説明

軸受温度監視装置及びこれをそなえた軸受装置

【課題】軸受材の表面に臨む金属製の温度感知部材との接触による回転軸の傷の発生を回避して、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止し、信頼性が向上された軸受温度監視装置及びこれをそなえた軸受装置を提供する。
【解決手段】前記軸受材に該軸受材の内面に連通するように穿孔された取付孔と、該取付孔に相対移動可能に嵌合されて温度検出端面が前記軸受材の軸受面に臨むとともに前記軸受面側への突出量を規制する突出量規制部を有し前記軸受材よりも熱伝導率の大きい材料からなる温度感知部材と、突出量規制位置から反軸受面側へ一定量移動可能な形態で軸受材側へ押圧する押圧部材と、温度感知部材に電気的に接続されて温度感知部材の温度を検出する温度検出器とをそなえてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏金材の内側に樹脂材で構成された軸受材を固着してなる軸受の温度を監視する軸受温度監視装置及び該軸受温度監視装置をそなえた軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン、ガスタービン等の高速回転する軸のラジアルジャーナル軸受あるいはスラスト軸受においては、樹脂材で構成された軸受材を裏金材の内側に固着した軸受が採用されている。かかる高速回転軸の樹脂材製軸受は、軸の高速回転による軸受温度上昇が大きく、且つ樹脂材はホワイトメタル等の銅合金軸受に比べて熱伝導率が低いことから、かかる熱伝導率の低さによる軸受温度上昇が加わるため、常時軸受温度を監視して装置の運転をすることが要求される。
前記のような、樹脂材で構成された軸受材を裏金材の内側に固着した軸受の温度を監視する軸受温度監視装置の一つとして、特許文献1(特開2006−112602号公報)の技術が提供されている。
【0003】
図9は特許文献1(特開2006−112602号公報)における軸受温度監視装置の軸受温度検出部の軸方向要部断面図である。
図9において、01はラジアルジャーナル軸受からなる軸受で、裏金材03の内側に樹脂材で構成された軸受材02を固着してなる。
かかる軸受01における軸受温度監視装置の軸受温度検出部は、前記裏金材03に穿孔された有底孔03f内に嵌合された断熱材03gと、金属材料からなり前記軸受材02の貫通孔03cに嵌合され先端が軸受材02の内面と面一に配置された測温用金属部片03dと、前記裏金材03の挿通孔03eに嵌合され前記測温用金属部片03dに電気的に接続される温度検出器03hとをそなえ、金属材料からなる前記測温用金属部片03dで前記軸受材02を検出して前記温度検出器03hに伝送するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−112602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9に示される特許文献1の軸受温度監視装置においては、軸受材02の貫通孔03cに嵌合され先端が軸受材02の内面と面一に配置された金属材料からなる測温用金属部片03dに温度検出器03hを接続して軸受温度検出部を構成しているが、かかる従来技術には次のような解決すべき問題点がある。
即ち、前記軸受材02を構成する樹脂材はヤング率がホワイトメタル等の銅合金軸受に比べて小さく(ホワイトメタルのヤング率=52GPa程度に対して樹脂材のヤング率=13GPa程度)、このため樹脂材からなる軸受材02は、回転軸側から該軸受材02に加わる軸受荷重に対する該軸受材02の圧縮量がホワイトメタル等の銅合金軸受材に比べて大きくなる。
【0006】
然るに、図9に示される特許文献1の技術にあっては、測温用金属部片03dをその先端面が軸受材02の内面と面一になるようにして該軸受材02に固定して取り付けているため、軸受荷重による樹脂材からなる軸受材02の圧縮量が大きくなることによって、図9に破線で示す突出量Bのように、軸受材02の表面から相対的に測温用金属部片03dが回転軸側へ突出することとなり、かかる測温用金属部片03dの回転軸側への突出によって、回転軸に傷が発生し、軸受負荷能力が低下するとともにかかる傷が回転軸の破損を誘発するおそれもある。