軸付きシール
【課題】第三シールでシールするダストの量を減少し、ダストをシールすることで摩耗する第三シールの摩耗を抑制し、早期摩耗に起因する締め代の低下でダストが密封流体側に侵入するのを防止し、軸付きシールの寿命を向上させる。
【解決手段】軸２に装着され大気側Ａで外径方向に延びるフランジ部１３を有するスリーブ１１を備えた第一シール１０と、補強環２１と第一シール１０に摺接する第二シール本体部２５とを備えた第二シール２０と、補強環２１に固定されフランジ部１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられた第一保護環３０及び第二保護環４０と、フランジ部１３に接着し第一保護環３０に摺動する第三シール本体部５５を備えた第三シール５０と、第一保護環３０と第二保護環４０とに挟持され軸２に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部７１を備えた第四シール７０とを備えた構成とした。
【解決手段】軸２に装着され大気側Ａで外径方向に延びるフランジ部１３を有するスリーブ１１を備えた第一シール１０と、補強環２１と第一シール１０に摺接する第二シール本体部２５とを備えた第二シール２０と、補強環２１に固定されフランジ部１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられた第一保護環３０及び第二保護環４０と、フランジ部１３に接着し第一保護環３０に摺動する第三シール本体部５５を備えた第三シール５０と、第一保護環３０と第二保護環４０とに挟持され軸２に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部７１を備えた第四シール７０とを備えた構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、大気側の泥水等のダスト条件が厳しい環境下で使用される農業機械、建築機械等の軸封部をシールするために用いられる軸付きシールに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、大気側の泥水等のダスト条件が厳しい環境下で使用される農業機械、建築機械等の軸封部をシールするために用いられる軸付きシールとしては、図３に示すものが知られている（下記特許文献１参照）。この軸付きシール１００は、互に相対動する軸１０１とハウジング１０２との間をシールするものであって、第一シール１１０と、第二シール１２０と、保護環１３０と、第三シール１４０と、ダストシール１５０と、を備えている。
【０００３】
第一シール１１０は、軸方向に延び軸１０１と嵌合している円筒部１１２と円筒部１１２の大気側Ａ端部から外径方向に延びるフランジ部１１３を有するスリーブ１１１と、円筒部１１２の内周側に装着され軸１０１との間をシールするゴム状弾性体の第一シール本体部１１５と、を備えている。
【０００４】
第二シール１２０は、ハウジング１０２に嵌合している円筒部１２２の大気側Ａ端部から外径方向に延びる外向きフランジ部１２３と密封流体側Ｂの端部から内径方向に延びる内向きフランジ部１２４とを有する補強環１２１と、補強環１２１の円筒部１２２と内向きフランジ部１２４とに接着しているゴム状弾性体の第二シール本体部１２５と、を備えている。第二シール本体部１２５は、密封流体側Ｂに延び第一シール１１０の円筒部１１２の外周面に摺動する第一シールリップ１２６と、大気側Ａに延び第一シール１１０の円筒部１１２の外周面に摺動する第二シールリップ１２７および第三シールリップ１２８と、同じく大気側Ａに延びスリーブ１１１のフランジ部１１３の密封流体側Ｂ端面に摺動する第四シールリップ１２９とを有し、第一シールリップ１２６の外周側には径方向の緊迫力を付与するガータスプリング１２６ａが装着されている。
【０００５】
保護環１３０は、スリーブ１１１のフランジ部１１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びるフランジ部１３１の外周部１３２が第二シール部１２０の外向きフランジ部１２３の大気側Ａ端面に当接し、カシメ部１２３ａにてカシメ固定されていて、フランジ部１３１の内周側端部は密封流体側Ｂに延びる円筒部１３３を有している。
【０００６】
