説明

転流活性の評価方法、植物における転流能力の評価方法及び転流促進物質のスクリーニング方法

【課題】植物における転流能を評価する際に有効なマーカー遺伝子、また当該マーカー遺伝子を利用した転流の解析を可能とする評価方法の提供。
【解決手段】評価対象の植物組織又は部位における、特定な配列からなる塩基配列を含む遺伝子の発現量を測定する工程と、測定した発現量に基づいて上記植物組織又は部位における転流能力を評価する工程とを含む評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物内における栄養素や代謝産物等の移動すなわち転流について、植物組織又は部位における転流活性の評価方法、植物における転流能力の評価方法及び転流促進物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物学における転流とは、植物体内で吸収された栄養素、光合成産物及びこれらの代謝産物が組織や器官等の特定の部位から他の部位へ移動することと定義される。植物におけるショ糖合成に関与する遺伝子や、糖成分の輸送に関与する遺伝子は特定されており、また、糖の転流促進についてもショ糖合成能力を向上させるといった観点から研究が進められている。しかし、転流のメカニズムは未だ解明されておらず、転流能力を向上させる技術開発に有効な知見は得られていないのが現状である。
【0003】
近年、[18F]FDG(2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-D-グルコース)をソルガムに取り込ませ、平面型ポジトロンイメージングシステム(planar positron imaging system:PPIS)を利用して葉の先端から[18F]FDGの移動をモニターすることで、葉で合成された糖類又はその代謝産物がシュート基部等に多く転流し、根、分枝及び若い葉に転流していくことが示された(非特許文献1:Planta (2008) 227:1181-1186)。
【0004】
また、光合成産物の輸送形態であるショ糖は、ショ糖リン酸合成酵素及びショ糖リン酸フォスファターゼにより触媒される2つの反応を経てUDPG(ウリジンジフォスフォグルコース)とF6P(フルクトース-6-リン酸)から合成される。ショ糖リン酸合成酵素については、その発現量を強化することでイネにおけるショ糖合成能を向上させたこと(特許文献1:特開平09−248084号公報)、またその発現を制御することで植物の草丈を制御できること(特許文献2:特開2000−262283号公報)が知られている。また、メチオニン及び/又はトリプトファンを含有する資材を散布することにより、ショ糖リン酸合成酵素の活性を向上させ、等の転流を促進させることが知られている(特許文献3:特開2005−15434号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−248084号公報
【特許文献2】特開2000−262283号公報
【特許文献3】特開2005−15434号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Planta (2008) 227:1181-1186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、植物における転流を可視化する技術、植物におけるショ糖合成やその輸送に関与する遺伝子は知られているものの、転流のメカニズムは未解明であり、例えば植物における転流能力を評価する際に有効なマーカー遺伝子、また当該マーカー遺伝子を利用した転流の解析ができないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等は、上述した目的を達成するため、鋭意検討した結果、転流にとって重要な部位において高発現する複数の遺伝子を特定することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を包含する。
【0009】
(1)評価対象の植物組織又は部位における、配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、測定した発現量に基づいて上記植物組織又は部位における転流活性を評価する工程とを含む、転流活性の評価方法。
【0010】
(2)上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を、特定の植物における複数の植物組織又は部位について測定し、測定した発現量が高い植物組織又は部位を相対的に高い転流能力を有する植物組織又は部位であると評価することを特徴とする(1)記載の転流活性の評価方法。
【0011】
(3)評価対象の植物の転流活性が高い植物組織又は部位における配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、測定した発現量に基づいて上記評価対象の植物における転流能力を評価する工程とを含む、植物における転流能力の評価方法。
【0012】
(4)上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を複数の植物品種について測定し、測定した発現量が高い植物品種を、相対的に高い転流能力を有する植物品種であると評価することを特徴とする(3)記載の植物における転流能力の評価方法。
【0013】
(5)供試物質を植物に作用させた後、当該植物の転流活性が高い植物組織又は部位における配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、上記供試物質を作用させる前の上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を前工程で測定した発現量と比較し、前工程で測定した発現量が上記供試物質を作用させる前の上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量と比較して増加した場合には、上記供試物質を転流促進活性を有する物質と判定する工程とを含む、転流促進物質のスクリーニング方法。
