説明

転写物、転写物の製造方法

【課題】如何なる被転写媒体に対しても光沢性の優れた画像を転写可能な転写物を提供する。
【解決手段】浸透層と、前記浸透層上に形成された光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層と、前記光輝性層上に形成された接着性を有する接着層と、を有し、前記浸透層には、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写物、転写物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デザイン性や美観を高める等の理由で、メタリック画像が記録された転写物の需要がある。メタリック印刷方法としては、インク受容層と熱接着層とを有する基材に向けて、金属微粒子を含むインクを液滴として吐出し、熱接着層を介してインク受容層に金属微粒子を付与する。そして、被印刷体と熱接着層とを接触させながら加熱することにより、被印刷物にメタリック画像を転写させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、インクを透過させることのできる熱接着層、透明なインク受容層、および熱接着層を透過できる金属顔料が必要であり、それらの材料の選択に制約がある。その上、得られる画像の光輝性はインク受容層を介したものとなり、光輝性面自体には平坦性を確保しにくく、インク本来の光輝性を引き出しにくい、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる転写物は、浸透層と、前記浸透層上に形成された光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層と、前記光輝性層上に形成された接着性を有する接着層と、を有し、前記浸透層には、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、浸透層上に光輝性顔料インクが塗布されると、浸透層中に光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透され、浸透層上に光輝性顔料インクも含まれる顔料を主体とする光輝性層が形成される。そして、光輝性層では、顔料の粒子が密に配列される。そして、例えば、被転写媒体等を用いて、当該被転写媒体と接着層とを接着させ、光輝性層と浸透層との界面で剥離させることにより、光輝性層の表面部分が露出する。ここで、顔料は密に配列されているため、顔料が光の照射によって略均一に反射する。従って、材料に制約なく、如何なる被転写媒体に対しても光沢性の優れた画像を転写可能な転写物を形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる転写物は、前記光輝性層と前記接着層との間に、有彩色層を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、例えば、光輝性層側から目視した場合に、光沢性の優れた画像を表現でき、被転写媒体側から目視した場合に、カラーメタリックの画像を表現可能な転写物を形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる転写物では、前記接着層に接着された被転写媒体が配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、容易に、光輝性層と浸透層との界面で剥離することができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる転写物の製造方法は、浸透層上に光輝性顔料インクを塗布して、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒を前記浸透層に浸透させ、前記浸透層上に前記光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、前記光輝性層上に接着性を有する接着層を形成する接着層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、浸透層上に光輝性顔料インクが塗布されると、浸透層中に光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透され、浸透層上に光輝性顔料インクも含まれる顔料を主体とする光輝性層が形成される。そして、光輝性層では、顔料の粒子が密に配列される。そして、例えば、被転写媒体等を用いて、当該被転写媒体と接着層とを接着させ、光輝性層と浸透層との界面で剥離させることにより、光輝性層の表面部分が露出する。ここで、顔料は密に配列されているため、顔料が光の照射によって略均一に反射する。従って、材料に制約なく、如何なる被転写媒体に対しても光沢性の優れた画像を転写可能な転写物を形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる転写物の製造方法は、前記顔料形成工程の後に、前記光輝性層上に有彩色層を形成する有彩色層形成工程と、前記有彩色形成工程の後に、前記有彩色層上に前記接着層を形成することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、例えば、光輝性層側から目視した場合に、光沢性の優れた画像を表現でき、被転写媒体側から目視した場合に、カラーメタリックの画像を表現可能な転写物を形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる転写物の製造方法は、前記接着層形成工程の後に、前記接着層上に被転写媒体を配置して、前記被転写媒体と前記接着層とを接着する接着工程を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、被転写媒体が接着層と接着される。このため、被転写媒体の材質等が限定されず、如何なる被転写媒体であっても接着させることができる。これにより、如何なる被転写媒体に対しても品質の優れた画像を転写可能な転写物を製造することができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる転写物の製造方法は、浸透層に向けて光輝性顔料インクを液滴として吐出して、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒を前記浸透層に浸透させ、前記浸透層上に前記光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、前記光輝性層に対して、接着性を有する接着層が形成された被転写媒体を配置して、前記被転写媒体の前記接着層と前記光輝性層とを接着する接着工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、浸透層上に光輝性顔料インクが塗布されると、浸透層中に光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透され、浸透層上に光輝性顔料インクも含まれる顔料を主体とする光輝性層が形成される。そして、光輝性層では、顔料の粒子が密に配列される。そして、被転写媒体に形成された接着層と接着層とが接着される。そして、光輝性層と浸透層との界面で剥離させることにより、光輝性層の表面部分が露出する。ここで、顔料は密に配列されているため、顔料が光の照射によって略均一に反射する。従って、材料に制約なく、如何なる被転写媒体に対しても光沢性の優れた画像を転写可能な転写物を形成することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる転写物の製造方法は、前記接着工程の後に、前記浸透層と前記光輝性層とを剥離して、前記被転写媒体に前記光輝性層を転写する転写工程を含むことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、浸透層と光輝性層とが剥離され、容易に被転写媒体側に光輝性層を転写することができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例にかかる被転写物の製造方法では、前記被転写媒体は、算術平均粗さRaが20μm以上の粗面を有する被転写媒体、又は、インク非吸収性または低吸収性の被転写媒体であることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、従来、転写が困難であった被転写媒体であっても優れた画像を転写することができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例にかかる転写物の製造方法において、前記被転写媒体は、光透過性の被転写媒体であることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、転写物の両面から光輝性を目視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】転写物の構成の一例を示す断面図。