第三シール１４０は、スリーブ１１１のフランジ部１１３に接着し保護環１３０のフランジ部１３１の密封流体側Ｂ端面に摺動するゴム状弾性体の第三シール本体部１４５を備えている。
【０００７】
第三シール本体部１４５は、第一シール本体部１１５と一体に成形されていて、保護環１３０のフランジ部１３１の密封流体側Ｂ端面に摺動する内径方向に傾き径方向所定間隔を有して設けられている第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７とを有している。
【０００８】
ダストシール１５０は、第一シール本体部１１５の大気側Ａ端部に一体で成形されていて外径方向に傾いて延び、保護環１３０の円筒部１３３の内周面に摺動するダストシールリップ１５５を有している。
【０００９】
これにより、ダストシール１５０で大気側Ａより泥水等のダストが浸入するのをシールし、更に、侵入した泥水等のダストは、第三シール１４０の第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７でシールするので、密封流体側Ｂに泥水等のダストが侵入する（漏れる）のが防止される。
【００１０】
しかしながら、従来の上記構成であると、泥水等の使用条件が特に厳しい環境下で使用されたときに、ダストシール１５０で充分にシールすることが出来ず、ダストシール１５０を通過した多量の泥水等のダストをシールすることで第三シール１４０の第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７が早期に摩耗して締め代が低下し、要求寿命に達しないうちに泥水等のダストが密封流体側Ｂへ浸入するとの不具合が認められた。
【００１１】
なお、下記特許文献２には、第三シール本体部を別体の樹脂で成形し、スリーブのフランジ部と保護環とに摺動させることで第三シール本体部の対摩耗性を改善することが開示されているが、本発明とは目的、構成を異にしている。
【００１２】
【特許文献１】特開２０００−１９３０９７号公報
【特許文献２】特開平０８−２００５１５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、第三シールでシールするダストの量を減少し、ダストをシールすることで摩耗する第三シールの摩耗を抑制し、もって早期摩耗に起因する締め代の低下で泥水等のダストが密封流体側に侵入する（漏れる）のを防止し、軸付きシールの寿命を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
上記目的を達成するため、本発明の請求項１に係る軸付きシールは、互に同心的に相対動する軸とハウジングとの間の環状空間に設けられ、密封流体側の密封流体をシールすると共に、大気側の泥水等のダストをシールするものであって、前記軸に装着され、大気側で外径方向に延びるフランジ部を有するスリーブと、前記軸の外周面をシールする第一シール本体部と、を備えた第一シールと、前記ハウジングに装着され、補強環と、前記第一シールに摺動する第二シール本体部と、を備えた第二シールと、前記補強環に固定され、前記フランジ部と軸方向所定間隔を有し大気側に設けられた第一保護環及び第二保護環と、前記フランジ部に接着し前記第一保護環に摺動する第三シール本体部を備えた第三シールと、前記第一保護環と前記第二保護環とに挟持され前記軸に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部を備えた第四シールと、を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
更に請求項２に係る軸付きシールは、請求項１に記載の軸付きシールであって、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングを前記第四シール本体部と前記第二保護環の円筒部との間に介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明は、以下の効果を奏する。
【００１７】
すなわち、上記構成を備えた請求項１に係る軸付きシールにおいては、大気側に位置する第一保護環と第二保護環とで挟持された第四シール本体部が軸に面接触で摺動し、大気側の泥水等のダストがシール内に浸入するのをシールするので、第三シールでシールするダストの量が減少し、ダストをシールすることによる第三シール本体部の摩耗を抑制することができる。したがって、第三シール本体部の早期摩耗に起因する締め代の低下で泥水等のダストに対するシール性が低下し密封流体側にダストが侵入するのを防止することができ、軸付きシールの寿命を向上することができる。
