説明

軸方向に入れ子式の摺動固定式拡張デバイス

体内管腔の支持を維持するための拡張可能な医療用インプラントを提供する。例えば、血管の閉塞部を拡張するための、軸方向に入れ子式の、拡張可能な摺動固定式血管デバイスを提供する。軸方向に入れ子式の血管デバイスは、半径方向の強度および内腔の開存性等の他の重要な特徴を維持しつつ、競争力のある断面形状を実現することができる。また、半径方向の強度を損なうことなく、折り畳まれた形状を非常に薄くすることもできる。よって、血管デバイスは、小さくて到達困難な領域または血管において有利に展開することができる。軸方向に入れ子式にすることで、嵌合する構造要素間の半径方向の重複を実質的に排除し、それによって、望ましくは低く均一な形状を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、概して、体内管腔の支持を維持するための拡張可能な医療用インプラントに関する。より具体的には、本発明は、体内管腔の一部を拡張するための、主として軸方向に入れ子式の、直径方向に拡張可能な摺動固定式デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術の記載]
ステントまたは拡張可能なステントグラフトは、体内管腔の開存性を維持する目的で様々な体内管腔に移植される。体内管腔は、その大小に関わらず血管性および非血管性であり得る。これらのデバイスは、典型的には、容易に接近可能な場所で挿入され、次いで展開位置まで前進させられるカテーテルを使用して管腔内に移植される。最初、ステントは、管腔を通って操作できるように、半径方向に圧縮された状態または折り畳まれた状態である。所定の位置に達するとステントが展開されるが、この展開は、その構成に応じて、例えば、その周囲にステントを担持するカテーテル上のバルーンを膨張させることによって、自動的にまたは手動で達成されてもよい。
【0003】
ステントの重要かつ頻度の高い用法は、血管壁の一部または狭窄性プラークが血管内で流体の流れを遮断または閉塞した状況において、血管を治療することである。血管の閉塞部を拡張するための経皮経管血管形成術の手技においてバルーンカテーテルが利用されることが多い。しかしながら、閉塞部の拡張は、アテローム硬化性プラークの亀裂や、内皮およびその下の平滑筋細胞層の損傷の原因となり得、血管壁における皮弁の形成または穿孔から生じる当面の問題や、拡張された血管の再狭窄を伴う長期的な問題を引き起こす可能性がある。ステントの移植は、そのような問題に支持を提供し、血管の再閉鎖を予防するか、または穿孔が生じた血管にパッチ修復を提供することができる。さらに、ステントは、病変血管壁が虚脱する傾向を克服し、それによって、その血管により正常な血流が通るよう維持することができる。ステントはまた、不安定で脆弱なプラーク病変を有する患者において等、他の臨床条件にも使用されている。
【0004】
通常、ステントは、さもなければ遮断、狭窄、または閉塞される管腔を開放した状態で維持するために用いられるため、ステントは、予想される力に効率的に対抗するよう、拡張状態における十分な半径方向の強度またはフープ強度を示さなければならない。しかしながら、同時に、ステントは、管腔を通って容易に前進させられるように、その折り畳まれた状態においてできるだけ小型である必要がある。結果的に、ステントができるだけ大きな拡張率を有することが有利である。
【0005】
さらなる検討事項は、デバイスの長手方向の可撓性である。このような特性は、所定の位置に達するようステントを操作する際(実質的に回旋状である脈管構造を横切ることが必要となり得る)に重要なだけではなく、展開部位で脈管構造の任意の湾曲によりよく適合するためにも重要である。しかしながら、同時に、ステントは、それでもなお、展開する際に管腔壁に必要な支持を提供するのに十分な半径方向の強度を示す必要がある。
【0006】
多くの従来技術のステント構成に固有の別の問題は、そのような構造が半径方向に拡張された時に典型的に受ける長手方向の収縮である。これは、ステントが展開状態にある時の有効長を短くするだけでなく、拡張する際に血管壁に擦過傷を負わせる可能性がある。
【0007】
これらの種々の要件に対応するために、これまでに非常に異なる多くの手法が考案されてきた。一般的な手法では、ステントは完全にワイヤで構成される必要がある。ワイヤは、曲げられ、織られ、および/または巻かれて、半径方向の拡張を受ける能力を有する構成において概して円筒形である構造を画定する。
【0008】
ワイヤベースの構造の代替として、ステントは管材で構成されてきた。そのような管状の出発材料から選択的に材料を除去することにより、所望の程度の可撓性および拡張性を構造に付与することが可能である。管から材料を除去するためにエッチング技術およびレーザ切除プロセスが利用される。レーザ切除は、非常に明確に画定された材料パターンを管から切り出し、逆に、非常に精密かつ正確に画定された材料パターンを完全な状態で残すことができる高度な精度および正確性を提供する。そのようなステントの性能は、まさに残る材料のパターン(すなわち、デザイン)と材料の厚さとの関数である。特定のパターンを選択することは、結果として得られるステントの被覆面積、拡張率、および強度、ならびにステントが拡張する際の長手方向の可撓性および長手方向の寸法安定性に多大な影響を及ぼす。
【0009】
チューブベースのステントは、ワイヤベースの設計よりも多くの利点を提供するが、それでもなお、半径方向のフープ強度を犠牲にすることなく、半径方向に拡張する際に長手方向の可撓性および長手方向の寸法安定性をさらに高める目的で、このような設計を改良することが望ましい。
【0010】
Fordenbacherによって記載される1つのステント設計(例えば、米国特許第5,549,662号および第5,733,328号を参照のこと)は、複数の細長い平行なステント構成要素を用いており、各構成要素は、ステントの全軸方向長に及ぶ長手方向の骨格と、そこから延在する複数の対向する周方向要素または指部を有する。1つのステント構成要素の周方向要素は、隣接するステント構成要素の長手方向の骨格にある対になったスロット内に蛇行しながら入る。周方向要素が対になったスロットの第1のスロットを通過し、次いで対になったスロットの第2のスロットを蛇行しながら通過して元に戻る、この織物状に絡み合った構成は、材料を変形することなく半径方向の拡張を可能にするというFordenbacherの目標に必須である。また、Fordenbacherステントの周方向要素の十分な部材は、適切な足場を提供することができる。残念ながら、周方向要素は、対になったスロットから突出する自由端を有する。さらに、対になったスロットを蛇行しながら通過する周方向要素は、必然的に管腔壁から離れる。自由端および離れた状態の両方が、血栓症および/または再狭窄のリスクを著しく高める恐れがある。さらに、複数の長手方向の骨格がある結果として、このステント設計は可撓性が低くなる傾向にある。
【0011】
いくつかのステントは、折り畳まれた状態で重複度が高くなるようにシートを丸め、ステントの巻きが解けて展開された状態になると重複が減少する「ジェリーロール」設計を採用している。そのような設計の例は、Lauに対する米国特許第5,421,955号、Khosraviに対する第5,441,515号および第5,618,299号、ならびにSigwartに対する第5,443,500号に記載される。これらの設計の欠点は、それらが非常に低い長手方向の可撓性を示す傾向にあることである。長手方向の可撓性の向上を示す改良設計では、複数の短いロールが長手方向に結合される。例えば、Campbellに対する米国特許第5,649,977号、ならびにCarpenterに対する第5,643,314号および第5,735,872号を参照されたい。しかしながら、これらの結合されたロールは、隣接するロールの間で血管の支持を行わない。さらに、これらの設計は、複数層におけるステント要素が広範囲にわたって重複するため、送達形状がかなり厚くなる。
【0012】
上で参照したステントを含む種々の種類のステントは、それらの拡張手段に基づいて記載されることが多い。バルーン拡張可能ステントは、折り畳まれた状態で製造され、バルーンを用いて所望の直径まで拡張される。バルーン拡張可能ステントは、臨床用途において広く使用される第1のステントの種類であるが、バルーン拡張可能ステントは、多くの重要な用途においてそれらの有効性を制限する可能性のある種々の欠点を有することは周知である。例えば、バルーン拡張可能ステントは、膨張可能なバルーンの空気を抜いた直後に著しい反動(すなわち、直径の減少)を示すことが多い。したがって、ステントを展開する際にバルーンを過度に膨張させて、後に続く反動を相殺することが必要であるかもしれない。過度の膨張は血管を損傷する可能性があることが明らかになっているため、これは不利である。さらに、展開されたバルーン拡張可能ステントは、経時的に反動を繰り返すことにより管腔の開存性を低下させる可能性がある。さらに、バルーン拡張可能ステントは、拡張する際に短縮を示す(すなわち、長さの減少)ことが多いため、血管壁に沿って望ましくない応力を生じ、ステント留置の精度を低下させる。さらに、最初のPalmaz−Schatzステントおよび後の変形例等の多くのバルーン拡張可能ステントは、相対的にジグザグ状である末端突起を有する拡張可能なメッシュとともに構成されるため、血管損傷、血栓症、および/または再狭窄のリスクを高める。
【0013】
自己拡張型ステントは、血管の直径とほぼ等しいか、またはそれより大きい直径を有するように製造され、治療部位まで送達されるようにより小さい直径で折り畳まれて拘束される。自己拡張型ステントは、送達する際に折り畳まれた状態でステントを拘束するように、一般的にシースまたはスリーブ内に配置される。治療部位に到達した後で拘束機構が解除され、ステントが自己拡張して拡張状態になる。最も一般的には、自己拡張型ステントは、ニチノールまたは他の形状記憶合金で作製される。
【0014】
要約すると、体内管腔の開存性を維持するための多様なステントが何年にもわたって提案されてきているが、既存のステント設計のうちのいずれも、上述した欠点の大部分またはすべてを克服できていない。その結果、臨床医は、特定の用途において使用するべくステントの種類を選択する際、利点と欠点を比較検討することを余儀なくされる。したがって、改良されたステント、すなわち、患部に簡単に送達できるように折り畳んだ時に十分に小型であり可撓性であるステント、罹患した体内管腔の形状に適合するように展開時に十分可撓性であるステント、長さを変化させることなく所望の直径まで均一に拡張するステント、著しい反動を起こすことなく拡張されたサイズを維持するステント、およびクリアスルールーメンを提供するように十分な足場を有するステントの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明を要約する目的のために、本発明の特定の態様、利点、および新規特徴をこれまで説明してきた。当然、本発明の任意の特定の実施形態にしたがって、そのようなすべての利点が達成されなくてもよいことを理解されたい。よって、本発明は、本明細書に教示または提案されるところに従って、他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示または提案されるような1つの利点または一連の利点を達成または最適化する様式で、具現化または実行することができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、展開状態において実質的に互いに半径方向に重複しない、すなわち互いの上に積み重ならない(入れ子にならない)要素または部材を備える、直径方向に拡張する摺動固定式の血管デバイス、プロテーゼ、またはステントを提供する。入れ子(非拡張、非展開、拡張前)の位置にある時、重複する2つの要素の半径方向の厚さは、材料の公称厚さの約2倍未満である。非展開状態における重複は、好適な断面形状が達成される限り概ね許容される一方で、展開状態では、望ましくは、実質的に重複していないか、最小限に抑えられるか、または低減される。
【0017】
軸方向に入れ子式の実施形態を製造するおよび組み立てる際には、デバイスの構造要素は、非展開(非拡張、拡張前)状態および展開(拡張)状態の両方においてデバイスの断面形状および体積を実質的に低減するかまたは最小限に抑えるように、拡張前または非拡張状態で実質的には大抵または主として(軸方向に)並んで配置される。有利には、半径方向に入れ子になるデバイス設計に典型的に見られる過剰な体積を実質的に低減または削減することにより、本発明の実施形態を使用して、種々の厚さの種々の材料を用いて競争力のあるデバイスおよび断面形状を達成し、それによって、望ましくは最適なデバイス設計および性能を可能にする。
【0018】
従来の摺動固定式血管デバイスの多くは、半径方向に互いに重複する、すなわち、互いに積み重なる要素を備える。この特徴は、用いることのできる材料の厚さおよび用いることのできる要素の数を制限する可能性がある。厚さまたは要素の数が増すにつれて、断面形状等、デバイスの競争力のある特徴が損なわれる可能性がある。許容される断面形状を提供するために、これらの半径方向に入れ子になるデバイスに用いられる要素の厚さおよび数が低減されることが多く、信頼性およびデバイスの半径方向の強度等の特徴に影響を及し得る。
【0019】
本発明の実施形態は、例えば、半径方向の強度および管腔の開存性等の重要な特徴を維持しつつ、競争力のある断面形状を達成するための、軸方向に入れ子式の血管デバイスを提供する。有利には、軸方向に入れ子式のデバイスの設計は、必要または所望に応じて半径方向の強度を維持するように、より厚い材料の使用を許容する。
【0020】
本発明の実施形態は、多くの特徴を利用して、制御された予測可能なデバイスの拡張を可能にする摺動固定機構を作製することができる。例えば、偏向可能および偏向不能な要素および部材を用いて、所望の展開およびロックアウト性能を達成することができる。当業者は、所望の展開およびロックアウト性能を達成するために、種々の機構、特徴、および/または幾何学的形状が容易に含まれ得ることを理解するであろう。例えば、構造要素の大部分を組み込んだ機構が用いられてもよいか、またはより小さい局在化された副次的要素が用いられてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態は、折り畳まれた状態から拡張状態まで拡張可能である管状部材を備える摺動固定式ステントを提供する。管状部材は、別個の第1および第2の軸方向に入れ子式の摺動可能に結合された構造要素であって、そのうちの少なくとも1つは、折り畳まれた状態から拡張状態まで拡張する際に偏向し、それによって反動に抵抗するように構成される偏向可能な構造を備える構造要素を備え、構造要素のいずれの部分も他の構造要素の対になったスロットを蛇行しながら通過しない、少なくとも1つの摺動固定部分を備える。
【0022】
任意選択の実施形態において、偏向可能な構造は、軸方向に偏向するように構成される。代替として、偏向可能な構造は、半径方向に偏向するように構成される。
【0023】
本発明の実施形態は、改良されたステント、すなわち、望ましくは、患部に簡単に送達できるように、折り畳んだ時に十分小さく、また十分可撓性であるステント、罹患した体内管腔の形状に適合するように、展開時に十分可撓性であるステント、長さを変化させることなく、所望の直径まで均一に拡張するステント、著しい反動を起こすことなく拡張されたサイズを維持するステント、およびクリアスルールーメンを提供するように十分な足場を有するステント、血管の内側によるステントの内皮化または被覆を支援し、ひいては血栓症のリスクを最小限に抑えるステント、ならびに、損傷を最小限に抑え、再狭窄および他の血管疾患を治療するための治療剤を送達するより高い能力を有するステントを提供する。
