説明

軸体

【課題】内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体を封入した把持部は任意に変形してしまうため腰がなく柔らかすぎて筆記感が悪いという欠点があった。また、空間に微細な固体や粘着性を有する物質を配し腰がある把持部とした場合でも、把持した際に内部の軸体の触感が指先に伝わると、痛みや違和感が生じるため、更なる改善の余地が残されていた。
【解決手段】軸体1と把持部2との間、または把持部内部に空間を設け、この空間に微細な固体5及び/または粘着性を有する物質を配したこと、及び少なくとも把持部2で覆われる部分の軸体の断面を異形にすることによって、空間幅を変化させ把持した際の変形量を調整するとともに、把持した際に異形な軸体の平面部に指が当接することによって、内部の軸体の触感が指先に伝わりにくくなり、痛みや違和感を解消することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部を設けた軸体に関するものであり、その軸体の1例としては、ボールペンやシャープペンシルなどの筆記具や、口紅やアイライナーなど細長い容器、釣り竿、ドアノブ、ドライバーなどの工具類が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
把持する部分には、滑り止めや把持のしやすさといった効果を持たせるために様々な発明がなされている。滑り止めとしては、シリコーンやエラストマーといった弾性樹脂を把持部に配置した構成(グリップ)が採られており、把持部の内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体、微細な固体を封入することによって持ちやすい把持部を形成している。
【特許文献1】特許第3431317号公報
【特許文献2】特開2005−199594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体を封入した把持部は任意に変形してしまうため腰がなく柔らかすぎて筆記感が悪いという欠点があった。
【0004】
また、特許文献2では空間に微細な固体を配し腰がある把持部としているが、変形によって内部の軸体の触感が指先に伝わってしまい、痛みや違和感につながっていた。
【0005】
本発明の目的は、本発明者は上記問題を鑑み、グリップ部材の外形や軸筒の把持部の外形に影響されることなく把持部を変形しやすくすることで、把持感触がよく、滑り止め効果が向上する筆記具の軸筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸体の把持部に少なくとも弾性樹脂を配置及び/または一体に設けた軸体において、軸体と把持部との間、または把持部内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または粘着性を有する物質を配したこと、及び少なくとも把持部で覆われる部分の軸体の断面を異形にしたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸体及び/または把持部を用いて内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または粘着性を有する物質を配した把持部を配置及び/または一体に設けることによって、従来の弾性樹脂のみの把持部より変形能力を向上させ、かつ、可撓性材料、ゲル状物質や気体のみを封入した把持部より腰がある把持部となっている。さらに、把持部で覆われる部分の軸体の断面を異形にすることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変更し、変形によって内部の軸体の触感が指先に伝わって感じる痛みや違和感を解消している。また、把持した指先の形状に合わせて変形し、形状を保持するため、接触面積が増え、握る圧力が分散され、指先以外の把持部分、例えば筆記具の指間当節部に配することによって握りやすい形状の軸体となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を筆記具の把持部に使用した実施例1の図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明を筆記具の把持部に使用した実施例2の図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本発明を筆記具の把持部に使用した実施例3の図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】本発明を筆記具の把持部に使用した実施例4の図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
軸体の材質は、金属や樹脂、木材、石材など形成できるものであればよく、把持部を形成する材料が軸体1を形成できる強度を有していれば、その材料で把持部を軸体自体に形成することも可能であり、特に限定されない。また、これらの材質は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0010】
軸体及び/または把持部の材料として樹脂及び/または弾性樹脂があげられる。樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、弾性樹脂としてはアクリル樹脂やシリコーン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、エラストマーゲル、ポリエチレンゲル、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニルビニル系シリコーン、メチルフルオロアルキル系シリコーン(フロロシリコーン)、フロロ−ジメチル共重合シリコーン、ウレタンゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどが挙げられるが、形状が維持できるものであれば特に限定されない。これら樹脂及び/または弾性樹脂は1種または2種以上の混合物であってもよい。また、樹脂で成形した把持部表面に弾性樹脂を成形、塗装するといった方法で滑り止め効果や把持感の向上を図ることもできる。
