説明

軸受用油圧ナットおよびそれを用いた転がり軸受ユニット

【課題】軸受を軸へ取り付けたり取り外したりする際の作業性に優れた軸受用油圧ナットを提供することである。
【解決手段】ナット本体1に、その凹部1aの底面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部4aを有する孔4を設け、この貫通孔4に他端側から頭部付きのボルト5を挿入して、このボルト5の先端部をプランジャ2にねじ結合させるとともに、頭部を貫通孔4の大径孔部4aに収容し、ボルト5の頭部が貫通孔4の途中でプランジャ2側への移動を規制された状態で、ボルト5をプランジャ2にねじ込む方向に回転させることにより、ナット本体1から押し出されたプランジャ2を初期位置に引き戻せるようにした。これにより、軸受の軸への取り付けや取り外しの際にプランジャ2を引き戻すための治具等が不要となり、作業効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパ穴軸受の軸への取り付けや取り外しの際に用いられる軸受用油圧ナットと、それを用いた転がり軸受ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
内輪の内周面がテーパ状に形成された転がり軸受(テーパ穴軸受)を軸に取り付けたり軸から取り外したりするときには、軸受用油圧ナットを用いることが多い(例えば、特許文献1参照。)。この軸受用油圧ナットを用いた転がり軸受ユニットの使用状態の一例を図7に示す。この例では、軸受用油圧ナット51と、取外しスリーブ52と、ロックナット53と、テーパ穴軸受54とからなる転がり軸受ユニットを、軸55に取り付けて使用している。軸受用油圧ナット51は、一端面に断面コの字形の環状凹部56aが形成されたナット本体56と、このナット本体56の環状凹部56aに軸方向に摺動可能に嵌め込まれた環状のプランジャ57とからなり、ナット本体56が取外しスリーブ52のおねじ部52aにねじ結合するようになっている。
【特許文献1】実開平5−2874号公報
【0003】
この軸受用油圧ナット51を用いた軸受取付作業は、まず、軸55と軸受54との間に取外しスリーブ52のテーパ部52bを挿入し、この取外しスリーブ52のおねじ部52aに油圧ナット51をねじ結合させる。そして、ロックナット53を軸55の端部に形成されたおねじ部55aにねじ結合させ、油圧ナット51のプランジャ57に当接するまでねじ込んでおく。この状態で、油圧ナット51のナット本体56の給油口56bに油圧ポンプ(図示省略)からの配管を接続し、ナット本体56の凹部56aの底面とプランジャ57との間の空間に圧油を注入することにより、プランジャ57をナット本体56から押し出す。このとき、プランジャ57は軸55に固定されたロックナット53に当接しているので、ナット本体56の方が取外しスリーブ52と一体に軸受54側へ移動し、取外しスリーブ52のテーパ部52bが軸55と軸受54との間に圧入される。最後に、ロックナット53を一旦取り外して油圧ナット51を取り外した後、再びロックナット53を軸55のおねじ部55aにねじ結合させ、取外しスリーブ52の抜け止めとする。
【0004】
また、軸受54を軸55から取り外すときには、まず、ロックナット53を取り外し、油圧ナット51を取付時と逆向きにして(プランジャ57を軸受54に向けて)取外しスリーブ52のおねじ部52aにねじ結合させ、プランジャ57を軸受54に当接させる。この状態で、取付時と同様に油圧ナット51内の空間に圧油を注入することにより、プランジャ57を押し出して、ナット本体56と取外しスリーブ52とを一体に軸55端側へ移動させ、軸受54から取外しスリーブ52を分離する。
【0005】
なお、上述した例では軸受用油圧ナットを取外しスリーブにねじ結合させたが、取外しスリーブやロックナットを用いずに、油圧ナットを軸端のおねじ部やアダプタスリーブのおねじ部にねじ結合させて軸受の取り付けおよび取り外しを行う方法もある。これらの方法では、油圧ナットの向きやプランジャを当接させる部材が上述した例と異なるが、油圧ナットに注入された圧油がプランジャを押し出す力を利用している点は同じである。
【0006】
ところで、上記のような軸受用油圧ナットは、プランジャが初期位置にある状態で軸受および軸に対してセットする(スリーブや軸のおねじ部にねじ結合させる)必要がある。ここで、プランジャの初期位置とは、プランジャの押し出し後の位置との間で必要なプランジャ移動量を確保できる所定位置のことをいう。