【0014】
なお、本発明において上記転流活性が高い部位はシュート基部とすることが好ましい。また、本発明において、上記植物は単子葉植物特にイネ科植物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、植物における転流能力や転流にとって重要な部位等を評価する手法及び転流促進物質を効率良くスクリーニングする手法を提供することができる。本発明に係る転流能力の評価方法を適用することによって、転流能力の高い品種を選抜することがき、また、転流能力の制御技術を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−1】配列番号1に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図1−2】配列番号1に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図2−1】配列番号2に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図2−2】配列番号2に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図3−1】配列番号3に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図3−2】配列番号3に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図4】配列番号4に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図5】配列番号5に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図6−1】配列番号6に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図6−2】配列番号6に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図7−1】配列番号7に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図7−2】配列番号7に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図8−1】配列番号8に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【図8−2】配列番号8に示す塩基配列についてBLAST検索を行った結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
植物における転流に関与する遺伝子としては、配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。特に、配列番号1〜6に示す塩基配列を有する6種類の遺伝子は、転流に重要な部位である(Planta (2008) 227:1181-1186参照)植物のシュート基部において特異的に高発現している遺伝子である。また、配列番号7〜9に示す塩基配列を有する遺伝子は、特に高糖種の植物におけるシュート基部において特異的に高発現している遺伝子である。なお、以下の説明において、これら遺伝子を「転流関連遺伝子」と称する。
【0018】
本発明において「転流関連遺伝子」としては、上述した配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列を有する遺伝子に限定されず、これら配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列を有する遺伝子に対する相同遺伝子を含む意味である。ここで、相同遺伝子とは、一般的に、共通の祖先遺伝子から進化分岐した遺伝子を意味しており、2種類の種の相同遺伝子(オルソログ(ortholog))及び同一種内で重複分岐により生じた相同遺伝子(パラログ(paralog))を含む意味である。
【0019】
また、配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列を有する遺伝子に対する相同遺伝子としては、配列番号1〜9いずれか1の塩基配列に対して、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上の同一性を有する塩基配列を含む遺伝子であってもよい。ここで、同一性とは、blastアルゴリズムを実装したコンピュータプログラム及び遺伝子配列情報を格納したデータベースを用いてデフォルトの設定で求められる値を意味する。
【0020】
さらに、配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列を有する遺伝子に対する相同遺伝子としては、配列番号1〜9のいずれか1に示された塩基配列に対する相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部又は連続する一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子を挙げられる。ここで、ストリンジェントな条件下とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、45℃、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーション、その後の50〜65℃、0.2〜1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が挙げられ、或いはそのような条件として、65〜70℃、1×SSCでのハイブリダイゼーション、その後の65〜70℃、0.3×SSCでの洗浄を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
