説明

軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型

【課題】本発明は、線状部材、パイプ状部材、被覆線部材等を固定できる小型で、安価であり、かつ、大量生産に向いたクリップに関するものである。
【解決手段】本発明のクリップは、線状部材を固定することができるものでああり、基体と、軸受部と、係止蓋とから一体に成形されている。前記基体は、一端において、係止蓋が回動自在に一体に成形されている。前記軸受部は、前記基体の一方の端に一体に延出されており、回転軸が回動自在に入る開口部を備えている。前記係止蓋は、他方で前記基体に係止できる係止部と、一方に前記開口部を備えた軸受部で回転自在な回転軸と、前記係止部と回転軸の間で、前記保持部を覆う面状部材とが一体に成形されている。本発明の基体、軸受部、および係止蓋の形状および構造は、成形金型を分割ラインの一方向に、また、スライダーを下方の一方向に抜くだけの構造とすることができるため、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、一つの金型で多数個の成形品を同時に作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材等を固定できる小型で、安価であり、かつ、大量生産に向いた軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型に関するものである。本発明は、窓部を備えた平板部材に嵌合するものであり、フランジ部と前記フランジから直角方向に突出する脚部を備えた軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型に関するものである。また、本発明は、作製する金型の投影面積を小さくすることができるとともに、同時に多数個を同じ金型で作製できる軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型に関するものである。さらに、本発明は、開口部を有する板状部材(たとえば、車体パネル)にクリップを介してバンパーのような形状の部材を取り付けることができる軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型に関するもので、金型の形状をできるだけ簡単にしたものである。
【背景技術】
【0002】
図21は従来例におけるクリップを説明するための斜視図である。図21において、クリップ2191は、たとえば、特開2004−36725号公報に記載されているように、環状部材保持部2192と、線状部材、パイプ状部材、被覆線部材等の環状部材(図示されていない)を固定する取付部2193とから少なくとも構成されている。また、前記クリップ2191は、前記環状部材を着脱する際に、前記取付部2193を回動させる回転軸2194および軸受部2195が一体に設けられている。また、前記取付部2193は、前記回転軸2194から垂直に延出された後、直角に折り曲げられ、前記環状部材を保持し、さらに、直角に曲げられた固定部2196により固定されている。
【0003】
図22は従来例における「なす環」を少ない金型で作製する例を説明するための図である。図22において、「なす環」は、たとえば、特公平6−74802号公報に記載されているように、なす環本体2201と、なす環本体2201に連設された首部2202と、膨出部2203と、前記膨出部2203に回動自在になる脚部2204と、前記脚部2204に設けられた貫通孔2205と、前記貫通孔2205の上部に設けられたベルト取着体2206とから構成され、互いに回動自在に構成されている。前記なす環本体2201は、一対の金型2207と、2本のスライダー金型2208、2209によって、同時に作製される。また、前記特許文献以外に、たとえば、特開平8−68406号公報にかかる取付具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−36725号公報
【特許文献2】特公平6−74802号公報
【特許文献3】特開平8−68406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特開2004−36725号公報に記載されているクリップ2191は、作製する際に、取付部2193が直角に曲げられている。また、前記回転軸2194および軸受部2195は、スライダー金型を二方向に抜く必要があり、金型の投影面積が大きかった。また、前記クリップ2191は、投影面積が大きいため、複数個を一つの金型で同時に作製することが困難であった。また、前記特公平6−74802号公報に記載されている「なす環」は、図示の矢印で示すように、スライダー金型2208、2209を両方に引き抜く必要があり、前記金型を引き抜く空間が大きく、金型の数も多くなるという欠点があり、一つの金型で多数個を同時に作製することができなかった。
