に、レポーター遺伝子の発現を調節する誘導性プロモーターは、キメラタンパク質X−DBDに結合しないように選択される(従って、このプロモーターは、X−DBDのDBDによって結合される任意のDNA配列(UAS)(上流活性化配列)を含有しない。)。加えて、誘導性干渉プロモーターは、キメラタンパク質Z−DBDに結合しないように選択される(従って、このプロモーターは、Z−DBDのDBDによって結合される任意のDNA配列(UAS)(上流活性化配列)を含有しない。)。
【0140】
第一キメラタンパク質の転写活性化ドメイン(Y−ADのドメインAD)は、細胞内でのレポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターの転写を活性化することができる。従って、このレポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターは、互いに相互作用する2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADによって形成された機能性転写因子によって誘導される。この機能性転写因子は、このDNA結合ドメイン(DBD)を介して、レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターの配列と相互作用し、ならびにこの転写活性化ドメイン(AD)を介して、このプロモーターにより支配される転写を開始させることができる。
【0141】
上で明記したように、これは、まさしくダブル・ハイブリッド法の原理を構成し、当業者は、本発明の実施を可能にする多彩なプロモーター/転写因子対を選択することができる。
【0142】
従って、タンパク質YとXの間の相互作用の場合、干渉プロモーターを活性化し、これによりレポーター遺伝子の転写への干渉を導く。YとXの間の相互作用を(例えば、YとXの間の相互作用を阻害するキメラ阻害剤の作用により)摂動させると、干渉プロモーターは、あまり活性化しないかまったく活性化せず、従って、レポーター遺伝子の発現減少を招く。
【0143】
DNA結合ドメイン(DBD)および転写活性化ドメイン(AD)に融合するパートナータンパク質X、YおよびZは、YとXの間およびZとYの間に相互作用が存在する任意のタンパク質群であって、YがADおよびZに融合しており、Xが異なるDBDに融合しているとき、(たとえこれがこれらの起源生物における場合でなくても)細胞内で相互作用して誘導性プロモーター、例えば上で定義したもの、を活性化する2つの機能性転写因子(それぞれ、X−DBD/Y−ADおよびZ−DBD/Y−AD)の形成をもたらす任意のタンパク質群と、定義することができる。これらは、完全タンパク質である場合もあり、または完全タンパク質のフラグメントである場合もある。このように、ダブル・ハイブリッドシグナルを生じさせるキメラタンパク質を、本発明に関連して使用することができる。すなわち、2つのパートナータンパク質(またはこれらのパートナータンパク質のフラグメント)が、使用される細胞内で、誘導性プロモーターを活性化する機能性転写因子を形成するために十分な親和性で互いに相互作用する、キメラタンパク質[この場合、前記転写因子は、第一キメラタンパク質のDNAにこの結合ドメインを介して結合し、ならびに第二キメラタンパク質の転写活性ドメイン(AD)によって前記プロモーターを活性化する]である。
【0144】
干渉DNA構築物が、宿主細胞のゲノムに組み込まれているとき、上で説明したように、この構築物は潜在的摂動性ゲノム転写活性のない遺伝子座を標的にすると有利である。
【0145】
本発明のこの実施形態(3つのキメラタンパク質)に関連して使用することができる細胞は、上で説明したものである。
【0146】
上に明記したように、本発明のダブル・ハイブリッド系は、非常に多数の用途を有することができる。例えば、タンパク質間相互作用に対する阻害活性を有する分子のスクリーニングに特に適する。3つのキメラタンパク質での本発明の実施形態に関連して、タンパク質YとXの間の相互作用を阻害するが、YとZの間の相互作用を阻害しない分子の同定に関して言えば、上で説明した細胞は特に興味深い。例えば、これらの細胞では、YとXの間のタンパク質間相互作用を解離させる分子がレポーター遺伝子の発現を引き起こし、これによりこれらを同定することができる。
【0147】
従って、本発明は、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害するが、このタンパク質Yと第三タンパク質Zの相互作用はまったく阻害しないか、あまり阻害しない化合物を同定するための方法にも関し、この方法は、
a)上で定義したもの(三キメラタンパク質実施形態)などの細胞を培養する段階、
b)被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
c)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下と不在下で比較する段階
を含み、この場合、レポーター遺伝子の発現の増加は、被検化合物が、タンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であること、しかし、この生成物が、タンパク質Yとタンパク質Zの間の相互作用をまったく阻害しないか、あまり阻害しないことの指標となる。
【0148】
三キメラタンパク質相互作用系のもう1つの用途は、調査するタンパク質Xとタンパク質Yの間の相互作用を特異的に排除する(Zutshi,R.ら、1998)が、タンパク質Xとタンパク質Zの間の相互作用には影響を及ぼさないペプチドまたはタンパク質因子を同定するための、cDNAバンクおよびペプチドバンクのスクリーニングである。
【0149】
もう1つの用途は、タンパク質Yとタンパク質Xの間の相互作用を遮断するが、タンパク質Yとタンパク質Zの間の相互作用には影響を及ぼさない、タンパク質Yの変異の同定である。これは、特定の相互作用の構造成分を調査するためばかりでなく、インビボでの機能の特性付けのためのトランスドミナントネガティブ変異体(Serebriiskii,I.G.ら、2001)のような遺伝子ツールを作製する手段としても有用である(上記参照)。
【0150】
本発明は、上で説明したものなどのダブル・ハイブリッド系を作るためのキットにも関し、このキットは、
−上で定義したDNA構築物;
−第二DNA構築物(これは、2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができる、パートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る、第一キメラタンパク質(Y−AD)をコードする。);
−第三DNA構築物(これは、このタンパク質Yと相互作用することができる、タンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第二キメラタンパク質(X−DBD)をコードする。);
[前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。]
−第四DNA構築物(これは、このタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合した、DNA結合ドメイン(DBD)から成る、第三キメラタンパク質(Z−DBD)をコードする。);
[前記2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用は、レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。]
を含む。
【0151】
上で説明したキットの4つのDNA構築物は、同じDNA分子内に存在する場合もあり、または2つ、3つもしくは4つの異なるDNA分子上に存在する場合もある。従って、これら4つの構築物は、同じDNAベクターに担持されている場合があり、または2つ、3つもしくは4つの異なるベクター上で見出される。例えば、3つのキメラタンパク質をコードする3つの構築物を同じベクター上で見出すことができるが、4つ目の構築物は、別のベクター上で見出される。
【0152】
本発明は、タンパク質間相互作用の特性付けのために有用なツールであるが、新規医薬品の開発に有用なツールでもある。
【0153】
図面への手がかり
図1:転写干渉に基づくrY2H系。
逆Y2H相互作用の検出のための転写干渉の適用を図解する略図。
Y2H相互作用が不在の状態では、レポーター遺伝子HIS3は、正常に発現され、細胞は、ヒスチジンを含有しない培地で成長することができる(図1A)。Y2H相互作用の存在は、HIS3の転写レベルを低下させ、これに起因して、ヒスチジンについて栄養要求のレポーター株の細胞成長が減少する(図1B)。HIS3のORFは、淡色の長方形によって表し、小さな黒い矢印が開始コドンの位置を指定している。HIS3のORFの上の灰色の矢印は、Padh1のレベルで開始される転写を表すのに対し、黒矢印は、Pgal1の転写を表す。矢印の濃さは、プロモーターの転写活性を象徴している。矢印は、転写の方向を指している。GAL4−DBD(X−DBD)およびGAL4−AD(Y−AD)のために用いた相互作用しているタンパク質XおよびYを卵形で示す。Padh1:ADH1プロモーター;Pgal1:GAL1プロモーター;HIS3:HIS3のORF;DI:下流干渉;UI:上流干渉。縮尺に従わずに示した図。
【0154】
図2:転写干渉構築物。
転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。制限部位SalIおよびSacI、ならびに対応するpBluescriptベクター上でのこれらの位置を指摘する。例示するプラスミドの名前(実施例4および表2参照)を示す。略語:Padh1:ADH1プロモーター;Pgal1:GAL1プロモーター;HIS3:HIS3のORF;Tadh1:ADH1ターミネーター;Tcyc1:CYC1ターミネーター;ORF:2つの停止コドンに続くオープンリーディングフレーム;DI:下流干渉(2A);UI:上流干渉(2B);UDI:上流−下流干渉(2C);nDI:ナンセンス下流干渉(2D);nUI:ナンセンス上流干渉(2E)。
【0155】
図3:干渉構築物のゲノム組み込み。
転写干渉構築物のゲノム組み込みを図解する例。pRB17のフラグメントSalI−SacIをpRB2に挿入することにより、組み込みベクターpRB23を構築した。この後、pRB23を使用してターゲット株yCM15を形質転換し、ここにpRB23を相同組換えにより遺伝子座URA3のレベルで組み込む。URA3の遺伝子座(URA3の上流/下流)での相同ベクター配列をハッチングして示す。URA3の遺伝子に隣接するORF(GEA2、TIM9およびRPR)を示し、モデル欠失ura3D0を指摘する(Brachmann,C.B.ら、1998)。略語:Padh1:ADH1プロモーター;Pgal1:GAL1プロモーター;HIS3:HIS3のORF;Tadh1:ADH1ターミネーター;Tcyc1:CYC1ターミネーター;3HA:pRB2上のコード化タグ配列;Ptef:TEFプロモーター;G418r:G418への耐性をコードするORF;ampR:アンピシリン耐性遺伝子。
【0156】
図4:被組み込み干渉系の機能評価。
組み込まれた干渉系コピーを有する株(yRB48(DI)、yRB49(UI)、yRB50(nUI)、yRB83(UDI)およびyRB82(nDI))を、プラスミドpCL1/pFL39(+)およびpTAL20/pDBT(−)の系列でそれぞれ形質転換し、これらの形質転換体の細胞成長を、完全培地(図4A)またはヒスチジンを枯渇させた培地(図4BからE)で、滴下評価(drop evaluation)法により試験する。各形質転換体について10倍稀釈系列を調製する。場合によっては、タンパク質HIS3pの競合阻害剤(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3−AT))を示す漸増濃度(0mMから22mM)で培地に添加する(図4BからE)。略語:DI:下流干渉株;UI:上流干渉株;nDI:ナンセンス下流干渉株;nUI:ナンセンス上流干渉株;UDI:上流−下流干渉株。
【0157】
図5:プラスミドに基づく干渉系の機能評価(ゲノムレベルで組み込まれていないもの):
株yCM15を、プラスミドに基づくバージョンの干渉系(pRB20(DI)、pRB21(UI)またはpRB28(UDI))ならびにプラスミドpCL1/pFL39(+)およびpTAL20/pDBT(−)の系列でそれぞれ独立して共形質転換する。これらの三重形質転換体の各々の細胞成長を、ヒスチジンを含有する(図5A)および含有しない(図5BからD)寒天プレート、ヒスチジンを含有しないプレートについては、漸増濃度(0mMから16mM)の3−ATを含有するまたは含有しない寒天プレートで試験する(図5BからD)。10倍稀釈系列を調製し、各形質転換株について2つの独立したクローンを評価する。略語:DI:下流干渉プラスミド;UI:上流干渉プラスミド;UDI:上流−下流干渉プラスミド。
【0158】
図6:
Y2H相互作用により誘導された転写干渉:
図6Aおよび図6B:タンパク質Fe65とAppおよびp53とmdm2の間で以前に同定されたタンパク質間相互作用は、酵母の細胞成長を阻害するように十分に転写干渉構築物を誘導する。
【0159】