【0021】
これら転流関連遺伝子は、植物における転流活性が比較的に高い部位において高発現している遺伝子である。ここで、転流活性が高いとは、糖又はその代謝産物の移動が顕著に観察されるとともにこれら糖又はその代謝産物が高濃度に存在することを意味する(Planta (2008) 227:1181-1186参照)。
【0022】
これら転流関連遺伝子の発現量を調べることで、植物器官における転流活性の高い部位を検出することができ、また、種々の植物品種のなかから転流能力の高い品種を選抜することができ、さらに、転流を促進する物質をスクリーニングすることができる。転流関連遺伝子の発現量を測定する対象の植物としては、特に限定されず、例えば、双子葉植物、単子葉植物、例えばアブラナ科、イネ科、ナス科、マメ科、ヤナギ科等に属する植物(下記参照)が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。特に、対象の植物としては、イネ科を含む単子葉植物とすることが好ましい。さらに、対象の植物としては、イネ科に属する植物とすることがより好ましい。イネ科としては、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、コムギ(Triticum aestivum)、タケ(Phyllostachys)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ネピアグラス(Pennisetum pupureum)、エリアンサス(Erianthus ravenae)、ミスキャンタス(ススキ)(Miscanthus virgatum)、ソルガム(Sorghum)、スイッチグラス(Panicum)などを挙げることができる。なかでも、ソルガム(Sorghum)に属する植物における、転流関連遺伝子の発現量を測定し、当該植物における転流能力を評価することが好ましい。なお、イネ科以外の植物を以下に例示する。
【0023】
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica rapa、Brassica napus、Brassica campestris)、キャベツ(Brassica oleraceavar. capitata)、ハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var. chinensis)、カブ(Brassica rapa var. rapa)、ノザワナ(Brassica rapa var. hakabura)、ミズナ(Brassica rapa var. lancinifolia)、コマツナ(Brassica rapa var. peruviridis)、パクチョイ(Brassica rapa var. chinensis)、ダイコン(Raphanus sativus)、ワサビ(Wasabia japonica)など。
【0024】
ナス科:タバコ(Nicotiana tabacum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solaneum tuberosum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、トウガラシ(Capsicum annuum)、ペチュニア(Petunia)など。
マメ科:ダイズ(Glycine max)、エンドウ(Pisum sativum)、ソラマメ(Vicia faba)、フジ(Wisteria floribunda)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、アズキ(Vigna angularis)、アカシア(Acacia)など。
キク科:キク(Chrysanthemum morifolium)、ヒマワリ(Helianthus annuus)など。
ヤシ科:アブラヤシ(Elaeis guineensis、Elaeis oleifera)、ココヤシ(Cocos nucifera)、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)、ロウヤシ(Copernicia)など。
ウルシ科:ハゼノキ(Rhus succedanea)、カシューナットノキ(Anacardium occidentale)、ウルシ(Toxicodendron vernicifluum)、マンゴー(Mangifera indica)、ピスタチオ(Pistacia vera)など。
ウリ科:カボチャ(Cucurbita maxima、Cucurbita moschata、Cucurbita pepo)、キュウリ(Cucumis sativus)、カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)、ヒョウタン(Lagenaria siceraria var. gourda)など。
バラ科:アーモンド(Amygdalus communis)、バラ(Rosa)、イチゴ(Fragaria)、サクラ(Prunus)、リンゴ(Malus pumila var. domestica)など。
ナデシコ科:カーネーション(Dianthus caryophyllus)など。
ヤナギ科:ポプラ(Populus trichocarpa、Populus nigra、Populus tremula) など。
ユリ科:チューリップ(Tulipa)、ユリ(Lilium)など。
【0025】
上記で列挙したような植物における転流活性の高い部位や植物組織を検出するには、転流関連遺伝子の発現量を部位毎又は植物組織毎に測定して比較する。転流関連遺伝子の発現量が比較的に高い部位又は植物組織は、転流活性が高いと評価することができる。すなわち、植物における転流活性が高い部位又は植物組織を転流関連遺伝子の発現量に基づいて検出することができる。このように、転流活性の高い部位又は植物組織(転流キーステーション)を特定することができれば、当該部位又は植物組織に対して積極的に転流促進剤を作用させることで、より効果的に転流促進効果を達成することができる。
