軽量一体構造固体酸化物燃料素子アレイ
発明の一実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイは、少なくとも3枚の、2つの面をもつ平電解質シートを備える。電解質シートは相互に隣接して配置される。電解質シートの内の少なくとも1枚は、電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極及び電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を支持している。電解質シートは、複数の空気極及び燃料極をもつ電解質シートが他の電解質シートの間に配されるように配列される。少なくとも3枚の電解質シートは焼結フリットで結合され、電解質シートの間に金属のフレームまたは双極プレートはない。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、2009年6月26日に出願された米国仮特許出願第61/220783号の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は全般的には燃料電池アレイアセンブリに関し、さらに詳しくは、一体構造固体燃料電池アレイに関する。
【背景技術】
【0003】
固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは炭化水素燃料の電気への高効率変換に有望である。定置用途目的の代表的なSOFCスタックは、大きくて重く、従来の発電装置に比較して重量比電力密度が劣っている。従来のSOFC素子アセンブリは、肉厚の大きいセラミックのプレートまたはチューブ、金属支持体、金属フレーム及び双極プレートのような、大きくて重いコンポーネントを備える。これらのコンポーネントは高温動作にともなう熱歪に耐えるように選ばれることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この結果、従来のSOFC素子アセンブリの重量比電力密度、温度サイクリングレート及び起動時間性能には限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイは、
2つの面を有する少なくとも3枚の平電解質シートであって、相互に隣接して配置された電解質シート、
を備え、
電解質シートの内の少なくとも1枚が電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極及び電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を支持し、この少なくとも1枚の複数の空気極及び燃料極をもつ電解質シートが他の電解質シートの間に配置されるように配列され、少なくとも3枚の電解質シートは焼結フリットによって結合され、電解質シートの間に金属のフレームまたは双極プレートは配置されていない。一体構造燃料電池素子アレイは、少なくとも1cm2/cm3の単位体積当たり活性セル面積を有することが好ましい。
【0006】
本発明の一実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイは、
少なくとも3枚の平電解質シート支持燃料電池素子、
を備え、燃料電池素子のそれぞれは、
(i)2つの面を有する電解質シート、
(ii)電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極、及び
(iii)電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極、
を有し、燃料電池素子は、一枚の燃料電池素子の燃料極側が別の一枚の燃料電池素子の燃料極側に面し、一枚の燃料電池素子の空気極側が他の一枚の燃料電池素子の空気極側に面するように、配列され、少なくとも3つの燃料電池素子(それぞれの燃料電池素子は単一電解質シート上に配列された複数の燃料電池を有することができる)は、焼結フリットによって結合される。いくつかの実施形態にしたがえば、少なくとも3枚の燃料電池素子は共通のガス吸気ポートを共有することが好ましい。
【0007】
本発明の別の実施形態は、一体構造燃料電池素子アレイを作製する方法において、
(i)電解質シートを有する少なくとも3枚の燃料電池素子を作製する工程、
(ii)燃料電池素子に内の少なくとも2枚の表面にガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料のパターンを形成し、よって複数枚のパターン付燃料電池素子を作製する工程、及び
(iii)パターン付燃料電池素子のそれぞれを、焼結されたガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料によって3枚の素子が相互に永久結合し、よってそれぞれの素子の間には金属フレーム、金属電流ディストリビュータプレートまたは金属双極プレートを配置されることのないように、少なくとも1枚の他の素子に焼結する工程、
を含む方法である。
【0008】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を含み、また添付図面も含む、本明細書に説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。
【0009】
一体構造SOFC素子アレイの例示実施形態の利点のいくつかは、(i)用途に基づいてスケーラブルであり(燃料電池素子の寸法を大きくすることも小さくすることもできる)、一体構造素子アレイ内の素子の数を増やすことも減らすこともでき、(ii)起動時費消燃料を最小限に抑えるための重量比電力密度への高まる要求に応じるに必要な大きく低減された重量を有するから、移動体/可搬用途に特に適していることである。すなわち、一体型SOFC素子アレイの少なくともいくつかの例示実施形態の利点のいくつかは、高い重量比電流密度及び低い熱容量である。別の利点は、同じセル電力密度において従来のSOFCスタックと比較して高い体積比電力密度による、高効率素子充填密度である。
【0010】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明が、本発明の実施形態を提示しており、特許請求されている本発明の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解のために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は本発明の様々な実施形態を示し、記述とともに、本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは本発明の一実施形態の上面図である。
【図1B】図1Bは図1Aに示される本発明の実施形態の側面図である。
【図2】図2は、図1A及び1Bの実施形態に用いられる、燃料電池素子の一例を示す。
【図3】図3はフリットの一例の、ガラス状態及び結晶化状態における、平均熱膨張係数を示す。
【図4A】図4Aはフリット被着パターンの一例を示す。
【図4B】図4Bはフリット被着パターンの別の例を示す。
【図4C】図4Cは図4A及び4Bに示されるフリットパターンによって定められたフリット構造体を通って流れるガスの流路を示す。
【図5A】図5Aは一体構造内部マニフォールド型素子アレイの一例を示す。
【図5B】図5Bは図5Aの一体構造素子アレイの側面図を示す。
【図6A】図6Aは、押出成形された、ガスインターフェースマニフォールドGIMの一例を示す。
【図6B】図6Bは、図6Aのガスインターフェースマニフォールドにつくり込まれた、押出パーツ生地のチャネルの断面図である。
【図6C】図6Cは図6Aのガスインターフェースマニフォールドとともに用いるためのエンドキャップの一例を示す。
【図7A】図7Aは図6Aのガスインターフェースマニフォールドの上面のフリットリング(上)及びフリット/3YSZガスケットの一例(下)を示す。
【図7B】図7Bは、図7Aに示されるガスインターフェースマニフォールドに接合された、図7Aのインターフェースガスケット例を示す。
【図8】図8は、一例のガスインターフェースマニフォールドGIMに結合された、一体構造素子アレイDAM(Device Array Monolith)の一例を示す。
【図9】図9は8-燃料電池素子を備える内部マニフォールド型一体構造素子アレイDAMの別の実施形態を簡略に示す。
【図10】図10は図9の一体構造素子アレイの例の様々なコンポーネントからの重量の寄与を示す。
【図11】図11は、内部マニフォールド型一体構造素子アレイの一例における、重量比電力密度及び体積比電流密度対セル電力密度の関係を示す。
【図12】図12は、内部マニフォールド型一体構造素子アレイの一例における、フリットビードの幾何学的寸法と熱容量及び素子間隔の関係を示す。
【図13】図13は起動時費消燃料と加熱されるスタックの重量の間の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
燃料電池の動作中、一般的な固体酸化物燃料電池システムの燃料電池素子、シール及び金属フレームには、約600℃から約1000℃の動作温度がかかり得る。さらに、これらのコンポーネントは、例えば起動及び停止のサイクル中に、急速な温度サイクルを受け得る。これらのコンポーネントにかかる熱機械応力の結果、燃料電池素子または燃料電池スタックの変形、破損及び/または故障がおこり得る。本発明の実施形態の例は燃料電池素子及び燃料電池スタックのそのような変形、破損及び/または故障を最小限に抑えるためのいくつかの手法を提供する。これらの様々な手法は、適宜、個別にまたは組み合わせて用いることができ、本発明が単独の実施形態に限定されることはない。本明細書に説明される実施形態の全ては電解質、電極及びフレームを含む実施形態の説明が目的とされている。燃料電池の動作に必要な要素が特に挙げられていない場合、その要素を含む実施形態及びその要素を含まない実施形態は本発明の一部であるとされ、そのように見なされるべきである。
【0013】
その例が添付図面に示される本発明の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイDAM10(すなわちアレイ配列燃料電池電解質シートの一体アセンブリ、ここで1枚以上の電解質シートは複数の電極を支持している)は、
2つの面を有する少なくとも3枚の平電解質シートであって、相互に隣接して配置された電解質シート、
を備え、
電解質シートの内の少なくとも1枚は、電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極及び電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を支持し、電解質シートは複数の空気極及び燃料極を有する少なくとも1枚の電解質シートが他の電解質シートの間に配置されるように配列され、少なくとも3枚の電解質シートは焼結フリットによって結合され、電解質シートの間には金属フレームも双極プレートも配置されていない。一体構造燃料電池素子DAM10は複数のアレイ配列燃料電池素子を備えることができる。少なくとも本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、焼結フリットは、燃料電池素子間の気密ガス分離を提供する、焼結フリット構造体を提供する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造固体酸化物燃料電池素子アレイ(DAM)は、(i)少なくとも3枚の固体酸化物燃料電池(SOFC)素子を備え、それぞれは、それぞれの間に金属フレームまたは双極プレートが配置されることなく、接合/シール形成材料50によって相互に結合された、少なくとも一対の電極の間に挟み込まれた電解質を有する。材料50は約1000℃より低い温度で焼結して気密構造にできることが好ましい。材料50は焼結されて、固体燃料電池(SOFC)素子に直接に接合されることが好ましい。一体構造燃料電池素子アレイDAMは、それぞれが複数の電極を有する、少なくとも5枚の燃料電池素子を有することが好ましい。複数の電極は複数の空気極及び複数の燃料極であることが好ましい。一体構造燃料電池素子アレイDAMは少なくとも8枚の燃料電池素子を有することがさらに好ましい。
【0016】
したがって、本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイを作製する方法は、
(i)燃料電池素子と電解質シートの間に接合/シール形成材料のパターンが配置されるように、2枚の電解質シートの間に燃料電池素子を配置する工程。接合/シール形成材料は、燃料電池素子の一方または両方の面に、及び/または電解質シートの一方または両方の面に、塗布することができる。電解質シートは、電極を有していない電解質シートとすることができ、あるいは電極を支持することができ、したがって別の燃料電池素子の一部となることができる;および
(ii)接合/シール形成材料を焼結し、よって燃料電池素子を電極シートに、または他の素子に、直接に結合する工程。この態様でいくつかの燃料電池素子を、焼結されたシール形成材料に他のコンポーネントを全く接合することなく、燃料電池素子及び/または電解質シートが焼結されたシール形成材料に直接に結合されるように、相互に結合させて、一体構造素子アレイを形成することができる。上で論じたように、少なくとも2つの燃料電池素子が、それぞれの間に金属フレームが配置されることなく、シール形成材料によって相互に結合されるように、電解質シートは別の固体酸化物燃料電池素子の電解質シートであることが好ましい。少なくとも2枚の燃料電池素子上に(シール形成材料とも称される)接合形成材料50を用いてパターンを形成することができ、一方の素子のシール形成材料が他方の素子のシール形成材料に面するように、燃料電池素子を重ねることができる。シール形成材料50でつくられた2つのパターンは相互に接触することができる;
を含む。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、接合形成材料50、例えば、ガラス、セラミックまたはガラス-セラミックのフリットは、少なくとも3枚の電解質シートでつくられ、好ましくは3個以上の燃料電池素子を有する、一体構造SOFC素子アレイを作製するために、複数の燃料電池素子の表面上にあらかじめ定められたパターンで塗布される。そのようなフリットは、成形プロセスによるかまたは本明細書で後に説明される自動ペースト被着装置によるような、従来の手段を用いて塗布することができる。接合形成材料50には、必要に応じて金属またはセラミックのフィラーを含有する、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料、あるいはこれらの混合物があり、得られる材料50の材料または組成物は約1000℃より低い温度で焼結して気密構造体とすることができる。
【0018】