【図2】転写物の構成の他の例を示す断面図。
【図3】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図4】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図5】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図6】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図7】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図8】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図9】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図10】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図11】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図12】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図13】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図14】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図15】実施形態の転写物の一例の断面の模式図。
【図16】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図17】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図18】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の好適な第1及び第2実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
[第1実施形態]
1.転写物
まず、転写物について説明する。図1および図2は、転写物の構成を示す断面図である。図1および図2に示すように、転写物100は、浸透層10と、浸透層10上に形成された光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層30と、光輝性層30上に形成された接着性を有する接着層40と、を有する。そして、浸透層10には、光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透している。
【0029】
1.1.浸透層
浸透層10としては、例えば、シート状、フィルム状、および膜状の形状を有する膨潤層と、シリカ、アルミナ等の無機粒子を敷き詰めた空隙層が存在するが、本実施形態において浸透層10は、空隙層である。より具体的に空隙層とは、「水溶性または親水性ポリマーの割合が3割未満であり、無機粒子で主に構成され、無機粒子間または無機粒子に設けられた孔の空隙に液体が浸透するよう構成された層」のことを示す。浸透層10の表面の少なくとも一部は、後述する光輝性層30の表面を平坦とするために十分な平坦性を有する。
【0030】
浸透層10の厚みは、例えば、5μm以上50μm以下とすることができる。浸透層10の大きさ(面積)は、特に限定されない。浸透層10は、例えば、一般的な用紙サイズ(A4等)の大きさの単票であってもよいし、連続紙やロールのような長尺物であってもよい。浸透層10は、十分な機械的強度を有する場合には単独であってもよいが、必要に応じて適宜な基材12に対して形成されていてもよい。図1ないし図3、および図5、図7に示す例では、浸透層10は、基材12の表面に形成され、基材12によって支持されている。これにより、浸透層10の取り扱いを容易化されている。このような基材12の形状としては、例えばシート状、フィルム状などとすることができる。基材12としては、例えば、紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。基材12の厚みおよび大きさについては、特に限定されない。基材12を用いる場合には、浸透層10は、基材12の全面に形成されていてもよいし、基材12の一部に形成されていてもよい。
【0031】
浸透層10の空隙層を形成する無機粒子の体積基準の平均粒子径(以下、平均粒子径とする)は、3nm以上100nm以下であることが好ましい。このようにすれば、浸透層10の表面の平坦度が高いため、本実施形態の転写物を用いて転写先の媒体(例えば、被転写媒体200)上に形成される画像に、良好な光沢やつやを付与することができる。また、転写先の媒体上の画像に、マット調の良好な光沢を付与する場合には、浸透層10の無機粒子の平均粒径を大きくしてもよく、その場合には、例えば、浸透層10の無機粒子の平均粒径は、100nmを超え300nm以下とすることができる。
【0032】
浸透層10は、後述するインク20に含有される分散媒21の少なくとも一部が浸透している。本明細書の「2.転写物の製造方法」の項で述べるが、浸透層10は、インク20に含有される顔料22をほとんど受容しないか、わずかに受容する程度の平均開口径を有する空隙層を含んで形成されている。浸透層10は、このような性質を有するため、インク20が浸透層10に塗布されたときに、分散媒21が主に浸透層10に浸透し、浸透層10の表面にインク20に含有される顔料22が濃化された光輝性層30を形成するという機能を有している。
【0033】
また、浸透層10の機能の一つとしては、光輝性層30の浸透層10と接する面の平坦度を制御することが挙げられる。すなわち、浸透層10は、表面の平坦度が制御された濾紙に類似した機能を有する。これにより、光輝性層30の浸透層10と接する面の平坦度が、浸透層10の表面の平坦度に基づいて制御される。そして、光輝性層30と浸透層10とが剥離されて光輝性層30が転写先の媒体に転写されたときに、光輝性層30の表面に所望の光沢やつやを発現させることができる。
【0034】
例えば、インク20に含有される顔料22が、光輝性を呈するものである場合には、浸透層10の表面が平坦であるほど、得られる画像の鏡面光沢度(例えば、日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)が高まる。またこの場合、例えば、浸透層10の表面が粗くなるほど、得られる画像の鏡面光沢度が小さくなり、マット調の光輝性を得ることができる。例えば、インク20に含有される顔料22が光輝性を呈するものである場合に、光輝性層30によって転写先の媒体に形成される画像に良好な光輝性を付与することのできる浸透層10の無機粒子の平均粒子径は、3nm以上、300nm以下であることが好ましい。
【0035】
また、顔料の平均粒子径は特に限定されないが、吐出ヘッドで吐出する(インクジェット法により形成する)ことを考慮して3nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは3nm以上80nm以下が好ましい。本願発明においての浸透層10には、分散媒が浸透し、浸透層10上に濃化された光輝性層30が形成される。この際、光輝性層30では顔料が密に配列され、良好なツヤや光沢が表現可能になる。さらに、顔料が光輝性を呈するものである場合には、光輝性層30は高い光沢度を有するには非常に厳密な平滑性を要求されるので密に顔料を並べるためにも浸透層10は好ましい。顔料が光輝性を呈するものである場合には、平均粒子径が上述の範囲に入ることで、リーフ形状の光輝性の顔料とは異なり、一層厳密な配列が要求される顔料であるので、浸透層10は好ましく機能する。
【0036】