【0024】
任意選択の実施形態によるステントは、種々の製造方法、技術、および手順を使用して製造または作製することができる。それらは、特に、レーザ発振、レーザ加工、フライス加工、スタンピング、フォーミング、鋳造、成形、積層、接着、溶接、接着剤による固定等を含むが、これらに限定されない。
【0025】
任意選択の実施形態において、ステントの機能および機構は、概ね2次元である幾何学的形状において作製され、例えば、これらに限定されないが、接着、積層等を利用することにより、3次元の設計および機能へとさらに加工される。他の実施形態において、ステントの機能および機構は、例えば、これに限定されないが、射出成形等のプロセスを利用することにより、直接3次元形状に作製される。
【0026】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは、金属およびポリマーから構成される群より選択される材料をさらに含む。任意選択で、ポリマーは生体吸収性ポリマーを含む。より好ましくは、ポリマーは、放射線不透過性の生体吸収性ポリマーを含む。一態様において、ポリマーは、ステントの少なくとも一部にコーティングを形成する。ポリマーコーティングは、選択された生物学的応答を促進するように適合される生体適合性、生体吸収性のポリマーをさらに含むことができる。実施形態によると、軸方向に入れ子になった非拡張状態から拡張状態まで拡張することができる軸方向に入れ子式のステントが提供される。ステントは、長手方向の軸および周方向の軸を有する管状部材を備えることができる。管状部材は、複数の細長い連結部および少なくとも1つの相互接続器モジュールを備えることができる。複数の細長い連結部は、長手方向の軸の周囲に周方向に配置することができる。各連結部は、連結部に配置される少なくとも1つの係合孔を備えることができる。係合孔は、連結部を通って周方向に配置することができる。さらに、少なくとも1つの相互接続器モジュールは、少なくとも2つの連結部の係合孔の間に延在することができる。相互接続器モジュールは、管状部材の周方向の軸と概ね整列させることができる。相互接続器モジュールは、ステントが軸方向に入れ子になった非拡張状態から拡張状態へと拡張する際に、相互接続器モジュールに対する連結部の一方向に摺動可能な移動を許容するように構成することができる。
【0027】
変更実施形態において、各連結部は、可撓部を介して相互接続される複数の連結要素を備えることができる。連結要素は、それぞれ、近位端および遠位端を画定することができる。可撓部は、複数の連結要素を端と端で相互接続するように、所与の連結要素の近位端と別の所与の連結要素の遠位端との間に延在することができる。さらに、少なくとも1つの係合孔は、連結部の少なくとも1つの連結要素内に配置することができ、係合孔は、連結要素を通って周方向に配置することができる。
【0028】
別の変更実施形態において、少なくとも第1、第2、および第3の細長い連結部を、周方向に互いに離間して、複数の相互接続器モジュールを介して接続することができる。相互接続器モジュールは、第2の細長い連結部と第3の細長い連結部とを接続する相互接続器モジュールから長手方向に離間する、第1および第2の細長い連結部を接続することができる。さらに、細長い連結部は、少なくとも1つの相互接続器モジュールから離れて形成することができる。
【0029】
さらに別の変更実施形態において、少なくとも第1、第2、および第3の細長い連結部を、管状部材を形成するように周方向に互いに離間することができる。管状部材は、それぞれの周方向に隣接する細長い連結部の間に少なくとも部分的に周方向に介在するそれぞれの相互接続器モジュールを備える。いくつかの実施形態において、相互接続器モジュールは、第1の細長い連結部および第2の細長い連結部を接続することができ、相互接続器モジュールは、管状部材の外表面を少なくとも部分的に画定する第2の細長い連結部および第3の細長い連結部を接続することができる。
【0030】
追加の実施形態では、拡張状態において、少なくとも1つの相互接続器モジュールの端は、それぞれの係合孔内に少なくとも部分的に受容されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、拡張状態において、少なくとも1つの相互接続器モジュールの端は、それぞれの係合孔内に対して実質的に固定されてもよい。いくつかの実施形態において、半径方向に入れ子になった非拡張状態では、少なくとも1つの相互接続器モジュールは、管状部材内で周方向に入れ子になってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態によると、ステントは、管状部材の長手方向の軸の周囲に周方向に配置することができ、隣接する連結部の間に介在する少なくとも1つの相互連結器をさらに備えることができる。相互連結器は、相互連結器本体の第1の側から延在する相互接続器モジュールとともに構成することができる細長い相互連結器本体を有することができる。この場合、相互連結器は、その第2の側から延在する少なくとも1つの相互接続器モジュールとともに構成することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、相互接続器モジュールは、ステントの一方向への拡張を容易にするために、連結要素の係合孔に係合するようにその上面および下面のうちの少なくとも1つに沿って配置される複数の歯を備えることができる。歯は、相互接続器モジュールの上面から延在する可撓性の傾斜突起を備えることができる。さらに、歯は、相互接続器モジュールに結合された自由端および固定端を有する羽根を備えることができる。羽根は、ステントの一方向への拡張を容易にするように、相互接続器モジュールが係合孔を通過する間は偏向し、係合孔を出ると係合位置に戻るように動作可能であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態によると、相互接続器モジュールは、2つの隣接する連結部を相互接続することができる。この場合、相互接続器モジュールの長さは、連結部の間の最大距離を画定することができる。さらにいくつかの実施形態は、相互接続部材が、ステントの拡張を制限するための停止部材を備えるように構成することができる。この場合、連結部の係合孔は、第1の通過形状を画定することができ、停止部材は、第1の通過形状よりも大きな第2の形状を画定することができる。
【0034】
さらに追加の変更実施形態によると、各連結部は、A字型フレームおよび対向する側方ウイングを画定する複数の連結モジュールと、複数の連結モジュールを端と端で相互接続するように、所与の連結モジュールの側方ウイングと別の所与の連結モジュールの側方ウイングとの間に延在する可撓部とをさらに備えることができる。この場合、少なくとも1つの係合孔は、連結部の連結モジュールのA字型フレームに配置することができる。さらに、係合孔は、連結モジュールを通って周方向に配置することができる。また、少なくとも1つの相互接続器モジュールは、隣接する連結部の間に介在するそれぞれの相互接続器モジュールとともに長手方向の軸の周囲に周方向に配置することができる。相互接続器モジュールは、隣接する連結部の係合孔の間に延在する複数の相互接続部材を備えることができる。相互接続部材は、管状部材の周方向の軸と概ね整列させることができる。相互接続部材は、ステントが軸方向に入れ子になった非拡張状態から拡張状態まで拡張する際に、相互接続部材に対する連結部の一方向に摺動可能な移動を許容するように構成することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、相互接続部材は、ステントの一方向への拡張を容易にするために、連結モジュールの係合孔に係合するようにその少なくとも1つの側面に沿って配置される複数の歯を含むことができる。歯は、相互接続部材の両方の側面から延在する可撓性の傾斜突起を備えることができる。さらに、歯は、相互接続部材に結合された自由端および固定端を有する羽根を備えることができる。羽根は、ステントの一方向への拡張を容易にするように、相互接続器部材が係合孔を通過する間は偏向し、係合孔を出ると係合位置に戻るように動作可能であってもよい。
【0036】
また、いくつかの実施形態は、相互接続器モジュールが第1の側および第2の側を備えるように構成することができる。さらに、第1の側から延在する相互接続部材の数は、第2の側から延在する相互接続部材の数の2倍であってもよい。所与の連結部の連結モジュールは、別の所与の連結部の連結モジュールと概ね長手方向に整列させることができる。
【0037】
体内管腔を再治療するための方法が、本発明の別の実施形態にしたがって開示される。この方法は、上記ステントのうちのいずれかを体内管腔の領域に対して展開するステップ(ステントは生体吸収性ポリマーで作製され、一定期間その領域に留置される)と、一定期間後に、例えば、任意の種類の第2のステント、血管形成術、関節切除、外科的バイパス、放射、アブレーション、局所的な薬剤注入等から構成される群より選択される治療等の第2の治療、または任意の後続する介入もしくは治療を領域に施すステップとを含む。
【0038】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは治療剤をさらに含む。
【0039】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは層状材料をさらに含む。任意選択で、層状材料は生体吸収性ポリマーを含む。
【0040】
摺動固定式血管デバイスの実施形態の1つの重要な設計態様は、その展開率、つまり、最初の圧縮時の直径に対する最終的な最大直径の比率である。実現しようとする特定の設計または対象とする用途に応じて、展開率が異なってもよい。有利には、本発明の実施形態のステントは、必要または所望に応じて要素の数が増加または減少されること、つまり変更されることを許容し、展開率および特にデバイスの性能、断面形状、可撓性の最適化を達成する。これによって、望ましくはデバイスに汎用性および有用性が加わる。
【0041】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントが血管腔に留置された時に概ね望ましい血流特性を示すように、ステントの少なくとも一部の断面の幾何学的形状は先細りである。
【0042】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは、治療部位に送達する際に管状部材を取り囲むようにサイズ決定された後退可能なシースをさらに備える。
【0043】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは、硬い壁領域をさらに備える。硬い壁領域は、開口部をさらに備えることができる。
【0044】
上記ステントの任意選択の実施形態において、ステントは、ポリマーシースをさらに備える。
【0045】
血管内の部位を治療するためのシステムも開示される。システムは、展開手段を有するカテーテルおよび上記ステントのうちのいずれかを有し、カテーテルはステントを部位に送達するように適合され、展開手段はステントを展開するように適合される。好ましい変形例において、カテーテルは、オーバーザワイヤカテーテル、同軸迅速交換カテーテル、および多重交換送達カテーテルから構成される群より選択される。
【0046】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示する本発明の範囲内であることが意図される。本発明のこれらおよび他の実施形態は、添付の図面を参照することにより、任意選択の実施形態の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになり、本発明は、開示されるいずれか特定の任意選択の実施形態(複数可)に制限されるものではない。
【0047】
このように、本発明の一般的な性質ならびにその特徴および利点のうちのいくつかを要約してきたが、その特定の任意選択の実施形態および変更例は、以下の図面を参照することにより、本明細書における詳細な説明から当業者により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】本発明の実施形態による特徴および利点を示す、軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの単純化した概略端面図である。
【図1B】本発明の別の実施形態による特徴および利点を示す、軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの単純化した概略側面図である。
【図2】本発明の別の実施形態による特徴および利点を示す、入れ子状態にある軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの平面図である。
【図3】拡張状態にある図2の軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの透視図である。
【図4A】本発明の実施形態による、図4の軸方向に入れ子式のステントの細長い連結部の上面図である。
【図4B】図4Aの細長い連結部の側面図である。
【図5A】は、本発明の実施形態による、図4のステントの相互接続部材の上面図である。
【図5B】図5Aの相互接続部材の側面図である。
【図6A】図2において入れ子状態になって示されるステントの側面図である。
【図6B】図3のように拡張状態で示されるステントの側面図である。
【図7】ステントの限定的拡張のための停止部材を示す、ステントの実施形態の部分透視図である。
【図8】本発明の別の実施形態による特徴および利点を示す、入れ子状態にある別の軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの透視図である。
【図9】拡張状態にある図8の軸方向に入れ子式の摺動固定式ステントの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本説明は種々の実施形態の特定の詳細について記載するが、この説明は例示的なものに過ぎず、決して本発明を制限するものであると解釈されるべきではないことを理解されたい。さらに、当業者は構想することができる本発明の種々の用途およびそれに対する変更例も、本明細書に記載される一般的な概念に包含される。
【0050】
「ステント」という用語は、本明細書で使用される場合、(1)冠血管、神経血管、および例えば腎臓、腸骨、大腿骨、膝窩、鎖骨下、およい頚動脈等の末梢血管等の血管性の体内管腔(すなわち、動脈および/または静脈)、ならびに(2)現在治療されているような非血管性の体内管腔、すなわち、消化管(例えば、胃腸、十二指腸および食道、胆管)、呼吸管(例えば、気管および気管支)、および尿管(例えば、尿道)に留置される実施形態を指すために使用され、(3)また、そのような実施形態は、生殖系、内分泌系、造血系、および/または外皮系、筋骨格系/整形外科系、ならびに神経系(聴覚および眼科用途を含む)等の他の身体組織の管腔において有用あり得、(4)最後に、ステントの実施形態は、(例えば、動脈瘤の場合において)閉塞物を誘導するために有用であり得る。
【0051】
本発明の以下の説明では、「ステント」という用語は、「プロテーゼ」という用語と交換可能に使用されてもよく、体内通路のセグメントを支持するように構成される種々のデバイスを含むものとして広義に解釈されるべきである。さらに、「体内通路」という用語は、本明細書に説明するような体内の任意の管腔または導管を包含することを理解されたい。
【0052】