【0011】
把持部は、少なくとも内層と外層を設けることで内部に空間を設けた構造となっている。構成は内層が軸体で外層が把持部であってもよく、軸体の上に把持部を設け内層とし、その外側に把持部の外層を設けることで内部に空間を設けた構造としてもよい。また、内層と外層は一体であっても、別体であってもよく、内層と外層の一部が連接している構造であってもよい。
【0012】
軸体及び軸体の上に設けられた把持部で構成される内層の断面は、異形になっており、断面が円形の外層との距離に変化ができる。また、内層の断面を円形とし、外層の断面を異形とした場合や内層の断面及び外層の断面を異形とした場合でも内層と外層との距離に変化ができるが、外形に影響が出るため、内層断面が異形、外層断面が円形であることが望ましい。断面が異形となっている範囲は、把持部外層で覆われる部分及び/または覆われる部分の一部であればよく限定はされない。断面の形状は把持部と、それを握る指の位置関係に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。筆記具や口紅のような親指、人差し指、中指の3本の指で把持する把持部の軸体断面は三角形や六角形となっていると各指の当接する箇所が平面となるので、変形によって内部の軸体の触感が指先に伝わって感じる痛みや違和感が解消出来る。また、工具やドアノブと言った5指で握るような把持部には楕円や握り形状に沿った軸体断面にすることで、内部の軸体の触感が指先に伝わって感じる痛みや違和感が解消出来る。また、軸体断面の形状は把持部内で変化していてもよく、一部断面が円筒であっても他に異形となっている部分があればよい。また、把持部外層を形成する円筒と中心が異なる円筒を内層とすることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変更してもよい。
【0013】
把持部を構成する弾性樹脂の硬度は、ショアーAで0度から90度もしくは、アスカーCで0度から90度までの硬度範囲の中で適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、触感には外層の硬度や厚みが大きく影響する。外層をショアーAで60度、アスカーCで80度以下の弾性樹脂で形成した場合、外層が軟らかい為、把持した際の変形量が大きく変形性が向上し、変形形状の保持性も向上する。その反面、元の形状に戻り難い為、形状復元性は低減する。一方、ショアーAで60度、アスカーCで80度以上の弾性樹脂は硬い為、把持した際の変形量が小さくなり、変形性や変形形状保持性は低減するが、反面、元の形状に戻りやすいという形状復元性が向上する。これらの変形性、変形形状保持性、形状復元性は弾性樹脂の硬度の他に弾性樹脂の復元性、外層の厚み、把持部の内部に設ける空間の大きさ、外層と軸体及び/または内層の間に形成される空間の大きさ等で調整することが出来る。また、内層と外層は同一材料で一体に成形しても硬度の異なる材料で別体で成形して組み立ててもよく、特に限定されない。
【0014】
これら樹脂及び/または弾性樹脂には、吸油および/または吸水性がある物質が添加されてもよい。吸油性および/または吸水性がある物質は、化粧品に使用される物質、オイルの除去に使用される物質、家庭内で防臭、清浄効果に使用される物質と多岐にわたり、その種類や形状は数多くある。例を挙げると木材や繊維、コルク、炭、皮革などの天然材料、シリカゲルや活性炭といった吸着素材、ゼオライトやけい藻土といった無機鉱物、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド多孔質体などを始めとした高分子吸油・吸水剤、紡錘状中空多孔質シリカ、多孔質シリカ、多孔質シリコーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムいった無機化合物、多孔質セラミック等が挙げられる。また、表面に多孔質シリカ等の吸油性および/または吸水性を有する被膜を形成することで、物質に吸油性および/または吸水性の機能を発揮、向上させてもよい。吸油および/または吸水した際に、これら吸油および/または吸水性がある物質の大きさが変化しないことが望ましいことから、無機鉱物、無機化合物が特に好ましい。これら吸油および/または吸水性がある物質は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
吸油および/または吸水性がある物質はその機能を十分に発揮させるために、微粒子粉体として添加することが望ましい。これは粒径が細かい程、単位重量当たりの表面積が増大することから、油および/または水の吸収効率を高める効果が期待できる。しかし、その粒径は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよい。また、吸油および/または吸水性がある無機粉体を使用することにより、油および/または水を吸収した際にも容積の変化がなく、把持部の膨潤やゆるみを更に防止することができる。樹脂への添加量は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよいが、添加量が少な過ぎると十分な効果が期待できず、多すぎると強度が損なわれることから、樹脂に対して重量比率で0.001%〜50%、特に0.01%〜10%の添加量であることが望ましい。弾性樹脂への添加量は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよいが、添加量が少なすぎると十分な効果が期待できず、多すぎると弾性樹脂の硬度が高くなり、弾性が損なわれることから、弾性樹脂に対して重量比率で0.001%〜50%、特に0.01%〜10%の添加量であることが望ましい。
【0016】
これら弾性樹脂には触り心地や指先へのフィット感の向上、着色や文様といった意匠性の向上、抗菌や汗の吸放出、光触媒反応による自己洗浄といった機能性の付与のために粉体、微粒子、発泡剤などが含まれてもよい。
