説明

軸受隙間計測装置

【課題】軸受に適合する計測ロードによる軸受の隙間を容易かつ正確に計測することができ、同一の装置でラジアル隙間とアキシャル隙間を計測する。
【解決手段】内輪1と外輪2を有する軸受3の隙間を計測する軸受隙間計測装置。軸受を固定するための支持面11を有する支持本体12と、支持面より垂直に延び、支持面に沿って対称に移動可能であり、内輪1又は外輪2の側面を支持面に平行に保持可能な1対の保持部材14と、外輪2又は内輪1に計測方向のロードFを付加するロード付加装置16と、ロードを検出するロードセル18と、外輪2の計測方向の変位量を検出する変位量センサ20と、ロードセルと変位量センサの検出データを同期して取り込む同期データ検出器22と、ロードが所定の規定ロードに達したときの変位量から計測方向の隙間を演算する隙間演算装置22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジン等に使用する軸受(ベアリング)の隙間計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ジェットエンジンには、例えば直径3mに達するファンやプロペラの高速回転(例えば5000〜8000rpm)を支持するために、玉軸受(例えば深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受)や円筒ころ軸受が多用されている。
これらの軸受には上述した高速回転で大荷重(例えば。300〜400kgf)の荷重(ラジアル荷重やスラスト荷重)が作用するため、安全性を高めるために定期的に転動輪(内輪と外輪)と転動体(玉や円筒ころ)の隙間(ラジアル隙間とアキシャル隙間)を計測する必要がある。
図4は、軸受のラジアル隙間計測とアキシャル隙間計測の説明図である。図4(A)に示すように、内輪(又は外輪)を固定し、外輪(又は内輪)にラジアル方向に荷重を付加し、その際に生じるラジアル方向の移動量をラジアル隙間と呼ぶ。また、図4(B)に示すように、外輪(又は内輪)を固定し、内輪(又は外輪)にアキシャル方向に荷重を付加し、その際に生じるアキシャル方向の移動量をアキシャル隙間と呼ぶ。
【0003】
図5は、ラジアル隙間(ラジアルクリアランス)の概念図であり、縦置きの例を示している。
図5(A)に示すように、内輪を鉛直な面に固定し、その状態で外輪の上端面の位置を計測する。次いで、図5(B)に示すように、外輪の下端面に半径(ラジアル)方向から荷重をかけ、その状態で外輪の上端面の位置を計測する。図5(A)(B)における計測値の差がラジアルクリアランスに相当する。なお、計測は外輪の上端面で行う。
【0004】
図6は、アキシャル隙間(アキシャルクリアランス)の概念図である。
図6(A)に示すように、外輪を水平な面に固定し、内輪が下方に下がった状態で内輪の上端面の位置を計測する。この例では、外輪の上面から下方にaである。次いで、図6(B)に示すように、内輪の下端面にアキシャル方向から荷重をかけ、その状態で内輪の上端面の位置を計測する。この例では、外輪の上面から上方にbである。アキシャルクリアランスは、aとbの和に相当する。
【0005】
軸受のラジアル隙間の測定方法は、例えばJIS(B−1515)に規定されている。
また、軸受の隙間計測装置は、既に市販されている(例えば、非特許文献1)。
JISによるラジアル隙間の測定方法は、内輪又は外輪を固定し、固定しない方の軌道輪に所定の測定荷重を、ラジアル方向に両側から交互に加える。ラジアル隙間は、固定しない方の軌道輪の幅のほぼ中央にラジアル方向に測定子を当て、軌道輪の動き量の算術平均値から、測定荷重による転動体と転動輪との弾性接近量を差し引いた量として求めるものである。
【0006】
非特許文献1のラジアル隙間計測装置は、軸受の内輪と外輪のラジアル隙間を計測する装置である。この装置は、計測中、中心軸を水平にして内輪をスイング又は回転可能に支持し、外輪を交互に上下に押し、その変位量を計測するものである。
非特許文献1のスラスト隙間計測装置は、軸受の内輪と外輪のアキシャル隙間を計測する装置である。この装置は、計測中、中心軸を鉛直にして内輪をスイング又は回転可能に支持し、外輪を交互に上下に押し、その変位量を計測するものである。
【0007】
【非特許文献1】“MGL35−7/22−7/37−7/24−7,Radial Clearance Measuring Instruments” and “MGL75−7/77−7/78−7,Axial Clearance Measuring Instruments”, FAG社カタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、大型ジェットエンジン等のメンテナンスでは、多種多様の軸受の隙間計測が対象となる、また、計測すべき軸受は既に使用された軸受であり、そのため上述した従来の隙間計測装置を使用すると、以下の問題点があった。
