説明

転炉操業方法

【課題】 転炉炉口の付着地金などに起因したトラブルや、これを防ぐための処置に伴う生産性の低下を回避しつつ、付着地金の形成を抑制する。
【解決手段】 転炉3で溶銑13を吹錬するに際し、転炉内に付着した地金の分布状態に応じて、下記(イ)及び(ロ)の2種類の上吹きランス8,9のうちの何れか一方を選定して吹錬する。 (イ)下端部に吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられ、吹錬用酸素ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個は、末広がり部の壁面に少なくとも1個の制御用ガス供給孔を有しており、該制御用ガス供給孔から制御用ガスが供給されることにより、吹錬用酸素ガス噴射ノズルから噴射される噴流の方向及び/または流速を制御することが可能な上吹きランス8。 (ロ)下端部に吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられ、且つ、外周部に地金溶解用ガス噴射ノズルが設けられている上吹きランス9。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けて、溶銑に対して酸化精錬を行う転炉操業方法に関し、詳しくは、スピッティングなどによる転炉炉口や側壁への地金の付着を抑制し、安定した転炉精錬を行うための操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上吹きランスを介して酸素ガスを上吹きする転炉精錬においては、酸素吹錬中に発生するスピッティング及びスロッピングにより飛散した溶銑、溶鋼及びスラグの一部は、転炉の炉口や炉内側壁に地金として付着する。付着した地金は操業を続けるにつれて成長し、その大きさが或る限度以上になると、溶銑及びスクラップの炉内への装入の障害になるばかりでなく、吹錬中に地金が浴内へ落下したり或いは溶融流下したりすることで、浴の成分組成や温度の変動を来たし、操業に大きな支障をもたらす。このような付着地金は適切に除去しないと、その付着地金の下側の耐火物まで損傷する危険性もある。従って、スピッティング及びスロッピングの発生を軽減して、地金の付着・成長が生じにくい操業方法を指向するとともに、一旦付着した地金は操業に支障を来す大きさになる前に除去する必要がある。
【0003】
スピッティングの発生を軽減するために、従来から上吹きランスの改善が行われており、吹錬用酸素ガス噴射ノズルの多孔化や傾斜角度の増大といった方法が採られている。例えば特許文献1には、吹錬用酸素ガス噴射ノズルとして、傾斜角度の異なる2種類のラバールノズルを円周方向に交互に配置し、それにより、これらの各ノズルから噴射されるガス噴流の重なりを抑制し、スピッティングを低減する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1を含めて従来報告されている方法では、特に酸素ガス供給流量(「送酸速度」ともいう)を増加させて吹錬時間の短縮を図ろうとした場合には、スピッティングの発生や地金付着を抑制するには至らず、依然、炉口付着地金の除去作業が必要となっている。
【0004】
炉口付着地金を除去する方法としては、スクラップシュートを炉口付着地金に衝突させ、物理的に除去するという伝統的な方法がある。しかしながら、この方法は、スクラップシュートを炉口付着地金部に直接ぶつけるので、その衝撃で炉口煉瓦の脱落を起こす危険性がある。
【0005】
また、特許文献2には、非操業中に専用の地金溶解用上吹きランスを炉口から炉内に挿入し、炉口に付着した地金を溶解・除去する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、付着地金の除去には優れるが、転炉の非吹錬時に実施しなければならないので、非製鋼時間の増大を招き、転炉生産性を著しく阻害する。そこで、転炉の生産性を阻害することがないように、吹錬中に炉内で発生する排ガスを二次燃焼させ、その熱で炉口や炉内側壁に付着した地金を溶解除去する方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、上吹きランス先端に設けた吹錬用酸素ガス噴射ノズルから吹錬用酸素ガスを溶銑に吹き付けつつ、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルから所定の間隔を隔てた上吹きランスの側面に設置した地金溶解用ガス噴射ノズルから、炉内側壁に向けて酸素ガスを噴射し、炉内付着地金を溶解・除去する方法が開示されている。しかしながら、炉内での二次燃焼を利用する方法は、二次燃焼率を制御することが困難であり、特に付着地金が少なくなった場合には、二次燃焼熱によって耐火物が損傷されやすいという難点がある。尚、本発明においては、吹錬用酸素ガスと同時に、地金溶解用ガスを噴射できる上吹きランスを「吹錬・地金溶解用上吹きランス」と称し、地金溶解用ガスのみを噴射できる上吹きランスを「地金溶解用上吹きランス」と称し、吹錬用酸素ガスのみを供給可能な上吹きランスを「吹錬用上吹きランス」と称する。
【0007】