【0006】
特開平8−68406号公報に記載されている取付具は、第1部材に貫通孔が形成されているため、取付孔を水密に封止することができないという問題がある。前記問題を解決する手段としては、貫通孔を有底孔とするか、あるいは第1部材の筒状部に爪部を形成し、第2部材に当該爪部に係合する孔を設けるといった解決手法が考えられる。しかし、第1部材を樹脂材料から成形する場合において、前記解決手法は、第1部材の筒状部の内壁に、筒状部の軸線方向(深さ方向)と異なる方向に突出する凸部、または陥没した凹部が形成されることになり、筒状部の内部を成形するために必要なスライド金型の数が増加するという問題がある。
【0007】
以上のような課題を解決するために、本発明は、作製する金型の投影面積を小さくすることができ、かつ、一つの金型で多数個を同時に作製できる軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型を提供することを目的とする。また、本発明は、少ない数の金型で同時に作製できる軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明)
第1発明の軸支構造は、被取付部材を固定する取付手段を備えている基体と、前記基体の端部に設けられた軸受部と、前記軸受部の内部で回動自在に軸支され揺動軸と、前記揺動軸により、回動して前記基体と一体になる蓋体とから少なくとも構成されることを特徴とする。
【0009】
(第2発明)
第2発明の軸支構造における蓋体は、前記揺動軸に連結する連結部からなる凹部を備えた平らな薄板部を有し、前記凹部の前記揺動軸の長さ方向の前方と後方において、厚さが互い違いになっていることを特徴とする。
【0010】
(第3発明)
第3発明の軸支構造における蓋体の揺動軸と前記軸受部は、開口部の中心で偏心していることを特徴とする。
【0011】
(第4発明)
第4発明の軸支構造は、被取付部材を固定するクリップであり、前記被取付部材の少なくとも一つを固定保持する保持部、被取付部材と係合する取付部、および抜け止め部が成形されている基体と、前記基体の一方に一体に延出されている開口部を備えた軸受部と、前記基体の他方で前記抜け止め部に係止できるように成形されている係止部、前記軸受部の開口部を介して回動可能に軸支されている回転軸、前記回転軸と係止部との間で前記保持部を覆い保持する面状部材、が一体に成形されている蓋体とから構成され、前記基体および蓋体が回転可能に係止することが可能であるとともに、前記基体および蓋体を成形する成形金型に対して、スライダー金型が異なる一方向にのみ可動可能な金型から成形されていることを特徴とする。
【0012】
(第5発明)
第5発明の軸支構造の金型は、前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する一方側が固定されている固定金型と、前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する他方側が可動できる可動金型と、前記軸受部の開口部に入り、上方向および/または下方向に引く抜くことができるスライダー金型と、から少なくとも構成されており、前記蓋体を基体に対して180度または90度の位置で成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クリップの軸支構造を工夫したことにより、蓋体を閉じた状態で分割ラインを基にして、両側に分割する金型とすることができるため、作製する金型の投影面積を小さくすることができるとともに、安価な軸支構造、クリップ、および軸支構造の金型を作製することができる。
【0014】
本発明によれば、クリップの軸支構造を工夫したことにより、蓋体が閉じた状態の金型とすることができるため、一つの金型で、多数個取りが可能になったため、大量生産が可能になった。
【0015】
本発明によれば、クリップの両端側面を面一(ツライチ−飛び出す部分がなく、面(ツラ)が一様に揃っている)とすることができたため、金型を安価に作製することができる。
【0016】
本発明によれば、フランジ部、胴部、リンク部、回転軸の構造を工夫することにより、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、固定金型、可動金型、スライド金型の数と形状を巧みに使用することにより、複雑な形状であっても、少ない工程でクリップを作製することができる。
