説明

軸受搬送用コンテナ

【課題】安定して転がり軸受を搬送可能な軸受搬送用コンテナを提供する。
【解決手段】本発明のコンテナ10は、底面12Aが正方形をなし、その底面12Aに転がり軸受Wの一端面を重ねて収容するので、底面が長方形のコンテナに比べて内部のスペースの有効利用が図られる。しかも、その底面12Aの対角線上に延びた水平位置決溝15Bにおける任意の位置決突片16に4つの横ずれ規制部品30を係合したので、それら4つの横ずれ規制部品30を転がり軸受Wの外周面を4等分する位置に容易に宛がうことができる。これにより、従来のように一部の横ずれ規制部品30に多大な負荷がかかって変形することが防がれ、安定して転がり軸受Wを搬送することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面が正方形の箱形をなし、その底面に転がり軸受の一端面を重ねて収容可能な軸受搬送用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軸受搬送用コンテナとして、底面全体に複数の位置決め嵌合孔を設け、任意の位置決め嵌合孔に嵌合した4つの横ずれ規制部品を転がり軸受の外周面に宛がうことで転がり軸受の横ずれを防止する構成のコンテナが知られている。また、これと同様の横ずれ防止機構を有したコンテナとして、植木鉢やロール等の略円柱形状の荷物を収容可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−128154号公報(第4図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の軸受搬送用コンテナでは、転がり軸受の外周面を周方向で4等分する位置に4つの横ずれ規制部品を配置することが困難であった。このため、搬送中にコンテナ内で横Gを受けた転がり軸受が比較的間隔が広くなった1対の横ずれ規制部品の間に割り込むように押し付けられることで、一部の横ずれ規制部品が多大な負荷を受けて変形し、コンテナ内で転がり軸受が不安定になる事態が起こり得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、安定して転がり軸受を搬送可能な軸受搬送用コンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、底面が正方形の箱形をなし、その底面に転がり軸受の一端面を重ねて収容可能な軸受搬送用コンテナにおいて、底面の対角線上に延びた複数の水平ガイドと、各水平ガイドの長手方向に沿って複数設けられた水平位置決係合部と、任意の水平位置決係合部に係合して各水平ガイドの長手方向の任意の位置に位置決めされた状態で底面から突出し、転がり軸受の内周面又は外周面を周方向で4等分する位置に宛がわれて転がり軸受の横ずれを規制する4つの横ずれ規制部品とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の軸受搬送用コンテナにおいて、複数の水平ガイドは、軸受搬送用コンテナの底面における対角線上に陥没形成された複数の水平位置決溝として設けられ、複数の水平位置決係合部は、水平位置決溝の内部に配置され、横ずれ規制部品は、水平位置決溝に受容されて任意の水平位置決係合部に係合しかつ一部が転がり軸受に上方から覆われて上方への移動が規制されるベース部と、ベース部のうち転がり軸受によって覆われていない部分から上方に突出して転がり軸受の内周面又は外周面に宛がわれる位置決突部とを備えてなるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の軸受搬送用コンテナにおいて、位置決突部は、ベース部から上方に突出した円柱形状又は円筒形状をなしているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の軸受搬送用コンテナにおいて、位置決突部の上端部は、上方に向かって膨出した半球状をなしているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