【0026】
また、転流活性の高い部位又は植物組織を特定することができれば、当該部位又は植物組織に対して部位特異的に遺伝子改変を行うことで、当該部位又は植物組織に特異的に転流活性等を向上させることができる。例えば、転流活性の高い部位としてシュート基部を特定したとする。この場合、シュート基部特異的に発現誘導するプロモーターの制御下に位置するように、転流に関連する遺伝子や糖代謝に関連する遺伝子を導入した形質転換植物を作製する。これにより、得られた形質転換植物は、転流活性の高いシュート基部において導入遺伝子を高発現することとなり、シュート基部における転流活性の更なる向上や糖代謝効率の向上を達成することができる。
【0027】
一方、上記で列挙したような植物における、種々の品種のなかから転流活性の高い品種を選抜するには、転流関連遺伝子の発現量を比較する複数の品種毎に測定して比較する。転流関連遺伝子の発現量が高い品種は、比較的に転流能力の高い品種であること評価することができる。ここで、転流関連遺伝子の発現量は、植物全体において測定してもよいが、転流活性が高い部位が特定されている場合には当該部位(例えば、シュート基部)について測定して比較することが好ましい。また、転流関連遺伝子の発現量は、発芽直後のシュート基部において測定して比較してもよい。この場合、植物の生育段階における早い時期に、当該植物の転流能力を評価できる。
【0028】
このように、転流関連遺伝子の発現量に基づいて、転流能力の高い植物品種を選抜することができる。すなわち、植物の品種改良技術(選抜技術細胞融合技術、交配技術、変異技術、倍数体形成技術及び遺伝子操作技術を含む)において、転流能力の高い品種若しくは低い品種をより効率的に選抜することができる。
【0029】
一方、上記で列挙したような植物に対して転流を調節する物質をスクリーニングするには、供試物質を作用させる前後における転流関連遺伝子の発現量を測定して比較する。供試物質を作用させる前よりも作用させた後において、転流関連遺伝子の発現量が有意に増加していた場合には、当該物質を、転流促進作用を有する物質としてスクリーニングすることができる。逆に、供試物質を作用させる前よりも作用させた後において、転流関連遺伝子の発現量が有意に低下していた場合には、当該物質を、転流抑制作用を有する物質としてスクリーニングすることができる。また、転流関連遺伝子の発現量の増加量若しくは低下量を定量的に比較することで、転流促進作用若しくは転流抑制作用の強弱を定量的に比較することもできる。ここで、供試物質としては、何ら限定されず、例えば低分子化合物、タンパク質等の高分子化合物のいずれであっても良い。また、供試物質は、植物全体に作用させても良いし、転流活性が高い部位が特定されている場合には当該部位(例えば、シュート基部)に作用させても良い。
【0030】
ところで、植物における転流関連遺伝子の発現量は、従来公知の手法を適用して測定することができる。測定方法は、何ら限定されない。例えば、転流関連遺伝子の塩基配列(配列番号1〜9)に相補的な塩基配列を有するプローブを使用する方法が挙げられる。ここで、プローブとしては、転流関連遺伝子の転写産物若しくは当該転写産物由来のcDNAに対して特異的にハイブリダイズできるよう、転流関連遺伝子の塩基配列(配列番号1〜9)に相補的な部分を少なくとも一部に有していれば良い。プローブとしては、例えば、転流関連遺伝子の塩基配列(配列番号1〜9)におけるポリA領域を除いた連続する7〜50塩基、好ましくは10〜35塩基、より好ましくは15〜30塩基に対して相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを使用することができる。なお、プローブとしては、転流関連遺伝子の塩基配列(配列番号1〜9)におけるポリA領域を除いた全領域に対して相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを使用してもよい。
【0031】
ここで、配列番号1に示した塩基配列の一部は、BLAST検索によりデータベースに登録された既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示す。既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した配列番号1の塩基配列の部分配列を配列番号10に示す。また、同様に、配列番号2に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号11に示す。配列番号3に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号12に示す。配列番号4に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号13に示す。配列番号5に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号14に示す。配列番号6に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号15に示す。配列番号7に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号16に示す。配列番号8に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と非常に高い同一性を示した部分配列を配列番号17に示す。なお配列番号9に示した塩基配列のうち、既知の遺伝子配列の一部と高い同一性を示した部分配列は検索されなかった。
【0032】