【0017】
本発明によれば、スライダーの形状および数を増やすことにより、クリップを同時に作製することができ、大量生産を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例であるクリップの斜視図で、係止蓋を開けた状態を説明するための図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例であるクリップの斜視図で、係止蓋を閉じた状態を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例であり、(イ)はクリップを開いた状態の正面図、(ロ)平面図、(ハ)側面図である。
【図4】本発明の金型を説明するための図で、スライダー金型の頂部、固定金型、および可動金型を説明するための図である。
【図5】本発明の回転軸および軸受近傍の拡大図およびスライダーを説明するための図である。
【図6】本発明の金型内にクリップが成形された図で、固定金型および可動金型からスライダー金型を抜いた状態を説明するための図である。
【図7】本発明の金型内にクリップが成形された図で、固定金型から可動金型を抜いた状態を説明するための図である。
【図8】本発明の固定金型からクリップを抜いた状態を説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施例である異なった形状のクリップを説明するための斜視図である。(実施例2)
【図10】本発明の第2実施例のクリップにおいて、脚部と胴部を互いに嵌合させた状態を説明するための図である。
【図11】本発明のクリップを用いてバンパーと車体パネルとを取り付ける前の状態を説明するための斜視図である。
【図12】(イ)から(ハ)は本発明のクリップにおいて、クリップ、板状部材、バンパーを取り付ける際の組立図である。
【図13】図12のA−A断面図である。
【図14】図12のB−B断面図である。
【図15】図12のC−C断面図である。
【図16】(イ)から(ハ)は本発明のクリップを成形するための固定金型、可動金型、スライダー金型を説明するための図である。
【図17】本発明のクリップを成形するための固定金型、可動金型、およびスライダー金型を説明するための斜視図である。
【図18】本発明のクリップを成形するための固定金型および可動金型の作製手順を示す分解斜視図である。
【図19】リンク部を作製するための金型を説明する図であり、図16におけるD−D断面図である。
【図20】リンク部を作製するための金型を説明する図であり、図16におけるE−E断面図である。
【図21】従来の保持部と回動する係止蓋とからなるクリップを説明するための図である。
【図22】従来の「なす環」を作製する際のスライダー金型を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1発明)
第1発明の軸支構造は、被取付部材を固定する取付手段を備えている基体と、前記基体の端部に設けられた軸受部と、前記軸受部の内部に設けられた揺動軸と、回動して前記基体と一体になる蓋体とから少なくとも構成されている。前記軸支構造は、被取付部材を取り付けるクリップまたはクリップに設けるものであり、たとえば、バンパー、線状部材、パイプ状部材、被覆線部材(以下、単に線状部材等と記載する)の少なくとも一種類または複数種類を一個または複数個、固定することができるようになっている。前記被取付部材は、バンパー、あるいは線状部材に限らず、曲線または鍵型のように変形した部分の一部を留めることができる。
【0020】
前記被取付部材は、基体と、軸受部と、蓋体とが合成樹脂または金属(たとえば、アルミニウム合金等)からなり、金型により一体に成形されている。前記基体は、一端において、たとえば、蓋体が回動自在に一体に成形されている。前記基体は、前記各部材の少なくとも一つを固定保持する保持部と、被取付部材に取り付ける取付部と、抜け止め部とが一体に成形されている。前記保持部は、前記被取付部材をクリップした際に、固定できる凹凸を接触面に設けることができる。前記被取付部材は、たとえば、車体のボディー等がある。
【0021】
前記軸受部は、前記基体の一方の端に一体に延出されており、回転軸が回動自在に入る開口部を備えている。前記蓋体は、他方で前記基体に係止できる係止部と、一方に前記開口部を備えた軸受部で回転自在な回転軸と、前記係止部と回転軸の間で、前記保持部を覆う面状部材とが一体に成形されている。前記回転軸は、前記基体の一方に一体に延出された前記軸受部の開口部内で、回動自在に回転できるように、金型により同時に成形される。本発明の蓋体は、以上のように構成されており、前記蓋体が基体に対していかなる角度であっても、回転可能であり、他方の抜け止め部に係止することで、前記被取付部材を固定することができる。
