転写箔及び偽造防止媒体
【課題】本発明は、ホログラムによる再生物体像と再生光源の位置関係に着目し、光源位置によって変化のない再生物体像と、各々の光源位置によって変化する立体的影像を同時に再生することにより、目視による真偽の判定が容易であり、かつ、偽造・改ざん・変造を困難とする偽造防止媒体及び転写箔を提供する。
【解決手段】ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする。
【解決手段】ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複製や偽造が困難な高い偽造防止効果を有し、特に目視による真偽の判定が容易であるホログラムに係わる転写箔及び偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、偽造を防止する手段は、物品そのものを模倣する事が困難な物とするか、模倣する事が困難な物を本物の証明として物品に取り付ける事によって、真贋を判定できるようにしているものがある。例えば前者は紙幣や株券などの有価証券のように特殊な素材や印刷加工を施し偽造を困難にする。後者は回折格子パターンが形成されたホログラムを取り付ける事により偽造を困難なものとする場合が多い（特許文献１など）。
【０００３】
ところが、デジタル技術の進歩により従来偽造が困難であった繊細な印刷加工までもがカラーコピーやスキャナーなどで再現できるようになった。また、ホログラムもより簡便な製造設備が開発導入され、以前よりも偽造される可能性が高まりつつある。その結果、偽造防止策としての印刷加工や回折構造物などもさらに高微細化し、より複製や偽造を困難なものとしている。また真贋判定のために特殊な機器が必要なものも現れている（例えば特許文献２）。
【０００４】
しかし、高微細化や複雑化が複製や偽造をより困難なものとしている反面、目視で直感的に真偽判定を行う事ができず、それら自身の真贋の判定が容易でない場合も多い。
【０００５】
以下に上記先行技術文献を示す
【特許文献１】特開昭６１−１９０３６９号公報
【特許文献２】特開昭５８−９２５９６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
以上のように、高微細化や複雑な真偽判定手段を有する従来の偽造防止媒体では、目視で簡単に真偽判定をする事が難しくなっているという問題点がある。そこで、本発明は、より簡単に真偽判定ができ、且つ、高い偽造防止効果を持つ偽造防止媒体及び転写箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成する解決手段として、
請求項１に係る発明は、ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする転写箔である。
請求項２に係る発明は、前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層が、２層以上の複層にて設けられている請求項１に記載の転写箔である。
請求項３に係る発明は、請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写した事を特徴とする偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【０００８】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す効果がある。即ち、請求項１に係る発明によれば、ホログラムに再生光を照射することにより得られる再生物体像と立体的影像に加え、再生光の位置を移動させることによっても、目視による真偽の判定が可能となる。
【０００９】
真偽判定は、ホログラム再生光源の位置変化による、立体的影像の形や大きさの変化を観察する事により行う。具体的には、立体的影像が再生物体像と再生光源の位置関係に対応して再生され、且つ再生光源の位置変化によって立体的影像の形や大きさが適性に変化する事を観察する事で真偽判定を行う。また、再生光源と物体再生像と立体的影像の位置関係による立体的影像の変化具合を精密にする事によって、偽造・改ざん・変造を困難にさせる。
【００１０】
また、本発明の請求項２に係る発明によれば、ホログラム層を２層以上の複層にて設ける事で、前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層の作成がより容易となる。また、ホログラム層により多くの光学的情報を記録できる可能性があるため、再生光源と物体再生像と立体的影像との３者の位置関係による立体的影像の変化具合をより精密にする事を可能とする。
【００１１】
また、本発明の請求項３に係る発明によれば、請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写する事により、転写した対象物へ偽造防止効果を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の転写箔の一実施形態について図面を参照して説明する。
【００１３】
図１は、本発明のホログラム転写箔の構成についての一例を示す断面図である。図１に於けるホログラム転写箔は、支持体１上に、剥離性保護層２、物体を再生するホログラム層（Ａ）３、立体的影像を再生するホログラム層（Ｂ）４、反射性薄膜５、接着層６を、順次積層して構成されている。
【００１４】