【0009】
(1) 従来の装置では、空圧又は油圧で所定の負荷(以下、計測ロード)を付加している。しかし、多種多様の軸受を対象とする場合、計測ロードも多種多用となり、空圧又は油圧の圧力設定でこれを正確に設定するのは非常に困難であり、圧力調整に時間と手間がかかりすぎる。
(2) ジェットエンジン等のメンテナンスで隙間を計測する軸受は、使用中の軸受であり摺動部が僅かに局部摩耗している場合がある。従来の装置は、新品の軸受を対象としているため、このような僅かな局部摩耗している軸受の隙間を計測できない。
(3) 従来の装置では、内輪をダミーシャフトで固定するが、使用中の軸受は内輪が変形している場合がある。そのため、ダミーシャフトが使用できない場合がある。また仮に使用できても無理にダミーシャフトを嵌めこんだ場合内輪を変形させ正確な隙間が正確に計測できないことがある。
(4) また、ダミーシャフトが使用できても、多種多様の軸受を対象とするため、多種多様のダミーシャフトを必要とする。
(5) 従来の装置は、ラジアル用とアキシャル用は別の装置であり、同一の装置で両方を計測することはできない。
【0010】
本発明は、上述した種々の問題点を解決するために創案されたものである。
すなわち、本発明の目的は、大型ジェットエンジン等のメンテナンスを行う軸受の隙間計測で使用し多種多様の使用中軸受を対象として、それぞれの軸受に適合する計測ロードによる軸受の隙間を容易かつ正確に計測することができ、摺動部が局部摩耗している場合でも局部摩耗による隙間を計測でき、内輪が変形している場合でも計測でき、多種多様のダミーシャフトは不要であり、同一の装置でラジアル隙間とアキシャル隙間を計測することができる軸受の隙間計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、内輪と外輪を有する軸受の隙間を計測する軸受隙間計測装置であって、
軸受を固定するための支持面を有する支持本体と、
該支持本体に支持され、支持面より垂直に延び、外輪又は内輪の側面を支持面に平行に保持可能な保持部材と、
前記支持本体に支持され、外輪又は内輪に計測方向のロードを付加するロード付加装置と、
該ロード付加装置と外輪又は内輪の間に設置され前記ロードを検出するロードセルと、
前記支持本体に支持され、外輪又は内輪の計測方向の変位量を検出する変位量センサと、
前記ロードセルと変位量センサの検出データを同期して取り込む同期データ検出器と、
前記ロードが所定の規定ロードに達したときの前記変位量から計測方向の隙間を演算する隙間演算装置とを備えたことを特徴とする軸受隙間計測装置が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記計測方向は、軸受のラジアル方向又はアキシャル方向である。
【0013】
また、前記支持本体は、支持面を水平又は鉛直に転動可能に構成されている。
【0014】
また、前記保持部材は、内輪の内側又は外輪の外側を貫通して支持本体から支持面より上方まで垂直に延び、支持面に沿って対称に移動可能な1対の支持棒と、該支持棒の外周に固定され内輪又は外輪の一方の側面を支持する鍔金具と、支持棒の外周に移動可能に設けられ鍔金具との間で内輪又は外輪を挟持して保持する挟持金具とからなる。
【0015】
また、前記ロード付加装置は、前記支持本体に支持され外輪の計測方向の雌ねじ穴を有する雌ねじ部材と、該雌ねじ穴と螺合し前記計測方向に延びる雄ねじ部材とを有する。
【0016】
また、前記同期データ検出器は、ロードセルと変位量センサの検出データをそれぞれ受信し、その信号が同期していない場合はエラーとし、同期信号のみをそれぞれ出力する信号制御ボードである。
また、前記ロード付加装置は、レバー押上式のアキシャルクリアランス用ロード付加装置である。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の構成によれば、支持本体に支持され、支持面より垂直に延び、内輪又は外輪の側面を支持面に平行に保持可能な保持部材を備えているので、軸受の内輪又は外輪の側面を支持面に平行に保持することができる。
特に保持部材が1対の支持棒を備える構成により、1対の支持棒を支持面に沿って対称に移動させることにより、多種多様の使用中軸受を対象とでき、かつ内輪が変形している場合でも計測でき、多種多様のダミーシャフトは不要である。
【0018】
また、外輪又は内輪に計測方向のロードを付加するロード付加装置を備えるので、この装置によりロードを徐々に増加することができ、多種多様の使用中軸受を対象として、それぞれの軸受に適合する計測ロードを付加することができる。
また、この装置によりロードを増加する途中で一旦止め、外輪又は内輪を回転させなじませることができるので、摺動部が局部摩耗している場合でも局部摩耗による隙間を計測できる。