【0022】
また、前記基体、軸受部、および蓋体の構造は、前記回転軸とともに、前記基体および蓋体を成形する成形金型とスライダー金型とが一方向にのみ可動可能な金型から成形されている。また、前記スライダー金型は、頂面がコ字状であり、前記回転軸が軸受部内で回転できるようにするために、前記軸受部の内部において、互いに違いになるように上下に分割されている。本発明の基体、軸受部、および蓋体の形状および構造は、成形金型(可動金型)を分割ラインの一方向に、また、スライダーを下方の一方向に抜くだけの構造とすることができるため、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、一つの金型で多数個の成形品を同時に作製することができる。
【0023】
前記軸支構造は、前記基体、軸受部、および蓋体の両端側面が直線形状からなる面一(ツライチ−飛び出す部分がなく、面(ツラ)が一様に揃っている)とすることができるため、両端側面に凹凸がなく、金型を小さくすることができ、成形品を同時に多数個成形することが可能になった。
【0024】
(第2発明)
第2発明の蓋体は、平らな薄板部と、揺動軸に連結する連結部とから構成されている。前記薄板部は、前記揺動軸の長さ方向に沿った凹部を備えており、前記凹部の前記揺動軸の前方と後方において、厚さが互い違いになっている。前記揺動軸は、前記蓋体の揺動軸近傍における厚さの互い違う金型により、同時に成形することが可能になった。
【0025】
(第3発明)
第3発明の軸支構造は、前記蓋体の揺動軸を前記軸受部における開口部の中心とすること、あるいは前記揺動軸を前記軸受部で偏心させることも可能である。すなわち、前記揺動軸は、前記軸受部内の中心のみではなく、たとえば、長円形の内部を自在に移動できるようにすることも可能である。
【0026】
(第4発明)
第4発明のクリップは、窓部を有する平板部材に、前記平板部材に対して垂直方向に突出する係止部を有する被取付部材を挿入して固定することができるものである。前記被取付部材は、たとえば、バンパーのようなものであるが、その形状が、必ずしも、実施例と同じ形状に限らず、各種変形したものであっても良い。前記クリップは、前記平板部材の窓部に嵌合する脚部(基体)を有するフランジ部と、前記脚部(基体)に嵌合する柱状部および前記脚部から突出した連結爪に係止する連結孔を有する胴部(蓋体)と、開口部を備えた垂直リンク部と、前記胴部(蓋体)を回動できる回転軸からなる水平リンクとが成形されている。また、前記脚部(基体)は、両側部に前記窓部と嵌合する際に係止する係止爪を備えている。
【0027】
前記垂直リンク部は、前記フランジ部から一体に延出されている開口部を備えている。前記回転軸は、前記胴部を回動できるように、前記水平リンク部に軸支されている。前記胴部は、回転軸を中心に回転させて、内部に成形されている柱状部を前記脚部の内部に入れるとともに、前記脚部に成形された前記連結爪を前記胴部に成形された連結孔に嵌合する。前記回転軸は、前記胴部に一体に延出された前記リンク部の開口部内で、回動自在に回転できるように、金型により同時に成形される。
【0028】
また、前記脚部、フランジ部、垂直リンク部、水平リンク部、および胴部の構造は、成形する成形金型と複数のスライダー金型とにより成形される。また、本発明の脚部を有するフランジ部、垂直リンク部、水平リンク部、および胴部の形状および構造は、成形金型(可動金型)を分割ラインの一方向に、また、複数のスライダー金型を下方向に抜くだけの構造とすることができるため、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、少ない金型で多数個の成形品を同時に作製することができる。
【0029】
前記クリップ作製用金型は、固定金型と可動金型とスライダー金型によって作製することができる。前記固定金型は、前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する一方側が固定されており、最後に、成形品を引き抜く。前記可動金型は、前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する他方側が可動できるようになっており、型を引き抜くことにより、中心線に対する他方側が露出する。スライダー金型は、前記軸受部の開口部に入り、上方または下方向にスライドさせながら引く抜くことにより、内部に空洞部が成形できる。
【0030】