図２は、ホログラム層による再生物体像と立体的影像が観察される効果を示す説明図である。再生光（Ｃ）１１を、図１の断面構成を有するホログラム転写箔１７へ支持体１側より照射した場合、観察者１６は再生光（Ｃ）１１に対応したホログラム層（Ａ）３による再生物体像１３と、ホログラム層（Ｂ）４による立体的影像１５が同時に観察できる。また、再生光（Ｄ）１２を照射した場合、観察者１６は再生光（Ｄ）１２に対応したホログラム層（Ａ）３による再生物体像１３と、ホログラム層（Ｂ）４による立体的影像１４が同時に観察できる。このように、本発明に係るホログラムは、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴としたものである。
【００１５】
以下、本発明の転写箔の一実施形態の各層構成について詳細に説明する。
【００１６】
＜支持体＞
支持体１としては厚みが安定しており、且つ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性の高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用する事が可能である。また、他のフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、塗液の塗工条件や乾燥条件によっては使用可能である。また、転写層への影響が無い限りは、支持体に対し、帯電防止処理やマット加工、エンボス処理等の加工をしても良い。
【００１７】
＜剥離性保護層＞
剥離性保護層２は、支持体１から剥がれる層であり、剥離した後はホログラム層（Ａ）３を覆い最表面に露出する事から、機械的損傷や携帯時の擦り等の外的要因による損傷、生活物質（酒、水等）に対する耐性を備え、ホログラム層（Ａ）３を保護する役目を果た
している。これらの性能及び耐性を有していれば、剥離保護層２の材料として従来から公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線或いは電子線硬化性樹脂のいずれの材料も使用する事ができる。その例として、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の熱可塑性樹脂やウレタン系硬化樹脂や、メラミン硬化樹脂、エポキシ硬化樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ（メタ）アクリル、ウレタン（メタ）クリレート等の紫外線或いは電子線硬化樹脂が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【００１８】
また、転写条件等により支持体１と剥離保護層２の剥離が困難である場合には、支持体１と剥離保護層２の間に別途従来既知の剥離層を設けても良く、剥離が軽すぎる場合には同様に従来既知の易接着処理を行って剥離を調整しても良い。更に、剥離保護層２には、耐摩擦性を付与する目的で、既知の滑剤を適宜選択して添加する事が可能である。
【００１９】
＜ホログラム層＞
ホログラム層（Ａ）３とホログラム層（Ｂ）４は、光回折等の光学的効果を発現する層である。その形成方法としては、例えば二光束干渉法やｓｃｈｌｉｅｒｅｎ法等、従来から知られている露光記録方法を用いる事ができる。また、回折構造をエンボス加工でレリーフ型に形成する方法も可能である。
【００２０】
ホログラム層（Ａ）３とホログラム層（Ｂ）４に使用可能な材料は、レリーフ型の場合には、その主となる材料は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線或いは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ（メタ）アクリル、ウレタン（メタ）アクリレート等の紫外線或いは電子線硬化樹脂を、単独もしくはこれらを複合して使用できる。また、前記以外の樹脂であっても、ホログラムによる再生像を形成可能であれば適宜使用できる。
【００２１】
再生物体像１３を再生するホログラム層（Ａ）３は、本発明によるホログラム転写箔の場合、少なくとも２つ以上の異なる方向から光を照射したときに、再生物体像の大きさや形が変化しないように設計する必要がある。この異なる方向というのは、ホログラム層（Ａ３）に垂直な方向つまり高さ方向の変化も含める。
【００２２】
立体的影像１４や１５を再生するホログラム層（Ｂ）４は、本発明によるホログラム転写箔の場合、立体的影像１５や１４の位置と形が、再生光（Ｃ）１１や（Ｄ）１２の位置と再生物体像１３との位置関係に対応して再生されることが重要である。また再生光方向の変化（再生光（Ｃ）１１→（Ｄ）１２）に対する立体的影像の変化（立体的影像１５→１４）が滑らかであれば、より目視による真偽の判定が容易となり、且つ、偽造・改ざん・変造が困難となる。
【００２３】
＜反射性薄膜層＞
反射性薄膜層５はホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）４の光学的効果を高めるために設けられる。用いる材料としては、ホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）と屈折率が異なり、且つ反射効果の高いＡｌ、Ｓｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｃｕ、Ａｕ等の金属材料が一例として挙げられる。
【００２４】