複数の電極を有する実質的に平らな燃料電池素子を、2枚の隣接する素子の間に共通ガスチャンバを設けるようにして、配置することができる。ガス流を一様にするため、チャンバを定める燃料電池素子の間隔は数ミリメートル程度(例えば、1mm〜8mmまたは1mm〜5mm)であることが好ましい。数mmレベルの間隔は、得られる焼結材料(例えば焼結ガラス-セラミックフリット)によって容易に達成される。すなわち、焼結フリットはそのような素子アレイ内のスペーサ素子として用いることができ、金属ウインドウフレームのような構造分離コンポーネントの必要はない。燃料電池素子は所要フリットパターンに対応する不活性領域を設けるような態様で作製される。すなわち、接合形成材料50は燃料電池素子の不活性領域に(例えば電解質シート上に)塗布されることが好ましい。例えば、電解質シートの周縁領域のかなりを、素子の周縁のまわりのガス通路構造の形成のための不活性領域を設けるため、プリントしないままで残す(すなわち、プリント電極を設けないでおく)ことができる。少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造素子アレイを形成するため、(それぞれが複数の電極を有することが好ましい)燃料電池素子が初めに作製される。これらの素子は、その上に接合形成材料、例えばガラス-セラミックフリットペーストの、特定のパターンの、単純または複雑なパターンが被着される、出発「基板」である。このガラス-セラミックフリットペースト(または別の適する材料)のパターンは必要な、シール形成機能、機械的支持機能及びガス分配機能が得られるように構成される。例えば、フリットはマニフォールド機能が得られるようなパターンにつくられた構造素子を形成するために用いられる。少なくとも3枚の素子が、それぞれの素子を相互に結合するような態様のフリットパターンをもつ複数の素子を共焼結することによって一体構造燃料電池素子アレイを形成するために、フリットまたは他の適する接合形成材料を用いて結合される。焼結後、一体構造燃料電池素子アレイは全体として機械的に合体して(一体になって)いて、一体構造の少なくとも1つの辺または面に、利用可能な、所要のガス吸入ポート及びガス排出ポートを有する。好ましい実施形態において、アレイは3枚より多くの、好ましくは少なくとも4枚の、燃料電池素子で構成される。
【0019】
実施形態例にしたがえば、一体構造SOFC素子アレイは軽量構造を有することが有利であり、これは従来のSOFC構造に一般に必要な(例えば、ウインドウフレーム、セル支持チューブ及び/または双極プレートのような)構造コンポーネントの排除によって達成される。軽量、したがって低熱容量であることにより、高い重量比電力密度、向上した熱機械的頑丈さ及び向上した熱サイクルレート能力が得られ、一体構造素子アレイを動作温度まで加熱するに必要なエネルギーが低減される。
【0020】
図1A及び1Bは、焼結された、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料(例えばフリット)がその上に配置されている、少なくとも1枚の燃料電池素子15を備える一体構造燃料電池素子アレイ10を示す。一体構造燃料電池素子アレイ10は、燃料電池素子15及び、焼結された、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料50によって少なくとも一部が形成された、少なくとも1つの反応チャンバ80を備える。高温に耐え得るその他の接合/シール形成材料も用いることができる。燃料電池素子15は、例えば、単セル素子(図示せず)または複セル素子(例えば図2を見よ)とすることができる。一実施形態にしたがえば、接合形成材料のパターンが形成された3枚の燃料電池素子(図1A〜1Bを見よ)が焼結され、相互に結合されて、2つの反応チャンバ(燃料(または燃料極)チャンバ80及び酸化剤(または空気極)チャンバ80')を形成する。例えば、図1Bに示される3枚の燃料電池素子15は、少なくとも1枚または2枚の、好ましくは3枚の全ての、燃料電池素子15にプリントされた焼結材料50によって相互に直接に接合または融着され、したがって、焼結材料とともに、中央燃料電池素子15の一方の側に燃料極または燃料チャンバ80を形成し、中央燃料電池素子15の他方の側に酸化剤または空気極チャンバ80'を形成する。例えば、中央燃料電池素子15の両面に接合形成材料50を被着することができ、次いで2枚の隣接燃料電池素子15を中央燃料電池素子15の上下におくことができ、次いでアセンブリ全体を焼結して一体構造燃料電池素子アレイ10を形成することができる。あるいは、3枚の燃料電池素子の全ての他の素子に面するであろう側の少なくとも一方に接合形成材料を被着することができ、3枚の燃料電池素子を相互に重ね、次いで焼結することができる。焼結材料50はガスが漏れない(気密)シールとしてはたらくこともでき、例えば、従来の熱焼結型ガラス-セラミックシール形成組成物でつくることができる。
【0021】
上述したように、電解質シート20は、これらの実施形態においてはシール形成材料でもある、接合形成材料50で形成される構造体によって、相互に連結され、相互に隔てられる。したがって、本発明の実施形態の利点の1つは、燃料電池素子を支持するため及び燃料電池素子の間に反応チャンバを形成するために、金属フレームが必要とされず、双極プレートが必要とされないことである。別の利点は、一体構造燃料電池素子アレイ10が(燃料電池素子を支持するための嵩張る金属フレームが必要とされないため及びセパレータまたは双極プレートが燃料電池素子15の間に配置されないため)比較的小さく、非常に軽量であり、低い熱容量を有することである。別の利点は、接合形成材料及び電解質が、この場合は、非常に近い熱膨張係数(CTE)を有することができ、したがって、シール/素子界面においてCTE不整合による熱サイクル中の剥離がおこらず、クラックが発生しない、熱機械的に非常に頑丈なSOFCアセンブリが得られることである。さらに、燃料電池素子15を互いに極めて近接させて配置することができ、この結果、一体構造燃料電池素子アレイ10内の充填密度が高くなり(例えば、1〜3mm間隔)、よって小型の一体構造及び(一体構造燃料電池素子アレイにかかる温度勾配が非常に小さいことによる)一様な加熱が得られる。少なくともいくつかの実施形態にしたがう燃料電池スタック10のその他の利点は、軽量及び可搬性及び優れた重量比電力密度(発明者等のモデル計算は、1kW/kgないしさらに優れた一体構造の重量比電力密度が達成可能であることを示す)である。このプレーナ技術は拡縮可能であるから、そのような高い重量比電力密度により、有益に、(i)通常の炭化水素燃料で稼働でき、(ii)小さい熱容量を有することができ、(iii)重量は短起動時間能力を決定する重要な設計パラメータであり、軽量である結果、短い起動時間が得られるから、迅速に(1〜15分で)起動でき、(iv)一体構造を動作温度まで加熱するに必要なエネルギー(燃料)は一体構造の重量に正比例するから、起動時費消燃料(すなわちDAMを動作温度まで加熱するに必要なエネルギー)を低減でき、(v)電解質シートの間隔はシール厚だけで設定され、非常に高い活性セル面積対一体構造体積比が可能になるから、高い体積比電力密度を有することができ、(vi)熱機械的結合性を向上させることができ(軽量構造は、無破損で熱機械応力に対処できる、可撓性で弾性率が低い素子で作製することができる)、(vii)費用を低減し、材料を少なくすることができ(例えば、フレーム費用がかからず、双極プレートの費用が削減される)、及び/または(viii)汚染を低減できる(例えば、揮発性クロム種による空気極汚染を心配する必要はない)、新しい部類の可搬型電源が可能になるであろう。
【0022】
燃料電池素子15の一例(図2を見よ)は、少なくとも1つの燃料極30と少なくとも1つの空気極40の間に挟み込まれたセラミック電解質シート20を有し、1本以上のバスバー42を有することができる。図2に示されるように、燃料極及び空気極は電解質シート20のバイアホールを貫通する導電性層間相互接続35によって電気的に相互接続することができる。セラミック電解質20は固体酸化物燃料電池での使用に適するいずれかのイオン伝導性材料を含むことができる。さらに詳しくは、層間相互接続35は、図2に示されるように、内室すなわち電解質シートの燃料側のそれぞれの燃料極30の延長端から、次に続く(電解質シートの空気側に配置された)空気極の延長端へと、順次に電解質シート20を横断することが好ましい。すなわち、図2に示される燃料電池素子15の実施形態は、(i)少なくとも1枚の電解質シート20,(ii)電解質シート20の一方の側に配置された複数の空気極40,及び(iii)電解質シート20の他方の側に配置された複数の燃料極30を有する。
【0023】
例えば、図1A〜1Bに示される燃料電池素子アセンブリは接合/シール形成材料50により相互に結合された3枚の燃料電池素子15を有し、これらの素子のそれぞれは複数の空気極及び燃料極を支持する電解質シートを有する。電解質シートは、(i)第1の電解質シート上に配置された空気極が第2の電解質シート上に配置された燃料極に面する(燃料または燃料極チャンバ80を形成する)か、あるいは(ii)第1の電解質シート上に配置された空気極が第2の電解質シート上に配置された空気極に面する(酸化剤または空気極チャンバ80'を形成する)ように、焼結材料50に直接に接合または融着され、反応ガスのフレームの流過及び電解質シートの間の流過を可能にするように配位される。燃料電池素子厚(すなわち電解質シートと電極の複合厚)は150μm未満であることが好ましく、2枚の素子の間隔(すなわちフレーム厚)は3mm未満、好ましくは約1mmと2mmの間である。
【0024】
電極30,40は固体酸化物燃料電池の反応を容易にするに適するいずれかの、例えば銀/パラジウム合金のような、材料を含むことができる。燃料極及び空気極は異なるかまたは同様の材料を含むことができ、材料または設計への制限は考えられていない。燃料極及び/または空気極は、固体酸化物燃料電池での使用に適するいずれかの幾何学的パターンをなすことができる。電極はセラミック電解質の表面上に表面と平行に配置されたコーティングまたはプレーナ材料とすることができる。電極は複数の独立電極を含むパターンで配列することもできる。例えば、燃料極は電解質の一方の側の単一連続コーティングとすることができ、あるいは、パターンをなして、またはアレイに配置された、ストリップのような、複数の個別素子とすることができる。
【0025】
燃料極30は、例えば、イットリア、ジルコニア、ニッケルまたはこれらの組合せを含むことができる。広範なその他の電子伝導体またはイオン伝導体、あるいは電子伝導体とイオン伝導体の混合物も用いることができる。そのような伝導体は、例えば、没食子酸ランタン、セリアまたはその他の希土類がドープされたジルコニア、単独でまたは組み合わせて、銅、鉄、コバルト及びマンガンである。燃料極の一例は、ニッケル及び、例えばイットリアドープジルコニアのような、電解質材料を含有する、サーメットを含む。
【0026】
空気極40は、例えば、イットリア、ジルコニア、マンガン酸塩、コバルト酸塩、ビスマス酸塩またはこれらの組合せを含むことができる。空気極材料の例には、イットリア安定化ジルコニア、マンガン酸ランタンストロンチウム及びこれらの組合せを含めることができる。
【0027】
電解質20は、ジルコニア、イットリア、スカンジア、セリアまたはこれらの組合せを含むことができ、必要に応じて、Y,Hf,Ce,Ca,Mg,Sc,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Ti,Sn,Nb,Ta,Mo,Wの酸化物またはこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つのドーパントをドープすることができる。電解質20はその他のフィラー及び/または処理材料を含有することもできる。図2に示される電解質20の例は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)とも称される、イットリアがドープされたジルコニアからなる平シートである。固体酸化物燃料電池の電解質材料は市販されており(米国ニューヨーク州ペンヤン(Penn Yan)のFerro Corporation)、当業者であれば適切なセラミック電解質材料を容易に選択できるであろう。
【0028】
これらの実施形態において、材料50は燃料電池素子15に直接に接合される。例えば、材料50は電解質20上に、成形されるか、被着されるか、絞り出されるか、あるいは「塗り付け」られるか、または「プリント」され、ガラス-セラミック組成、セラミック組成、ガラスフリット組成またはガラス組成を有することができる。シール及び/または内部マニフォールドを設けるために、被着された材料50は厚さが3mm未満であることが好ましく、厚さが2mm未満で幅が2mm未満であることが好ましい。被着された材料の幅は3mm未満であることが好ましく、厚さが3mm未満で幅が2mm未満であることが好ましい。しかし、被着された材料50は高応力領域において3mmをこえる幅にわたって電解質シート上に拡がり、向上した構造保全性を燃料電池素子に与えることもできる。材料50は、材料を電解質シート20に直接に融着することにより、複数の燃料電池素子15に融着される。材料50はガラスまたはガラス-セラミックのフリットを含むことができ、さらにセラミック材料及び/または熱膨張係数整合フィラーを含むことができる。(ガラスフリット、セラミック材料、または他の適する「シール形成」材料を含む)材料50で形成された焼結構造体では、フェライトステンレス鋼燃料電池コンポーネント(例えばステンレス鋼フレームまたはステンレス鋼双極プレート)によって一般に生じるクロムスケール形成の問題がおこらない点で有利である。材料50で形成された焼結構造体はシールとしてはたらき、したがって、一体構造燃料電池素子アレイ10には、フレームと燃料電池素子の間に追加のシールまたはフレームは必要にならない。
【0029】
材料50によって形成される焼結接合形成構造体は、電解質シート20と同等の膨張を与えるために電解質シート20のCTEに近いCTEを有することが望ましい。電解質シート20が不完全安定化ジルコニア(例えば3YSZ)でつくられていれば、材料50は約9〜13ppm/℃、好ましくは10〜12ppm/℃のCTE(CTE=ΔL/LΔT)を有することが好ましい。そのようなCTEは、例えばマグネシア(MgO)-スピネル(MgAl2O4)系内の組成によるか、あるいは材料50が3YSZまたは他の不完全安定化ジルコニア組成物を含んでいれば、実現することができる。
【0030】
図1A〜1Bは焼結材料50が、1つ以上の「ビスケット形」ガス膨張チャンバ52Aのような、複数のチャンバを形成できることを示す。これらのチャンバは必要な反応ガスを燃料極及び/または空気極に供給するために用いられる。(本実施形態におけるガス膨張チャンバ52Aのような)分配チャンバは吸入オリフィスを介して反応ガスチャンバに流入するガスを均等に分配するに役立ち、排出チャンバ52Bは集められた排出燃料を最終排出口に送り込むための膨張域を提供する。くさび形または「ビスケット形」のガス膨張チャンバにより、一様な流れを確保するに十分な摩擦抵抗が付加される。
【0031】
図1A〜1Bに示される、材料50で形成された焼結構造体は複数の内壁54A及び外壁54Bを有する。これらの壁の内のいくつかは必要に応じて設けられ、単外周壁構造でも機能するであろう。壁は、例えば、(i)電解質シート材料(例えば3YSZ)から適切な「壁」構造がつくられている電解質シート生地を成形することによるか、または(ii)少なくとも1つの燃料電池素子15の電解質シート20上(好ましくは複数の燃料電池素子15の電解質シート20上)に適切な接合形成材料(シール形成材料)50の層(例えば、薄いチューブラフィルム層)を被着し、それぞれの電解質シート20をこのシール形成材料と接触させて配置し、次いで得られた燃料電池素子アセンブリを加熱して電解質シート20を材料50で形成して得られたシール構造に融着し、よって複数の燃料電池素子を相互に結合することによって、作製される。(材料50で形成された)内壁54Aの内のいくつかは燃料の反応ガスチャンバへの流入及び燃料極への接触を可能にするための開口55を有する。本実施形態において、燃料は燃料吸入オリフィスを通って隣接素子15間に入り、次いでガス膨張チャンバ52Aを通って、電解質シート20(シート20A及び20B)で形成された燃料極チャンバ80に流れる(矢印の方向を見よ)。燃料は次いで第2のセットの開口55を通って排出流チャンバ52Bに流入し、次いで排出(燃料)オリフィス85を介して排出される。本実施形態において、排出オリフィス85はフレーム50の燃料吸入オリフィス70から最も遠くに配された区画(排出側)に設けられる。同様に、空気極チャンバ(酸化剤チャンバ)が2枚の隣接電解質シート20(シート20B及び20C)で形成されるであろう。もちろん、3枚より多くの燃料電池素子をこの態様で結合して、一体構造燃料電池素子アレイ10を形成することもできる。