浸透層10の材質としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアおよび酸化亜鉛などの金属酸化物、珪酸アルミニウムなどの金属珪酸塩、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、タルクおよび各種クレーなどの粘土鉱物等が挙げられる。また、浸透層10の材質には必要に応じて、結着剤が含まれてもよい。結着剤としては、例えばポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等のビニルピロリドン系樹脂;ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の、ポリビニルアルコール系樹脂;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロール系樹脂;ポリビニルアセタール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリアクリルアミド、メラミン樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、あるいはこれらの変性物等の合成樹脂や、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、デンプン、カチオン化デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂またはその変性体から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0037】
また、基材12を用いる場合には、浸透層10は、基材12に塗工するなどして形成してもよい。その場合には、例えば、プレス加工等により、所望の表面形状を形成することができる。また、基材12に浸透層10が形成された市販品を入手して用いてもよい。
【0038】
基材12の材質としては、特に限定されないが、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。基材12に浸透層10が形成された市販品の例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなど表面に、インク受容層が形成されたものを挙げることができる。
【0039】
コート紙の例としては、例えば、上質紙または中質紙をベースに少なくとも片面に7g/m2ないし20g/m2の浸透層10を塗布したものを挙げることができる。これらは、上質コート紙または中質コート紙などと呼ばれることがある。また、コート紙の種類としては、浸透層10の塗工量の小さい(例えば、片面あたり7g/m2程度)軽量コート紙やマット調のマットコート紙、ミラーコート紙などを挙げることができる。
【0040】
アート紙の例としては、例えば、上質紙に浸透層10が片面あたり20g/m2程度塗工され、ロール等によって、圧力が加えられ表面が滑らかになっている紙を挙げることができる。アート紙には、つや消しアート紙、上質アート紙、並アート紙などが含まれる。キャストコート紙の例としては、例えば、上質紙に浸透層10が片面あたり少なくとも22g/m2塗工され、ロール等によって、加圧され表面が滑らかになっているものを挙げることができる。
【0041】
基材12に浸透層10が形成された具体的な市販品としては、パールコート紙(三菱製紙株式会社製)や、オーロラコート紙(日本製紙株式会社製)、写真用紙クリスピア(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙エントリー(セイコーエプソン株式会社製)、フォト光沢紙(セイコーエプソン株式会社製)、エプソンOHPシート(セイコーエプソン株式会社製)などがある。
【0042】
1.2.光輝性層
光輝性層30は、浸透層10に対して形成される。浸透層10上に光輝性顔料インク20を付着させ、光輝性顔料インク20に含まれる分散媒21の少なくとも一部を浸透層10に浸透させる。これにより、光輝性顔料インク20に含まれる顔料22成分が主体の光輝性層30が形成される。光輝性層30の平面的な形状および厚みは、特に限定されない。光輝性層30は、浸透層10の全面に形成されてもよいし、浸透層10の一部に形成されてもよい。光輝性層30は、転写物100から転写先の媒体(例えば、被転写媒体200)へ転写されたときに、転写先の媒体上における画像となる。
【0043】
光輝性顔料インク20の詳細は後述するが、光輝性顔料インク20には、少なくとも顔料22および顔料22の分散媒21(水、有機溶剤、添加剤等)が含有されている。したがって、光輝性顔料インク20が浸透層10に塗布されると、上述した浸透層10の機能により、分散媒21の少なくとも一部が浸透層10に浸透し、浸透層10の表面に、顔料22が濃化した領域が形成される。これにより、浸透層10の表面に、光輝性顔料インク20における顔料22の含有量よりも高い含有量となった光輝性層30が形成される。すなわち、光輝性層30は、浸透層10が光輝性顔料インク20の分散媒21を吸収するとともに、浸透層10に光輝性顔料インク20の顔料22がほとんどまたは全く受容されないことにより形成される。
【0044】
光輝性層30は、浸透層10に対して形成されるため、浸透層10の表面の平坦度に対応する平坦度を有する。したがって、光輝性層30の表面の平坦度が制御され光輝性層30の表面(浸透層10と接している面)に所望の光沢やつやを付与することができる。特に、光輝性層30に含有される顔料22が、光輝性を呈しうる顔料(例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金の粉体)である場合には、所望の光輝性を呈する画像を形成することができる。光輝性層30の材質は、光輝性顔料インク20に分散された顔料22を含むが、顔料22以外の成分(例えば、分散媒21、添加剤など)を含んでいてもよい。
【0045】
1.3.接着層
接着層40は、少なくとも光輝性層30に対して形成される。また、接着層40は、図2に示すように、光輝性層30の上の他、浸透層10に対して形成されてもよい。接着層40の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2μm以上5μm以下とすることができる。接着層40の厚みは、光輝性層30の転写先である媒体(例えば、被転写媒体200)の性質に応じて適宜設定することができる。例えば、転写先の媒体の表面の凹凸が大きい場合には、その凹凸の影響が光輝性層30の表面(転写前に浸透層10に接していた面)に生じないように接着層40の厚みを適宜設定することができる。また、転写先の媒体が浸透性を有する場合には、その浸透性を考慮した厚みとすることができる(図5参照)。
【0046】
接着層40は、接着性を有する。ここで、接着性とは、光輝性層30と転写先の媒体とを、接着する性質のことをいう。接着性は、接着層40が形成されたそのままの状態で発現されていてもよいし、接着層40に、例えば、圧力、温度(熱)および放射線(光等)の少なくとも一種の刺激が印加されたときに発現されてもよい。
【0047】
接着層40の機能の一つとしては、光輝性層30と、転写先の媒体とを接着することが挙げられる。これにより、本実施形態の転写物100が有する光輝性層30を、転写先の媒体に転写させることができる。
【0048】
接着層40が有する接着性の程度は、浸透層10と光輝性層30との間の接着力よりも、接着層40を介した光輝性層30と転写先の媒体(例えば、被転写媒体200)との間の接着力のほうが大きければ十分である。また、図2に示す例のように、浸透層10に対して接着層40が形成された場合においても、浸透層10と光輝性層30との間の接着力よりも、接着層40を介した光輝性層30と転写先の媒体との間の接着力のほうが大きければ十分である。すなわち、図2の例の場合、光輝性層30を転写先の媒体に転写した後に、浸透層10の上の接着層40は、浸透層10側に残存してもよく、転写先の媒体側に転写されてもよい。
【0049】