更に、特許文献4には、吹錬用酸素ガスのみを供給可能な吹錬用上吹きランスと、吹錬用酸素ガスの供給と同時に、この吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御が可能な地金溶解用酸素ガスを供給できる吹錬・地金溶解用上吹きランスとの2種類の上吹きランスを、適宜使い分けることにより、転炉炉口や炉内側壁の耐火物を損傷させることなく、付着地金の形成を抑制する技術が開示されている。しかしながら、この方法では、吹錬・地金溶解用上吹きランス使用時での耐火物の異常損傷のリスクは低減できるものの、付着地金の原因となるスピッティングの発生を低減する対策は採られていないため、比較的短期間で上吹きランスの切り替えをしながら操業することが必要となる。また、吹錬・地金溶解用上吹きランスの外周部に設けた地金溶解用ガス噴射ノズルの位置や噴射角度は、一旦設置したら変更はできないため、地金が付着しやすい位置と、地金を溶解しやすい位置とが一致していない場合には、付着地金の溶解能率が上がらず、吹錬・地金溶解用上吹きランスの連続使用頻度が増加し、結局、耐火物の異常損傷を招くというケースも生じる。
【0008】
ところで、本発明者等は、特許文献5において、転炉を用いて溶銑の脱炭精錬または溶銑の脱燐精錬を行う際に、吹錬用酸素ガス噴射ノズルの形状、ランス高さ、酸素ガス供給流量を変更することなく、1本の上吹きランスであっても酸素ガス噴流の制御が可能で、それにより、炉内付着地金の溶解、二次燃焼増大による溶鋼着熱、並びに高速吹錬を達成することのできる上吹きランスとして、「入口部にスロート部を有し且つ前記スロート部の下流側に末広がり部を有するガス噴射ノズルを1個以上配置した上吹きランスであって、前記ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個は、当該ノズルの前記末広がり部の壁面に配置された少なくとも1箇所の制御用ガス供給孔を有し、該制御用ガス供給孔から制御用ガスを供給することにより、前記ガス噴射ノズルから噴射される噴流の方向及び/または流速が制御されることを特徴とする上吹きランス」を提案している。特許文献5によれば、制御用ガス供給孔から供給される制御用ガスにより、ガス噴射ノズルから噴射されるガス噴流の方向及び/または流速が制御されるので、このガス噴射ノズルを吹錬用酸素ガス噴射ノズルとして使用することにより、ソフトブロー及びハードブローを任意に調節できるという作用・効果が発現される。但し、特許文献5に開示される上吹きランスのみでは、付着地金を溶解することは困難である。
【特許文献1】特開平6−57320号公報
【特許文献2】特開平4−354814号公報
【特許文献3】特開平8−127812号公報
【特許文献4】特開2000−96122号公報
【特許文献5】特開2007−77489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の技術では、上吹きランスや操業方法の改善によって地金付着を完全に防止することは困難であり、一方、付着した地金を除去する技術についても問題が残っている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉内の溶銑に上吹きランスを介して酸素ガスを上吹きして溶銑の酸化精錬を行うに当たり、転炉炉口の付着地金などに起因したトラブルや、これを防ぐための処置に伴う生産性の低下を回避しつつ、付着地金の形成を高度に抑制し、しかも炉口や炉内側壁の耐火物を損傷させることもない転炉操業方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得るに至った。
【0012】
即ち、転炉の炉口及び内壁での付着地金の溶解に際し、広範囲の付着地金を、下地の耐火物を損傷することなく溶解・除去して、炉口及び炉内側壁のプロフィールを良好に保つためには、吹錬用酸素ガスのみを供給する上吹きランス(吹錬用上吹きランス)と、吹錬用酸素ガスの供給と同時に、この吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御が可能な地金溶解用ガスを供給できる上吹きランス(吹錬・地金溶解用上吹きランス)の2種類の上吹きランスを適宜使い分け、しかも、吹錬用上吹きランスを使用した吹錬で地金が付着しやすい位置と、吹錬・地金溶解用上吹きランスを使用した吹錬で地金を溶解しやすい位置とが一致するように、2種類の上吹きランスを構成し、そして組み合わせることが、極めて効果的であることを見出した。
【0013】
吹錬用酸素ガスによる炉口及び炉内側壁への地金付着量や付着位置は、吹錬用酸素ガス噴射ノズルの傾斜角度に大きく影響される。一般的には、吹錬用酸素ガス噴射ノズルの傾斜角度を小さくする(鉛直下向きに近くする)と、スピッティング粒は鉛直上向きに跳ね上がりやすくなり、炉口近傍の地金付着が増加する。一方、吹錬用酸素ガス噴射ノズルの傾斜角度を大きくする(水平方向に近くする)と、側壁炉腹に近い位置の地金が成長しやすくなる。但し、転炉の使用回数が増加するにつれて炉内耐火物が損耗して、炉内形状が変化するなどの影響により、必ずしも決まった位置の地金が成長するとは限らない。従って、炉内形状の変化などを反映しつつ、操業状況に応じて吹錬用酸素ガス噴射ノズルの傾斜角度を微調整し、地金が付着しやすい位置と溶解しやすい位置とを一致させる技術が必要となる。
【0014】