より具体的に、配列番号10に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、サトウキビハイブリッド種(Saccharum hybrid cultivar)及びトウモロコシ(Zea mays)において検出された配列である。よって、配列番号10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、サトウキビハイブリッド種及びトウモロコシにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0033】
配列番号11に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))において検出された配列である。よって、配列番号11に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、トウモロコシ及びイネにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0034】
配列番号12に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、ソルガム属植物に限らず、サトウキビハイブリッド種(Saccharum hybrid cultivar)及びトウモロコシ(Zea mays)において検出された配列である。よって、配列番号12に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、サトウキビハイブリッド種及びトウモロコシにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0035】
配列番号13に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、イネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))において検出された配列である。よって、配列番号11に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物及びイネにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0036】
配列番号14に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、メヒシバ(Digitaria ciliaris)及びトウモロコシ(Zea mays)において検出された配列である。よって、配列番号14に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、メヒシバ及びトウモロコシにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0037】
配列番号15に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))において検出された配列である。よって、配列番号15に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、トウモロコシ及びイネにおける転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0038】
配列番号16に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種))において検出された配列である。よって、配列番号16に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、トウモロコシ及びイネ(特にジャポニカ種)における転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0039】
配列番号17に示す塩基配列は、ソルガム属植物に限らず、トウモロコシ(Zea mays)、オオムギ(Hordeum vulgare)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種))において検出された配列である。よって、配列番号17に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してハイブリダイズできるプローブを使用することによって、ソルガム属植物、トウモロコシ、オオムギ及びイネ(特にジャポニカ種)における転流関連遺伝子の発現量を測定することができる。
【0040】
上述したような転流関連遺伝子を検出するためのプローブは、所謂、平板状のマイクロアレイに固定して使用しても良いし、ビーズ状の担体に固定してビーズアレイとして使用しても良い。また、植物細胞、カルス又は植物全体若しくは所定の部位における転流関連遺伝子の発現量を測定する方法としては、一例として、測定対象からトータルRNAを抽出し、蛍光ラベルを取り込ませながらcDNAを調製し、上記プローブとcDNAとのハイブリダイゼーション(洗浄を含む)を行った後、プローブにハイブリダイズしたcDNA量を蛍光ラベルの蛍光強度に基づいて測定するといった方法が挙げられる。
【0041】
ところで、後述する実施例において示すように、配列番号1〜6に示す塩基配列を有する6種類の遺伝子は、糖蓄積量の過多に依らず、若い葉と比較してシュート基部において高発現していた遺伝子である。よって、これら遺伝子は、シュート基部特異的の発現プロモーターの制御下で発現していると言える。したがって、これら遺伝子のプロモーターは、シュート基部特異的プロモーターとして利用することができる。
【0042】
また、後述する実施例において示すように、配列番号7〜8に示す塩基配列を有する3種類の遺伝子は、糖の蓄積量が高い品種(高糖種)におけるシュート基部において高発現している遺伝子である。よって、これら遺伝子の発現量に基づいて、検査対象の品種が高糖種であるか否かを判断することができる。具体的には、検査対象の品種のシュート基部を採取し、配列番号7〜8に示す塩基配列を有する3種類の遺伝子のうち少なくもと1つの遺伝子の発現量を定法に従って測定する。そして、例えば、野生種や検査対象の品種の近縁種と比較して、測定対象の品種における上記遺伝子の発現量が有意に高い場合には、当該品種を高糖種であると評価することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるもではない。
