説明

転写紙

【課題】転写後の色落ちを感じにくい転写紙。
【解決手段】転写紙(1)は、ベースシート(2)の片面にラメ入りカバー層(3)を積層し、ラメ入りカバー層(3)の上に第2層(4b)と第1層(4a)とからなる接着剤含有インク受容層(4)を積層してなる。カチオン化剤(質量)/ホットメルトパウダー(質量)は、第1層(4a)の方が第2層(4b)よりも大きい。
転写すると、印刷面(接着剤含有インク受容層(4))が衣類側になり、その上をラメ入りカバー層(3)で被覆した構造になる。ラメ入りカバー層(3)がインクを保護するので洗濯による色落ちを抑制できる。また、ラメ剤による反射光は、画像(インクの色)を鮮明に感じさせるので、多少の色落ちがあっても、これをラメ剤の反射光が補って色落ちを実感させない。これにより、転写画像の実用上での長寿命化が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写紙の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
転写紙は、表面に画像を印刷し、その印刷した面を衣類などの被転写体に押し当ててアイロン等で加熱することで、画像を被転写体へ熱転写するために使用される。このため、熱転写紙、熱転写シート等とも呼ばれる。
【0003】
転写された衣類などは洗濯を繰り返されるのが普通であるが、洗濯による色落ちという問題がある。特に、インクジェット式で印刷すると色落ちする傾向が大きかった。このため、耐洗濯性を高めるために各種の提案がなされている。例えば特開2000−168250号公報には、インク受容層を少なくとも熱硬化性樹脂とホットメルト接着性樹脂とで構成して、耐洗濯性を高める技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−168250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のインク受容層を採用しても洗濯の繰り返しによる色落ちを完全に防止することはできないし、インク自体が紫外線などで劣化することもあった。
本発明は、従来の手法では防ぎきれない色落ちや劣化に対して、従来とは異なる手法での対策技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の転写紙(1)は、図1に示すとおり、ベースシート(2)の片面にラメ入りカバー層(3)を積層し、該ラメ入りカバー層(3)の上に接着剤含有インク受容層(4)を積層してなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ベースシート(2)は、公知の転写紙と同様に離型処理紙又は合成樹脂フィルムを使用する。ベースシート(2)として使用する合成樹脂フィルムは、転写時の加熱に十分耐えうる耐熱性を有するものであればよいが、機械的強度、耐熱性、作業性などの点からPETフィルム(厚みは30μm〜300μm)が好ましい。なお、合成樹脂フィルムの表面を離型処理してもよい。
【0007】
ラメ入りカバー層(3)は、透明な合成樹脂中にラメ剤を分散させた透明フィルムを用いる。なお、「透明」とは可視光の透過度が100%のことを言うわけではなく、ここでは可視光の透過度が50%以上のことをいう(以下同様)。
【0008】
一般的なラメ剤は、異なった2種類以上の合成樹脂の薄膜を多層に積層した構造の薄片であり、薄膜の界面における光の反射により発色するので、合成樹脂の薄膜それ自体は透明である。このラメ剤の反射光の色は観察者が見る角度や光の入射、屈折等の加減で様々に変化する。市販品としては、堀金箔粉(株)のニューレインボー、ダイヤ工業(株)のクリスタルレインボー等がある。
【0009】
また、合成樹脂のフィルムに蒸着やめっきにて金属を付着させた構造のラメ剤もあり、金属粉をラメ剤として用いることもあり、本発明にてもこれらを使用できる。但し、これらのラメ剤は不透明であるので、上記の透明なラメ剤と比べればラメ入りカバー層(3)の可視光の透過度が低下する。
【0010】
ラメ入りカバー層(3)中でラメ剤が占める割合が小さ過ぎてはラメ感が乏しくなり、大き過ぎると画像の鮮明さを損なう(画像感が乏しくなる)おそれがある。また、著しく大きいと転写加工時の剥離性が低下して転写機能が損なわれる。こうしたことから、ラメ入りカバー層(3)中でラメ剤が4〜10重量%を占める配合比が好ましい。
【0011】