その粉体の具体例としては、スチレン、ナイロン、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ、ポリメタクリル酸メチルなどの樹脂粉体や、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ガラス片、金属片などの無機粉体、シルクパウダー、木粉、コルク粉などの天然素材を粉体化したものなどが挙げられる。また、それらの粉体に、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系などの粉体塗膜を被覆した複合粉体、さらには、自動乳鉢、ボールミル、ジェットミル、アトマイザー、ハイブリダイザーなどを用いて樹脂粉体にこの樹脂粉体より小さい無機粉体を吸着させたり、打ち込んだりしたものなども挙げられ、特に限定されない。また、粉体の形状は、無定型、球状、板状、針状などが用いられ、特に限定するものではない。これら粉体は1種または2種以上添加してもよい。
【0017】
また、前記微粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイトや、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウムなどの酸化物、窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化タンタルなどの窒化物、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タンタルなどの炭化物、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタルなどのホウ化物が挙げられ、特に限定されない。また、微粒子の形状は無定型、鱗片状、球状、繊維状などを用いることができる。これら微粒子は、1種または2種以上添加してもよい。
【0018】
前記発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルなどが用いられる。化学発泡剤の具体例は、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジド化合物、トリアゾール化合物などの有機系熱分解型発泡剤、イソシアネート化合物などの有機系反応型発泡剤、重炭酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、水素化物などの無機系熱分解型発泡剤、重炭酸ナトリウム+酸、過酸化水素+イースト菌、亜鉛粉末+酸などの無機系反応型発泡剤などが挙げられる。
物理発泡剤の具体例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロルエタン、ジクロルメタン、フロン、空気、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。
熱膨張性マイクロカプセルの具体例は、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサンなどの低沸点炭化水素を芯物質とし、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの共重合体からなる熱可塑性樹脂を壁物質としたマイクロカプセルなどが挙げられ、特に限定されない。これら発泡剤は、1種または2種以上添加してもよい。
【0019】
又、把持部を構成する弾性樹脂の表面は滑らかな面や粗な面に成形できる。摩擦抵抗を高め、指先表面の引っかかりをよくするためには表面を鏡面の様に滑らかに、摩擦抵抗を低くしてさらさらした触感やゴミ、ほこりを付きにくくするためには表面を粗にすればよい。更に、把持部を構成する弾性樹脂の表面には適度な面積を各々の有する凹部や凸部を形成してもよい。
【0020】
把持部2の製造方法としては、圧縮成形やトランスファー成形、射出成形、押出成形、真空注形といった方法で成形した弾性樹脂を軸体に装着する方法や、インサート成形で形成するといった方法が挙げられるが、製造方法は特に限定されない。
【0021】
微細な固体4は、軸体と把持部との間及び/または把持部に設けられた空間に配されている。微細な固体4の具体的な例としては、ステンレス、洋白、ジルコニア、ルビーボール等の硬球、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、めのう、水晶等の鉱石、御影石、大理石等の岩石、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル、ABS、AS、PMMA、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂やその発泡体、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニルビニル系シリコーン、メチルフルオロアルキル系シリコーン(フロロシリコーン)、フロロ−ジメチル共重合シリコーン、ウレタンゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等の弾性樹脂、ナイロン、絹、綿等の繊維、ガラスなどが挙げられるが、微細な固体が形成できればよく特に限定はされない。また、これらの微細な固体は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
微細な固体4の形状は、粒子状、繊維状、不定形状等様々な形状の固体が利用できる。硬球などの真球に近い形状の微細な固体を配した場合には、把持した際の変形が速く、また、放した時の形状復元も速い。岩石やガラスを粉砕した不定形の微細な固体を配した場合には、把持した際の変形は遅いが腰がある把持感があり、また、放した時にも形状をある程度記憶している。微細な固体の大きさは空間の大きさによって異なるが、空間の最小の幅より小さければよく、特に限定されない。また、これらの微細な固体の大きさは1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