の軸受搬送用コンテナにおいて、軸受搬送用コンテナの底面には、各水平ガイドの長手方向に沿って複数種類の転がり軸受の外径を表示した複数の外径表示目印が設けられ、任意の外径表示目印に合わせて各横ずれ規制部品を水平位置決係合部に係合することで、任意の外径の転がり軸受の横ずれを規制可能な位置に配置可能としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の軸受搬送用コンテナにおいて、軸受搬送用コンテナの底面には、その中央から側方に向かって延びた軸受取出用溝が陥没形成され、軸受取出用溝に工具又は指を挿入して転がり軸受を下方から持ち上げ可能としたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の軸受搬送用コンテナは、底面が正方形をなし、その底面に転がり軸受の一端面を重ねて収容するので、底面が長方形のコンテナに比べて内部のスペースの有効利用が図られる。しかも、その底面の対角線上に延びた水平ガイドにおける任意の水平位置決係合部に4つの横ずれ規制部品を係合したので、それら4つの横ずれ規制部品を転がり軸受の内周面又は外周面を4等分する位置に容易に宛がうことができる。これにより、従来のように一部の横ずれ規制部品に多大な負荷がかかって変形することが防がれ、安定して転がり軸受を搬送することが可能になる。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の軸受搬送用コンテナでは、水平ガイドとしての複数の水平位置決溝内にそれぞれ横ずれ規制部品に備えたベース部を受容すると、ベース部が任意の水平位置決係合部に係合して水平方向で位置決めされる。そして、コンテナに転がり軸受を収容すると、各横ずれ規制部品の位置決突部が、転がり軸受の内周面又は外周面に宛がわれ、転がり軸受の横ずれが規制される。この状態で転がり軸受は各ベース部の一部を上方から覆っているので、ベース部を水平位置決溝における任意の位置に容易に抜け止めすることができる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の軸受搬送用コンテナでは、位置決突部が円柱形状又は円筒形状であるので、転がり軸受の表面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0015】
[請求項4の発明]
請求項4の軸受搬送用コンテナでは、位置決突部の上端部が半球状になっているので、転がり軸受がコンテナに収容される際に誤って位置決突部の上端部に当接しても、転がり軸受に傷が付き難い。
【0016】
[請求項5の発明]
請求項5の軸受搬送用コンテナでは、任意の外径表示目印に合わせて各横ずれ規制部品を水平位置決係合部に係合することで、その任意の外径表示目印に対応した外径の転がり軸受の横ずれを規制可能な位置に横ずれ規制部品を配置することができる。
【0017】
[請求項6の発明]
請求項6の軸受搬送用コンテナでは、底面に形成された軸受取出用溝に工具又は指を挿入して転がり軸受を下方から持ち上げて取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る軸受搬送用コンテナの斜視図
【図2】軸受搬送用コンテナの斜視図の平面図
【図3】図2のA−A切断面で切断した軸受搬送用コンテナの斜視図
【図4】図2のB−B切断面で切断した軸受搬送用コンテナの斜視図
【図5】軸受搬送用コンテナの斜視図
【図6】軸受搬送用コンテナ及び横ずれ規制部品の破断斜視図
【図7】軸受搬送用コンテナ及び横ずれ規制部品の側断面図
【図8】矩形膨出部及び側壁溝の拡大斜視図
【図9】跳上規制部品の斜視図
【図10】スペーサ部品の斜視図
【図11】スライド部を側壁溝に挿入する前状態の斜視図
【図12】スライド部を側壁溝に挿入した状態の斜視図
【図13】係合突起を位置決係合孔に凹凸係合させた状態の斜視図
【図14】スペーサ部品を側壁溝に挿入した状態の斜視図
【図15】軸受搬送用コンテナの側断面図