なお、不透明なラメ剤を用いる場合には、ラメ入りカバー層(3)の透明性を確保するために、上記範囲内でも少なめの(4重量%に近い)配合比にするのが好ましい。
ラメ剤が分散される合成樹脂は、透明という条件以外に特段の制限はないが、熱架橋タイプのウレタン樹脂が適している。
【0012】
ラメ入りカバー層(3)は、熱架橋タイプのウレタン樹脂エマルジョン(市販品として大日精化(株)のセイカプレンUD710、林化学工業(株)のバインダーCB802U、同CL109がある。)、消泡剤、可塑剤(例えばエチレングリコール)、ラメ剤、水からなる組成物をベースシート(2)上に塗着してから、ウレタン樹脂を架橋反応させることで形成される。ラメ入りカバー層(3)の厚みは、10〜15μmが好ましく、12〜15μmがより好ましい。
【0013】
ラメ入りカバー層(3)の上に積層される接着剤含有インク受容層(4)は、インクジェット式のカラープリンタ(又はコピー機)用のインクを定着させる目的(インク受容層)と、被転写体(衣類など)の表面に接着させる目的(接着剤含有〜層)とで設けてあり、透明な合成樹脂中にカチオン化剤とホットメルトパウダーとを添加して構成される。
【0014】
接着剤含有インク受容層(4)にカチオン化剤を添加するのは、上記インクの定着性を良好にするためである。カチオン化剤は公知のものを使用できるが、カチオン化剤の種類や配合量によってインクの定着性が大きく左右されることがあるので、実験などを行って選択するとよい。なお、推奨される市販品としては、センカ(株)のHP−207A、HP−230A、HP−260Aや出光ファインケミカル(株)のカチオン化剤がある。
【0015】
一方、ホットメルトパウダーは転写時に接着剤として機能する。このホットメルトパウダーは公知のものを使用すればよい。但し、家庭用アイロンは160℃〜180℃の温度範囲で使用されるのが普通であるから、この温度で溶融するホットメルトパウダーが望ましい。
【0016】
接着剤含有インク受容層(4)は、熱架橋タイプのアクリル樹脂エマルジョン(市販品として大日精化(株)のセイカプレン#300、林化学工業(株)のバインダーCB101hがある。)、消泡剤(例えば共栄社化学(株)のアクアレン3062、サンノプコの777)、カチオン化剤、ホットメルトパウダー、分散剤(例えば共栄社化学(株)のフローレンG 700AMP)、水からなる組成物をラメ入りカバー層(3)の上に塗着してから、アクリル樹脂を架橋反応させることで形成される。なお、分散剤は、ホットメルトパウダーが疎水性であるため二次凝集対策、沈降分離対策として添加している。
【0017】
ところで、ホットメルトパウダーの配合比を大きくすれば転写時の接着力が強くなるがインクの定着性が損なわれる傾向がある。つまり、インクの定着性を優先するならカチオン化剤を多めに、転写時の接着力を優先するならホットメルトパウダー多めにするとよいことになる。
【0018】
しかし、インクの定着性も転写時の接着力も重要であるから、請求項2に記載のように、接着剤含有インク受容層(4)を表層となる第1層(4a)とラメ入りカバー層(3)側になる第2層(4b)との2層で構成し、一方をインクの定着性を優先する層、他方を転写時の接着力を優先する層にすれば、定着性と接着力とを両立できる。
【0019】
より具体的には、請求項3に記載のように、接着剤含有インク受容層(4)は、アクリル樹脂中に少なくともカチオン化剤とホットメルトパウダーとを添加してなり、カチオン化剤(質量)/ホットメルトパウダー(質量)で表されるカチオン化剤とホットメルトパウダーの配合比を第1層(4a)の方が第2層(4b)よりも大きくすればよい。こうすれば、表面部分(第1層(4a))はインクの定着性に優れたものになり、転写時には第1層(4a)と第2層(4b)に含まれたホットメルトパウダーにより強力な接着効果が得られる。
【0020】
また、第1層(4a)においては、ホットメルトパウダーの添加割合が小さいと接着力が弱くなり、堅牢性が低下して洗濯によって脱落するおそれがある。一方、ホットメルトパウダーの添加割合が大きいと印刷された画像がぼけたり滲んだりするおそれがある。
【0021】
第2層(4b)においては、ホットメルトパウダーの添加割合が小さいと、第1層(4a)と同様に、接着力が弱くなり堅牢性が低下して洗濯によって脱落するおそれがある。一方、ホットメルトパウダーの添加割合を大きくすれば堅牢性は向上するが、硬くなって風合いが損なわれ、また伸縮性が低下するために転写面が割れるおそれがある。
【0022】