前記クリップ作製用金型は、固定金型と可動金型と複数個の上下スライダー金型によって作製することができる。前記固定金型は、前記脚部を有するフランジ部、前記柱状部および連結爪に係止する連結孔を有する胴部、開口部を有する垂直リンク部、前記胴部を回動できる水平リンク部、の長さ方向の中心線に対する一方側が固定されており、最後に成形品を引き抜く。前記可動金型は、前記フランジ部、胴部、垂直リンク部、水平リンク部、の長さ方向の中心線に対する他方側が可動できるようになっており、型を引き抜くことにより、前記中心線に対する他方側が露出する。
【0031】
スライダー金型は、たとえば、上方に引き抜く第1スライダー金型、第2スライダー金型、第3スライダー金型と、下方に引き抜く第4スライダー金型とから少なくとも構成されている。前記第1スライダー金型は、前記脚部のほぼ中心部に入り、上方に引き抜く。第2スライダー金型は、前記胴部のほぼ中心部に入り、上方に引き抜く。第3スライダー金型は、前記ヒンジ部に入り、上方に引き抜く。第4スライダー金型は、前記胴部の中心部に入り、下方に引き抜く。本発明のクリップ作製用金型は、前記固定金型、可動金型、第1スライド金型から第4スライド金型の形状を巧みに成形することにより、少ない工程で一度にクリップを作製することができる。前記各金型の詳細な形状は、前記脚部、胴部、リンク部の形状にしたがって変形する。
【0032】
(第5発明)
第5発明の軸支構造の金型は、基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する一方側が固定されている固定金型と、前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する他方側が可動できる可動金型と、前記軸受部の開口部に入り、上方向および/または下方向に引く抜くことができるスライダー金型とから少なくとも構成されている。前記固定金型、可動金型、スライダー金型は、前記蓋体を基体に対して180度の位置以外に、90度の位置で成形することができる。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明の実施例であるクリップの斜視図で、係止蓋を開けた状態を説明するための図である。図2は本発明の実施例であるクリップの斜視図で、係止蓋を閉じた状態を説明するための図である。図3は本発明の実施例であり、(イ)はクリップを開いた状態の正面図、(ロ)平面図、(ハ)側面図である。
【0034】
図1から図3において、クリップ10は、線状部材、パイプ状部材、被覆線部材(以下、単に線状部材等と記載する)14を固定することができるとともに、たとえば、車両等のボディ内部に取り付けことができる。前記クリップ10は、図において、ボディ等に取り付ける部分が省略されている。前記クリップ10は、基体11と、軸受部12と、係止蓋13とが金型により同時に一体に成形されているとともに、互いに分離できないように一体化されている。
【0035】
前記基体11は、一端において、係止蓋13が回動自在に一体に成形されている。前記基体11は、前記線状部材等を固定保持する保持部111と、たとえば、車のボディー等取付対象物に取り付ける取付部(図示されていない)と、抜け止め部112とが一体に成形されている。
【0036】
前記軸受部12は、前記基体11の一方の端に一体に延出されており、回転軸131が回動自在に入る開口部121を備えている。また、前記軸受部12は、必要に応じて、支持部122が基体11から突出して、強度を保持することができる。前記軸受部12および回転軸131の作製は、たとえば、特公平6−74802号公報に記載されているように、複数の金型により一体に成形することができる。
【0037】
前記係止蓋13は、他方で前記基体11の抜け止め部112に係止できる係止部132と、一方に前記開口部121を備えた軸受部12内で回転自在な回転軸131との間で、前記保持部111を覆う面状部材とが一体に成形されている。前記回転軸131は、前記基体11の一方に一体に延出された前記軸受部12の開口部121内で、回動自在に回転できるように、金型により同時に成形される。前記金型は、後の図4および図5によって説明する。
【0038】
前記基体11、軸受部12、および係止蓋13は、両側面が面一(ツライチ−飛び出す部分がなく、面(ツラ)が一様に揃っている)となるように成形されている。また、前記基体11、軸受部12、および係止蓋13の抜け止め部112、および係止部132は、前記両側面に対して、同じ方向、または互い違いの方向に突出して、金型が抜き易い形状にしている。
【0039】