軸体と把持部との間及び/または把持部の内部及び/または内層と外層との間に設けられた空間には粘着性を有する物質を配してもよい。粘着性を有する物質とは、他の物質と接触した際、接触面で保持力を発揮する物質を言う。粘着性を有するため、把持した際に力を入れても、空間内部の物質の移動には抵抗が発生し急激な形状変化が防止される。このため腰のある触感となり、やわらかすぎることはない。粘着性を有する物質として以下のものを例示するが、前記の様な特性を有しておればよく、特に限定されない。KF96(信越化学工業(株)製)といったシリコーンオイルやtsk5370(Ge東芝シリコーン(株)製)といったシリコーンオイルコンパウンド、レチナックス グリース CL(昭和シェル石油(株)製)といった石油系グリース。ゲル状物質としてKE−1052、sifel827(信越化学工業(株)製)、SE1885、Sylgard527、CY52−286(東レ・ダウコーニング(株)製)、アルファゲル((株)ジェルテック製)、WACKER Silgel612(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)といったシリコーンゲル、人肌のゲル((株)エクシールコーポレーション製)といったウレタンゲル、エクスジェル((株)加地製)といった合成ゴムなどがあげられる。また、これらの粘着性を有する物質は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
作用について説明する。軸体及び軸体の上に設けられた把持部で構成される内層の断面が、異形になっていることにより、内層と外層の距離を部分的に変化させている。このため、空間に配されている粘着性のある物質や微細な固体が多い箇所と少ない箇所ができるので、把持した際の変形量に変化が出来る。粘着性のある物質や微細な固体が多く配されている箇所を把持すると大きく変形し、少ない箇所を把持すると僅かな変形にとどまるので、使用者は持つ位置を変えることでの好みに応じた触感を得ることが出来る。また、内層の断面を異形にした場合、円筒に比べ平面部が確保され、変形によって内部の軸体の触感が指先に伝わって感じる痛みや違和感を解消している。筆記具や口紅のような親指、人差し指、中指の3本の指で把持する把持部の軸体断面は三角形や六角形となっていると各指の当接する箇所が平面となるので、変形によって内部の軸体の触感が指先に伝わって感じる痛みや違和感が解消出来る。
【0025】
図1は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例の図である。図2は図1のA−A‘線断面図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に粘着性のある物質を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は内層、参照符号4は外層、参照符号5は粘着性のある物質である。
【0026】
実施例1として、軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。軸筒1の把持部2で覆われる部分は断面が略三角形となっていることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変化させている。内層と外層の間の空間にシリコーンゲル(SE1885、東レ・ダウコーニング(株)製))を充填した把持部2を軸体1に装着した。
【0027】
把持部は握った際、シリコーンゲルの粘着性と弾性による抵抗感を発揮しつつ、外力に応じて変形し、変形後は粘着性によって形状保持能力を発揮して、腰のある良好な感触が得られる。
【0028】
変形の際、略三角形平面の部分は頂点部に比べ空間幅が広い為、適度な軟らかさと変形量が確保され、頂点部では変形量が小さいため硬めの触感となる。特に親指、人差し指、中指の3本の各指が略三角形平面の箇所に当接することで断面が円筒の場合と比べて軸体の触感が指先に伝わりにくくなり、把持した際の痛みや違和感が解消出来る。
【0029】
図3は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例の図である。図4は図3のA−A‘線断面図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に粘着性のある物質及び微細な固体を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は内層、参照符号4は外層、参照符号5は粘着性のある物質、参照符号6は微細な固体である。
【0030】
実施例2として、軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。軸筒1は円筒であり、内層3の把持部2で覆われる部分は断面が略六角形となっていることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変化させている。微細な固体6としてガラスビーズ(ユニビーズUB−1719LN、(株)ユニオン製)を内層と外層の間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(WACKER Silgel612、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。
【0031】
シリコーンゲル及びガラスビーズは、握った時の圧力で適度に位置を変え、シリコーンゲルの粘着性と弾性による抵抗感を発揮しつつ、外力に応じて変形し、変形後は粘着性によって形状保持能力を発揮して、腰のある良好な感触が得られる。
【0032】
変形の際、略六角形平面の部分は頂点部に比べ空間幅が広い為、適度な軟らかさと変形量が確保され、頂点部では変形量が小さいため硬めの触感となる。特に親指、人差し指、中指の3本の各指が略六角形平面の箇所に当接すると、内部のガラスビーズが平面に沿って配列するので、外層と内層の間に適度な隙間が出来るため、軸体の触感が指先に伝わりにくくなり、把持した際の痛みや違和感が解消出来る。