【図16】軸受搬送用コンテナの側断面図
【図17】軸受搬送用コンテナの側断面図
【図18】軸受搬送用コンテナの側断面図
【図19】軸受搬送用コンテナの底面の一部拡大平面図
【図20】従来の軸受搬送用コンテナの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図19に基づいて説明する。図1に示すように、本発明に係る軸受搬送用コンテナ10(以下、単に「コンテナ10」という)は、上面が開放した直方体状をなし、内側に横ずれ規制部品30及び跳上規制部品40が組み付けれている。そして、転がり軸受Wがコンテナ10の底面12Aに一端面を重ねた状態で収容され、横ずれ規制部品30及び跳上規制部品40にて固定されるようになっている。
【0020】
具体的には、コンテナ10の底面12Aは正方形になっていて、コンテナ10の上下の奥行きは底面12Aの1辺より小さくなっている。また、コンテナ10の外側面からは補強リブ13Lが張り出し、補強リブ13Lの一部は、側壁13の上縁部全体に配置されて上面フランジ13Xを構成している。さらに、コンテナ10の上面四隅には、上面フランジ13Xを陥没させて上面凹部13Kが形成される一方、コンテナ10の下面四隅からはコンテナ脚部14が突出している。そして、コンテナ10を複数積み上げたときに、各コンテナ脚部14が各上面凹部13Kに嵌るようになっている。
【0021】
図5に示すように、コンテナ10のうち第1の水平方向で互いに対向した1対の側壁13,13の外面上部中央には、コンテナ10を持ち上げる際に指先を掛けるための持ち手部13H,13Hが設けられている(図5には一方の持ち手部13Hのみが示されている)。各持ち手部13Hは、水平方向に延びた補強リブ13Lにて構成されている。
【0022】
コンテナ10のうち第2の水平方向で互いに対向した1対の側壁13,13の上部中央には矩形膨出部21,21がそれぞれ設けられている。図8(A)に示すように、各矩形膨出部21は、側壁13のうち補強リブ13L及び矩形膨出部21を除いた平板状の側壁本体13Sの外面から段付き状に張り出した縦長の略箱形構造をなし、矩形膨出部21の内側が側壁溝20になっている。より詳細には、矩形膨出部21は、上面フランジ13Xの先端縁寄り位置から下方に延びて側壁本体13Sと略平行になった縦長の長方形の溝奥部壁21Aと、その溝奥部壁21Aと側壁本体13Sとの間を連絡した溝段差壁21Bとを有している。また、両側部の溝段差壁21B,21Bと側壁本体13Sとの交差部分には、側壁本体13Sから1対の溝前部壁13V,13Vが互いに接近するように延設されている。それら溝前部壁13V,13Vは、図8(B)に示すように、側壁溝20の上下方向全体に亘って延びかつ溝奥部壁21Aと略平行になっている。これら溝前部壁13V,13Vにより側壁溝20は、側壁13の内面に開放した側面溝開口20Bより奥側が両側方に広い構造になっている。
【0023】
図8(A)に示すように、溝奥部壁21Aのうち溝前部壁13V,13Vと対向する両側部には、複数の位置決係合孔22が貫通形成されている。位置決係合孔22は、横長長方形のスリット状になっており、一定の間隔b(図18参照)を空けて例えば8つずつ上下方向に並べられかつ左右対称に配置されている。
【0024】
側壁溝20のうち上方に開放した端面溝開口20Aの開口縁には、上面フランジ13Xのうち溝奥部壁21Aより外側を段付き状に陥没させて開口段差部13Dが形成されている。また、矩形膨出部21の外面には、その上端寄り位置に補強リブ13Lの一部である横リブ13Yが横切っている。さらに、矩形膨出部21の外面上部における幅方向の中央には、縦リブ13Zが形成されて横リブ13Yと上面フランジ13Xとの間を連絡している。
【0025】
図2に示すように、コンテナ10の底壁12の内面の中央には、円形陥没部15Cが形成されると共に、円形陥没部15Cから放射線状に複数の軸受取出用溝15Aと複数の水平位置決溝15Bとが延びている。水平位置決溝15Bは、円形陥没部15Cから四方に延びた底面12Aの対角線に沿う位置に配置されている。一方、軸受取出用溝15Aは、隣り合った水平位置決溝15B,15B同士の中央に配置されている。
【0026】
図5に示すように、各水平位置決溝15Bは、底壁12の内面を段付き状に陥没させた構造をなし、その内の長手方向に沿って複数の位置決突片16(本発明の「水平位置決係合部」に相当する)が等間隔に並んでいる。各位置決突片16は、水平位置決溝15Bの底面と両内側面とに直交した状態に連結されている。また、図7に示すように、位置決突片16の上端縁全体は、底壁12の上面より下方に位置している。さらに、図5に示すように、位置決突片16の上端縁の両側端部には、切欠部16Kが形成されている。なお、各水平位置決溝15Bのうち円形陥没部15Cから離れた端部には、切欠部16Kを有しない終端突片16Bが備えられている。
【0027】
一方、軸受取出用溝15Aは、水平位置決溝15Bから位置決突片16及び終端突片16Bを排除した構造になっている。これにより、コンテナ10内から転がり軸受Wを取り出す際には、円形陥没部15Cから軸受取出用溝15Aに工具又は指を挿入して容易に転がり軸受Wをコンテナ10から取り出すことができる。
【0028】
図2に示すように、底面12Aのうち各水平位置決溝15Bの両側縁部には、本発明に係る複数の外径表示目印90が付されている。各外径表示目印90は、図19に拡大して示されており、例えば、底面12Aの図心からの距離の2倍の長さを転がり軸受Wの直径として表示した数値部90Aとその数値部90Aから水平位置決溝15Bに向かって延びた位置合わせライン90Bとから構成されている。
【0029】
次に、横ずれ規制部品30の構成について説明する。図6に示すように、横ずれ規制部品30は、ベース部32から位置決突部31が起立した構造になっている。ベース部32は、水平位置決溝15Bの長手方向に延びた平面形状長方形のベース板32Aから下方に複数の係合脚片33を垂下した形状になっている。それら係合脚片33は平板状をなし、ベース板32Aの長手方向の両端部に複数ずつ偏在している。詳細には、ベース板32Aの一端部には2つの係合脚片33が配置され、他端部には4つの係合脚片33が配置されている。そして、一端部側から2つずつの係合脚片33,33がペアになって、それらペアの係合脚片33,33における側縁部同士の間が門形壁34にてそれぞれ連絡されている。また、各門形壁34には、下端部から上端寄り位置に亘ってスリット35が形成されている。さらに、ベース板32Aの幅方向の両端の縁部からは下方に向けて脚片連絡壁37が突出している。脚片連絡壁37の下端部は、上下方向においてスリット35の上端部と同じ位置に配置されている。
【0030】
なお、ベース板32Aの他端部において、門形壁34にて連絡されていない係合脚片33,33同士の間は突片受容隙間36になっていて、その突片受容隙間36は、前記したスリット35の幅と略同一幅になっている。
【0031】
一方、位置決突部31は、ベース部32の長手方向における一端寄り位置から起立した円筒体31Aの上端部をドーム状(半球状)の上端壁31Bで閉塞した構造になっている。また、ベース部32の内周面からは中心に向かって補強用の内部リブ31Cが突出している。
【0032】
図19に示すように、ベース部32の上面には、その幅方向の両側部に1対の位置合わせ目印91,91が付されている。それら位置合わせ目印91,91は、ベース部32の幅方向に延びかつ位置決突部31の側面に接する接線上に延びた外向きの矢印形状をなしている。
【0033】
次に、跳上規制部品40の構成について説明する。図9(A)に示すように、跳上規制部品40は、平面形状四角形のワーク規制部41における一側面中央から中継部42を水平方向に突出させて、その中継部42の先端にスライド部43を備えた構造になっている。詳細には、ワーク規制部41は、図9(B)に示した四角形のワーク規制プレート41Aの外縁部全体から囲壁41Bを直立させて、その内側に図9(A)に示した格子壁41Cを張り巡らせた構造になっている。また、その格子壁41Cの先端面は、囲壁41Bの先端面と面一になっている。