図4は本発明の金型を説明するための図で、スライダー金型の頂部、固定金型、および可動金型を説明するための図である。図5は本発明の回転軸および軸受近傍の拡大図およびスライダーを説明するための図である。図4および図5において、前記基体11、軸受部12、および係止蓋13の構造は、前記回転軸131とともに、前記基体11および係止蓋13を成形する固定成形金型42および可動金型43と、スライダー金型41とが一方向にのみ可動可能な金型から成形されるようになっている。
【0040】
図4に示すように、前記スライダー金型41は、頂面411がコ字状で、回転軸受12、支持部122、および基体11の一部を成形するとともに、成形後、下方に抜かれるものである。前記クリップ10は、図3(ロ)および図4において、上下方向に分割された金型42および金型43と、図3(イ)および(ハ)、図5において、下方に移動する前記スライダー金型41とにより成形される。また、前記回転軸131は、軸受部12内で回転できるようにするために、固定金型42に成形されているとともに、前記軸受部12内に入り、回転軸131の上部を覆う断面半円形の上部軸内金型421により成形される。
【0041】
可動金型43は、クリップ10の形状を成形するとともに、前記回転軸131の下部を覆い、前記軸受部12内に入る断面半円形からなる下部軸内金型431とから構成されている。前記上部軸内金型421は、上部金型422に連設されているとともに、係止蓋13の上方に一部が露出するような形状になっている。また、前記下部軸内金型431は、下部金型432に連設されているとともに、係止蓋13の下方に一部が出るような形状になっている。前記上部軸内金型421および下部軸内金型431は、互いに稜線部分でのみで接触するようになっているため、前記3個の金型で、前記軸受部12内において、前記回転軸131が回動できるように、同時に作製することができる。
【0042】
本発明のクリップにおける係止蓋13は、以上のように構成されており、前記係止蓋13が基体11に対していかなる角度であっても、回転可能であり、他方の抜け止め部112に係止することで、前記線状部材14等(図2参照)を固定することができる。本発明の基体11、軸受部12、および係止蓋13の構造は、成形金型42、43を分割ラインの一方向に、また、スライダー金型41を下方の一方向に抜くだけの構造とすることができるため、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、一つの金型で多数個の成形品を同時に作製することができる。
【0043】
図6は本発明の金型内にクリップが成形された図で、固定金型および可動金型からスライダー金型を抜いた状態を説明するための図である。図7は本発明の金型内にクリップが成形された図で、固定金型から可動金型を抜いた状態を説明するための図である。図8は本発明の固定金型からクリップを抜いた状態を説明するための図である。図6から図8において、クリップ10は、固定金型42、可動金型43、およびスライダー金型41とから構成される金型によって作製されている。前記各金型内に注入された合成樹脂または金属は、冷却された後、以下のような順番で、各金型が抜かれる。
【0044】
最初、スライダー金型41は、下方に引き抜かれる。次に、可動金型43が抜かれる。この状態において、クリップ10は、固定金型42に一部が残った状態になる。そして、図8に示すように、クリップ10は、固定金型42から抜き出されて商品となる。
【実施例2】
【0045】
図9は本発明の第2実施例である異なった形状のクリップを説明するための斜視図である。図10は本発明の第2実施例のクリップにおいて、脚部と胴部を互いに嵌合させた状態を説明するための図である。図9および図10において、第2実施例のクリップ90は、脚部91と胴部92とから少なくとも構成されている。前記脚部91は、内部に収容孔911を有し、上部に形成されたほぼリング状フランジ部912と、4本の柱状部913と、前記柱状部913の先端部に成形されている互いに外方に向いた連結爪914と、前記フランジ部912の端部から突出して成形されている環状部を備えた垂直リンク915とから少なくとも構成されている。
【0046】
前記胴部92は、貫通する孔を有する貫通孔921と、ほぼ中央部に二本の対向した柱状部922と、前記柱状部922の先端に成形された、互いに同じ方向を向いて突設されている固定爪923と、前記胴部92の側部に成形され、前記脚部91に成形されている連結爪914と係合する4個の連結孔924と、前記脚部91の一端に環状で垂直方向に成形され、垂直リンク部915の開口部に入り、前記胴部92を前記脚部91に嵌合する際の回動軸となる水平リンク部925とから少なくとも構成されている。
【0047】