前述したように、本発明者等は、特許文献5において、流体素子の応用によりガス噴射ノズルの傾斜角度を実質的に変化させる方法を開示している。即ち、入口部にスロート部を有し、且つ前記スロート部の下流側に末広がり部を有する、所謂ラバールノズル型のガス噴射ノズルにおいて、末広がり部の壁面に制御用ガス供給孔を配置し、この制御用ガス供給孔に供給する制御用ガスの流量を変化させることにより、前記ガス噴射ノズルから噴出される噴流の噴出方向を自在に変更するという技術である。この構成のガス噴射ノズルを、吹錬用酸素ガスのみを供給する吹錬用酸素ガス噴射ノズルに適用し、制御用ガスの流量を調整することによって吹錬用酸素ガス噴射ノズルの傾斜角度を実質的に微調整すれば、地金が付着しやすい位置と溶解しやすい位置とを、一致させることができるとの知見を得た。
【0015】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る転炉操業方法は、上吹きランスから酸素ガスを供給して転炉で溶銑を吹錬するに際し、前記転炉内に付着した地金の分布状態に応じて、下記(イ)及び(ロ)の2種類の上吹きランスのうちの何れか一方を選定し、選定した上吹きランスを用いて吹錬することを特徴とするものである。
(イ)下端部に吹錬用酸素ガスを噴射する吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられた上吹きランスであって、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルは、その入口部にスロート部を有するともに、該スロート部の下流側に末広がり部を有し、且つ、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個は、前記末広がり部の壁面に少なくとも1個の制御用ガス供給孔を有しており、該制御用ガス供給孔から前記吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスが供給されることにより、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルから噴射される噴流の方向及び/または流速を制御することが可能な吹錬用上吹きランス。
(ロ)下端部に吹錬用酸素ガスを噴射する吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられ、且つ、外周部に前記吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御の可能な地金溶解用酸素含有ガス及び/またはパージガスを供給する地金溶解用ガス噴射ノズルが設けられている吹錬・地金溶解用上吹きランス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吹錬用上吹きランスの吹錬用酸素ガス噴射ノズルから噴射される酸素ガス噴流の方向を制御することができるので、転炉炉口及び転炉内壁への地金の付着を軽減することができるとともに、地金の付着位置を、吹錬・地金溶解用上吹きランスでの溶解しやすい位置に調整することができる。従って、吹錬用上吹きランスによる操業を長期間に亘って続けることができるとともに、或る程度付着地金が成長してきたならば、吹錬・地金溶解用上吹きランスに切り替えることで、付着地金を効率的に除去することができ、安定した転炉操業並びに転炉生産性の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施するために用いる転炉設備の1例の概略図である。
【0018】
図1において、外殻を鉄皮3とし、その内側を耐火物4とする転炉本体2に対して、吹錬用上吹きランス8及び吹錬・地金溶解用上吹きランス9の2種類の上吹きランスが、それぞれ炉口5を介して転炉本体2の内部に挿入可能に構成されている。吹錬用上吹きランス8は、その下端部から吹錬用酸素ガスを供給するための上吹きランスであり、一方、吹錬・地金溶解用上吹きランス9は、その下端部から吹錬用酸素ガスを供給するとともに、その外周部から、地金溶解用の酸素含有ガス或いは窒素ガスなどのパージガスを供給するための上吹きランスである。酸素含有ガスには酸素ガスが含まれる。
【0019】
また、転炉本体2には、側壁上部に出湯口6が設けられ、底部に複数の底吹き羽口7が設置されている。出湯口6は、酸素吹錬により得られた溶鋼や脱燐処理された溶銑を出湯するための排出孔であり、底吹き羽口7は、溶銑13にArガス、窒素ガスなどの攪拌用ガスを吹き込むための装置である。このようにして転炉設備1が構成されている。尚、転炉操業において、上吹きランスは厳しい熱負荷を受けるため、一般的に、補修、取替えの頻度は比較的高い。このために、現在稼動しているほとんどの転炉設備では、転炉本体一基に対して上吹きランス及びその昇降装置が二式並列で設置され、上吹きランスの交換を迅速に行えるような設備構成となっている。この観点から見ると、本発明で使用する転炉設備1の基本的な構成は特別な設備とはいえず、従って、本発明を実施する上で特別の設備改造は必要としない。
【0020】
ここで先ず、本発明で使用する吹錬・地金溶解用上吹きランス9を、図面に基づき詳細に説明する。図2は、図1に示す吹錬・地金溶解用上吹きランス9の拡大図である。
【0021】