【0007】
しかしながら、油圧ナット自体には押し出されたプランジャを初期位置に戻す機構がないので、通常は、油圧ナットを使用する直前または使用した直後に治具等を用いてプランジャを初期位置に戻しており、これが軸受の取り付けや取り外しの作業効率を低下させる一因となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、軸受を軸へ取り付けたり取り外したりする際の作業性に優れた軸受用油圧ナットとそれを用いた転がり軸受ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、一端面に断面コの字形の環状凹部が形成されたナット本体と、このナット本体の環状凹部に軸方向に摺動可能に嵌め込まれた環状のプランジャとからなり、軸受の軸への取り付けおよび取り外しの際に、前記プランジャが初期位置にある状態で軸受および軸に対してセットされ、前記ナット本体の凹部の底面とプランジャとの間の空間に圧油を注入することにより、前記プランジャをナット本体から押し出すようにした軸受用油圧ナットにおいて、前記圧油が排出されたときに前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段を設けた。
【0010】
すなわち、油圧ナット内の空間から圧油が排出されたときにナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段を設けることにより、軸受の軸への取り付けおよび取り外しの際に、プランジャを初期位置に戻す作業を、治具等を用いず従来よりも簡単に行えるようにしたのである。
【0011】
前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段としては、前記ナット本体に、前記凹部の底面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部を有する孔を設け、この貫通孔に他端側から頭部付きのボルトを挿入して、このボルトの先端部を前記プランジャにねじ結合させるとともに、頭部を前記貫通孔の大径孔部に収容し、前記ボルトの頭部が貫通孔の途中でプランジャ側への移動を規制された状態で、前記ボルトをプランジャにねじ込む方向に回転させることにより、前記プランジャをボルト側へ引き寄せるものを採用することができる。
【0012】
あるいは、前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す別の手段として、前記ナット本体に、その一端面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部を有する孔を設け、この貫通孔に他端側から頭部付きのボルトを挿入して、このボルトの先端部を前記プランジャの一端部から張り出すフランジにねじ結合させるとともに、頭部を前記貫通孔の大径孔部に収容し、前記ボルトの頭部と貫通孔の途中の段差面との間に弾性体を配して、前記プランジャがボルトと一体に押し出されるときに前記弾性体が圧縮され、その弾性復元力により前記ボルトを介してプランジャが引き戻されるようにしたものを採用することもできる。この場合、前記プランジャのフランジを、プランジャの一端部の外周に形成された環状溝に嵌め込まれる側板で形成してもよい。
【0013】
また、前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す別の手段として、前記ナット本体に、その外周面から前記凹部の側面まで径方向に貫通し少なくとも一部にめねじ部を有する孔を設けるとともに、前記プランジャの外周面にナット本体から遠ざかるにつれて軸心に近づく傾斜面を形成し、前記ナット本体の貫通孔に外周側からボルトをねじ込んで、このボルトの先端で前記プランジャの傾斜面を押圧することにより、前記プランジャをナット本体の凹部に押し込むものを採用することもできる。この場合、前記ナット本体の貫通孔にねじ込んだボルトとプランジャとの間に、前記ボルトの先端部に接合され、前記プランジャの傾斜面と係合する押圧面を有する押圧部材を介在させれば、プランジャをよりスムーズにナット本体に押し込むことができる。
【0014】