＜接着層＞
接着層６は、本発明の偽造防止転写箔を任意の形状に形成可能とするために、ホットスタンプ等を用いて熱及び圧力で任意の対象物へ接着させるために設けられる。上記接着層を設ける方法としては、グラビア印刷法やスクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の手法が適宜用いられる。
【００２５】
本発明の転写箔の使用目的によっては、本発明によって得られる効果を妨げない範囲で、上記の剥離性保護層２、ホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）４、反射性薄膜層５、接着層６の他に別の層を有していてもよい。例えば各層の層間密着力を向上させるためのアンカー層などが挙げられる。
【実施例】
【００２６】
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。
【００２７】
厚さ２５μｍの透明のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体１の片面に、以下の構成からなる転写層を形成した。
【００２８】
まず、剥離性保護層２を、以下の配合比からなる組成物をグラビア法により、乾燥温度１１０℃、塗布厚１．５μｍで塗布し形成した。
【００２９】
アクリル樹脂 ３０部
トルエン ４０部
メチルエチルケトン ４０部
メチルイソブチルケトン ２０部
【００３０】
次に、ホログラム層（Ａ）３として、下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法によって、塗布厚１μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布し、異なる３方向の再生光に対して、形や大きさが変化しないような物体像が再生されるように、レリーフパターンをロールエンボス加工で形成した。
【００３１】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合物 ２５部
メチルエチルケトン ７０部
トルエン ３０部
【００３２】
次に、ホログラム層（Ｂ）４として、下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法によって、塗布厚１μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布し、前記の３方向の再生光に対して、再生光照射方向と再生物体像との位置関係に対応して変化する立体的影像が再生されるように、レリーフパターンをロールエンボス加工で形成した。
【００３３】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合物 ２５部
メチルエチルケトン ７０部
トルエン ３０部
【００３４】
次に、反射性薄膜層５として、真空蒸着法を用いて膜厚１００ｎｍのＡｌ薄膜層を全面に設けた。
【００３５】
更に、接着層６として、下記の配合比からなる組成物をグラビア法によって、塗布厚４．０μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布して形成した。
【００３６】
アクリル樹脂 ２０部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 ５部
トルエン ５０部
メチルエチルケトン ５０部
【００３７】
以上の構成で作成したホログラム転写箔を、ホットスタンプ機を用いて温度１４０℃、圧力２５０ｋｇ／ｍ2で、重さ６４ｇ／ｍ2の紙に転写し、偽造防止媒体とした。
【００３８】
作製した偽造防止媒体について、この偽造防止媒体のホログラム部に、異なる３方向から再生光を照射すると、光源位置によって変化のない再生物体像と、各々の光源位置によって変化する立体的影像を同時に再生できた。これらを観察することで、目視の判定が容易な真偽判定ができ、且つ偽造・改ざん・変造を困難とする効果を持つ事が確認された。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の転写箔の構成についての一例を示す断面図である。
【図２】本発明の転写箔においてホログラム層による再生物体像と立体的影像が観察される効果を示す説明図である。
【符号の説明】
【００４０】
１…支持体
２…剥離性保護層
３…ホログラム層（Ａ）
４…ホログラム層（Ｂ）
５…反射性薄膜層
６…接着層
１１…再生光（Ｃ）
１２…再生光（Ｄ）
１３…再生物体像
１４…１２により再生される１３の立体的影像
１５…１１により再生される１３の立体的影像
１６…観測者視点
１７…図１の断面構成を有するホログラム転写箔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複製や偽造が困難な高い偽造防止効果を有し、特に目視による真偽の判定が容易であるホログラムに係わる転写箔及び偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、偽造を防止する手段は、物品そのものを模倣する事が困難な物とするか、模倣する事が困難な物を本物の証明として物品に取り付ける事によって、真贋を判定できるようにしているものがある。例えば前者は紙幣や株券などの有価証券のように特殊な素材や印刷加工を施し偽造を困難にする。後者は回折格子パターンが形成されたホログラムを取り付ける事により偽造を困難なものとする場合が多い（特許文献１など）。