図2に示すように、吹錬・地金溶解用上吹きランス9は、円筒状のランス本体9aと、このランス本体9aの下端に溶接などにより接続されたランスチップ9bとで構成されており、ランス本体9aは、途中まで、外管24、仕切管23、内管22、最内管21からなる同心円状の4種の鋼管、即ち四重管で構成され、先端部は、外管24、仕切管23、内管22からなる同心円状の3種の鋼管、即ち三重管で構成されており、先端部の銅製のランスチップ9bには、鉛直斜め下向き方向を向いた複数個の吹錬用酸素ガス噴射ノズル10が設置されている。それぞれの吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の中心線は、鉛直方向に対して傾斜しており、この鉛直方向に対する角度を傾斜角度と呼んでいる。また、吹錬・地金溶解用上吹きランス9の先端から所定の間隔を隔てた上方の、ランス本体9aの外周部には、斜め下向き方向に向いた地金溶解用ガス噴射ノズル11が設けられている。この地金溶解用ガス噴射ノズル11からは、地金溶解用酸素含有ガス或いはパージガスが噴射される。
【0022】
外管24と仕切管23との間隙、及び、仕切管23と内管22との間隙は、吹錬・地金溶解用上吹きランス9を冷却するための冷却水の流路となっており、吹錬・地金溶解用上吹きランス9の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は、仕切管23と内管22との間隙を通ってランスチップ9bの部位まで至り、ランスチップ9bの部位で反転して外管24と仕切管23との間隙を通って吹錬・地金溶解用上吹きランス9の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。この場合に給排水の径路を逆としてもよい。
【0023】
内管22と最内管21との間隙は、地金溶解用ガス噴射ノズル11への酸素含有ガス及び/またはパージガスの供給流路となっており、吹錬・地金溶解用上吹きランス9の上端部から内管22と最内管21との間隙に供給された酸素含有ガス及び/またはパージガスは、内管22と最内管21との間隙を通り、地金溶解用ガス噴射ノズル11から転炉本体内に噴出される。内管22と最内管21とは、最下段の地金溶解用ガス噴射ノズル11の設置位置の直下で連結され、最内管21はその位置で途絶えている。尚、ここでは、最内管21が地金溶解用ガス噴射ノズル11の直下で途絶えている例を示したが、下端が閉止されていればその位置は更に下方でもよく、設備配置上で構成が容易な構造にすればよい。また、パージガスは地金溶解操作をしない時に地金溶解用ガス噴射ノズル11が目詰まりしないように保持するためのガスであり、パージガスとしては、窒素ガス、Arガスなどを使用することができる。
【0024】
また、最内管21の内部は、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10への酸素ガスの供給流路となっており、吹錬・地金溶解用上吹きランス9の上端部から最内管21の内部に供給された酸素ガスは、最内管21の内部を通り、先端部では内管22の内部を通り、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から転炉本体内に噴出される。このように、地金溶解用酸素含有ガスの供給経路を、吹錬用酸素ガスの供給経路から独立させて制御できるようにしてある。
【0025】
この吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の拡大図を図3に示す。図3に示すように、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10は、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成された所謂ラバールノズル形式のノズルであり、縮小部分は絞り部25、拡大部分は末広がり部27、絞り部25から末広がり部27に遷移する部位である、最も狭くなった部位はスロート26と呼ばれている。ランス本体9aの内部を通ってきた酸素ガスは、絞り部25、スロート26、末広がり部27を順に通って、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の先端から噴射される。噴射されたガスは、その流量により亜音速から超音速のジェットとなる。図3中のDtはスロート径、Deは出口径であり、末広がり部27の広がり角度θoは通常10度以下である。
【0026】
尚、図3に示すラバールノズル形状の吹錬用酸素ガス噴射ノズル10では、絞り部25及び末広がり部27が円錐体であるが、ラバールノズルとしては絞り部25及び末広がり部27は円錐体である必要はなく、内径が曲線的に変化する曲面で構成してもよく、また、絞り部25はスロート26と同一の内径であるストレート状の円筒形としてもよい。絞り部25及び末広がり部27を、内径が曲線的に変化する曲面で構成する場合には、ラバールノズルとして理想的な流速分布が得られるが、ノズルの加工が極めて困難であり、一方、絞り部25をストレート状の円筒形とした場合には、理想的な流速分布とは若干解離するが、転炉吹錬での使用には全く問題とならず、且つ、ノズルの加工が極めて容易となる。本発明ではこれら全ての末広がりのノズルをラバールノズルと称する。
【0027】