【0044】
本実施例では、ソルガム植物(学名:Sorghum bicolor (L.) Moench)における高糖種(品種名:高糖分ソルゴー)及び普通種を使用した。高糖種及び普通種をそれぞれ定法に従って生育し、生育4週目にそれぞれシュート基部及び若い葉を採取した。得られた高糖種のシュート基部及び若い葉、普通種のシュート基部及び若い葉からそれぞれRNAを精製した。なお、トータルRNAの調製は、Qiagen RNeasy Mini Kitを使用した。
【0045】
本実施例では、高糖種及び普通種におけるシュート基部で特異的に高発現していた遺伝子、すなわち、高糖種及び普通種の若い葉における発現量と比較して、高糖種及び普通種のシュート基部において非常に高い発現量を示す遺伝子を特定した。また、本実施例では、高糖種のシュート基部において特異的に高発現していた遺伝子、すなわち、高糖種及び普通種の若い葉における発現量並びに普通種のシュート基部における発現量と比較して、高糖種のシュート基部において非常に高い発現量を示す遺伝子を特定した。遺伝子の発現量解析は、詳細を以下に示すように、タカラバイオ社のMegacloneTM及びMegasortTMを利用して行った。
【0046】
[MegacloneTM]
I cDNA合成
上述したDNase I処理済みトータルRNAを用い、各20μgからRNA Transcript SureLABELTMCore Kit(タカラバイオ社)を用いて2本鎖cDNAを合成した。この際、逆転写反応のプライマーは、5’-ビオチン標識したT7-Oligo dT primerを用いた。合成されたcDNAは、それぞれ半量を蛍光標識プローブ作製用に保存した。
【0047】
II 3’末端側cDNA断片の調製
残り半量の合成cDNAをサンプル毎に超音波処理により断片化を行い、アガロースゲル電気泳動により400-600bpのサイズの断片を回収・精製した。Streptavidinマグネットビーズに3’末端側cDNA断片を吸着させて回収した後、5’末端側にAdaptorを連結した。5-メチルdCTPを含むdNTP mixtureを基質としてPCR増幅後、比較サンプルを等量混合した後、プライマー内に配置したSfa NIサイトで切断することにより400-600bpの鎖長の3’末端側cDNA 断片を調製した。なお、末端に配したSfa NIサイトは、PCRプライマー内にあるためヘミメチル化された構造となり、両メチル化されるcDNA内のサイトに比べて優先的に切断される。
【0048】
III Tagライブラリーの調製
得られた3’末端側cDNA 断片をTag vectorのTag配列の近傍に挿入後、大腸菌DH10Bを形質転換した。得られたライブラリーのタイターを算出し、タイター約100万相当の培養液からプラスミドDNAを調製した。なお、Tag vector とは、Megacloneビーズ作製用のベクターであり、32塩基からなるTag配列のいずれか1個を持つプラスミド約1700万種類の混合物である。
【0049】
IV Loadable DNA調製
TagライブラリーのプラスミドDNAを鋳型としてTag配列とcDNAを含む領域をPCRにて増幅した。この際、ビオチンで標識したプライマーを用いることにより、cDNA断片側の末端をビオチン標識した。次に、Tag配列側を制限酵素Pac Iで消化した後、dGTPを含む反応溶液中でT4 DNAポリメラーゼを作用させ、Tag配列が一本鎖化されたLoadable DNAを調製した。
【0050】
V Anti-Tagビーズへの選択的結合及びcDNAのビーズ表面への固定
Loadable DNAとAnti-Tagビーズを混合し、Tag配列とAnti-Tag配列をハイブリダイゼーションにより特異的に結合させた。洗浄後、T4 DNA Ligaseを作用させて、cDNAとビーズとの間に共有結合を形成させた。
【0051】
VI ビーズの精製とcDNA断片の一本鎖化
cDNAが結合したビーズをStreptavidinマグネットビーズに吸着させて精製した後、制限酵素Spe Iで切断してマグネットビーズから分離回収した。アルカリ溶液で処理することにより表面のcDNAを一本鎖化した。
【0052】
[MegasortTM]
I プローブの調製
上記[MegacloneTM]のIで調製した各トータル RNA由来cDNAを鋳型とし、Fluorescein-UTP又はCy5-UTPを添加して、T7 RNA polymeraseによるin vitro transcriptionを行い、蛍光標識RNAプローブを作製した。
【0053】
II ゲート設定用解析
Megacloneビーズ約400,000個をプレハイブリダイゼーションの後、各サンプル由来のFluorescein標識プローブとCy5標識プローブ及びcompetitive oligo(ポリA配列とアダプター配列をブロックするためのオリゴDNA)を加えて、1晩ハイブリダイゼーションを行った。コントロール実験として、Megacloneビーズ約40,000個を用い、2サンプルのcDNA等量混合物から調製したFluorescein標識及びCy5標識プローブを用いて、同じ条件でハイブリダイゼーションを行い、その後、SDSを含む0.1x SSC溶液で十分洗浄した。
【0054】
ハイブリダイゼーション済みMegacloneビーズの一部を、セルソーター(MoFlo, Dako社)で解析した。解析に用いた各プロットは、各種パラメータを利用して、ビーズのみのシグナルがプロットされるように設定した。
【0055】
III ソート
高糖種の若い葉由来のトータルRNAにおける発現量と比較して、高糖種のシュート基部において非常に高い発現量を示す遺伝子、普通種の若い葉由来のトータルRNAにおける発現量と比較して、普通種のシュート基部において非常に高い発現量を示す遺伝子に関するビーズをセルソーターによりソートした。