【0033】
図5は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例の図である。図6は図5のA−A‘線断面図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に粘着性のある物質及び微細な固体を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は内層、参照符号4は外層、参照符号5は粘着性のある物質、参照符号6は微細な固体である。
【0034】
実施例3として、軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。軸筒1の把持部2で覆われる部分は断面が楕円形となっており、内層3も同様に楕円形となっていることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変化させている。微細な固体6としてガラスビーズ(ユニビーズUB−1719LN、(株)ユニオン製)を内層と外層の間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(WACKER Silgel612、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。
【0035】
シリコーンゲル及びガラスビーズは、握った時の圧力で適度に位置を変え、シリコーンゲルの粘着性と弾性による抵抗感を発揮しつつ、外力に応じて変形し、変形後は粘着性によって形状保持能力を発揮して、腰のある良好な感触が得られる。
【0036】
変形の際、楕円短径部は長径部に比べ空間幅が広い為、適度な軟らかさと変形量が確保され、長径部では変形量が小さいため硬めの触感となる。特に親指、人差し指、中指の3本の各指で挟むように把持する際には、楕円短径部の箇所に当接することで指先が平面部に当たるため軸体の触感が指先に伝わりにくくなり、把持した際の痛みや違和感が解消出来る。
【0037】
図7は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例の図である。図8は図7のA−A‘線断面図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に粘着性のある物質及び微細な固体を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は内層、参照符号4は外層、参照符号5は粘着性のある物質、参照符号6は微細な固体である。
【0038】
実施例4として、軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。軸筒1の把持部2で覆われる部分は、把持部外層を形成する円筒と中心が異なる円筒とすることで、把持部の内層と外層の距離を部分的に変化させている。微細な固体6としてガラスビーズ(ユニビーズUB−1719LN、(株)ユニオン製)を内層と外層の間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(WACKER Silgel612、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。
【0039】
シリコーンゲル及びガラスビーズは、握った時の圧力で適度に位置を変え、シリコーンゲルの粘着性と弾性による抵抗感を発揮しつつ、外力に応じて変形し、変形後は粘着性によって形状保持能力を発揮して、腰のある良好な感触が得られる。
【0040】
変形の際、空間幅が広い部分は狭い部分に比べて適度な軟らかさと変形量が確保される。空間の広さが連続的に変化しているため、自分の持ち方に適した位置で把持することが出来る。また、内部のガラスビーズが偏在していることから、重心が空間が広い方にあるため、机上等で筆記具の転がり、落下を防止する役目も果たす。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、軸体の少なくとも把持部する部分に弾性樹脂を設けた軸体に関するものである。その軸体の例としては、シャープペンシルやボールペン、修正ペンなどの筆記具、カッターや彫刻刀、ドライバーなどの工具類、PDA(パーソナル デジタル アシスタンス)や電子手帳に使用される入力ペン、自転車のハンドルなど多岐にわたる。
【符号の説明】
【0042】
1 軸体
2 把持部
3 把持部内層
4 把持部外層
5 微細な固体
6 粘着性のある物質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の把持部に少なくとも弾性樹脂を配置及び/または一体に設けた軸体において、軸体と把持部との間、または、把持部の内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または粘着性を有する物質を配したこと、及び、把持部で覆われる部分の軸体の断面を異形にしたことを特徴とする軸体。
【請求項2】
前記空間に微細な固体及び粘着性を有する物質を配し、その微細な固体の大きさを、前記空間の最小の幅よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の軸体。
【請求項3】
前記把持部に少なくとも内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に粘着性を有する物質を配したことを特徴とする軸体
【請求項4】
前記空間に微細な固体及び粘着性を有する物質を配し、その微細な固体の大きさを、前記空間の最小の幅よりも小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の軸体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate