説明

軸方向の2つの圧力チャンバに対するシール機能を有する軸ユニットおよび軸ユニットを備えた動力伝達装置

【課題】軸方向の2つの圧力チャンバに対するシール機能を有する軸ユニットを改良する。
【解決手段】第1の中空円筒形の構成要素22が、軸方向の端部領域25で、第2の中空円筒形の構成要素23から突出していて、かつ第2の中空円筒形の構成要素に嵌め込まれており、第1の中空円筒形の構成要素22が、端部領域において外周面29で、半径方向に向けられた少なくとも1つの突起26を備えており、突起が、第2の中空円筒形の構成要素の端面36に対して軸方向で間隔を有して配置されていて、かつ端面と共に溝27を形成しており、溝にシール装置18が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、2つの圧力チャンバ、特に同軸的で軸方向で相並んで配置された2つの圧力チャンバに対するシール機能の組み込まれた軸ユニットに関する。さらに本発明は、トランスミッション入力軸として形成されたこのような軸ユニットを備えた動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置とこれに後置されたトランスミッションとを備えた構成ユニット(この場合動力伝達装置と後置のトランスミッションとの間の連結はトランスミッションのトランスミッション入力軸を介して行われる)は、多くの構成で知られている。その一例としてここではドイツ連邦共和国特許出願公開第19822665号明細書を参照する。前掲明細書から、始動エレメントとしてのハイドロダイナミック式の回転数変換器/トルク変換器と、ハイドロダイナミック式の構成素子を介して出力流れを迂回させるための、回転数変換器/トルク変換器に対応配置されたロックアップクラッチとを備えた動力伝達装置が公知である。ハイドロダイナミック式の回転数変換器/トルク変換器は、以下に略してトルク変換器と記載するが、これは、ポンプホイールとタービンホイールと少なくとも1つのガイドホイールとを備えており、この場合ポンプホイールは、少なくとも間接的に駆動ユニット、たとえば駆動機械と連結可能である。この場合ポンプホイールは、いわゆるポンプホイールシェルを備えており、ポンプホイールシェルは、周方向でリング状に延びる軸方向の中間室を形成してタービンホイールを軸方向で包囲する。中間室に、ロックアップクラッチが配置されている。ロックアップクラッチは、最も簡単な構成では、摩擦クラッチとして多板構造で形成されている。この場合第1のクラッチエレメントは、動力伝達装置の入力部、特にポンプホイールと、少なくとも間接的に相対回動不能に連結されており、これに対して少なくとも間接的に第1のクラッチエレメントと作用結合可能な第2のクラッチエレメントは、つまり直接的または間接的に、たとえば摩擦面を支持する別の構成要素を介して、動力装伝達置の出力部と相対回動不能に結合されている。さらにタービンホイールが、動力伝達装置の出力部と連結されている。連結は、最も簡単な構成では、いわゆる出力ハブを介して行われる。さらに出力部を、直接的にタービンホイールならびに第2のクラッチエレメントから形成することも考えられる。したがって出力部の連結は、トランスミッション軸と相対回動不能に行われ、トランスミッション軸は、実質的に動力伝達装置とこれに後置されたトランスミッションとの間の交点を成す。交点は、トランスミッションの構成部材であっても、動力伝達装置の構成部材であってもよく、したがって交点は、単にトランスミッション入力部と連結すればよい。配置構造は、モジュール構造形式の個々の構成素子の構成および提供に応じて行われる。ロックアップクラッチは、スリップして、またはスリップなく作動させることができる。作動は、最も簡単な構成では、ピストンエレメントを介して行われる。この場合ピストンエレメントは、既に第2のクラッチエレメントを支持するか、またはこれに作用することができる。このためにピストンエレメントは、駆動装置、特に変換器ケーシングと相対回動不能に結合されているが、軸方向ではこれに対して移動可能に支承されている。このような軸方向の配置構造によって、様々な圧力室が形成される。この場合第1の圧力チャンバは、ケーシング壁とピストンエレメントとの間の配置構造によって形成されており、第2の圧力チャンバは、ピストンとハイドロダイナミック式の構成素子との間の配置構造によって形成されている。両方の圧力チャンバの間の圧力差によって、ロックアップクラッチの作動が制御される。
【0003】
変換器に対して第2の圧力チャンバをシールするために、シール装置が設けられている。シール装置は、様々な形式で形成することができ、最も簡単な構成では、シールエレメントは、Oリングまたは横断面四角形リングである。その配置構造は、多くの構成で公知である。最も簡単な構成では、シールエレメントは、変換器カバーにおけるハブに嵌められている。このことは、変換器カバー、特に内周を形成する面に適当な溝を形成することを前提とする。さらに内径に対するシール装置の押し込みが行われる。
【0004】
公知の別の構成によれば、シール装置の個々のシールエレメントが、トランスミッション入力軸に形成された溝に配置されている。この溝は、トランスミッション入力軸の軸端部の領域で機械式に形成されており、したがって製造が極めて面倒である。さらにハイドロダイナミック式の変換器における適当なチャンバまたは通路との連結に関連した、トランスミッション入力軸における個々の結合孔の接続および位置関係に関して、溝を形成するために比較的高い位置精度が必要である。したがって位置の適合は、条件下でしか実現されない。溝を形成するために、適当な最小壁厚がトランスミッション入力軸に設ける必要があり、このことにより不要な直径増加が生じることになる。トランスミッション入力軸における溝にシールエレメントを配置した構成では、さらなる欠点が存在しており、シールエレメントは、外径に沿って被せ付ける必要があり、したがってシールエレメントの実際の比較的小さな内径は、トランスミッション入力軸の外径に対して伸長される。これによって既にシール装置を被せ付ける際に破損しないようにするために、材料および寸法設定に関して適当に設定されたシール装置が要求される。
【0005】
別の構成では、シールエレメントは、ハブ、特にタービンホイールの出力ハブに圧入される。このような構成では、変換器カバーに圧入する構成と同等の欠点が生じる。ここでは特に内径に対するシールの形成が行われる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19822665号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような形式の、軸方向で相並んで、かつ互いに同軸的に配置された少なくとも2つの圧力媒体案内通路を備えた圧力チャンバをシールするためのシール装置を備えた軸を改良して、前述の欠点を克服することである。特に製造技術的に簡単で、かつ寸法設定に関して最適化された安価な構成をした、シール機能を有するトランスミッション入力軸を提供することである。この場合望ましくは、2つの圧力室の相互的なシールに際して、動力伝達装置の入力部とトランスミッション入力軸との間の回転数の差および半径方向のずれの補償に関する基準値が保証される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するための装置によれば、軸方向の2つの圧力チャンバに対するシール機能を有する軸ユニットであって、当該軸ユニットの回転軸線に対して同軸的に配置された2つの圧力チャンバと連結するための同軸的な2つの通路が設けられており、これらの圧力チャンバが、シール装置を介して互いにシールされており、第1の中空円筒形の構成要素が設けられており、該第1の中空円筒形の構成要素が、第1の通路を形成しており、第1の通路とは別の第2の通路を形成して、周方向で第1の中空円筒形の構成要素を包囲する第2の中空円筒形の構成要素が設けられており、第1の中空円筒形の構成要素が、プレス結合部を介して第2の中空円筒形の構成要素と連結されている形式のものにおいて、第1の中空円筒形の構成要素が、軸方向の端部領域で、第2の中空円筒形の構成要素から突出していて、かつ第2の中空円筒形の構成要素に嵌め込まれており、第1の中空円筒形の構成要素が、端部領域において外周面で、半径方向に向けられた少なくとも1つの突起を備えており、突起が、第2の中空円筒形の構成要素の端面に対して軸方向で間隔を有して配置されていて、かつ端面と共に溝を形成しており、溝にシール装置が配置されている。
【0008】
有利には、1の中空円筒形の構成要素が、少なくとも2つの部分領域、つまり第1の部分領域と第2の部分領域とを備えており、第1の部分領域と第2の部分領域とが、異なる外周寸法を有して形成されており、第1の部分領域の外周面と、第2の中空円筒形のエレメントとが、第2の通路を形成しており、第2の部分領域が、軸方向延伸部分の少なくとも一部にわたって、第2の中空円筒形の構成要素に嵌め込まれていて、かつ端部領域で突起を備えている。
【0009】
有利には、突起が、第1の中空円筒形の構成要素の第2の部分領域の外周面の周りをリング状に延びる突起として形成されている。
【0010】
有利には、突起の、第1の中空円筒形の構成ユニットから離間する側の端面が、シール面を形成している。
【0011】
有利には、突起が、回転対称的なフランジとして形成されている。
【0012】
有利には、複数の突起が設けられており、これらの突起が、第1の中空円筒形の構成要素の端部領域の外周面に沿って、周方向で相互間隔を有して配置されている。
【0013】
有利には、シール装置が、少なくとも1つのOリングまたは横断面矩形リングを備えている。
【0014】
有利には、プレス結合部が、横プレス結合部として形成されている。
【0015】
この課題を解決するための別の装置によれば、入力部と少なくとも1つの出力部とを備えた動力伝達装置であって、ハイドロダイナミック式の構成要素が設けられており、ポンプホイールおよびタービンホイールが設けられており、ポンプホイールとタービンホイールとが、互いに作動媒体で充填可能な作業室を形成しており、ロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチが、ハイドロダイナミック式の構成要素を介して出力流れを少なくとも部分的に迂回させるためにハイドロリックダイナミック式の構成要素に対応配置されており、少なくとも1つの第1の摩擦面配置構造が設けられており、摩擦面配置構造が、少なくとも間接的に動力伝達装置の入力部と相対回動不能に結合されているか、または動力伝達装置の入力部とポンプホイールとの間の結合部と結合されており、第2の摩擦面配置構造が設けられており、第1の摩擦面配置構造と第2の摩擦面配置構造とが、作動装置を介して互いに作用結合可能になっており、作動装置とハイドロダイナミック式の構成要素との間に、第1の圧力チャンバが形成されており、作動装置とケーシングとの間に第2の圧力チャンバが形成されており、第2の圧力チャンバが、作動装置のための作動圧力で負荷されるようになっている形式のものにおいて、出力部が、軸ユニットとして形成されており、シール装置が、第2の摩擦面と出力部との間に配置されており、第1の通路が、第2の圧力チャンバと連結されており、第2の通路が、第1の圧力チャンバと連結されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成の有する利点によれば、シール装置は、もはや軸ユニットの外径に沿って被せ付ける必要がなく、軸方向の相互的な位置関係に基づいて、取付に際して、内側の、つまり第1の中空円筒形の構成要素に沿って被せ付けられ、したがってシールエレメントの内周は伸長させる必要がない。被せ付けは、既に管状の構成要素を軸の貫通開口に導入するまえに行うことができる。
【0017】
互いに同軸的に配置された2つの通路を備えた軸ユニットは、通常中空軸の構成をした軸から形成され、軸は、内側の通路を形成する構成要素と相対回動不能に結合されている。この場合第1の中空円筒形の構成要素によって形成される内側の構成要素は、有利には管として形成されている。この場合本発明によれば、軸と管状の構成要素とは、軸方向で互いに向かい合う側の端面で、シール装置のための溝を形成するように、配置されている。このために有利には管状の第2の構成要素が、軸方向で端部領域を備えており、端部領域は、有利には溝の外径に相当し、かつ有利には第2の中空円筒形の構成要素の外径と同じである外径によって構成されている。さらに端部領域の構成によれば、端部領域は、軸に形成された貫通開口にガイドすることができ、相対回動不能な連結が実現される。相対回動不能な結合は、最も簡単な構成では、プレス結合部を介して行うことができる。ここで重要な点について述べると、溝が、軸の端部領域と管状の構成要素との間の軸方向の方向付けによって形成される。この場合両方の構成要素の、向かい合った端面が利用される。
【0018】
このために構造的に、第1の中空円筒形の構成要素は、少なくとも2つの部分領域、つまり第1の部分領域と第2の部分領域とを備えており、これらの部分領域は、異なる外寸を成している。第1の部分領域の外周面と第2の中空円筒形の構成要素とが、第2の通路を形成する。第2の部分領域は、軸方向の延伸部分の少なくとも一部を介して第2の中空円筒形の構成要素にプレス嵌めされている。
【0019】
実施形態および機能に応じて、突起は、第1の中空円筒形の構成要素の第1の部分領域の外周の周りにリング状に形成された突起として形成されている。この場合周方向で閉じられた連続する溝側面ならびに反対側の端面がシール面を形成し、シール面は、別の接続エレメントに対して第1の通路をシールするために用いることができる。最も簡単な構成では、突起はフランジとして形成されている。
【0020】
2つの圧力チャンバの間の差圧のシールは、一方向で行う必要がないので、フランジのシール機能は省略される。この場合回転対称的なフランジは不要である。突起として形成された、半径方向のセグメントで十分である。この場合複数の突起が設けられており、突起は、周方向で相互間隔を有して端部領域の外周に配置されていて、突起を支持する中空円筒形の構成要素の端面から離間する側の面領域で、シール装置を軸方向で支持して位置固定するための支持領域を形成する。
【0021】
セグメント化された実施形態によって、さらにシールリングをフランジ領域に沿って被せ付ける際に、取付時のシールリングの拡張が抑制されるので、第2の中空円筒形の構成要素に管端部を圧入したあとでも、さらなる取付が可能となる。
【0022】
本発明による構成は、特に動力伝達装置とトランスミッションとの間の連結において、いわゆるトランスミッション構造ユニットに使用される。この場合動力伝達装置の領域における軸端部の連結は、有利には適当な出力ハブを介して行われ、出力ハブは、接続エレメント、ロックアップクラッチおよびハイドロダイナミック式の回転数変換器/トルク変換器と相対回動不能に連結されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を図示の実施例を用いて詳しく説明する。
【0024】
図1には、動力伝達装置1の縦断面図に基づいて、トランスミッション入力軸3の構成をした、本発明に従って形成された軸ユニット2の配置構造を概略的に示した。動力伝達装置1は、入力部Eと出力部Aとハイドロダイナミック式の構成素子4とを備えており、ハイドロダイナミック式の構成素子4は、図示の実施例では、ハイドロダイナミック式の回転数変換器/トルク変換器(以下に省略してトルク変換器5と記載する)として形成されている。同様にハイドロダイナミッククラッチとしての構成も考えられる。ハイドロダイナミック式のトルク変換器5は、動力伝達装置1の入力部Eと相対回動不能(つまり一緒に回転するように)に結合可能であるかまたは連結されたポンプホイールP(ポンプインペラ)と、出力部Aと少なくとも間接的に、つまり直接的に、または別の中間エレメントおよび機能エレメントを介して結合されたタービンホイール(タービンライナ)Tと、少なくとも1つのガイドホイール(ステータ)Lとを備えている。この場合ハイドロダイナミック式のトルク変換器5は、回転数およびトルクを変換するのに役立つ。さらに動力伝達装置1は、ハイドロダイナミック式の出力伝達を迂回させるための装置(ロックアップクラッチ6とも呼ばれる)を備えている。この場合ロックアップクラッチ6は、ハイドロダイナミック式の構成素子4に対して並列に配置されている。ロックアップクラッチ6は、ハイドロダイナミック式の構成素子4を介する出力流れを迂回させるのに役立つ。ロックアップクラッチ6は、摩擦面を支持する少なくとも1つの構成要素を備えた第1の摩擦面配置構造7を備えており、第1の摩擦面配置構造7は、少なくとも間接的に入力部EもしくはポンプホイールPと、またはポンプホイールPと動力伝達装置1の入力部Eとの間の結合部と相対回動不能に結合されていて、かつ作動装置10を介して第2の摩擦面配置構造8(これは摩擦面を支持する少なくとも1つの構成要素を備えている)と作用結合可能である。この場合第2の摩擦面配置構造8は、少なくとも間接的に相対回動不能に出力部Aと結合されていて、それも直接的にタービンホイールTとの連結部を介して結合されているか、または振動を減衰するための装置38を介して結合されている。この場合タービンホイールTと第2の摩擦面配置構造8との接続は、最も簡単な場合では出力部Aに設けられたいわゆる出力ハブ9を介して行われる。出力部Aは、軸ユニット2によって形成され、軸ユニット2は、同時に動力伝達装置に後置された、ここでは図示していないトランスミッション構造ユニットのためのトランスミッション入力軸3として役立つ。ロックアップクラッチ6の作動は、作動装置10を介して行われ、作動装置10は、有利には軸方向移動可能なピストンエレメント11を備えており、ピストンエレメント11は、接続に応じて、動力伝達装置1の入力部EまたはポンプホイールPとの結合部と相対回動不能に結合された構成要素に、またはトランスミッション入力軸3もしくはタービンホイールハブ9に、軸方向移動可能に支承されている。構造化は、様々な形式で行うことができる。移動性は、両矢印で示した。動力伝達装置のケーシング(このケーシングはトルク変換器5のケーシング12によって形成され、ケーシング12は最も簡単な構成ではポンプホイールPと連結されたポンプホイールシェルエレメント12.1,12.2によって形成される)内におけるロックアップクラッチ6の配置に基づいて、ケーシング12によって包囲される内室13に、2つのチャンバ14,15が形成され、チャンバ14,15は、軸方向で実質的にピストンエレメント11によって仕切られている。この場合ロックアップクラッチ6の作動の制御、特に摩擦作用の制御は、圧力媒体で少なくとも部分的に充填されるか、または通流される両方のチャンバ14,15における圧力差の調節によって行われ、チャンバ14,15は、軸方向でそれぞれ第2の摩擦面配置構造8もしくはピストンエレメント11と、トルク変換器5のケーシング12との間、ならびにピストンエレメント11もしくはピストンエレメント11の、トルク変換器5に向いた側の端面と、トルク変換器5との間に形成される。この場合ケーシング壁とピストンエレメント11との間のチャンバ15における圧力が圧力チャンバ14の圧力に対して高められると、ピストンエレメント11は、軸方向で第1および第2の摩擦面配置構造7,8に対して移動され、これらの摩擦面配置構造7,8を互いに係合させる。この場合圧力差の高さは、ロックアップクラッチ6がスリップして作動されるか、またはスリップなく作動されるかを特定する。作動兼冷却媒体ガイド(これについてここで説明することはしない)のために、チャンバ14,15に、それぞれ接続部16,17が対応配置されている。図示していない別の接続部が、トルク変換器5の作業室と連結するのに役立つ。
【0025】
チャンバ15は、トルク変換器5における動作とは無関係に負荷することができ、これに対してチャンバ14は、トルク変換器5における動作に依存している。個々のチャンバ14,15は、とりわけトランスミッション入力軸3とケーシング12との間に配置されたシール装置18を介して互いにシールされている。さらに圧力チャンバ15は、作動圧力媒体で負荷され、圧力チャンバ15は、シール装置18を介して、隣接する油通路、つまりトルク変換器5内の接続部16に対してシールされている。この場合シール装置18は、トランスミッション入力軸3と出力ハブ9との間に設けられている。この場合トランスミッション入力軸3と出力ハブ9との連結は、動力伝達ユニット1とトランスミッションユニットとの間の接続の交点を成す。接続の交点は、図示の実施例では、互いに同軸的に配置された2つの通路19,20を備えており、通路19,20は、特に油である作動媒体もしくは圧力媒体をガイドするのに役立つ。内側の第1の通路19が設けられており、第1の通路19は、第2の通路20によって半径方向で包囲されている。この場合外側の第2の通路20は、周方向で配置された少なくとも1つ、有利には複数の出口開口21と接続されており、出口開口21は、第1のチャンバ14に通じているか、もしくは第1のチャンバ14と接続されている。この場合軸ユニット2における個々の出口開口21は、組込状態で、トルク変換器5の作業室と連結されている。個々の出口開口21の中心軸線Mは、有利にはトランスミッション入力軸3の中心軸線ひいては回転軸線Rに対して垂直に、または少なくとも角度を成して配置されている。
【0026】
この場合シール装置18は、軸方向でみて出口開口21と圧力チャンバ15,14との間に配置されている。このために軸ユニット2は、中空円筒形の第1の構成要素22を備えており、第1の中空円筒形の構成要素22は、第1の通路19を形成する。さらに別の第2の通路20を形成しつつ周方向で第1の中空円筒形の構成要素22を包囲する第2の中空円筒形の構成要素23が設けられており、この場合第1の中空円筒形の構成要素22は、プレス結合部(嵌合部)24を介して第2の中空円筒形の構成要素23と連結されている。第1の中空円筒形の構成要素22は、軸方向の端部領域25で、第2の中空円筒形の構成要素23から突出していて、かつ第2の中空円筒形の構成要素23に嵌め込まれており、この場合第1の中空円筒形の構成要素22は、端部領域25の外周面で、半径方向で形成された少なくとも1つの突起26を備えており、突起26は、第2の中空円筒形の構成要素23の端面36に対して軸方向で間隔を有して配置されていて、かつ端面36と共に溝27を形成し、溝27にシール装置18が配置されている。
【0027】
図2には、図1に示した、本発明による、シール装置18の組み込まれたトランスミッション入力軸3の1実施例を詳しく示した。このために、互いに同軸的に配置された通路19,20を備えた入力軸3は、少なくとも2部分から成っている。両通路19,20は、個々の中空円筒形の構成要素22,23によって形成される。第2の中空円筒形の構成要素23は、中空軸として形成されており、第2の中空円筒形の構成要素23は、実施例に応じて、出力ハブ9と相対回動不能に結合可能である。この場合第2の中空円筒形の構成要素23の内周面28と、第1の中空円筒形の構成要素22の外周面29とが、第2の通路20の寸法を規定する。第2の通路20に対して同軸的に配置された別の第1の通路19は、第1の中空円筒形の構成要素22を介して実現され、第1の中空円筒形の構成要素22は、軸方向で中空軸に挿入されている。この場合第1の中空円筒形の構成要素22は、有利には管状に形成されている。第1の中空円筒形の構成要素22は、中空軸23を通って延びている。このことは内周面30によって規定された通路19にも当てはまる。第1の中空円筒形の構成要素22は、第1の部分領域31と第2の部分領域32と端部領域33とを備えており、この場合端部領域33は、第2の部分領域32に属していて、かつ突起25を形成する。個々の部分領域31,32は、その特性として、半径方向で異なる寸法設定を有している。第1の部分領域31は、通路20を通る作動媒体流のための壁を形成する。このために第1の部分領域31は、第2の中空円筒形の構成要素23の内径よりも小さな直径を有している。第2の部分領域32は、第2の中空円筒形の構成要素23とのプレス結合部24を実現するのに役立ち、かつ外径に関して、プレス結合部を形成するために、第2の中空円筒形の構成要素の内径に適合されている。端部領域33は、突起25を形成し、軸方向の端部領域25は、シール支持体を形成する。このために第2の部分領域32における外径は、この領域における第2の中空円筒形の構成要素23の内径に対するプレス嵌めに応じて形成されている。プレス結合部によって、両方の通路19,20は、軸ユニット2において互いにほぼ圧密かつ液密に形成されている。
【0028】
端部領域33は、端部領域25で、第2の中空円筒形の構成要素23から軸方向で突出する。端部領域33は、有利には周方向で延びるリング状またはフランジ状の突起34を備えており、突起34は、第2の中空円筒形の構成要素23に向いた軸方向の面35で、軸方向のシール装置18の支持面を形成する。この面35は、組込位置で、第2の中空円筒形の構成要素23の端面36に対して軸方向で間隔を有して配置されていて、かつ端面36と、第2の部分領域32の、この領域に存在する外周面と共に溝27を形成する。
【0029】
トランスミッション入力軸3の第2の中空円筒形の構成要素23の外周面37における、シール装置18にとって必要な溝27によって、シール装置18の配置領域における、トランスミッション入力軸3、特に中空軸の構成をした第2の中空円筒形の構成要素23の横断面の不要な弱体化が生じるのを回避するために、本発明によれば、軸方向の第1の中空円筒形の構成要素22に対する第2の中空円筒形の構成要素23の接続は、溝27を形成するように行われる。溝27は、一方の、つまり第2の中空円筒形の構成要素23の外周面37に設けられているだけでなく、軸方向で第1の中空円筒形の構成要素22と第2の中空円筒形の構成要素23とによって画成されている。この場合溝27の直径、特に内径di27は、第1の中空円筒形の構成要素22、特に管の外径によって規定される。このために管は、軸方向の端部領域25で、半径方向で管の外周面29から延びる、少なくとも部分的に周方向で延びる少なくとも1つの突起26を備え、有利にはリング状のフランジ37の構成をした、周方向で延びるリング状の突起34を備える必要がある。突起34は、組込位置で、軸方向で第1の中空円筒形の構成要素22と第2の中空円筒形の構成要素23とをずらして溝27を形成するように配置された構成要素で、第1の部分領域31に向けられた面35もしくは溝27の側面を形成し、これに対して第2の中空円筒形の構成要素23の端面36は、溝27の、軸方向の第2の画成面を形成する。したがってシール装置18は、位置に関して軸方向で両方の中空円筒形の構成要素22,23の間で固定される。したがって溝27は、ほぼトランスミッション入力軸3の端面で管フランジによって形成される。このような構成によって、シール装置18は、管を圧入するまえに、管に取り付けることができる。これによってシール装置18は、取付時にトランスミッション入力軸3、特に中空軸の軸外径を超えて伸長させる必要がない。したがって特に20ミリメートルより大きなサイズ範囲の軸外径に関する閉じた(連続する)シールエレメントを使用することができ、この場合材料に関して特別な要求が課されることはない。溝27は、もはや機械で製造する必要がなく、管、つまり中空円筒形の構成要素22,23の間の軸方向の位置構造によって規定されている。トランスミッション入力軸3の軸端部領域は、製造時に比較的小さな壁厚を有する中空軸として形成することができ、しかも追加的なシール装置18の配置に関して考慮する必要なない。