【0032】
例えば、それぞれが少なくとも1枚の他の隣接燃料電池素子にそれぞれの間に配置された焼結シール形成材料50によって結合された、10枚の燃料電池素子15からなる一体構造燃料電池素子アレイは、9つの反応ガスチャンバを有するであろう。これらの反応ガスチャンバは交互に酸化剤チャンバ80'及び燃料チャンバ80となる。一体構造燃料電池素子アレイの前面側及び背面側に配置された燃料電池素子15を用いる代わりに、2枚の(電極がプリントされていない)電解質シートを用い得ることにも注意されたい。これらの電解質シートはそれぞれの隣接燃料電池素子に材料50によって結合/封着されて最初及び最後の反応ガスチャンバを形成するであろう。得られた一体構造燃料電池素子アレイ10には金属フレームが無く、燃料電池素子間の追加のセパレータ板及び双極プレートが無い。少なくとも複数の燃料電池素子が単一の燃料吸入口及び/または単一の燃料排出口及び/または単一の酸化剤吸入口及び/または酸化剤排出口を共用することが好ましい。全ての燃料電池素子が、単一の燃料吸入口(ポートP1)、単一の燃料排出口(ポートP4)、単一の酸化剤吸入口(ポートP2)及び単一の酸化剤排出口(ポートP3)を共用することが好ましい(図5Bを見よ)。例えば、全部で4つのポート(2つが吸入口で2つが排出口)を、一体構造燃料電池素子アレイの一方に側に便宜良く配置することができる。語句「単一の燃料吸入口」、「単一の燃料排出口」、「単一の酸化剤吸入口」及び/または「単一の酸化剤排出口」は、一体構造燃料電池素子アレイ(DAM)10の吸入口及び排出口を指す。もちろん、一体構造燃料電池素子アレイの1つより多くの燃料吸入口または燃料排出口及び一体構造燃料電池素子アレイの1つより多くの酸化剤吸入口または酸化剤排出口を用いることもできる。
【0033】
シール/接合形成材料50はフレーム外壁54B及びフレーム内壁54Aによって形成される複数本のチャネル53も有することができる構造体を形成することができ、この構造体は燃料電池素子15にかかる温度勾配を最小限に抑えるため、熱交換機として利用することもできる。すなわち、図1Aは、フレーム内壁54Aとフレーム外壁54Bの間にフローチャネル53を設けることによって一体構造燃料電池素子アレイ10への反応ガス(燃料及び/または空気)の供給のための内部マニフォールドがフレーム50の内部に設けられ得ることを示す。チャネル53は反応ガスチャンバ80に流入する反応ガスのある程度の予備加熱のための手段を提供し、複セル素子15を確実に一様加熱するに役立つ。本実施形態の一体構造燃料電池素子アレイ内の反応ガス(例えば燃料)の流れの方向は矢印で示されている。燃料は、例えば燃料吸入オリフィス70を通して燃料電池素子15に供給される。燃料は燃料吸入オリフィスから、フローチャンバ52Aを通って、2枚の電解質シートで形成される燃料極チャンバ80に進み、次いで排出流チャンバ52Bに入り、次いで排出流チャンバ52B及び排出フローチャネル53を介し、排出開口85を通して、排出される(矢印の方向を見よ)。図1Bに示されるように、複数のチャネル53あるいは開口55を含むチャンバを有する焼結構造体を接合形成材料50で形成すれば、反応ガス流のための複数のチャネルが得られると同時に、高いOFA(開口率)により焼結構造体の密度が低められ、表面積が増加するという利点が得られる。焼結材料50では相互に隔てられた薄い外壁及び内壁が用いられるから、電解質シート間の焼結構造体は比較的軽く、熱伝導性である。したがって、このタイプの構造により、良好なガスフロー及び入り燃料と費消後燃料の間の熱交換が容易になる。
【0034】
ガラス-セラミックフリット接合形成材料50の組成のいくつかの例が下の表1に与えられる。接合形成材料50の熱膨張係数は10.5〜11.5ppm/℃の範囲にあることが好ましい。これらの組成例は本明細書に開示される実施形態のいずれにも用いることができる。
【表1】
【0035】
与えられた接合形成材料組成の内の1つ以上の成分に対して(重量%の)数値が表1に与えられていない場合、その成分は有意な量で存在していない。すなわち、その成分の対応重量%は約0.1重量%より少なく、好ましくは0重量%である。例えば、第1の組成例(組成129NYD)は、BaO,ZnOまたはTiO2を基本的に含有していない。
【0036】
フリット作製例
所望の組成が、一般に1600℃で3時間、融解され、注型され、固化され、破砕され、粗粉砕されて、+325〜−20メッシュの供給原料が作製される。供給原料は、クールター計数器上で測定して10μmと15μmの間のD50を達成するため、アルミナジャー内でアルミナ粉砕媒体を用いるボールミルにかけた。所望のD50目標に達した後、フリットを−200メッシュの篩にかけて、大きな粒子を取り除いた。
【0037】
ペースト作製例:通常の結合剤及び溶剤を用いてフリットペーストを作製することができる。結合剤の例には、適切な溶剤内の、エチルセルロース、プロピレンカーボネート及び様々な分子量のポリビニルブチラールがある。下の表2は、エチルセルロースを基にしたペーストビヒクルの例(3.7重量%エチルセルロースビヒクル)を示す。
【表2】
【0038】
この例のフリットペーストは一般に50〜65体積%のガラス-セラミック粉末と50〜35体積%のビヒクルとしてバッチ化される。ビヒクル及びフリットは、成分を完全に混合して最終フリットペーストを形成するため、遊星形ミキサーで混合される。
【0039】
図3は129NTRと名付けられた結晶化(フリット)組成(表1の例4を見よ)についての平均熱膨張係数を示す。825℃で2時間加熱されたフリットバーAは、続いて軟化がおこるガラス遷移伸びピークをもつ、ガラス態挙動を示す。825℃において長時間加熱すると結晶化がおこる。825℃で72時間加熱したフリットバーBはガラス遷移の形跡を示さず、フリットバーが実質的に結晶化していることを示す。一体構造SOFC素子アレイ10は、結晶化した材料がYSZ電解質と十分に整合する膨張を有する場合に、完全に結晶化したフリットにより優れた熱機械的頑丈さを有する。例えば3YSZについて、平均熱膨張係数は750℃において110×10−7/℃である。
【実施例】
【0040】
本発明は以下の実施例によってさらに明解になるであろう。
【0041】
実施例1
本実施例では、複数枚のフリット結合燃料電池素子を用いる、超低熱容量一体構造燃料電池素子アレイ10を説明する。
【0042】
SOFC4ポート一体構造
以下は一体構造SOFC素子アレイ10の一実施形態の作製のためのプロセスの説明である。本実施形態の一体構造SOFC素子アレイ10は、ブランク電解質シートの間に挟み込まれた2枚の燃料電池素子を有する内部マニフォールド型一体構造である。
【0043】
初めに、図2に示される素子と同様の、平らで、機械的可撓性の、複セル燃料電池素子15を2枚作製した。本実施形態例において、燃料電池素子15の寸法は12cm×15cmである。燃料電池素子15は、パターン付フリット(材料50)の被着に利用できる、無プリント縁を有し(すなわち、縁の少なくとも一部において、縁には電極またはバスバーがなく)、よって材料50は活性電極領域と接触しない。一体構造(一体構造燃料電池素子アレイ10)を作製するための工程は以下の通りであった:
(1)自動計量分配により材料50(本実施形態ではフリットペースト)の連続線を図4Aに示されるパターンで燃料電池素子15の一方の側に塗布した。このパターンは、デバイスを平らにしておくに役立つように、デバイスの両側で同等である。フリットペースト被着層における欠陥形成を避けるため、ハンドリング中、燃料電池素子15は裏返して、嵌込みボードに置いた。乾いていないフリットを無接触で収容するため、嵌込みボードには通し穴を設けた。次いで。材料50(本実施例では同じフリットペースト)の第2の層を図4Aに示される同じパターンで燃料電池素子15の他方の側に塗布した。薄い可撓性電解質シートを有する燃料電池素子に対しては、一様に平らな(湾曲していない)燃料電池素子の維持に役立たせるため、燃料電池素子の両側に材料50の対称な連続層を設けることが好ましい。次いで、共通なパターンの材料50をもつ燃料電池素子15を120℃で15分間乾燥させた。乾燥後、2枚のジルコニアフェルト材料の間にパターン付燃料電池素子15を置いた。上になったジルコニアフェルト材料の上に、素子を平らにしておくに役立つ重しとして、180gの高密度アルミナセッターを載せた。次いで、所望の特性を達成するに必要な加熱スケジュールにしたがって燃料電池素子を加熱して、材料50(例えばフリットパターン)を焼結した。焼結中、素子を平らにしておくに役立たせるため、燃料電池素子に荷重をかけた;
(2)別のDAM層を工程(1)で説明したようにして処理した。例えば、2枚の、長さと幅が同じ(例えば15cm×12cmの)可撓性3YSZブランクシートの両側に図4Aに示されるパターンでフリットペーストを塗布した。次いで、2枚の電解質シート20を上述したように加熱した。このようにして、図4Aに示されるパターンの材料50の焼結層を有する2枚の燃料電池素子15及び2枚のブランク3YSZシートを得た;
(3)次いで、ブランク3YSZシートの一方の側に(先にパターン付きで加熱された層の上に)直接に、材料50の図4Bに示される不連続フリットパターンを被着した;
(4)燃料電池素子15のそれぞれを、燃料電池素子15の空気極側がブランク3YSZシートの図4Bに示される(工程(3)で得られた)不連続パターンを有する側に確実に面するように注意を払いながら、図4Bのパターンをもつブランク3YSZシートに慎重に合わせた。上向きの燃料電池素子に、小量の材料50(例えばフリットペースト)を用いて、加熱フリット層に2つの銀タブ40を接合し、(本明細書ではリードとも称される)銀タブのそれぞれは燃料電池素子15の空気極側に配置された素子バスバー42の1本に電気的に接続される(本実施形態において、バスバー42は燃料電池素子の縁端から先には延び出していない)。銀タブ、フリット及びバスバーの間の物理的接触をさらに強めるために重しが用いられる。次いで、素子/電解質シート対を加熱して素子と電解質シートの間の(不連続パターンで塗布された)フリットを焼結した。このようにして、燃料電池素子とブランク電解質シートの間で不連続フリットパターンが焼結されている、焼結燃料電池素子/電解質シート対を形成した。焼結された図4Bのパターンは燃料電池素子と合わせて、反応ガス流路、ガスマニフォールド、ガス流一様性を与えるための制流部、及び燃料電池素子間及び/または燃料電池素子とブランク電解質シートの間のガス吸入オリフィス及びガス排出オリフィスを提供する;
(5)それぞれの素子/電解質シート対の素子露出側(燃料極側)に、既存の加熱連続フリットパターン層の上で、不連続フリット層を塗布した。本実施形態においては、図4Bの不連続パターンを再び用いた;
(6)銀リードと素子バスバーの間の電気的接触を与えるため、(素子/電解質)シート対の両側に小量の銀-パラジウムペーストを塗布した;
(7)2つの素子/電解質シート対を、露出素子の燃料極側が確実に互いに面するように注意を払いながら、慎重に(揃えて重ね)合わせて、素子アレイを形成した。未加熱不連続フリットパターンは2つの対の間に配置される。次いで、素子アレイを加熱して、一体構造素子アレイを形成した。一体構造素子アレイは、一体構造の、内側に配置された2枚の燃料電池素子及び両面をなす側に配置された2枚のブランク電解質シートを有する。
【0044】
一体構造素子アレイDAMはこれで完成である。DAMの3辺が封じられ、燃料及び空気の吸入及び排出のための4つのポートが底辺に設けられる。フリットによって定められるガス流路が図4Cに示される。4つのポートは、単燃料吸入口(P1)、単燃料排出口(P2)、単酸化剤吸入口(P3)及び単酸化剤排出口(P4)である(図5Bを見よ)。
【0045】
本実施形態のDAMは組成が128MTR(表1の例4)のガラス-セラミックフリットを用いて作製した。フリッティング工程は825℃の温度で2時間実施した。完成DAMを図5A及び5Bに示す。
【0046】
あるいは、燃料電池素子及び電解質シートのそれぞれは、接合形成材料50の連続パターンでパターン付けして焼結することができる。次いで、燃料電池素子と電解質シートが積み重ねられたときに、2枚の燃料電池素子の間及び燃料電池素子とブランク電解質シートの間に接合形成材料50の不連続パターン(例えばフリット)があるように、不連続パターンの接合形成材料を素子及び/または電解質シートに塗布することができる。次いで、一体構造デバイスアレイを加熱して不連続パターンの接合形成材料50を焼結して、一体構造素子アレイ10を形成することができる。得られた一体構造素子アレイDAMは、3辺で封止され、底辺に燃料及び空気の吸入及び排出のためのポートP1,P2,P3.P4が配置される。フリットで定められるガス流路は図4Cに簡略に示される。
【0047】
ガス相互接続マニフォールド
一体構造素子アレイDAM10に酸化剤ガス及び燃料ガスを供給するため及び、必要に応じて、排出ガスを取り込むため、ガスインターフェースマニフォールド(GIM)100が素子アレイモノリスDAMの一辺または一面に結合される。ガスインターフェースマニフォールド(GIM)100は少なくとも、少なくとも一辺または一面110Aにおいて、ガス相互接続マニフォールドに結合された供給管98Aを通してガス源からガスが供給され、さらに、ガスインターフェースマニフォールドは別の一辺または一面110Bにおいて一体構造素子アレイDAM10に結合される。本実施形態において、排出ガスは別の辺または面110Cにおいてガスインターフェースマニフォールド(GIM)100に結合された供給管98Bを介してガスインターフェースマニフォールドを出ることができる。ガスインターフェースマニフォールド100は他の所望の機能、例えば熱交換を与えるための機能及び/または改質を備えるように構成することができ、ガスインターフェースマニフォールドはガラス、セラミックまたはガラス-セラミックの押出成形で作製することができる。ガスインターフェースマニフォールド100は、可能な限り軽量の構成で作製され、それでも一体構造素子アレイとガスインターフェースマニフォールドの間の可能な最善の熱容量整合を可能にするに十分な機械的結合性を提供することが望ましい。
【0048】
本実施形態の押出成形ガスインターフェースマニフォールド100は、実施例1に説明される一体構造素子アレイ10との結合に適する。本実施形態の押出成形ガスインターフェースマニフォールド100は以下のようにして作製した:
1.初めに、重量で3%のメチルセルロース結合剤を含む3YSZ材料の押出バッチを押出成形に適するコンシステンシーになるまで水と混合した。次いで、ダイ、例えばピン間隔が16ミル(0.406mm)の、200セル/平方インチダイ(31セル/cm2ダイ)を通してバッチをラム押出しした。断面が1.25インチ×0.25インチ(31.8mm×6.4mm)の長方形押出品を含む‘200/16’生押出品を形成するために長方形マスクをダイに前に置いた。8インチ(203.2mm)長区画にパーツを刻み込んだ;
2.押し出して乾燥させた後、図6Aに示されるガスインターフェースマニフォールド100を形成するためにパーツ生地を加工した。パーツ生地の面A(前面)のチャネルを図6Bの前面図に示されるようなパターンで差し込んだ。パーツ生地の面AはGIM100の面110A(前面)に対応する;
3.押出パーツの中点に切込みをつくり、吸入チャネルと排出チャネルの間に気密障壁を設けるために切込み内の全てのチャネルを差し込んだ。次いで、加工されたパーツの面B(上面)に4つの開口112A,112B,112C,112Dを作製した。加工後に、パーツを1450℃に加熱して稠密になるまで焼結させて、完成ガスインターフェースマニフォールド100を得た。ガスインターフェースマニフォールド100は、流入燃料ガスのための開口111A及び流入酸化剤ガスのための開口111Bを有する、面110A(前面)を有する。ガスインターフェースマニフォールドの面110B(上面)の4つの開口112A,112B,112C,112Dは、実施例1で説明したDAM10の底辺に配された4つのポートP1,P2,P3,P4(燃料吸入FI及び空気吸入AI,及び燃料及び空気の排出ポートである2つの出口FO,AO)に結合することができる。ガスインターフェースマニフォールド100は、排出燃料ガスのための開口113A及び排出酸化剤ガスのための開口113Bを有する、面110C(背面)も有する。