【０００３】
ところが、デジタル技術の進歩により従来偽造が困難であった繊細な印刷加工までもがカラーコピーやスキャナーなどで再現できるようになった。また、ホログラムもより簡便な製造設備が開発導入され、以前よりも偽造される可能性が高まりつつある。その結果、偽造防止策としての印刷加工や回折構造物などもさらに高微細化し、より複製や偽造を困難なものとしている。また真贋判定のために特殊な機器が必要なものも現れている（例えば特許文献２）。
【０００４】
しかし、高微細化や複雑化が複製や偽造をより困難なものとしている反面、目視で直感的に真偽判定を行う事ができず、それら自身の真贋の判定が容易でない場合も多い。
【０００５】
以下に上記先行技術文献を示す
【特許文献１】特開昭６１−１９０３６９号公報
【特許文献２】特開昭５８−９２５９６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
以上のように、高微細化や複雑な真偽判定手段を有する従来の偽造防止媒体では、目視で簡単に真偽判定をする事が難しくなっているという問題点がある。そこで、本発明は、より簡単に真偽判定ができ、且つ、高い偽造防止効果を持つ偽造防止媒体及び転写箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成する解決手段として、
請求項１に係る発明は、ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする転写箔である。
請求項２に係る発明は、前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層が、２層以上の複層にて設けられている請求項１に記載の転写箔である。
請求項３に係る発明は、請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写した事を特徴とする偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【０００８】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す効果がある。即ち、請求項１に係る発明によれば、ホログラムに再生光を照射することにより得られる再生物体像と立体的影像に加え、再生光の位置を移動させることによっても、目視による真偽の判定が可能となる。
【０００９】
真偽判定は、ホログラム再生光源の位置変化による、立体的影像の形や大きさの変化を観察する事により行う。具体的には、立体的影像が再生物体像と再生光源の位置関係に対応して再生され、且つ再生光源の位置変化によって立体的影像の形や大きさが適性に変化する事を観察する事で真偽判定を行う。また、再生光源と物体再生像と立体的影像の位置関係による立体的影像の変化具合を精密にする事によって、偽造・改ざん・変造を困難にさせる。
【００１０】
また、本発明の請求項２に係る発明によれば、ホログラム層を２層以上の複層にて設ける事で、前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層の作成がより容易となる。また、ホログラム層により多くの光学的情報を記録できる可能性があるため、再生光源と物体再生像と立体的影像との３者の位置関係による立体的影像の変化具合をより精密にする事を可能とする。
【００１１】
また、本発明の請求項３に係る発明によれば、請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写する事により、転写した対象物へ偽造防止効果を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の転写箔の一実施形態について図面を参照して説明する。
【００１３】
図１は、本発明のホログラム転写箔の構成についての一例を示す断面図である。図１に於けるホログラム転写箔は、支持体１上に、剥離性保護層２、物体を再生するホログラム層（Ａ）３、立体的影像を再生するホログラム層（Ｂ）４、反射性薄膜５、接着層６を、順次積層して構成されている。
【００１４】
図２は、ホログラム層による再生物体像と立体的影像が観察される効果を示す説明図である。再生光（Ｃ）１１を、図１の断面構成を有するホログラム転写箔１７へ支持体１側より照射した場合、観察者１６は再生光（Ｃ）１１に対応したホログラム層（Ａ）３による再生物体像１３と、ホログラム層（Ｂ）４による立体的影像１５が同時に観察できる。また、再生光（Ｄ）１２を照射した場合、観察者１６は再生光（Ｄ）１２に対応したホログラム層（Ａ）３による再生物体像１３と、ホログラム層（Ｂ）４による立体的影像１４が同時に観察できる。このように、本発明に係るホログラムは、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴としたものである。
【００１５】
以下、本発明の転写箔の一実施形態の各層構成について詳細に説明する。
【００１６】
＜支持体＞
支持体１としては厚みが安定しており、且つ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性の高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用する事が可能である。また、他のフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、塗液の塗工条件や乾燥条件によっては使用可能である。また、転写層への影響が無い限りは、支持体に対し、帯電防止処理やマット加工、エンボス処理等の加工をしても良い。