【0034】
中継部42は、ワーク規制部41の幅方向の中央において格子壁41Cの2升分を横に並べて囲壁41Bの外側に配置し、さらに、ワーク規制プレート41Aから延長した突片(図示せず)にてその2升の一端面を閉塞した構造になっている。
【0035】
図9(A)に示すように、スライド部43は、ワーク規制部41の囲壁41Bと平行なスライドプレート43Aを中継部42の先端に一体形成して備えている。スライドプレート43Aは、横長の長方形状になっていて中継部42の両側方(ワーク規制部41の幅方向)と図9(A)における下方とに張り出し、スライドプレート43Aの上端部はワーク規制部41及び中継部42の上端面と面一になっている。スライドプレート43Aのうちワーク規制部41と反対側の面には、横方向の両端部から複数の位置決係合突起44が突出している。これら位置決係合突起44は、スライドプレート43Aから突出した突板状をなし、位置決係合孔22同士の上下の間隔と同じ一定の間隔b(図18参照)を空けて例えば4つずつ上下に並べられかつ左右対称に配置されている。
【0036】
左右の位置決係合突起44群同士の間には、4つの水平連結リブ43Cが上下に並べられ、各水平連結リブ43Cが横方向で隣り合った位置決係合突起44,44の間を連絡している。また、スライド部43の上下の両端面では、水平連結リブ43Cと位置決係合突起44とが面一になっている。さらに、水平連結リブ43Cの横方向の中央には、水平連結リブ43C同士を連結する垂直連結リブ43Dが備えられ、スライドプレート43Aの両側縁には上下に並んだ位置決係合突起44の側部間を連結する側部連結リブ43B,43Bが備えられている。これら側部連結リブ43B、水平連結リブ43C及び垂直連結リブ43Dは、位置決係合突起44よりスライドプレート43Aからの突出量が小さくなっていて、これにより各位置決係合突起44の先端部がスライド部43全体からワーク規制部41と反対側に突出している。なお、各位置決係合突起44の先端の上縁部と下縁部とには、先端側に向かうに従って互いに接近するように傾斜したガイド面44S,44Sが備えられている。
【0037】
跳上規制部品40は、図9(A)及び図15に示すように、ワーク規制部41のワーク規制プレート41Aを格子壁41Cより下側に配置した第1姿勢と、図9(B)及び図17に示すように、ワーク規制部41のワーク規制プレート41Aを格子壁41Cより上側に配置した第2姿勢との両方の姿勢でコンテナ10の側壁溝20に取り付けることができる。また、何れの姿勢であっても跳上規制部品40を側壁溝20に取り付けるには、図11から図12に示すように、スライド部43を端面溝開口20Aから側壁溝20に挿入しかつ中継部42を側面溝開口20B内に上端部から挿入すればよい。そして、スライド部43を側壁溝20内の任意の高さに配置し、スライド部43を側壁溝20の溝奥部壁21A側の凹凸係合位置に移動して、位置決係合突起44群を位置決係合孔22群の一部に凹凸係合させる。この状態で、次述するスペーサ部品60を溝前部壁13Vとスライド部43との隙間に挿入すると、スライド部43が凹凸係合位置から溝前部壁13V側の係合解除位置へと移動できなくなり、跳上規制部品40の側壁溝20への取り付けが完了する。そして、コンテナ10の底壁12上に載置された転がり軸受Wに対し、ワーク規制部41が上方から宛がわれ、転がり軸受Wの上方への跳ね上がりを規制することができる。
【0038】
ここで、本実施形態では、跳上規制部品40を第1姿勢にするか第2姿勢にするかによって、ワーク規制部41の下面の高さ位置(図18のx,y参照)が異なる。具体的には、図18に示すように、跳上規制部品40を第1姿勢にしたときのワーク規制部41の下面(ワーク規制プレート41Aのうち格子壁41Cと反対側の面)を第1ワーク押え面41Xとし、跳上規制部品40を第2姿勢にしたときのワーク規制部41の下面(格子壁41Cのうちワーク規制プレート41Aと反対側の面)を第2ワーク押え面41Yとし、さらに、位置決係合孔22,22同士の上下の間隔bを1ピッチと呼ぶこととすると、跳上規制部品40を第2姿勢にした状態では、図18の実線で示すように、ワーク規制部41の第2ワーク押え面41Yは、側壁溝20の内側下面と同じ第1位置y1と、その第1位置y1より1ピッチ上方の第2位置y2、第1位置y1より2ピッチ上方の第3位置y3、第1位置y1より3ピッチ上方の第4位置y4とに位置決めすることができる。