【００１８】
また、第四シール本体部は、樹脂で成形されているので低摩擦性に優れ、耐摩耗性が良いので摩耗によるシール性の低下がなく、しかも、軸に面接触で摺動するのでシール面積が大きいため、寿命終期であっても泥水等のダストに対するシール性が良く、第三シールでシールするダストの量を減少できる。
【００１９】
更に、これに加えるに請求項２に係る軸付きシールは、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングが第四シール本体部と第二保護環の円筒部との間に介在しているので、軸が変動したときであっても軸に対する第四シール本体部の追随性、圧縮安定性を向上することができ、第四シールのシール性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。
【００２１】
第一実施形態
図１は、本発明の第一実施例に係る軸付きシールの要部断面を示しており、以下のように構成されている。
【００２２】
この軸付きシール1は、互に同心的に相対動する軸２とハウジング３との間の環状空間に設けられるものであって、第一シール１０と、第二シール２０と、第一保護環３０と、第二保護環４０と、第三シール５０と、ダストシール６０と、第四シール７０と、を備えている。
【００２３】
第一シール１０は、軸方向に延び軸２と嵌合している円筒部１２と円筒部１２の大気側Ａ端部から外径方向に延びるフランジ部１３とを有するスリーブ１１と、円筒部１２の内径側に接着し軸２との間をシールするゴム状弾性体の第一シール本体部１５と、を備えている。
【００２４】
第二シール２０は、ハウジング３に嵌合している円筒部２２の大気側Ａ端部から外径方向に延びる外向きフランジ部２３と密封流体側Ｂの端部から内径方向に延びる内向きフランジ部２４とを有する補強環２１と、補強環２１の円筒部２２と内向きフランジ部２４とに接着しているゴム状弾性体の第二シール本体部２５と、を備えている。第二シール本体部２５は、密封流体側Ｂに延び第一シール１０の円筒部１２の外周面に摺動する第一シールリップ２６と、大気側Ａに延び第一シール１０の円筒部１２の外周面に摺動する軸方向に所定間隔を有して設けられている第二シールリップ２７および第三シールリップ２８と、同じく大気側Ａに延びスリーブ１１のフランジ部１３の密封流体側Ｂ端面に摺動する第四シールリップ２９とを有し、第一シールリップ２６の外周側には径方向に緊迫力を付与するガータスプリング２６ａが装着されている。
【００２５】
第一保護環３０は、スリーブ１１のフランジ部１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びる第一保護フランジ部３１と、第一保護フランジ部３１の外径側端部であって第二シール２０の外向きフランジ部２３の大気側Ａ端面に当接する第一保護外周部３２と、第一保護フランジ部３１の内径側端部から密封流体側Ｂに延びる第一保護円筒部３３とを有している。
【００２６】
第二保護環４０は、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びる第二保護フランジ部４１と、第二保護フランジ部４１の外径側端部から密封流体側Ｂに向かって延びる第二保護円筒部４２と、第二保護円筒部４２の密封流体側Ｂ端部から外径方向に延びる第二保護外周部４３とを有している。
【００２７】
第一保護環３０の第一保護外周部３２の密封対象側Ｂ端面が第二シール２０の外向きフランジ部２３の大気側Ａ端面に当接し、その第一保護外周部３２の大気側Ａ端面に第二保護環４０の第二保護外周部４３の密封対象側Ｂ端面が当接し、第一保護外周部３２と第二保護外周部４３とが第二シール２０の外向きフランジ部２３のカシメ部２３ａにてカシメ固定され、これにより第一保護環３０と第二保護環４０とが軸方向に所定間隔を有して装着される。
【００２８】
第三シール５０は、スリーブ１１のフランジ部１３に接着しているゴム状弾性体の第三シール本体部５５を備えている。
【００２９】
第三シール本体部５５は、第一シール本体部１５と一体に成形されていて、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１の密封流体側Ｂ端面に摺動する内径方向に傾き径方向所定間隔を有して設けられている第一シールリップ５６及び第二シールリップ５７とを有している。
【００３０】
ダストシール６０は、第一シール本体部１５の大気側Ａ端部に第三シール本体部５５と共に一体で成形されていて外径方向に傾いて延び、第一保護環３０の第一保護円筒部３３の内周面に摺動するダストシールリップ６５を有している。
【００３１】
第四シール７０は、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１と第二保護環４０の第二保護フランジ部４１とにより挟持されている第四シール本体部７１を備えている。
【００３２】
第四シール本体部７１は、樹脂であるテフロン（登録商標）で成形されている断面が矩方形状であって、内周面７４が軸２の外周面に面接触で摺動するようになっている。
【００３３】
上記構成の軸付きシール１においては、第四シール本体部７１が第一保護環３０と第二保護環４０とで挟持され、軸２の外周面に面接触で摺動し、大気側Ａの泥水等のダストをシールするので、ダストシール６０を通過し第三シール５０でシールするダストの量が減少し、ダストをシールすることによる第三シール本体部５５の摩耗を抑制することができる。したがって、第三シール本体部５５の早期摩耗に起因する締め代が低下し、シール性が低下するのを防止することが可能となり、シール性の低下で大気側Ａの泥水等のダストが密封流体側Ｂに侵入するのを防止することが可能となり、軸付きシール１の寿命を向上することが可能となる。
【００３４】
また、第四シール本体部７１は、樹脂であるテフロン（登録商標）で成形されているので低摩擦性に優れ、摩耗が抑制されるのでシール性の低下がなく、しかも軸２に面接触で摺動するのでシール面積が大きく、寿命終期であっても泥水等のダストに対するシール性が良く、第三シール５０でシールするダストの量を減少することが可能となる。
【００３５】
第二実施形態
図２は、本発明の第二実施例に係る軸付きシール１の要部断面を示している。第二実施例は、第四シール７０において、第四シール本体部７１と第二保護環４０の第二保護円筒部４２の内径側端面との間にリップ形状７３からなるゴム状弾性体のリング７２を介在させている点が第一実施例と異なる。
【００３６】
したがって、第二実施例においても第一実施例と同様の作用を奏する他に、これに加えるに、リップ形状７３からなるゴム状弾性体のリング７２が第四シール本体部７１と第二保護環４０の第二保護円筒部４２との間に介在しているので、軸２が変動したときであっても、テフロン（登録商標）からなる第四シール本体部７１の軸２に対する追随性、圧縮安定性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】本発明の第一実施例に係る軸付きシールの一部断面図
【図２】本発明の第二実施例に係る軸付きシールの一部断面図
【図３】従来例に係る軸付きシールの一部断面図
【符号の説明】
【００３８】
１ 軸付きシール
２ 軸
３ ハウジング
１０ 第一シール
１１ スリーブ
１２，２２，３３，４２ 円筒部
１３，２３，２４，３１，４１ フランジ部
１５，２５，５５,７１ シール本体部
２０ 第二シール
２１ 補強環
２３ａ カシメ部
２６，２７，２８，２９，５６，５７，６５ シールリップ
２６ａ ガータスプリング
３０ 第一保護環
３２，４３ 外周部
４０ 第二保護環
５０ 第三シール
６０ ダストシール
７０ 第四シール
７２ リング
７３ リップ形状
Ａ 大気側
Ｂ 密封流体側
【技術分野】
【０００１】
本発明は、大気側の泥水等のダスト条件が厳しい環境下で使用される農業機械、建築機械等の軸封部をシールするために用いられる軸付きシールに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、大気側の泥水等のダスト条件が厳しい環境下で使用される農業機械、建築機械等の軸封部をシールするために用いられる軸付きシールとしては、図３に示すものが知られている（下記特許文献１参照）。この軸付きシール１００は、互に相対動する軸１０１とハウジング１０２との間をシールするものであって、第一シール１１０と、第二シール１２０と、保護環１３０と、第三シール１４０と、ダストシール１５０と、を備えている。
【０００３】
第一シール１１０は、軸方向に延び軸１０１と嵌合している円筒部１１２と円筒部１１２の大気側Ａ端部から外径方向に延びるフランジ部１１３を有するスリーブ１１１と、円筒部１１２の内周側に装着され軸１０１との間をシールするゴム状弾性体の第一シール本体部１１５と、を備えている。
【０００４】
第二シール１２０は、ハウジング１０２に嵌合している円筒部１２２の大気側Ａ端部から外径方向に延びる外向きフランジ部１２３と密封流体側Ｂの端部から内径方向に延びる内向きフランジ部１２４とを有する補強環１２１と、補強環１２１の円筒部１２２と内向きフランジ部１２４とに接着しているゴム状弾性体の第二シール本体部１２５と、を備えている。第二シール本体部１２５は、密封流体側Ｂに延び第一シール１１０の円筒部１１２の外周面に摺動する第一シールリップ１２６と、大気側Ａに延び第一シール１１０の円筒部１１２の外周面に摺動する第二シールリップ１２７および第三シールリップ１２８と、同じく大気側Ａに延びスリーブ１１１のフランジ部１１３の密封流体側Ｂ端面に摺動する第四シールリップ１２９とを有し、第一シールリップ１２６の外周側には径方向の緊迫力を付与するガータスプリング１２６ａが装着されている。
【０００５】
保護環１３０は、スリーブ１１１のフランジ部１１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びるフランジ部１３１の外周部１３２が第二シール部１２０の外向きフランジ部１２３の大気側Ａ端面に当接し、カシメ部１２３ａにてカシメ固定されていて、フランジ部１３１の内周側端部は密封流体側Ｂに延びる円筒部１３３を有している。
【０００６】
第三シール１４０は、スリーブ１１１のフランジ部１１３に接着し保護環１３０のフランジ部１３１の密封流体側Ｂ端面に摺動するゴム状弾性体の第三シール本体部１４５を備えている。
【０００７】
第三シール本体部１４５は、第一シール本体部１１５と一体に成形されていて、保護環１３０のフランジ部１３１の密封流体側Ｂ端面に摺動する内径方向に傾き径方向所定間隔を有して設けられている第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７とを有している。
【０００８】
ダストシール１５０は、第一シール本体部１１５の大気側Ａ端部に一体で成形されていて外径方向に傾いて延び、保護環１３０の円筒部１３３の内周面に摺動するダストシールリップ１５５を有している。
【０００９】
これにより、ダストシール１５０で大気側Ａより泥水等のダストが浸入するのをシールし、更に、侵入した泥水等のダストは、第三シール１４０の第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７でシールするので、密封流体側Ｂに泥水等のダストが侵入する（漏れる）のが防止される。
【００１０】
しかしながら、従来の上記構成であると、泥水等の使用条件が特に厳しい環境下で使用されたときに、ダストシール１５０で充分にシールすることが出来ず、ダストシール１５０を通過した多量の泥水等のダストをシールすることで第三シール１４０の第一シールリップ１４６及び第二シールリップ１４７が早期に摩耗して締め代が低下し、要求寿命に達しないうちに泥水等のダストが密封流体側Ｂへ浸入するとの不具合が認められた。
【００１１】
なお、下記特許文献２には、第三シール本体部を別体の樹脂で成形し、スリーブのフランジ部と保護環とに摺動させることで第三シール本体部の対摩耗性を改善することが開示されているが、本発明とは目的、構成を異にしている。
【００１２】
【特許文献１】特開２０００−１９３０９７号公報
【特許文献２】特開平０８−２００５１５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、第三シールでシールするダストの量を減少し、ダストをシールすることで摩耗する第三シールの摩耗を抑制し、もって早期摩耗に起因する締め代の低下で泥水等のダストが密封流体側に侵入する（漏れる）のを防止し、軸付きシールの寿命を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
上記目的を達成するため、本発明の請求項１に係る軸付きシールは、互に同心的に相対動する軸とハウジングとの間の環状空間に設けられ、密封流体側の密封流体をシールすると共に、大気側の泥水等のダストをシールするものであって、前記軸に装着され、大気側で外径方向に延びるフランジ部を有するスリーブと、前記軸の外周面をシールする第一シール本体部と、を備えた第一シールと、前記ハウジングに装着され、補強環と、前記第一シールに摺動する第二シール本体部と、を備えた第二シールと、前記補強環に固定され、前記フランジ部と軸方向所定間隔を有し大気側に設けられた第一保護環及び第二保護環と、前記フランジ部に接着し前記第一保護環に摺動する第三シール本体部を備えた第三シールと、前記第一保護環と前記第二保護環とに挟持され前記軸に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部を備えた第四シールと、を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
更に請求項２に係る軸付きシールは、請求項１に記載の軸付きシールであって、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングを前記第四シール本体部と前記第二保護環の円筒部との間に介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明は、以下の効果を奏する。
【００１７】
すなわち、上記構成を備えた請求項１に係る軸付きシールにおいては、大気側に位置する第一保護環と第二保護環とで挟持された第四シール本体部が軸に面接触で摺動し、大気側の泥水等のダストがシール内に浸入するのをシールするので、第三シールでシールするダストの量が減少し、ダストをシールすることによる第三シール本体部の摩耗を抑制することができる。したがって、第三シール本体部の早期摩耗に起因する締め代の低下で泥水等のダストに対するシール性が低下し密封流体側にダストが侵入するのを防止することができ、軸付きシールの寿命を向上することができる。
【００１８】
また、第四シール本体部は、樹脂で成形されているので低摩擦性に優れ、耐摩耗性が良いので摩耗によるシール性の低下がなく、しかも、軸に面接触で摺動するのでシール面積が大きいため、寿命終期であっても泥水等のダストに対するシール性が良く、第三シールでシールするダストの量を減少できる。
【００１９】
更に、これに加えるに請求項２に係る軸付きシールは、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングが第四シール本体部と第二保護環の円筒部との間に介在しているので、軸が変動したときであっても軸に対する第四シール本体部の追随性、圧縮安定性を向上することができ、第四シールのシール性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。
【００２１】
第一実施形態
図１は、本発明の第一実施例に係る軸付きシールの要部断面を示しており、以下のように構成されている。
【００２２】
この軸付きシール1は、互に同心的に相対動する軸２とハウジング３との間の環状空間に設けられるものであって、第一シール１０と、第二シール２０と、第一保護環３０と、第二保護環４０と、第三シール５０と、ダストシール６０と、第四シール７０と、を備えている。
【００２３】
第一シール１０は、軸方向に延び軸２と嵌合している円筒部１２と円筒部１２の大気側Ａ端部から外径方向に延びるフランジ部１３とを有するスリーブ１１と、円筒部１２の内径側に接着し軸２との間をシールするゴム状弾性体の第一シール本体部１５と、を備えている。
【００２４】
第二シール２０は、ハウジング３に嵌合している円筒部２２の大気側Ａ端部から外径方向に延びる外向きフランジ部２３と密封流体側Ｂの端部から内径方向に延びる内向きフランジ部２４とを有する補強環２１と、補強環２１の円筒部２２と内向きフランジ部２４とに接着しているゴム状弾性体の第二シール本体部２５と、を備えている。第二シール本体部２５は、密封流体側Ｂに延び第一シール１０の円筒部１２の外周面に摺動する第一シールリップ２６と、大気側Ａに延び第一シール１０の円筒部１２の外周面に摺動する軸方向に所定間隔を有して設けられている第二シールリップ２７および第三シールリップ２８と、同じく大気側Ａに延びスリーブ１１のフランジ部１３の密封流体側Ｂ端面に摺動する第四シールリップ２９とを有し、第一シールリップ２６の外周側には径方向に緊迫力を付与するガータスプリング２６ａが装着されている。