【００１７】
＜剥離性保護層＞
剥離性保護層２は、支持体１から剥がれる層であり、剥離した後はホログラム層（Ａ）３を覆い最表面に露出する事から、機械的損傷や携帯時の擦り等の外的要因による損傷、生活物質（酒、水等）に対する耐性を備え、ホログラム層（Ａ）３を保護する役目を果た
している。これらの性能及び耐性を有していれば、剥離保護層２の材料として従来から公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線或いは電子線硬化性樹脂のいずれの材料も使用する事ができる。その例として、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の熱可塑性樹脂やウレタン系硬化樹脂や、メラミン硬化樹脂、エポキシ硬化樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ（メタ）アクリル、ウレタン（メタ）クリレート等の紫外線或いは電子線硬化樹脂が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【００１８】
また、転写条件等により支持体１と剥離保護層２の剥離が困難である場合には、支持体１と剥離保護層２の間に別途従来既知の剥離層を設けても良く、剥離が軽すぎる場合には同様に従来既知の易接着処理を行って剥離を調整しても良い。更に、剥離保護層２には、耐摩擦性を付与する目的で、既知の滑剤を適宜選択して添加する事が可能である。
【００１９】
＜ホログラム層＞
ホログラム層（Ａ）３とホログラム層（Ｂ）４は、光回折等の光学的効果を発現する層である。その形成方法としては、例えば二光束干渉法やｓｃｈｌｉｅｒｅｎ法等、従来から知られている露光記録方法を用いる事ができる。また、回折構造をエンボス加工でレリーフ型に形成する方法も可能である。
【００２０】
ホログラム層（Ａ）３とホログラム層（Ｂ）４に使用可能な材料は、レリーフ型の場合には、その主となる材料は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線或いは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ（メタ）アクリル、ウレタン（メタ）アクリレート等の紫外線或いは電子線硬化樹脂を、単独もしくはこれらを複合して使用できる。また、前記以外の樹脂であっても、ホログラムによる再生像を形成可能であれば適宜使用できる。
【００２１】
再生物体像１３を再生するホログラム層（Ａ）３は、本発明によるホログラム転写箔の場合、少なくとも２つ以上の異なる方向から光を照射したときに、再生物体像の大きさや形が変化しないように設計する必要がある。この異なる方向というのは、ホログラム層（Ａ３）に垂直な方向つまり高さ方向の変化も含める。
【００２２】
立体的影像１４や１５を再生するホログラム層（Ｂ）４は、本発明によるホログラム転写箔の場合、立体的影像１５や１４の位置と形が、再生光（Ｃ）１１や（Ｄ）１２の位置と再生物体像１３との位置関係に対応して再生されることが重要である。また再生光方向の変化（再生光（Ｃ）１１→（Ｄ）１２）に対する立体的影像の変化（立体的影像１５→１４）が滑らかであれば、より目視による真偽の判定が容易となり、且つ、偽造・改ざん・変造が困難となる。
【００２３】
＜反射性薄膜層＞
反射性薄膜層５はホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）４の光学的効果を高めるために設けられる。用いる材料としては、ホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）と屈折率が異なり、且つ反射効果の高いＡｌ、Ｓｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｃｕ、Ａｕ等の金属材料が一例として挙げられる。
【００２４】
＜接着層＞
接着層６は、本発明の偽造防止転写箔を任意の形状に形成可能とするために、ホットスタンプ等を用いて熱及び圧力で任意の対象物へ接着させるために設けられる。上記接着層を設ける方法としては、グラビア印刷法やスクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の手法が適宜用いられる。
【００２５】
本発明の転写箔の使用目的によっては、本発明によって得られる効果を妨げない範囲で、上記の剥離性保護層２、ホログラム層（Ａ）３やホログラム層（Ｂ）４、反射性薄膜層５、接着層６の他に別の層を有していてもよい。例えば各層の層間密着力を向上させるためのアンカー層などが挙げられる。
【実施例】
【００２６】
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。
【００２７】
厚さ２５μｍの透明のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体１の片面に、以下の構成からなる転写層を形成した。
【００２８】
まず、剥離性保護層２を、以下の配合比からなる組成物をグラビア法により、乾燥温度１１０℃、塗布厚１．５μｍで塗布し形成した。