そして、本発明の転がり軸受ユニットは、上記構成の軸受用油圧ナットを組み込んだものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軸受用油圧ナットは、上述したように、油圧ナット内の空間から圧油が排出されたときにナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段を設けたものであるから、プランジャを初期位置に戻す作業を従来よりも簡単に行え、軸受の軸への取り付けや取り外しの際の作業効率を向上させることができる。従って、この軸受用油圧ナットを組み込んだ本発明の転がり軸受ユニットは、軸への取り付けや取り外しが容易で使いやすいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1乃至図6に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は第1の実施形態を示す。この転がり軸受ユニットは、図1に示すように、軸受用油圧ナット21と、取外しスリーブ22と、ロックナット23と、転がり軸受(テーパ穴軸受)24とからなり、軸25端のおねじ部25aを利用して軸25に取り付けられる。その油圧ナット21以外の部材の構成は、前記図7に示した従来のものと同じである。
【0017】
前記油圧ナット21は、図2(a)〜(c)に示すように、一端面に断面コの字形の環状凹部1aが形成されたナット本体1と、このナット本体1の環状凹部1aに軸方向に摺動可能に嵌め込まれた環状のプランジャ2とで基本的に構成されている。プランジャ2の内周面および外周面に形成された環状溝には、それぞれナット本体1との間をシールするOリング3が嵌め込まれている。
【0018】
前記ナット本体1は、その凹部1aの底面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部4aを有する孔4が設けられており、この貫通孔4に他端側から頭部付きのボルト5が挿入されている。そのボルト5は、先端部がプランジャ2にねじ結合し、頭部が貫通孔4の大径孔部4aに収容されている。また、貫通孔4の大径孔部4aには断面コの字形の環状溝4bが形成されており、この環状溝4bの底面にボルト5頭部の外周溝に嵌め込まれたC形リング6が摺接している。これにより、ボルト5が環状溝4bの幅の範囲内で軸方向に摺動可能となっている。一方、貫通孔4の小径孔部に形成された環状溝には、ボルト5との間をシールするOリング7が嵌め込まれている。
【0019】
この油圧ナット21の使用方法は、まず、前述した従来のものと同じく、プランジャ2が初期位置にある状態(図2(c)参照)で、図示省略した軸受および軸に対してセットしておく。そして、ナット本体1の給油口1b(図1参照)に油圧ポンプ(図示省略)からの配管を接続し、ナット本体1の凹部1aの底面とプランジャ2との間の空間に圧油を注入して、図2(a)に示すようにプランジャ2をナット本体1から押し出す。このとき、プランジャ2は、プランジャ2にねじ結合したボルト5が摺動可能範囲の一端に達するまで押し出される。これにより、前述のように軸受の軸への取り付けあるいは軸からの取り外しが行われる。
【0020】
そして、上記のようにして軸受の取り付けあるいは取り外しが完了した後、油圧ナット21内の空間から圧油を排出し、図2(a)の状態でボルト5をプランジャ2にねじ込む方向に回転させる。このときにはボルト5の頭部に嵌め込まれたC形リング6がナット本体1の大径孔部4aに形成された環状溝4bの一側壁に当接しており、ボルト5はプランジャ2側への移動を規制されているので、ボルト5を回転させることにより、図2(b)に示すように、プランジャ2をボルト5側へ引き寄せて初期位置に戻すことができる。
【0021】
最後に、図2(b)の状態でボルト5を緩めることにより、図2(c)に示すように、ボルト5を摺動可能範囲の他端に達するまで(C形リング6が環状溝4bの他側壁に当接するまで)引き出して、次回使用時にプランジャ2をボルト5と一体に押し出せるようにしておく。
【0022】
この油圧ナット21は、上記の構成であり、ナット本体1とプランジャ2との間に設けたボルト5を回すだけで、ナット本体1から押し出されたプランジャ2を初期位置に引き戻すことができるので、軸受の軸への取り付けや取り外しの際にプランジャ引き戻し用の治具等を必要とせず作業効率を向上させることができる。
【0023】