また、地金溶解用ガス噴射ノズル11は、図1に示すように、ランス先端からの距離を3段階に分けて設置(3段構成)しているが、任意の段数を採ることができ、1段であろうと複数段であろうと、各々の転炉本体2の形状に沿った設計を行っていれば、本発明の効果を充分に発揮することができる。また更に、図2に示す地金溶解用ガス噴射ノズル11はストレート型ノズルであるが、使用条件に応じてラバールノズル形状としても構わない。また更に、使用条件によっては、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10を鉛直下向き方向としても構わず、地金溶解用ガス噴射ノズル11を水平方向或いは上向としても構わない。
【0028】
次ぎに、本発明で使用する吹錬用上吹きランス8を、図面に基づき詳細に説明する。図4は、図1に示す吹錬用上吹きランス8の拡大図である。尚、吹錬用上吹きランス8は、吹錬・地金溶解用上吹きランス9と類似しており、重複することもあるが説明する。
【0029】
図4に示すように、吹錬用上吹きランス8は、円筒状のランス本体8aと、このランス本体8aの下端に溶接などにより接続されたランスチップ8bとで構成されており、ランス本体8aは、外管20、仕切管19、内管18、最内管17からなる同心円状の4種の鋼管、即ち四重管で構成され、先端部の銅製のランスチップ8bには、鉛直斜め下向き方向を向いた複数個の吹錬用酸素ガス噴射ノズル10が設置されている。この吹錬用酸素ガス噴射ノズル10は、前述した図3に示すラバール形状のノズルであり、それぞれの吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の中心線は、鉛直方向に対して傾斜している。また、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10のうちの少なくとも1つの吹錬用酸素ガス噴射ノズル10には、その末広がり部27の壁面に少なくとも1個の制御用ガス供給孔12が設けられている。制御用ガス供給孔12からは、当該吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流の方向及び/または流速を制御するための制御用ガスが噴射される。この制御用ガスとしては、窒素ガスであろうと、空気であろうと、またArガスであろうと、どのような種類のガスであっても使用可能であるが、制御用ガスは、最終的には吹錬用酸素ガス噴射ノズル10で吹錬用酸素ガスと混合されて噴射されることから、酸素ガスを使用すれば精錬にも利用できるので望ましい。以下、制御用ガスとして酸素ガスを使用した例を説明する。
【0030】
外管20と仕切管19との間隙、及び、仕切管19と内管18との間隙は、吹錬用上吹きランス8を冷却するための冷却水の流路となっており、吹錬用上吹きランス8の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は、仕切管19と内管18との間隙を通ってランスチップ8bの部位まで至り、ランスチップ8bの部位で反転して外管20と仕切管19との間隙を通って吹錬用上吹きランス8の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。この場合に給排水の径路を逆としてもよい。
【0031】
内管18と最内管17との間隙は、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10への酸素ガスの供給流路となっており、吹錬用上吹きランス8の上端部から内管18と最内管17との間隙に供給された酸素ガスは、内管18と最内管17との間隙を通り、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から転炉本体内に噴出される。噴射されたガスは、その流量により亜音速から超音速のジェットとなる。
【0032】
また、最内管17の内部は、制御用ガス供給孔12への制御用ガス(ここでは酸素ガス)の供給流路となっており、吹錬用上吹きランス8の上端部から最内管17の内部に供給された制御用ガスとしての酸素ガス(以下、「制御用酸素ガス」と記す)は、最内管17の内部を通り、制御用ガス供給孔12から噴射される。このように、制御用酸素ガスの供給経路を、吹錬用酸素ガスの供給経路から独立させて制御できるようにしてある。
【0033】
制御用ガス供給孔12は、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流の方向及び/または流速を制御するための装置であり、図4に示すように、制御用ガス供給孔12からの噴射方向が、吹錬用上吹きランス8の中心から外面側に向いている場合には、吹錬用酸素ガスの流量に対する制御用酸素ガスの流量を増加させると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流は、より一層、吹錬用上吹きランス8の外周側へ偏向し、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を増加させた場合(水平方向に近くする)と同じ効果を発現する。逆に、吹錬用酸素ガスの流量に対する制御用酸素ガスの流量を減少させると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流は偏向しにくくなり、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を減少させた場合(鉛直下向きに近くする)と同じ効果を発現する。ここで、図4に示す吹錬用酸素ガス噴射ノズル10は、斜め下向き方向を向いており、このように斜め下向き方向を向くものが一般的であるが、鉛直下向き方向としても構わない。