先ず、これらの構築物の活性を検証する(図6Aおよび6F)。これを行うために、レポーター株Y187を次のプラスミド対によって形質転換する:pRB34+pRB35(Fe65/App)、pRB34+pDBT(Fe65/DBD)およびpTAL20+pRB35(AD/App)(図6A)ならびにpDBT−mdm2+pVP16−p53Nt(p53/mdm2)、pVP16−p53Nt+pDBT(p53/DBD)およびpTAL20+pDBT−mdm2(AD/mdm2)(図6F)。これらの各形質転換体の2つのクローンをウラシルを含有するおよび含有しない最小培地で培養する(図6Aおよび6F)。
【0160】
この後、株yRB48(系DI)およびyRB49(系UI)を、各々、プラスミド対 pRB34(Fe65)およびpRB35(App)によって共形質転換して、2つのハイブリッドタンパク質AD−Fe65およびDBD−AppCtを発現させる。対照として、株yRB48(系DI)およびyRB49(系UI)を、各々、プラスミド対 pRB34+pDBT(Fe65/DBD)およびpTAL20+pRB35(AD/App)によっても共形質転換する。
【0161】
各二重形質転換体の2つのクローンの細胞成長を、ヒスチジンを含有するおよび含有しない寒天プレート、ヒスチジンを含有しないプレートについては、漸増濃度の3−ATを含有するまたは含有しない寒天プレートで試験する(図6Bから6E)。株yRB49(系UI)は、プラスミド対pDBT−mdm2+pVP16−p53Nt(p53/mdm2)によっても共形質転換して、2つのハイブリッドタンパク質DBD−mdm2およびVP16−p53(1−55)を発現させる。株yRB49(系UI)は、対照として、プラスミド対pDBT−mdm2+pTAL20(AD/mdm2)によっても共形質転換する。2つのプラスミドにより共形質転換された2つのクローンを、これらの2つのプラスミド対の各々について選択する。
【0162】
これらの二重形質転換体の2つのクローン各々の細胞成長を、ヒスチジンを含有するおよび含有しない寒天プレート、ヒスチジンを含有しないプレートについては、図に示されているように、漸増濃度の3−ATを含有するまたは含有しない寒天プレートで試験する。
【0163】
図7:2つのタンパク質YとXの間の相互作用を阻害するがこのタンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用は阻害しない分子を同定することができる、本発明の転写干渉に基づくrY2H系
2つのタンパク質YとXの間の相互作用を阻害するがこのタンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用は阻害しない分子を同定することができる逆Y2H相互作用を検出するための転写干渉の適用を図解する略図。タンパク質XとYの間の相互作用Y2Hが不在の状態では、レポーター遺伝子HIS3は、正常に発現され、これらの細胞は、ヒスチジンを含有しない培地で成長することができる(図7A)。これは、タンパク質Xとパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤が存在するケースである。X−DBDとY−ADの間のY2H相互作用の存在は、HIS3の転写レベルを低下させ、これに起因して、ヒスチジンについて栄養要求性のレポーター株の細胞成長が減少する(図7B)。HIS3のORFは、淡色の長方形によって表し、小さな黒い矢印が開始コドンの位置を指定している。HIS3のORFの上の灰色の矢印は、Plexのレベルで開始された転写を表すのに対し、黒矢印は、Pgal1の転写を示す。矢印の濃さは、プロモーターの転写活性を象徴している。矢印は、転写の方向を指している。用いた相互作用しているタンパク質X/YおよびZ/Yを卵形で示す。Plex:LexAプロモーター;Pgal1:GAL1プロモーター;HIS3:HIS3のORF;縮尺に従わずに示した図。
【0164】
図8:
Fe65/App相互作用の阻害剤を選別するための実験条件の決定
【0165】
図8A:細胞量の決定:
UI転写干渉系を含有する株(yRB49)を、プラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)で共形質転換した。この形質転換株の培養物を、OD=0.1および0.01に稀釈し、各稀釈物の10mLを、ヒスチジンを補足した(+HIS)培地に平板接種した。これらの皿を30℃で48時間、保温した。
【0166】
図8B:3−ATの濃度の決定
プラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)でまたは対照プラスミドpTAL20およびpDBT(AD/DBD)で共形質転換した転写干渉系(yRB49)を含有する株を、ヒスチジンを含有し、3−ATを含有しない培地、ヒスチジンを含有せず、3−ATを含有しない培地、およびヒスチジンを含有し、0.5mMまたは1mMの3−ATを含有する培地に平板接種した。この後、100%DMSO(1μL)、DMSO中10mMの分子xの溶液(1μL)、およびDMSO中10mMの分子yの溶液(1μL)を各皿に堆積させた。これらの皿を30℃で48時間、保温した。
【0167】
図8C:ヒスチジンによる成長の修復
UI干渉系(yRB49)を含有し、プラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)で共形質転換した株を、ヒスチジンを含有し、1mMの3−ATを含有する培地に平板接種した。0.125%、0.25%、0.5%もしくは1%の、ウラシル(U)(1μL)、アデニン(A)(1μL)、リシン(K)(1μL)またはヒスチジン(H)(1μL)を、各皿の中央に堆積させた。これらの皿を30℃で48時間、保温した。
【0168】
図9:成長の修復によるFe65/App相互作用の阻害剤の検出
UI転写干渉系(yRB49)を含有し、プラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)で共形質転換した株を、ヒスチジンを含有せず、1mMの3−ATを含有する培地に平板接種した。Fe65/App相互作用の推定的阻害剤である分子1の10mM溶液(1μL)、Fe65/App相互作用の推定的阻害剤である分子2の10mM溶液(1uL)、およびFe65/App相互作用に対して不活性である分子3の10mM溶液(1μL)をこの皿に堆積させた。これらの皿を30℃で48時間、保温した。
【0169】
図10:干渉系の活性化についてのFe65/Appとp53/MDM2相互作用の比較
UI転写干渉系を含有する株(yRB49)を、プラスミド対pRB34とpRB35(Fe65/App相互作用)、pDBT−mdm2とpVP16−p53Nt(mdm2/p53相互作用)、またはpTAL20とpDBT(対照)で共形質転換した。各形質転換体につき2つの独立したクローンを培養した。30℃で一晩保温した後、すべての培養物を同じODにした。各培養物の10倍系列稀釈を行い、各稀釈溶液の1滴を、ヒスチジンを含有せず、様々な濃度(1から32mM)の3−ATを補足した培地に堆積させた。これらの皿を30℃で48時間保温した。
【0170】
図11:Fe65/App相互作用の阻害剤の特異性の確認
UI転写干渉系を含有する株(yRB49)を、プラスミド対pRB34とpRB35(Fe65/App相互作用)またはpDBT−mdm2とpVP16−p53Nt(mdm2/p53相互作用)で共形質転換した。プラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)を含有する株を、1mMの3−ATを補足した、ヒスチジンを含有しない培地の5つの皿に平板接種し(上の行)、プラスミドpDBT−mdm2およびpVP16−p53Nt(mdm2/p53相互作用)を含有する株を、20mMの3−ATを補足した、ヒスチジンを含有しない培地の5つの皿に、同様に平板接種した(下の行)。
【0171】
対照皿は、1μLのヒスチジンを0.125% w/vでこの皿の中央に堆積させることにより、各相互作用について調製した。異なる分子A、B、CまたはDを、次の計画に従って、他の4つの皿の各々に置いた:左上の角に、0.1mMの濃度の生成物(1μL)を堆積する;右上の角に、1mMの濃度の同生成物(1μL)を堆積させる;中央に、10mMのこの生成物(1μL)を堆積させる。これらの皿を30℃で48時間保温した。
【0172】
後続の実施例を利用して本発明を例示する。これらの実施例は、実例となるもの、非限定的なものと解釈しなければならない。
【0173】
後続の実施例において用いる分子生物学の技法は、分子生物学の標準的なプロトコルに相当し、これらは(Sambrook.J.ら、1989)により説明されている。高忠実度PCR系(Expand High Fidelity PCR System、ドイツ、PenzbergのRoche Diagnostics)の使用により、DNA配列を増幅した。
【実施例1】
【0174】
プラスミドpRBVの構築:
遺伝子ADH1の完全構成的プロモーターに対応する761bpのフラグメントを、プライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB43 5’−AAAATCTAGAGGCGCCATATCCTTTTGTTGTTTCCGG−3’(配列番号1)およびRB44 5’−AAAAACGCGTGGCGCCCATCTTTCAGGAGGCTTGC −3’(配列番号2)(制限部位XbaIおよびMluIに下線を引く)およびゲノムDNAマトリックスとしてS.セレビジエ(S.cerevisiae)の株FL100(特に、the American Type Culture Collection:ATCC(米国、バージニア州、マナッサス)から番号28383で入手できる。)を使用することにより、PCRによって作製する。
【0175】
リン酸化1本鎖オリゴヌクレオチド:配列 5’−CGCGTGGGGGGTTAATTAAAAAAAAGC−3’(配列番号3)のRB75および配列 5’−GGCCGCTTTTTTTTAATTAACCCCCCA−3’(配列番号4)のRB76、をハイブリド形成させて、相和性付着末端MluIおよびNotIをそれぞれ末端に有する2本鎖連結アーム(リンカー)を得る。これを行うために、前記2つの1本鎖オリゴヌクレオチドを水中、等モル濃度で混合する。この混合物を加熱ブロック(ヒートブロック)において5分間、90℃に加熱し、この後、このブロックを(約2時間)放置して周囲温度に冷却する。
【0176】
ベクターpRB3を構築するために、PCRによって得られた761bpのフラグメント(フラグメントPadh1)を、先ず最初に、制限酵素XbaIおよびMluIによって消化する。このようにして消化したフラグメントを、この後、事前にXbaI−NotIによって消化したベクターpBluescript KS+(Stratagene(米国、カリフォルニア州、ラホーヤ)により市販されているもの)に、リンカーと共に挿入する。このようにして得たプラスミドをpRB3を呼ぶ。
【0177】
次に、遺伝子HIS3のオープンリーディングフレームに対応する660bpのフラグメントを、マトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNA、ならびにプライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB45 5’−AAAAACGCGTACAGAGCAGAAAGCCCTAG−3’(配列番号5)およびRB46 5’−AAAAAAGCGGCCGCGGCGCGCCTTAATTAACTACATAAGAACACCTTTGGTG−3’(配列番号6)(部位Mlu1、NotIおよびAscIに下線を引く)、を使用することにより、PCRによって増幅させる。このフラグメントを制限酵素MluIおよびNotIによって消化し、事前に制限酵素MluIおよびNotIによって線形化したベクターpRB3にクローニングした。このようにして得たベクターをpRB4と呼んだ。
【0178】
次に、遺伝子ADH1のターミネーター(Tadh1)をコードする203bpのPCRフラグメントを、マトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNA、ならびにプライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB51 5’−AAAAGGCGCGCCTAATTCCGGGCGAATTTCT−3’(配列番号7)およびRB52 5’−AAAAGAGCTCTGCATGCCGGTAGAGGTG−3’(配列番号8)(部位AscIおよびSacIに下線を引く)、を使用することにより、PCRによって増幅させる。得られたフラグメントを制限酵素AscIおよびSacIによって消化し、これを、事前に酵素AscIおよびSacIによって消化したベクターpRB4に挿入する。このようにして得たプラスミドをpRB5と呼ぶ。
【0179】
遺伝子CYC1のターミネーター(Tcyc1)をコードする88bpのフラグメントを、配列:5’−CGATCGCGTTTGTACAGAAAAAAAAGAAAAATTTGAAATATAAATAACGTTCTTAATACTAACATAACTATTAAAAAAAATAAATAGGGACCG−3’(配列番号9)のRP98および配列:5’−AATTCGGTCCCTATTTATTTTTTTTAATAGTTATGTTAGTATTAAGAACGTTATTTATATTTCAAATTTTTCTTTTTTTTCTGTACAAACGCGAT−3’(配列番号10)のRB99の2つのリン酸化1本鎖オリゴヌクレオチドのハイブリド形成によって得る。これを行うために、これら2つの1本鎖オリゴヌクレオチドを水中、等モルで混合する。この混合物を加熱ブロック(ヒートブロック)において5分間、90℃に加熱し、この後、このブロックを(約2時間)放置して、室温に冷却する。このようにして得た2本鎖フラグメントは、相和性付着末端EcoRIおよびClaIをそれぞれこの末端に有する。これにより、この2本鎖フラグメント(ターミネーターTcyc1に対応する。)を、事前に酵素EcoRIおよびClaIによって消化した、上で説明したベクターpRB5に挿入することができる。このようにして得たベクターをpRBVと呼ぶ。