【0039】
これに対し、跳上規制部品40を第1姿勢にした状態では、図18の二点鎖線で示すようにワーク規制部41の第1ワーク押え面41Xは、側壁溝20の内側下面(即ち、上記した第1位置y1)から上方に1.5ピッチ上方の第1位置x1と、その第1位置x1から1ピッチ上方の第2位置x2、第1位置x1から2ピッチ上方の第3位置x3、第1位置x1から3ピッチ上方の第4位置x4とに位置決めすることができる。即ち、本実施形態では、上記したワーク規制部41の下面を、側壁溝20の内側下面より1ピッチ上方の第2位置y2から側壁溝20の内側下面より3.5ピッチ上方の第3位置x3までの範囲で、0.5ピッチ刻みで変更して位置決めすることができる。
【0040】
なお、上記のように跳上規制部品40を第1姿勢にするか第2姿勢にするかによって、ワーク規制部41の下面の高さ位置が異なるようにするために、本実施形態の跳上規制部品40は、第1姿勢としたときに例えば最下部となる位置決係合突起44の下面からワーク規制部41の下面までの距離と、第2姿勢としたときに最下部となる位置決係合突起44の下面からワーク規制部41の下面までの距離との差を、位置決係合孔22,22同士の上下の間隔bの整数倍からずらした値(例えば、間隔bの1.5倍)になるように構成されている。
【0041】
次に、スペーサ部品60の構成について説明する。図10に示すように、スペーサ部品60は側壁溝20の端面溝開口20Aを閉塞可能な長方形の板蓋61を備え、その板蓋61の一方の長辺における両端部から1対のスライド脚部62,62が垂下する一方、他方の長辺における中央部から係止突片63が垂下した構造になっている。
【0042】
板蓋61は、図14に示すように、係止突片63側の端部が上面フランジ13Xにおける開口段差部13Dに収まり、スライド脚部62側の端部が端面溝開口20Aの内側に嵌って端面溝開口20Aを閉塞する。この状態で板蓋61の上面は、上面フランジ13X全体の上面より若干下方に位置する。
【0043】
図10に示すように、各スライド脚部62は、上下方向に延びた帯板状の両側縁部から係止突片63側に1対の突条62A,62Aを突出させた構造になっている。また、各スライド脚部62と板蓋61における短辺側の外縁部との間は四角形の補強リブ61Lにて連結されている。そして、図15及び図16に示すように、板蓋61が端面溝開口20Aを閉塞した状態で、溝前部壁13Vと溝奥部壁21Aとの間に補強リブ61Lとスライド脚部62の基端部とが嵌り、溝前部壁13Vと溝奥部壁21Aとの対向方向でスペーサ部品60を位置決めする。また、スライド脚部62は側壁溝20の奥部まで挿入された状態で、スライド脚部62の先端は、側壁溝20の下面に隣接又は接触した状態になる。
【0044】
図10に示すように、係止突片63は、板蓋61から下方の直角曲げされた突片構造をなし、上下より左右の幅が大きくなっている。また、係止突片63は、板蓋61側の縁部に沿って延びたスリット63Sを幅方向の中央に備え、係止突片63の裏面には、スリット63Sより下方に1対の係止突起64,64(本発明の「抜止手段」に相当する)を横並びにして備えている。そして、スライド脚部62を側壁溝20に上方から挿入していく過程で、係止突起64,64における下向きの斜面が上面フランジ13Xの外縁部に摺接して係止突片63が外側に撓み、図14に示すように、板蓋61が端面溝開口20Aを閉塞した状態で、係止突起64,64が上面フランジ13Xを乗り越えて、縦リブ13Zの両側で上面フランジ13Xの下面に係止して、スペーサ部品60を側壁溝20に抜け止めする。
【0045】