【0034】
更に、本発明で使用する吹錬用上吹きランス8の別の形態例について、図面に基づき説明する。図5は、本発明で使用する吹錬用上吹きランスの、図4とは別の形態例の拡大図である。ここでは、上記で説明した吹錬用上吹きランス8と区別するために、別の形態例の吹錬用上吹きランスを、「吹錬用上吹きランス8A」と表示している。
【0035】
図5に示すように、吹錬用上吹きランス8Aは、円筒状のランス本体8cと、このランス本体8cの下端に溶接などにより接続されたランスチップ8dとで構成されており、ランス本体8cは、外管20、仕切管19a、仕切管19b、内管18からなる同心円状の4種の鋼管、即ち四重管で構成され、先端部の銅製のランスチップ8dには、鉛直斜め下向き方向を向いた複数個の吹錬用酸素ガス噴射ノズル10が設置されている。この吹錬用酸素ガス噴射ノズル10は、前述した図3に示すラバール形状のノズルであり、それぞれの吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の中心線は、鉛直方向に対して傾斜している。
【0036】
また、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10のうちの少なくとも1つの吹錬用酸素ガス噴射ノズル10には、その末広がり部27の壁面に、少なくとも1個の制御用ガス供給孔12が設けられている。制御用ガス供給孔12からは、当該吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流の方向及び/または流速を制御するための制御用ガスが噴射される。この制御用ガスの種類としては、図4の場合と同様に、窒素ガスであろうと、空気であろうと、またArガスであろうと、どのような種類のガスであっても使用可能であるが、制御用ガスは、最終的には吹錬用酸素ガス噴射ノズル10で吹錬用酸素ガスと混合され、噴射されることから、酸素ガスを使用すれば精錬にも利用できるので望ましい。以下、制御用ガスとして酸素ガスを使用した例を説明する。
【0037】
外管20と仕切管19aとの間隙、及び、仕切管19bと内管18との間隙は、吹錬用上吹きランス8Aを冷却するための冷却水の流路となっており、吹錬用上吹きランス8Aの上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は、仕切管19bと内管18との間隙を通ってランスチップ8dの部位まで至り、ランスチップ8dの部位で反転して外管20と仕切管19aとの間隙を通って吹錬用上吹きランス8Aの上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。この場合に給排水の径路を逆としてもよい。
【0038】
内管18の内部は、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10への酸素ガスの供給流路となっており、吹錬用上吹きランス8Aの上端部から内管18の内部に供給された酸素ガスは、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から転炉本体内に噴射される。また、仕切管19aと仕切管19bの間隙は、制御用ガス供給孔12への制御用酸素ガスの供給流路となっており、吹錬用上吹きランス8Aの上端部から仕切管19aと仕切管19bの間隙に供給された制御用酸素ガスは、制御用ガス供給孔12から噴射される。このように、制御用酸素ガスの供給経路を、吹錬用酸素ガスの供給経路から独立させて制御できるようにしてある。
【0039】
制御用ガス供給孔12は、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流の方向及び/または流速を制御するための装置であり、図5に示すように、制御用ガス供給孔12からの噴射方向が、吹錬用上吹きランス8Aの外面側から中心に向いている場合には、吹錬用酸素ガスの流量に対する制御用酸素ガスの流量を増加させると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流は、より一層、吹錬用上吹きランス8Aの中心軸側へ偏向し、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を減少させた場合(鉛直下向きに近くする)と同じ効果を発現する。逆に、吹錬用酸素ガスの流量に対する制御用酸素ガスの流量を減少させると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10から噴射される噴流は偏向しにくくなり、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を増加させた場合(水平方向に近くする)と同じ効果を発現する。ここで、図5に示す吹錬用酸素ガス噴射ノズル10は、斜め下向き方向を向いており、このように斜め下向き方向を向くものが一般的であるが、鉛直下向き方向としても構わない。
【0040】