【0180】
この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【実施例2】
【0181】
転写干渉系の構築
2.1 下流干渉ベクターpRB17およびナンセンス下流干渉ベクターpRB16の構築:
下流干渉ベクターpRB17(DIとも呼ばれる)およびナンセンス下流干渉ベクターpRB16(nDIとも呼ばれる)を、プロモーターPgal1に対応する549bpのPCRのフラグメントをベクターpRBV(実施例1参照)に挿入することによって得る。
【0182】
このPCRフラグメントは、マトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNA、ならびにプライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB49 5’−AAAAGGCGCGCCGTAAAGAGCCCCATTATCTTAG−3’(配列番号11)およびRB50 5’−AAAAGGCGCGCCTTTGAGATCCGGGTTTTTTCT−3’(配列番号12)(制限部位AscIに下線を引く)を使用することによって得る。次に、このPCRフラグメントを酵素AscIによって消化し、酵素AscIで線形にしたベクターpRBVに挿入する。このフラグメントは、両方向に挿入することができ、これにより2つの構築物を得ることができる:下流干渉ベクターpRB17(DIとも呼ばれ、この場合、Padh1およびPgal1は、反対方向に配向している。)(図2A参照)ならびにナンセンス下流干渉ベクターpRB16(nDIとも呼ばれ、この場合、Padh1およびPgal1は、同じ配向である。)(図2D参照)。
【0183】
これらの構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0184】
使用した一方向性プロモーターPgal1は、拡散的二方向性プロモーターGAL1−10(Jonston,M.およびR.W.Davis、1984)によって説明されていたもの)から生じ、ならびに4つのコンセンサス部位「GAL4p応答性DNAエンハンサー要素」および遺伝子GAL1の基本プロモーターを含有するが、遺伝子GAL10のプロモーターのTATAボックスを有さない。プロモーターGAL1は、転写因子GAL4pによって調節され、これにダブル・ハイブリッド対(Y2H)(別個のADおよびDBDドメイン)を利用することができる。このプロモーターは、十分に特性付けされており、プロモーターの誘導性発現が求められる用途での、例えば、タンパク質の精製、必須遺伝子の機能の研究などのための使用に成功している。
【0185】
2.2 上流干渉ベクターpRB18およびナンセンス上流干渉ベクターpRB19の構築:
上流干渉ベクターpRB18(UIとも呼ばれる)およびナンセンス上流干渉ベクターpRB19(nUIとも呼ばれる)を構築するために、タンパク質GSTのカルボキシ末端(C−ter GST)のアミノ酸をコードする短いオープンリーディングフレームを、2つの1本鎖リン酸化オリゴヌクレオチド:配列5’−CCGGGGCGGCCGCAACGTTTGGTGGTGGCGACCATCCTCCAAAATCGGATCTGGTTCCGCGTTGAGTAGCTGAATAAGTGAATAGGCGGCCGCT−3’(配列番号13)のRB81および配列5’−CTAGAGCGGCCGCCTATTCACTTATTCAGCTACTCAACGCGGAACCAGATCCGATTTTGGAGGATGGTCGCCACCACCAAACGTTGCGGCCGCC−3’(配列番号14)(部位NolIに下線を引く)のRB82、のハイブリダイゼーションによって作製する。
【0186】
これを行うために、これら2つの1本鎖オリゴヌクレオチドを水中、等モル濃度で混合する。この混合物を加熱ブロック(ヒートブロック)において5分間、90℃で加熱し、この後、このブロックを(約2時間)放置して、室温に冷却する。このようにして得た2本鎖フラグメントは、相和性付着末端XmaIおよびXbaIをそれぞれこの末端に有する。
【0187】
並行して、遺伝子GAL1のプロモーターに対応する552bpのフラグメント(これは、下流干渉ベクターpRB17の構築に使用したものと同じプロモーターであるが、このフラグメントは、短いオープンリーディングフレームの翻訳を開始させるために出発コドンATGを含有するので、下流構築物のために使用したものより3bp長い。)を、PCRにより増幅する。このフラグメントは、マトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNA、ならびにプライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB55 5’−AAAACCCGGGGTAAAGAGCCCCATTATCTTAG−3’(配列番号15)およびRB56 5’−AAAACCCGGGCATTTTGAGATCCGGGTTTTTTC−3’(配列番号16)(部位XmaIに下線を引く)を使用することによって得る。この後、このフラグメントを酵素XmaIで消化する。
【0188】
次に、3つのフラグメントのライゲーションを行う(上で得た2つのフラグメント+ベクターpRBV)。このライゲーションは、酵素XmaIで消化したフラグメントPgal1と短いオープンリーディングフレームC−ter GST(相和性付着末端XmaIおよびXbaI)とをベクターpRBV(事前にXmaI−XbaIによって消化したもの)に挿入することに存する。このフラグメントPgal1は、両方向に挿入することができる。この結果、2つの構築物が得られる:上流干渉ベクターpRB18(UIとも呼ばれ、この場合、Padh1およびPgal1は、同じ配向である。)(図2B参照)ならびにナンセンス上流干渉ベクターpRB19(nUIとも呼ばれ、この場合、Padh1およびPgal1は、反対方向に配向している。)(図2E参照)。
【0189】
これらの構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0190】
2.3 上流−下流干渉ベクターpRB27の構築:
上流−下流干渉プラスミドpRB27(UDIとも呼ばれる)は、pRB16およびpRB17の構築に使用したものと同じ、プロモーターPgal1に対応する549bpのPCRのフラグメント(実施例2参照:このPCRフラグメントは、マトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNA、ならびにプライマーとしてオリゴヌクレオチドRB49およびRB50を使用して得る。)を、ベクターpRB18に挿入することによって構築する。これを行うために、このPCRのフラグメントを酵素AscIによって消化し、酵素AscIでの消化により線形にしたベクターpRB18に挿入する。このフラグメントは、両方向に挿入することができ、より詳細には、所望の配向の挿入物を有するプラスミド(この場合、2つのプロモーターPgal1は反対方向で配向している。)を(制限プロフィールにより)選択する(図2C参照)。
【0191】
このようにして得たベクターをpRB27と呼ぶ。この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0192】
2.4 転写干渉系構築の原理
本出願人は、2つのタイプのrY2H(逆二重ハイブリッド)系を考えた。これらは、両方とも、転写干渉による遺伝子休止化に基づく。第一の構造は、Pgal1が、遺伝子HIS3の下流に位置し、Padh1およびPgal1は、集束的な配向を有する。この構造は、Pgal1の下流活性化が遺伝子HIS3の転写に干渉するため、下流干渉(DI)と呼ばれる。第二の構造では、Pgal1が、Padh1の上流に位置し、これら2つのプロモーターは、対状の配向を有する。従って、Pgal1の上流活性化が、プロモーターPadh1の活性に干渉するため、この構造は上流干渉(UI)と呼ばれる。
【0193】
構造UIおよびDIを基に、5つの転写干渉構築物rY2Hを開発した(図2Aから2E参照)。
【0194】
系UIにおけるPgal1の活性化は、転写干渉のため、Padh1の活性の減少を導く。しかし、Pgal1の活性は、遺伝子HIS3のセンス転写産物を、なお、生じさせることがある。機能性IGPデヒドラターゼへのこのセンス転写産物の翻訳を防止するために、2つの停止コドンに続くアミノ酸数22の短いオープンリーディングフレームを、Pgal1とPadh1の間に挿入した。この結果、系UIにおける転写干渉は、バイシストロン性メッセンジャーを生じさせ、ここから出発してこの最初の短いオープンリーディングフレームのみを翻訳する。
【0195】
第三の構築物は、系UIとDIの組み合わせである。上流−下流干渉系(UDI)と呼ばれるこの系では、Pgal1は、Padh1−HIS3の上流に挿入され、Padh1−HIS3に対して対状であり、ならびにPgal1のさらなるコピーが、HIS3のオープンリーディングフレームの下流に配置され、これは、Padh1に対して集中的な配向にある(図2C参照)。
【0196】
Pgal1によって誘導される転写干渉の特異性を制御するために、ナンセンス上流(nUI)およびナンセンス下流(nDI)干渉系を構築した。これら2つの対照構築物において、Pgal1の配向は、構築物UIおよびDIに対してそれぞれ逆である。有効なY2H相互作用が存在する状態でさえ、これらの対照構築物の使用中に転写干渉は観察されないはずである。
【0197】
上で説明した5つの構築物(5つのプラスミド挿入物)は、これらの末端で、二方向性転写ターミネーター(実施例1参照)に隣接している。例えば、片側には、遺伝子CYC1の転写ターミネーター(Tcyc1)(Osborne,B.I.およびL.Guarent、1989によって説明されたもの)をコードするフラグメント、反対側には、遺伝子ADH1のターミネーター(Tadh1)(Irniger,S.ら、1991によって説明されたもの)をコードするフラグメントが、見出される。これら2つの要素は、二方向性様式で転写を停止させる。これは、Pgal1またはPadh1によって命じられる転写が制限部位SalI/SacIを越えて拡大することを防止し、およびまた、レポーター遺伝子のカセットの外側の転写活性の起こり得る影響からrY2H系を保護する。細菌ベクターを用いて干渉構築物を最初に構築し、制限部位SalIおよびSacIを酵母の複製および組み込みベクター中へのサブクローニングに使用した(下記参照)。
【実施例3】
【0198】
新規組み込みベクターpRB2の構築:
遺伝子URA3の停止コドンTAAの下流に位置する領域+29から+900に対応する871bpのPCRフラグメントを、プライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB83 5’−AAAAAAGAGCTCTACTAAACTCACAAATTAGAGC−3’(配列番号17)およびRB84 5’−AAAAAAGAATTCGCGGCCGCAAATATACTGGGGAACCAGTC−3’(配列番号18)(部位EcoRIおよびSacIに下線を引く)、ならびにゲノムDNAのマトリックスとしてS.セレビジエの株FL100を使用することにより、PCRによって作製する。
このPCR産物をEcoRI−SacIによって消化し、ベクターpFA6a−kanMX−PGAL1−3HA(Longtine,M.S.ら、1998、およびWach A,ら、1997)によって説明されたものであり、この技術内容は、このベクターの構築に関して、本出願に参照により組み込まれる)の部位EcoRI−SacIのレベルでクローニングする。このようにして得たベクターをpRB12と呼んだ。
【0199】
並行して、遺伝子URA3のATGの上流に位置する領域−223から−992に対応する769bpのフラグメントを、プライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB85 5’−AAAAAACGTACGGCGGCCGCGATAAGGAGAATCCATACAAG−3’(配列番号19)およびRB86 5’−AAAAAACGTACGTTTATGGACCCTGAAACCAC−3’(配列番号20)(部位BsiWIに下線を引く)、ならびにマトリックスとしてS.セレビジエの株FL100のゲノムDNAを使用することにより、PCRによって作製する。このPCR産物を酵素BsiWIによって消化し、pRB12のユニーク部位BsiWIのレベルでクローニングする。フラグメントを両方向に挿入することができた。所望の配向の挿入物を有するプラスミド(この場合、2つのプロモーターPgal1は反対方向で配向している)を制限プロフィール分析により選択する。
【0200】
この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0201】
