説明

軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材

【課題】
軽量気泡コンクリートパネルの表面にできた引っ掻き傷などのように、表面からの深さが比較的浅い傷を埋め戻してコンクリートパネル表面を補修するために用いられる軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材を提供する。
【解決手段】
平均粒径が0.03〜0.5mmであり且つその絶乾状態における軽量気泡コンクリート粉粒体が80〜99.7重量%(A)と、有効成分の固形分が0.3〜20重量%(B)である水溶性接着剤とからなる固形成分((A)+(B)=100重量%)に対して、外割で2〜150重量%の水を含有させることで軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネルの表面にできた引っ掻き傷などのように、表面からの深さが1mm以下の比較的浅い傷を埋め戻してコンクリートパネル表面を補修するために用いられる軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリートパネル(以下ALCパネルという)は、多孔質であるため軽量化が図られる一方で材料としては通常のコンクリートに比べて脆く硬度が低い。そのため、製造や製品搬送時に傷や欠け等が発生し易いという欠点がある。
そこで、従来から、このALCパネルの表面にできた傷や欠け等を補修する補修材が提案されている。
例えば、特許文献1に、セメント、パーライトおよび増粘剤からなるALC補修材に、黒曜石パーライトと可溶性樹脂粉末を配合したALCパネル用補修材が知られている。
また、特許文献2に、ポルトランドセメント20〜45重量%、ALC粉体15〜25重量%、黒曜石パーライト粉体40〜60重量%、およびアクリルラッテクス8〜20重量%とからなるALCパネル用補修材が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−203282号公報
【特許文献2】特開2003−300758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのALCパネル用補修材は、ALCパネルを施工現場へ搬送して構造物へ取付ける際に、パネルの縁部や隅角部が他部材へ衝突等することにより発生した欠損部に充填されていた。
すなわち、パネルに発生した比較的大きな欠損部へ、これら補修材が充填されてパネル形状を整形する目的で使用されていた。
そのため、補修材が充填された補修部分は、ALCパネル母材との強固な密着性とともに、パネルとしての十分な圧縮強度が要求された。そこで、特許文献1および2に記載されているように、セメント成分を補修材に配合することにより、十分な圧縮強度を補修材に具備させる方法がとられていた。
また、黒曜石パーライトは、大きな欠損部分への補修材のコテ塗り作業を容易にするために配合されていた。
【0005】
これらの補修材は、パネル表面からの深さが比較的浅い引っ掻き傷等の補修に対しても共通して用いられていた。そのため、パネル表面が雨水等で濡れたときに、水が浸透したパネル表面の大部分が濡れ色になる。この色を講談社の日本語大辞典1989年版、色名解説で照合したところ、亜麻色または象牙色に類似した色であった。これに対して、補修された部分は、補修材が含有するセメント成分により灰色に発色していた。
特に、ALCパネルの製造過程において、異物が付着したピアノ線で半硬化体を切断したときに発生する引っ掻き傷は、オートクレーブ後の完成したパネルにおいてその長手方向に長く延びた補修となるため、上記問題が顕著となりパネルの外観性を損なっていた。
近年、ALCパネルの使用用途として、倉庫等の内壁で無塗装で使用される場合が多く、補修されてもその補修部位が目立ちクレームとなっていた。また、ALCパネルは建て込み現場搬入後から施工までの間、屋外に仮置きされるため、雨が降った場合にはパネル表面が濡れ、その補修部分が灰色に発色するために更に目立っていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ALCパネルの表面にできた引っ掻き傷などのように、表面からの深さが1mm以下の比較的浅い傷を埋め戻してコンクリートパネル表面を補修するとともに、パネル表面が雨水等で濡れてもその補修部分を目立たせることのない軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、
平均粒径が0.03〜0.5mmであり且つその絶乾状態における軽量気泡コンクリート粉粒体が80〜99.7重量%(A)と、有効成分の固形分が0.3〜20重量%(B)である水溶性接着剤とからなる固形成分((A)+(B)=100重量%)に対して、外割で2〜150重量%の水を含有しているALCパネル用の表面補修材を採用した。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した。
そして、下記項目をそれぞれ好ましい条件とした。
軽量気泡コンクリート粉粒体はJIS Z 8801の呼び寸法1.18mmのふるいを通過した粉粒体(以降1.18mmのふるいと称す)であること、また軽量気泡コンクリート粉粒体の炭酸化率は30%以下であること、水溶性接着剤はメチルセルロースであること、
そしてALCパネル用の表面補修材は、表面補修材の固形成分に対して、外割で40〜150重量%の水を含有してペースト状になっていること、あるいは、外割で2〜40重量%の水を含有した固形状になっていること、
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ALCパネルの表面にできた引っ掻き傷などのように、表面からの深さが1mm以下の比較的浅い傷を埋め戻してALCパネルの表面を補修できるとともに、どのような含水状態、乾燥状態においても補修部分が無補修部分の色とほぼ同じになる。ほぼ同じ色とは、パネル表面から1m離れて目視で観察し、補修箇所が色で識別できない状態をいう。
これは、硬化後の補修材中のメチルセルロースが水を吸水することと、硬化後の補修材中のALC粉粒体間に隙間があり水を浸透しやすくなるためである。また、一度硬化した補修部分は、雨濡れ等により溶け出すことは容易にない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるALCパネル用の表面補修材は、平均粒径が0.03〜0.5mmであり且つその絶乾状態における軽量気泡コンクリート粉粒体が80〜99.7重量%(A)と、有効成分の固形分が0.3〜20重量%(B)である水溶性接着剤とからなる固形成分((A)+(B)=100重量%)に対して、外割で2〜150重量%の水を含有する。
この表面補修材において、ALC粉粒体は充填材の主成分として、また、水溶性接着剤はALC粉粒体同士、および、粉粒体とパネル母材との密着性を確保する機能の双方を果たしている。
【0010】