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、裏金材の内側に樹脂材で構成された軸受材を固着してなる軸受の温度を監視する軸受温度監視装置において、軸受材の表面に臨む金属製の温度感知部材との接触による回転軸の傷の発生を回避して、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止し、信頼性が向上された軸受温度監視装置及びこれをそなえた軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、裏金材の内側に樹脂材で構成された軸受材を固着してなる軸受の温度を監視する軸受温度監視装置において、前記軸受材に該軸受材の内面に連通するように穿孔された取付孔と、該取付孔に相対移動可能に嵌合されて温度検出端面が前記軸受材の軸受面に臨むとともに前記軸受面側への突出量を規制する突出量規制部を有し前記軸受材よりも熱伝導率の大きい材料からなる温度感知部材と、前記温度感知部材を前記突出量規制部による規制位置から反軸受面側へ一定量移動可能な形態で前記軸受材側へ押圧する押圧部材と、前記温度感知部材に電気的に接続されて該温度感知部材の温度を検出する温度検出器とをそなえてなることを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、好ましくは、前記軸受温度監視装置は、前記温度検出器で検出された軸受温度の電気信号を処理して軸受温度を算出する軸受温度処理装置と、該軸受温度処理装置で算出された軸受温度を表示する表示装置と、前記軸受温度処理装置で算出された軸受温度が許容値を超えたとき警報を発信する警報装置とをそなえる。
【0010】
かかる発明によれば、ホワイトメタル等の銅合金軸受に比べてヤング率の小さい樹脂材からなる軸受材が、回転軸側からの軸受荷重によって半径方向に圧縮されて該軸受材の肉厚が減少し該軸受材の内面が裏金材側に変位し、これとともに前記軸受荷重によって温度検出端面を介して温度感知部材が軸受の外側方向つまり裏金材の方向に押圧されると、該温度感知部材は突出量規制部による軸受の外側方向への移動規制位置から、前記押圧部材により反軸受面側へ一定量移動可能な形態で押圧するように構成されているので、前記軸受荷重が加わると該温度感知部材が押圧部材の押付力に抗して軸受の外側方向に、前記軸受材の内面ととともに該内面と同じ位置まで移動する。
【0011】
従って、回転軸側からの軸受荷重によって軸受材の圧縮量が大きくなっても、温度感知部材の温度検出端面がかかる軸受材の圧縮量に相当する量だけ軸受材の内面ととともに移動することによって、軸受材の表面から相対的に温度検出端面が回転軸側へ突出すること
が無くなる。これによって、温度感知部材の回転軸側への突出による回転軸の傷の発生を回避でき、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止できる。
また、軸受温度の検出値を表示装置に表示し、軸受温度が許容値を超えたとき警報装置により警報を発信するようになっているので、軸受温度を常時許容軸受温度に入るように監視できて、軸受温度の過昇を防止できる。
【0012】
また、かかる発明において、具体的には次のように構成するのが好ましい。
(1)前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記軸受材の外側面に当接させることにより該温度感知部材の前記軸受面側への突出量を規制するように構成されてなり、前記押圧部材は、前記裏金材の内部に形成されたスプリング室に収納されて前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成される。
このように構成すれば、前記温度感知部材を反軸受面側へ一定量移動可能な形態で押圧する押圧部材をスプリングで構成しているので、簡単な構造で以って前記温度感知部材を所定荷重で確実にセットできる。
【0013】
尚、かかる構成において、好ましくは次のように構成する。
前記温度感知部材は、前記温度検出端面と前記スプリング室内とを連通する圧力バランス用の連通孔が穿孔されてなる。
このように構成すれば、軸受材表面のオイルを連通孔を通して容易に温度感知部材の裏側に導くことができ,温度感知部材表裏の圧力バランスを保持できるので、軸受の油膜圧力の影響を受けることなく、温度感知部材と軸受材及び裏金材とのクリアランスの調整が容易になる。
【0014】
(2)前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記裏金材の軸受材側端部に形成された突出部に当接させることにより該温度感知部材の前記軸受面側への突出量を規制するように構成されてなり、前記押圧部材は、前記裏金材の内部に形成されたスプリング室に収納されて前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成される。
このように構成すれば、裏金材の軸受材側端部に形成された突出部に温度感知部材の突出量規制部を当接させて、該温度感知部材を裏金材に支持するので、温度感知部材の支持剛性が増大して、該温度感知部材の軸受温度の検出精度が向上する。
また、軸受材の背面に裏金材の突出部があるため、温度感知部材付近の軸受材が圧力変形し難く、温度感知部材を設置することによる軸受材が変形しやすくなることを防止できる。
【0015】