本実施形態のコンテナ10に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。転がり軸受Wは、以下のようにしてコンテナ10内に固定される。まず、転がり軸受Wをコンテナ10に収容する前に4つの横ずれ規制部品30を水平位置決溝15Bに装着する。そのためには、コンテナ10に収容する予定の転がり軸受Wの外径に対応した外径表示目印90の位置合わせライン90Bに、各横ずれ規制部品30の位置合わせ目印91,91を一致させてベース部32を水平位置決溝15B内に上方から嵌合する。すると、図7に示すように、門形壁34の上端部及び脚片連絡壁37が位置決突片16の切欠部16K(図5参照)内に収まると共に、位置決突片16が門形壁34のスリット35及び突片受容隙間36に収まり、さらに、各係合脚片33が隣り合った位置決突片16,16の間に収まる。また、位置決突片16の上端部は、ベース板32Aの下面に突き当てられる。これらにより、ベース部32が水平位置決溝15B内で位置決めされる。そして、各横ずれ規制部品30のベース部32の上面が、底壁12の上面より若干低い位置に位置し、各横ずれ規制部品30の位置決突部31が、底壁12の上面より上方に突出した状態になる。
【0046】
この状態で、4つの横ずれ規制部品30の位置決突部31群の内側に転がり軸受Wを寝かせた状態で収容する。このとき、誤って転がり軸受Wが位置決突部31の上端部に当接しても、位置決突部31の上端部は半球状になっているので、転がり軸受Wが傷付くことが防がれる。また、転がり軸受Wが正規の収容位置から多少ずれていても、転がり軸受Wの外縁部が位置決突部31の上端部の球面に摺接して転がり軸受Wが正規の収容位置に案内される。そして、転がり軸受Wの一端面が底面12Aに重なるように載置され、各横ずれ規制部品30におけるベース部32のうち位置決突部31より底面12Aの中央側に位置した部分が転がり軸受Wによって上方から覆われる。これによりベース部32の水平位置決溝15Bにおける抜け止めが図られる。そして、位置決突部31群が転がり軸受Wの外周面を4等分する位置にそれぞれ宛われて、転がり軸受Wの四方への横ずれが防がれる。
【0047】
次いで、図11から図12に示すように、例えば、跳上規制部品40を第1姿勢にしてスライド部43を端面溝開口20Aから側壁溝20に挿入し、ワーク規制部41を転がり軸受Wに当接させた位置で、図13に示すように跳上規制部品40を側壁溝20の溝奥部壁21A側の凹凸係合位置に移動して、位置決係合突起44を位置決係合孔22に凹凸係合させる。このとき、位置決係合突起44の溝奥部壁21A側に押し付けても位置決係合孔22に凹凸係合できない場合には、側壁溝20からスライド部43を一度抜いて、図17に示すように反転させてから側壁溝20に挿入し、ワーク規制部41を転がり軸受Wに当接させた位置で位置決係合突起44を位置決係合孔22に凹凸係合させる。
【0048】
位置決係合突起44を位置決係合孔22に凹凸係合させたらスライド部43と側壁溝20の溝前部壁13Vとの隙間にスペーサ部品60のスライド脚部62を挿入する。そして、スペーサ部品60の係止突起64をコンテナ10の上面フランジ13Xに係止させる。これにより、スペーサ部品60によってスライド部43の水平移動が規制され、位置決係合突起44と位置決係合孔22との凹凸係合の解除が禁止され、跳上規制部品40の側壁溝20への取り付けが完了する。すると、両側壁溝20,20に取り付けられた跳上規制部品40,40のワーク規制部41,41が、図3に示すように、転がり軸受Wに上方から宛がわれた状態になり、転がり軸受Wの上方への跳ね上がりが規制される。
【0049】