これは、ロードをかけながら外輪又は内輪を回転させることで、外輪内輪の局部摩耗している部分に玉を逃げこませる(馴染ませる)ことができる為である。
【0019】
また、前記ロードセルと変位量センサの検出データを同期して取り込む同期データ検出器を備え、隙間演算装置により、前記ロードが所定の規定ロードに達したときの前記変位量から計測方向の隙間を演算するので、それぞれの軸受に適合する所定の計測ロードによる軸受の隙間を容易かつ正確に計測することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記計測方向は、軸受のラジアル方向又はアキシャル方向であり、前記支持本体は、支持面を水平又は鉛直に転動可能に構成されているので、同一の装置でラジアル隙間とアキシャル隙間を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明による軸受隙間計測装置の第1実施形態図である。
本発明の軸受隙間計測装置10は、内輪1と外輪2を有する軸受3の隙間を計測する軸受隙間計測装置であり、この例はラジアル隙間を計測する装置である。
なお、この図において、軸受3は、円筒ころ軸受である。
【0023】
この図において、本発明の軸受隙間計測装置10は、支持本体12、1対の保持部材14、ロード付加装置16、ロードセル18、変位量センサ20、同期データ検出器22、及び隙間演算装置24を備える。
【0024】
支持本体12は、軸受3を固定するための支持面11を有する。この例において、支持本体12は、支持面11を水平又は鉛直に転動可能に構成されている。支持本体12は、例えばチルティング・サーキュラーテーブルである。
なお、支持本体12は、チルティング・サーキュラーテーブルに限定されず、その他の装置でもよい。また、支持面11は、対象とする軸受の最小径から最大径までの範囲で平面であるのが好ましい。
【0025】
保持部材14は、支持本体12に支持され、支持面11より垂直に延び、軸受3の内輪1の側面(図で下面)を支持面11に平行に保持可能に構成されている。
【0026】
この例において、保持部材14は、1対の支持棒14a、鍔金具14b及び挟持金具14cからなる。
1対の支持棒14aは、内輪1の内側を貫通して支持本体12から支持面11より上方まで垂直に延び、支持本体12に内蔵されたボールネジ式支持棒移動装置13により、支持面11に沿って軸受3の中心軸Zに対して対称に移動可能に構成されている。1対の支持棒14aは、計測対象となる最小内径の軸受の内輪内側を通すことができかつ最大内径の軸受の内輪内側まで拡大でき、さらに外輪外側も保持できる。
ボールネジ式支持棒移動装置13は、電動でも手動であってもよい。
鍔金具14bは、支持棒14aの外周に固定され、内輪1又は外輪の一方の側面(図で下面)を支持する。
挟持金具14cは、支持棒14aの外周に軸方向に移動可能に設けられ、図示しないロック機構により、鍔金具14bとの間で内輪1を挟持して内輪1を動かないように保持するようになっている。
【0027】
ロード付加装置16は、支持本体12に支持され、外輪2に計測方向(この例ではラジアル方向)のロードFを付加する機能を有する。
この例において、ロード付加装置16は、雌ねじ部材16aと雄ねじ部材16bを有する。
雌ねじ部材16aは、支持本体12に支持され、外輪2の計測方向(この例ではラジアル方向)の雌ねじ穴を有する。
また、雄ねじ部材16bは、雌ねじ部材16aの雌ねじ穴と螺合し、前記計測方向に延びる。
【0028】
この構成により、雄ねじ部材16bをその軸心を中心に回転駆動して、外輪2の計測方向(この例ではラジアル方向)にねじで送り、外輪2に計測方向(この例ではラジアル方向)のロードFを徐々に増加させて付加することができる。
雄ねじ部材16bの回転駆動は、手動でも電動でもよい。また、本発明はこの構成に限定されず、ロードFを徐々に増加させて付加でき、かつロードを増加する途中で、随時停止できる限りで油圧又は空圧を用いた装置であってもよい。
【0029】
ロードセル18は、ロード付加装置16(この例では雄ねじ部材16bの先端)と外輪2の間に設置されており、外輪2に作用するロードFを検出する機能を有する。検出したロードFは、電気信号4(電圧、電流、又はパルス信号)として、同期データ検出器22に通信される。
ロードセル18は、軸受3に適合する計測ロードを高精度に検出できるものを用いる。また、ロードセル18の外輪2との接触面は、ロードFが外輪2の計測方向に確実に伝達される形状(例えば、平面、円弧面)に構成されている。
【0030】
変位量センサ20は、例えばマイクロメータ、マグネスケール等であり、支持本体12に支持され、外輪2の計測方向(この例ではラジアル方向)の変位量δを検出する。検出した変位量δは、電気信号5(電圧、電流、又はパルス信号)として、同期データ検出器22に通信される。