図3は第2の実施形態を示す。この実施形態では、第1実施形態のナット本体1の貫通孔4の代わりに、ナット本体1の一端面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に段付きの大径孔部8aを有する孔8を設けている。そして、この貫通孔8に他端側からコイルばね9と頭部付きのボルト10を挿入して、このボルト10の先端部をプランジャ2の一端部から張り出すフランジ11にねじ結合させ、コイルばね9とボルト10頭部とを貫通孔8の大径孔部8aに収容している。また、ボルト10の胴部には、ボルト10頭部とコイルばね9に挟まれる位置に、大径孔部8aの出口部内周に摺接するリング12が通されており、ボルト10が大径孔部8aの途中の段差面でプランジャ2側への移動を規制されることにより、プランジャ2が抜け止めされるようになっている。その他の部分の構成は第1実施形態と同じである。
【0024】
この軸受用油圧ナットでは、図3(a)に示すように、ナット本体1の凹部1aの底面とプランジャ2との間の空間に圧油を注入したときに、プランジャ2がボルト10と一体にナット本体1から押し出されると同時に、コイルばね9がボルト10頭部に押圧されるリング12とナット本体1の貫通孔8の一端側の段差面との間で圧縮される。そして、図3(b)に示すように、油圧ナット内の空間から圧油を排出すると、圧縮されていたコイルばね9がその弾性復元力によりリング12およびボルト10を他端側へ押圧し、ボルト10を介してプランジャ2を初期位置に引き戻すことができる。従って、第1実施形態の油圧ナット21と同様、プランジャ引き戻し用の治具等が不要で、軸受の取付作業および取外作業の効率を向上させることができる。
【0025】
なお、上記第2実施形態では、コイルばね9を他の弾性体に代えることもできるし、ボルト10を頭部付きのピンに代え、その先端部をプランジャ2のフランジ11に溶接等により接合するようにしてもよい。また、図4に示すように、プランジャ2のフランジを、プランジャ2の一端部の外周に形成された環状溝2aに嵌め込まれる側板13で形成してもよい。
【0026】
図5は第3の実施形態を示す。この実施形態では、第1実施形態のナット本体1の貫通孔4の代わりに、ナット本体1の外周面から凹部1aの側面まで径方向に貫通し凹部1a側にめねじ部を有する段付きの孔14を設けている。そして、この貫通孔14に外周側からボルト15をねじ込んで、その先端部をナット本体1の凹部1aの側面から突出させ、頭部を貫通孔14の大径孔部14aに収容している。また、プランジャ2の外周面には一端側で小径となるテーパ面2bを形成し、このテーパ面2bにボルト15の先端が当接するようにしている。その他の部分の構成は第1実施形態と同じである。
【0027】
この軸受用油圧ナットでは、図5(a)に示すように、ボルト15の先端を所定位置まで突出させた状態で、ナット本体1の凹部1aの底面とプランジャ2との間の空間に圧油を注入すると、プランジャ2がナット本体1から押し出され、そのテーパ面2bがボルト15先端に当接することにより抜け止めされる。そして、図5(b)に示すように、油圧ナット内の空間から圧油を排出した後、ボルト15をさらにねじ込んで、その先端でプランジャ2のテーパ面2bを押圧することにより、プランジャ2をナット本体1の凹部1aに押し込んで初期位置に引き戻すことができる。その後、図示は省略するが、ボルト15を緩めて図5(a)の位置まで後退させ、次回使用時にプランジャ2を押し出せるようにしておけばよい。従って、この実施形態でも、第1および第2実施形態と同じく、プランジャ引き戻し用の治具等を不要とすることができる。
【0028】
なお、上記第3実施形態では、プランジャ2をテーパ面2bでボルト15先端と当接するようにしたが、ボルト15先端と当接する面は、必ずしも全周に形成する必要はなく、ナット本体1から遠ざかるにつれて軸心に近づく傾斜面であればよい。また、図6に示すように、ボルト15とプランジャ2との間に、ボルト15の先端部にねじ結合し、プランジャ2のテーパ面(傾斜面)2bと係合する押圧面16aを有する押圧部材16を介在させてもよい。このようにすれば、プランジャ2をよりスムーズにナット本体1に押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の油圧ナットを用いた転がり軸受ユニットの正面断面図
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ図1の油圧ナットの構造および使用方法を説明する要部の正面断面図
【図3】(a)、(b)は、それぞれ第2実施形態の油圧ナットの構造および使用方法を説明する要部の正面断面図
【図4】図2のプランジャのフランジの変形例を示す要部の正面断面図
【図5】(a)、(b)は、それぞれ第3実施形態の油圧ナットの構造および使用方法を説明する要部の正面断面図
【図6】図4のプランジャとボルトの当接部の変形例を示す要部の正面断面図
【図7】従来の油圧ナットを用いた転がり軸受ユニットの正面断面図
【符号の説明】
【0030】
1 ナット本体
1a 凹部
1b 給油口
2 プランジャ
2a 環状溝
2b テーパ面
4、8、14 貫通孔
4a、8a、14a 大径孔部
4b 環状溝
5、10、15 ボルト
6 C形リング
9 コイルばね
11 フランジ
12 リング
13 側板
16 押圧部材
16a 押圧面
21 油圧ナット
22 取外しスリーブ
23 ロックナット
24 転がり軸受(テーパ穴軸受)
25 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面に断面コの字形の環状凹部が形成されたナット本体と、このナット本体の環状凹部に軸方向に摺動可能に嵌め込まれた環状のプランジャとからなり、軸受の軸への取り付けおよび取り外しの際に、前記プランジャが初期位置にある状態で軸受および軸に対してセットされ、前記ナット本体の凹部の底面とプランジャとの間の空間に圧油を注入することにより、前記プランジャをナット本体から押し出すようにした軸受用油圧ナットにおいて、前記圧油が排出されたときに前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段を設けたことを特徴とする軸受用油圧ナット。
【請求項2】
前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段が、前記ナット本体に、前記凹部の底面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部を有する孔を設け、この貫通孔に他端側から頭部付きのボルトを挿入して、このボルトの先端部を前記プランジャにねじ結合させるとともに、頭部を前記貫通孔の大径孔部に収容し、前記ボルトの頭部が貫通孔の途中でプランジャ側への移動を規制された状態で、前記ボルトをプランジャにねじ込む方向に回転させることにより、前記プランジャをボルト側へ引き寄せるものであることを特徴とする請求項1に記載の軸受用油圧ナット。
【請求項3】
前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段が、前記ナット本体に、その一端面から他端面まで軸方向に貫通し他端側に大径孔部を有する孔を設け、この貫通孔に他端側から頭部付きのボルトを挿入して、このボルトの先端部を前記プランジャの一端部から張り出すフランジにねじ結合させるとともに、頭部を前記貫通孔の大径孔部に収容し、前記ボルトの頭部と貫通孔の途中の段差面との間に弾性体を配して、前記プランジャがボルトと一体に押し出されるときに前記弾性体が圧縮され、その弾性復元力により前記ボルトを介してプランジャが引き戻されるようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載の軸受用油圧ナット。
【請求項4】
前記プランジャのフランジを、プランジャの一端部の外周に形成された環状溝に嵌め込まれる側板で形成したことを特徴とする請求項3に記載の軸受用油圧ナット。
【請求項5】
前記ナット本体から押し出されたプランジャを初期位置に引き戻す手段が、前記ナット本体に、その外周面から前記凹部の側面まで径方向に貫通し少なくとも一部にめねじ部を有する孔を設けるとともに、前記プランジャの外周面にナット本体から遠ざかるにつれて軸心に近づく傾斜面を形成し、前記ナット本体の貫通孔に外周側からボルトをねじ込んで、このボルトの先端で前記プランジャの傾斜面を押圧することにより、前記プランジャをナット本体の凹部に押し込むものであることを特徴とする請求項1に記載の軸受用油圧ナット。
【請求項6】
前記ナット本体の貫通孔にねじ込んだボルトとプランジャとの間に、前記ボルトの先端部に接合され、前記プランジャの傾斜面と係合する押圧面を有する押圧部材を介在させたことを特徴とする請求項5に記載の軸受用油圧ナット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の軸受用油圧ナットを用いた転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−94784(P2010−94784A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268735(P2008−268735)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】