【0049】
エンドキャップ
次に図6Cに示されるエンドキャップ120を作製した。本実施形態において、エンドキャップはステンレス鋼(446SS)を加工して作製した。他の材料(例えばセラミックまたはガラス-セラミック)を用いることもできる。一般に、高温のSOFC環境におけるSSコンポーネントの動作に対しては、金属の表面からのクロミア(酸化クロム)の揮発を軽減するためのコーティングが必要である。実施例1に実施形態において、GIM100はDAM10より低温にあるエンドキャップとともに動作するように設計される。エンドキャップのステンレス鋼の動作温度が、本実施形態におけるように、約600℃より低ければ、クロミア揮発は実質的に抑えられ、クロミア揮発を軽減するコーティングは必要とされない。
【0050】
エンドキャップ120は適切な材料、例えばガラスフリットまたはガラス-セラミックフリットを用いてガスインターフェースマニフォールド100に結合することができる。本実施例において、フリット材料はアルミナホウケイ酸フリットとした。本実施形態においてはエンドキャップの動作温度が600℃より低温であるような仕様であるため、本例のホウ素含有フリットの仕様が「可能」になる。ガスインターフェースマニフォールド110の開口111A及び11Bがエンドキャップ120の対応する開口120A、120Bに結合するように、ガスインターフェースマニフォールド100の面110Aの端面突起にエンドキャップの1つを気密に封着するためにペースト状のガラスフリットを塗布した。同様に、(開口113A及び111Bをエンドキャップ120の開口120A及びBに結合させて)ガスインターフェースマニフォールド100の面110Cの端面突起に別のエンドキャップを気密に封着するためにペースト状のガラスフリットを塗布した。エンドキャップ/ガスインターフェースマニフォールド100アセンブリを850℃で加熱してフリットを焼結し、2つのエンドキャップ120をガスインターフェースマニフォールド100に結合した。
【0051】
結合DAM-GIMアセンブリ
一体構造素子アレイDAM10とガスインターフェースマニフォールド100も結合させた。接合形成を容易にするため、初めに、実施例1の4ポートDAM10の作製に用いたBaO-Al2O3-SiO2フリットで、図7Aに示される構造の、アダプタガスケット130を作製した。長方形3YSZメンブランの両面にフリットペーストを図5Cに示されるパターンに対応するパターンで塗布し、900℃で2時間加熱して、接合形成材料(本実施形態ではBaO-Al2O3-SiO2フリット)を完全に結晶化させた。一体構造素子アレイ(DAM10)とガスインターフェースマニフォールド(GIM100)を結合させるため、以下の工程を実施した:
(1)4つの長方形フリットリング(A',B',C',D')を図7Bに示されるパターンでガスインターフェースマニフォールド100上に被着した。本実施形態において、フリットリングのそれぞれは、ガスインターフェースマニフォールド100の面110Bの4つの開口112A,112B,112C,112Dの1つを囲み、中心を合わせて配置した。リング付DIM100を、ガラス-セラミックが実質的にガラス態のままであるように、825℃で2時間加熱した;
(2)アダプタガスケット130の、ガスケットの一方の側で、「内部」リングにフリットペースト層を塗布した。ペーストが乾かないうちに、実施例1の一体構造素子アレイ10に、それぞれのリングが一体構造素子アレイの底辺の4つのガスポートの1つを囲むように注意を払いながら、ガスケットを接合した。ガスケット130が貼り付けられている一体構造素子アレイ10を、加熱プロセス中に一体構造素子アレイ10を垂直に保持するため、アルミナファイバボード治具に置いた。次いで、825℃の温度で2時間フリットを焼結して結合を形成することで、ガスケット130を一体構造素子アレイ10に永久結合させた;
(3)ガラス態リング(A',B',C',D')の上でガスインターフェースマニフォールド100にフリットペースト層を塗布した。アダプタガスケット130が結合されている一体構造素子アレイ10にガスケットリングをペースト層に合わせて接合した。組み合わせたアセンブリを900℃で2時間加熱してフリットを焼結及び結晶化させた;
(4)フィードチューブ(供給管)98A及び98Bを、それぞれのエンドキャップの開口122A,122Bに挿入して、燃料電池アセンブリを完成させた。完成した構造を図9に示す。
【0052】
実施例2
本実施形態及び別の実施形態の設計の一体構造内部マニフォールド型素子アレイ10は非常に優れた重量比電力密度及び体積比電力密度の可能性を提供する。一体構造素子アレイ10の電力出力は、セル電力密度、素子当たりの活性セル面積及び一体構造素子アレイ10内の素子数を含む、多くのパラメータの関数である。重量比電力密度は一体構造素子アレイ10の重量で割った電力出力であり、主として一体構造素子アレイ10の構成に用いたフリットビード重量の関数である。体積比電力密度は一体構造素子アレイ10の体積で割った電力出力であり、主としてデバイス-デバイス間隔の関数である。
【0053】
図9に簡略に示される一体構造素子アレイ10は、2枚の12cm×15cm電解質シート20に挟み込まれた8枚の12cm×15cm燃料電池素子15を備える。燃料電池素子15及び電解質シート20は焼結フリットによって結合されている。本実施形態のDAM10の様々なコンポーネントのDAM10の重量への寄与が図10に示されている。図10に対応するDAM10は、全8枚の燃料電池素子15,346cm3の体積,d=2mmの素子間隔,183gの全重量,及び燃料電池素子当たり90cm2の活性面積を有する。図11はセル電力密度の関数としての重量比電力密度PMD及び体積比電力密度VPDの関係を示す。本モデルについての比熱は654J/kg-Kであり、燃料はガソリンである。本モデルでは熱損失がないと仮定している。本一体構造素子アレイ構造により、0.5W/cm2の一般的なセル電力密度において、1kW/L及び2kW/kgの極めて高い電力密度が達成可能である。これは、単位重量(3.93cm2/g)及び単位体積(2.08cm2/cm3)当たりに利用できる大きなセル面積による。
【0054】
本実施形態のDAM10はガスインターフェースマニフォールドに連結され、断熱構造体内に収められている。
【0055】
上記アセンブリを囲む断熱構造体がさらに備えられる。
【0056】
実施例3
一体構造素子アレイ10の軽量設計は作業車を含む可搬用途での使用に十分に適する。車輌用途に対し、重要なパラメータのいくつかは、起動時間及び起動時費消燃料である。先述したように、本明細書に説明される実施形態においては、一体構造素子アレイにおけるフレームと素子の間の熱容量不整合が小さいことにより本質的に耐熱衝撃性が向上しているから、起動時間が改善される。起動時費消燃料は一体構造素子アレイ10のスタック熱損失によって主として決定される。第1近似としてスタックよる熱損失を無視する単純なモデルにおいて、スタックを動作温度に加熱するのに必要な燃料重量に対して関係式:
【数1】
【0057】
が成立する。ここで、mfは燃料/ガソリンの重量(グラム)、nDAMはスタックの一体構造素子アレイの数、(mCp)DAMは一体構造素子アレイの熱容量(J/K)、LHVfは燃料の低位発熱量(ガソリン:42MJ/kg)、Tは目標温度(例えば730℃)、Tαは周囲温度(20℃)、AFRは空気/燃料比(ガソリン:14.7kg-空気/kg-燃料)、Cp,空気は空気の比熱(1040J/kg-K)である。
【0058】
構成の共通のDAM材料についての比熱容量を表3に挙げておく。
【表3】
【0059】
実施例2の8素子DAM10に対し、熱容量は主としてフリットビード重量の関数である。単純なモデルでは、ビード断面形状を、素子表面と接触しているビードに対して半円として、または隣接する2つのフリットビード層の間に挟み込まれるビードに対して円として、近似することで、DAMの熱容量をフリットビード形状寸法に関係付けることができる。図12は、フリットビード形状寸法、DAM熱容量及び素子(または燃料シート)間隔の間の関係を示す。本図において、直線のグラフはIMDA熱容量(IMDA HC)に対応し、曲線のグラフはデバイス間隔(DS)に対応している。最適なガス流圧力及び一様分布には約1mm〜2mmの燃料電池素子15間隔dが好ましいと推定される。0.38mmのフリットビード半径において、デバイス間隔dは1.5mmであり、DAM比熱容量は654J/kg-Kである。図13は、比熱容量が654J/kg-KのDAM10についての、スタック重量と起動時費消燃料体積の間の関係を示す。
【0060】
ガソリンエンジン自動車用SOFCにおいてスタックを動作温度まで加熱するに必要なエネルギーに対する誘引目標は燃料1ガロン(3.7853L)未満である。ガソリン1ガロン未満の目標起動時費消燃料を達成するには要加熱重量が約20kg未満のスタックが必要である。20kgにおいて50kWの出力を達成するにはIMDAに対し2.5kW/kgの重量比電力密度が必要である。図11を参照すれば、内部マニフォールド型DAM10でDAM重量比電力密度が2.5kW/kgに達するには、0.6W/cm2を若干こえるセル電力密度が必要であろう。
【0061】
スタック加熱に必要な燃料を低減するための別の手法はスタックを熱的に独立したサブユニットに分割し、縦続態様でサブユニットを加熱することであり、1つのサブユニットを、余分の燃料を費消せずに、加熱するために別のサブユニットからの廃熱を用いることができる。例えば、1つ以上の一体構造燃料電池がサブユニットのそれぞれに対応することができ、一体構造燃料電池素子は縦続起動を提供するように配列または配置される。もちろん、分割スタック構成、起動時費消燃料及び駆動サイクル要件の設計に対して最善の選択を迫る起動時間及び起動時費消燃料の最適な相互関係があるであろう。
【0062】
本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本発明はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0063】
10 一体構造燃料電池素子アレイ
15 燃料電池素子
20,20A,20B,20C 電解質シート
30 燃料極
35 導電性層間相互接続
40 空気極
42 バスバー
50 接合/シール形成材料
52A ガス膨張チャンバ
52B 排出流チャンバ
53 チャネル
54A 内壁
54B 外壁
55 開口
70 燃料吸入オリフィス
80 燃料チャンバ
80' 酸化剤チャンバ
85 排出(燃料)オリフィス
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、2009年6月26日に出願された米国仮特許出願第61/220783号の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は全般的には燃料電池アレイアセンブリに関し、さらに詳しくは、一体構造固体燃料電池アレイに関する。
【背景技術】
【0003】
固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは炭化水素燃料の電気への高効率変換に有望である。定置用途目的の代表的なSOFCスタックは、大きくて重く、従来の発電装置に比較して重量比電力密度が劣っている。従来のSOFC素子アセンブリは、肉厚の大きいセラミックのプレートまたはチューブ、金属支持体、金属フレーム及び双極プレートのような、大きくて重いコンポーネントを備える。これらのコンポーネントは高温動作にともなう熱歪に耐えるように選ばれることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この結果、従来のSOFC素子アセンブリの重量比電力密度、温度サイクリングレート及び起動時間性能には限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイは、
2つの面を有する少なくとも3枚の平電解質シートであって、相互に隣接して配置された電解質シート、
を備え、
電解質シートの内の少なくとも1枚が電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極及び電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を支持し、この少なくとも1枚の複数の空気極及び燃料極をもつ電解質シートが他の電解質シートの間に配置されるように配列され、少なくとも3枚の電解質シートは焼結フリットによって結合され、電解質シートの間に金属のフレームまたは双極プレートは配置されていない。一体構造燃料電池素子アレイは、少なくとも1cm2/cm3の単位体積当たり活性セル面積を有することが好ましい。
【0006】
本発明の一実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイは、
少なくとも3枚の平電解質シート支持燃料電池素子、
を備え、燃料電池素子のそれぞれは、
(i)2つの面を有する電解質シート、
(ii)電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極、及び
(iii)電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極、
を有し、燃料電池素子は、一枚の燃料電池素子の燃料極側が別の一枚の燃料電池素子の燃料極側に面し、一枚の燃料電池素子の空気極側が他の一枚の燃料電池素子の空気極側に面するように、配列され、少なくとも3つの燃料電池素子(それぞれの燃料電池素子は単一電解質シート上に配列された複数の燃料電池を有することができる)は、焼結フリットによって結合される。いくつかの実施形態にしたがえば、少なくとも3枚の燃料電池素子は共通のガス吸気ポートを共有することが好ましい。
【0007】
本発明の別の実施形態は、一体構造燃料電池素子アレイを作製する方法において、
(i)電解質シートを有する少なくとも3枚の燃料電池素子を作製する工程、
(ii)燃料電池素子に内の少なくとも2枚の表面にガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料のパターンを形成し、よって複数枚のパターン付燃料電池素子を作製する工程、及び
(iii)パターン付燃料電池素子のそれぞれを、焼結されたガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料によって3枚の素子が相互に永久結合し、よってそれぞれの素子の間には金属フレーム、金属電流ディストリビュータプレートまたは金属双極プレートを配置されることのないように、少なくとも1枚の他の素子に焼結する工程、
を含む方法である。
【0008】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を含み、また添付図面も含む、本明細書に説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。
【0009】