接着層40の材質としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマーおよび樹脂類などを例示できる。この場合、必要に応じて重合開始剤、反応助剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着層40の材質の例としては、ポリオレフィン類、ポリアミド類、およびその変性体などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この場合、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着層40の材質としては、ロジン、糊化デンプン、ニカワ、各種の糖類等の天然樹脂またはその変性体などの粘着性を有する物質を例示することができる。また、接着層40の材質としては、感圧型の接着剤であってもよい。感圧型の接着剤としては、例えば、接着剤を微小なカプセルに封入した構造を有するものが挙げられる。接着層40の材質は、上記例示した物質の2種以上の混合物であってもよい。また、接着層40に、光輝性層30の膜強度を高める機能をもたせることもでき、その場合には、接着層40の材質には、顔料22の結着剤となる化合物を含有させてもよい。このような顔料22の結着剤としての作用を発揮しうる化合物としては、例えば、スチレンブタジエン系樹脂、およびセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、並びにその誘導体などが挙げられる。さらに、接着層40は、染料および顔料等の各種の色材によって着色されていてもよい。
【0050】
1.4.作用効果等
平坦性を有する浸透層10上に光輝性顔料インクが塗布されると、浸透層10中に光輝性顔料インクに含まれる、例えば、分散媒21が浸透され、浸透層10上に光輝性顔料インクに含まれる顔料22を主体とする光輝性層30が形成される。そうすると、光輝性層30中では、顔料22の粒子が密に配列される。そして、例えば、転写先となる被転写媒体を用いて転写した場合、当該被転写媒体と接着層とが接着するとともに光輝性層と浸透層との界面で剥離され、光輝性層30の表面が露出する。光輝性層30の表面は、浸透層10の平坦面に対応しているため、同様に平坦性を有するとともに、顔料22の粒子は密に配列されているため、顔料22の粒子が光の照射によって略均一に反射する。こうして、如何なる被転写媒体に対しても光沢性の優れた画像を転写可能な被転写物を形成することができる。すなわち、転写先の媒体の種類に依存することなく、該被転写媒体に対して光沢またはつやの良好な画像を、容易に形成することができる。
【0051】
従来のスクリーン印刷およびインクジェット印刷などでは、画像の表面の平坦度の制御は困難であった。すなわち、光沢を呈しうるインク等を用いて印刷しても、表面の平坦度が確保できず、必要とする光沢やつやを有する画像が得られない場合があった。そのため、従来は例えば、光沢やつやを有する画像を被転写媒体に記録する場合には被転写媒体の種類が制限され、場合によっては画像の表面を平坦化する工程等を付加する必要があった。
【0052】
これに対して、本実施形態の転写物によれば、転写先の媒体の種類(性質)によらず、表面の平坦な、光沢やつやを呈する画像を該媒体に極めて容易に形成することができる。特に、転写先の媒体が普通紙、フィルム等である場合には、本実施形態の被転写物の効果は顕著となり、従来の方法では、光沢やつやを呈する画像を形成することが容易でなかった普通紙やフィルム等の媒体に対しても、極めて容易に光沢やつやを呈する画像を記録することができる。
【0053】
なお、被転写媒体200は、離型作用を有する表面を備えていてもよい。すなわち、被転写媒体200は、転写先となる媒体に限定されない。この場合も被転写媒体200は、接着層40により光輝性層30に接着されているが、当該接着の接着力は、浸透層10および光輝性層30の間の接着力よりも小さい。したがって、被転写媒体200が離型作用を有する場合には、転写物100は、被転写媒体200と接着層40との界面を任意のタイミングで剥離することができる。そして、被転写媒体200が剥がされることによって現れた接着層40によって、他の転写先の媒体に、光輝性層30を転写させることができる。このような態様の転写物100によれば、搬送等によって生じる擦過痕を抑制することができるとともに、ユーザーが所望する任意の時点で、所望の転写先に接触させて浸透層10と光輝性層30との間を剥離して転写することができるため、望むタイミングで、光沢やつやが良好な画像を所望の転写先に形成することができる。
【0054】
1.5.変形例
図3および図4は、本実施形態の転写物110の断面の模式図である。図5および図6は、本実施形態の被転写物120の断面の模式図である。
【0055】
変形例の転写物110は、上述の転写物100の接着層40に対して、被転写媒体200が配置されている。そして、光輝性層30と被転写媒体200とが、接着層40によって接着されている。
【0056】
被転写媒体200は、特に限定されない。被転写媒体200としては、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また被転写媒体200としては、コート紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。さらには、上記のフィルム等の他、例えば、被転写媒体200としてボールペンやノート等の文具類や携帯端末等の電子機器類等であってもよい。この場合、例えば、転写物110の接着層40とボールペン等の表面とを接着したのち、光輝性層30と浸透層10との間で剥離させることにより、ボールペンの表面に光沢性を有する画像を転写させることができる。
【0057】
転写物110は、上記実施形態の転写物100と被転写媒体200とが一体となった構造を有する。図3および図4に例示した転写物110の浸透層10は、基材12に形成されている。転写物110は、浸透層10と光輝性層30との間を容易に剥離されることができる。図5および図6に示すように、転写物110の浸透層10および光輝性層30の界面が剥離されると、被転写媒体200に対して、接着層40および光輝性層30が順次積層された被転写物120を得ることができる。被転写物120には、平坦度が制御された表面(接着層40とは反対側の面)を有する光輝性層30が形成されており、光輝性層30によって形成された画像は、光沢やつやの良好な画像となる。
【0058】
また、図3に示す転写物110の例では、光輝性層30と接着層40とが同じ平面形状を有している。一方、図4に示す転写物110の例では、光輝性層30よりも平面形状の大きい接着層40が形成されている。図6に示すように、光輝性層30よりも平面形状の大きい接着層40が形成されている場合には、例えば、光輝性層30を接着する接着層40の部分だけを被転写媒体200に転写することもできる。また、図示しないが、光輝性層30よりも平面形状の大きい接着層40が形成されている場合には、光輝性層30および接着層40を被転写媒体200に転写してもよい。
【0059】
図7は、他の変形例にかかる転写物111の断面の模式図である。図8は、他の変形例にかかる被転写物121の断面の模式図である。
【0060】
変形例の転写物111は、接着層42が被転写媒体200に対して形成されている点で、上述の転写物110と異なる。転写物111は、浸透層10に光輝性層30を形成した後、光輝性層30に対して、接着層40を形成していない。すなわち、転写される媒体側(被転写媒体200側)に接着層42が形成され、当該接着層42によって、被転写媒体200および光輝性層30が接着されている。
【0061】
他の変形例の被転写物121は、図8に示すように、光輝性層30の表面と、接着層40の表面とが共通する平面となっている。被転写物121は、例えば、図4に示した転写物110、または、図7に示した転写物111に対して、浸透層10および被転写媒体200とを押しつけるように圧力、熱を印加することにより、接着層40または接着層42を変形させて形成することができる。
【0062】
以上のような変形例にかかる転写物110または転写物111によれば、被転写媒体200に良好な光沢やつやを有する画像が形成された被転写物120または被転写物121を、容易に搬送することができる。また、変形例にかかる転写物110または転写物111によれば、被転写物120または被転写物121に形成された画像の表面が浸透層10によって保護されるため、搬送等によって生じる擦過痕を抑制することができる。さらに、転写物110または転写物111によれば、ユーザーが所望する任意の時点で、浸透層10と光輝性層30との間を剥離することができるため、望むタイミングで、光沢やつやの良好な画像が形成された被転写物120または被転写物121を得ることができる。
【0063】
2.転写物の製造方法
次に、転写物の製造方法について説明する。図9〜図12は、転写物の製造方法を示す模式図である。
【0064】
本実施形態にかかる転写物の製造方法は、浸透層上に光輝性顔料インクを塗布して、光輝性顔料インクに含まれる分散媒を浸透層に浸透させ、浸透層上に光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、光輝性層上に接着性を有する接着層を形成する接着層形成工程と、を含むものである。さらに、接着層形成工程の後に、接着層上に被転写媒体を配置して、被転写媒体と接着層とを接着する接着工程を含む。