尚、上記2種類の吹錬用上吹きランス8,8A及び吹錬・地金溶解用上吹きランス9にガスを供給するバルブスタンドなどの設備は、双方の上吹きランスに共通の仕様となっている。即ち、バルブスタンドには、高流量系のラインと低流量系のラインとの2種類のラインを設けておき、吹錬用上吹きランス8,8Aへの吹錬用酸素ガス及び吹錬・地金溶解用上吹きランス9への吹錬用酸素ガスは、高流量系のラインから供給され、吹錬用上吹きランス8,8Aへの制御用酸素ガス及び吹錬・地金溶解用上吹きランス9への地金溶解用酸素含有ガスは、低流量系のラインから供給される。
【0041】
上記2種類の吹錬用上吹きランス8,8A、及び、吹錬・地金溶解用上吹きランス9を用いた操業の形態について、以下にその概要を説明する。
【0042】
転炉本体2の炉修後の立ち上げ時には、炉内及び炉口5に付着地金は存在しないので、吹錬用上吹きランス8または吹錬用上吹きランス8Aを使用して、地金溶解操作を意図しない吹錬を1チャージ以上実施する。この際、制御用酸素ガスの流量は、予め定めた基準条件で吹錬を行う。この吹錬中に発生するスピッティング、スロッピングによって飛散した溶銑13及びスラグ14の一部は、転炉本体2の炉口5や炉内側壁に地金として付着する。
【0043】
当該チャージの吹錬終了後、吹錬操作者は、転炉本体2の炉口5及び炉内側壁部に付着している地金の状況を目視観察する。図1では、炉口5に付着した地金(以下、「炉口付着地金」と記す)を符号15で表示し、炉内側壁部に付着した地金(以下、「側壁付着地金」と記す)を符号16で表示している。一方で、地金付着状況と、それに対する使用すべき上吹きランス種類の選定基準を予め定めておく。この選定基準は、付着地金の量的推定や付着形状などに基づくものとする。
【0044】
上記基準に沿って、「地金溶解操作を要する」とされた場合には、吹錬・地金溶解用上吹きランス9に切り替え、次のチャージ以降少なくとも1チャージは吹錬・地金溶解用上吹きランス9を用いて吹錬する。吹錬終了後、吹錬操作者は、転炉本体2に付着していた炉口付着地金15及び側壁付着地金16の溶解状況を目視観察し、上記選定基準に基づき、吹錬・地金溶解用上吹きランス9による吹錬を次チャージ以降も継続するか、吹錬用上吹きランス8または吹錬用上吹きランス8Aに切り替えるかを決定する。
【0045】
このようにして、吹錬用上吹きランス8,8Aと吹錬・地金溶解用上吹きランス9とを適宜切り替えて使用することにより、常に炉口5及び炉内側壁の付着地金を適正な範囲内に制御して操業を行うことができる。
【0046】
この間、吹錬用上吹きランス8または吹錬用上吹きランス8Aを使用した際の地金付着傾向(付着しやすい位置、量)、及び、吹錬・地金溶解用上吹きランス9を使用した際の地金溶解傾向(溶解しやすい位置、量)を把握しながら、地金の付着位置を制御するために、吹錬用上吹きランス8または吹錬用上吹きランス8Aを使用した際の制御用酸素ガスの流量を調整することができる。また、1チャージの吹錬内においても制御用酸素ガスの流量を変化・調整することも可能である。
【0047】
図4に示した吹錬用上吹きランス8の場合には、一般的には、吹錬用酸素ガスの流量に対して制御用酸素ガスの流量を少なくすると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を小さくした場合(鉛直下向きに近くする)と同じ効果が得られ、地金の付着・成長しやすい位置は、炉口5の近傍となりやすく、吹錬用酸素ガスの流量に対して制御用酸素ガスの流量を多くすると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を大きくした場合(水平方向に近くする)と同じ効果が得られ、地金の付着・成長しやすい位置は、炉内下方の炉腹に近い位置へと変化する。一方、図5に示した吹錬用上吹きランス8Aの場合には、吹錬用酸素ガスの流量に対して制御用酸素ガスの流量を少なくすると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を大きくした場合と同じ効果が得られ、地金の付着・成長しやすい位置は、炉内下方の炉腹に近い位置となりやすく、吹錬用酸素ガスの流量に対して制御用酸素ガスの流量を多くすると、吹錬用酸素ガス噴射ノズル10の傾斜角度を小さくした場合と同じ効果が得られ、地金の付着・成長しやすい位置は、炉口5の近傍へと変化する。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、吹錬用上吹きランスに設けられた吹錬用酸素ガス噴射ノズルから噴射される酸素ガス噴流の方向を制御することができるので、転炉炉口及び転炉内壁への地金の付着を軽減することができるとともに、地金の付着位置を、吹錬・地金溶解用上吹きランスでの溶解しやすい位置に調整することができる。従って、吹錬用上吹きランスによる操業を長期間に亘って続けることができるとともに、或る程度付着地金が成長してきたならば、吹錬・地金溶解用上吹きランスに切り替えることで、付着地金を効率的に除去することができ、安定した転炉操業並びに転炉生産性の向上が可能になる。
【0049】
ここで、地金溶解用ガス噴射ノズルから噴射する地金溶解用ガスは、一般に酸素ガスであるが、酸素含有ガスであればよく、不活性ガスを混入させることも可能である。尚、吹錬用酸素ガスには、通常工業用純酸素ガスを使用する。
【実施例1】