【００２９】
アクリル樹脂 ３０部
トルエン ４０部
メチルエチルケトン ４０部
メチルイソブチルケトン ２０部
【００３０】
次に、ホログラム層（Ａ）３として、下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法によって、塗布厚１μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布し、異なる３方向の再生光に対して、形や大きさが変化しないような物体像が再生されるように、レリーフパターンをロールエンボス加工で形成した。
【００３１】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合物 ２５部
メチルエチルケトン ７０部
トルエン ３０部
【００３２】
次に、ホログラム層（Ｂ）４として、下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法によって、塗布厚１μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布し、前記の３方向の再生光に対して、再生光照射方向と再生物体像との位置関係に対応して変化する立体的影像が再生されるように、レリーフパターンをロールエンボス加工で形成した。
【００３３】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合物 ２５部
メチルエチルケトン ７０部
トルエン ３０部
【００３４】
次に、反射性薄膜層５として、真空蒸着法を用いて膜厚１００ｎｍのＡｌ薄膜層を全面に設けた。
【００３５】
更に、接着層６として、下記の配合比からなる組成物をグラビア法によって、塗布厚４．０μｍ、乾燥温度１１０℃で塗布して形成した。
【００３６】
アクリル樹脂 ２０部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 ５部
トルエン ５０部
メチルエチルケトン ５０部
【００３７】
以上の構成で作成したホログラム転写箔を、ホットスタンプ機を用いて温度１４０℃、圧力２５０ｋｇ／ｍ2で、重さ６４ｇ／ｍ2の紙に転写し、偽造防止媒体とした。
【００３８】
作製した偽造防止媒体について、この偽造防止媒体のホログラム部に、異なる３方向から再生光を照射すると、光源位置によって変化のない再生物体像と、各々の光源位置によって変化する立体的影像を同時に再生できた。これらを観察することで、目視の判定が容易な真偽判定ができ、且つ偽造・改ざん・変造を困難とする効果を持つ事が確認された。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の転写箔の構成についての一例を示す断面図である。
【図２】本発明の転写箔においてホログラム層による再生物体像と立体的影像が観察される効果を示す説明図である。
【符号の説明】
【００４０】
１…支持体
２…剥離性保護層
３…ホログラム層（Ａ）
４…ホログラム層（Ｂ）
５…反射性薄膜層
６…接着層
１１…再生光（Ｃ）
１２…再生光（Ｄ）
１３…再生物体像
１４…１２により再生される１３の立体的影像
１５…１１により再生される１３の立体的影像
１６…観測者視点
１７…図１の断面構成を有するホログラム転写箔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする転写箔。
【請求項２】
前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層が、２層以上の複層にて設けられている請求項１に記載の転写箔。
【請求項３】
請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写した事を特徴とする偽造防止媒体。
【請求項１】
ホログラムまたは回折構造物（以下、回折構造物を含めてホログラムと称する）層を有し、再生光照射方向とホログラム層の位置関係に対応した再生物体像と立体的影像とが同時に再生でき、且つ、再生光照射方向の変化に対応して、前記立体的影像のみが変化する事を特徴とする転写箔。
【請求項２】
前記再生物体像と立体的影像を再生するホログラム層が、２層以上の複層にて設けられている請求項１に記載の転写箔。
【請求項３】
請求項１または２に記載の転写箔を媒体に転写した事を特徴とする偽造防止媒体。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００９−１２８４７４（Ｐ２００９−１２８４７４Ａ）
【公開日】平成２１年６月１１日（２００９．６．１１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−３０１３８９（Ｐ２００７−３０１３８９）
【出願日】平成１９年１１月２１日（２００７．１１．２１）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年６月１１日（２００９．６．１１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１１月２１日（２００７．１１．２１）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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