上記のことから、ホットメルトパウダーの添加割合は、第1層(4a)については、該層中でホットメルトパウダーが13〜15重量%を占める配合比が好ましく、第2層(4b)については、該層中でホットメルトパウダーが15〜20重量%を占める配合比が好ましい。なお、第1層(4a)、第2層(4b)ともに、ホットメルトパウダーの配合比を13〜15重量%としてもよい。
【0023】
接着剤含有インク受容層(4)の厚みは、第1層(4a)、第2層(4b)とも5〜25μm、全体として10〜50μm程度が好ましい。これは、第1層(4a)、第2層(4b)とも厚みが5μmを下回ると強度が不足するおそれがあり、一方25μmを上回ると硬くなって風合いが損なわれるおそれがあることによる。そうしたことから、第1層(4a)、第2層(4b)とも厚みを12〜15μmとするのが好ましい。
【0024】
本発明の転写紙(1)を用いて衣類などに転写するには、まずインクジェット式プリンタにて第1層(4a)に画像を印刷する。言うまでもないが、画像は逆像とされる。接着剤含有インク受容層(4)が上記のように構成されているため、インクの定着性に優れており、鮮明に印刷できる。
【0025】
印刷後、インクの乾燥を待つ。通常は、室温で60分程度で十分である。
次に、図2に示すように、Tシャツ、トレーナー等の衣類(被転写体)の表面に転写紙(1)の印刷面すなわち第1層(4a)を対面させて、転写紙(1)を被転写体に重ね合わせる。そして、ベースシート(2)に家庭用アイロン(160℃〜180℃)を押し当てて、加熱する。これにより、接着剤含有インク受容層(4)のホットメルトパウダーが溶融して、接着剤含有インク受容層(4)すなわち転写紙(1)を被転写体に接着する。
【0026】
アイロンを外すと短時間のうちに溶融していた接着剤(ホットメルトパウダー)が固化するから、そこでベースシート(2)を引き剥がす。これにより、接着剤含有インク受容層(4)と、その上のラメ入りカバー層(3)とが被転写体に接着したまま残留し、転写が完了する。
【0027】
本発明の転写紙(1)を用いて衣類などに転写すると、印刷面(接着剤含有インク受容層(4))が衣類側になり、その上をラメ入りカバー層(3)で被覆した構造になる。つまり、ラメ入りカバー層(3)がインクを保護するので、洗濯による色落ちを抑制できる。
【0028】
また、ラメ剤による反射光は、見る角度に応じて色が変化して印刷された画像の美観を向上させるが、それのみではなく、画像(インクの色)を鮮明に感じさせる効果がある。このため、多少の色落ちがあっても、これをラメ剤の反射光が補って色落ちを実感させない。これにより、転写画像の実用上での長寿命化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の転写紙の層構造を説明するための模式図。
【図2】転写紙の使用説明図。
【符号の説明】
【0030】
1・・・転写紙、2・・・ベースシート、3・・・ラメ入りカバー層、4・・・接着剤含有インク受容層、4a・・・第1層、4b・・・第2層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートの片面にラメ入りカバー層を積層し、該ラメ入りカバー層の上に接着剤含有インク受容層を積層してなる転写紙。
【請求項2】
前記接着剤含有インク受容層は、表層となる第1層と、前記ラメ入りカバー層側になる第2層との2層で構成される
ことを特徴とする請求項1記載の転写紙。
【請求項3】
接着剤含有インク受容層は、アクリル樹脂中に少なくともカチオン化剤とホットメルトパウダーとを添加してなるが、
カチオン化剤(質量)/ホットメルトパウダー(質量)で表されるカチオン化剤とホットメルトパウダーの配合比は、第1層の方が第2層よりも大きい
ことを特徴とする請求項2記載の転写紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−23242(P2009−23242A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189424(P2007−189424)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(591225051)マルワ工業株式会社 (3)
【出願人】(598019381)サンワ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】