説明

転落防止装置

【課題】貨物の積込みや荷下ろしの際でも、クレーン作業の障害とならず、作業効率を向上させる転落防止装置を提供する。
【解決手段】転落防止装置1は、円筒形状の嵌入部20と、該嵌入部20がヒンジ部60によって連結された長尺状の本体部10と、貨物車の荷台100に形成された孔部101に嵌合し、嵌入部20を摺動可能かつ回動可能に収容する基部30と、複数の本体部10間に張架されたネットとからなる。転落防止装置1は、基部30にヒンジ部60及び本体部10のヒンジ部60側の一端部12を収容させて本体部10を荷台100に対して立設させたり、基部30内で嵌入部20を摺動させてヒンジ部60及び本体部10のヒンジ部60側の一端部12を露出させて、ヒンジ部60によって荷台100に対して本体部10を折り曲げ可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の貨物車の荷台に設けられる転落防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレーラーやトラック等の貨物車の荷台には、作業者が転落しないように転落防止装置が設置されることがあった(例えば、特許文献1)。
特許文献1によれば、荷台の床板の外周部に沿って配設された複数の取り付け孔に支柱がそれぞれ挿入されている。そして、各支柱にロープを架け渡し、この支柱を、網(ネット)を展開する支柱として用いることで作業者が荷台から転落しないための転落防止装置を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−174953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の転落防止装置においては、常に荷台に立てたまま設置されているため、貨物の積込みや荷下ろしの際に、クレーン作業の障害となり、効率が悪いことがあった。
また、貨物の積込みや荷下ろしを行う作業場が狭かったり、天井が低かったり、貨物車の走行中は、各支柱を取り外す必要があり、作業が繁雑であった。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貨物の積込みや荷下ろしの際でも、クレーン作業の障害とならず、作業効率を向上させる転落防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明の請求項1に係る転落防止装置は、円筒形状の嵌入部がヒンジ部によって連結された長尺状の本体部と、貨物車の荷台に形成された孔部に嵌合し、前記嵌入部を摺動可能かつ回動可能に収容する基部と、複数の前記本体部間を張架するネットとを有してなり、前記基部に少なくとも前記ヒンジ部及び前記本体部の前記ヒンジ部側の一端部を収容して前記本体部を前記荷台に対して立設させると共に、前記基部内で前記嵌入部を摺動させて前記ヒンジ部及び前記本体部の前記ヒンジ部側の一端部を露出させて前記荷台に対して前記本体部を折り曲げ可能としたことを特徴としている。
また、本発明の請求項2に係る転落防止装置は、請求項1に記載の転落防止装置において、前記本体部が、ヒンジ部によって連結された第1の本体部と第2の本体部とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る転落防止装置によれば、貨物車の荷台に形成された孔部に嵌合させた基部からヒンジ部を露出させるだけで、本体部を前記荷台に対して屈曲させることができるので、貨物の積込みや荷下ろしの際でも、クレーン作業の障害とならない。また、ネットを張ったままで各本体部を屈曲させることができるので、そのまま貨物車を走行させることができるので、転落防止装置を荷台から取り外すような作業を行う必要がない。これは、結果として、貨物の積込みや荷下ろしの際の作業効率を向上させることに繋がる。
【0007】
また、転落防止装置にネットを張ったままで各本体部を荷台の外側に屈曲させることで、万が一、作業者が荷台から落下しても、荷台の外側に展開された転落防止装置に張られたネットによって受け止めることができ、作業者の安全対策を向上することができる。
また、本発明の請求項2に係る転落防止装置によれば、本体部がヒンジ部により折りたたまれるので、本体部自体を荷台に対して折りたたむよりも簡単に作業することができる。また、作業限界が低い作業場等においても、転落防止機能を維持したまま作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る転落防止装置の第1の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は本体部を屈曲させたときの状態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る転落防止装置の第2の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は本体部自体を折りたたんだときの側面図、(c)は本体部を屈曲させたときの状態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る転落防止装置の使用状態を示す図であり、(a)は通常使用時の概略図、(b)はクレーンで揚程不足だった場合の概略図、(c)は上部(第1の本体部)のみ折りたたんだ場合の概略図、(d)はネットを外し、本体部自体を屈曲させたときの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る転落防止装置の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る転落防止装置の第1の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は本体部を屈曲させたときの状態を示す側面図である。