一体構造SOFC素子アレイの例示実施形態の利点のいくつかは、(i)用途に基づいてスケーラブルであり(燃料電池素子の寸法を大きくすることも小さくすることもできる)、一体構造素子アレイ内の素子の数を増やすことも減らすこともでき、(ii)起動時費消燃料を最小限に抑えるための重量比電力密度への高まる要求に応じるに必要な大きく低減された重量を有するから、移動体/可搬用途に特に適していることである。すなわち、一体型SOFC素子アレイの少なくともいくつかの例示実施形態の利点のいくつかは、高い重量比電流密度及び低い熱容量である。別の利点は、同じセル電力密度において従来のSOFCスタックと比較して高い体積比電力密度による、高効率素子充填密度である。
【0010】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明が、本発明の実施形態を提示しており、特許請求されている本発明の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解のために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は本発明の様々な実施形態を示し、記述とともに、本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは本発明の一実施形態の上面図である。
【図1B】図1Bは図1Aに示される本発明の実施形態の側面図である。
【図2】図2は、図1A及び1Bの実施形態に用いられる、燃料電池素子の一例を示す。
【図3】図3はフリットの一例の、ガラス状態及び結晶化状態における、平均熱膨張係数を示す。
【図4A】図4Aはフリット被着パターンの一例を示す。
【図4B】図4Bはフリット被着パターンの別の例を示す。
【図4C】図4Cは図4A及び4Bに示されるフリットパターンによって定められたフリット構造体を通って流れるガスの流路を示す。
【図5A】図5Aは一体構造内部マニフォールド型素子アレイの一例を示す。
【図5B】図5Bは図5Aの一体構造素子アレイの側面図を示す。
【図6A】図6Aは、押出成形された、ガスインターフェースマニフォールドGIMの一例を示す。
【図6B】図6Bは、図6Aのガスインターフェースマニフォールドにつくり込まれた、押出パーツ生地のチャネルの断面図である。
【図6C】図6Cは図6Aのガスインターフェースマニフォールドとともに用いるためのエンドキャップの一例を示す。
【図7A】図7Aは図6Aのガスインターフェースマニフォールドの上面のフリットリング(上)及びフリット/3YSZガスケットの一例(下)を示す。
【図7B】図7Bは、図7Aに示されるガスインターフェースマニフォールドに接合された、図7Aのインターフェースガスケット例を示す。
【図8】図8は、一例のガスインターフェースマニフォールドGIMに結合された、一体構造素子アレイDAM(Device Array Monolith)の一例を示す。
【図9】図9は8-燃料電池素子を備える内部マニフォールド型一体構造素子アレイDAMの別の実施形態を簡略に示す。
【図10】図10は図9の一体構造素子アレイの例の様々なコンポーネントからの重量の寄与を示す。
【図11】図11は、内部マニフォールド型一体構造素子アレイの一例における、重量比電力密度及び体積比電流密度対セル電力密度の関係を示す。
【図12】図12は、内部マニフォールド型一体構造素子アレイの一例における、フリットビードの幾何学的寸法と熱容量及び素子間隔の関係を示す。
【図13】図13は起動時費消燃料と加熱されるスタックの重量の間の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
燃料電池の動作中、一般的な固体酸化物燃料電池システムの燃料電池素子、シール及び金属フレームには、約600℃から約1000℃の動作温度がかかり得る。さらに、これらのコンポーネントは、例えば起動及び停止のサイクル中に、急速な温度サイクルを受け得る。これらのコンポーネントにかかる熱機械応力の結果、燃料電池素子または燃料電池スタックの変形、破損及び/または故障がおこり得る。本発明の実施形態の例は燃料電池素子及び燃料電池スタックのそのような変形、破損及び/または故障を最小限に抑えるためのいくつかの手法を提供する。これらの様々な手法は、適宜、個別にまたは組み合わせて用いることができ、本発明が単独の実施形態に限定されることはない。本明細書に説明される実施形態の全ては電解質、電極及びフレームを含む実施形態の説明が目的とされている。燃料電池の動作に必要な要素が特に挙げられていない場合、その要素を含む実施形態及びその要素を含まない実施形態は本発明の一部であるとされ、そのように見なされるべきである。
【0013】
その例が添付図面に示される本発明の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイDAM10(すなわちアレイ配列燃料電池電解質シートの一体アセンブリ、ここで1枚以上の電解質シートは複数の電極を支持している)は、
2つの面を有する少なくとも3枚の平電解質シートであって、相互に隣接して配置された電解質シート、
を備え、
電解質シートの内の少なくとも1枚は、電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極及び電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を支持し、電解質シートは複数の空気極及び燃料極を有する少なくとも1枚の電解質シートが他の電解質シートの間に配置されるように配列され、少なくとも3枚の電解質シートは焼結フリットによって結合され、電解質シートの間には金属フレームも双極プレートも配置されていない。一体構造燃料電池素子DAM10は複数のアレイ配列燃料電池素子を備えることができる。少なくとも本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、焼結フリットは、燃料電池素子間の気密ガス分離を提供する、焼結フリット構造体を提供する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造固体酸化物燃料電池素子アレイ(DAM)は、(i)少なくとも3枚の固体酸化物燃料電池(SOFC)素子を備え、それぞれは、それぞれの間に金属フレームまたは双極プレートが配置されることなく、接合/シール形成材料50によって相互に結合された、少なくとも一対の電極の間に挟み込まれた電解質を有する。材料50は約1000℃より低い温度で焼結して気密構造にできることが好ましい。材料50は焼結されて、固体燃料電池(SOFC)素子に直接に接合されることが好ましい。一体構造燃料電池素子アレイDAMは、それぞれが複数の電極を有する、少なくとも5枚の燃料電池素子を有することが好ましい。複数の電極は複数の空気極及び複数の燃料極であることが好ましい。一体構造燃料電池素子アレイDAMは少なくとも8枚の燃料電池素子を有することがさらに好ましい。
【0016】
したがって、本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造燃料電池素子アレイを作製する方法は、
(i)燃料電池素子と電解質シートの間に接合/シール形成材料のパターンが配置されるように、2枚の電解質シートの間に燃料電池素子を配置する工程。接合/シール形成材料は、燃料電池素子の一方または両方の面に、及び/または電解質シートの一方または両方の面に、塗布することができる。電解質シートは、電極を有していない電解質シートとすることができ、あるいは電極を支持することができ、したがって別の燃料電池素子の一部となることができる;および
(ii)接合/シール形成材料を焼結し、よって燃料電池素子を電極シートに、または他の素子に、直接に結合する工程。この態様でいくつかの燃料電池素子を、焼結されたシール形成材料に他のコンポーネントを全く接合することなく、燃料電池素子及び/または電解質シートが焼結されたシール形成材料に直接に結合されるように、相互に結合させて、一体構造素子アレイを形成することができる。上で論じたように、少なくとも2つの燃料電池素子が、それぞれの間に金属フレームが配置されることなく、シール形成材料によって相互に結合されるように、電解質シートは別の固体酸化物燃料電池素子の電解質シートであることが好ましい。少なくとも2枚の燃料電池素子上に(シール形成材料とも称される)接合形成材料50を用いてパターンを形成することができ、一方の素子のシール形成材料が他方の素子のシール形成材料に面するように、燃料電池素子を重ねることができる。シール形成材料50でつくられた2つのパターンは相互に接触することができる;
を含む。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、接合形成材料50、例えば、ガラス、セラミックまたはガラス-セラミックのフリットは、少なくとも3枚の電解質シートでつくられ、好ましくは3個以上の燃料電池素子を有する、一体構造SOFC素子アレイを作製するために、複数の燃料電池素子の表面上にあらかじめ定められたパターンで塗布される。そのようなフリットは、成形プロセスによるかまたは本明細書で後に説明される自動ペースト被着装置によるような、従来の手段を用いて塗布することができる。接合形成材料50には、必要に応じて金属またはセラミックのフィラーを含有する、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料、あるいはこれらの混合物があり、得られる材料50の材料または組成物は約1000℃より低い温度で焼結して気密構造体とすることができる。
【0018】
複数の電極を有する実質的に平らな燃料電池素子を、2枚の隣接する素子の間に共通ガスチャンバを設けるようにして、配置することができる。ガス流を一様にするため、チャンバを定める燃料電池素子の間隔は数ミリメートル程度(例えば、1mm〜8mmまたは1mm〜5mm)であることが好ましい。数mmレベルの間隔は、得られる焼結材料(例えば焼結ガラス-セラミックフリット)によって容易に達成される。すなわち、焼結フリットはそのような素子アレイ内のスペーサ素子として用いることができ、金属ウインドウフレームのような構造分離コンポーネントの必要はない。燃料電池素子は所要フリットパターンに対応する不活性領域を設けるような態様で作製される。すなわち、接合形成材料50は燃料電池素子の不活性領域に(例えば電解質シート上に)塗布されることが好ましい。例えば、電解質シートの周縁領域のかなりを、素子の周縁のまわりのガス通路構造の形成のための不活性領域を設けるため、プリントしないままで残す(すなわち、プリント電極を設けないでおく)ことができる。少なくともいくつかの実施形態にしたがえば、一体構造素子アレイを形成するため、(それぞれが複数の電極を有することが好ましい)燃料電池素子が初めに作製される。これらの素子は、その上に接合形成材料、例えばガラス-セラミックフリットペーストの、特定のパターンの、単純または複雑なパターンが被着される、出発「基板」である。このガラス-セラミックフリットペースト(または別の適する材料)のパターンは必要な、シール形成機能、機械的支持機能及びガス分配機能が得られるように構成される。例えば、フリットはマニフォールド機能が得られるようなパターンにつくられた構造素子を形成するために用いられる。少なくとも3枚の素子が、それぞれの素子を相互に結合するような態様のフリットパターンをもつ複数の素子を共焼結することによって一体構造燃料電池素子アレイを形成するために、フリットまたは他の適する接合形成材料を用いて結合される。焼結後、一体構造燃料電池素子アレイは全体として機械的に合体して(一体になって)いて、一体構造の少なくとも1つの辺または面に、利用可能な、所要のガス吸入ポート及びガス排出ポートを有する。好ましい実施形態において、アレイは3枚より多くの、好ましくは少なくとも4枚の、燃料電池素子で構成される。
【0019】
実施形態例にしたがえば、一体構造SOFC素子アレイは軽量構造を有することが有利であり、これは従来のSOFC構造に一般に必要な(例えば、ウインドウフレーム、セル支持チューブ及び/または双極プレートのような)構造コンポーネントの排除によって達成される。軽量、したがって低熱容量であることにより、高い重量比電力密度、向上した熱機械的頑丈さ及び向上した熱サイクルレート能力が得られ、一体構造素子アレイを動作温度まで加熱するに必要なエネルギーが低減される。
【0020】
図1A及び1Bは、焼結された、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料(例えばフリット)がその上に配置されている、少なくとも1枚の燃料電池素子15を備える一体構造燃料電池素子アレイ10を示す。一体構造燃料電池素子アレイ10は、燃料電池素子15及び、焼結された、ガラス材料、セラミック材料またはガラス-セラミック材料50によって少なくとも一部が形成された、少なくとも1つの反応チャンバ80を備える。高温に耐え得るその他の接合/シール形成材料も用いることができる。燃料電池素子15は、例えば、単セル素子(図示せず)または複セル素子(例えば図2を見よ)とすることができる。一実施形態にしたがえば、接合形成材料のパターンが形成された3枚の燃料電池素子(図1A〜1Bを見よ)が焼結され、相互に結合されて、2つの反応チャンバ(燃料(または燃料極)チャンバ80及び酸化剤(または空気極)チャンバ80')を形成する。例えば、図1Bに示される3枚の燃料電池素子15は、少なくとも1枚または2枚の、好ましくは3枚の全ての、燃料電池素子15にプリントされた焼結材料50によって相互に直接に接合または融着され、したがって、焼結材料とともに、中央燃料電池素子15の一方の側に燃料極または燃料チャンバ80を形成し、中央燃料電池素子15の他方の側に酸化剤または空気極チャンバ80'を形成する。例えば、中央燃料電池素子15の両面に接合形成材料50を被着することができ、次いで2枚の隣接燃料電池素子15を中央燃料電池素子15の上下におくことができ、次いでアセンブリ全体を焼結して一体構造燃料電池素子アレイ10を形成することができる。あるいは、3枚の燃料電池素子の全ての他の素子に面するであろう側の少なくとも一方に接合形成材料を被着することができ、3枚の燃料電池素子を相互に重ね、次いで焼結することができる。焼結材料50はガスが漏れない(気密)シールとしてはたらくこともでき、例えば、従来の熱焼結型ガラス-セラミックシール形成組成物でつくることができる。
【0021】
上述したように、電解質シート20は、これらの実施形態においてはシール形成材料でもある、接合形成材料50で形成される構造体によって、相互に連結され、相互に隔てられる。したがって、本発明の実施形態の利点の1つは、燃料電池素子を支持するため及び燃料電池素子の間に反応チャンバを形成するために、金属フレームが必要とされず、双極プレートが必要とされないことである。別の利点は、一体構造燃料電池素子アレイ10が(燃料電池素子を支持するための嵩張る金属フレームが必要とされないため及びセパレータまたは双極プレートが燃料電池素子15の間に配置されないため)比較的小さく、非常に軽量であり、低い熱容量を有することである。別の利点は、接合形成材料及び電解質が、この場合は、非常に近い熱膨張係数(CTE)を有することができ、したがって、シール/素子界面においてCTE不整合による熱サイクル中の剥離がおこらず、クラックが発生しない、熱機械的に非常に頑丈なSOFCアセンブリが得られることである。さらに、燃料電池素子15を互いに極めて近接させて配置することができ、この結果、一体構造燃料電池素子アレイ10内の充填密度が高くなり(例えば、1〜3mm間隔)、よって小型の一体構造及び(一体構造燃料電池素子アレイにかかる温度勾配が非常に小さいことによる)一様な加熱が得られる。少なくともいくつかの実施形態にしたがう燃料電池スタック10のその他の利点は、軽量及び可搬性及び優れた重量比電力密度(発明者等のモデル計算は、1kW/kgないしさらに優れた一体構造の重量比電力密度が達成可能であることを示す)である。このプレーナ技術は拡縮可能であるから、そのような高い重量比電力密度により、有益に、(i)通常の炭化水素燃料で稼働でき、(ii)小さい熱容量を有することができ、(iii)重量は短起動時間能力を決定する重要な設計パラメータであり、軽量である結果、短い起動時間が得られるから、迅速に(1〜15分で)起動でき、(iv)一体構造を動作温度まで加熱するに必要なエネルギー(燃料)は一体構造の重量に正比例するから、起動時費消燃料(すなわちDAMを動作温度まで加熱するに必要なエネルギー)を低減でき、(v)電解質シートの間隔はシール厚だけで設定され、非常に高い活性セル面積対一体構造体積比が可能になるから、高い体積比電力密度を有することができ、(vi)熱機械的結合性を向上させることができ(軽量構造は、無破損で熱機械応力に対処できる、可撓性で弾性率が低い素子で作製することができる)、(vii)費用を低減し、材料を少なくすることができ(例えば、フレーム費用がかからず、双極プレートの費用が削減される)、及び/または(viii)汚染を低減できる(例えば、揮発性クロム種による空気極汚染を心配する必要はない)、新しい部類の可搬型電源が可能になるであろう。