【0056】
IV PCR
ソートにより分取したMegacloneビーズは、約200個を1単位(鋳型)としてPCRを行い、Megacloneビーズに固定化されたcDNAを回収した。まず、分取したMegacloneビーズをゲートごとに約200個ずつとなるように96ウェルプレートに分注した。これらを鋳型に制限酵素Sfa NIサイトを付加したユニバーサルプライマーと5メチルdCTPを含むdNTP mixtureを用いてPCRを行った。反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析し、DNAの増幅を確認した。
【0057】
[シーケンス解析]
I クローニング・シーケンシング
Megasortで得られたPCR産物をプラスミドベクターにクローニングした後、96ウェルプレート2枚ずつのワンパスシーケンスを行った。
【0058】
PCR産物の一部をゲルろ過スピンカラムで精製した後、制限酵素Sfa NIによって消化した。得られたSfa NI断片を、pUC19を改変して作製したプラスミドベクターpMSL1のクローニングサイトにライゲーション後、大腸菌DH10Bを形質転換し、アンピシリンを含む寒天培地に播種し37℃で終夜培養して、生育するコロニーを得た。
【0059】
各PCR産物由来の形質転換体から、それぞれ192個のコロニーを選択してLB培地(96 ウェルプレート)に植菌し、37℃で終夜振盪培養した。培養菌体からシーケンス鋳型を調製し、3730 DNA Analyzer(ABI社)にてワンパスDNAシーケンシングを行った。
【0060】
シーケンスデータはシーケンサー付属のベースコーラを用いて配列データに変換し、そこから各塩基の信頼性を示すQuality値を算出した。Quality値15以上の塩基が300個以上あるクローンを有効とした。ライゲーション液ごとの有効データ数が解析クローン数の70%以上(135個以上)を合格とした。
【0061】
II 配列解析
有効とならなかった配列も含め、ベースコールされた全ての配列(input sequence)について以下の手順で配列解析処理を行った。
【0062】
先ず、Paracel社のソフトウェアParacel Filtering Packageを用いて配列データのフィルタリングとベクターのトリミングを行った。まず、各配列の両端のベースコールされた塩基の信頼性を示すPhred値が15未満の部分をマスクし(Xで置き換え)、残った配列長が300未満となった配列データを取り除いた。
【0063】
次に、上記で除かれなかった配列についてベクター配列部分をマスクした(Xで置き換えた)。残ったインサート配列のうちpoly A及びlow complexity領域以外の長さが60bp以下しかない配列を取り除いた。
【0064】
次に、Paracel社のソフトウェアParacel Transcript AssemblerTMを用いて、上記で除かれなかった配列のクラスタリングを行った。クラスターに入らなかった配列はsingletとした。
【0065】
次に、クラスター内でアラインメントを行い、contigを作製した(アセンブリング)。クラスタリング、アセンブリングができない塩基配列(キメラ様配列、塩基の繰り返し等を含む配列等)を取り除いた。
【0066】
次にcontigのコンセンサス配列及びsinglet配列をクエリー配列として塩基配列データベースおよびアミノ酸配列データベースに対するBLASTホモロジーサーチを行った。このとき、塩基配列データベースにNCBIのnon redundant 核酸データベース(nt)を、アミノ酸配列データベースにはNCBIのnon redundant アミノ酸データベース(nr)をそれぞれ用いた。
【0067】
[結果]
高糖種及び普通種におけるシュート基部で特異的に高発現していた6種類の遺伝子を特定することができた。これら6種類の遺伝子の塩基配列(部分配列)をそれぞれ配列番号1〜6に示した。
【0068】
また、高糖種のシュート基部において特異的に高発現していた3種類の遺伝子を特定することができた。これら3種類の遺伝子の塩基配列(部分配列)をそれぞれ配列番号7〜9に示した。
【0069】
さらに、配列番号1に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図1−1及び1−2に示す。図1−1及び1−2に示すように、配列番号1に示す塩基配列の一部(配列番号10)は、ソサトウキビハイブリッド種(Saccharum hybrid cultivar)及びトウモロコシ(Zea mays)の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0070】
配列番号2に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図2−1及び2−2に示す。図2−1及び2−2に示すように、配列番号2に示す塩基配列の一部(配列番号11)は、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0071】
配列番号3に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図3−1及び3−2に示す。図3−1及び3−2に示すように、配列番号3に示す塩基配列の一部(配列番号12)は、サトウキビハイブリッド種(Saccharum hybrid cultivar)及びトウモロコシ(Zea mays)の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0072】
配列番号4に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図4に示す。図4に示すように、配列番号4に示す塩基配列の一部(配列番号13)は、イネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0073】