【0050】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。試験方法は、300トン転炉に溶銑310トン及びスクラップ10トン、並びに造滓剤を所定量装入し、図2に示す吹錬・地金溶解用上吹きランス及び図4に示す吹錬用上吹きランスの2種類の上吹きランスを用いて脱炭精錬した。吹錬・地金溶解用上吹きランスは、地金溶解用ガス噴射ノズルが、ランスの下端から2mの高さ位置と、ここから上方に1m間隔で2ヶ所の計3段に設けられたものであり、地金溶解用ガス噴射ノズルは各段ともにランス外周の円周上に6孔づつ配置した。また、地金溶解用ガス噴射ノズルには、酸素ガスの他に、パージガスとして窒素ガス及びArガスが供給されるように構成されている。用いた転炉設備は図1に示したものに準ずる。
【0051】
吹錬用上吹きランスからの酸素ガス流量は45000〜60000Nm3/hrであり、このうちの約5%を制御用酸素ガスとして制御用ガス供給孔から供給した。一方、吹錬・地金溶解用上吹きランスについては、吹錬用酸素ガス噴射ノズルからの酸素ガス流量は45000〜60000Nm3/hr、地金溶解用ガス噴射ノズルからの酸素ガス流量は0〜3000Nm3/hrの範囲内で調整した。地金溶解用ガス噴射ノズルからの酸素ガス流量が0Nm3/hrの場合にはパージガスを供給した。
【0052】
吹錬用上吹きランスを28チャージ連続使用したところで、炉口及び炉内側壁の付着地金が成長し、予め設定していた基準に達したので、29チャージ目から吹錬・地金溶解用上吹きランスに切り替え、吹錬・地金溶解用上吹きランスを用いて31チャージ目まで連続3チャージの吹錬を実施した。この間、付着地金は徐々に減少し、もはや溶解の必要のないレベルまで達した。また、炉内を点検したところ、炉内耐火物の損傷は見られなかった。
【0053】
それ以降、吹錬用上吹きランスを用いて25〜30チャージを連続して吹錬し、その後、吹錬・地金溶解用上吹きランスに切り替えて2〜5チャージを連続して吹錬するサイクルで操業した。その結果、付着地金が過度に成長したり、炉内耐火物を損傷したりすることなく、順調に操業することができた。
【0054】
このように、本発明を適用することにより、転炉の生産性を阻害することなく、炉口及び炉内側壁耐火物の損傷を抑制しつつ、地金の付着を効率的に抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を実施するために用いる転炉設備の1例の概略図である。
【図2】図1に示す吹錬・地金溶解用上吹きランスの拡大図である。
【図3】図2に示す吹錬用酸素ガス噴射ノズルの拡大図である。
【図4】図1に示す吹錬用上吹きランスの拡大図である。
【図5】図1に示す吹錬用上吹きランスの別の形態例の拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 転炉設備
2 転炉本体
3 鉄皮
4 耐火物
5 炉口
6 出湯口
7 底吹き羽口
8 吹錬用上吹きランス
8A 吹錬用上吹きランス
9 吹錬・地金溶解用上吹きランス
10 吹錬用酸素ガス噴射ノズル
11 地金溶解用ガス噴射ノズル
12 制御用ガス供給孔
13 溶銑
14 スラグ
15 炉口付着地金
16 側壁付着地金
17 最内管
18 内管
19 仕切管
20 外管
21 最内管
22 内管
23 仕切管
24 外管
25 絞り部
26 スロート
27 末広がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上吹きランスから酸素ガスを供給して転炉で溶銑を吹錬するに際し、前記転炉内に付着した地金の分布状態に応じて、下記(イ)及び(ロ)の2種類の上吹きランスのうちの何れか一方を選定し、選定した上吹きランスを用いて吹錬することを特徴とする転炉操業方法。
(イ)下端部に吹錬用酸素ガスを噴射する吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられた上吹きランスであって、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルは、その入口部にスロート部を有するともに、該スロート部の下流側に末広がり部を有し、且つ、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個は、前記末広がり部の壁面に少なくとも1個の制御用ガス供給孔を有しており、該制御用ガス供給孔から前記吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスが供給されることにより、前記吹錬用酸素ガス噴射ノズルから噴射される噴流の方向及び/または流速を制御することが可能な上吹きランス。
(ロ)下端部に吹錬用酸素ガスを噴射する吹錬用酸素ガス噴射ノズルが1個以上設けられ、且つ、外周部に前記吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御の可能な地金溶解用酸素含有ガス及び/またはパージガスを供給する地金溶解用ガス噴射ノズルが設けられている上吹きランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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