ベクターpRB2は、2つの相同フラグメントを、S.セレビジエの遺伝子URA3のオープンリーディングフレームの上流および下流領域にそれぞれ含有する。これら2つのフラグメントの間に挿入された配列は、遺伝子座URA3のレベルでの組み込みをターゲットにし、このゲノム組み込みは、1104bpの欠失が生じさせ、これによりURA3のオープンリーディングフレームが除去される(図3参照)。URA3のこの欠失は、モデルura3D0(3)に関して発表された欠失に近く、ura3D0との違いは、URA3の下流の22bp少ない領域が、pRB2の組み込み中に除去されることである。
【0202】
遺伝子GEA2は、URA3の上流に位置する。遺伝子GEA2の転写レベルおよび転写サイズが、ura3D0の欠失による影響を受けないことは、以前に示されている(Brachmann,C.B.ら、1998)。遺伝子TIM9は、URA3の下流に位置し、酵母S.セレビジエには必須の遺伝子である。ura3D0株の生存率減少は、報告されておらず、TIM9がura3D0株において完全に機能性のままであることが証明されている。この結果、ura3D0の欠失が隣接する遺伝子の転写に影響を及ぼすことが証明されるわけではない。
【0203】
従って、pRB2と一体化した干渉系は、GEA2およびTIM9の転写におそらく影響せず、これらの影響も受けないであろう。ベクターpRB2の利点は、ura3−52およびura3D0のようなURA3の変異株とともに使用することもできることである。
【実施例4】
【0204】
pRB2酵母の組み込みおよび複製ベクター中への種々の干渉ベクター挿入物のサブクローニング:
pBluescriptベクター上の実施例2において説明した種々の干渉系および対照系(DI、nDI、UI、nUIおよびUDI)(図2Aから2E参照)を、組み込みベクターpRB2中にSalI−SacIフラグメントの形でサブクローニングする。これを行うために、種々のプラスミドpRB16、pRB17、pRB18、pRB19およびpRB27を酵素SalI−SacIによって消化し、この挿入物を、事前に酵素SalI−SacIによって消化した組み込みベクターpRB2中にサブクローニングする。得られた種々の構築物を、それぞれ、pRB31、pRB23、pRB24、pRB25およびpRB29と呼んだ(表2参照)。
【0205】
これらの干渉系をゲノムに組み込んだ後、レポーター遺伝子HIS3は、遺伝子GEA2およびTIM9に対して対状である。
【0206】
【表2】

略語:nDI:ナンセンス下流干渉;DI:下流干渉;UI:上流干渉;nUI:ナンセンス上流干渉;UDI:上流−下流干渉。
【実施例5】
【0207】
干渉ベクターのゲノム組み込みでの転写干渉株の構築:
5.1 干渉ベクターのゲノム組み込み:
使用した培地は、Gutherie,C.およびG.R.Fink、2002よって説明されたものなどである。すべての実験について、細胞は、合成最小培地YNB(米国、デトロイトのDifco Laboratories)+2%グルコース(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)において30℃で成長させる。栄養要求性マーカーを作製するために、必要なアミノ酸(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)を添加する。
【0208】
株yCM15(MAT a Δgal4 Δgal80 ura3−52 lys2−801 his3Δ200 trp1−Δ63 leu2 ade2−101)を、ゲノム組み込みでの株の構築に使用する。株yCM15は、レポーターカセットを欠失させた、株PCY2(Chevray RMおよびNathans D.、1992によって説明されたもの)から出発して構築した。
【0209】
株PCY2(MAT α Δgal4 Δgal80 URA3::GAL1−lacZ Lys2−801 ade2−101 trp1−Δ63 his3−Δ200 leu2)は、株YPH499(MAT a ura3−52 lys2−801 ade2−101 trp1−Δ63 his3−Δ200 leu2−Δ1;ATCC 76625、204679;(SikorskiおよびHieter、1989))(特に、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)から番号204679で入手できる。)と株GGY1::171(MAT α Δgal4 Δgal80 leu2 his3 URA3::GAL1−lacZ)(GillおよびPtashne、1987)の間の交雑の結果である。
【0210】
株GGY1:171は、UASにより活性化された遺伝子GAL1のプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子lacZを有するカセットURA3::GAL1−lacZ(Yocumら、1984)を株GGY1(MAT α Δgal4 Δgal80 leu2 his3(GillおよびPtashne、1987))に組み込むことによって構築した。株GGY1それ自体は、株DBY745(MAT α Δgal4 Δgal80 leu2−3、112 ade1−100 ura3−52;(GrahamおよびChambers、1996;Ferreiroら、2004;NagarajanおよびStorm、1997;Dormerら、2000)と株YM709(Pearlberg,J.、1995)の間の交雑の結果である。
【0211】
株PCY2の代わりに、遺伝子型(gal4−gal80−trp1−his3−leu2−ura3−)を有する任意の酵母S.セレビジエ株を使用することができる。例えば、株PCY2の代わりに、株Y187(Harper,J.W.ら、1993によって説明されたものであり、特に、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)から番号96399で入手できる。)を使用することができる。
【0212】
表3は、株PCY2の代わりに使用することができる株の他の例を示すものである。これらの呼称、これらの株の簡単な説明およびこれらの株を入手することができる団体、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)でのこれらの参照番号を示す。
【0213】
株yCM15を構築するために、株PCY2のクローンの10から10個の細胞を滅菌水に懸濁させ、アミノ酸lys+ade+his+ura+trp+leuを補充した、YNB培地+2%グルコースの寒天プレートで画線培養する。この寒天プレートは、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)も1mg/mlの濃度で含有する。5−FOAは、遺伝子URA3を発現する細胞に対して毒性である。このため、5−FOAを含有するこれらのプレートを用いて、レポーターカセットURA3::GAL1−lacZを欠失した株PCY2の変異体を選択する(Boekeら、1987)。得られた変異体におけるレポーターカセットの不在は、レポーターlacZの活性を検査することにより検証する。この後、プロモーターGAL1の非常に強いアクチベーターである転写因子GAL4pをコードするプラスミドpCL1(Fields,S.およびO.Song、1989)でこれらの変異体を形質転換し、lacZ活性を測定する(Breeden,L.およびK.Nasmyth、1985)。5−FOAに対して耐性であり、lacZ活性を有さない変異体を選択し、これをyCM15と呼ぶ。
【0214】
【表3】

【0215】
組み込みベクターpRB31、pRB23、pRB24、pRB25およびpRB29を、酵素DrdIでの消化により線形化する。株yCM15を、酢酸リチウム形質転換法(例えば、Gietz,R.D.およびA.Sugino、1988によって説明されたもの)を用いることにより、各組み込みベクターの線形化DNA(1μg)によって独立して形質転換し、これらの細胞を、アミノ酸lys+ade+trp+leuおよびウラシル(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)により完全にした、ヒスチジン枯渇培地(YNB(米国、デトロイトのDifco Laboratories)+ 2%グルコース(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)を用いて、成長させる。ヒスチジンについて栄養要求性のクローンを単離し、遺伝子座URA3のレベルでのレポーターカセットの組み込みを、各接合部に特異的な内部および外部プライマーを使用することによるコロニーPCR(Gutherie,C.ら、2002によって説明されたもの)によって検証する(表4参照)。
【0216】
【表4】

【0217】
使用したプライマーの配列は、以下のものである:
【0218】
【化1】

【0219】
組み込みベクターpRB31、pRB23、pRB24、pRB25、pRB29の各々による株yCM15の独立した形質転換によって得られた株であって、遺伝子座URA3のレベルでの各レポーターカセットの組み込みが実証されている株を、それぞれ、yRB82、yRB48、yRB49、yRB50、yRB83と呼んだ(表2参照)。
【0220】
5.2 被組み込み干渉構築物の活性化:
干渉系の活性を評価するために、実施例5.1で得たレポーター株を2つのプラスミド対で形質転換する。第一の対は、完全長のGAL4p転写因子(Fields,S.およびO.Song、1989)の発現に起因するPgal1の強力な活性化に対する干渉系の応答を試験するために使用する。第二のプラスミド対は、GLA4pの活性化ドメイン(AD)およびDNA結合ドメイン(DBD)を別々に発現させることができ、この個々の異なるドメインがPgal1を活性化できないため、負の対照として役立つ。
【0221】
従って、実施例5.1において得た株(株yRB82、yRB48、yRB49、yRB50、yRB83)を、GAL4p転写因子をコードする動原体プラスミドpCL1(Fields,S.およびO.Song、1989によって説明されたもの)および動原体挿入物を有さないプラスミドpFL39(Bonneaud N.ら、1991によって説明されたもの)によって共形質転換する。酵母において複製されるこれらのプラスミドは、選択マーカーとして遺伝子LEU2またはTRP1を有する。
【0222】
これらの形質転換体を、アミノ酸lys+ade+hisおよびウラシル(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)により完全にした、YNB培地(米国、デトロイトのDifco Laboratories)+ 2%グルコース(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)を用いて選択する。
【0223】
得られた形質転換体を、それぞれ、nDI+、DI+、UI+、nUI+およびUDI+と呼ぶ。
【0224】
負の対照は、ベクターpTAL20およびpDBTによる実施例5.1に記載した株(株yRB82、yRB48、yRB49、yRB50、yRB83)の共形質転換によって得る。ベクターpTAL20およびpDBTは、GLA4pの活性化ドメイン(AD)およびGAL4pのDNA結合ドメイン(DBD)を発現させることができる(これらのベクターは、Navarro,P.ら、1997によって説明される)。
【0225】
このようにして得た形質転換体を、それぞれ、nDI−、DI−、UI−、nUI−およびUDI−と呼ぶ。
【実施例6】
【0226】
転写干渉系がゲノムに組み込まれている酵母の成長試験
形質転換体の細胞成長を滴下評価法により試験する。これを行うために、ヒスチジンを含有する寒天プレート上に細胞を堆積させ、30℃で一晩保温する。この後、これらの細胞を細胞数約10/mlで水に懸濁させ、10倍稀釈系列を調製する。各稀釈溶液の5μLの液滴をピペットによって取り出し、所望の培地を含む予乾燥寒天プレート上に堆積させる。これらのプレートを30℃で保温する。
【0227】
干渉形質転換体の細胞成長は、ヒスチジン枯渇培地で評価する。場合によっては、タンパク質HIS3pの競合阻害剤(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3−AT))を漸増濃度で培地に添加して、種々の干渉株間のレポーター遺伝子HIS3の活性レベルのレベルでの違いを観察する(図4)。阻害剤を含有する培地は、Millipore品質の水中、競合阻害剤3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3−AT;Sigma)の1Mの濃度の原液から出発して調製する。寒天を60℃に冷却した後、3−ATを所望の濃度で添加する。試験した種々の培地は、アミノ酸lys+adeおよびウラシル(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)により完全にした、3−ATを含有しないまたは3−ATを8、16、22、32mMの濃度で含有する、最少培地(YNBG(米国、デトロイトのDifco Laboratories)+2%グルコース(フランス、リヨンのSigma−Aldrich)である。正の対照も行う(ヒスチジンを含有し、3−ATを含有しない培地)。これらのプレートを30℃で48から72時間保温する。結果の一部を図4Aから4Eに提示する。
【0228】