(3)前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記軸受材の外側面あるいは前記軸受材の外側に形成される前記裏金材の突出部のいずれかに当接させるように構成されてなり、前記温度感知部材の前記裏金材の内部に対向する面を断熱材で被覆する。
このように構成すれば、温度感知部材に入った熱が逃げ易い該温度感知部材の裏金材の内部への対向面を断熱材で被覆することにより、温度感知部材からの裏金材側への放熱を抑制できて、かかる放熱による軸受温度の検出精度の低下を防止できる。
【0016】
また、本発明は、前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記押圧部材は前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成され、前記温度感知部材及び前記押圧部材及び前記温度検出器を断熱材からなるケース内に収納するとともに、前記温度感知部材の段付き部を該ケースの内面に当接させることにより前記温度感知部材の軸受面側への突出量を規制する前記突出量規制部を構成したカートリッジ体を形成し、前記カートリッジ体を前記裏金材に着脱可能に取り付けたことを特徴とする。
【0017】
かかる発明によれば、断熱材からなるケース内に温度感知部材及び押圧部材及び温度検出器を収納してカートリッジ体を構成したので、断熱材からなるケースによって温度感知部材からの裏金材側への放熱の抑制効果が向上してかかる放熱による軸受温度の検出精度の低下を防止できるとともに、前記カートリッジ体をユニットで裏金材に着脱可能に取り付けるので、軸受温度検出部の組立て取外しが容易化される。
【0018】
また、本発明は、前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記押圧部材は弾性材からなる筒状のスリーブに形成され上端部が前記温度感知部材に固定され下端部が前記裏金材に固定されて前記温度感知部材の反軸受面側への移動により一定量圧縮可能に構成されてなり、前記押圧部材の内部に前記温度検出器を配置し、前記押圧部材により前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように構成したことを特徴とする。
【0019】
かかる発明によれば、温度検出器を温度感知部材及び筒状のスリーブとは独立して接地し、反軸受面側への移動を筒状の前記スリーブの弾性変形で吸収するので、温度検出器として汎用の熱電対を容易に利用できるとともに、該温度検出器の交換も容易にでき、装置コストを低減できる。
【0020】
かかる発明において、好ましくは次のように構成する。
前記温度感知部材に、前記突出量規制部の前記温度検出端面側とは反対側の端面から該温度検出端面に接近した深さに達する温度検出器挿入孔を穿孔し、該温度検出器挿入孔に前記温度検出器を挿入する。
このように構成すれば、汎用の熱電対を使用可能な温度検出器の検出端を、温度感知部材の温度検出端面に近接した部位に配置したので、軸受温度の検出精度を向上できる。
【0021】
また、本発明は、前記した軸受温度監視装置を備えて軸受装置を構成することを特徴とする。かかる発明によれば、信頼性が向上された軸受温度監視装置をそなえた軸受装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転軸側からの軸受荷重によって軸受材の圧縮量が大きくなっても、温度感知部材の温度検出端面が、かかる軸受材の圧縮量に相当する量だけ軸受材の内面ととともに移動することによって、軸受材の表面から相対的に温度検出端面が回転軸側へ突出することが無くなる。これによって、温度感知部材の回転軸側への突出による回転軸の傷の発生を回避でき、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止できる。
また、軸受温度の検出値を表示装置に表示し、軸受温度が許容値を超えたとき警報装置により警報を発信するように構成することにより、軸受温度を常時許容軸受温度範囲に入るように監視できて、軸受温度の過昇を防止できる。
以上により、信頼性が向上された軸受温度監視装置及びこれをそなえた軸受装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施の形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
図8は本発明の実施例(第1〜第7実施例)に係るラジアルジャーナル軸受における軸受温度監視装置の全体構成図である。
図8において、1はラジアルジャーナル軸受からなる軸受で、鋼材からなる裏金材3の内側に樹脂材で構成された軸受材2を固着してなる。前記軸受1は軸受材2の内周に沿って回転する図示しない回転軸を支持している。1aは軸受中心線つまり回転軸の軸心である。