【0065】
2.1.光輝性層形成工程
図9〜図11は、光輝性層形成工程を模式的に示す図である。顔料形成工程では、浸透層上に光輝性顔料インクを塗布して、光輝性顔料インクに含まれる分散媒を浸透層に浸透させ、浸透層上に光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する。
【0066】
2.1.1.光輝性層の形成
まず、浸透層10を準備する。本実施形態では、図9に示すように、基材12上に形成された浸透層10を形成する。次いで、図10に示すように、浸透層10上に光輝性顔料インク20を塗布する。浸透層10に光輝性顔料インク20を塗布させる方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などが挙げられる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも所望の画像を容易に形成することができるため、光輝性顔料インク20の無駄を抑えることができる点でより好ましい。
【0067】
光輝性顔料インク20が浸透層10に塗布されると、図11に示すように、塗布され光輝性顔料インク20に含まれる分散媒21の少なくとも一部が、浸透層10の内部に浸透する。浸透層10は、既に述べたように、光輝性顔料インク20に含有される分散媒21を吸収することができる。また、浸透層10は、光輝性顔料インク20に含有される顔料22をほとんど受容しないか、わずかに受容する程度の平均開口径を有するものが選択される。その観点から浸透層10の空隙率は、例えば、40%以上80%以下とすることができる。これにより、浸透層10に塗布された光輝性顔料インク20は、浸透層10の表面を境界として浸透層10の内部に分散媒21の少なくとも一部が浸透し、浸透層10の表面上の顔料22が濃化した状態となる。これにより、浸透層10上に光輝性層30が形成される。
【0068】
また、本工程で光輝性顔料インク20を浸透層10に塗布させると、光輝性層30の浸透層10と接する面の平坦度が、浸透層10の表面の平坦度に対応する形状となる。すなわち、浸透層10は、表面の平坦度が制御された濾紙に類似した機能を有する。これにより、光輝性層30の浸透層10と接する面は、浸透層10の表面の平坦度に基づいて制御され、顔料22が密に配置された状態となる。
【0069】
2.1.2.光輝性顔料インク
光輝性層形成工程において使用される光輝性顔料インク20について説明する。本実施形態の光輝性顔料インク20は、光輝性の顔料22と、分散媒21等を含む。光輝性の顔料22は、媒体に付着されたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。
【0070】
光輝性顔料インク20には、上記例示した光輝性の顔料22の複数種が配合されてもよい。
【0071】
光輝性の顔料22を分散媒21に分散させるには、樹脂分散、自己分散、マイクロカプセル型分散などを複数の方法があるが、本実施形態においては、これらのうち自己分散型顔料がより好ましい。自己分散型顔料は、分散性のある官能基を有する顔料であるので、樹脂やポリマーなどを表面に有しない、又は、少ないことにより、被転写媒体に対しての密着性が低く転写を行うのに好ましい。
【0072】
顔料22の粒子径は、浸透層10の空隙層の特性などを考慮して、浸透層10の内部に浸透しにくいまたは浸透しないように選択される。顔料22の粒子径としては、例えば、平均粒子径が1nm以上500nm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3nm以上200nm以下程度であり、最も好ましくは、3nm以上200nm以下程度である。なお、顔料22の平均粒子径は、例えば、光(レーザー)散乱法、窒素吸着法などにより、粒径加積曲線を求めるなどして測定することができる。本実施形態のインク20における顔料22の含有量は、例えば、インク20全体に対して、1質量%以上25質量%以下程度が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
【0073】
2.1.2.2.分散媒
光輝性顔料インク20に使用される分散媒21は、特に限定されない。分散媒21としては、例えば、水、有機溶剤、反応性化合物、およびそれらの混合物等が挙げられる。光輝性顔料インク20中では、顔料22は分散媒21に分散されている。光輝性顔料インク20に、顔料22以外の物質、例えば、顔料22を分散させるための化合物が含有される場合、それらの物質が常温で液体であれば、該化合物も分散媒21の一部と見なすことができる。
【0074】
2.1.2.3.その他の成分
光輝性顔料インク20には、各種公知の物質を含有させることができる。光輝性顔料インク20には、例えば、界面活性剤、定着剤、湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を配合してもよく、さらに、必要に応じてレベリング添加剤、マット剤、光輝性層30の膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させてもよい。また、光輝性顔料インク20は、接着層40を形成するための液体が接触したときに、顔料22が再分散しないものがより好ましい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させることによって、再分散しにくくする効果が得られる場合がある。
【0075】
2.2.接着層形成工程
次いで、接着層形成工程では、図1または図2に示すように、少なくとも光輝性層30に対して接着層40を形成する。接着層40は、例えば、接着性を有する、または、特定の刺激を受けることで接着性を発揮する化合物、若しくは、該化合物を含有する液体を塗布することにより形成される。
【0076】
接着性を有する化合物は、「1.3.接着層」の項で述べたと同様である。
【0077】
図1の例では、光輝性層30の上のみに接着層40が形成されている。図2に示した例のように、浸透層10に対して接着層40が形成される場合には、接着層40の材質は、被転写媒体200と浸透層10との剥離が容易となるように選択される。この場合、浸透層10と被転写媒体200とを剥離したときに、光輝性層30が被転写媒体200側へ転写される限り、光輝性層30以外の部分に形成された接着層40は、浸透層10および被転写媒体200のいずれの側に存在することとなってもよい。
【0078】
接着層40は、各種の手法により形成されることができ、例えば、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などにより形成されうる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも所望の画像を容易に形成することができるため、接着層40を形成するための液体の無駄を抑えることができる点で、より好ましい。
【0079】
2.3.接着工程
次に、接着工程では、図12に示すように、接着層40に対して被転写媒体200を配置し、被転写媒体200と接着層40とを接着する。本接着工程では、接着層40の材質に従って、適宜に行われる。例えば、接着層40が常温で十分な接着性を有する場合には、被転写媒体200を接着層40に対して配置してわずかな圧力Pが印加するだけで被転写媒体200と光輝性層30とを接着することができる。この場合、必要に応じて、プレス加工、ローラー圧着等を行ってもよい。また、接着層40が熱によって接着性を発揮する性質を有する場合には、適宜な加熱手段を用いて、被転写媒体200および基材12(浸透層10)の少なくとも一方を加熱して行うことができる。さらに、接着層40が圧力によって接着性を呈する場合には、例えば、ローラー圧着、プレス加工や治具等を用いた徒手により圧力Pを印加して行うことができる。また、接着層40が熱によって接着性を発揮する性質を有する場合、本工程は、加熱して行われるが、ローラー圧着やプレス加工を併用してもよい。
【0080】
例えば、接着層40が熱硬化型の化合物を含有する接着剤である場合には、本接着工程では、接着層40は、接着剤の重合温度(例えば重合開始剤の活性化温度)よりも高い温度となるように加熱されることが好ましい。また、例えば、接着層40が熱可塑性の重合体を含有する接着剤である場合には、本工程では、接着層40は、熱可塑性の重合体のTm(融点)の近傍まで加熱されることが好ましく、Tmよりも高い温度に加熱されることがさらに好ましい。