【００２５】
第一保護環３０は、スリーブ１１のフランジ部１３と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びる第一保護フランジ部３１と、第一保護フランジ部３１の外径側端部であって第二シール２０の外向きフランジ部２３の大気側Ａ端面に当接する第一保護外周部３２と、第一保護フランジ部３１の内径側端部から密封流体側Ｂに延びる第一保護円筒部３３とを有している。
【００２６】
第二保護環４０は、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１と軸方向所定間隔を有し大気側Ａに設けられていて、径方向に延びる第二保護フランジ部４１と、第二保護フランジ部４１の外径側端部から密封流体側Ｂに向かって延びる第二保護円筒部４２と、第二保護円筒部４２の密封流体側Ｂ端部から外径方向に延びる第二保護外周部４３とを有している。
【００２７】
第一保護環３０の第一保護外周部３２の密封対象側Ｂ端面が第二シール２０の外向きフランジ部２３の大気側Ａ端面に当接し、その第一保護外周部３２の大気側Ａ端面に第二保護環４０の第二保護外周部４３の密封対象側Ｂ端面が当接し、第一保護外周部３２と第二保護外周部４３とが第二シール２０の外向きフランジ部２３のカシメ部２３ａにてカシメ固定され、これにより第一保護環３０と第二保護環４０とが軸方向に所定間隔を有して装着される。
【００２８】
第三シール５０は、スリーブ１１のフランジ部１３に接着しているゴム状弾性体の第三シール本体部５５を備えている。
【００２９】
第三シール本体部５５は、第一シール本体部１５と一体に成形されていて、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１の密封流体側Ｂ端面に摺動する内径方向に傾き径方向所定間隔を有して設けられている第一シールリップ５６及び第二シールリップ５７とを有している。
【００３０】
ダストシール６０は、第一シール本体部１５の大気側Ａ端部に第三シール本体部５５と共に一体で成形されていて外径方向に傾いて延び、第一保護環３０の第一保護円筒部３３の内周面に摺動するダストシールリップ６５を有している。
【００３１】
第四シール７０は、第一保護環３０の第一保護フランジ部３１と第二保護環４０の第二保護フランジ部４１とにより挟持されている第四シール本体部７１を備えている。
【００３２】
第四シール本体部７１は、樹脂であるテフロン（登録商標）で成形されている断面が矩方形状であって、内周面７４が軸２の外周面に面接触で摺動するようになっている。
【００３３】
上記構成の軸付きシール１においては、第四シール本体部７１が第一保護環３０と第二保護環４０とで挟持され、軸２の外周面に面接触で摺動し、大気側Ａの泥水等のダストをシールするので、ダストシール６０を通過し第三シール５０でシールするダストの量が減少し、ダストをシールすることによる第三シール本体部５５の摩耗を抑制することができる。したがって、第三シール本体部５５の早期摩耗に起因する締め代が低下し、シール性が低下するのを防止することが可能となり、シール性の低下で大気側Ａの泥水等のダストが密封流体側Ｂに侵入するのを防止することが可能となり、軸付きシール１の寿命を向上することが可能となる。
【００３４】
また、第四シール本体部７１は、樹脂であるテフロン（登録商標）で成形されているので低摩擦性に優れ、摩耗が抑制されるのでシール性の低下がなく、しかも軸２に面接触で摺動するのでシール面積が大きく、寿命終期であっても泥水等のダストに対するシール性が良く、第三シール５０でシールするダストの量を減少することが可能となる。
【００３５】
第二実施形態
図２は、本発明の第二実施例に係る軸付きシール１の要部断面を示している。第二実施例は、第四シール７０において、第四シール本体部７１と第二保護環４０の第二保護円筒部４２の内径側端面との間にリップ形状７３からなるゴム状弾性体のリング７２を介在させている点が第一実施例と異なる。
【００３６】
したがって、第二実施例においても第一実施例と同様の作用を奏する他に、これに加えるに、リップ形状７３からなるゴム状弾性体のリング７２が第四シール本体部７１と第二保護環４０の第二保護円筒部４２との間に介在しているので、軸２が変動したときであっても、テフロン（登録商標）からなる第四シール本体部７１の軸２に対する追随性、圧縮安定性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】本発明の第一実施例に係る軸付きシールの一部断面図