10は詳細を後述する軸受温度検出装置、4は軸受温度処理装置、5は表示装置、6は警報装置で、前記軸受温度検出装置10で検出された軸受温度の電気信号を軸受温度処理装置4に入力し、該軸受温度処理装置4で前記軸受温度の電気信号を処理して軸受温度を算出し、該軸受温度処理装置4で算出された軸受温度を表示装置にて表示し、また、前記軸受温度処理装置4で算出された軸受温度が許容値を超えたとき警報装置6にて警報を発信するようになっている。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の第1実施例に係るラジアルジャーナル軸受における軸受温度監視装置の軸受温度検出装置の軸心線に沿う要部断面図(図8のA−A線断面図)である。
図1において、3は鋼材からなる裏金材、2は該裏金材3の内側に固着された樹脂材製の軸受材である。12は前記軸受材2の内面2aと外側面2bとを連通するように穿孔された後述する温度感知部材11の先端部11bの取付孔、3zは前記裏金材3の内面と外側面とを連通するように穿孔された後述する温度感知部材11の突出量規制部11c、スプリング13等の取付孔である。
【0026】
10は軸受温度検出装置で、次のように構成されている。
11は温度感知部材で、ホワイトメタル等の銅合金、鋼材のように、樹脂材からなる前記軸受材2よりも熱伝導率の大きい材料で構成されている。該温度感知部材11は前記軸受材2の取付孔12内に嵌合される先端部11bと、該先端部11bの外側つまり前記裏金材3側に一体形成された突出量規制部11cとによりなり、前記先端部11bの断面積が前記突出量規制部11cよりも小断面積に形成された段付きの円柱体に構成されており、前記先端部11bの端面が前記軸受材2の内周面の油膜温度を感知する温度検出端面11aとなっている。
また前記温度感知部材11は、前記突出量規制部11cを前記裏金材3の内部に穿孔された取付孔3z内に嵌合させて、該突出量規制部11cと前記先端部11bとの段付き面11dを前記軸受材2の外側面2bに当接させることにより、前記内面2a側への突出量を規制するように構成されている。
【0027】
14は前記裏金材3の取付孔3z内に形成されたスプリング室で、該スプリング室14内にはコイルばねからなるスプリング13が収納されている。18は前記スプリング室14を覆蓋するカバー部材である。該カバー部材18は円板状の取付部18aの上部に円筒形状部が連設されて形成されている。
そして、前記カバー部材18の取付部18aの上面と前記突出量規制部11cの下面との間に前記スプリング13が架設され、前記取付部18aを前記裏金材3の取付面に複数のボルト19で固定することによって、前記スプリング13に、前記突出量規制部11cの段付き面11dを前記軸受材2の外側面2bに一定荷重で押し付けるような取付荷重を付与している。17は前記スプリング室14内を密封シールするためのOリングである。
15は前記温度感知部材11からの軸受温度の感知信号を電気信号により検出する熱電対で、前記カバー部材18の円筒形状部内を貫通して、前記温度感知部材11に接続されている。16は該熱電対15の導線の外周を流体シールするためのダイヤフラムシールである。
【0028】
前記先端部11bの外周と取付孔12の内周との間、及び前記突出量規制部11cの外周と取付孔3zの内周との間には微小なクリアランス21が形成されて、前記軸受材2の内側のオイルが該クリアランス21を通って前記スプリング室14内に流入することにより、前記温度感知部材11の内外の圧力バランスを保持している。従って、前記スプリング13の取付荷重は温度感知部材11を支える程度の小荷重で十分である。
かかる構成によって、前記温度感知部材11は前記軸受材2の内面2a側への突出量を前記突出量規制部11cと軸受材2の外側面2bとの当接によって規制され、下方方向つまり前記裏金材3の外周側へは小荷重で取り付けられた前記スプリング13を押すことによって自在に移動可能となっている。
【0029】
かかる第1実施例によれば、ホワイトメタル等の銅合金軸受に比べてヤング率の小さい樹脂材からなる軸受材2が、回転軸側からの軸受荷重によって半径方向に圧縮されて該軸受材2の肉厚が減少し該軸受材2の内面2aが裏金材3側に変位し、これとともに前記軸受荷重によって温度検出端面11aを介して温度感知部材11が軸受1の外側方向つまり裏金材3の方向に押圧されると、該温度感知部材11は突出量規制部11cによる軸受1の内側方向への移動規制位置から、前記スプリング13により内面2aの反対側へ一定量移動可能な形態で押圧するように構成されているので、前記軸受荷重が加わると該温度感知部材11がスプリング13の押付力に抗して軸受1の外側方向に、前記軸受材2の内面2aとともに該内面2aと同じ位置まで移動する。
【0030】
従って、回転軸側からの軸受荷重によって軸受材2の圧縮量が大きくなっても、温度感知部材11の温度検出端面11aがかかる軸受材2の圧縮量に相当する量だけ軸受材2の内面2aととともに移動することによって、軸受材2の内面2aから相対的に温度検出端面11aが回転軸側へ突出することが無くなる。これによって、温度感知部材11の回転軸側への突出による回転軸の傷の発生を回避でき、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止できる。
また、軸受温度の検出値を表示装置5に表示し、軸受温度が許容値を超えたとき警報装置6により警報を発信するようになっているので、軸受温度を常時許容軸受温度に入るように監視できて、軸受温度の過昇を防止できる。
また、前記温度感知部材11を軸受1の外側方向つまり軸受材2の内面2aとは反対方向に一定量移動可能な形態で押圧する押圧部材をスプリング13で構成しているので、簡単な構造で以って前記温度感知部材11を所定荷重で確実にセットできる。
【実施例2】
【0031】
図2は本発明の第2実施例を示す図1対応図である。
この第2実施例においては、前記温度感知部材11に、前記温度検出端面11aと前記スプリング室14内とを連通する圧力バランス用の連通孔20を穿孔している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
かかる第2実施例によれば、軸受材2の内面2aのオイルを連通孔20を通して容易に温度感知部材11の裏側に導くことができ,該温度感知部材11の表裏の圧力バランスを良好に保持できるので、軸受1の油膜圧力の影響を受けることなく、温度感知部材11と軸受材2及び裏金材3とのクリアランスの調整が容易になる。
【実施例3】
【0032】
図3は本発明の第3実施例を示す図1対応図である。
この第3実施例においては、前記裏金材3の軸受材2側端部に突出部23を形成し、前記温度感知部材11の突出量規制部11cを前記スプリング13の取付荷重により該突出部23に当接させることにより、該温度感知部材11の前記軸受材2の内面2a側への突出量を規制するように構成している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
かかる第3実施例によれば、裏金材3の軸受材2側端部に形成された突出部23に温度感知部材11の突出量規制部11cを当接させて、該温度感知部材11を裏金材3に支持するので、該温度感知部材11の支持剛性が増大して、該温度感知部材11の軸受温度の検出精度が向上する。
また、軸受材2の背面に裏金材3の突出部23があるため、温度感知部材11付近の軸受材2が圧力変形し難く、温度感知部材11を設置することによる軸受材2が変形しやすくなることを防止できる。
【実施例4】
【0033】
図4は本発明の第4実施例を示す図1対応図である。
この第4実施例においては、前記温度感知部材11の突出量規制部11cの前記裏金材3の内部に対向する面、具体的には裏金材3の前記取付孔3zに対向する面を断熱材24で被覆している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
かかる第4実施例によれば、前記温度感知部材11に入った熱が逃げ易い状態にある該温度感知部材11の裏金材3の前記取付孔3zに対向する面を断熱材24で被覆することにより、温度感知部材11からの裏金材3側への放熱を抑制できて、かかる放熱による軸受温度の検出精度の低下を防止できる。
【実施例5】
【0034】
図5は本発明の第5実施例を示す図1対応図である。
この第5実施例においては、前記軸受温度検出装置10を、前記温度感知部材11及び前記スプリング13及び前記熱電対15を断熱材からなるケース25内に収納し、前記温度感知部材11の先端部11bを該ケース25上部に形成された連通孔25a及び前記軸受材2の取付孔12を貫通してなるカートリッジ体に形成して、該前記カートリッジ体を前記裏金材3に複数のボルト19によって着脱可能に取り付けている。
また、前記温度感知部材11の突出量規制部11cの段付き面11dを該ケース25の上部内面に当接させることにより、前記温度感知部材11の軸受材2の内面2a側への突出量を規制している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0035】
かかる第5実施例によれば、断熱材からなるケース25内に温度感知部材11及びスプリング13及び前記熱電対15を収納してカートリッジ体を構成したので、断熱材からなるケース25によって温度感知部材11からの裏金材3側への放熱の抑制効果が向上して、かかる放熱による軸受温度の検出精度の低下を防止できるとともに、前記カートリッジ体をユニットで裏金材3に着脱可能に取り付けるので、軸受温度検出装置10の組立て取外しが容易化される。
【実施例6】
【0036】
図6は本発明の第6実施例を示す図1対応図である。
この第6実施例においては、前記温度感知部材11を軸受材2の内面2a側に押圧する押圧部材として、弾性材からなる筒状のスリーブ26を設け、該スリーブ26の上端部を前記温度感知部材11の下面に固定し、下端のつば部26aを複数のボルト28で前記裏金材3に締め付け固定して、前記温度感知部材11の内面2aとは反対側方向への移動により該スリーブ26を一定量圧縮可能に構成している。
さらに、該スリーブ26のボルト28による裏金材3への締め付け固定によって、前記温度感知部材11における突出量規制部11cの段付き面11dを、前記内面2a側からのオイルをシールするガスケット27を介して前記裏金材3の軸受材2側端部に形成された突出部23に圧接している。
また、前記熱電対15は、前記スリーブ26の内部に配置されている。
【0037】
かかる第6実施例によれば、温度検出器としての熱電対15を、温度感知部材11及び筒状のスリーブ26とは独立して設置して、温度感知部材11の反軸受面側への移動を筒状の前記スリーブ26の弾性変形で吸収するので、熱電対15の設置スペースを大きくできて、汎用の熱電対を容易に利用できるとともに、該熱電対15の交換も容易にできる。
尚、前記温度感知部材11の構成は前記第1〜第5実施例と同様であり、同一の部分は同一の符号で示す。
【実施例7】
【0038】
図7は本発明の第7実施例を示す図6対応図である。
この第7実施例においては、前記第6実施例に加えて、前記温度感知部材11に、前記突出量規制部11cの前記温度検出端面11a側とは反対側の端面から該温度検出端面11aに接近した深さVに達する熱電対挿入孔11eを穿孔し、該熱電対挿入孔11eに前記熱電対15を挿入している(15aは熱電対の挿入部)。
その他の構成は前記第6実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
かかる第7実施例によれば、汎用の熱電対15を使用可能な検出端を、温度感知部材11の温度検出端面11aに近接した部位に配置したので、軸受温度の検出精度を向上できる。
尚、本発明は、樹脂製の軸受パッドを有するスラスト軸受にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、裏金材の内側に樹脂材で構成された軸受材を固着してなる軸受の温度を監視する軸受温度監視装置において、軸受材の表面に臨む金属製の温度感知部材との接触による回転軸の傷の発生を回避して、かかる傷の発生に伴う軸受負荷能力の低下及び回転軸の破損の誘発を防止し、信頼性が向上された軸受温度監視装置及びこれをそなえた軸受装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施例に係るラジアルジャーナル軸受における軸受温度監視装置の軸受温度検出装置の軸心線に沿う要部断面図(図8のA−A線断面図)である。
【図2】本発明の第2実施例を示す図1対応図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す図1対応図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す図1対応図である。
【図5】本発明の第5実施例を示す図1対応図である。
【図6】本発明の第6実施例を示す図1対応図である。
【図7】本発明の第7実施例を示す図6対応図である。
【図8】本発明の第1〜第7実施例に係るラジアルジャーナル軸受における軸受温度監視装置の全体構成図である。
【図9】従来技術に係る軸受温度監視装置の軸受温度検出部の軸方向要部断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 軸受
2 軸受材
2a 軸受材の内面
2b 外側面
3 裏金材
3z 裏金材側の取付孔
4 軸受温度処理装置
5 表示装置
6 警報装置
10 軸受温度検出装置
11 温度感知部材
11a 温度検出端面
11b 先端部
11c 突出量規制部
11d 段付き面
11e 熱電対挿入孔
12 先端部の取付孔
13 スプリング
14 スプリング室
15 熱電対
18 カバー部材
20 連通孔
23 突出部
24 断熱材
25 ケース
26 スリーブ
27 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏金材の内側に樹脂材で構成された軸受材を固着してなる軸受の温度を監視する軸受温度監視装置において、前記軸受材に該軸受材の内面に連通するように穿孔された取付孔と、該取付孔に相対移動可能に嵌合されて温度検出端面が前記軸受材の軸受面に臨むとともに前記軸受面側への突出量を規制する突出量規制部を有し前記軸受材よりも熱伝導率の大きい材料からなる温度感知部材と、前記温度感知部材を前記突出量規制部による規制位置から反軸受面側へ一定量移動可能な形態で前記軸受材側へ押圧する押圧部材と、前記温度感知部材に電気的に接続されて該温度感知部材の温度を検出する温度検出器とをそなえてなることを特徴とする軸受温度監視装置。
【請求項2】