【0022】
燃料電池素子15の一例(図2を見よ)は、少なくとも1つの燃料極30と少なくとも1つの空気極40の間に挟み込まれたセラミック電解質シート20を有し、1本以上のバスバー42を有することができる。図2に示されるように、燃料極及び空気極は電解質シート20のバイアホールを貫通する導電性層間相互接続35によって電気的に相互接続することができる。セラミック電解質20は固体酸化物燃料電池での使用に適するいずれかのイオン伝導性材料を含むことができる。さらに詳しくは、層間相互接続35は、図2に示されるように、内室すなわち電解質シートの燃料側のそれぞれの燃料極30の延長端から、次に続く(電解質シートの空気側に配置された)空気極の延長端へと、順次に電解質シート20を横断することが好ましい。すなわち、図2に示される燃料電池素子15の実施形態は、(i)少なくとも1枚の電解質シート20,(ii)電解質シート20の一方の側に配置された複数の空気極40,及び(iii)電解質シート20の他方の側に配置された複数の燃料極30を有する。
【0023】
例えば、図1A〜1Bに示される燃料電池素子アセンブリは接合/シール形成材料50により相互に結合された3枚の燃料電池素子15を有し、これらの素子のそれぞれは複数の空気極及び燃料極を支持する電解質シートを有する。電解質シートは、(i)第1の電解質シート上に配置された空気極が第2の電解質シート上に配置された燃料極に面する(燃料または燃料極チャンバ80を形成する)か、あるいは(ii)第1の電解質シート上に配置された空気極が第2の電解質シート上に配置された空気極に面する(酸化剤または空気極チャンバ80'を形成する)ように、焼結材料50に直接に接合または融着され、反応ガスのフレームの流過及び電解質シートの間の流過を可能にするように配位される。燃料電池素子厚(すなわち電解質シートと電極の複合厚)は150μm未満であることが好ましく、2枚の素子の間隔(すなわちフレーム厚)は3mm未満、好ましくは約1mmと2mmの間である。
【0024】
電極30,40は固体酸化物燃料電池の反応を容易にするに適するいずれかの、例えば銀/パラジウム合金のような、材料を含むことができる。燃料極及び空気極は異なるかまたは同様の材料を含むことができ、材料または設計への制限は考えられていない。燃料極及び/または空気極は、固体酸化物燃料電池での使用に適するいずれかの幾何学的パターンをなすことができる。電極はセラミック電解質の表面上に表面と平行に配置されたコーティングまたはプレーナ材料とすることができる。電極は複数の独立電極を含むパターンで配列することもできる。例えば、燃料極は電解質の一方の側の単一連続コーティングとすることができ、あるいは、パターンをなして、またはアレイに配置された、ストリップのような、複数の個別素子とすることができる。
【0025】
燃料極30は、例えば、イットリア、ジルコニア、ニッケルまたはこれらの組合せを含むことができる。広範なその他の電子伝導体またはイオン伝導体、あるいは電子伝導体とイオン伝導体の混合物も用いることができる。そのような伝導体は、例えば、没食子酸ランタン、セリアまたはその他の希土類がドープされたジルコニア、単独でまたは組み合わせて、銅、鉄、コバルト及びマンガンである。燃料極の一例は、ニッケル及び、例えばイットリアドープジルコニアのような、電解質材料を含有する、サーメットを含む。
【0026】
空気極40は、例えば、イットリア、ジルコニア、マンガン酸塩、コバルト酸塩、ビスマス酸塩またはこれらの組合せを含むことができる。空気極材料の例には、イットリア安定化ジルコニア、マンガン酸ランタンストロンチウム及びこれらの組合せを含めることができる。
【0027】
電解質20は、ジルコニア、イットリア、スカンジア、セリアまたはこれらの組合せを含むことができ、必要に応じて、Y,Hf,Ce,Ca,Mg,Sc,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Ti,Sn,Nb,Ta,Mo,Wの酸化物またはこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つのドーパントをドープすることができる。電解質20はその他のフィラー及び/または処理材料を含有することもできる。図2に示される電解質20の例は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)とも称される、イットリアがドープされたジルコニアからなる平シートである。固体酸化物燃料電池の電解質材料は市販されており(米国ニューヨーク州ペンヤン(Penn Yan)のFerro Corporation)、当業者であれば適切なセラミック電解質材料を容易に選択できるであろう。
【0028】
これらの実施形態において、材料50は燃料電池素子15に直接に接合される。例えば、材料50は電解質20上に、成形されるか、被着されるか、絞り出されるか、あるいは「塗り付け」られるか、または「プリント」され、ガラス-セラミック組成、セラミック組成、ガラスフリット組成またはガラス組成を有することができる。シール及び/または内部マニフォールドを設けるために、被着された材料50は厚さが3mm未満であることが好ましく、厚さが2mm未満で幅が2mm未満であることが好ましい。被着された材料の幅は3mm未満であることが好ましく、厚さが3mm未満で幅が2mm未満であることが好ましい。しかし、被着された材料50は高応力領域において3mmをこえる幅にわたって電解質シート上に拡がり、向上した構造保全性を燃料電池素子に与えることもできる。材料50は、材料を電解質シート20に直接に融着することにより、複数の燃料電池素子15に融着される。材料50はガラスまたはガラス-セラミックのフリットを含むことができ、さらにセラミック材料及び/または熱膨張係数整合フィラーを含むことができる。(ガラスフリット、セラミック材料、または他の適する「シール形成」材料を含む)材料50で形成された焼結構造体では、フェライトステンレス鋼燃料電池コンポーネント(例えばステンレス鋼フレームまたはステンレス鋼双極プレート)によって一般に生じるクロムスケール形成の問題がおこらない点で有利である。材料50で形成された焼結構造体はシールとしてはたらき、したがって、一体構造燃料電池素子アレイ10には、フレームと燃料電池素子の間に追加のシールまたはフレームは必要にならない。
【0029】
材料50によって形成される焼結接合形成構造体は、電解質シート20と同等の膨張を与えるために電解質シート20のCTEに近いCTEを有することが望ましい。電解質シート20が不完全安定化ジルコニア(例えば3YSZ)でつくられていれば、材料50は約9〜13ppm/℃、好ましくは10〜12ppm/℃のCTE(CTE=ΔL/LΔT)を有することが好ましい。そのようなCTEは、例えばマグネシア(MgO)-スピネル(MgAl2O4)系内の組成によるか、あるいは材料50が3YSZまたは他の不完全安定化ジルコニア組成物を含んでいれば、実現することができる。
【0030】
図1A〜1Bは焼結材料50が、1つ以上の「ビスケット形」ガス膨張チャンバ52Aのような、複数のチャンバを形成できることを示す。これらのチャンバは必要な反応ガスを燃料極及び/または空気極に供給するために用いられる。(本実施形態におけるガス膨張チャンバ52Aのような)分配チャンバは吸入オリフィスを介して反応ガスチャンバに流入するガスを均等に分配するに役立ち、排出チャンバ52Bは集められた排出燃料を最終排出口に送り込むための膨張域を提供する。くさび形または「ビスケット形」のガス膨張チャンバにより、一様な流れを確保するに十分な摩擦抵抗が付加される。
【0031】
図1A〜1Bに示される、材料50で形成された焼結構造体は複数の内壁54A及び外壁54Bを有する。これらの壁の内のいくつかは必要に応じて設けられ、単外周壁構造でも機能するであろう。壁は、例えば、(i)電解質シート材料(例えば3YSZ)から適切な「壁」構造がつくられている電解質シート生地を成形することによるか、または(ii)少なくとも1つの燃料電池素子15の電解質シート20上(好ましくは複数の燃料電池素子15の電解質シート20上)に適切な接合形成材料(シール形成材料)50の層(例えば、薄いチューブラフィルム層)を被着し、それぞれの電解質シート20をこのシール形成材料と接触させて配置し、次いで得られた燃料電池素子アセンブリを加熱して電解質シート20を材料50で形成して得られたシール構造に融着し、よって複数の燃料電池素子を相互に結合することによって、作製される。(材料50で形成された)内壁54Aの内のいくつかは燃料の反応ガスチャンバへの流入及び燃料極への接触を可能にするための開口55を有する。本実施形態において、燃料は燃料吸入オリフィスを通って隣接素子15間に入り、次いでガス膨張チャンバ52Aを通って、電解質シート20(シート20A及び20B)で形成された燃料極チャンバ80に流れる(矢印の方向を見よ)。燃料は次いで第2のセットの開口55を通って排出流チャンバ52Bに流入し、次いで排出(燃料)オリフィス85を介して排出される。本実施形態において、排出オリフィス85はフレーム50の燃料吸入オリフィス70から最も遠くに配された区画(排出側)に設けられる。同様に、空気極チャンバ(酸化剤チャンバ)が2枚の隣接電解質シート20(シート20B及び20C)で形成されるであろう。もちろん、3枚より多くの燃料電池素子をこの態様で結合して、一体構造燃料電池素子アレイ10を形成することもできる。
【0032】
例えば、それぞれが少なくとも1枚の他の隣接燃料電池素子にそれぞれの間に配置された焼結シール形成材料50によって結合された、10枚の燃料電池素子15からなる一体構造燃料電池素子アレイは、9つの反応ガスチャンバを有するであろう。これらの反応ガスチャンバは交互に酸化剤チャンバ80'及び燃料チャンバ80となる。一体構造燃料電池素子アレイの前面側及び背面側に配置された燃料電池素子15を用いる代わりに、2枚の(電極がプリントされていない)電解質シートを用い得ることにも注意されたい。これらの電解質シートはそれぞれの隣接燃料電池素子に材料50によって結合/封着されて最初及び最後の反応ガスチャンバを形成するであろう。得られた一体構造燃料電池素子アレイ10には金属フレームが無く、燃料電池素子間の追加のセパレータ板及び双極プレートが無い。少なくとも複数の燃料電池素子が単一の燃料吸入口及び/または単一の燃料排出口及び/または単一の酸化剤吸入口及び/または酸化剤排出口を共用することが好ましい。全ての燃料電池素子が、単一の燃料吸入口(ポートP1)、単一の燃料排出口(ポートP4)、単一の酸化剤吸入口(ポートP2)及び単一の酸化剤排出口(ポートP3)を共用することが好ましい(図5Bを見よ)。例えば、全部で4つのポート(2つが吸入口で2つが排出口)を、一体構造燃料電池素子アレイの一方に側に便宜良く配置することができる。語句「単一の燃料吸入口」、「単一の燃料排出口」、「単一の酸化剤吸入口」及び/または「単一の酸化剤排出口」は、一体構造燃料電池素子アレイ(DAM)10の吸入口及び排出口を指す。もちろん、一体構造燃料電池素子アレイの1つより多くの燃料吸入口または燃料排出口及び一体構造燃料電池素子アレイの1つより多くの酸化剤吸入口または酸化剤排出口を用いることもできる。
【0033】
シール/接合形成材料50はフレーム外壁54B及びフレーム内壁54Aによって形成される複数本のチャネル53も有することができる構造体を形成することができ、この構造体は燃料電池素子15にかかる温度勾配を最小限に抑えるため、熱交換機として利用することもできる。すなわち、図1Aは、フレーム内壁54Aとフレーム外壁54Bの間にフローチャネル53を設けることによって一体構造燃料電池素子アレイ10への反応ガス(燃料及び/または空気)の供給のための内部マニフォールドがフレーム50の内部に設けられ得ることを示す。チャネル53は反応ガスチャンバ80に流入する反応ガスのある程度の予備加熱のための手段を提供し、複セル素子15を確実に一様加熱するに役立つ。本実施形態の一体構造燃料電池素子アレイ内の反応ガス(例えば燃料)の流れの方向は矢印で示されている。燃料は、例えば燃料吸入オリフィス70を通して燃料電池素子15に供給される。燃料は燃料吸入オリフィスから、フローチャンバ52Aを通って、2枚の電解質シートで形成される燃料極チャンバ80に進み、次いで排出流チャンバ52Bに入り、次いで排出流チャンバ52B及び排出フローチャネル53を介し、排出開口85を通して、排出される(矢印の方向を見よ)。図1Bに示されるように、複数のチャネル53あるいは開口55を含むチャンバを有する焼結構造体を接合形成材料50で形成すれば、反応ガス流のための複数のチャネルが得られると同時に、高いOFA(開口率)により焼結構造体の密度が低められ、表面積が増加するという利点が得られる。焼結材料50では相互に隔てられた薄い外壁及び内壁が用いられるから、電解質シート間の焼結構造体は比較的軽く、熱伝導性である。したがって、このタイプの構造により、良好なガスフロー及び入り燃料と費消後燃料の間の熱交換が容易になる。
【0034】
ガラス-セラミックフリット接合形成材料50の組成のいくつかの例が下の表1に与えられる。接合形成材料50の熱膨張係数は10.5〜11.5ppm/℃の範囲にあることが好ましい。これらの組成例は本明細書に開示される実施形態のいずれにも用いることができる。
【表1】
【0035】
与えられた接合形成材料組成の内の1つ以上の成分に対して(重量%の)数値が表1に与えられていない場合、その成分は有意な量で存在していない。すなわち、その成分の対応重量%は約0.1重量%より少なく、好ましくは0重量%である。例えば、第1の組成例(組成129NYD)は、BaO,ZnOまたはTiO2を基本的に含有していない。
【0036】
フリット作製例
所望の組成が、一般に1600℃で3時間、融解され、注型され、固化され、破砕され、粗粉砕されて、+325〜−20メッシュの供給原料が作製される。供給原料は、クールター計数器上で測定して10μmと15μmの間のD50を達成するため、アルミナジャー内でアルミナ粉砕媒体を用いるボールミルにかけた。所望のD50目標に達した後、フリットを−200メッシュの篩にかけて、大きな粒子を取り除いた。
【0037】
ペースト作製例:通常の結合剤及び溶剤を用いてフリットペーストを作製することができる。結合剤の例には、適切な溶剤内の、エチルセルロース、プロピレンカーボネート及び様々な分子量のポリビニルブチラールがある。下の表2は、エチルセルロースを基にしたペーストビヒクルの例(3.7重量%エチルセルロースビヒクル)を示す。
【表2】
【0038】
この例のフリットペーストは一般に50〜65体積%のガラス-セラミック粉末と50〜35体積%のビヒクルとしてバッチ化される。ビヒクル及びフリットは、成分を完全に混合して最終フリットペーストを形成するため、遊星形ミキサーで混合される。
【0039】