【0031】
同期データ検出器22は、ロードセル18と変位量センサ20の検出データ4,5を同期して取り込む機能を有する。
この例では、同期データ検出器22は、ロードセル18と変位量センサ20の検出データ4,5をそれぞれ受信し、同時に受信しない同期信号以外をエラーとし、同期信号のみをそれぞれ隙間演算装置24に出力するように構成された信号制御ボードである。
【0032】
軸受隙間計測装置10はリニアスケール(変位量センサ20)から送られる長さの電気信号5とロードセル18から送られる力の電気信号4を特殊なボード(同期データ検出器22)を介して隙間演算装置24(PC)の計測ソフトに送り込んでいる。
隙間計測は、指定された力でベアリングを押した時の動き量を計測する計測のため両方の信号伝達速度が異なると、指定された力で押されたときの長さ(変位量)の理論が成り立たない。
【0033】
図7は、信号同期の仕組みを示す模式図である。図7(A)は、信号が同期している例、図7(B)は、信号が同期していない例である。
この例では、軸受隙間の規格値15kgで押したと時の隙間は0.3mmの場合である。
PC上の計測ソフトで予めベアリングを押す力15kgを設定する。計測ソフトは力の電気信号が15kgの時の長さの電気信号を拾い込むが信号が同期している場合に限る。
【0034】
ボート22は、長さの電気信号5と力の電気信号4が同期して送られて着た時以外はエラー信号をPCの計測ソフトに送る機能を有する。
図7(A)では、信号が同期しており、ボード22はこの時の信号はPC24に計測値として送る。
図7(B)では、15kgの力の電気信号のときの長さの電気信号が無い。つまり相手がないため、ボード22はこの時の信号はPC24に計測値として送らない。
計測機の取扱いでは力の信号を同期する「良い速さ」になるよう作業者がロードセルを押すねじを回す速さを加減する。
【0035】
隙間演算装置24は、例えばPC(コンピュータ)であり、ロードFが所定の規定ロードに達したときの変位量δから計測方向(この例ではラジアル方向)の隙間を演算する。
【0036】
図2は、図1の軸受隙間計測装置の別形態を示す図である。この図は、上述した支持本体12(チルティング・サーキュラーテーブル)により、支持面11を鉛直に転動した状態を示している。
その他の構成は、図1と同様である。
この構成により、軸受3が、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受の場合に、ロードFを増加する途中で、一旦止め外輪2を回転させなじませることができるので、摺動部が僅かな局部摩耗している場合でも局部摩耗による隙間を容易に計測できる。
【0037】
図3は、本発明による軸受隙間計測装置の第2実施形態図である。
本発明の軸受隙間計測装置10は、内輪1と外輪2を有する軸受3の隙間を計測する軸受隙間計測装置であり、この例はアキシャル隙間を計測する装置である。
【0038】
この例において、ロード付加装置16は、レバー押上式のアキシャルクリアランス用ロード付加装置25を有する。
この装置のレバー25aは、支持本体12に支持され、内輪1をはさみこんだ押上プレート17の中心部真下におかれる。
【0039】
この構成により、レバー25aを押し下げ、ロード付加装置25は押上プレート17を突き上げ、内輪1にアキシャル方向のロードFが加えられる。レバーを一旦止め内輪を回転させることで摺動部が局部摩耗している場合でもなじませることができる。
【0040】
またこの例において、変位量センサ20は、アキシャル方向用の変位量センサ固定治具20aを介して支持本体12に支持され、内輪1の計測方向(この例ではアキシャル方向)の変位量δを検出するようになっている。
【0041】
上述した本発明の構成によれば、支持本体12に支持され、支持面11より垂直に延び、内輪1又は外輪2の側面を支持面11に平行に保持可能な保持部材14を備えているので、軸受の内輪1又は外輪2の側面を支持面に平行に保持することができる。
特に保持部材14が1対の支持棒14aを備える構成により、1対の支持棒14aを支持面11に沿って対称に移動させることにより、多種多様の使用中軸受を対象とでき、かつ内輪1が変形している場合でも計測でき、多種多様のダミーシャフトは不要である。
【0042】
また、外輪2又は内輪1に計測方向(ラジアル方向又はアキシャル方向)のロードFを付加するロード付加装置16及び25を備えるので、この装置によりロードFを徐々に増加することにより、多種多様の使用中軸受を対象として、それぞれの軸受に適合する計測ロードを付加することができる。
また、この装置によりロードFを増加する途中で一旦止め、外輪2又は内輪1を回転させなじませることができるので、摺動部が局部摩耗している場合でも局部摩耗による隙間を計測できる。
【0043】