図11は本発明のクリップを用いてバンパーと車体パネルとを取り付ける前の状態を説明するための斜視図である。図12(イ)から(ハ)は本発明のクリップにおいて、クリップ、板状部材、バンパーを取り付ける際の組立図である。図13は図12のA−A断面図、図14は図12のB−B断面図、図15は図12のC−C断面図である。
【0048】
図11において、バンパー93は、中央に凹部が成形されている中央凹部931と、前記中央凹部931の両側に突出している側部突片932と、前記中央凹部931の下方向に設けられた係止孔933とから少なくとも構成されている。車体パネル94は、中央部に取付孔941を備えている。前記脚部91と胴部92は、連結爪914と連結孔924との係合により、固定される(図14参照)。この状態で、前記クリップ90は、車体パネル94の取付孔941の内部に嵌合して固定される。
【0049】
前記クリップ90は、図11に示す弾性取付部916が空洞917により変形することにより、前記取付孔941を通過した後、固定される(図13参照)。次に、バンパー93は、中央凹部931と側部突片932が前記脚部91の収容孔911、および前記胴部92の貫通孔921に入る。バンパー93の係止孔933と、胴部92の固定爪923とは、互いに係合して連結される(図15参照)。図13から図15は、脚部91、胴部92、およびバンパー93の係合状態が判るような断面図になっている。
【0050】
図16(イ)から(ハ)は本発明のクリップを成形するための固定金型、可動金型、スライダー金型を説明するための図である。図17は本発明のクリップを成形するための固定金型、可動金型、およびスライダー金型を説明するための斜視図である。図18は本発明のクリップを成形するための固定金型および可動金型の作製手順を示す分解斜視図である。図16および図18において、金型は、上部固定金型1011、下部固定金型1012、上部可動金型1021、下部可動金型1022とから構成されている。また、スライダー金型は、上方に引き抜く脚部スライダー金型1111、胴部上スライダー金型1121、ヒンジスライダー金型1131と、下方に引き抜く胴部下スライダー金型1122とから構成されている。また、図18に示す金型1023、1024は、必要に応じて、脚部91のフランジ912、および弾性取付部916、空洞917を成形する際に使用する。
【0051】
前記脚部スライダー金型1111は、前記脚部のほぼ中心部に入り、上方に引き抜く。前記胴部上スライダー金型1121は、前記胴部92のほぼ中心部に入り、上方に引き抜く。前記ヒンジスライダー金型1131は、前記ヒンジ部に入り、上方に引き抜く。前記胴部下スライダー金型1122は、前記胴部の中心部に入り、下方に引き抜く。前記クリップ作製用金型は、前記固定金型、可動金型、複数のスライド金型の形状を巧みに成形することにより、少ない工程でクリップを同時に作製することができる。
【0052】
前記脚部91、フランジ部912、垂直リンク部915、水平リンク部925、および胴部92の構造は、成形する成形金型1011、1012、1021、1022と複数のスライダー金型1111、1121、1131、1122とによる金型から成形される。また、本発明の脚部91を有するフランジ部912、垂直リンク部915、水平リンク部925、および胴部91の形状および構造は、成形金型(可動金型)を分割ラインの一方向に、また、複数のスライダー金型を上下方向に抜くだけの構造とすることができるため、金型全体の大きさを小さくすることができるだけでなく、少ない金型で多数個の成形品を同時に作製することができる。
【0053】
図17において、脚部スライダー1111は、上方に抜かれ、脚部91の収容孔911を成形する。胴部スライダー1121は、上方に抜かれ、胴部92の貫通孔921を成形する。ヒンジスライダー1131は、上方に抜くことにより、他の金型と協働して、垂直リンク915および水平リンク925が回動できるように成形する。胴部下スライダー1122は、下方に抜くことにより、前記胴部上スライダー1121とともに、胴部92を成形する。
【0054】
図18において、フランジ部912は、バンパー93および板状部材94の取付けを容易にするためにフランジ部912の下部に、弾性取付部916、空洞917が必要になる。そのため、図18に示す金型1023、1024が必要である。前記金型1023、1024は、必要に応じて、変形できるものてある。
【0055】
図19はリンク部を作製するための金型を説明する図であり、図16におけるD−D断面図である。図20はリンク部を作製するための金型を説明する図であり、図16におけるE−E断面図である。図19および図20において、上部固定金型1011、下部可動金型1021、スライダー金型1131は、実施例1の図4から図7とその説明に記載されているようにして、垂直リンク915および水平リンク925を成形することができる。
【0056】
図19において、前記水平リンク925は、垂直リンク915がリンクする開口部を有する。また、前記水平リンク925は、図19において、揺動軸となる部分の長さ方向に対して、手前と後方で厚さが互い違いになるように成形されている。前記構成は、図18から図20に示すように、上部可動型1021を抜く際に、固定部と回動部を同時に金型で作製することができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明のクリップは、特許請求の範囲に記載された範囲により、各部の形状および寸法を変更することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0058】
10・・・クリップ 41・・・スライダー金型
11・・・基体 42・・・固定金型
111・・・保持部 43・・・可動金型
112・・・抜け止め部 411・・・金型頂部
12・・・軸受部 421・・・上部軸内金型
121・・・開口部 422・・・上部金型
13・・・係止蓋 431・・・下部軸内金型
131・・・回転軸 432・・・下部金型
132・・・係止部
14・・・線状部材等
15・・・面一

91・・・脚部 1011・・・上部固定金型
911・・・収容孔 1012・・・下部固定金型
912・・・フランジ部 1021・・・上部可動金型
911・・・収容孔 1022・・・下部可動金型
913・・・脚部柱状部 1111・・・脚部スライダー金型
914・・・連結爪 1121・・・胴部上スライダー金型
915・・・垂直リンク 1131・・・ヒンジスライダー金型
916・・・弾性取付部 1122・・・胴部下スライダー金型
917・・・空洞

92・・・胴部 93・・・バンパー
921・・・貫通孔 931・・・バンパー側部
922・・・胴部柱状部 932・・・係合孔
923・・・固定爪 94・・・板状部材(車体パネル)
924・・・連結孔 941・・・開口部
925・・・水平リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材を固定する取付手段を備えている基体と、
前記基体の端部に設けられた軸受部と、
前記軸受部の内部で回動自在に軸支され揺動軸と、
前記揺動軸により、回動して前記基体と一体になる蓋体と、
から少なくとも構成されることを特徴とする軸支構造。
【請求項2】
前記蓋体は、
前記揺動軸に連結する連結部からなる凹部を備えた平らな薄板部を有し、前記凹部の前記揺動軸の長さ方向の前方と後方において、厚さが互い違いになっていることを特徴とする請求項1に記載された軸支構造。
【請求項3】
前記蓋体の揺動軸と前記軸受部は、開口部の中心で偏心していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された軸支構造。
【請求項4】
被取付部材を固定するクリップにおいて、
前記被取付部材の少なくとも一つを固定保持する保持部、被取付部材と係合する取付部、および抜け止め部が成形されている基体と、
前記基体の一方に一体に延出されている開口部を備えた軸受部と、
前記基体の他方で前記抜け止め部に係止できるように成形されている係止部、前記軸受部の開口部を介して回動可能に軸支されている回転軸、前記回転軸と係止部との間で前記保持部を覆い保持する面状部材、が一体に成形されている蓋体と、
から構成され、
前記基体および蓋体が回転可能に係止することが可能であるとともに、前記基体および蓋体を成形する成形金型に対して、スライダー金型が異なる一方向にのみ可動可能な金型から成形されていることを特徴とするクリップ。
【請求項5】
前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する一方側が固定されている固定金型と、
前記基体、軸受部、蓋体の長さ方向の中心線に対する他方側が可動できる可動金型と、
前記軸受部の開口部に入り、上方向および/または下方向に引く抜くことができるスライダー金型と、
から少なくとも構成されており、前記蓋体を基体に対して180度または90度の位置で成形することを特徴とする請求項1に記載された軸支構造の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−21537(P2012−21537A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153092(P2010−153092)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】