図3は129NTRと名付けられた結晶化(フリット)組成(表1の例4を見よ)についての平均熱膨張係数を示す。825℃で2時間加熱されたフリットバーAは、続いて軟化がおこるガラス遷移伸びピークをもつ、ガラス態挙動を示す。825℃において長時間加熱すると結晶化がおこる。825℃で72時間加熱したフリットバーBはガラス遷移の形跡を示さず、フリットバーが実質的に結晶化していることを示す。一体構造SOFC素子アレイ10は、結晶化した材料がYSZ電解質と十分に整合する膨張を有する場合に、完全に結晶化したフリットにより優れた熱機械的頑丈さを有する。例えば3YSZについて、平均熱膨張係数は750℃において110×10−7/℃である。
【実施例】
【0040】
本発明は以下の実施例によってさらに明解になるであろう。
【0041】
実施例1
本実施例では、複数枚のフリット結合燃料電池素子を用いる、超低熱容量一体構造燃料電池素子アレイ10を説明する。
【0042】
SOFC4ポート一体構造
以下は一体構造SOFC素子アレイ10の一実施形態の作製のためのプロセスの説明である。本実施形態の一体構造SOFC素子アレイ10は、ブランク電解質シートの間に挟み込まれた2枚の燃料電池素子を有する内部マニフォールド型一体構造である。
【0043】
初めに、図2に示される素子と同様の、平らで、機械的可撓性の、複セル燃料電池素子15を2枚作製した。本実施形態例において、燃料電池素子15の寸法は12cm×15cmである。燃料電池素子15は、パターン付フリット(材料50)の被着に利用できる、無プリント縁を有し(すなわち、縁の少なくとも一部において、縁には電極またはバスバーがなく)、よって材料50は活性電極領域と接触しない。一体構造(一体構造燃料電池素子アレイ10)を作製するための工程は以下の通りであった:
(1)自動計量分配により材料50(本実施形態ではフリットペースト)の連続線を図4Aに示されるパターンで燃料電池素子15の一方の側に塗布した。このパターンは、デバイスを平らにしておくに役立つように、デバイスの両側で同等である。フリットペースト被着層における欠陥形成を避けるため、ハンドリング中、燃料電池素子15は裏返して、嵌込みボードに置いた。乾いていないフリットを無接触で収容するため、嵌込みボードには通し穴を設けた。次いで。材料50(本実施例では同じフリットペースト)の第2の層を図4Aに示される同じパターンで燃料電池素子15の他方の側に塗布した。薄い可撓性電解質シートを有する燃料電池素子に対しては、一様に平らな(湾曲していない)燃料電池素子の維持に役立たせるため、燃料電池素子の両側に材料50の対称な連続層を設けることが好ましい。次いで、共通なパターンの材料50をもつ燃料電池素子15を120℃で15分間乾燥させた。乾燥後、2枚のジルコニアフェルト材料の間にパターン付燃料電池素子15を置いた。上になったジルコニアフェルト材料の上に、素子を平らにしておくに役立つ重しとして、180gの高密度アルミナセッターを載せた。次いで、所望の特性を達成するに必要な加熱スケジュールにしたがって燃料電池素子を加熱して、材料50(例えばフリットパターン)を焼結した。焼結中、素子を平らにしておくに役立たせるため、燃料電池素子に荷重をかけた;
(2)別のDAM層を工程(1)で説明したようにして処理した。例えば、2枚の、長さと幅が同じ(例えば15cm×12cmの)可撓性3YSZブランクシートの両側に図4Aに示されるパターンでフリットペーストを塗布した。次いで、2枚の電解質シート20を上述したように加熱した。このようにして、図4Aに示されるパターンの材料50の焼結層を有する2枚の燃料電池素子15及び2枚のブランク3YSZシートを得た;
(3)次いで、ブランク3YSZシートの一方の側に(先にパターン付きで加熱された層の上に)直接に、材料50の図4Bに示される不連続フリットパターンを被着した;
(4)燃料電池素子15のそれぞれを、燃料電池素子15の空気極側がブランク3YSZシートの図4Bに示される(工程(3)で得られた)不連続パターンを有する側に確実に面するように注意を払いながら、図4Bのパターンをもつブランク3YSZシートに慎重に合わせた。上向きの燃料電池素子に、小量の材料50(例えばフリットペースト)を用いて、加熱フリット層に2つの銀タブ40を接合し、(本明細書ではリードとも称される)銀タブのそれぞれは燃料電池素子15の空気極側に配置された素子バスバー42の1本に電気的に接続される(本実施形態において、バスバー42は燃料電池素子の縁端から先には延び出していない)。銀タブ、フリット及びバスバーの間の物理的接触をさらに強めるために重しが用いられる。次いで、素子/電解質シート対を加熱して素子と電解質シートの間の(不連続パターンで塗布された)フリットを焼結した。このようにして、燃料電池素子とブランク電解質シートの間で不連続フリットパターンが焼結されている、焼結燃料電池素子/電解質シート対を形成した。焼結された図4Bのパターンは燃料電池素子と合わせて、反応ガス流路、ガスマニフォールド、ガス流一様性を与えるための制流部、及び燃料電池素子間及び/または燃料電池素子とブランク電解質シートの間のガス吸入オリフィス及びガス排出オリフィスを提供する;
(5)それぞれの素子/電解質シート対の素子露出側(燃料極側)に、既存の加熱連続フリットパターン層の上で、不連続フリット層を塗布した。本実施形態においては、図4Bの不連続パターンを再び用いた;
(6)銀リードと素子バスバーの間の電気的接触を与えるため、(素子/電解質)シート対の両側に小量の銀-パラジウムペーストを塗布した;
(7)2つの素子/電解質シート対を、露出素子の燃料極側が確実に互いに面するように注意を払いながら、慎重に(揃えて重ね)合わせて、素子アレイを形成した。未加熱不連続フリットパターンは2つの対の間に配置される。次いで、素子アレイを加熱して、一体構造素子アレイを形成した。一体構造素子アレイは、一体構造の、内側に配置された2枚の燃料電池素子及び両面をなす側に配置された2枚のブランク電解質シートを有する。
【0044】
一体構造素子アレイDAMはこれで完成である。DAMの3辺が封じられ、燃料及び空気の吸入及び排出のための4つのポートが底辺に設けられる。フリットによって定められるガス流路が図4Cに示される。4つのポートは、単燃料吸入口(P1)、単燃料排出口(P2)、単酸化剤吸入口(P3)及び単酸化剤排出口(P4)である(図5Bを見よ)。
【0045】
本実施形態のDAMは組成が128MTR(表1の例4)のガラス-セラミックフリットを用いて作製した。フリッティング工程は825℃の温度で2時間実施した。完成DAMを図5A及び5Bに示す。
【0046】
あるいは、燃料電池素子及び電解質シートのそれぞれは、接合形成材料50の連続パターンでパターン付けして焼結することができる。次いで、燃料電池素子と電解質シートが積み重ねられたときに、2枚の燃料電池素子の間及び燃料電池素子とブランク電解質シートの間に接合形成材料50の不連続パターン(例えばフリット)があるように、不連続パターンの接合形成材料を素子及び/または電解質シートに塗布することができる。次いで、一体構造デバイスアレイを加熱して不連続パターンの接合形成材料50を焼結して、一体構造素子アレイ10を形成することができる。得られた一体構造素子アレイDAMは、3辺で封止され、底辺に燃料及び空気の吸入及び排出のためのポートP1,P2,P3.P4が配置される。フリットで定められるガス流路は図4Cに簡略に示される。
【0047】
ガス相互接続マニフォールド
一体構造素子アレイDAM10に酸化剤ガス及び燃料ガスを供給するため及び、必要に応じて、排出ガスを取り込むため、ガスインターフェースマニフォールド(GIM)100が素子アレイモノリスDAMの一辺または一面に結合される。ガスインターフェースマニフォールド(GIM)100は少なくとも、少なくとも一辺または一面110Aにおいて、ガス相互接続マニフォールドに結合された供給管98Aを通してガス源からガスが供給され、さらに、ガスインターフェースマニフォールドは別の一辺または一面110Bにおいて一体構造素子アレイDAM10に結合される。本実施形態において、排出ガスは別の辺または面110Cにおいてガスインターフェースマニフォールド(GIM)100に結合された供給管98Bを介してガスインターフェースマニフォールドを出ることができる。ガスインターフェースマニフォールド100は他の所望の機能、例えば熱交換を与えるための機能及び/または改質を備えるように構成することができ、ガスインターフェースマニフォールドはガラス、セラミックまたはガラス-セラミックの押出成形で作製することができる。ガスインターフェースマニフォールド100は、可能な限り軽量の構成で作製され、それでも一体構造素子アレイとガスインターフェースマニフォールドの間の可能な最善の熱容量整合を可能にするに十分な機械的結合性を提供することが望ましい。
【0048】
本実施形態の押出成形ガスインターフェースマニフォールド100は、実施例1に説明される一体構造素子アレイ10との結合に適する。本実施形態の押出成形ガスインターフェースマニフォールド100は以下のようにして作製した:
1.初めに、重量で3%のメチルセルロース結合剤を含む3YSZ材料の押出バッチを押出成形に適するコンシステンシーになるまで水と混合した。次いで、ダイ、例えばピン間隔が16ミル(0.406mm)の、200セル/平方インチダイ(31セル/cm2ダイ)を通してバッチをラム押出しした。断面が1.25インチ×0.25インチ(31.8mm×6.4mm)の長方形押出品を含む‘200/16’生押出品を形成するために長方形マスクをダイに前に置いた。8インチ(203.2mm)長区画にパーツを刻み込んだ;
2.押し出して乾燥させた後、図6Aに示されるガスインターフェースマニフォールド100を形成するためにパーツ生地を加工した。パーツ生地の面A(前面)のチャネルを図6Bの前面図に示されるようなパターンで差し込んだ。パーツ生地の面AはGIM100の面110A(前面)に対応する;
3.押出パーツの中点に切込みをつくり、吸入チャネルと排出チャネルの間に気密障壁を設けるために切込み内の全てのチャネルを差し込んだ。次いで、加工されたパーツの面B(上面)に4つの開口112A,112B,112C,112Dを作製した。加工後に、パーツを1450℃に加熱して稠密になるまで焼結させて、完成ガスインターフェースマニフォールド100を得た。ガスインターフェースマニフォールド100は、流入燃料ガスのための開口111A及び流入酸化剤ガスのための開口111Bを有する、面110A(前面)を有する。ガスインターフェースマニフォールドの面110B(上面)の4つの開口112A,112B,112C,112Dは、実施例1で説明したDAM10の底辺に配された4つのポートP1,P2,P3,P4(燃料吸入FI及び空気吸入AI,及び燃料及び空気の排出ポートである2つの出口FO,AO)に結合することができる。ガスインターフェースマニフォールド100は、排出燃料ガスのための開口113A及び排出酸化剤ガスのための開口113Bを有する、面110C(背面)も有する。
【0049】
エンドキャップ
次に図6Cに示されるエンドキャップ120を作製した。本実施形態において、エンドキャップはステンレス鋼(446SS)を加工して作製した。他の材料(例えばセラミックまたはガラス-セラミック)を用いることもできる。一般に、高温のSOFC環境におけるSSコンポーネントの動作に対しては、金属の表面からのクロミア(酸化クロム)の揮発を軽減するためのコーティングが必要である。実施例1に実施形態において、GIM100はDAM10より低温にあるエンドキャップとともに動作するように設計される。エンドキャップのステンレス鋼の動作温度が、本実施形態におけるように、約600℃より低ければ、クロミア揮発は実質的に抑えられ、クロミア揮発を軽減するコーティングは必要とされない。
【0050】
エンドキャップ120は適切な材料、例えばガラスフリットまたはガラス-セラミックフリットを用いてガスインターフェースマニフォールド100に結合することができる。本実施例において、フリット材料はアルミナホウケイ酸フリットとした。本実施形態においてはエンドキャップの動作温度が600℃より低温であるような仕様であるため、本例のホウ素含有フリットの仕様が「可能」になる。ガスインターフェースマニフォールド110の開口111A及び11Bがエンドキャップ120の対応する開口120A、120Bに結合するように、ガスインターフェースマニフォールド100の面110Aの端面突起にエンドキャップの1つを気密に封着するためにペースト状のガラスフリットを塗布した。同様に、(開口113A及び111Bをエンドキャップ120の開口120A及びBに結合させて)ガスインターフェースマニフォールド100の面110Cの端面突起に別のエンドキャップを気密に封着するためにペースト状のガラスフリットを塗布した。エンドキャップ/ガスインターフェースマニフォールド100アセンブリを850℃で加熱してフリットを焼結し、2つのエンドキャップ120をガスインターフェースマニフォールド100に結合した。
【0051】
結合DAM-GIMアセンブリ
一体構造素子アレイDAM10とガスインターフェースマニフォールド100も結合させた。接合形成を容易にするため、初めに、実施例1の4ポートDAM10の作製に用いたBaO-Al2O3-SiO2フリットで、図7Aに示される構造の、アダプタガスケット130を作製した。長方形3YSZメンブランの両面にフリットペーストを図5Cに示されるパターンに対応するパターンで塗布し、900℃で2時間加熱して、接合形成材料(本実施形態ではBaO-Al2O3-SiO2フリット)を完全に結晶化させた。一体構造素子アレイ(DAM10)とガスインターフェースマニフォールド(GIM100)を結合させるため、以下の工程を実施した:
(1)4つの長方形フリットリング(A',B',C',D')を図7Bに示されるパターンでガスインターフェースマニフォールド100上に被着した。本実施形態において、フリットリングのそれぞれは、ガスインターフェースマニフォールド100の面110Bの4つの開口112A,112B,112C,112Dの1つを囲み、中心を合わせて配置した。リング付DIM100を、ガラス-セラミックが実質的にガラス態のままであるように、825℃で2時間加熱した;
(2)アダプタガスケット130の、ガスケットの一方の側で、「内部」リングにフリットペースト層を塗布した。ペーストが乾かないうちに、実施例1の一体構造素子アレイ10に、それぞれのリングが一体構造素子アレイの底辺の4つのガスポートの1つを囲むように注意を払いながら、ガスケットを接合した。ガスケット130が貼り付けられている一体構造素子アレイ10を、加熱プロセス中に一体構造素子アレイ10を垂直に保持するため、アルミナファイバボード治具に置いた。次いで、825℃の温度で2時間フリットを焼結して結合を形成することで、ガスケット130を一体構造素子アレイ10に永久結合させた;
(3)ガラス態リング(A',B',C',D')の上でガスインターフェースマニフォールド100にフリットペースト層を塗布した。アダプタガスケット130が結合されている一体構造素子アレイ10にガスケットリングをペースト層に合わせて接合した。組み合わせたアセンブリを900℃で2時間加熱してフリットを焼結及び結晶化させた;
(4)フィードチューブ(供給管)98A及び98Bを、それぞれのエンドキャップの開口122A,122Bに挿入して、燃料電池アセンブリを完成させた。完成した構造を図9に示す。
【0052】
実施例2
本実施形態及び別の実施形態の設計の一体構造内部マニフォールド型素子アレイ10は非常に優れた重量比電力密度及び体積比電力密度の可能性を提供する。一体構造素子アレイ10の電力出力は、セル電力密度、素子当たりの活性セル面積及び一体構造素子アレイ10内の素子数を含む、多くのパラメータの関数である。重量比電力密度は一体構造素子アレイ10の重量で割った電力出力であり、主として一体構造素子アレイ10の構成に用いたフリットビード重量の関数である。体積比電力密度は一体構造素子アレイ10の体積で割った電力出力であり、主としてデバイス-デバイス間隔の関数である。
【0053】