【0030】
特に有利な実施例では、フランジ37は、管27の端部領域25で、追加的に軸方向のシール機能を有することができる。この場合フランジ領域37は、周方向で完全に端部領域25を廻って形成されている。フランジ37は、溝27から離間する側の端面38で、フランジ37の、端面38によって形成された面39を単に部分的に利用して、シール面39もしくはシール面領域を成し、フランジ37は、これに対して補完的な面領域と共にシール対偶を形成することができ、シール対偶において、フランジ37は、接続エレメントの適当な面領域に軸方向で緊密に接触するか、もしくは対応する構成要素と連結されている。第1の中空円筒形の構成要素22、特に管の端部領域25において周方向で延びるフランジ面によるシール機能を有するフランジ37の構造については、第1の中空円筒形の構成要素22を2つの方向からみて示す図3aに例示した。
【0031】
別の実施例によれば、フランジ37は、シール機能なしに形成してもよい。この場合個々のフランジ領域は、フランジセグメント37.1〜37.nとして、半径方向で形成された、部分的に周方向で延びる突起26.1〜26.3によって形成することができる。この場合フランジ37の機能は、単にシールのための側方の1支持部、もしくは複数の支持面領域を形成すると生じる。このような実施例は、図3bに2つの方向からみた図で示した。
【0032】
図中の両矢印は、運動方向もしくは流れ方向を判りやすく示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】トランスミッション構造ユニットにおけるトランスミッション軸の構成をした、本発明に従って形成された軸の配置構造を大幅に簡略化して示した図である。
【図2】図1に示した、軸を成す2つの構成要素によって形成された溝の構造を詳細に示した図である。
【図3a】管状の構成要素に設けられたフランジ領域の構造を2つの方向から判りやすく示した図である。
【図3b】管状の構成要素に設けられたフランジ領域の構造を2つの方向から判りやすく示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 動力伝達装置、 2 トランスミッション構造ユニット、 3 トランスミッション入力軸、 4 ハイドロダイナミック式の構成素子、 5 ハイドロダイナミック式の回転数変換器/トルク変換器、 6 ハイドロダイナミック式の構成素子に設けられた、出力伝達を迂回させるための装置、 7 第1の摩擦面配置構造、 8 第2の摩擦面配置構造、 9 出力ハブ、 10 作動装置、 11 ピストンエレメント、 12,12.1,12.2 変換器ケーシング、 13 内室、 14 圧力チャンバ、 15 圧力チャンバ、 16 接続部、 17 接続部、 18 シール装置、 19 通路、 20 通路、 21.1,21.n 出力開口、 22 第1の中空円筒形の構成要素、 23 第2の中空円筒形の構成要素、 24 プレス結合部、 25 端部領域、 26 突起、 27 溝、 28 内周、 29 外周、 30 内周、 31 第1の部分領域、 32 第2の部分領域、 33 端部領域、 34 突起、 35 面、 36 端面、 37 フランジ、 37.1,37.n フランジセグメント、 38 端面、 39 シール面、 di27 溝の内径、 dA22 第1の中空円筒形の構成要素の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の2つの圧力チャンバ(14,15)に対するシール機能を有する軸ユニット(2)であって、
当該軸ユニット(2)の回転軸線(R)に対して同軸的に配置された2つの圧力チャンバ(14,15)と連結するための同軸的な2つの通路(19,20)が設けられており、これらの圧力チャンバ(14,15)が、シール装置(18)を介して互いにシールされており、
第1の中空円筒形の構成要素(22)が設けられており、該第1の中空円筒形の構成要素(22)が、第1の通路(19)を形成しており、
該第1の通路(19)とは別の第2の通路(20)を形成して、周方向で第1の中空円筒形の構成要素(22)を包囲する第2の中空円筒形の構成要素(23)が設けられており、第1の中空円筒形の構成要素(22)が、プレス結合部(24)を介して第2の中空円筒形の構成要素(23)と連結されている形式のものにおいて、