また、ロードセル18と変位量センサ20の検出データ4,5を同期して取り込む同期データ検出器22を備え、隙間演算装置24により、ロードFが所定の規定ロードに達したときの変位量δから計測方向の隙間を演算するので、それぞれの軸受に適合する所定の計測ロードによる軸受の隙間を容易かつ正確に計測することができる。
【0044】
さらに、計測方向は、軸受のラジアル方向又はアキシャル方向であり、支持本体12は、支持面11を水平又は鉛直に転動可能に構成されているので、同一の装置でラジアル隙間とアキシャル隙間を計測することができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による軸受隙間計測装置の第1実施形態図である。
【図2】図1の軸受隙間計測装置の別形態を示す図である。
【図3】本発明による軸受隙間計測装置の第2実施形態図である。
【図4】軸受のラジアル隙間とアキシャル隙間の説明図である。
【図5】ラジアル隙間(ラジアルクリアランス)の概念図である。
【図6】アキシャル隙間(アキシャルクリアランス)の概念図である。
【図7】信号同期の仕組みを示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 内輪、2 外輪、3 軸受、4,5 電気信号、
10 軸受隙間計測装置、
12 支持本体(チルティング・サーキュラーテーブル)、
11 支持面、13 ボールネジ式支持棒移動装置、
14 保持部材、
14a 支持棒、14b 鍔金具、14c 挟持金具、
16 ロード付加装置、
16a 雌ねじ部材、16b 雄ねじ部材、16c 雌ねじ部材、
17 押上プレート、
18 ロードセル、20 変位量センサ、20a 変位量センサ固定治具、
22 同期データ検出器、24 隙間演算装置(PC)、
25 レバー押上式のアキシャルクリアランス用ロード付加装置、
25a レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪を有する軸受の隙間を計測する軸受隙間計測装置であって、
軸受を固定するための支持面を有する支持本体と、
該支持本体に支持され、支持面より垂直に延び、外輪又は内輪の側面を支持面に平行に保持可能な保持部材と、
前記支持本体に支持され、外輪又は内輪に計測方向のロードを付加するロード付加装置と、
該ロード付加装置と外輪又は内輪の間に設置され前記ロードを検出するロードセルと、
前記支持本体に支持され、外輪又は内輪の計測方向の変位量を検出する変位量センサと、
前記ロードセルと変位量センサの検出データを同期して取り込む同期データ検出器と、
前記ロードが所定の規定ロードに達したときの前記変位量から計測方向の隙間を演算する隙間演算装置とを備えたことを特徴とする軸受隙間計測装置。
【請求項2】
前記計測方向は、軸受のラジアル方向又はアキシャル方向であることを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。
【請求項3】
前記支持本体は、支持面を水平又は鉛直に転動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。
【請求項4】
前記保持部材は、内輪の内側又は外輪の外側を貫通して支持本体から支持面より上方まで垂直に延び、支持面に沿って対称に移動可能な1対の支持棒と、該支持棒の外周に固定され内輪又は外輪の一方の側面を支持する鍔金具と、支持棒の外周に移動可能に設けられ鍔金具との間で内輪又は外輪を挟持して保持する挟持金具とからなることを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。
【請求項5】
前記ロード付加装置は、前記支持本体に支持され外輪の計測方向の雌ねじ穴を有する雌ねじ部材と、該雌ねじ穴と螺合し前記計測方向に延びる雄ねじ部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。
【請求項6】
前記同期データ検出器は、ロードセルと変位量センサの検出データをそれぞれ受信し、その信号が同期していない場合はエラーとし、同期信号のみをそれぞれ出力する信号制御ボードであることを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。
【請求項7】
前記ロード付加装置は、レバー押上式のアキシャルクリアランス用ロード付加装置であることを特徴とする請求項1に記載の軸受隙間計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270913(P2009−270913A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121201(P2008−121201)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】