GAL4p(+株)の存在下で、UI+形質転換体について細胞成長の最大減少が観察される。GAL4pを発現するUI細胞は、ヒスチジン不在の状態では成長できず、これに対して、対照AD/DBDを有する細胞(UI−形質転換体)は、32mMより高い3−ATの濃度で正常に成長する。GAL4pも、対照AD/DBDも、対照形質転換体nUI+およびnUI−の細胞成長を阻害せず、これは、GAL4pを発現する細胞UI+の成長の阻害が、Padh1に向けられたPgal1の転写の活性化に起因することを示す。
【0229】
DI+細胞において、3−AT阻害剤が不在のとき、GAL4pの発現は、細胞成長に影響を及ぼさない(図4B参照)が、3−ATが8mMまたはそれ以上の濃度で存在するとき、この成長は完全に阻害される(図4Cから4E参照)。これに反して、対照形質転換体DBD/AD(DI−形質転換体)の細胞成長は、32mMの3−AT濃度でさえ影響を受けない(図4E参照)。従って、遺伝子HIS3のアンチセンス鎖のPgal1によって命じられる転写は、DI+細胞のヒスチジンについての栄養要求性のレベルを有意に上昇させる。
【0230】
驚くべきことに、GAL4pもnDI+形質転換体において細胞成長を阻害する(8mMまたはそれ以上の濃度で3−ATが存在するとき、成長が阻害される(図4Cから4E参照)。これらの細胞において、Pgal1により命じられる転写は、Tadh1に向けられ(図2D参照)、これはHIS3の発現に干渉しないと思われる。この成長の阻害は、Pgal1の特異的活性化に起因する。対照AD/DBDがnDI−細胞中に存在するときには成長の阻害が観察されないからである(図4Bから4E参照)。
【0231】
GAL4pの存在下で、UDI+形質転換体は、DI+細胞のものに類似した成長阻害レベルを示す。対照DBD/ADは、UDI−細胞の成長には影響を及ぼさない(図4Bから4E参照)。
【0232】
本発明者らは、株UI+、DI+およびUDI+において、プロモーターPgal1のGAL4pに起因する活性化は、細胞成長の有意な阻害を導き、この阻害は、レポーターHIS3の活性減少に起因すると結論付けた。この成長の阻害は、UI細胞におけるほうがDIおよびUDI細胞におけるより僅かに大きい。
【0233】
従って、GAL4pにより誘導される、HIS3の活性の減少は、細胞成長を有意に遅速するが、これを完全には阻害しない。干渉条件下では、保温の最初の6〜7日間はプレート上にコロニーは検出されないが、より長く保温すると、極めて小さいコロニーが見えてくる。
【0234】
干渉は、DI、UDIまたはnDI系でよりUI系でのほうが強力であることが観察された。これは、転写干渉を生じさせる分子メカニズムから起こり得る。上流干渉の詳細な研究により、上流プロモーター活性化は、下流プロモーターのレベルでこれらの連結部位から活性化因子を除去することにより、下流プロモーターの活性を減少させることが、明らかになった(Greger,I.H.ら、2000、Greger,I.H.ら、1998、Valerius,O.C.ら、2002、Callen BPら、2004)。干渉を生じさせるプロモーターが、UI構築物においてレポーター遺伝子のプロモーターに近いほど、DI構築物におけるよりUIにおける干渉の効果のほうが大きくなり得る。
【0235】
上流干渉が異なる分子メカニズムから起こることもある。系DIでは、集中的に転写するRNAポリメラーゼが衝突することがあり、これは、転写の停止および遺伝子HIS3の休止化を導くことがある。RNAポリメラーゼの正面衝突は、Padh1の転写活性化因子の除去より効果が低いHIS3休止化手段であろう。加えて、DI系では、Padh1の活性化が転写干渉によりPgal1を不活性化することがあり、これは、UDI系がUI系またはDI系より優れていない理由の説明にもなり得る。
【0236】
驚くべきことに、本出願人は、Pgal1を、レポーターカセットHIS3に対して対状で下流に挿入したとき(nDI構築物)にも下流転写干渉が存在することを確認した。遺伝子の転写レベルは、プロモーターの力、ならびに転写停止シグナルの質に依存する(Wahle,E.およびU.Ruegsegger、1999)。Pgal1をHIS3のORFとこの転写ターミネーターTadh1の間に挿入した場合、Pgal1の活性は、構築物nDIではHIS3の転写産物の適切な停止に干渉することがあり、従って、これが、これらの細胞におけるHIS3pの活性を減少させる。
【実施例7】
【0237】
ベクターpLac33中への種々の干渉ベクター挿入物のサブクローニング:
転写干渉系が、プラスミド上に存在し、ゲノムレベルで組み込まれていないとき、機能性であるかどうかを試験するために、pBluescriptベクター上の実施例2で説明した種々の干渉系(DI、UIおよびUDI)(図2Aから2E参照)を、組み込みベクターpLac33中にSalI−SacIの形でサブクローニングする。このベクターは、選択マーカーとして酵母の遺伝子URA3を含有し、Gietz,R.D.およびA.Sugino、1988によって説明されている。これを行うために、種々のプラスミドpRB27、pRB17、pRB18を酵素SalI−SacIによって消化し、この挿入物を、事前に酵素SalI−SacIによって消化した複製ベクターpLac33中にサブクローニングする。得られた種々の構築物を、それぞれ、pRB28、pRB20、pRB21と呼んだ。
【実施例8】
【0238】
転写干渉系がゲノムに組み込まれていない酵母の成長試験:
干渉構築物UI、DIおよびUDIが、プラスミド上に存在し、ゲノムレベルで組み込まれていないとき、機能性であるかどうかも試験した。これを行うために、種々の転写干渉構築物を有する、実施例7で説明したプラスミドpLac33から誘導したベクターを使用して、株yCM15を独立して形質転換した。
【0239】
株yCM15は、ベクターpCL1およびpFL39を随伴するベクターpRB28、pRB20またはpRB21(実施例7参照)の各々のDNA(0.3μg)によって、個々に共形質転換される。従って、株yCM15は、3つのプラスミドの3つの群(pRB28+pCL1+pFL39、またはpRB20+pCL1+pFL39、またはpRB21+pCL1+pFL39)によって、個々形質転換される。原動体プラスミドpCL1は、GAL4p転写因子をコードし(Fields,S.およびO.Song、1989によって説明された。)、プラスミドpFL38は、原動体挿入物を有さないプラスミドである(Bonneaud Nら、1991によって説明された)。これらの酵母複製プラスミドは、遺伝子LEU2またはTRP1を選択マーカーとして有する。
【0240】
株yCM15はまた、ベクターpTAL20およびpDBT(GAL4pの活性化ドメイン(AD)およびGAL4pのDNA結合ドメイン(DBD)を発現することができる(これらのベクターは、Navarro,P.ら、1997によって説明されている。)。)を随伴するベクターpRB28、pRB20またはpRB21(実施例7参照)の各々のDNA(0.3μg)によって、個々に共形質転換さる。従って、株yCM15は、3つのプラスミドの3つの群(pRB28+pTAL20+pDBT、またはpRB20+pTAL20+pDBT、またはpRB21+pTAL20+pDBT)によって、個々形質転換される。
【0241】
これらの三重形質転換体の各々の細胞成長を、実施例6において説明したように、ヒスチジンを含有するおよび含有しない寒天プレート、ヒスチジンを含有しないプレートについては、漸増濃度の3−ATを含有しないまたは含有する寒天プレートで試験する。
【0242】
組み込まれていないプラスミドに基づく干渉構築物で得られた結果は、組み込まれている干渉構築物について得られたものに類似している(図5Aから5D参照)。例えば、培地が、ヒスチジンおよび3−ATが枯渇したものであるとき、GAL4pを発現するUI細胞(三重形質転換体pRB21+pCL1+pFL39)は、活性GAL4pを発現しないUI細胞(三重形質転換体pRB21+pTAL20+pDBT)と比較して、成長の非常に強い減少を示す。しかし、UIの成長の阻害レベルは、構築物UIの被組み込みバージョンで観察されたものと同様の大きさである(実施例6参照)。
【0243】
DI細胞(三重形質転換体pRB21+pCL1+pFL39(活性GAL4pを発現する。)またはpRB20+pTAL20+pDBT(活性GAL4pを発現しない。))およびUDI(三重形質転換体pRB28+pCL1+pFL39(活性GAL4pを発現する。)またはpRB28+pTAL20+pDBT(活性GAL4pを発現しない。))は、これらが活性GAL4pを発現しようと、しなかろうと、ある程度正常に成長する。
【0244】
培地が、3−ATを8mMまたはそれ以上の濃度で含有するとき、GAL4pを発現する、および構築物UI、DIまたはUDIによって形質転換された細胞は、もはや全く成長しない(図5Cおよび5D参照)。この結果は、負の対照細胞(活性GAL4pを発現しないもの(AD/DBD))について得られたもの、および細胞成長が影響を受けない干渉プラスミドによって形質転換されたものとは対照的である(図5Cおよび5D参照)。
【0245】
本出願人は、UI、DIおよびUDIのプラスミドに基づくバージョンは、機能性であるが、これらの干渉構築物の対応する被組み込みバージョンよりPgal1の活性化に対する感度が僅かに低いと結論付ける。
【実施例9】
【0246】
宿主株の遺伝的背景に関する転写干渉系の独立性:
転写干渉系の活性が、宿主株の遺伝的背景に依存するかどうかを試験するために、プラスミドに基づく構築物(例えば、実施例7で説明したもの)を別の酵母菌株:株yRB31においても評価した。株yRB31(MAT α ura3−52 his3−Δ200 ade2−101 trp1−901 leu2−3、112 met−Δgal4 Δgal80)を、株Y187(株Y187は、Harper,J.W.ら、1993によって説明されており、ならびに特に、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)から参照番号96399で入手できる。)のカセットURA3::GAL1(UAS)−GAL1(TATA)−lacZを削除することによって構築する。
【0247】
株yRB31を構築するために、株Y187のクローンの10から10個の細胞を滅菌水に懸濁させ、アミノ酸met+ade+his+ura+trp+leuにより完全にした、YNB培地+2%グルコースの寒天プレートで画線培養する。この寒天プレートは、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)も1mg/mlの濃度で含有する。5−FOAは、遺伝子URA3を発現する細胞に対して毒性である。このため、5−FOAを含有するこれらのプレートを用いて、レポーターカセットURA3::GAL1(UAS)−GAL1(TATA)−lacZを欠失した株Y187の変異体を選択する(Boekeら、1987)。得られた変異体におけるレポーターカセットの不在を、レポーターlacZの活性を検査することにより検証する。プロモーターGAL1の非常に強いアクチベーターであるGAL4p転写因子をコードするプラスミドpCL1(Fields S.およびO.Song、1989)でこれらの変異体を形質転換し、lacZ活性を測定する(Breeden L.およびK.Nasmyth、1985)。5−FOAに対して耐性であり、lacZ活性を有さない変異体を選択し、これをyRB31と呼ぶ。
【0248】
この株yRB31を、株yCM15について実施例8で説明したのと同じ様式で形質転換した。得られた形質転換体は、これらの細胞成長に関するかぎり、実施例8において説明したのと同じ仕方で試験した。干渉プラスミドの活性に関するかぎり、株yCM15とyRB31の間で違いは観察されなかった。
【実施例10】
【0249】
タンパク質間相互作用によるUIおよびDI干渉系の発現の誘導および細胞成長の阻害に対する効果:
10.1:タンパク質Fe65と以前に同定されたタンパク質APPとの相互作用による干渉系の発現の誘導:
タンパク質Fe65とAPPの間の以前に同定されたタンパク質間相互作用(McLoughlin DMおよびMiller CC、1996;Fiore Fら、1995;Zambrano Nら、1997)が、酵母の細胞成長を阻害するように十分に転写干渉体の構築を誘導できるかどうかを試験した。
【0250】
構築物UIおよびDIの被組み込みバージョンを使用する。融合タンパク質AD−Fe65およびDBD−AppCtを、強活性トランケート型ADH1プロモーター(Ruohonen Lら、1995によって説明されたプロモーター)の制御下で発現させる。
【0251】
プラスミドpRB34により、強活性トランケート型ADH1プロモーターの制御下で融合タンパク質AD−Fe65を発現させることができる。
【0252】
プラスミドpRB34の構築は、数段階で行った。第一段階において、遺伝子Fe65の一対のリーディングフレームを、ベクターpGAD424(BD Biosciences Clontech(米国、カリフォルニア州、パロアルト))中にクローニングする。遺伝子Fe65(Genebank受託番号:BC010854)のアミノ酸152から708に対応する1694bpのPCRフラグメントを、プライマーとして次のオリゴヌクレオチド:RB250 5’−AGATCGAATTCAAGGCGGCCGGGGAGGCCGAGG−3’(配列番号27)およびRB251 5’−GCAGGTCGACTCATGGGGTATGGGCCCCCAGC−3’(配列番号28)(部位EcoRIおよびSalIに下線を引く)、ならびにマトリックスとして市販の人間の脳(BD Biosciences Clontech(米国、カリフォルニア州、パロアルト))のcDNAのバンクプラスミドDNAを使用することにより、PCRによって作製する。このPCR産物を酵素EcoRIおよびSalIによって消化し、ベクターpGAD424の部位EcoRIおよびSalIのレベルでクローニングする。このようにして得たベクターをpRBSG11と呼ぶ。この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0253】