【図２】本発明の第二実施例に係る軸付きシールの一部断面図
【図３】従来例に係る軸付きシールの一部断面図
【符号の説明】
【００３８】
１ 軸付きシール
２ 軸
３ ハウジング
１０ 第一シール
１１ スリーブ
１２，２２，３３，４２ 円筒部
１３，２３，２４，３１，４１ フランジ部
１５，２５，５５,７１ シール本体部
２０ 第二シール
２１ 補強環
２３ａ カシメ部
２６，２７，２８，２９，５６，５７，６５ シールリップ
２６ａ ガータスプリング
３０ 第一保護環
３２，４３ 外周部
４０ 第二保護環
５０ 第三シール
６０ ダストシール
７０ 第四シール
７２ リング
７３ リップ形状
Ａ 大気側
Ｂ 密封流体側
【特許請求の範囲】
【請求項１】
互に同心的に相対動する軸とハウジングとの間の環状空間に設けられ、密封流体側の密封流体をシールすると共に、大気側の泥水等のダストをシールするものであって、
前記軸に装着され、大気側で外径方向に延びるフランジ部を有するスリーブと、前記軸の外周面をシールする第一シール本体部と、を備えた第一シールと、
前記ハウジングに装着され、補強環と、前記第一シールに摺動する第二シール本体部と、を備えた第二シールと、
前記補強環に固定され、前記フランジ部と軸方向所定間隔を有し大気側に設けられた第一保護環及び第二保護環と、
前記フランジ部に接着し前記第一保護環に摺動する第三シール本体部を備えた第三シールと、
前記第一保護環と前記第二保護環とに挟持され前記軸に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部を備えた第四シールと、
を備えたことを特徴とする軸付きシール。
【請求項２】
請求項１に記載の軸付きシールであって、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングを前記第四シール本体部と前記第二保護環の円筒部との間に介在させたことを特徴とする軸付きシール。
【請求項１】
互に同心的に相対動する軸とハウジングとの間の環状空間に設けられ、密封流体側の密封流体をシールすると共に、大気側の泥水等のダストをシールするものであって、
前記軸に装着され、大気側で外径方向に延びるフランジ部を有するスリーブと、前記軸の外周面をシールする第一シール本体部と、を備えた第一シールと、
前記ハウジングに装着され、補強環と、前記第一シールに摺動する第二シール本体部と、を備えた第二シールと、
前記補強環に固定され、前記フランジ部と軸方向所定間隔を有し大気側に設けられた第一保護環及び第二保護環と、
前記フランジ部に接着し前記第一保護環に摺動する第三シール本体部を備えた第三シールと、
前記第一保護環と前記第二保護環とに挟持され前記軸に面接触で摺動する樹脂の第四シール本体部を備えた第四シールと、
を備えたことを特徴とする軸付きシール。
【請求項２】
請求項１に記載の軸付きシールであって、リップ形状からなるゴム状弾性体のリングを前記第四シール本体部と前記第二保護環の円筒部との間に介在させたことを特徴とする軸付きシール。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２００７−２４７７０８（Ｐ２００７−２４７７０８Ａ）
【公開日】平成１９年９月２７日（２００７．９．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−６９２３８（Ｐ２００６−６９２３８）
【出願日】平成１８年３月１４日（２００６．３．１４）
【出願人】（０００００４３８５）ＮＯＫ株式会社 (1,527)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年９月２７日（２００７．９．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年３月１４日（２００６．３．１４）
【出願人】（０００００４３８５）ＮＯＫ株式会社 (1,527)
【Ｆターム（参考）】
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