配列番号5に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図5に示す。図5に示すように、配列番号5に示す塩基配列の一部(配列番号14)は、メヒシバ(Digitaria ciliaris)及びトウモロコシ(Zea mays)の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0074】
配列番号6に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図6−1及び6−2に示す。図6−1及び6−2に示すように、配列番号6に示す塩基配列の一部(配列番号15)は、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種及びインディカ種))の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0075】
配列番号7に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図7−1及び7−2に示す。図7−1及び7−2に示すように、配列番号7に示す塩基配列の一部(配列番号16)は、トウモロコシ(Zea mays)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種))の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【0076】
配列番号8に示す塩基配列をクエリー配列として行ったBLAST解析の結果を、図8−1及び8−2に示す。図8−1及び8−2に示すように、配列番号8に示す塩基配列の一部(配列番号17)は、トウモロコシ(Zea mays)、オオムギ(Hordeum vulgare)及びイネ(Oryza sativa (ジャポニカ種))の遺伝子と非常に高い同一性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明を適用することによって、植物における転流能力を評価することがきできる。本発明を適用することで、例えば、植物器官における転流活性の高い部位を検出することができ、また、種々の植物品種のなかから転流活性の高い品種を選抜することができ、さらに、転流を促進する物質をスクリーニングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の植物組織又は部位における、配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、
測定した発現量に基づいて上記植物組織又は部位における転流活性を評価する工程とを含む、転流活性の評価方法。
【請求項2】
上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を、特定の植物における複数の植物組織又は部位について測定し、測定した発現量が高い植物組織又は部位を相対的に高い転流能力を有する植物組織又は部位であると評価することを特徴とする請求項1記載の転流活性の評価方法。
【請求項3】
上記評価対象の植物組織又は部位は、単子葉植物由来であることを特徴とする請求項1記載の転流活性の評価方法。
【請求項4】
上記単子葉植物はイネ科植物であることを特徴とする請求項3記載の転流活性の評価方法。
【請求項5】
評価対象の植物の転流活性が高い植物組織又は部位における配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、
測定した発現量に基づいて上記評価対象の植物における転流能力を評価する工程とを含む、植物における転流能力の評価方法。
【請求項6】
上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を複数の植物品種について測定し、測定した発現量が高い植物品種を、相対的に高い転流能力を有する植物品種であると評価することを特徴とする請求項5記載の植物における転流能力の評価方法。
【請求項7】
上記転流活性が高い部位はシュート基部であることを特徴とする請求項5記載の植物における転流能力の評価方法。
【請求項8】
上記評価対象の植物は、単子葉植物であることを特徴とする請求項5記載の植物における転流能力の評価方法。
【請求項9】
上記単子葉植物はイネ科植物であることを特徴とする請求項8記載の植物における転流能力の評価方法。
【請求項10】
供試物質を植物に作用させた後、当該植物の転流活性が高い植物組織又は部位における配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列を含む遺伝子又は当該遺伝子の相同遺伝子の発現量を測定する工程と、
上記供試物質を作用させる前の上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量を前工程で測定した発現量と比較し、前工程で測定した発現量が上記供試物質を作用させる前の上記遺伝子又は上記相同遺伝子の発現量と比較して増加した場合には、上記供試物質を転流促進活性を有する物質と判定する工程とを含む、転流促進物質のスクリーニング方法。
【請求項11】
上記転流活性が高い部位はシュート基部であることを特徴とする請求項10記載の転流促進物質のスクリーニング方法。
【請求項12】
上記植物は単子葉植物であることを特徴とする請求項10記載の転流促進物質のスクリーニング方法。
【請求項13】
上記単子葉植物はイネ科植物であることを特徴とする請求項12記載の転流促進物質のスクリーニング方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【公開番号】特開2011−50354(P2011−50354A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204485(P2009−204485)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】