さらに、「形状記憶材料」という用語は、ニッケル−チタン合金等の種々の既知の形状記憶合金、および相当な塑性変形を受けた後で以前に定義された形状に戻る任意の他の材料を含む広義の用語であることを理解されたい。
【0053】
1つの任意選択の実施形態において、組み立てられたステントは、概して、体内管腔に挿入されるようにサイズ決定された長手方向の軸における長さおよび周方向における直径を有する管状部材を有する。管状部材は、折り畳まれた状態または拡張状態のいずれにおいても管腔内に突出する構造をほとんど有さないかまたは全く有さないと定義される「クリアスルールーメン」とともに任意選択で形成される。
【0054】
本明細書に図示および説明する実施形態の多くにおいて、管腔内ステントは、本明細書において概して「軸方向要素」と称される「摺動固定要素」を任意選択で備える。軸方向要素は、例えば展開する際に、ステントが、軸方向に折り畳まれた状態から軸方向に拡張された状態まで単方向性の軸方向の拡張を示す様式で、周方向に隣接する軸方向要素と摺動可能に相互連結される。軸方向要素は、ステントが体内通路内で展開された後に拡張された直径で維持される(すなわち、ロックアウトされる)よう、ラチェット効果をもたらすように任意選択で構成される。より具体的には、この構造(例えば、軸方向要素)は屈曲または湾曲することができるが、従来のバルーン拡張可能ステントとは異なり、折り畳み時の直径から拡張時の直径までステントが拡張する際に、この要素の塑性変形は実質的に必要とされない。この種類の要素は、本明細書において概して「非変形要素」と称される。したがって、「非変形要素」という用語は、ステントを展開する際にその最初の寸法(すなわち、長さおよび幅)を実質的に維持する構造を一般的に表すことが意図される。各軸方向要素は、摺動固定機構を提供するように切断されるかまたは他の方法で成形される、平坦なシートとして任意選択で形成される。
【0055】
「対になったスロットを蛇行して通過する」という句は、米国特許第5,549,662号および第5,733,328号に記載される意味を有する。本明細書で使用される場合、この句は、一方のステント構成要素の一部が別のステント構成要素の一対のスロットのうちの1つを通過し、次いで、該一対のスロットの第2のスロットを通過して元に戻ることによって織物状に絡み合った構成を作り出す、ステント構成要素間の特定の摺動可能な結合部または関節部を表す。本発明の任意選択の実施形態は、織物状の構成を回避する摺動可能な結合部または関節部をステント構成要素間に用いるため、これらの任意選択の実施形態において、ステント構成要素の一部が別のステント構成要素の対になったスロットを蛇行して通過することはない。
【0056】
「半径方向の強度」という用語は、本明細書で使用される場合、ステントが臨床的に有意な損傷を受けることなく耐えることができる外圧を表す。バルーン拡張可能ステントは、半径方向の強度が高いため、血管の開存性を確保するために冠動脈において一般的に使用される。体内管腔内で展開する際には、ステントを特定の所望の直径まで拡張するようにバルーンの膨張を調節することができる。したがって、バルーン拡張可能ステントは、正確な留置およびサイズ決定が重要である用途において使用することができる。バルーン拡張可能ステントは、ステントを展開する前に血管の事前拡張を行わない直接ステント留置用途、または事前拡張手技に続くプロテーゼ用途(例えば、バルーン血管形成術)に使用することができる。直接ステント留置の際には、膨張可能なバルーンが拡張して血管を拡張すると同時に、ステントも拡張する。
【0057】
別の任意選択の実施形態において、ステントは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属中の米国特許出願第10/952,202号に開示されるような、生体適合性および任意選択で生体吸収性のポリマーで形成される管状部材をさらに備える。また、用いられる種々のポリマーの化学式は、立体異性体を含むホモポリマーおよびヘテロポリマーを含んでもよいことを理解されたい。ホモポリマーは、本明細書において、すべて同じ種類のモノマーを含むポリマーを指すために使用される。ヘテロポリマーは、コポリマーとも称される2つ以上の異なる種類のモノマーを含むポリマーを指すために本明細書において使用される。ヘテロポリマーまたはコポリマーは、ブロックポリマー、ランダムポリマー、および交互ポリマーとして知られる種類のものであってもよい。さらに種々のポリマーの式の表示に関して、本発明の実施形態による生成物は、ホモポリマー、ヘテロポリマー、および/またはそのようなポリマーのブレンドを含むことができる。
【0058】
「生体吸収性」という用語は、本明細書で使用される場合、(化学分解される水および/または酵素の作用によって)生分解を受けるポリマーであって、分解産物の少なくとも一部が排泄される、および/または人体に吸収されるポリマーを指すために使用される。「放射線不透過性」という用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、X線照射、蛍光透視法、他の形態の放射、MRI、電磁エネルギー、構造画像法(コンピュータ断層撮影等)、および機能画像法(超音波検査等)等の画像診断用の生体内分析技術によって可視化される物体またはその物体を含む材料を指すために使用される。「本質的に放射線不透過性」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリマーのハロゲン種の共有結合のために本質的に放射線不透過性であるポリマーを指すために使用される。したがって、この用語は、ハロゲン化種または金属およびその複合体等の他の放射線不透過性薬剤と単純にブレンドされるポリマーを包含する。
【0059】
別の任意選択の実施形態において、ステントは、選択された治療効果を発揮するのに十分な量の治療剤(例えば、医薬品および/または生物剤)をさらに含む。「医薬品」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の生理(代謝)応答を刺激する、疾患の緩和、治療、または防止のために意図される物質を包含する。「生物剤」という用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、器官、組織または細胞ベースの誘導体、細胞、ウィルス、ベクター、天然および組み換えおよび合成由来であり、任意の配列およびサイズの核酸(動物、植物、微生物、およびウィルス)、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、癌遺伝子、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、リポタンパク質、糖タンパク質、脂質、炭水化物、多糖、脂質、リポソーム、または例えば受容体およびリガンド等の他の細胞成分もしくは誘導体を含む、生体系における構造活性および/または機能活性を保持する任意の物質を包含する。さらに、「生物剤」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトの疾患もしくは損傷の予防、治療、または治癒に適用可能なウィルス、血清、毒素、抗毒素、ワクチン、血液、血液成分もしくは誘導体、アレルギー生成物、または類似生成物、またはアルスフェナミンもしくはその誘導体(または任意の三価有機ヒ素化合物)を含む(公衆衛生事業法(米国法典第42編第262条第(a)項)の第351条第(a)項による)。さらに、「生物剤」という用語は、1)本明細書で使用される場合、自然発生型もしくは組換え型の生命体、組織、または細胞株から生成および精製される、生物学的に活性であるペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミン、脂質、または核酸、あるいは抗体、成長因子、インターロイキン、およびインターフェロンを含む、そのような分子の合成類似体を包含する「生体分子」、2)本明細書で使用される場合、核酸(デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、遺伝因子、遺伝子、因子、対立遺伝子、オペロン、構造遺伝子、調節遺伝子、作動遺伝子、遺伝子補体、ゲノム、遺伝暗号、コドン、アンチコドン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソーム染色体外遺伝因子、細胞質遺伝子、プラスミド、トランスポゾン、遺伝子突然変異、遺伝子配列、エキソン、イントロンを包含する「遺伝子材料」、ならびに3)本明細書で使用される場合、操作を受けた細胞、組織、または器官等、「処理済みの生物製剤」を含むことができる。治療剤は、ビタミン物質、ミネラル物質、または他の天然要素も含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、軸方向要素の設計特徴は、強度、適合性、展開時の曲率半径、および拡張率といった機能特徴をカスタマイズするように異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、ステントは吸収性材料を含み、その役目が済むと消滅する。いくつかの実施形態において、ステントは治療剤の送達プラットフォームとしての役割を果たす。
【0061】
ステントは、長手方向の軸において可撓性の結合部分によって連結される1つ以上の摺動固定軸方向要素と、任意選択で1つ以上の受動的な軸方向要素とを含む一連の軸方向要素から構成される、少なくとも1つの長手方向モジュールを任意選択で備える。そのような実施形態において、2つ以上の同様の長手方向モジュールの軸方向要素は、周方向に隣接する軸方向要素と摺動可能に接続される。当然、単一モジュール(またはジェリーロール型)の実施形態も、本開示の範囲内に包含される。各モジュールは、ステントが展開される際に、伸長しないかまたは他の方法で任意の実質的な永久的変形を示さない、個別の単体構造であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態は、体内管腔の標的領域を開放または拡張するために使用される軸方向に拡張可能なステントに関する。いくつかの実施形態において、組み立てられたステントは、体内管腔に挿入するために適切なサイズの、長手方向の軸における長さおよび周方向また軸方向の軸における直径を有する管状部材を備える。管状部材の長さおよび直径は、後述する構造構成要素の数および構成に応じて、選択された異なる標的管腔内で展開するように大幅に異なっていてもよい。管状部材は、少なくとも第1の折り畳み時の直径から少なくとも第2の拡張時の直径まで調節可能である。1つ以上の止め具および係合要素またはタブが、管状要素の構造構成要素に組み込まれ、それによって、反動(すなわち、拡張時の直径から、さらに折り畳まれた時の直径に潰れること)が約5%未満に抑えられる。
【0063】
本発明の態様によるステントは、小さい断面形状を提供し、優れた長手方向の可撓性を提供するための壁を用いて任意選択で形成される。任意選択の実施形態において、壁の厚さは約0.0001インチから約0.0250インチであり、任意選択で約0.0010インチから約0.0100インチである。しかしながら、壁の厚さは、少なくとも部分的に、選択された材料に依存する。例えば、厚さは、可塑性および分解性材料の場合は約0.0080インチ未満であってもよく、金属材料の場合は約0.0020インチ未満であってもよい。より具体的には、3.00mmのステント用途では、プラスチック材料が使用される場合、厚さは、任意選択で約0.0040インチから約0.0085インチの範囲である。しかしながら、種々の直径を有するステントは、胆管および他の末梢血管用途に対して種々の厚さを用いることができる。上記厚さの範囲は、組み立ておよび展開を含むデバイスのすべての態様にわたって好ましい特性を提供することがわかっている。しかしながら、上記厚さの範囲は、本発明の範囲に関して制限的であるべきではなく、また本発明の教示は、本明細書で考察されない寸法を有するデバイスに適用されてもよいことを理解されたい。
【0064】
いくつかの態様は、それらの各々は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属中の米国特許出願第11/016,269号、第60/601,526号、第10/655,338号、第10/773,756号、第10/897,235号にも開示されている。
【0065】
本明細書に記載される本発明の任意選択の実施形態は、体内管腔の支持を維持するための拡張可能な医療用インプラントに概して関し、より具体的には、軸方向に入れ子式の、直径方向に拡張可能な、血管の閉塞部を拡張するための摺動固定式血管デバイスに関する。
【0066】
本説明は種々の詳細を記載するが、この説明は例示的なものに過ぎず、決して本発明を制限するものであると解釈されるべきではないことを理解されたい。さらに、当業者は構想することができる本発明の種々の用途およびそれに対する変更例も、本明細書に記載される一般的な概念に包含される。
【0067】
いくつかの実施形態は、長手方向に配設される複数の部分、セグメント、またはフレームを有する拡張可能なステントに関する。上記部分は、折り畳み時の直径から拡張時/展開時の直径まで要素の一方向の摺動を許容するが、拡張時の直径からの反動を阻害する、複数の軸方向に入れ子式の摺動固定要素を有する。いくつかの実施形態において、ステントは、ポリマーを含み、複数層の積層およびレーザ切除を組み合わせることによって製造される。有利には、ステントは、構造要素間の重複を実質的に低減するかまたは最小限に抑えることによって、ステントの有効壁厚を望ましく低減する。別の利点は、ステントの設計要素および連動部が、強度、適合性、展開時の曲率半径、および拡張率といった機能特徴をカスタマイズするように異なっていてもよいことである。いくつかの実施形態において、ステントは吸収性材料を含み、その役目が終了済むと消滅する。いくつかの実施形態において、ステントは、医薬化合物または生物材料等の治療剤の送達プラットフォームとしての役割を果たす。
【0068】
いくつかの実施形態は、体内管腔の標的領域を開放または拡張するために使用される半径方向に拡張可能なステントに関する。いくつかの実施形態は、血管の異常を治療するための薬剤送達プラットフォームとして使用される、半径方向に拡張可能なステントに関する。いくつかの実施形態において、組み立てられたステントは、体内管腔に挿入するために適切なサイズである長手方向の軸における長さおよび半径方向の軸における直径を有する管状部材を備える。管状部材の長さおよび直径は、後述する構造構成要素の数および構成に応じて、選択された異なる標的管腔内で展開するように大幅に異なっていてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態による管状部材は、折り畳み時の直径または拡張時の直径のいずれにおいても管腔内に突出する構造要素を有さないと定義される「クリアスルールーメン」を有する。さらに、管状部材は、エッジ効果による外傷を最小限に抑える滑らかな周縁部を有する。管状部材は、小さい血管への送達および蛇行する脈管構造を通る送達を容易にするように、任意選択で壁が薄く(壁の厚さは、選択される材料および治療される血管の意図するサイズに依存し、可塑性および吸収性材料の約0.009インチ未満から金属材料の約0.0008インチ未満の範囲である)、また可撓性である。薄壁設計は、血液の乱流、ひいては血栓症のリスクを最小限に抑えることもできる。いくつかの実施形態による管状部材の展開された時の薄い形状は、ステントのより迅速な内皮化も促進する。
【0070】
ステントの実施形態のいくつかの特徴および配設は、それぞれSteinkeに対する米国特許第6,033,436号、第6,224,626号、および第6,623,521号に開示され、それらの各々の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0071】