第二段階において、酵素SphIと弱活性トランケート型プロモーターADH1をコードするフラグメントとを用いてこのプラスミドpRBSG11の部分消化を行い、融合タンパク質AD−Fe65およびターミネーターADH1を原動体プラスミドpFL36(Bonneaud Nら、1991によって説明されたもの)の部位SphIに挿入する。これによってプラスミドpRBIM54を得ることができる。良好な構築物の獲得を制限分析により検証する。このフラグメントは、両方向に挿入することができる。ADH1プロモーターがプラスミドpFL36のユニーク部位SacIの近くにある、所望の配向を有するクローンを選択する。第三段階において、強活性トランケート型ADH1プロモーターをコードするフラグメントを、プライマーRB136(5’−TTGTAAAACGACGGCCAGTGAATTCCGTACGATATCCTTTTGTTGTTTCCGGGTG−3’)(配列番号29)およびRB137(5’−AGTTGATTGTATGCTTGGTATAGC−3’)(配列番号30)を用い、株FL100のゲノムDNAから出発するPCRによって増幅する。相同組換えによるクローニング法(GAP修復)(DeMariniら、2001;Orr−Weaverら、1983)を用いることにより、このPCRフラグメントを使用して、事前に酵素SacIにより消化したプラスミドpRBIM54における弱活性トランケート型ADH1プロモーターを、強活性トランケート型ADH1プロモーターで置換する。この相同組換えは、株yCM15において行う。構築された新規プラスミドを制限分析によって検証し、これをpRB34と呼ぶ。このプラスミドの配列を配列番号31に示す。
【0254】
プラスミドpRB35により、強活性トランケート型のADH1の制御下で融合タンパク質DBD−AppCtを発現させることができる。プラスミドpRB35の構築は、数段階で行った。
【0255】
第一段階において、遺伝子HSAFPA4(App、アクセッション番号EMBL Y00264)のリーディングフレームのカルボキシ末端部分を、ベクターpGBT9(BD Biosciences Clontech(米国、カリフォルニア州、パロアルト))中にクローニングする。遺伝子HSAFPA4のアミノ酸650から695をコードする143bpのフラグメントを、配列:RB252 5’−AATTCAAGAAACAGTACACATCCATTCATCATGGTGTGGTGGAGGTTGACGCCGCTGTCACCCCAGAGGAGCGCCACCTGTCCAAGATGCAGCAGAACGGCTACGAAAATCCAACCTACAAGTTCTTTGAGCAGATGCAGAACTAGG−3’(配列番号32)、および配列:5’−TCGACCTAGTTCTGCATCTGCTCAAAGAACTTGTAGGTTGGATTTTCGTAGCCGTTCTGCTGCATCTTGGACAGGTGGCGCTCCTCTGGGGTGACAGCGGCGTCAACCTCCACCACACCATGATGAATGGATGTGTACTGTTTCTTG−3’(配列番号33)のRB253の2つのリン酸化1本鎖オリゴヌクレオチドのハイブリド形成によって得る。これを行うために、この2つの1本鎖オリゴヌクレオチドを水中、等モル濃度で混合する。この混合物を加熱ブロック(ヒートブロック)において5分間、90℃で加熱し、この後、このブロックを(約2時間)放置して周囲温度に冷却する。このようにして得た2本鎖フラグメントは、この末端に、相和性付着末端EcoRIおよびSa1Iをそれぞれ有する。これにより、この2本鎖フラグメント(HSAFPA4のカルボキシ末端部分に対応する)をベクターpGBT9(BD Biosciences Clontech)に挿入することができる。このようにして得たベクターは、GAL4DBDとAppのアミノ酸650から695との間の融合タンパク質(DBD−AppCT)を発現させることができ、これをpSG14と呼ぶ。この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0256】
第二段階において、このプラスミドpSG14を酵素SphIで部分的に消化する。この後、弱活性トランケート型ADH1プロモーター、融合DBD−AppCtおよびADH1ターミネーターをコードするフラグメントを、事前に酵素SphIによって消化したベクターpFL39(Bonneaud Nら、1991によって説明されたもの)に挿入する。結果として生じたプラスミドをpIM55と呼ぶ。良好な構築物の獲得を制限分析により検証する。このフラグメントは、両方向に挿入することができる。ADH1プロモーターがプラスミドpFL36のユニーク部位SacIの近くにある、所望の配向を有するクローンを選択する。
【0257】
次に、pIM55の弱活性トランケート型ADH1プロモーターを、強活性トランケート型ADH1プロモーターにより強化することによって、プラスミドpRB35を得る。pRB34の構築に使用したものと同じPCRフラグメントを、事前に酵素SphIによって消化したpIM55に、同じGAP修復法を用いて導入する。構築したプラスミドを制限分析により検証し、これをpRB35と呼ぶ。このプラスミドの配列を配列番号34に示す。
【0258】
第一に、構築物の活性を検証する。これを行うために、レポーター株Y187(この株Y187は、プロモーターPgal1の制御下に置かれた遺伝子URA3を有するものであり、Harper,J.W.ら、1993によって説明された。特に、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)から参照番号96399で入手できる。)を、3つのプラスミド対によって形質転換する。これらの対は、次のものである:pRB34+pRB35、pRB34+pDBT、およびpTAL20+pRB35。これらのプラスミド対の各々によって共形質転換された2つのクローンを選択する。ウラシルを含有するおよび含有しない最小培地で成長するこれらの能力を試験する。6つの対応するクローンは、ウラシルが存在する状態での最小培地で成長することができることがわかる(図6A参照)。しかし、ウラシル不在の状態では、プラスミドpRB34+pRB35によって共形質転換された2つのクローンしか成長できない(図6A参照)。これは、遺伝子URA3が株Y187において活性化され、これにプロモーターPgal1を活性化することができる活性転写因子GAL4pを再構成するAD−Fe65とDBD−AppCtの間の相互作用が利用されることを示す。使用した構築物の活性が、このように実証される。
【0259】
次に、株yRB48(DI系)およびyRB49(UI系)を、各々、2つのハイブリッドタンパク質AD−Fe65およびDBD−AppCtを発現させることができるプラスミド対pRB34とpRB35よって共形質転換する。株yRB48(DI系)およびyRB49(UI系)は、対照として、各々、プラスミド対pRB34+pDBTおよびpTAL20+pRB35によっても共形質転換する。これらのプラスミド対の各々によって共形質転換された2つのクローンを選択する。これらの二重形質転換体の2つのクローンの各々の細胞成長を、実施例6において説明したように、ヒスチジンを含有するおよび含有しない寒天プレート、ならびにヒスチジンを含有せず、漸増濃度の3−ATを含有するまたは含有しない寒天プレートで試験する。
【0260】
図6Bから6Eに示すように、融合タンパク質AD−Fe65とDBD−AppCtの間の相互作用は、干渉構築物UIおよびDIを有する株の細胞成長を阻害するが、融合タンパク質AD−Fe65およびこのドメインDBD、または融合タンパク質DBD−AppCtおよびこのドメインADを発現する細胞は、正常に成長する。この実験では、3−ATを15mMより高い濃度まで添加したとき、細胞成長のレベルで差が検出される。
【0261】
ダブル・ハイブリッド相互作用により誘導された転写干渉は、rY2H UIおよびDI系で容易に検出することができると結論付けることができる。
【0262】
10.2:以前に同定されたタンパク質mdm2とタンパク質p53の相互作用による干渉系の発現の誘導:
タンパク質p53とmdm2の間の以前に同定された別のタンパク質間相互作用(Oliner JDら、1993;Chen Jら、1993;Momand Jら、1992)が、酵母の細胞成長を阻害するように十分に転写干渉構築物を誘導することができるかどうかも試験した。これを行うために、構築物UIの組み込みバージョンを使用する。融合タンパク質DBD−mdm2およびVP16−p53(1−55)を、2μプラスミドから出発して、遺伝子ADH1の完全プロモーターの制御下で発現させる。
【0263】
ベクターpVP16−p53Ntを構築するために、ヒトp53タンパク質(ゲンバンク参照番号:BC003596)のアミノ末端の55のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレームを、2つのリン酸化1本鎖オリゴヌクレオチド:RB200 5’−GGCCGCAGTGAACCATTGTTCAATATCGTCCGGGGACAGCATCAAATCATCCATTGCTTGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGTTGTTTTCAGGAAGTAGTTTCCATAGGTCTGAAAATGTTTCCTGACTCAGAGGGGGCTCGACGCTAGGATCTGACTGCGGCTCCTCCATCT−‘3(配列番号35)およびRB201 5’−GATCCAGATGGAGGAGCCGCAGTCAGATCCTAGCGTCGAGCCCCCTCTGAGTCAGGAAACATTTTCAGACCTATGGAAACTACTTCCTGAAAACAACGTTCTGTCCCCCTTGCCGTCCCAAGCAATGGATGATTTGATGCTGTCCCCGGACGATATTGAACAATGGTTCACTGC−3’(配列番号36) (部位NolIおよびBamHIに下線を引く)のハイブリダイゼーションによって作製する。これを行うために、これら2つの相補1本鎖オリゴヌクレオチドを水中、等モル濃度で混合する。この混合物を加熱ブロック(ヒートブロック)において5分間、90℃で加熱し、この後、このブロックを(約2時間)放置して周囲温度に冷却する。このようにして得た2本鎖フラグメントは、この末端に、相和性付着末端NotIおよびBamH1をそれぞれ有する。
【0264】
この後、事前に酵素NotI−BamHIによって消化したベクターpVP16(VojtekおよびHollenberg、1995;Vojtekら、1993)においてフラグメント連結を行う。この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0265】
ベクターpDTB−mdm2を構築するために、全Mdm2ヒトタンパク質(ゲンバンク参照番号:NM_002392)をコードする遺伝子を、マトリックスとしてベクターpCR3−mdm2fl(Sigalasら、1996)、ならびに次のオリゴヌクレオチド:RB202(5’−CCCGGGAATTCAGATCCATATGTGCAATACCAACATGTCTGTAC−3’)(配列番号37)およびRB203(5’−ACTTAGAGCTCTAGGGGAAATAAGTTAGCACAATC−3’)(配列番号38)(部位EcoRIおよびSacIに下線を引く)を使用することにより、PCRによって増幅する。このPCR産物を酵素EcoRIおよびSacIによって消化し、ベクターpDBT(Navarroら、1997)において部位EcoRIおよびSacIのレベルでクローニングする。この構築物の配列を、「Big Dye Terminator」キット(米国、マサチューセッツ州、ウェルズリーのPerkin−Elmer)を利用して塩基配列決定により検証する。
【0266】
得られた構築物の活性を検証した。これを行うために、レポーター株Y187(この株Y187は、プロモーターPgal1の制御下に置かれた遺伝子URA3を有するものであり、Harper,J.W.ら、1993によって説明された。特に、American Type Culture Collection(ATCC)(米国、バージニア州、マナッサス)から参照番号96399で入手できる。)を、3つのプラスミド対によって形質転換する。これらの対は、次のものである:pDBT−mdm2+pVP16−p53Nt、pVP16−p53Nt+pDBT、およびpTAL20+pDBT−mdm2。2つのプラスミドにより共形質転換された2つのクローンを、これらのプラスミド対の各々について選択する。ウラシルを含有するおよび含有しない最小培地で成長するこれらの能力を試験する。6つの対応するクローンは、ウラシルが存在する状態での最小培地で成長することができることがわかる(図6F参照)。しかし、ウラシル不在の状態では、プラスミドpDBT−mdm2+pVP16−p53Ntにより共形質転換された2つのクローンしか成長できない。これは、遺伝子URA3が株Y187において活性化され、これにプロモーターPgal1を活性化することができる活性転写因子を再構成するDBD−mdm2とVP16−p53(1−55)の間の相互作用が利用されることを示す。従って、使用した構築物の活性が示される。
【0267】
次に、株yRB49(UI系)を、2つのハイブリッドタンパク質DBD−mdm2およびVP16−p53(1−55)を発現させることができるプラスミド対pDBT−mdm2+pVP16−p53Ntによって共形質転換する。株yRB49(UI系)は、対照としてプラスミド対pDBT−mdm2+pTAL20によっても共形質転換する。2つのプラスミドによって共形質転換された2つのクローンを、これら2つのプラスミド対の各々について選択する。これらの二重形質転換体の2つのクローンの各々の細胞成長を、実施例6において説明したように、ヒスチジンを含有するおよび含有しない寒天プレート、ならびにヒスチジンを含有せず、漸増濃度の3−ATを含有するまたは含有しない寒天プレートで試験する。図6Gに示すように、融合タンパク質DBD−mdm2とVP16−p53(1−55)の間の相互作用は、干渉構築物UIを有する株の細胞成長を阻害するが、融合タンパク質DBD−mdm2およびこのドメインADを発現する細胞は、正常に成長する。
【0268】
この実験では、5mMまたはそれ以上の濃度の3−ATの存在下では、細胞成長のレベルで差が検出される。
【0269】
ダブル・ハイブリッド相互作用により誘導された転写干渉は、rY2H UI系で容易に検出することができると結論付けることができる。
【実施例11】
【0270】
タンパク質間相互作用阻害剤のスクリーニングへのrY2H UI転写干渉系の適用:
11.1 固体培地での酵母成長の回復についての試験の補正
ゲノムに組み込まれたrY2H UI転写干渉系を含有する酵母菌株(yRB49)を使用して、成長の回復についての試験によりタンパク質間相互作用阻害剤を単離した。
【0271】
この試験を行うために、特異的タンパク質間相互作用に連結した、rY2H UI転写干渉系を含有する酵母菌株を、3−ATを含有する固体培地に平板接種する。化合物の溶液の液滴を接種用皿に堆積させる。寒天への化合物の拡散により、この堆積ゾーンの周りに濃度勾配が作られる。タンパク質間相互作用を阻害することができる生成物は、細胞成長を可能にし、これは、この堆積ゾーンを取り囲む成長回復輪により反映される。
【0272】
このような試験の開発のための条件を決定するために、一連の予備実験を行った。この第一段階は、例えば、ペトリ皿に堆積させる細胞の量を評価するためのものであり、第二段階は、細胞成長を阻害する培地中の3−ATの最小濃度を評価するためのものであった。
【0273】
先ず最初に、UI系の被組み込みバージョンを含有する酵母(yRB49)をプラスミドpRB34およびpRB35で共形質転換して、この転写干渉系をタンパク質間相互作用カップル、Fe65/Appの制御下に置いた。次に、ヒスチジンを含有する液体培地でこれらの酵母を培養した。培養物の光学濃度(OD)が、3の値(1mL当たり、細胞数3×10)に達し次第、細胞を10分間、3000rpmで遠心分離し、滅菌水で2回洗浄し、OD=0.1または0.01で再び懸濁させた。事前に120mm四方のペトリ皿に注入しておいた固体培地の全表面にわたって均一にこの懸濁液の10mLを平板接種した。1分後、液体を吸引により除去した。これらの皿を層流フードのもとで15分間乾燥させ、この後、30℃で48時間保温した。
【0274】
図8Aは、これらの皿の最適な接種が、最低稀釈、すなわちDO=0.01(右側の皿)で達成されたことを示すものである。
【0275】
酵母の成長を阻害することができる3−ATの最小濃度を決定するために、yRB49株を、上のようにプラスミドpRB34およびpRB35(Fe65/App)で、または対照プラスミドpTAL20/pDBT(タンパク質間相互作用を発現しない。)で形質転換した。これら2つの形質転換株を、ヒスチジンを含有するまたはヒスチジンを含有しない、0、0.5または1mMの3−ATを補足した培地に平板接種した。図8Bに示されているように、Fe65/App相互作用を有する株は、1mMの3−ATを含有する培地では、同じ条件下でこの成長に影響を受けない対照プラスミドを含有するものと比較して、非常に遅延した成長を示す。
【0276】
同実験において、この成長回復試験における溶液中の分子の毒性を迅速に試験するために、化合物数10000のライブラリーから2つの分子をランダムに選択した。DMSOに10mMで溶解した後、各々の1μLを各皿に堆積させ、1μLのDMSOも同様にした。これら2つの分子は、いずれも、酵母の成長を回復することができなかった。しかし、高濃度ではこれらの分子の毒性作用に関連して、分子堆積ゾーンの周りに成長阻害ディスクを生じさせる(図8B)。
【0277】
培地へのヒスチジンの添加は、転写干渉系からこれを除去することによるこれらの株のヒスチジン合成欠如を補正する。上で説明した実験条件により、酵母成長の回復を検出できるようになることを確認するために、プラスミド対pRB34およびpRB35(Fe65/App相互作用)で共形質転換したyRB49株を、ヒスチジンがなく、1mMの3−Atを補足した上記培地に平板接種し、この後、漸増量のウラシル、アデニン、ロイシンまたはヒスチジンを各皿の中央に堆積させた。
【0278】
図8Cに示すように、ヒスチジンだけが、堆積物の周りの酵母の成長をこの濃度に依存する様式で回復させることができる。
【0279】
11.2:タンパク質間相互作用阻害剤により誘導される酵母成長回復の検出
上で報告した実験条件を大規模に用いて、分子数10000のコレクションをスクリーニングした。これらの条件下、このコレクションの各分子を、ヒスチジンがなく、1mMの3−ATを含有する固体培地に、96−ニードルレプリケーターによって、約0.2μLの10mM DMSO溶液の比率で堆積させた。このスクリーニングに使用したロボットプラットフォームは、以前にBeydonら(2000)によって以前に説明されたものである。酵母成長を回復させることができる2つの分子は、こうして単離した:これら2つの生成物の各々については、高濃度でのこれらの分子の毒性作用に関連して回復成長の強い白色の輪を成長阻害ゾーンの周りで容易に識別することができ、これに対して、対照生成物3については、予想通り、影響はまったく検出されない(図9)。
【0280】
この試験で単離した分子の作用の特異性を確認するために、Fe65/App相互作用を阻害する可能性を秘めた他の3つの分子(図11においてA、BおよびCと呼ばれているもの)の影響を、この干渉系を使用する別のタイプのタンパク質間相互作用、p53/mdm2相互作用(実施例10.2参照)を用いて試験した。
【0281】
先ず最初に、Fe65/Appおよびp53/mdm2の一機能としてUI干渉系の相対応答を、滴下試験により試験した。例えば、p53/mdm2複合体は、ヒスチジンを含有しないが、Fe65/App相互作用を有する株で使用したものより高い3−AT濃度の培地で、酵母成長を阻害することが観察された(図10)。これは、p53/mdm2相互作用が、Fe65/App相互作用より弱いか、そうでなければこの相互作用が、酵母ではあまりよく発現されないことを示唆している。
【0282】
次に、yRB49株をプラスミド対pRB34およびpRB35で形質転換してFe65/App相互作用を発現させるか、プラスミド対pDBT−mdm2およびpVP16−p53Ntで形質転換してp53/mdm2相互作用を発現させた。
【0283】
これら2つのFe65/Appおよびp53/mdm2株を、ヒスチジンがなく、1mMおよび20mMの3−ATをそれぞれ補足した培地の皿に平板接種した。3つの潜在的阻害分子の各々について、DMSO中0.1、1および10mMの1μLの溶液の3滴を皿ごとに堆積させた。加えて、1μLのヒスチジン(0.125% w/v)を、成長修復の正の対照として、別の皿の中央に堆積させた。前記コレクションから無作為に取り、試験する3つの分子と同じ濃度で使用する生成物を、負の対照として使用した。
【0284】
図11に提示した結果は、生成物AおよびBは、Fe65/App株の回復成長の輪を誘導するので、活性であり、この輪のサイズは、使用する濃度に依存することを示している。このような濃度依存性の輪は、p53/mdm2株については観察されず、これは、これら2つの分子の阻害効果の特異性を実証している。一方、生成物Cは、2つの株、Fe65/Appおよびp53/mdm2の成長を誘導し、従って、活性と分類することはできるが、非特異的である。予想どおり、生成物Dは、試験した2つの株に対して効果がなく、これは、不活性と考えられる。
【0285】
従って、成長回復試験により、分子数が数千のライブラリーから、タンパク質/タンパク質相互作用の特異的阻害剤である分子を単離することができるようになる。
【0286】
言及したすべての出版物および特許は、本出願に参照により組み込まれる。
【0287】
【表5】





【図面の簡単な説明】
【0288】
【図1A】転写干渉に基づくrY2H系を示し、逆Y2H相互作用の検出のための転写干渉の適用を図解する。Y2H相互作用が不在の状態では、レポーター遺伝子HIS3は、正常に発現され、細胞は、ヒスチジンを含有しない培地で成長することができる(図1A)。
【図1B】転写干渉に基づくrY2H系を示し、逆Y2H相互作用の検出のための転写干渉の適用を図解する。Y2H相互作用の存在は、HIS3の転写レベルを低下させ、これに起因して、ヒスチジンについて栄養要求のレポーター株の細胞成長が減少する(図1B)。
【図2A】転写干渉構築物を示し、転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。
【図2B】転写干渉構築物を示し、転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。
【図2C】転写干渉構築物を示し、転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。
【図2D】転写干渉構築物を示し、転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。
【図2E】転写干渉構築物を示し、転写干渉に基づきrY2H系を作るために5つの異なる構築物を利用した。この5つの構築物を縮尺に従って示す(図2Aから2E)。
【図3】干渉構築物のゲノム組み込みを示し、転写干渉構築物のゲノム組み込みを図解する。
【図4A】被組み込み干渉系の機能評価の結果を示す。
【図4B】被組み込み干渉系の機能評価の結果を示す。
【図4C】被組み込み干渉系の機能評価の結果を示す。
【図4D】被組み込み干渉系の機能評価の結果を示す。
【図4E】被組み込み干渉系の機能評価の結果を示す。
【図5A】プラスミドに基づく干渉系の機能評価(ゲノムレベルで組み込まれていないもの)の結果を示す。
【図5B】プラスミドに基づく干渉系の機能評価(ゲノムレベルで組み込まれていないもの)の結果を示す。
【図5C】プラスミドに基づく干渉系の機能評価(ゲノムレベルで組み込まれていないもの)の結果を示す。
【図5D】プラスミドに基づく干渉系の機能評価(ゲノムレベルで組み込まれていないもの)の結果を示す。
【図6A】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6B】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6C】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6D】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6E】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6F】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図6G】Y2H相互作用により誘導された転写干渉を示す。
【図7A】2つのタンパク質YとXの間の相互作用を阻害するがこのタンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用は阻害しない分子を同定することができる、本発明の転写干渉に基づくrY2H系を示す。
【図7B】2つのタンパク質YとXの間の相互作用を阻害するがこのタンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用は阻害しない分子を同定することができる、本発明の転写干渉に基づくrY2H系を示す。
【図8A】Fe65/App相互作用の阻害剤をスクリーニングするための実験条件の決定を示し、細胞量の決定を示す。
【図8B】Fe65/App相互作用の阻害剤をスクリーニングするための実験条件の決定を示し、3−ATの濃度の決定を示す。
【図8C】Fe65/App相互作用の阻害剤をスクリーニングするための実験条件の決定を示し、ヒスチジンによる成長の回復を示す。
【図9】成長の修復によるFe65/App相互作用の阻害剤の検出について示す。
【図10】干渉系の活性化についてのFe65/Appとp53/MDM2相互作用の比較について示す。
【図11】Fe65/App相互作用の阻害剤の特異性の確認について示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉DNA構築物を含有する細胞であり、
前記構築物は、
第一プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、いわゆる干渉プロモーター[前記干渉プロモーターの活性化が、前記第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択されおよび配置され、その結果前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。]、
を含み、
前記細胞は、
第一キメラタンパク質(Y−AD)[前記第一キメラタンパク質は、パートナータンパク質Xと相互作用することができるタンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る。]、
第二キメラタンパク質(X−DBD)[前記第二キメラタンパク質は、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る。]
をさらに発現し、
前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす
前記細胞。
【請求項2】
前記レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターが誘導性プロモーターであること、前記タンパク質Yが2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができること、および前記細胞が第三キメラタンパク質(Z−DBD)を発現すること[前記第三キメラタンパク質(Z−DBD)はタンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合したDNA結合ドメイン(DBD)から成り、前記2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用は前記レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子の形成をもたらす。]を特徴とする、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記レポーター遺伝子の発現を調節する前記誘導性プロモーターが、前期キメラタンパク質(Z−DBD)のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列を含むことを特徴とする、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記レポーター遺伝子の発現を調節する前記プロモーターが、構成的プロモーターであることを特徴とする、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
前記干渉DNA構築物によりおよび前記キメラタンパク質をコードするDNA構築物により形質転換または形質移入された宿主細胞であること、これらの構築物のすべてが1つまたはそれ以上の非組み込みベクターに担持されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記キメラタンパク質をコードするDNA構築物により形質転換または形質移入された宿主細胞であること、これらの構築物が、1つまたはそれ以上の非組み込みベクターに担持されていること、および前記干渉DNA構築物が細胞のゲノムに組み込まれていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項7】
前記干渉DNA構築物および前記キメラタンパク質をコードするDNA構築物が、細胞のゲノムに組み込まれていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
前記干渉DNA構築物が、摂動性ゲノムの転写活性のない遺伝子座に組み込まれていることを特徴とする、請求項6または7に記載の細胞。
【請求項9】
哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および酵母細胞により形成された群から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
酵母細胞に関することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)種の酵母に関することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
少なくとも1つの干渉プロモーターが、前記レポーター遺伝子および前記第一プロモーターの下流に、後者とは反対の配向で配置されること(DI)を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
少なくとも1つの干渉プロモーターが、前記レポーター遺伝子および前記第一プロモーターの下流に、後者と同じ配向で配置されること(nDI)を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
少なくとも1つの干渉プロモーターが、前記レポーター遺伝子および前記第一プロモーターの上流に、後者と同じ配向で配置されること(UI)を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項15】
少なくとも1つの干渉プロモーターが、前記第一プロモーターおよび前記レポーター遺伝子の両側に配置され、前記第一プロモーターおよび前記レポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターが、第一プロモーターに対して集中的な配向を有し、ならびに前記第一プロモーターおよび前記レポーター遺伝子の上流に配置された干渉プロモーターが、前記第一プロモーターのものと同一の配向を有すること(UDI)を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項16】
少なくとも1つの干渉プロモーターが、前記第一プロモーターおよび前記レポーター遺伝子の両側に配置され、前記第一プロモーターおよび前記レポーター遺伝子の下流に位置する干渉プロモーターが、第一プロモーターに対して対状の配向を有し、ならびに前期第一プロモーターおよび前期レポーター遺伝子の上流に配置された干渉プロモーターが、第一プロモーターのものと同一の配向を有すること(nUDI)を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項17】
前記レポーター遺伝子が、細胞の生存に必須の遺伝子であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
前記レポーター遺伝子が、一次代謝、細胞分裂、タンパク質合成、DNA合成またはRNA合成に不可欠な遺伝子であることを特徴とする、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
前記レポーター遺伝子が、それ自体は単独では細胞の生存に必須ではないが、発現が前記転写干渉系により制御されるまたはされない同じタイプの1つまたはそれ以上のレポーター遺伝子と共同で前期レポーター遺伝子の転写が阻害されるときには細胞の生存に必須であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項20】
前記誘導性干渉プロモーターが、前期キメラタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と相互作用することができる配列(X−DBD)を含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項21】
前記誘導性干渉プロモーターが、GAL4 UAS、LexAop、cIopおよびTetRopにより形成された群から選択されるDNA結合ドメイン(DBD)を有するタンパク質と相互作用することができる配列を含み、ならびに前期キメラタンパク質X−DBDのDNA結合ドメインが、対応するDBD(それぞれ、GAL4、LexA、cIまたはTetR)であることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
前記キメラタンパク質Y−ADの転写活性化ドメイン(AD)が、次のタンパク質:B42、VP16およびGAL4pの転写活性化ドメインにより形成された群から選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項23】
前記干渉DNA構築物が、この末端で、1つまたはそれ以上の一方向性または二方向性転写ターミネーターに隣接していることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
a)請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞を培養する段階、
b)被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
c)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下と不在下で比較する段階
を含み、
前記レポーター遺伝子の発現の増加は、前期被検化合物が培養細胞により発現されたタンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であることの指標となる、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害する化合物を同定するための方法。
【請求項25】
タンパク質間相互作用を阻害する化合物を同定するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項26】
タンパク質間相互作用を特異的に排除するペプチドまたはタンパク質因子を特定するためにcDNAバンクまたはペプチドバンクを検索するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項27】
第一DNA構築物[前期第一DNA構築物は、
第一プロモーターの制御下に置かれたレポーター遺伝子、
1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター(前記誘導性プロモーターの活性化が、前記第一プロモーターの転写干渉に影響するように選択および配置され、その結果、前記レポーター遺伝子の発現の検出可能な減少をもたらす。)
を含む。]、
第二DNA構築物[前記第二DNA構築物は、パートナータンパク質Xと相互作用することができるパートナータンパク質Yに融合した転写活性化ドメイン(AD)から成る第一キメラタンパク質(Y−AD)をコードする。]、
第三DNA構築物[前記第三DNA構築物は、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Xによって形成された第二ドメインに融合した第一DNA結合ドメイン(DBD)から成る第二キメラタンパク質(X−DBD)
をコードする。]
を含み、前記2つのキメラタンパク質X−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記2つのキメラタンパク質が宿主細胞において発現されたときに干渉プロモーターを活性化する機能性転写因子の形成をもたらす、ダブル・ハイブリッド系を作るためのキット。
【請求項28】
前記レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーターが、誘導性プロモーターであり、前記タンパク質Yが、2つのパートナータンパク質XおよびZと相互作用することができること、ならびに前記キットが、前記タンパク質Yと相互作用することができるタンパク質Zによって形成された第二ドメインに融合したDNA結合ドメイン(DBD)から成る第三キメラタンパク質(Z−DBD)をコードする第四DNA構築物を含むことを特徴とし、前記2つのキメラタンパク質Z−DBDおよびY−ADの相互作用は、前記レポーター遺伝子の発現を活性化する機能性転写因子の形成をもたらす、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
a)請求項2または3に記載の細胞を培養する段階、
被検化合物の存在下で前記細胞を保温する段階、
d)レポーター遺伝子の発現を前記化合物の存在下と不在下で比較する段階
(前期レポーター遺伝子の発現の増加は、前記被検化合物がタンパク質Xとこのパートナータンパク質Yの相互作用の阻害剤であること、しかし、この生成物は前記タンパク質Yと前記タンパク質Zの間の相互作用をまったく阻害しないかあまり阻害しないことの指標となる。)
を含む、第一タンパク質Xと第二タンパク質Yの相互作用を阻害するが、前期タンパク質Yと第三タンパク質Zの間の相互作用はまったく阻害しないかあまり阻害しない化合物を同定するための方法。
【請求項30】
S.セレビジエ(S.cerevisiae)の遺伝子URA3のオープンリーディングフレームの上流および下流領域に相同である2つのフラグメントを含有し、ならびにこれら2つのフラグメント間に挿入される配列の遺伝子座URA3のレベルでの相同組換えにより組み込むことができる、酵母組み込みベクター。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−517591(P2008−517591A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537343(P2007−537343)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002646
【国際公開番号】WO2006/045941
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】