図1(a)に示すように、転落防止装置1は、本体部10と、該本体部10とヒンジ部60によって連結された嵌入部20と、貨物車の荷台100に形成された孔部101に嵌合し、嵌入部20を摺動可能かつ回動可能に収容する基部30と、複数の本体部10,10間を張架するネット(図示せず)とを有する。以下では、本体部10、嵌入部20、基部30、及びヒンジ部60について説明し、ネットについては後述する。
【0010】
<本体部>
本体部10は、長尺形状をなし、側面には複数のアイボルト40が長手方向(軸方向)に列設されている(図1(b)参照)。本体部10の長手方向の一端面には、ヒンジ部60を構成するヒンジ片11が形成されている。アイボルト40は、複数の本体部10,10間にネットを張架するために、当該ネットを固定する部材である。
【0011】
<嵌入部>
嵌入部20は、円筒形状をなし、一端面に突出したヒンジ片21が形成されている。このヒンジ片21に形成された孔21aと、本体部10のヒンジ片11に形成された孔11aとに軸体50が嵌合することによって、嵌入部20に対して本体部10が一方向に屈曲するヒンジ部(ヒンジ機構)を備えることとなる。ここで、嵌入部20の形状は、基部30に収容された状態で、嵌入部20の軸方向を中心に回動可能である形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。すなわち、嵌入部20の形状は、中空の円筒形状に限られず、円柱形状でもよい。また、嵌入部20の形状は、矩形管形状や角柱形状でもよい。
【0012】
<基部>
基部30は、矩形管形状をなし、その内周面において嵌入部20をその軸方向に摺動可能かつ前記軸方向に回動可能に収容する。すなわち、嵌入部20は、ヒンジ片21の突出方向と直交する平面で回動可能に基部30に収容されている。また、嵌入部20は、基部30に対する回動軸に沿って摺動可能に基部30に収容されている。
また、基部30は、貨物車の荷台100に形成された孔部101に嵌合する。
【0013】
このように構成された転落防止装置1は、図1(c)に示すように、貨物車の荷台100に形成された孔部101に立てて設置される際には、嵌入部20だけでなく、ヒンジ部60を収容した基部30が孔部101内に嵌合されることによって固定される。すなわち、基部30は、孔部101の深さ寸法に応じて、孔部101に嵌合させたときに、基部30の上端部が孔部101の開口面(荷台100の表面)と面一になり、かつヒンジ部60と嵌入部20とが基部30に収容されるように設定される。このとき、ヒンジ部60だけでなく、本体部10の一端部(ヒンジ部60側)12も基部30に収容される。嵌入部20と共に少なくともヒンジ部60が基部30に収容されることで、ヒンジ部60が機能しなくなり、転落防止装置1は、従来の支柱(スタンション)と同様に孔部101に立てて設置されることとなる。
ここで、本体部10の一端部12は、ヒンジ片が設けられた本体部10の端面から所定の寸法の部分を指す。この「所定の寸法」は、孔部101の形状や、本体部10の長さ及び重量などに応じて、少なくとも孔部101に本体部10が安定して立設される寸法が設定される。
【0014】
一方、作業場等において貨物の積込みや荷下ろしを行う場合には、図1(d)に示すように、本体部10を基部30から引き揚げ、荷台100の表面(基部30の上端面)からヒンジ部60及び本体部10の一端部(ヒンジ部60側)12を露出させる。このようにすることで、ヒンジ部60を機能させることを可能とし、基部30に対して回動可能とされた嵌入部20を介して本体部10を荷台100と平行な面上で90°回動させて荷台100の外側に折り曲げる。なお、図1(d)では、本体部10を荷台100の外側に折り曲げたが、本体部10を貨物車の走行方向に折り曲げてもよい。このようにすることで、荷台100に転落防止装置1を設置したまま貨物車を走行させることができ、貨物車の走行に際して転落防止装置1を逐一取り外す面倒がなく、作業上の安全性も確保できる。
【0015】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る転落防止装置の第2の実施の形態について、図面を参照して以下に説明する。本実施形態に係る転落防止装置は、本体部の構造が前述の第1の実施形態と異なるだけであるので、第1の実施形態と同じ符号を付した同様の構成及び動作については説明を省略する。図2は、本発明に係る転落防止装置の第2の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は本体部自体を折りたたんだときの側面図、(c)は本体部を屈曲させたときの状態を示す側面図である。
【0016】
図2(a)に示すように、本実施形態では、長尺形状の第1の本体部10aと、長尺形状の第2の本体部10bとがヒンジ部70によって連結して本体部10を構成している。このヒンジ部70によって、図2(b)に示すように、第1の本体部10aが第2の本体部10bに対して折り曲げることができる。ヒンジ部70の軸方向は、図2(b)に示すように、ヒンジ部60の軸方向と平行にされることが好ましい。すなわち、第2の本体部10bに対する第1の本体部10aの屈曲方向は、嵌入部20に対する本体部10(第2の本体部10b)の屈曲方向(荷台100の外側)と同一平面で反対向き(荷台100の内側)とされることが好ましい。
【0017】
次に、本発明に係る転落防止装置の使用状態について図面を参照して以下に説明する。図3は、本発明に係る転落防止装置の使用状態を示す図であり、(a)は通常使用時の概略図、(b)はクレーンで揚程不足だった場合の概略図、(c)は上部(第1の本体部)のみ折りたたんだ場合の概略図、(d)はネットを外し、本体部自体を屈曲させたときの状態を示す概略図である。
【0018】
前述の第1の実施形態において、ヒンジ部60を機能させないように基部30に嵌合部20及びヒンジ部60を嵌合させた状態(図1(a)参照)で、隣接する本体部10,10のそれぞれのアイボルト40にネットNを取り付けることによって、図3(a)に示す使用状態となる。図3(a)に示す形態では、荷台100の両側部に、貨物車の走行方向(長手方向)に沿って、それぞれ3箇所ずつ形成された孔部(図示せず)に、それぞれ転落防止装置1が設置されている。
【0019】
そして、図3(a)の使用状態から、ネットNを取り付けたままの各本体部10を各基部30から引き揚げ、本体部10を荷台100の外側に折り曲げる(図1(c)参照)と、図3(b)に示す使用状態となる。すなわち、本発明に係る転落防止装置によれば、荷台に立設させた状態で作業者の荷台からの転落を防止する形態から、荷台の外側にネットNを拡げて荷台の外に作業者が転落するのを防止する形態へ、ネットNを本体部10に取り付けたまま、対応することができる。
【0020】
また、前述の第2の実施形態において、ヒンジ部60を機能させないように基部30に嵌合部20及びヒンジ部60を嵌合させた状態(図2(a)参照)で、隣接する本体部10,10のそれぞれのアイボルト40にネットNを取り付けた状態から、第1の本体部10aを第2の本体部10bに対して折り曲げる(図2(b)参照)ことによって、図3(c)に示す使用状態となる。図3(c)に示す形態では、荷台100の両側部に、貨物車の走行方向(長手方向)に沿って、それぞれ3箇所ずつ形成された孔部(図示せず)に、それぞれ転落防止装置1が設置されている。
【0021】
そして、図3(c)の使用状態から、ネットNを外し、各本体部10を各基部30から引き揚げ、本体部10を貨物車の進行方向に折り曲げる(図2(c)参照)と、図3(d)に示す使用状態となる。
このように、本発明に係る転落防止装置によれば、ヒンジ部により折り曲げ可能な構造としたので、貨物の積込みや荷下ろしの際でも、クレーン作業の障害とならず、作業効率を向上させる転落防止装置を提供することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。また、作業限界が低い作業場等においても、転落防止機能を維持したまま作業することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 転落防止装置
10 本体部
10a 第1の本体部
10b 第2の本体部
12 本体部10のヒンジ部60側の一端部
20 嵌入部
30 基部
40 アイボルト
60 ヒンジ部
70 ヒンジ部
100 荷台
101 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の嵌入部がヒンジ部によって連結された長尺状の本体部と、貨物車の荷台に形成された孔部に嵌合し、前記嵌入部を摺動可能かつ回動可能に収容する基部と、複数の前記本体部間を張架するネットとを有してなり、前記基部に少なくとも前記ヒンジ部及び前記本体部の前記ヒンジ部側の一端部を収容して前記本体部を前記荷台に対して立設させると共に、前記基部内で前記嵌入部を摺動させて前記ヒンジ部及び前記本体部の前記ヒンジ部側の一端部を露出させて前記荷台に対して前記本体部を折り曲げ可能としたことを特徴とする転落防止装置。
【請求項2】
前記本体部が、ヒンジ部によって連結された第1の本体部と第2の本体部とからなることを特徴とする請求項1に記載の転落防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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