[実施形態および設計特徴]
図1Aは、概して、長手方向に配設された1つ以上の部分、セグメント、またはフレーム12’を備える、血管デバイス、プロテーゼ、またはステント10’の一実施形態の端面図を概略的に表している。各部分12’は、一方向摺動固定関節機構16’によって同じ部分12’の他の構造要素14’に半径方向または周方向に結合された2つ以上の構造要素14’を含む。
【0072】
関節機構16’は、第1の折り畳み時の直径から第2の拡張時の直径まで、部分12’の一方向への拡張を可能にする。拡張する際には、矢印18’によって一般的に示されるように、構造要素14’の間に周方向の相対運動が生じ、構造要素14’のうちの一方または両方が摺動可能に離れて移動する。
【0073】
後にさらに詳述するように、たとえ同じ部分12’の構造要素14’が半径方向または周方向に結合されたとしても、部分12’および構造要素14’は、非拡張状態および拡張状態の両方において、構造要素14’の間の半径方向または周方向の重複が最小限に抑えられるか、または低減されるように設計および構成される。よって、構造要素14’は、軸方向、長手方向、または非半径方向に入れ子式であると称される。
【0074】
図1Bは、概して、長手方向に配設された2つ以上の部分、セグメント、またはフレーム12”を備える、血管デバイス、プロテーゼ、またはステント10”の別の実施形態の側面図を概略的に表している。各部分12”は、1つ以上の構造要素14”を含む。隣接する部分12”の構造要素14”は、一方向摺動固定関節機構16”によって互いに半径方向または周方向に結合される。
【0075】
関節機構16”は、第1の折り畳み時の直径から第2の拡張時の直径まで、部分12”の一方向への拡張を可能にする。拡張する際には、矢印18”によって一般的に示されるように、構造要素14”の間に周方向の相対運動が生じ、構造要素14”のうちの一方または両方が摺動可能に移動する。
【0076】
後にさらに詳述するように、隣接する部分12”の構造要素14”の間の軸方向または長手向の結合、ならびに部分12”および構造要素14”の設計および構成は、非拡張状態および拡張状態の両方において、構造要素14”の間の半径方向または周方向の重複が最小限に抑えられるようになっている。よって、構造要素14”は、軸方向、長手方向、または非半径方向に入れ子式であると称される。
【0077】
有利には、図1Aおよび1Bの軸方向に入れ子式の実施形態、ならびに本明細書に記載、教示、または提案される他の実施形態は、望ましい半径方向の強度および管腔の開存性を維持しつつ、好適な断面形状(例えば、管腔サイズ)を可能にする。非拡張状態においても、構造要素間の重複が最小限に抑えられるかまたは低減されるため、この管腔サイズは、血管デバイスを拡張するためのガイドカテーテルのバルーン等を挿入し易くする。折り畳まれた形状も、半径方向の強度を損なうことなく非常に薄くすることができる。よって、本発明の実施形態のステントは、頸動脈の遠位側の頭蓋内血管および遠隔の冠血管等、小さくて到達困難な血管内で展開することができる。
【0078】
図1Aおよび1Bの軸方向に入れ子式のステントの実施形態、ならびに本明細書に記載、教示、または提案される他の実施形態は、有利には、半径方向の積み重なり(重複)を著しく抑えることによって、非展開構成および展開構成においてステント材料の厚さを低減し、ひいては展開されたステントの有効壁厚を望ましく低減する。換言すると、ステントは、嵌合する構造要素間の半径方向の重複を実質的に排除し、それによって、望ましくは低く均一な形状を可能にする。
【0079】
次に図2〜7を参照すると、軸方向に入れ子式のステントの実施形態が示される。ステントは、長手方向の軸および周方向の軸を有し、折り畳まれたまたは軸方向に入れ子になった非拡張状態から拡張状態まで拡張可能な管状部材を備えることができる。図2に示すように、実施形態において、管状部材は、複数の細長い連結部1100と、連結部1100を相互接続するために使用することができる少なくとも1つの相互接続部材1102とを備えることができる。連結部1100は、長手方向の軸1101と実質的に平衡に配向することができるため、組み立てられた状態において、連結部1100は、長手方向の軸1101の周囲に周方向に配置することができ、それによって管状部材を形成することができる。それにもかかわらず、連結部1100は、長手方向の軸1101の周囲に実質的に平衡して配向される必要はなく、連結部1100が管状部材の長手方向の軸1101に対して実質的に斜めに配向されることを可能にする他の構成を開発することもできることに留意されたい。
【0080】
図2は、軸方向に入れ子になった非拡張状態または折り畳まれた状態の連結部1100を示すステントの一部を示している。このように、連結部1100は、実質的に互いに隣接して配置することができる。しかしながら、連結部1100は、非拡張状態において互いに離れていてもよいことも企図される。図3に示すように、連結部1100が半径方向に互いに離れている時、ステントは拡張状態を達成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、連結部1100は、概して、相互接続部材1102の長さおよび構成によって画定される最大距離だけ離れていてもよい。例えば、相互接続部材1102は、その遠位端に停止部材を含むか、または連結部1100に対する相互接続部材1102の相対的な動きを制限することによりステント全体の拡張を制限する他の機能を含むように構成することができる。いくつかの実施形態における停止部材については後に考察する。
【0082】
よって、いくつかの実施形態において、連結部1100は、相互接続部材1102の長さよりわずかに短い距離だけ離れていてもよい。他の実施形態において、図3に示すように、ステントは、個々の相互接続部材1102の長さを上回る最大距離だけ連結部1100が互いに離れるように構成することができる。例えば、ステントは、ステントがより大きく拡張するように、そこから延在する複数の相互接続部材1102を有する中間部材を備えることができる。そのような実施形態は、図3を参照して後により詳細に記載する。
【0083】
いくつかの実施形態の態様によると、連結部1100は、複数の連結要素1104、連結要素1104の間に延在する可撓部1106、および少なくとも1つの係合孔1108(図3〜4Bに示す)を備えることができる。連結要素1104は、概して細長くてもよい。連結要素1104はまた、概ね直線状であってもよいが、連結要素1104は、実際にはジグザグの形状であってもよいか、または多様な幾何学的形状を画定することができる。
【0084】
さらに、連結要素1104は、その全幅を実質的に上回る全長を画定することができる。しかしながら、全幅は、全長とほぼ等しいかまたはそれを上回ってもよいことも企図される。連結要素1104は、第1の端1110および第2の端1112を画定することができる。いくつかの実施形態において、可撓部1106は、所与の連結要素1104’の第1の端1110’と連結要素1104の第2の端1112との間に延在するように構成することができる。よって、連結要素1104、1104’は、端と端で相互接続することができる。
【0085】
図2〜4Bに示すようないくつかの実施形態において、連結部1100は曲線設計において構成することができ、連結部1100は、非展開状態で互いに隣接して設置された時に少なくとも部分的に軸方向に入れ子可能であってもよい。さらに、可撓部1106は、曲線になるように構成することができ、それによりステントの長手方向の軸に対するステントの可撓性を促進することができる。よって、ステントは、それが移植される体内管腔の形状に適合するように屈曲することができる。したがって、連結部1100は、ステントが直円柱以外の構成となることを可能にすることができる。
【0086】
図4A〜4Bを参照すると、連結部1100の係合孔1108は、少なくとも1つの連結要素1104を通って周方向1120に配置することができる。いくつかの実施形態において、係合孔1108は、連結要素1104の第1の側1122から連結要素1104の第2の側1124に通過する貫通孔であってもよい。しかしながら、係合孔1108は、相互接続部材1102の少なくとも一部を受容することができるスロットまたは溝として構成できることも企図される。
【0087】
図2〜4Bに示すように、ステントのいくつかの実施形態は、連結要素1104が、各々複数の係合孔1108を含むように構成することができる。連結要素1104は、3つの係合孔1108を含んでいるように示されているが、一対の係合孔1108またはさらには単一の係合孔1108が使用できることが企図される。そのような設計の変更は、ステントの全体的な構成および設計要件に応じて行うことができる。
【0088】
相互接続部材1102は、連結部1104の係合孔1108に受容されるように構成することができる。いくつかの実施形態において、相互接続部材1102は、1つの連結要素から別の連結要素1104の係合孔1108に向って延在することができる。さらに他の実施形態において、ステントは、相互接続部材1102を取り付けることができる中間部材または相互連結部材1130を含むように構成することができる。よって、後にさらに詳述するように、相互連結部材1130は、隣接する連結部1100の間に配置することができ、複数の相互接続部材1102が、相互連結部材1130から連結部1100の連結要素1104の係合孔1108内に延在するように構成することができる。
【0089】
次に図5A〜5Bを参照すると、相互連結部材1130の実施形態が示される。相互連結部材1130は、第1および第2の側1134、1136を有する相互連結本体1132を含むことができる。相互連結本体1132は、連結部1100の連結要素1104の形状または構成を補完する形状を確定するように構成することができる。相互連結部材1130は、隣接する連結部1100の間に入れ子可能に構成することができる。いくつかの実施形態において、相互連結部材1130は、隣接する連結部1100の隣接する連結要素1104の間に配置することができる。しかしながら、相互連結部材1130が、連結部1100の複数の連結要素1104の間に及んでもよいことも企図される。よって、図2〜3は、隣接する相互連結要素1104の間に配置された単一の相互連結部材1130を示しているが、相互連結要素1130が、隣接する連結部1100の一対の連結部1104の間に介在するように、長手方向の軸1101に沿って延在してもよいことが企図される。
【0090】
図5Aも、少なくとも1つの相互接続部材1102が相互連結部材1130から延在してもよいことを示している。このように、1つ以上の相互接続部材1102は、隣接する連結部1100の相互接続を容易にするように、第1および第2の側1134、1136のうちのいずれかから延在することができる。
【0091】
図5Aに示す実施形態において、相互連結本体1132は、相互連結本体の中央のクレスト部1140から延在する係合部材1102および相互連結本体のそれぞれの端のトラフ部1142から延在する一対の相互接続部材1102による正弦曲線の形状に実質的に適合するように構成することができる。そのような構成は、正弦曲線および余弦曲線の形状に実質的に適合するように代替として構成される連結要素1104を用いた連結部1100の特有の構成のために、図2〜3に示すような実施形態において有利である可能性がある。よって、図3に示すように、長手方向の軸に沿って、相互連結部材1130も同様に連結部1100の形状に適合するように代替として配置することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、ステントは、相互接続部材1102の均一な長手方向の空間を達成することができる。それにもかかわらず、連結部1100および相互接続部材1102の均一な空間を同じように達成する他の構成が用いられてもよい。この場合、連結部1100、相互連結部材1130、および相互接続部材1102は、力および応力をステント全体に均等に分配することができる、実質的に左右対称の設計を提供するように構成できることが企図される。
【0093】
再び図5A〜5Bを参照すると、相互接続部材はラチェット手段1150を含むことができる。ラチェット手段1150は、連結要素1104に対する相互接続部材1102の一方向の移動を許容するように、結合要素1104の係合孔1108に係合するように構成することができる。このように、相互接続部材1102はステントの拡張を容易にすることができるが、それにもかかわらず、ステントが拡張状態から折り畳まれるのを防止する。
【0094】
図5Bに示すようないくつかの実施形態において、ラチェット手段1150は、相互接続部材1102の上面1154および下面1156のうちの少なくとも1つに沿って配置される複数の歯1152を含むことができる。任意選択で、歯1152は、相互接続部材1102の上面および下面1154、1156の両方に沿って配置される。また、歯1152の形状は、ステントが折り畳まれるのを防止するための相当な圧縮力に耐えるように構成される一方で、ごくわずかな拡張力を使用してステントの拡張を容易にするように構成できることが企図される。この場合、歯1152の各々は、その遠位端に向って横寸法または縦寸法のいずれかが先細りである、相互接続部材1102から延在する突起として構成することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、歯1152の各々は、図5Bにおける視点のように側面から見た場合に実質的に直角三角形または斜三角形になるように成形することができる。さらに、図5Bに示すように、歯1152の各々は、相互接続部材1102に結合された遠位自由端および近位固定端を有する羽根として成形される傾斜突起として構成することができる。この場合、羽根の遠位自由端は、ステントが拡張する際に、相互接続部材1102が係合孔1108を通過する時に実質的に半径方向に偏向するように構成することができる。しかしながら、羽根が係合孔1108を出た後、羽根は弾性があるため係合位置に戻るので、相互接続部材1102が反対に移動することを防止するように構成することができる。よって、相互接続部材1108は、係合孔1108に対する相互接続部材1102の一方向の移動を提供することができる。そのような実施形態において、羽根または歯1152は、ステントが折り畳まれるのを防止するように係合孔1108に係合する一方で、ステントの拡張を可能にするように半径方向に容易に偏向することができることが企図される。
【0096】
再び図3を参照すると、ステントが完全に拡張した状態を達成した時、相互接続部材1102の遠位端1160は、係合孔1108の中に受容され、それぞれの係合孔1108に対して実質的に固定されるように構成できることが企図される。よって、係合孔1108に対する相互接続部材1102の移動は、上述した停止要素を用いること等によって制限されてもよく、ひいては、ステントが完全に拡張した後に相互接続部材1102が係合孔1108から出るのを防止する。停止部材は、図7に示すように任意選択で構成することができる。
【0097】
図6A〜6Bは、軸方向に入れ子になった非拡張状態または折り畳まれた状態および拡張状態にあるステントの側面図をそれぞれ示している。図6Aは、連結部1100および隣接する連結部1100’、ならびに連結部1100、1100’の間に介在する相互連結部材1130を示している。図6Aにも示すように、別の相互連結部材1130’は、連結部1100’に隣接して配置される。この場合、図3に示すように、隣接する相互連結部材1130は、相互接続部材1102が互いにオフセットするように構成することができる。相互接続部材1102は、それぞれ対向する周方向に延在し、連結部1100、1100’の係合孔(図示せず)内に受容される。そのような実施形態において、相互接続部材1102および連結部1100は、共通する周方向の層(図6A〜Bで平面として示される)において互いに対して移動することができる。よって、これらの構成要素は、互いの中で軸方向に入れ子式であってもよい。