図9に簡略に示される一体構造素子アレイ10は、2枚の12cm×15cm電解質シート20に挟み込まれた8枚の12cm×15cm燃料電池素子15を備える。燃料電池素子15及び電解質シート20は焼結フリットによって結合されている。本実施形態のDAM10の様々なコンポーネントのDAM10の重量への寄与が図10に示されている。図10に対応するDAM10は、全8枚の燃料電池素子15,346cm3の体積,d=2mmの素子間隔,183gの全重量,及び燃料電池素子当たり90cm2の活性面積を有する。図11はセル電力密度の関数としての重量比電力密度PMD及び体積比電力密度VPDの関係を示す。本モデルについての比熱は654J/kg-Kであり、燃料はガソリンである。本モデルでは熱損失がないと仮定している。本一体構造素子アレイ構造により、0.5W/cm2の一般的なセル電力密度において、1kW/L及び2kW/kgの極めて高い電力密度が達成可能である。これは、単位重量(3.93cm2/g)及び単位体積(2.08cm2/cm3)当たりに利用できる大きなセル面積による。
【0054】
本実施形態のDAM10はガスインターフェースマニフォールドに連結され、断熱構造体内に収められている。
【0055】
上記アセンブリを囲む断熱構造体がさらに備えられる。
【0056】
実施例3
一体構造素子アレイ10の軽量設計は作業車を含む可搬用途での使用に十分に適する。車輌用途に対し、重要なパラメータのいくつかは、起動時間及び起動時費消燃料である。先述したように、本明細書に説明される実施形態においては、一体構造素子アレイにおけるフレームと素子の間の熱容量不整合が小さいことにより本質的に耐熱衝撃性が向上しているから、起動時間が改善される。起動時費消燃料は一体構造素子アレイ10のスタック熱損失によって主として決定される。第1近似としてスタックよる熱損失を無視する単純なモデルにおいて、スタックを動作温度に加熱するのに必要な燃料重量に対して関係式:
【数1】
【0057】
が成立する。ここで、mfは燃料/ガソリンの重量(グラム)、nDAMはスタックの一体構造素子アレイの数、(mCp)DAMは一体構造素子アレイの熱容量(J/K)、LHVfは燃料の低位発熱量(ガソリン:42MJ/kg)、Tは目標温度(例えば730℃)、Tαは周囲温度(20℃)、AFRは空気/燃料比(ガソリン:14.7kg-空気/kg-燃料)、Cp,空気は空気の比熱(1040J/kg-K)である。
【0058】
構成の共通のDAM材料についての比熱容量を表3に挙げておく。
【表3】
【0059】
実施例2の8素子DAM10に対し、熱容量は主としてフリットビード重量の関数である。単純なモデルでは、ビード断面形状を、素子表面と接触しているビードに対して半円として、または隣接する2つのフリットビード層の間に挟み込まれるビードに対して円として、近似することで、DAMの熱容量をフリットビード形状寸法に関係付けることができる。図12は、フリットビード形状寸法、DAM熱容量及び素子(または燃料シート)間隔の間の関係を示す。本図において、直線のグラフはIMDA熱容量(IMDA HC)に対応し、曲線のグラフはデバイス間隔(DS)に対応している。最適なガス流圧力及び一様分布には約1mm〜2mmの燃料電池素子15間隔dが好ましいと推定される。0.38mmのフリットビード半径において、デバイス間隔dは1.5mmであり、DAM比熱容量は654J/kg-Kである。図13は、比熱容量が654J/kg-KのDAM10についての、スタック重量と起動時費消燃料体積の間の関係を示す。
【0060】
ガソリンエンジン自動車用SOFCにおいてスタックを動作温度まで加熱するに必要なエネルギーに対する誘引目標は燃料1ガロン(3.7853L)未満である。ガソリン1ガロン未満の目標起動時費消燃料を達成するには要加熱重量が約20kg未満のスタックが必要である。20kgにおいて50kWの出力を達成するにはIMDAに対し2.5kW/kgの重量比電力密度が必要である。図11を参照すれば、内部マニフォールド型DAM10でDAM重量比電力密度が2.5kW/kgに達するには、0.6W/cm2を若干こえるセル電力密度が必要であろう。
【0061】
スタック加熱に必要な燃料を低減するための別の手法はスタックを熱的に独立したサブユニットに分割し、縦続態様でサブユニットを加熱することであり、1つのサブユニットを、余分の燃料を費消せずに、加熱するために別のサブユニットからの廃熱を用いることができる。例えば、1つ以上の一体構造燃料電池がサブユニットのそれぞれに対応することができ、一体構造燃料電池素子は縦続起動を提供するように配列または配置される。もちろん、分割スタック構成、起動時費消燃料及び駆動サイクル要件の設計に対して最善の選択を迫る起動時間及び起動時費消燃料の最適な相互関係があるであろう。
【0062】
本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本発明はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0063】
10 一体構造燃料電池素子アレイ
15 燃料電池素子
20,20A,20B,20C 電解質シート
30 燃料極
35 導電性層間相互接続
40 空気極
42 バスバー
50 接合/シール形成材料
52A ガス膨張チャンバ
52B 排出流チャンバ
53 チャネル
54A 内壁
54B 外壁
55 開口
70 燃料吸入オリフィス
80 燃料チャンバ
80' 酸化剤チャンバ
85 排出(燃料)オリフィス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体構造燃料電池装置において、
少なくとも3枚の平電解質シート支持燃料電池素子を備え、
前記燃料電池素子のそれぞれが、(i)2つの面を有する電解質シート、(ii)前記電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極、及び(iii)前記電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を有し、前記燃料電池素子が、1枚の燃料電池素子の燃料極側が別の1枚の燃料電池素子の燃料極側に面し、1枚の燃料電池素子の空気極側が別の1枚の燃料電池素子の空気極側に面するように配列され、前記少なくとも3枚の燃料電池素子が焼結フリットによって相互に直接に結合される、
ことを特徴とする一体構造燃料電池装置。
【請求項2】
前記燃料電池素子の間には金属のフレームまたは双極プレートが全く配置されていないことを特徴とする請求項1に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項3】
(i)前記少なくとも3枚の燃料電池素子が共通のガス吸入ポートを共有する、または
(ii)前記焼結フリットが前記燃料電池素子間の気密ガス分離を提供する焼結フリット構造体である、及び/または
(iii)前記焼結フリットが、反応ガス流路、ガスマニフォールド、ガス流一様性を向上させるための制流路並びにガス吸入オリフィス及びガス排出オリフィスの内の1つ以上を少なくともある程度形成する焼結フリット構造体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項4】
前記一体構造燃料電池装置が前記一体構造燃料電池装置の同じ面に配置されたガス吸入ポート及びガス排出ポートを有することを特徴とする請求項1または2に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項5】
請求項1に記載の一体構造燃料電池装置を備える燃料電池アセンブリにおいて、前記燃料電池アセンブリが前記一体構造燃料電池装置に連結された焼結ガスインターフェースマニフォールドをさらに備えることを特徴とする燃料電池アセンブリ。
【請求項6】
(i)前記一体構造燃料電池装置が前記一体構造燃料電池装置の同じ面に配置されたガス吸入ポート及びガス排出ポートを有し、前記ポートが前記ガスインターフェースマニフォールドの少なくとも一方の面に連結される、または
(ii)前記ガスインターフェースマニフォールドが、ガラス、セラミックまたはガラス-セラミックの押出成形物でつくられる、または
(iii)前記ガスインターフェースマニフォールドが前記一体構造燃料電池装置内の1つより多くのオリフィスに連結される、または
(iv)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1kW/kgの重量比電力密度を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項7】
請求項5に記載の燃料電池アセンブリにおいて、
(i)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1kW/リットルの体積比電力密度を有する、または
(ii)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1cm2/cm3の単位体積当たり活性セル面積を有する。
ことを特徴とする燃料電池アセンブリ。
【請求項8】
(i)前記燃料電池アセンブリの起動時間が10分未満である、または
(ii)前記ガスインターフェースマニフォールドが焼結されたガラスまたはガラス-セラミックのフリットによって前記一体構造燃料電池装置に連結される、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項9】
請求項1に記載の一体構造燃料電池装置を複数備える燃料電池スタックにおいて、前記一体構造燃料電池装置が縦続起動用に配列されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項10】
燃料電池スタックアセンブリを作製する方法において、
(i)電解質シートを有する少なくとも3枚の燃料電池素子を作製する工程、
(ii)前記燃料電池素子の内の少なくとも2枚の表面にガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料のパターンを形成し、よって複数枚のパターン付燃料電池素子を作製する工程、及び
(iii)前記3枚の燃料電池素子が焼結されたガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料によって相互に永久的に取り付けられ、よって前記燃料電池素子間には金属のフレームまたは双極プレートが全く無いように、前記パターン付燃料電池素子のそれぞれを少なくとも1枚の別の前記燃料電池素子に焼結する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
一体構造燃料電池装置において、
少なくとも3枚の平電解質シート支持燃料電池素子を備え、
前記燃料電池素子のそれぞれが、(i)2つの面を有する電解質シート、(ii)前記電解質シートの一方の面に配置された複数の燃料極、及び(iii)前記電解質シートの他方の面に配置された複数の空気極を有し、前記燃料電池素子が、1枚の燃料電池素子の燃料極側が別の1枚の燃料電池素子の燃料極側に面し、1枚の燃料電池素子の空気極側が別の1枚の燃料電池素子の空気極側に面するように配列され、前記少なくとも3枚の燃料電池素子が焼結フリットによって相互に直接に結合される、
ことを特徴とする一体構造燃料電池装置。
【請求項2】
前記燃料電池素子の間には金属のフレームまたは双極プレートが全く配置されていないことを特徴とする請求項1に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項3】
(i)前記少なくとも3枚の燃料電池素子が共通のガス吸入ポートを共有する、または
(ii)前記焼結フリットが前記燃料電池素子間の気密ガス分離を提供する焼結フリット構造体である、及び/または
(iii)前記焼結フリットが、反応ガス流路、ガスマニフォールド、ガス流一様性を向上させるための制流路並びにガス吸入オリフィス及びガス排出オリフィスの内の1つ以上を少なくともある程度形成する焼結フリット構造体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項4】
前記一体構造燃料電池装置が前記一体構造燃料電池装置の同じ面に配置されたガス吸入ポート及びガス排出ポートを有することを特徴とする請求項1または2に記載の一体構造燃料電池装置。
【請求項5】
請求項1に記載の一体構造燃料電池装置を備える燃料電池アセンブリにおいて、前記燃料電池アセンブリが前記一体構造燃料電池装置に連結された焼結ガスインターフェースマニフォールドをさらに備えることを特徴とする燃料電池アセンブリ。
【請求項6】
(i)前記一体構造燃料電池装置が前記一体構造燃料電池装置の同じ面に配置されたガス吸入ポート及びガス排出ポートを有し、前記ポートが前記ガスインターフェースマニフォールドの少なくとも一方の面に連結される、または
(ii)前記ガスインターフェースマニフォールドが、ガラス、セラミックまたはガラス-セラミックの押出成形物でつくられる、または
(iii)前記ガスインターフェースマニフォールドが前記一体構造燃料電池装置内の1つより多くのオリフィスに連結される、または
(iv)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1kW/kgの重量比電力密度を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項7】
請求項5に記載の燃料電池アセンブリにおいて、
(i)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1kW/リットルの体積比電力密度を有する、または
(ii)前記燃料電池アセンブリが少なくとも1cm2/cm3の単位体積当たり活性セル面積を有する。
ことを特徴とする燃料電池アセンブリ。
【請求項8】
(i)前記燃料電池アセンブリの起動時間が10分未満である、または
(ii)前記ガスインターフェースマニフォールドが焼結されたガラスまたはガラス-セラミックのフリットによって前記一体構造燃料電池装置に連結される、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項9】
請求項1に記載の一体構造燃料電池装置を複数備える燃料電池スタックにおいて、前記一体構造燃料電池装置が縦続起動用に配列されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項10】
燃料電池スタックアセンブリを作製する方法において、
(i)電解質シートを有する少なくとも3枚の燃料電池素子を作製する工程、
(ii)前記燃料電池素子の内の少なくとも2枚の表面にガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料のパターンを形成し、よって複数枚のパターン付燃料電池素子を作製する工程、及び
(iii)前記3枚の燃料電池素子が焼結されたガラス、ガラス-セラミックまたはセラミックをベースとする材料によって相互に永久的に取り付けられ、よって前記燃料電池素子間には金属のフレームまたは双極プレートが全く無いように、前記パターン付燃料電池素子のそれぞれを少なくとも1枚の別の前記燃料電池素子に焼結する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−531713(P2012−531713A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517708(P2012−517708)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039739
【国際公開番号】WO2010/151613
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039739
【国際公開番号】WO2010/151613
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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