上記したように本実施形態のコンテナ10は、底面12Aが正方形をなし、その底面12Aに転がり軸受Wの一端面を重ねて収容するので、底面が長方形のコンテナに比べて内部のスペースの有効利用が図られる。しかも、その底面12Aの対角線上に延びた水平位置決溝15Bの任意の位置決突片16に4つの横ずれ規制部品30が係合するので、それら4つの横ずれ規制部品30を転がり軸受Wの外周面を4等分する位置に容易に宛がうことができる。これにより、従来のように一部の横ずれ規制部品30に多大な負荷がかかって変形することが防がれ、安定して転がり軸受Wを搬送することが可能になる。また、横ずれ規制部品30のうち転がり軸受Wに接触する位置決突部31は円筒形状であるので、転がり軸受Wの表面に傷が付くことが防がれる。さらには、位置決突部31の上端部が半球状になっているので、転がり軸受Wがコンテナ10に収容される際に誤って位置決突部31の上端部に当接しても、転がり軸受Wに傷が付き難い。
【0050】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 軸受搬送用コンテナ
12 底壁
12A 底面
13 側壁
13V 溝前部壁
15B 水平位置決溝
16 位置決突片(水平位置決係合部)
20 側壁溝
20A 端面溝開口
20B 側面溝開口
21A 溝奥部壁
22 位置決係合孔
30 横ずれ規制部品
31 位置決支柱
32 ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が正方形の箱形をなし、その底面に転がり軸受の一端面を重ねて収容可能な軸受搬送用コンテナにおいて、
前記底面の対角線上に延びた複数の水平ガイドと、
各前記水平ガイドの長手方向に沿って複数設けられた水平位置決係合部と、
任意の前記水平位置決係合部に係合して各前記水平ガイドの長手方向の任意の位置に位置決めされた状態で前記底面から突出し、前記転がり軸受の内周面又は外周面を周方向で4等分する位置に宛がわれて前記転がり軸受の横ずれを規制する4つの横ずれ規制部品とを備えたことを特徴とする軸受搬送用コンテナ。
【請求項2】
複数の前記水平ガイドは、前記軸受搬送用コンテナの底面における対角線上に陥没形成された複数の水平位置決溝として設けられ、
複数の前記水平位置決係合部は、前記水平位置決溝の内部に配置され、
前記横ずれ規制部品は、前記水平位置決溝に受容されて任意の前記水平位置決係合部に係合しかつ一部が前記転がり軸受に上方から覆われて上方への移動が規制されるベース部と、前記ベース部のうち前記転がり軸受によって覆われていない部分から上方に突出して前記転がり軸受の内周面又は外周面に宛がわれる位置決突部とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の軸受搬送用コンテナ。
【請求項3】
前記位置決突部は、前記ベース部から上方に突出した円柱形状又は円筒形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の軸受搬送用コンテナ。
【請求項4】
前記位置決突部の上端部は、上方に向かって膨出した半球状をなしていることを特徴とする請求項3に記載の軸受搬送用コンテナ。
【請求項5】
前記軸受搬送用コンテナの底面には、各前記水平ガイドの長手方向に沿って複数種類の転がり軸受の外径を表示した複数の外径表示目印が設けられ、任意の前記外径表示目印に合わせて各前記横ずれ規制部品を前記水平位置決係合部に係合することで、任意の外径の転がり軸受の横ずれを規制可能な位置に配置可能としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の軸受搬送用コンテナ。
【請求項6】
前記軸受搬送用コンテナの底面には、その中央から側方に向かって延びた軸受取出用溝が陥没形成され、前記軸受取出用溝に工具又は指を挿入して前記転がり軸受を下方から持ち上げ可能としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の軸受搬送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−16586(P2011−16586A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125611(P2010−125611)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】