【0098】
また、図3、5A、および6A〜6Bを参照すると、図6Aの相互連結部材1130の中央クレスト部1140から延在する相互接続部材1102は、相互連結部材1130’の中央クレスト部から延在する相互接続部材1102’から長手方向にオフセットであってもよい図6Aの相互連結部材1130の相互接続部材1102から長手方向にオフセットであってもよい。隣接する相互連結部材の相互接続部材のオフセット構成は、拡張状態のステントの円周と非拡張状態のステントの円周の比率を増加させるように、相互接続部材がより長い長さであることを可能にすることができる。さらに、オフセット構成は、ステントにより均一な安定した構造特性も提供する。
【0099】
その場合、相互連結部材はまた相互連結部材の各相互接続部材に対応する開口部を含んでもよいこと、および隣接する相互連結部材のそれぞれの相互接続部材の一部を受容するように構成されることが企図される。そのような実施形態を図2および3に一般的に示す。このように、相互接続部材1102の長さは、ステントが折り畳まれたまたは非拡張状態にある時、相互接続部材がそのような開口部内に受容され得るよう、隣接する相互連結部材の対応する開口部を含むことによって最大化することができる。
【0100】
さらに、図6A〜6Bも本明細書に開示する種々の実施形態の態様を示しており、連結部1100、1100’、および相互連結部材1130、1130’、ならびに相互接続部材1102、1102’は非拡張状態に構成されてもよく、ステントのすべての要素は実質的に軸方向に入れ子式である。いくつかの実施形態において、この特徴は、さもなければステントを体内管腔に留置した時にステント内部を通る流体の流れを中断するか、またはステントがほころびる原因となる、任意の半径方向に突出する要素を概ね排除することができる。
【0101】
上述したように、ステントのいくつかの実施形態は、ステントの拡張を制限するために停止部材を備えることができる。例えば、図7の実施形態で拡張状態で示されるように、ステントは、連結部1180および相互連結部材1182を備えることができる。相互連結部材1182は、その遠位端に配置される停止部材1186を有する1つ以上の相互接続部材1184を備えることができる。さらに、連結部1180は、1つ以上の係合孔1188を備えることができる。さらに、相互連結部材1182は、1つ以上の位置合わせ開口部1192を備えることができる。
【0102】
相互接続部材1184は、断面寸法または停止部材1186の通過形状とは異なる通過形状を有する細長い本体を備えることができる。いくつかの実施形態では歯1190を含む相互接続部材1184の本体の通過形状は、係合孔1188および位置合わせ開口部1192の通過形状よりも小さくてもよい。このように、相互接続部材1184の本体は、係合孔1188および位置合わせ開口部1192の両方を通って自由に移動することができる。相互接続部材1184の停止部材1186は、位置合わせ開口部1192の通過形状よりサイズが小さい通過形状を画定することができる。しかしながら、停止部材1186の通過形状は、係合孔1188の通過形状より大きくてもよい。よって、相互接続部材1184は、係合孔1188よりも大きな形状の停止部材1186によって相互接続部材1184の動きが妨げられるまで、係合孔1188および位置合わせ開口部1192を通って摺動することができる。このように、係合孔1188は、連結部1180に対する相互接続部材1184のさらなる移動を防止する。
【0103】
よって、いくつかの実施形態において、連結部の係合孔と相互作用する大きな遠位端を使用することによっても、相互接続部材の動きを制限することができる。図7は、連結部のみが係合孔を有し、相互連結部材のみが位置あわせ開口部および相互接続部材を有するように示されているが、相互接続部材および連結部の両方が、1つ以上の位置あわせ開口部、1つ以上の係合孔、および1つ以上の相互接続部材を備えてもよいことが企図される。いくつかの実施形態において、ステントは、1つ以上の位置合わせ開口部、1つ以上の係合孔、および1つ以上の相互接続部材を備える一連の共通した反復要素を備えることができる。換言すると、相互連結部材および連結部の両方を有する代わりに、ステントは、ステントの円周を形成するように、隣接する連結部材を繰り返すか、またそれらに相互連結される単一の連結部材を備えてもよいことが企図される。
【0104】
次に図8〜9を参照すると、軸方向に入れ子式のステントの別の実施形態が示される。図2〜6Bに示した実施形態と同様に、図8〜9に示されるステントの実施形態も、長手方向の軸および周方向の軸を有する管状部材を備えるように形成することができるステントの一部のみを示している。同様に、ステントは、折り畳まれたまたは軸方向に入れ子になった非拡張状態から拡張状態まで拡張可能であってもよい。図8に示すように、実施形態において、管状部材は、複数の細長い連結部1200と、連結部1200を相互接続するために使用することができる少なくとも1つの相互接続器モジュール1202とを備えることができる。
【0105】
連結部1200は、長手方向の軸1204と実質的に平行になるように配設することができるため、組み立てられた状態において、連結部1200を長手方向の軸1204の周囲に周方向に配置することができ、それによって管状部材を形成することができる。それにもかかわらず、連結部1200は、長手方向の軸1204の周囲に実質的に平行して配向される必要はなく、連結部1200が管状部材の長手方向の軸1204に対して実質的に斜めに配向されることを可能にする他の構成を開発することができることに留意されたい。
【0106】
図8〜9に示されるステントの実施形態は、幅の狭い形状およびモジュール式構造を提供する。図示するように、連結部1200は、複数のそれぞれの可撓部1212を介して相互接続される複数の連結モジュール1210を備えることができる。可撓部1212は、隣接する連結モジュール1210の側部の間に延在することができる。可撓部1212は、ステントの留置および拡張の際のステント形状の適合およびそのモジュール1210の動きを容易にするように、任意選択で曲線を成す。それにもかかわらず、可撓部1212は、直線であってもよいか、またはそれらの長さに沿って任意の種々の屈曲もしくは角度を有してもよい。さらに、いくつかの実施形態において、可撓部1212は、モジュール1210の角等、モジュールの他の部分の間に延在することができる。
【0107】
連結部1200は、複数の係合孔1220を含むように構成することができる。連結部1200の係合孔1220は、少なくとも1つの連結モジュール1210を通って周方向(概して長手方向1204に対して直角に配向される)に配置することができる。いくつかの実施形態において、係合孔1220は、連結モジュール1210の第1の側から連結モジュール1210の第2の側に通過する貫通孔であってもよい。しかしながら、係合孔1220は、相互接続器モジュール1202の少なくとも一部を受容することができるスロットまたは溝として構成できることも企図される。
【0108】
図8〜9に示される連結部1200の実施形態は、連結部1200の第1の端上に1つの係合孔1220、連結部1200の第2の端上に2つの係合孔1220の、3つの係合孔1220を含んでいるように示されている。しかしながら、連結部1200は、2つ、4つ、または任意の数の係合孔1220を含むように構成することができる。さらに、係合孔1220の数は、相互接続器モジュール1202の構成に対応してもよいが、連結部の所与の端に対する係合孔1220の数が相互接続器モジュール1202の構成に対応しない場合は他の実施形態が企図されてもよい。
【0109】
相互接続器モジュール1202は、隣接する連結部1200を相互接続するように構成することができる。相互接続器モジュール1202は、その相互接続器本体1228から延在する複数の相互接続部材1226を備えることができる。このように、相互接続器モジュール1202は、連結モジュール1210から別の連結モジュール1210の係合孔1220に向って延在することができる。相互接続部材1226および相互接続器本体1228は、連続した金属片から一体化して形成できることが企図される。相互接続器モジュール1202は、概して、それぞれの隣接する連結部1200とともに周方向に入れ子になるように構成される可撓要素であってもよい。さらに、相互接続器本体1228は、局所的な応力および力を低減するために、ステントの構造全体に力を分配するように使用できるよいことが企図される。
【0110】
上述した実施形態と同様に、相互接続器モジュール1202もまた、長手方向1204に互いにオフセットした相互接続器モジュール1202の相互接続部材1226とともに構成することができる。さらに、図8〜9に示すように、相互接続部材1226は、相互接続器モジュール1202の少なくとも1つの側面に沿って配置される複数の歯1234を備えることができるラチェット手段1232を備えることができる。任意選択で、歯1234は、相互接続部材1226の両方の側面に沿って配置される。
【0111】
また、歯1234の形状は、ステントが折り畳まれるのを防止するための相当な圧縮力に耐えるように構成される一方で、ごくわずかな拡張力を使用してステントの拡張を容易にするように構成できることが企図される。この場合、歯1234の各々は、その遠位端に向って横寸法または縦寸法のいずれかが先細りである、相互接続部材1226から延在する突起として構成することができる。また歯1234は、上述したように、上面から見た場合に直角三角形または斜三角形になるように構成することができる。さらに、図8〜9に示すように、1234の各々は、相互接続部材1226に結合された遠位自由端および近位固定端を有する羽根として成形される傾斜突起として構成することができる。羽根の特徴および構成は、ステントが折り畳まれるのを防止するように上述したものと同様であってもよい。
【0112】
再び図9を参照すると、連結モジュール1210は、中央のA字型フレーム1240および対向する側方ウイング1242とともに構成することができる。上述したように、係合孔1220は、連結モジュール1210内で概して周方向に配置することができる。係合孔1220は、図9に示すように、A字型フレーム1240の頂点および基部に配置することができる。さらに、側方ウイング1242は、A字型フレーム1240のそれぞれの基部からその頂点まで延在する細長い接続器を備えることができる。可撓部1212は、側方ウイング1242の長さに沿って連結モジュール1210と相互接続することができる。側方ウイング1242は、ステント構造の可撓性を可能にし、ステントに掛けられる歪みの力に起因するステントにおける応力を緩和および/または低減する傾向にあり得ることが企図される。その結果、連結モジュール1210の特有の構成が、ステントの構造上の安定性を向上し、局所的な応力および力を低減することができる。
【0113】
[金属ステントおよび製造方法]
本発明のいくつかの実施形態にしたがってステントを製造するための任意選択の材料は、コバルトクロム、316ステンレススチール、タンタル、チタン、タングステン、金、白金、イリジウム、ロジウム、およびそれらの合金または熱分解炭素を含む。さらに他の代替実施形態において、ステントは、例えばマグネシウム合金等の腐食性材料で形成されてもよい。任意選択のステント実施形態を従来のバルーン拡張可能ステントとして説明してきたが、当業者は、本発明によるステント構造も、ステントが圧潰された状態から回復可能となるように、種々の他の材料で形成することができることを理解するであろう。例えば、自己拡張可能なステントの等の代替実施形態において、本明細書の実施形態にしたがってニチノールおよびElastinite(登録商標)等を許容する形状記憶合金を使用することができる。
【0114】
任意選択で、個々のステント要素を形成する前に、シートを加工硬化して強度を高める。加工硬化の方法は、当該技術分野で周知である。張力下でシートを圧延し、加熱して焼きなまし、次いで再加工する。所望の硬化係数が得られるまでこれを継続してもよい。今日市販されているほとんどのステントは、「より柔らかい」材料をより大きな直径に変形できるように、0%から10%加工硬化した材料を用いる。対照的に、本発明の実施形態による摺動固定半径方向要素の拡張は、材料の変形よりもむしろ摺動に依存するため、より硬い材料、任意選択で約25%〜95%の範囲に加工硬化した材料を使用して、より薄いステントの厚さを可能にする。任意選択で、ステント材料は、50〜90%加工硬化され、いくつかの実施形態では、材料は80〜85%加工硬化されてもよい。
【0115】
金属シートから個々の要素を形成する任意選択の方法は、管材料または平坦なシート材料のレーザ切断、レーザアブレーション、打抜き、化学エッチング、プラズマエッチング、ならびにスタンピングおよび水ジェット切断、または当該技術分野で既知である高分解能の構成要素を作製することが可能な他の方法であってもよい。いくつかの実施形態において、製造方法は、ステントを形成するために使用される材料に依存する。化学エッチングは、特に、競合製品のレーザ切断による高コストと比較すると、相対的に低コストで高分解能の構成要素を提供する。いくつかの方法は、結果的に面取り縁部を形成することができる、前後で異なるエッチングによるアートワークを可能にし、このことは、ロックアウト部の係合改良を補助する上で望ましい可能性がある。さらに、プラズマエッチング、または高分解能の構成要素および研磨済みの構成要素を作製することが可能な当技術分野で既知である他の方法を使用することができる。本発明は、ステントまたはステント要素を製造することができる手段に限定されない。
【0116】
いったん基本となる幾何学的形状が達成されると、多数の方法で要素を組み立てることができる。タック溶接、接着剤、機械的取付け(スナップ留めおよび/または織り留め)、ならびに当該技術分野で認識される他の取付方法を使用して、個々の要素を締結することができる。いくつかの方法は、結果的に面取り縁部を形成することができる、前後で異なるエッチングによるアートワークを可能にし、このことは、ロックアウト部の係合改良を補助する上で望ましい可能性がある。1つの任意選択の製造方法において、ステントの構成要素は、種々の所望の曲率で熱処理されてもよい。例えば、ステントは、展開した時に、空気が抜けたバルーンの直径に等しい直径、最大直径、または最大直径よりも大きい直径を有するように設定することができる。さらに別の例において、要素は、電解研磨してから組み立てるか、または電解研磨して、コーティングしてから組み立てるか、または組み立ててから電解研磨することができる。
【0117】
特に形状記憶合金を用いる別の実施形態において、ステントを最大直径より大きくなるように熱処理し、次いで中間的な直径に構築し、次いでカテーテル上に設置して逆方向にラチェット移動させ、確動留め具押下機構を用いてより小さい直径になるようカテーテル上に固定することで、小さい形状および優れた保持力を実現する。
【0118】
[ポリマーステント]
金属ステントは特定の望ましい特性を保持する一方で、ステントの有効寿命は、ステント内再狭窄が安定化して治癒が停滞する約6ヶ月から9ヶ月の範囲であると推定される。金属ステントとは対照的に、生体吸収性ステントは、血管内で寿命を向えることができない。さらに、より多くの用量の治療剤を送達するため、同時にまたは生活環の種々の時点で複数の治療剤を送達するために生体吸収性ステントを使用して、血管疾患の特定の態様または事象を治療することができる。さらに、生体吸収性ステントは、血管の同じ近接領域を繰り返し治療することも可能にする。したがって、永久的な金属ステントの使用に伴う多くの欠点または制限を回避または軽減する一方で、それらのステントを製造するために使用されるポリマー材料が望ましい金属の品質(例えば、十分な半径方向の強度および放射線不透過性等)を有する一時的な(すなわち、生体吸収性および/または放射線不透過性の)ステントを開発するという重要な必要性が満たされていない。
【0119】
1つの任意選択の実施形態において、ステントは、生体吸収性(例えば、生体腐食性または生体分解性)の生体適合性ポリマーで形成されてもよい。生体吸収性材料は、任意の加水分解により分解可能および/または酵素により分解可能な生体材料から構成される群より選択することができる。好適な分解性ポリマーの例は、これらに限定されないが、ポリヒドロキシブチラート/ポリヒドロキシバレラートコポリマー(PHV/PHB)、ポリエステルアミド、ポリ乳酸、ヒドロキシ酸(すなわち、ラクチド、グリコリド、ヒドロキシブチラート)、ポリグリコール酸、ラクトン系ポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ(プロピレンフマル酸―コ―エチレングリコール)コポリマー(フマル酸無水物としても知られる)、ポリアミド、ポリ無水物エステル、ポリ無水物、リン酸カルシウムガラスを含むポリ乳酸/ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、シルク―エラスチンポリマー、ポリホスファゼン、ポリ乳酸とポリグリコール酸とポリカプロラクトンとのコポリマー、脂肪族ポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリエーテルエステル、ポリエステル、ポリデプシペプチド、多糖、ポリヒドロキシアルカノアート、およびそれらのコポリマーを含む。
【0120】
一様式において、分解性材料は、ポリ(炭酸グリコリド―トリメチレン)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、ポリアスパルチミック酸、ポリグルタルニック酸ポリマー、ポリ―p―ジオキサノン、ポリ―β―ジオキサノン、非対称3,6―置換ポリ―1,4―ジオキサン―2,5―ジオン、ポリアルキル―2―シアノアクリレート、ポリデプシペプチド(グリシン―DL―ラクチドコポリマー)、ポリジヒドロピラン、ポリアルキル―2―シアノアクリレート、ポリ―β―マレイン酸(PMLA)、ポリアルカノート、およびポリ―β―アルカン酸から構成される群より選択される。当該技術分野において他の多くの分解性材料が知られている(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるBiomaterials Science: An Introduction to Materials in Medicine (29 July, 2004) Ratner, Hoffman, Schoen, and Lemons; および Atala, A., Mooney, D. Synthetic Biodegradable Polymer Scaffolds. 1997 Birkhauser, Bostonを参照のこと)。
【0121】
さらに、任意選択の実施形態において、例えば、チロシン由来ポリカーボネート、チロシン由来ポリアリレート、ヨウ化および/または臭素化チロシン由来ポリカーボネート、ヨウ化および/または臭素化チロシン由来ポリアリレート等のポリカーボネート材料でステントを形成することができる。さらなる情報については、参照することによりそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許第5,099,060号、第5,198,507号、第5,587,507号、第5,658,995号、第6,048,521号、第6,120,491号、第6,319,492号、第6,475,477号、第5,317,077号、および第5,216,115号を参照されたい。別の任意選択の実施形態において、ポリマーは、米国特許出願第第60/601,526号、第60/586,796号、および第10/952,202号に開示される生体適合性、生体吸収性、放射線不透過性ポリマーのうちのいずれかであり、それらの全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0122】
天然のポリマー(バイオポリマー)は、任意のタンパク質またはペプチドを含む。任意のバイオポリマーは、アルギン酸塩、セルロースおよびエステル、キトサン、コラーゲン、デキストラン、エラスチン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒドロキシアパタイト、クモの糸、綿、他のポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそれらの任意の組み合わせから構成される群より選択することができる。
【0123】
さらに別の変更実施形態において、形状変化型ポリマー(shape−shifting polymer)を使用して、本発明によって構成されるステントを製造することができる。好適な形状変化型ポリマーは、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリデプシドペチド、脂肪族ポリウレタン、多糖、ポリヒドロキシアルカノアート、およびそれらのコポリマーから構成される群より選択することができる。生体分解性の形状変化型ポリマーのさらなる開示については、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,160,084号を参照されたい。形状記憶ポリマーについては、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,388,043号および第6,720,402を参照されたい。さらに、正常な体温でステントが折り畳まれた状態になるように、転移温度を設定することができる。しかしながら、ホットバルーンカテーテルや温液(例えば、生理食塩水)灌流システムを用いるなどしてステントを留置および送達する際に熱を印加すると、ステントが拡張して体内管腔内における最終的な直径になる。熱記憶材料を使用すると、圧潰された状態から回復可能な構造を提供することができる。
【0124】
さらに、ステントは、生体安定性(例えば、非分解性および非腐食性)の生体適合性ポリマーで形成することができる。好適な非分解性材料は、これらに限定されないが、ポリウレタン、デルリン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリ(ジメチルシロキサン)を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、層は、特に、フッ素化エチレン―プロピレン、ポリ(2―ヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMAとしても知られる)、ポリ(エチレンテレフタレート)繊維(Dacron(登録商標)としても知られる)または膜(Mylar(登録商標))、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMAとしても知られる)、ポリ(テトラフルウロエチレン)(PTFEおよびePTEEおよびGore―Tex(登録商標)としても知られる)、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリレートおよびポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(ナイロンとしても知られる)、ポリカーボネートおよびポリカーボネートウレタン、ポリエチレンおよびポリ(エチレン―コ―ビニルアセテート)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフォン、Pellethane(登録商標)およびEstane(登録商標)等のポリウレタンおよびポリエーテルウレタンエラストマー、シリコーンゴム、シロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMSとしても知られる)、Silastic(登録商標)、シリコーン処理済みポリウレタン等の熱可塑性プラスチックの任意の例を有するかまたは含んでもよい。
【0126】
[ポリマーステントの製造および組み立て方法]
プラスチックおよび/または分解性材料を使用する場合、スクリーン、ステンシル、またはマスクを用いたレーザアブレーション;溶媒キャスト法;スタンピング、エンボス加工、圧縮成形、求心スピンキャスト法および成形による形成;押し出しおよび切断、固体自由形状製造技術を使用した3次元ラピッドプロトタイピング、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結等;プラズマエッチングを含むエッチング技術;フェルト化、編成、または織成を含む織物製造技術;熱溶融樹脂法、射出成形、室温加硫成形、またはシリコーンゴム成形を含む成形技術;溶媒を用いる鋳造、直接シェル中子造型による鋳造、インベストメント鋳造、圧力ダイカスト、樹脂射出、樹脂加工電鋳法、または射出成形もしくは反応射出成形を含む鋳造技術を使用して要素を作製することができる。本発明のポリマーを用いる特定の任意選択の実施形態は、これらのうちの2つ以上を組み合わせること等によりステントに成形することができる。
【0127】
そのようなプロセスは、レーザ切断、エッチング、機械的切断、もしくは他の方法を介して、押し出したポリマーシートを切断し、結果として得られる切断部分をステントに組み立てる等の2次元的な製造方法、または固体形態からデバイスを3次元的に製造する同様の方法をさらに含むことができる。さらなる情報については、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/655,338号を参照されたい。
【0128】
任意選択の実施形態のステントは、ステントの全長で準備される要素、または後に2つ以上が接続されるかもしくは取り付けられる部分長で準備される要素を用いて製造される。部分長を使用する場合、2つ以上を接続または取り付けて全長ステントを構成することができる。この構成において、部品は中央開口部を形成するように組み立てられる。組み立てられた全長もしくは部分長の部品および/またはモジュールは、折り畳まれた状態から部分的に拡張された状態へ、そして拡張状態へと、種々の状態において絡み合わせることによって組み立てることができる。
【0129】
さらに、要素は、溶剤接着もしくは熱接着によって、または機械的取付けによって、接続または取り付けることができる。接着する場合、任意選択の接着方法は、超音波無線周波数または他の熱的方法の使用、および溶剤または接着剤または紫外線硬化プロセスまたは光反応プロセスを含む。要素は、熱成形、冷間成形、溶剤濃度を低下させることによる成形および蒸着、または連結する前の部品の予備成形によって圧延することができる。
【0130】
別の製造方法は、切り抜かれて、平坦な一連の半径方向要素に組み立てられたステント構成要素の組み立てを可能にする。長手方向に隣接する一連の半径方向要素の間の連結要素が(例えば、フレーム要素を溶接、絡み合わせる等により)接続されてもよく、平坦な材料シートを丸めて管状部材を形成する。浮動する結合要素の結合アームと端部を(例えば、溶接によって)接合して管状形状を維持することができる。結合要素を含まない実施形態では、一連の上部および下部半径方向要素の端部が接合されてもよい。代替として、円周全体にわたって摺動することが望ましい場合は、上部半径方向要素の端部と下部半径方向要素のリブ(複数可)/レールとの間に(例えば、タック溶接、熱かしめ、またはスナップ留めにより)、摺動固定式の関節部を形成することができる。同様に、下部半径方向要素の端部と上部半径方向要素のリブ(複数可)/レールとの間に対応する関節部を形成することができる。
【0131】
平坦な一連のモジュール(複数可)を丸めて管状部材を形成することは、それぞれがステント要素と接触するように側部に肉盛りされた2枚のプレート間で丸めることを含む、当該技術分野で既知である任意の手段によって実現することができる。一方のプレートは動かないように固定され、他方のプレートは上記プレートに対して横方向に移動することができる。よって、互いに対するプレートの運動により、プレート間に挟まれたステント要素をマンドレルの周囲で丸めることができる。代替として、当該技術分野で既知である3方向スピンドル法を使用して管状部材を丸めることもできる。本発明にしたがって使用することのできる他の丸める方法は、例えば、米国特許第5,421,955号、第5,441,515号、第5,618,299号、第5,443,500号、第5,649,977号、第5,643,314号、および5,735,872号に開示されるような「ジェリーロール」設計のために使用される方法を含む(それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0132】
これらの様式における摺動固定式ステントの構造は、従来技術と比べて非常に多くの利益を提供する。摺動機構の構造は、概して材料に依存しない。このことは、ステントの構造が高強度の材料を備えることを可能にするが、摺動機構を完成させるために材料の変形を必要とする設計では不可能である。これらの材料を組み込むことにより、より厚いステントの強度特性を保持しつつ、材料に必要とされる厚さを低減することができる。任意選択の実施形態において、選択された周方向要素に存在する留め具、停止具、または歯の使用頻度により、拡張後にステントの不要な反動を防止する。
【0133】
[放射線不透過性]
医療製品に放射線不透過性を付与するための従来方法は、金属バンド、インサート、および/もしくはマーカの使用、電気化学蒸着(すなわち、電気めっき)、またはコーティングを含む。放射線乳白剤(radiopacifiers)(すなわち、放射線不透過性の材料)を添加してステントの追跡および位置決めを容易にすることは、デバイスの一部または全体の表面に吸収させるかまたは噴霧することにより、任意の製造方法においてそのような元素を添加することによって対応することができる。放射線不透過性造影剤の程度は、元素含有量によって変更することができる。
【0134】
プラスチックおよびコーティングには、ヨウ素または他の放射線不透過性元素を含むモノマーまたはポリマー、すなわち、本質的に放射線不透過性である材料を使用することによって、放射線不透過性を付与することができる。一般的な放射線不透過性材料は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、および二酸化ジルコニウムを含む。他の放射線不透過性元素は、カドミウム、タングステン、金、タンタル、ビスマス、白金、イリジウム、およびロジウムを含む。1つの任意選択の実施形態において、ヨウ素および/または臭素等のハロゲンが、その放射線不透過性および抗菌特性のために使用されてもよい。
【0135】
[多材料血管プロテーゼ]
さらに他の代替実施形態において、種々の材料(例えば、金属、ポリマー、セラミックス、および治療剤)を使用してステントの実施形態を製造することができる。該実施形態は、1)材料のスタックを作製するための(垂直な軸または半径方向の軸を通る)層ごとに異なる材料(材料は、例えば平行、互い違い等、任意の構成でスタックされてもよい)、2)ステント本体の長軸および/または厚さに沿って異なり得る空間的に局在する材料、3)複合ステント本体を作製するように混合または溶融される材料、4)ステント本体の表面上に材料が積層(または被覆)される実施形態([機能特性によるステント表面のコーティング]および[ステントによって送達される治療剤]を参照のこと)、および5)2つ以上の部品で構成され、少なくとも1つの部品の材料が第2の部品とは異なるステント、あるいはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0136】
摺動固定式の多材料ステントの成形には、2つ以上の材料を使用することができる。各材料の厚さは、他の材料に対して異なってもよい。この手法は、必要または所望に応じて、これらに限定されないが、1)最終的な引張強度、降伏強度、ヤング率、降伏点伸び、破壊点伸び、およびポアソン比によって定義されるステント性能の機械的特性を可能にすること、2)基板の厚さ、幾何学的形状(例えば、分岐、可変表面被覆)を可能にすること、3)分解率および吸収率(治療剤の送達に影響を及ぼし得る)、ガラス転移温度、融点、分子量等の材料の性能および物理的状態に関する材料の化学的特性を可能にすること、4)放射線不透過性または他の形態の可視性および検出を可能にすること、5)放射線放出を可能にすること、6)治療剤の送達を可能にすること([ステントによって送達される治療剤]を参照されたい)、ならびに7)ステントの保持および/または他の機能特性を可能にすること([機能特性によるステント表面のコーティング]を参照されたい)を含む、プロテーゼの機能の実現に寄与する1つ以上の機能を有する各材料を用いて、全体的な構造部材を構築することを可能にする。
【0137】
いくつかの実施形態において、材料は、耐荷特性、弾性、方向または配向に特異的な機械的強度(例えば、別の材料および/もしくはステントの長軸に平行である、または別の材料および/もしくはステントに垂直もしくは均一な強度である)を有することができる。材料は、ホウ素または炭素繊維、熱分解炭素等の補強剤を含んでもよい。さらに、ステントは、繊維、ナノ粒子等の少なくとも1つの強化要素で構成することができる。
【0138】
本発明の別の任意選択の実施形態において、ステントは、少なくとも部分的に、分解性であり得るポリマー材料で作製される。分解性ステントを使用する動機は、ステントの機械的支持は数週間のみ必要であり得ることである。いくつかの実施形態において、吸収率の異なる生体吸収性材料が用いられてもよい。さらなる情報については、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/952,202号および第60/601,526号を参照されたい。分解性ポリマーステント材料は、薬理的薬剤を送達することにより再狭窄および血栓症も抑制される場合に、特に有用であり得る。分解性材料は、治療剤の送達に非常に好適である([ステントによって送達される治療剤]を参照されたい)。
【0139】
いくつかの実施形態において、材料は、すでに定義された任意の種類の分解性ポリマーを有するかまたは含んでもよい。分解および/または吸収の時間の変化に伴って、分解性ポリマーは望ましい他の品質を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、材料は、天然のポリマー(バイオポリマー)ならびに/または加水分解および/もしくは酵素作用によって分解するポリマーの任意の例を有するかまたは含んでもよい。いくつかの実施形態において、材料は、熱可逆性ヒドロゲルであっても、そうでなくともよいヒドロゲルの任意の例、または光もしくはエネルギー硬化可能材料、または磁気的に刺激可能な(応答する)材料の任意の例を有するかまたは含んでもよい。これらの応答のそれぞれが、特定の機能性を提供し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、材料は、特定の放射線不透過性材料、代替として、X線、蛍光透視法、超音波、MRI、またはImatron社製電子線断層撮影(EBT)によって可視化される、臨床的に可視である材料を有する構成要素を含むか、またはその構成要素で作製されるか、またはその構成要素を伴ってもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、材料のうちの1つ以上は、所定または規定レベルの治療用の放射線を放出することができる。一実施形態において、材料にβ放射線を負荷することができる。別の実施形態において、材料にγ放射線を負荷することができる。さらに別の実施形態において、材料にβ放射線およびγ放射線の両方の組み合わせを負荷することができる。使用することができるステント放射性同位体は、これらに限定されないが、103Pdおよび32P(リン―32)および2中性子活性化例、65Cuおよび87Rb2O、(90)Sr、タングステン―188(188)を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、材料のうちの1つ以上は、治療剤を有するかまたは含んでもよい。治療剤は、固有の送達動力学、作用機序、用量、半減期、目的等を有してもよい。いくつかの実施形態において、材料のうちの1つ以上は、例えば、細胞外空間、細胞膜、細胞質、核、および/または他の細胞内小器官における作用機序によって、治療のための作用機序および作用部位を提供する薬剤を含む。さらに、例えば、抗癌作用を含む宿主―生体材料間の相互作用等、組織形成および細胞応答に影響を及ぼす特定の細胞型用の化学誘引物質としての役割を果たす薬剤。いくつかの実施形態において、材料のうちの1つ以上は、発達または起源の任意の形態もしくは状態の細胞を送達する。これらは、例えば、分解性微粒子中に封入するか、またはポリマーもしくはヒドロゲルと直接混合することができ、医薬品送達用のビヒクルとしての役割を果たす。薬品型分子、例えば、サイトカインおよび成長因子を持続的に送達するように、生体細胞を使用することができる。非生体細胞は、制限された放出システムとしての役割を果たすことができる。治療用送達のさらなる概念については、[ステントによって送達される治療剤]の項目を参照されたい。
【0143】
[ステントによって送達される治療剤]
別の任意選択の実施形態において、ステントは、選択された治療効果を発揮するのに十分な量の(先に医薬品および/または生物剤について定義したような)治療剤をさらに含む。ステントのいくつかの任意選択の実施形態(例えば、ポリマーステントおよび多材料ステント)において、治療剤は、当業者に既知である他の手段によってポリマーがブレンドまたは混合される時にステント内に収容される。ステントの他の任意選択の実施形態において、治療剤はステント表面上のポリマーコーティングから送達される。ステントのいくつかの任意選択の実施形態において、治療剤は、デバイスの特定の構造的態様の中または周囲に局在化される。
【0144】
別の任意選択の実施形態において、治療剤は、ポリマー以外のコーティング手段によって送達される。ステントの他の任意選択の実施形態において、治療剤は、ステントの少なくとも1つの領域または1つの表面から送達される。治療剤は、ステントの少なくとも1つの部分からの治療剤の送達に使用されるポリマーまたは担体に化学的に結合することができ、かつ/または治療剤は、ステント本体の少なくとも一部を構成するポリマーに化学的に結合することができる。1つの任意の実施形態において、1つ以上の治療剤が送達されてもよい。
【0145】
治療剤の量は、再狭窄もしくは血栓症を阻害するか、またはステントを留置した組織のいくつかの他の状態に影響を及ぼす(例えば、不安定プラークを治癒する、および/または破裂を防止するか、もしくは内皮形成を誘発するか、もしくは他の細胞型が増殖し、細胞外マトリックス分子を産生して堆積させるのを抑制する)ために十分な量であり得る。治療剤(複数可)は、本発明の任意選択の実施形態にしたがって、抗増殖剤、抗炎症剤、抗マトリックスメタロプロテイナーゼ、ならびに高脂血症治療剤、コレステロール改善薬、抗血栓薬、および抗血小板薬から構成される群より選択することができる。血管の開存性を向上させるこれらの任意選択の抗増殖薬のうちのいくつかは、パクリタキセル、ラパマイシン、ABT―578、エベロリムス、デキサメタゾン、内皮機能のための一酸化窒素調節分子、タクロリムス、エストラジオール、ミコフェノール酸、C6―セラミド、アクチノマイシン―D、およびエポシロン、ならびに各々の誘導体および類似体を制限なく含む。
【0146】
これらの任意選択の薬剤のうちのいくつかは、抗血小板薬、抗トロンビン剤、他の病理学的事象および/または血管の疾患に対応する化合物として作用する。細胞外でまたは特定の膜受容体部位で活性を発揮する薬剤、原形質膜上、細胞質内、および/または核に作用する薬剤等、宿主においてそれらが作用する部位という点から、種々の治療剤を分類することができる。
【0147】
上述した薬剤に加えて、治療剤は、動脈および/または静脈以外の体内管腔を治療する目的のために意図される他の医薬品および/または生物剤を含むことができる。治療剤は、消化管(例えば、胃腸、十二指腸および食道、胆管)、呼吸器管(例えば、気管および気管支)、および尿管(例えば、尿道)等、非血管性である体内管腔の治療に特異的であってもよい。さらに、そのような実施形態は、生殖器系、内分泌系、造血系および/または外皮系、筋骨格系/整形外科系および神経系(聴覚および眼科用途を含む)等、他の体系の管腔内で有用であり得、最後に、治療剤を含むステントの実施形態は、閉塞した管腔を拡張し、(例えば、動脈瘤の場合のように)閉塞物を誘導するために有用であり得る。
【0148】
治療剤の放出は、徐放機構、拡散、静脈注射、噴霧または経口的によって送達される別の薬剤(複数可)との相互作用によって行うことができる。放出は、磁場、電場の適用、または超音波の使用によっても行うことができる。
【0149】
[機能特性を有するステントの表面コーティング]
例えば、忌避剤であるホスホリルコリン等の生物学的ポリマーのステント上での送達等、治療剤を送達することができるステントに加えて、ステントは、特定の臨床的有効性にとって望ましい体内管腔内における生物学的応答を促進するように事前に定められた他の生体吸収性ポリマーで被覆することができる。さらに、コーティングを使用して、ステントの実施形態を構成するために使用されるポリマーの表面特性を(一時的または永久的に)隠すことができる。コーティングは、任意のポリ(アルキレングリコール)を含んでもまたは含まなくてもよいハロゲン化および/または非ハロゲン化ポリマーのうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせを含むことができる広範囲の種類の任意の生体適合性、生体吸収性ポリマーから選択することができる。これらのポリマーは、ホモポリマーおよびヘテロポリマー、そのようなポリマーの立体異性体および/またはブレンドを含む、組成物上の変形例を含むことができる。これらのポリマーは、これらに限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドカーボネート)、トリメチレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシブチラート、ポリ―ヒドロキシバレラート、ポリグリコリド、ポリラクチド、ならびにグリコリド/ラクチドコポリマー等、上記ポリマーの立体異性体およびコポリマーを含む。任意選択の実施形態において、ステントは、負電荷を帯びた赤血球細胞の外側の膜を忌避する負電荷を有するポリマーで被覆され、それによって血餅形成のリスクを低減する。別の任意選択の実施形態において、ステントは、細胞(例えば、内皮細胞)に親和性を示し、治癒を促進するポリマーで被覆される。さらに別の任意選択の実施形態において、再狭窄および/またはマクロファージ等の炎症細胞を低減するために、ステントは、例えば、動脈線維芽細胞および/または平滑筋細胞等の特定の細胞の付着および/または増殖を忌避するポリマーで被覆される。
【0150】
生物学的応答の補助となる機能特性を達成するように、コーティングを用いて変更することができる本発明のステントの実施形態を上述した。治療剤を用いたこのような材料のコーティングまたは組成は、ステント上に形成されてもよいか、または浸漬、スプレーコーティング、架橋連結、それらの組み合わせ等の技術によりステント本体を作製するプロセスにおいて適用されてもよい。そのような材料のコーティングまたは組成は、ステントが折り畳まれた構成で維持されるように、バルーンシステム上にステントを取り付けた後、管腔内でステント本体上にコーティングを施す時および/またはデバイス全体にわたってコーティングを施す時にバルーン上でのステントの保持を強化するため等、治療剤送達以外の目的も果たすことができる。当業者は、任意のポリマー材料を使用する時に他の目的を想定することができる。
【0151】
本発明の一態様において、ステントに特定の機械的特性を有するコーティングが塗布される。その特性は、とりわけ、厚さ、引張強度、ガラス転移温度、および表面仕上げを含む。コーティングは、最終的にステントをカテーテルに圧着または取り付ける前に任意選択で塗布される。次いで、ステントをカテーテルに適用することができ、圧縮するように熱もしくは圧力またはその両方をシステムに印加することができる。そのプロセスにおいて、コーティングは、カテーテルおよび他のステント表面の両方と脆弱な接着部を形成することができる。この接着部は、ステントの保持をもたらし、経時的にステントの断面形状を維持する信頼できる方法を実現する。接着部は、バルーン展開圧力が印加されると破壊する。確実に基板に変化が起こらないように、コーティングは基板よりもガラス転移点(Tg)が低い。
【0152】
[ステントの展開]
最初にカテーテルが提供され、いくつかの実施形態において血管形成術用バルーン等の膨張可能なバルーンである拡張可能な部材が、遠位端部に沿って提供される。ステントとともに使用されるバルーンカテーテルの一例は、参照することにより本明細書に組み込まれるPalmazに対する米国特許第4,733,665号に記載される。カテーテル上のステントは、一般的にステントシステムと総称される。カテーテルは、これらに限定されないが、オーバーザワイヤカテーテル、同軸急速交換設計、および新しい送達プラットフォームであるMedtronic社製Zipper技術を含む。そのようなカテーテルは、例えば、Bonzelの米国特許第4,762,129号および第5,232,445号、ならびにYockの米国特許第4,748,982号、第5,496,346号、第5,626,600号、第5,040,548号、第5,061,273号、第5,350,395号、第5,451,233号、および第5,749,888に記載されるカテーテルを含んでもよい。さらに、カテーテルは、例えば、米国特許第4,762,129号、第5,092,877号、第5,108,416号、第5,197,978号、第5,232,445号、第5,300,085号、第5,445,646号、第5,496,275号、第5,545,135号、第5,545,138号、第5,549,556号、第5,755,708号、第5,769,868号、第5,800,393号、第5,836,965号、第5,989,280号、第6,019,785号、第6,036,715号、第5,242,399号、第5,158,548号、および第6,007,545号に記載されるカテーテルを含んでもよい。上記特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0153】
カテーテルは、適合性の高いポリマーを用いて、超音波効果、電場、磁場、光および/または温度効果を生成する等の種々の目的に合わせて特化することができる。加熱カテーテルは、例えば、米国特許第5,151,100号、第5,230,349号、第6,447,508号、および第6,562,021号、ならびに第WO9014046A1号に記載されるカテーテルを含んでもよい。赤外線を発光するカテーテルは、例えば、米国特許第5,910,816号および第5,423,321号に記載されるカテーテルを含んでもよい。上記特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
膨張可能なバルーン等の拡張可能部材は、治療部位でステントを展開するために任意選択で使用される。バルーンが拡張すると、バルーンの半径方向の力が拘束機構の初期抵抗に打ち勝ち、それによりステントを拡張させる。バルーンが膨張すると、半径方向要素が、ステントが所望の直径に拡張するまでバルーンの表面に沿って互いに対して摺動する。
【0155】
本発明の実施形態のステントは、当該技術分野で既知である従来方法を使用して経皮経管カテーテルデバイスを展開するように適合される。これは、バルーンの拡張によって拡張が駆動されるバルーン拡張可能設計を用いた体内管腔内での展開を含む。代替として、ステントが体内管腔を通って送達される際にステントを保持し、次いでステントを解放し、ステントが自己拡張して体内管腔に接触することを可能にするカテーテル上に、ステントを取り付けることができる。拘束手段は、着脱可能なシースおよび/またはステント設計の機械的態様を含んでもよい。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態は、冠状動脈、頚動脈、血管の動脈瘤(シースで覆われた場合)、および末梢動脈および静脈(例えば、腎臓、腸骨、大腿、膝窩、鎖骨下、大動脈、頭蓋間等)において有用であり得る。他の非血管性の適用は、胃腸、十二指腸、胆管、食道、尿道、生殖器系、気管、および呼吸(例えば、気管支)管への適用を含む。これらの適用は、ステントを覆うシースを必要としてもまたはしなくてもよい。
【0157】
ステントを半径方向に均一に拡張させることが望ましい。代替として、拡張時の直径は変動してもよく、治療される体内通路の内径および解剖学的形態によって決定されてもよい。したがって、展開する際に制御されるステントの均一な拡張および変動する拡張が体内通路の破裂を引き起こす可能性は低い。さらに、固定手段が嵌合要素の摺動に抵抗するので、ステントは反動に抵抗する。よって、拡張された管腔内ステントは、体内通路に対して外側に半径方向の圧力をかけ続け、したがって、所望の位置から離れて移動することはない。
【0158】
以上の説明から、管腔を拡張するための新規手法が開示されたことが理解されるであろう。本発明の構成要素、技術、および態様をある程度の具体性を持って説明してきたが、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で上述した特定の設計、構造および方法に多数の変更を加えてもよいことは明らかである。
【0159】
本発明の多数の任意の実施形態およびその変形例を詳しく説明してきたが、当業者には、他の変更例および使用方法およびその医学的用途が明らかであろう。したがって、本発明の主旨または特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の用途、変更例、材料、および置換が均等物で構成されてもよいことを理解されたい。
【0160】
当業者には、本発明の真の主旨または範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更例および用途が構想され得る。本発明は、例示の目的で本明細書に記載される実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲を公正に解釈することによってのみ定義され、その各要素に適用される均等物の全範囲を含むことを理解されたい。
【0161】
[参考文献]
本明細書に記載した参考文献のうちのいくつかを以下に列挙する。それらの各々は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
・Charles R, Sandirasegarane L, Yun J, Bourbon N, Wilson R, Rothstein RP, et al. Ceramide−Coated Balloon Catheters Limit Neointimal Hyperplasia after Stretch Injury in Carotid Arteries. Circ Res 2000;87(4):282−288.
・Coroneos E, Martinez M, McKenna S, Kester M. Differential regulation of sphingomyelinase and ceramidase activities by growth factors and cytokines.Implications for cellular proliferation and differentiation. J Biol Chem 1995;270(40):23305−9.
・Coroneos E, Wang Y, Panuska JR, Templeton DJ, Kester M. Sphingolipid metabolites differentially regulate extracellular signal−regulated kinase and stress−activated protein kinase cascades. Biochem J 1996;316(Pt 1):13−7.
・Jacobs LS, Kester M. Sphingolipids as mediators of effects of platelet−derived growth factor in vascular smooth muscle cells. Am J Physiol 1993;265(3 Pt 1):C740−7.
・Tanguay JF, Zidar JP, Phillips HR,3rd, Stack RS. Current status of biodegradable stents. Cardiol Clin 1994;12(4):699−713.
・Nikol S, Huehns TY, Hofling B. Molecular biology and post−angioplasty restenosis. Atherosclerosis 1996;123(1−2):17−31.
・Biomaterials Science: An Introduction to Materials in Medicine (29 July,2004) Ratner, Hoffman, Schoen, and Lemons

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に入れ子式の非拡張状態から拡張状態へと拡張可能な、軸方向に入れ子式のステントであって、前記ステントは、長手方向の軸および周方向の軸を有する管状部材を備え、前記管状部材は、
前記長手方向の軸の周囲に周方向に配置される複数の細長い連結部であって、各連結部は、前記連結部内に配置される少なくとも1つの係合孔を備え、前記係合孔は、前記連結部を通って周方向に配置される、細長い連結部と、
少なくとも2つの連結部の前記係合孔の間に延在する、少なくとも1つの相互接続器モジュールであって、前記管状部材の前記周方向の軸と概ね整列し、前記ステントが前記軸方向に入れ子式の非拡張状態から前記拡張状態へと拡張する際に、前記相互接続器モジュールに対する前記連結部の一方向に摺動可能な移動を許容するように構成される、相互接続器モジュールと、を、備える、ステント。
【請求項2】
各連結部は、可撓部を介して相互接続される複数の連結要素を備え、前記連結要素は、それぞれ、近位端および遠位端を画定し、前記可撓部は、前記複数の連結要素を端と端で相互接続するように、所与の連結要素の前記近位端と別の所与の連結要素の前記遠位端との間に延在し、前記少なくとも1つの係合孔は、前記連結部の少なくとも1つの連結要素内に配置され、前記係合孔は、前記連結部を通って周方向に配置される、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
少なくとも第1、第2、および第3の細長い連結部が、周方向に互いに離間して、複数の相互接続器モジュールを介して接続され、前記第1の細長い連結部と前記第2の細長い連結部とを接続する前記相互接続器モジュールは、前記第2の細長い連結部と前記第3の細長い連結部とを接続する前記相互接続器モジュールから長手方向に離間する、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記細長い連結部は、前記少なくとも1つの相互接続器モジュールから離れて形成される、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
少なくとも第1、第2、および第3の細長い連結部は、前記管状部材を形成するように周方向に互いに離間し、前記管状部材は、それぞれの周方向に隣接する細長い連結部の間に少なくとも部分的に周方向に介在するそれぞれの相互接続器モジュールを備える、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記第1の細長い連結部および前記第2の細長い連結部を接続する前記相互接続器モジュールと、前記第2の細長い連結部および前記第3の細長い連結部を接続する前記相互接続器モジュールとは、前記管状部材の外表面を少なくとも部分的に画定する、請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記拡張状態において、前記少なくとも1つの相互接続器モジュールの端は、それぞれの係合孔内に少なくとも部分的に受容される、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記拡張状態において、前記少なくとも1つの相互接続器モジュールの端は、それぞれの係合孔に対して実質的に固定される、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
半径方向に入れ子になった非拡張状態において、前記少なくとも1つの相互接続器モジュールは、前記管状部材内で周方向に入れ子になる、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記管状部材の前記長手方向の軸の周囲に周方向に配置され、隣接する連結部の間に介在する、少なくとも1つの相互連結器を備え、前記相互連結器は、相互連結器本体の第1の側から延在する相互接続器モジュールとともに構成される細長い前記相互連結器本体を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項11】
前記相互連結器は、その第2の側から延在する少なくとも1つの相互接続器モジュールとともに構成される、請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記相互接続器モジュールは、前記ステントの一方向への拡張を容易にするために、前記連結要素の前記係合孔に係合するように、その上面および下面のうちの少なくとも1つに沿って配置される複数の歯を備える、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
前記歯は、前記相互接続器モジュールの前記上面から延在する可撓性の傾斜突起を備える、請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記歯は、前記相互接続器モジュールに結合された自由端および固定端を有する羽根を備え、前記羽根は、前記ステントの一方向への拡張を容易にするように、前記相互接続器モジュールが前記係合孔を通過する間は偏向し、前記係合孔を出ると係合位置に戻るように動作可能である、請求項13に記載のステント。
【請求項15】
前記相互接続器モジュールは、2つの隣接する連結部を相互接続し、前記相互接続器モジュールの長さは、前記連結部の間の最大距離を画定する、請求項1に記載のステント。
【請求項16】
前記相互接続部材は、前記ステントの拡張を制限するための停止部材を備える、請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記連結部の前記係合孔は、第1の通過形状を画定し、前記停止部材は、前記第1の通過形状よりも大きな第2の形状を画定する、請求項16に記載のステント。
【請求項18】
各連結部は、
A字型フレームおよび対向する側方ウイングを画定する複数の連結モジュールと、
前記複数の連結モジュールを端と端で相互接続するように、所与の連結モジュールの前記側方ウイングと別の所与の連結モジュールの前記側方ウイングとの間に延在する可撓部と、をさらに備え、
前記少なくとも1つの係合孔は、前記連結部の前記連結モジュールの前記A字型フレームに配置され、前記係合孔は、前記連結モジュールを通って周方向に配置され、
前記少なくとも1つの相互接続器モジュールは、隣接する連結部の間に介在するそれぞれの相互接続器モジュールとともに前記長手方向の軸の周囲に周方向に配置され、前記相互接続器モジュールは、前記隣接する連結部の前記係合孔の間に延在する複数の相互接続部材を備え、前記相互接続部材は、前記管状部材の前記周方向の軸と概ね整列し、前記相互接続部材は、前記ステントが前記軸方向に入れ子になった非拡張状態から前記拡張状態へと拡張する際に、前記相互接続部材に対する前記連結部の一方向に摺動可能な移動を許容するように構成される、請求項1に記載のステント。
【請求項19】
前記相互接続部材は、前記ステントの一方向への拡張を容易にするために、前記連結モジュールの前記係合孔に係合するように、その少なくとも1つの側面に沿って配置される複数の歯を含む、請求項18に記載のステント。
【請求項20】
前記歯は、前記相互接続部材の両方の側面から延在する可撓性の傾斜突起を備える、請求項19に記載のステント。
【請求項21】
前記歯は、前記相互接続部材に結合された自由端および固定端を有する羽根を備え、前記羽根は、前記ステントの一方向への拡張を容易にするように、前記相互接続器部材が前記係合孔を通過する間は偏向し、前記係合孔を出ると係合位置に戻るように動作可能である、請求項20に記載のステント。
【請求項22】
前記相互接続器モジュールは、第1の側および第2の側を備え、前記第1の側から延在する相互接続部材の数は、前記第2の側から延在する相互接続部材の数の2倍である、請求項18に記載のステント。
【請求項23】
所与の連結部の前記連結モジュールは、別の所与の連結部の前記連結モジュールと概ね長手方向に整列される、請求項18に記載のステント。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−500096(P2012−500096A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523913(P2011−523913)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/054087
【国際公開番号】WO2010/022005
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(507000316)レヴァ メディカル、 インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】REVA MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】