【0081】
2.4.変形例
上記実施形態の画像形成方法において、接着層を形成する工程に代えて、接着性を有する接着層42が形成された被転写媒体200を準備する工程としてもよい(図7参照)。すなわち、浸透層に向けて光輝性顔料インクを液滴として吐出して、光輝性顔料インクに含まれる分散媒を前記浸透層に浸透させ、浸透層上に光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、光輝性層に対して、接着性を有する接着層が形成された被転写媒体を配置して、被転写媒体の前記接着層と前記光輝性層とを接着する接着工程と、を含む転写物の製造方法であってもよい。
【0082】
上記実施形態の画像形成方法では、転写元(浸透層側)接着層40を形成し、当該接着層40を用いて、光輝性層30と被転写媒体200とを接着した。しかし、本変形例のように被転写媒体200側に接着層が形成されていても同様の結果を得ることができる。
【0083】
本変形例にかかる画像形成方法では、被転写媒体200には、接着層42が形成されている。具体的には、上述の被転写媒体200の一方の面に、接着層42が形成されている。接着層42は、被転写媒体20の全面に形成されていてもよいし、浸透層10に付着された光輝性層30の反転像を含む領域の大きさで形成されてもよい。被転写媒体20に、浸透層10に付着された光輝性層30の反転像と同じ大きさで、接着層42が形成される場合には、インク20および接着層42を形成する液体の使用量を最小に抑えることができる。
【0084】
そして、本変形例においても「2.3.接着工程」と同様にして、被転写媒体200と光輝性層30とを接着層42によって接着することができる。
【0085】
2.5.作用効果
本実施形態の画像形成方法によれば、例えば、上述した実施形態の転写物を容易に得ることができる。本実施形態の画像形成方法によれば、被転写媒体の種類に依存することなく、該被転写媒体に対して光沢またはつやの良好な画像を、容易に形成することができる。
【0086】
2.6.転写工程
本実施形態の転写物の製造方法は、接着工程の後に、浸透層と前記光輝性層とを剥離して、被転写媒体に前記光輝性層を転写する転写工程を含むことができる。
【0087】
転写工程は、例えば、図5、図6および図8に示すように、浸透層10と光輝性層30との界面を剥離する工程である。本工程により、光輝性層30は、接着層40を介して被転写媒体200側へ転写され、被転写物120または被転写物121を得ることができる。
【0088】
本工程の具体的な方法としては、なんら制限なく、例えば、一般的なピーラーなどを用いて行うことができる。また、本工程は、ローラー等を適宜配置して、被転写媒体200や浸透層10の搬送とともに適宜に行うことができる。さらに、本工程は、例えば、ユーザーが徒手で行ってもよい。
【0089】
接着層40が熱可塑性の化合物を含む場合には、本工程は、「2.3.接着工程」の後、接着層40が冷却されてから行われることが好ましい。このような場合には、例えば、被転写媒体および光輝性層を接着する工程の後、冷却工程を設けることができる。冷却工程としては、例えば、冷却期間を設けることや、冷却手段(冷却ローラーなど)を用いて接着層40を冷却することが挙げられる。
【0090】
熱を印加して転写を行う場合には、加熱ローラー、プラテンヒーター、放射熱を発生させる光線等を用いても良いが、例えばアイロンのような熱を発生させる装置を用いて、手動で転写を行っても良い。
【0091】
上記したように、光輝性層30を、浸透層10から被転写媒体200へ転写する工程を含む場合には、例えば、上述した本実施形態の被転写物120および被転写物121を極めて容易に得ることができる。そして、被転写媒体の種類に依存することなく、該被転写媒体200に対して光沢またはつやの良好な画像を、容易に形成することができる。
【0092】
上記したように、本実施形態によれば、被転写媒体の種類に依存することなく、光輝性層30を転写して、被転写媒体上に光沢性の優れた画像を形成することができる。従って、従来、光沢性を有する画像の画質の低下が懸念されていたインク非吸収性または低吸収性の被転写媒体や表面が粗い被転写媒体であっても、当該被転写媒体上に優れた光沢性を有する画像を形成することができる。
【0093】
ここで、インク非吸収性または低吸収性の被転写媒体とは、インクの受容層を備えていない、あるいは、インクの受容層が乏しい被転写媒体をいう。より定量的には、インク非吸収性および低吸収性の被転写媒体とは、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である被転写媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0094】
インク非吸収性被転写媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を有していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0095】
インク低吸収性被転写媒体としては、塗工紙が挙げられ、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)等が挙げられる。塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプンなどの接着剤を混合して作る。塗料は、紙の製造工程の中でコーターという機械を使って塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m2以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に塗工量が40g/m2前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙とは、塗工量が20g/m2以上40g/m2以下程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。なお、塗工量とは、記録用紙の両面の塗工値の合計値である。
【0096】
表面が粗い被転写媒体としては、例えば、算術平均粗さRaが20μm以上の粗面を備える被転写媒体である。なお、算術平均粗さ(Ra)は、例えば、表面粗さ計や光干渉型顕微鏡を用いて測定することが可能であり、具体的な表面粗さの測定装置としては、段差・表面粗さ・微細形状測定装置P−15(KLA−Tencor社製)等がある。上記粗面を有する被転写媒体としては、例えば、上質紙「55PW8R」、XeroxP(富士ゼロックス社製;算術平均粗さRa=29.2μm)、プレイン・デザインペーパー ブラックペーパー(トチマン(株)社製;算術平均粗さRa=30.2μm)、およびスーパーファイン紙(セイコーエプソン社製;Ra=36.6μm)、Bフルート段ボールシート(レンゴー社製;算術平均粗さRa=39.9μm)等が挙げられる。また、布帛なども表面が粗い被転写媒体として挙げられる。
【0097】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0098】
3.転写物
まず、転写物の構成例について説明する。図13は、転写物の構成の一例を示す模式図である。図13に示すように、転写物101は、浸透層10と、浸透層10上に形成された光輝性顔料インクの顔料22を含む光輝性層30と、光輝性層30上に形成された接着性を有する接着層40と、を有し、浸透層10には、光輝性顔料インクに含まれる分散媒21が浸透している。さらに、光輝性層30と接着層40との間に、有彩色層50を備えている。
【0099】
図14は、転写物の構成の他の一例を示す模式図である。図14に示すように、転写物112は、浸透層10と、浸透層10上に形成された光輝性顔料インクの顔料22を含む光輝性層30と、光輝性層30上に形成された接着性を有する接着層40と、を有し、浸透層10には、光輝性顔料インクに含まれる分散媒21が浸透している。さらに、光輝性層30と接着層40との間に、有彩色層50を備え、さらに、接着層40に接着された被転写媒体201が配置されている。この場合、光透過性を有する被転写媒体201であることが好ましい。また、接着層40は、透明性を有する接着材料を用いると好ましい。接着層40の厚みが制御される。
【0100】
図15は、転写物の構成の他の一例を示す模式図である。図15に示すように、被転写物122は、被転写媒体201上に形成された接着層40と、接着層40上に形成された有彩色層50と、有彩色層50上に形成された光輝性層30と、を備えている。この場合、被転写媒体201および接着層40は、光透過性を有していることが好ましい。
【0101】
なお、上記の転写物101に用いられる基材12、浸透層10、光輝性層30、接着層40等は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0102】
4.転写物の製造方法
次に、転写物の製造方法について説明する。本実施形態にかかる転写物の製造方法は、浸透層上に光輝性顔料インクを塗布して、光輝性顔料インクに含まれる分散媒を浸透層に浸透させ、浸透層上に光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、顔料形成工程の後に、光輝性層上に有彩色層を形成する有彩色層形成工程と、有彩色形成工程の後に、有彩色層上に接着層を形成する接着層形成工程と、を含むものである。
【0103】
まず、光輝性層形成工程では、浸透層10上に光輝性層30を形成する。なお、具体的な内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する(図9〜図11参照)。
【0104】
次いで、有彩色層形成工程では、図16に示すように、光輝性層30上に有彩色層を形成する。光輝性層30上に有彩色層50を形成する方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などが挙げられる。例えば、インクジェット法を用いて、有彩色層の材料を含む機能液を液滴として吐出して、光輝性層30上に機能液を塗布し、当該機能液を固化させることにより有彩色層を形成する。
【0105】
次いで、接着層形成工程では、図17に示すように、有彩色層50上に接着層40を形成する。接着層40は、透明性を有することが好ましい。なお、接着層40の形成方法は、実施形態1と同様なので説明を省略する。
【0106】
次いで、接着工程では、図18に示すように、接着層40に対して被転写媒体201を配置し、被転写媒体201と接着層40とを接着する。本実施形態における被転写媒体201は、例えば、透明フィルム等の透明性を有するものを用いることが好ましい。
【0107】
次いで、転写工程では、図15に示すように、接着工程の後に、浸透層10と光輝性層30とを剥離して、被転写媒体201に有彩色層50および光輝性層30を転写する。これにより、被転写媒体201側に有彩色層50および光輝性層30が転写され、被転写物122を得ることができる。なお、転写方法については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0108】
上記したように、本実施形態によれば、透明性を有する被転写媒体201側に、光輝性層30および有彩色層50を容易に転写することができる。そして、転写された被転写物122において、光輝性層30側から観察した場合には、光沢性の優れた画像が形成され、また、光輝性層30とは反対側、すなわち、被転写媒体201側から観察した場合には、被転写媒体201および接着層40を介して、カラーメタリックの画像を形成することができる。
【0109】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0110】
6.実施例
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0111】
[1]光輝性顔料インクの調製
【0112】
(1)水系銀インク
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い、銀コロイド液を得た。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。なお、銀粒子の平均粒径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。その結果、平均粒子径は10nmであった。
【0113】
上記方法にて、銀コロイド液(固形分)10質量%、界面活性剤、オルフィンE1010 1質量%、プロピレングリコール 11質量%、1,2−ヘキサンジオール 5質量%、イオン交換水 残分質量%、として水系銀インクを調製した。
【0114】
(2)アルミニウムインク
光輝性インクに添加される光輝性顔料を得るために、まず以下のように光輝性顔料分散液(アルミニウム顔料分散液)を作成した。
【0115】
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.0質量%及びジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥する事で、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。
【0116】
次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
【0117】
次に、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間である光輝性顔料分散液を作成した。
【0118】
得られたアルミニウム顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにて濾過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、濾過液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム顔料分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム顔料分散液の濃度調整を行い、5質量%濃度のアルミニウム顔料分散液1を得た。
【0119】
次いで、株式会社セイシン企業製 レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS−2000eを用いて、光アルミニウム顔料の光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)を測定した結果、1.001μmであった。
【0120】
上記方法にて調製したアルミニウム顔料分散液1を1.5質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDE)を64.95質量%、γ−ブチロラクトンを15質量%、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDM)15質量%、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMB)3質量%、セルロースアセテートブチレート(CAB、関東化学社製;ブチル化率35〜39%)を0.35質量%、BYK−UV3500(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)0.2質量%としてアルミニウム顔料インクを調製した。更に常温・常圧下30分間マグネティックスターラーにて混合・攪拌して、アルミニウムインク(光輝性インク)とした。
【0121】
[2]転写シート
本実施例で使用した転写シートは以下の通り。
(1)写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)
(2)写真用紙エントリー(セイコーエプソン社製)
(3)OHPシート(セイコーエプソン社製)
(4)PET12μmフィルム
【0122】
なお、上記のPET12μmフィルムは、ロール状の幅600mm、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム上に低密度重合型ポリエチレンであるワックス(商品名:ハイワックス110P、三井化学社製)を20nm厚に塗布して離型層とした。さらに、メラミン樹脂(商品名:アミラック1000、関西ペイント社製)から作製した熱硬化性のメラミン樹脂層を10nm厚に塗布し、塗布後130℃で5分加熱硬化させて保護層を形成し、ロール状の転写媒体のベース基材としたものである。
【0123】
[3]転写物の製造方法
【0124】
(実施例1)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、水系銀インクを50%dutyで付与し、画像を形成した。その後、乾燥処理を行った。なお、乾燥条件は、まず、プラテンヒーターを用いて転写シートの裏面から50℃で加熱し、さらに画像に40℃の温風を接触させることにより、付着したインクから液体成分を蒸発させた。その後、転写シートの画像が形成された面に向けて、インクジェットヘッドから接着層の材料を含むインクを吐出し付着させることにより、接着層を形成した。その後、乾燥装置を用いてさらに蒸発、乾燥を行い(50℃の温風を20秒間接触させる)、転写媒体を作製した。その後、接着層上に被転写媒体を配置し、接着層と被転写媒体とを接着させた後、転写媒体から画像を剥離した。なお、転写の際に、JOL-DIGITAL-4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。
【0125】
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録
ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」
はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0126】
(実施例2)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙エントリーに、水系銀インクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0127】
(実施例3)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、アルミニウムインクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0128】
(実施例4)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙エントリーに、アルミニウムインクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0129】
(実施例5)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしてのエプソンOHPシートに、水系銀インクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0130】
(実施例6)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、水系銀インクを50%dutyで付与し、第1画像を形成した。そして、実施例1と同様の乾燥処理を施した後、第1画像上に、カラーインクとしてのイエロー顔料インクを50%dutyで付与し、第2画像を形成した。そして、実施例1と同様の乾燥処理を施した。その後、第2画像上に接着層を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0131】
(比較例1)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしてのPET12μmフィルムに、水系銀インクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0132】
(比較例2)
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしてのPET12μmフィルムに、エコソルアルミインクを50%dutyで付与し、画像を形成した。以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0133】
上記の実施例および比較例において、乾燥性、転写性、光沢度を評価した。評価結果は、表1の通りである。
【0134】
【表1】

【0135】
[4]評価内容
【0136】
(4.1)乾燥性
○ :室温で乾燥が可能なレベル。
△ :オーブン乾燥の条件内で乾燥が可能なレベル。
× :オーブン乾燥の条件内で乾燥が不可能なレベル。
【0137】
(4.2)転写性
○ :転写面は平滑でムラなし。
× :20%以上のムラあり。
【0138】
(4.3)光沢度
前記各実施例および各比較例、各参考例に係る被転写物の記録面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
◎ :光沢度が400以上。
○ :光沢度が350以上400未満。
△ :光沢度が300以上350未満。
× :光沢度が300未満。
【0139】
表1に示すように、本発明にかかる転写物の製造方法によれば、乾燥性、転写性、光沢度の全ての評価内容に対して優れていた。一方、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0140】
10…浸透層、12…基材、20…インク、21…分散媒、22…顔料、30…光輝性層、40,42…接着層、50…有彩色層、100,101,110,111,112…転写物、120,121,122…被転写物、200,201…被転写媒体、P…圧力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透層と、
前記浸透層に対して形成された光輝性顔料インクの顔料を有する光輝性層と、
前記光輝性層に対して形成された接着性を有する接着層と、を有し、
前記浸透層には、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒が浸透していることを特徴とする転写物。
【請求項2】
請求項1に記載の転写物において、
前記光輝性層と前記接着層との間に、有彩色層を備えたことを特徴とする転写物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写物において、
前記接着層に接着された被転写媒体が配置されたことを特徴とする転写物。
【請求項4】
浸透層に対して光輝性顔料インクを塗布して、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒を前記浸透層に浸透させ、前記浸透層に対して前記光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、
前記光輝性層に対して接着性を有する接着層を形成する接着層形成工程と、を含むことを特徴とする転写物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の転写物の製造方法において、
前記顔料形成工程の後に、
前記光輝性層に対して有彩色層を形成する有彩色層形成工程と、
前記有彩色形成工程の後に、
前記有彩色層上に前記接着層を形成することを特徴とする転写物の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の転写物の製造方法において、
前記接着層形成工程の後に、
前記接着層に対して被転写媒体を配置して、前記被転写媒体と前記接着層とを接着する接着工程を含むことを特徴とする転写物の製造方法。
【請求項7】
浸透層に向けて光輝性顔料インクを液滴として吐出して、前記光輝性顔料インクに含まれる分散媒を前記浸透層に浸透させ、前記浸透層に対して前記光輝性顔料インクの顔料を含む光輝性層を形成する光輝性層形成工程と、
前記光輝性層に対して、接着性を有する接着層が形成された被転写媒体を配置して、前記被転写媒体の前記接着層と前記光輝性層とを接着する接着工程と、を含むことを特徴とする転写物の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の転写物の製造方法を含む被転写物の製造方法であって、
前記接着工程の後に、
前記浸透層と前記光輝性層とを剥離して、前記被転写媒体に前記光輝性層を転写する転写工程を含むことを特徴とする被転写物の製造方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の被転写物の製造方法であって、
前記被転写媒体は、算術平均粗さRaが20μm以上の粗面を有する被転写媒体、又は、インク非吸収性または低吸収性の被転写媒体であることを特徴とする被転写物の製造方法。
【請求項10】
請求項6の転写物の製造方法において、
前記被転写媒体は、光透過性の被転写媒体であることを特徴とする転写物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−166495(P2012−166495A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30538(P2011−30538)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】