第1の中空円筒形の構成要素(22)が、軸方向の端部領域(25)で、第2の中空円筒形の構成要素(23)から突出していて、かつ該第2の中空円筒形の構成要素(23)に嵌め込まれており、第1の中空円筒形の構成要素(22)が、端部領域において外周面(29)で、半径方向に向けられた少なくとも1つの突起(26)を備えており、該突起(26)が、第2の中空円筒形の構成要素(23)の端面(36)に対して軸方向で間隔を有して配置されていて、かつ該端面(36)と共に溝(27)を形成しており、該溝(27)にシール装置(18)が配置されていることを特徴とする、軸方向の2つの圧力チャンバに対するシール機能を有する軸ユニット。
【請求項2】
第1の中空円筒形の構成要素(22)が、少なくとも2つの部分領域、つまり第1の部分領域(31)と第2の部分領域(32)とを備えており、該第1の部分領域(31)と第2の部分領域(32)とが、異なる外周寸法を有して形成されており、
第1の部分領域(31)の外周面と、第2の中空円筒形の構成要素(23)とが、第2の通路(20)を形成しており、
第2の部分領域(32)が、軸方向延伸部分の少なくとも一部にわたって、第2の中空円筒形の構成要素(23)に嵌め込まれていて、かつ端部領域(33)で突起(26)を備えている、請求項1記載の軸ユニット。
【請求項3】
前記突起(26)が、第1の中空円筒形の構成要素(22)の第2の部分領域(32)の外周面の周りをリング状に延びる突起(34)として形成されている、請求項1または2記載の軸ユニット。
【請求項4】
前記突起(26)の、第1の中空円筒形の構成ユニット(22)から離間する側の端面(38)が、シール面(39)を形成している、請求項3記載の軸ユニット。
【請求項5】
突起(26,34)が、回転対称的なフランジ(37)として形成されている、請求項3または4記載の軸ユニット。
【請求項6】
複数の突起(26.1,26.2,26.3)が設けられており、これらの突起(26.1,26.2,26.3)が、第1の中空円筒形の構成要素(22)の端部領域(25,33)の外周面(29)に沿って、周方向で相互間隔を有して配置されている、請求項1または2記載の軸ユニット。
【請求項7】
シール装置(18)が、少なくとも1つのOリングまたは横断面矩形リングを備えている、請求項1から6までのいずれか1項記載の軸ユニット。
【請求項8】
プレス結合部が、横プレス結合部として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の軸ユニット。
【請求項9】
入力部(E)と少なくとも1つの出力部(A)とを備えた動力伝達装置(1)であって、
ハイドロダイナミック式の構成要素(4)が設けられており、ポンプホイール(P)およびタービンホイール(T)が設けられており、ポンプホイール(P)とタービンホイール(T)とが、互いに作動媒体で充填可能な作業室を形成しており、ロックアップクラッチ(6)が設けられており、該ロックアップクラッチ(6)が、ハイドロダイナミック式の構成要素(4)を介して出力流れを少なくとも部分的に迂回させるために該ハイドロリックダイナミック式の構成要素(4)に対応配置されており、少なくとも1つの第1の摩擦面配置構造(7)が設けられており、該摩擦面配置構造(7)が、少なくとも間接的に動力伝達装置(1)の入力部(E)と相対回動不能に結合されているか、または動力伝達装置(1)の入力部とポンプホイール(P)との間の結合部と結合されており、第2の摩擦面配置構造(8)が設けられており、第1の摩擦面配置構造(7)と第2の摩擦面配置構造(8)とが、作動装置(10)を介して互いに作用結合可能になっており、作動装置(10)とハイドロダイナミック式の構成要素(4)との間に、第1の圧力チャンバ(14)が形成されており、作動装置(10)とケーシング(12)との間に第2の圧力チャンバ(15)が形成されており、該第2の圧力チャンバ(15)が、作動装置(10)のための作動圧力で負荷されるようになっている形式のものにおいて、
出力部(A)が、請求項1から8までのいずれか1項記載の軸ユニット(2)として形成されており、シール装置(18)が、第2の摩擦面(8)と出力部(A)との間に配置されており、第1の通路(19)が、第2の圧力チャンバ(15)と連結されており、第2の通路(20)が、第1の圧力チャンバ(14)と連結されていることを特徴とする、動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2008−95959(P2008−95959A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263672(P2007−263672)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany