説明

軸受試験機用攪拌装置

【課題】 泥塩水に混合する泥や砂、潤滑油に混合する鉄粉などの各種異物が、タンク内に均等に拡散され、タンク底にこれらが沈殿しないようにする。
【解決手段】 タンク12の形状を、回転羽根18の回転軸線と同軸状の円筒形とし、回転羽根18とタンク12との間のすきまを最少とすることにより、異物の沈殿を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は軸受試験機用攪拌装置、より詳しくは、シール付き軸受のシール性能確認のための泥塩水試験用タンクや、潤滑油中に鉄粉などの異物を混合させる油潤滑の軸受耐久試験に使用するタンクの攪拌機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3および図4に示すように、立方形もしくは直方形のタンク38と円盤形攪拌羽根42とで構成される攪拌装置が知られている。タンク38の蓋40にモータ46が取り付けてあり、そのモータ46の主軸をタンク38内に垂下させ、攪拌羽根42の軸44と結合させてある。
【0003】
特開平11−23422号公報には、泥水の攪拌を、ポンプの吸い込み(段落番号0007)またはバイパス配管から直接戻された泥水(段落番号0011)で行うようにした軸受の試験装置が記載されている。
【0004】
特開平8−141380号公報には、泥水の攪拌を、スクリュー(段落番号0004)もしくはパイプの穴から吐出される泡(段落番号0004)またはポーラス体より吐出される気泡で行うようにした潤滑油中の異物を攪拌する装置が記載されている。
【0005】
特開2003−38946号公報には、浄水システムに関してではあるが、プロペラ式の攪拌羽根(段落番号0002)に代えて、抜き穴を有する平板状の上羽根と上昇水流を起こす下羽根とにより、攪拌槽内に乱気流を発生させて泥水の攪拌を行うことが記載されている(段落番号0007)。また、反応槽の泥水の攪拌手段として、モータによって回転する攪拌羽根が紹介されている(段落番号0015)。
【特許文献1】特開平11−23422号公報(段落番号0007、0011、図1)
【特許文献2】特開平8−141380号公報(段落番号0004、図2、図3)
【特許文献3】特開2003−38946号公報(段落番号0002、0007、0015、図1、図4、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3および図4に示した従来の構造では、タンク38の四隅や攪拌羽根42の中心部直下に異物が溜まって、異物の沈殿ができてしまう。
【0007】
特許文献1乃至3に記載された従来の技術は、いずれも、試験停止時に沈殿した異物を攪拌する力に乏しく、大きな異物を攪拌する力に乏しいといった問題がある。
【0008】
本発明の課題は、泥塩水に混合する泥や砂、潤滑油に混合する鉄粉などの各種異物が、タンク内に均等に拡散され、タンク底にこれらが沈殿しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タンクの形状を、回転羽根の回転軸線と同軸状の円筒形とし、回転羽根とタンクとの間のすきまを最少とすることにより、異物の沈殿を防止するようにしたものである。すなわち、本発明による軸受試験機用攪拌装置は、試験液を収容するタンク12と、タンク12内の試験液を攪拌するための羽根22とを具備し、タンク12の内周壁面を羽根22の回転軸線と同軸状の円筒形としたことを特徴とする。
【0010】
タンク12の底面と羽根22との間のすきま、および、タンク12の内周壁面と羽根22との間のすきまを、0を越え約10mm以下とするのが好ましい(請求項2、請求項3)。タンク12の底面と羽根22との間のすきま、および、タンク12の内周壁面と羽根22との間にすきまがないとタンク12に著しい摩耗が発生する。つまり、タンク12と羽根22との間に異物が食い込み、タンク12の底面や内周壁面が削られて摩耗する。なお、羽根の材質は、ステンレス、アルミなどの金属からナイロン、アクリル、ゴムなどの樹脂まで、混合液に侵されないものであれば、あらゆる材質を採用することができる。また、タンク12の底面と羽根22との間のすきま、および、タンク12の内周壁面と羽根22との間のすきまが約10mmを越えると異物の沈殿が発生しやすくなる。
【0011】
試験液の飛沫から羽根駆動用機器を保護するため、羽根22を回転させるための駆動軸が貫通する穴20の開口部近傍に、羽根22の回転軸線に対して半径方向に延在したつば状の仕切り板34を設けてもよい。羽根駆動用機器としては、モータ36、エアシリンダ、油圧駆動式ロータリアクチュエータ等が挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タンク12内における異物の沈殿が防止される。したがって、本発明の軸受試験機用攪拌装置では、異物を均等に拡散させた混合液を供給することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1および図2に示すように、軸受試験機用攪拌装置は、タンク12と、羽根22と、羽根22を回転させる駆動用機器としてのモータ36を主要な構成要素としている。
【0015】
図1から分るように、タンク12の内周壁面は羽根22の回転軸線と同軸状の円筒形状である。タンク12は上端にて開口しており、その開口端部にパッキン14を介して蓋16を取り外し可能に締結してある。タンク12内の液は蓋16に形成された貫通穴18を通じて取り出され、各種の軸受試験に用いられる。蓋16は中央部にもう一つの貫通穴20を有し、この貫通穴20にモータ36の主軸を挿入してタンク12内部に垂下させてある。モータ36の主軸と羽根22の軸30とはカップリング32によって同軸に結合してある。カップリング32には仕切り板34が設けてある。仕切り板34は試験液の飛沫を遮断して、羽根駆動用機器ここではモータ36を保護するためのもので、モータ36の主軸が貫通する蓋16の貫通穴20の開口部近傍に位置し、羽根22の回転軸線に対して半径方向に延在するつば状を呈している。なお、羽根駆動用機器としては、モータ36のほか、エアシリンダ、油圧駆動式ロータリアクチュエータ等を採用することも可能である。
【0016】
図示する実施の形態では二枚の羽根22があり、各羽根22は、ボス24に固定したブラケット26bに当て板28を介してボルト止めしてある。各羽根22は軸30の半径方向に、かつ、軸30の軸線と平行に延在している場合を例示してあるが、多少角度をなしてもよい。また、羽根22の数は1枚でもよく、あるいは、3枚以上を放射状に配置することもできる。羽根22とタンク12の底面との間、羽根22とタンク12の内周壁面との間には、それぞれ、すきまが形成されている。すきまの上限は約10mmとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す軸受試験装置の横断面図である。
【図2】図1の装置の縦断面図である。
【図3】従来の技術を示す軸受試験装置の横断面図である。
【図4】図3の装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
12 タンク
14 パッキン
16 蓋
18 貫通穴
20 貫通穴
22 回転羽根
24 ボス
26 ブラケット
28 当て板
30 軸
32 カップリング
34 仕切り板
36 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験液を収容するタンクと、タンク内の試験液を攪拌するための羽根とを具備し、タンクの内周壁面を羽根の回転軸線と同軸状の円筒形としたことを特徴とする軸受試験機用攪拌装置。
【請求項2】
羽根とタンクの底面との間にすきまを形成し、前記すきまを0を越え約10mm以下としたことを特徴とする請求項1の軸受試験機用攪拌装置。
【請求項3】
羽根とタンクの内周壁面との間にすきまを形成し、前記すきまを0を越え約10mm以下としたことを特徴とする請求項1の軸受試験機用攪拌装置。
【請求項4】
羽根を回転させるための駆動軸が貫通する穴の開口部近傍に、羽根の回転軸線に対して半径方向に延在したつば状の仕切り板を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの軸受試験機用攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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