前記軸受温度監視装置は、前記温度検出器で検出された軸受温度の電気信号を処理して軸受温度を算出する軸受温度処理装置と、該軸受温度処理装置で算出された軸受温度を表示する表示装置と、前記軸受温度処理装置で算出された軸受温度が許容値を超えたとき警報を発信する警報装置とをそなえたことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項3】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記軸受材の外側面に当接させることにより該温度感知部材の前記軸受面側への突出量を規制するように構成されてなり、前記押圧部材は、前記裏金材の内部に形成されたスプリング室に収納されて前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成されたことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項4】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面と前記スプリング室内とを連通する圧力バランス用の連通孔が穿孔されてなることを特徴とする請求項3記載の軸受温度監視装置。
【請求項5】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記裏金材の軸受材側端部に形成された突出部に当接させることにより該温度感知部材の前記軸受面側への突出量を規制するように構成されてなり、前記押圧部材は、前記裏金材の内部に形成されたスプリング室に収納されて前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成されたことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項6】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記突出量規制部を前記裏金材の内部に配置して前記軸受材の外側面あるいは前記軸受材の外側に形成される前記裏金材の突出部のいずれかに当接させるように構成されてなり、前記温度感知部材の前記裏金材の内部に対向する面を断熱材で被覆したことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項7】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記押圧部材は前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように付勢されたスプリングで構成され、前記温度感知部材及び前記押圧部材及び前記温度検出器を断熱材からなるケース内に収納するとともに、前記温度感知部材の段付き部を該ケースの内面に当接させることにより前記温度感知部材の軸受面側への突出量を規制する前記突出量規制部を構成したカートリッジ体を形成し、前記カートリッジ体を前記裏金材に着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項8】
前記温度感知部材は、前記温度検出端面をそなえて前記取付孔に相対移動可能に嵌合されるとともに前記突出量規制部よりも小断面積に形成された先端部と前記突出量規制部とを一体にした段付き形状に形成され、前記押圧部材は弾性材からなる筒状のスリーブに形成され上端部が前記温度感知部材に固定され下端部が前記裏金材に固定されて前記温度感知部材の反軸受面側への移動により一定量圧縮可能に構成されてなり、前記押圧部材の内部に前記温度検出器を配置し、前記押圧部材により前記温度感知部材を前記軸受材側へ押圧するように構成したことを特徴とする請求項1記載の軸受温度監視装置。
【請求項9】
前記温度感知部材に、前記突出量規制部の前記温度検出端面側とは反対側の端面から該温度検出端面に接近した深さに達する温度検出器挿入孔を穿孔し、該温度検出器挿入孔に前記温度検出器を挿入したことを特徴とする請求項8記載の軸受温度監視装置。
【請求項10】
前記請求項1乃至9のいずれか1項に記載の軸受温度監視装置を備えて構成したことを特徴とする軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−116312(P2008−116312A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299540(P2006−299540)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年6月5日付け 平成17年度、平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「地球温暖化防止新技術プログラム:低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】