この表面補修材はALC粉粒体が80〜99.7重量%と多量に配合されているため、同材質であるALCパネルに対する補修材として適している。さらに、パネル表面からの深さが1mm以下の比較的浅い引っ掻き傷などに、この補修材を充填した場合、パネル表面が雨水等で濡れても補修部分はALCパネルの濡れ色(亜麻色または象牙色)となり、補修部分がその周囲から目立つことがない。
引っ掻き傷等のパネル表面上の微細な補修をおこなう材料は、それ自身の強度はあまり必要でなく、狭く浅い溝状の傷に充填しやすく、かつ密着し、補修部分とパネル母材の色とを一致させることが重要になる。
【0011】
そして、この表面補修材は、その固形成分に対して外割で2〜150重量%の水を含有しているため、その形態をペースト状や固形状とすることができる。
ALC粉粒体は、1.18mmのふるいを通過した粉粒体であると、容易に引っ掻き傷などの奥深くまで充填できようになり好ましい。
【0012】
また、ALC粉粒体は炭酸化によって黄色味が増加し、母材との色差があらわれてくるため、炭酸化率(CO2化)は30%以下が好ましい。
【0013】
また、この表面補修材には、水溶性接着剤が有効成分の固形分で0.3〜20重量%になるように配合されている。このため、ALC粉粒体同士、および、粉粒体とパネル母材との密着性が十分に確保される。その結果、補修された部分の補修材が、パネル母剤から剥離して脱落するという不具合はなくなる。
この水溶性接着剤としては、硬化後に透明または半透明になるものが好適であり、デンプン系接着剤、ゼラチンを主成分とする膠(にかわ)系接着剤、エーテル系セルロース接着剤、水性高分子イソシアネート系接着剤が使用できる。
エーテル系セルロース接着剤としてはメチルセルロースやカルボキシルセルロースが好ましく、また、水性高分子イソシアネート系接着剤としては水性ビニルウレタンが好ましい。
水溶性接着剤としてメチルセルロースを用いた場合、ALC粉粒体を97〜99.5重量%にするとともに、メチルセルロースを0.5〜3重量%とすることがALC粉粒体同士、および、粉粒体とパネル母材との密着性、さらに経済性の面から最も望ましい。
【0014】
また、この表面補修材が、その固形成分に対して外割で40〜150重量%の水を含有しているペースト状であると表面補修材に適度な流動性が付与されて、引っ掻き傷などの奥深くまで指先等で容易に表面補修材を押し込むことが可能となる。
そして、押し込まれた表面補修材はパネル表面に開口する気孔内部にまで繋がって充填されるためアンカー効果を果たすようになり、表面補修材が雨に濡れたり乾燥したりしてもパネル表面から脱落し難くなる。
従って、工場出荷前の製品段階におけるパネル表面の補修作業に好適である。
【0015】
また、この表面補修材が、その固形成分に対して外割で2〜40重量%の水を含有している固形状であると、その取り扱い・持ち運び性が良い。
さらに、その形状を棒状にして、その先端部分を引っ掻き傷などに単に擦り込めば、傷の奥深くにまで表面補修材を容易に充填することができるようになる。
従って、施工現場での最終段階におけるパネルの表面補修に適している。
【0016】
また、ALC粉粒体および水溶性接着剤からなる表面補修材の固形成分に、外割で2〜20重量%の固形成分の撥水剤を含有しているペースト状または固形状の表面補修材であると、撥水機能を既に持つパネル表面の傷を補修した後にパネル表面が雨水等に濡れても、その補修部分がその周囲と同様に撥水するため、周囲との色違いや変色が発生しない。撥水剤は、シリコン系やシラン系のエマルジョンタイプのものが好ましい。
【0017】
次に、本発明におけるALCパネル用の表面補修材の製造方法について説明をする。
ペースト状のALCパネル用の表面補修材は、平均粒径が0.03〜0.5mmのALC粉粒体を80〜99.7重量%と、水溶性接着剤が含有する有効成分を固形分に換算して0.3〜20重量%とを合算した固形成分を100重量%とし、それに外割で40〜150重量%の水を添加して混練することにより製造される。
固形成分100重量%に対して、添加する水分量を外割で40〜150重量%にすると、適度な流動性が確保されて引っ掻き傷への補修材の充填作業が容易になる。
【0018】
このとき、前述の表面補修材で説明したのと同様に、ALC粉粒体は炭酸化率が30%以下で、1.18mmのふるいを通過した粉粒体であることが好ましく、また、水溶性接着剤は硬化後に透明または半透明となるもの、具体的には、デンプン系接着剤、ゼラチンを主成分とする膠(にかわ)系接着剤、エーテル系セルロース接着剤、水性高分子イソシアネート系接着剤が使用できる。
さらに、ALC粉粒体を97〜99.5重量%にするとともに、メチルセルロースを0.5〜3重量%とすることがALC粉粒体同士、および、粉粒体とパネル母材との密着性、さらに経済性の面から最も望ましい。
【0019】
固形状の成形体のALCパネル用の表面補修材は、平均粒径が0.03〜0.5mmのALC粉粒体を80〜99.7重量%と、水溶性接着剤が含有する有効成分を固形分に換算して0.3〜20重量%とを合算した固形成分を100重量%とし、それに外割で10〜70重量%の水を添加・混練して所定の形に成型することにより製造される。
乾燥は自然乾燥もしくは強制乾燥のいずれの方法でも良く、最終的に、外割で2〜40重量%の水を含有する固形状の成形体とする。
特に、固形100重量部%に対して、添加する水分を外割りで50〜60重量%にし、直径10mmの棒状に成型した後に、60〜80℃の熱風乾燥炉で2〜3時間乾燥して得た固形状の表面補修材は、外側が硬く中深部が柔らかい。そのため、引っ掻き傷に容易に充填され、外側が硬いために充填時に折れにくくなる。
【0020】
このとき、ALC粉粒体は炭酸化率が30%以下で1.18mmのふるいを通過した粉粒体であること、また、使用でき、かつ好ましい水溶性接着剤は、前記ペースト状のALCパネル用の表面補修材に記載したものと同じである。
所定の形に成型する方法は、プレス成形、押し出し成形、あるいは人の手により成形等、いずれの方法であっても良い。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例および比較例を下記に説明する。
【0022】
[実施例1]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0023】
[実施例2]
実施例1で得た補修材原料のALC粉粒体を、さらに呼び寸法300μmのふるいで篩い、ふるい残分を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.50mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0024】
[実施例3]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを呼び寸法75μmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.03mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0025】
[実施例4]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を99.7重量%とメチルセルロースを0.3重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0026】
[実施例5]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を80重量%とメチルセルロースを20重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0027】
[実施例6]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を99.5重量%とメチルセルロースを0.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0028】
[実施例7]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を97重量%とメチルセルロースを3重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0029】
[実施例8]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で40重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0030】
[実施例9]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で150重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0031】
[実施例10]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水と有効固形成分が5重量%のシリコン系エマルジョンの撥水剤を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0032】
[実施例11]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水と有効固形成分が2重量%のシリコン系エマルジョンの撥水剤を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0033】
[実施例12]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水と有効固形成分が10重量%のシリコン系エマルジョンの撥水剤を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0034】
[実施例13]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを、棒状(直径10mm、長さ50mm)に手で整形した後に70℃の乾燥炉で6時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が8重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様にALC色(白色)であった。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0035】
[実施例14]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に手で整形した後に70℃の乾燥炉で12時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が2重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様にALC色(白色)であった。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0036】
[実施例15]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に整形した後に70℃の乾燥炉で2時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が40重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側は乾燥しALC色(白色)をしているものの、中深部は濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0037】
[実施例16]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に整形した後に70℃の乾燥炉で3時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が30重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側は乾燥しALC色(白色)をしているものの、中深部は濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0038】
[実施例17]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に整形した後に20℃の無風の室内で12時間自然乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が40重量%となった濡れ色(亜麻色または象牙色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様に濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0039】
[実施例18]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、83.1重量%のALC粉粒体がふるいを通過した。このALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したもに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。
これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に整形した後に20℃の無風の室内で24時間自然乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が30重量%となった濡れ色(亜麻色または象牙色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様に濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0040】
[実施例19]
ALCパネル加工機の集塵粉65重量%とこれを強制的に炭酸化した集塵粉35重量%を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
また、これの炭酸化率は30%であった。このALC粉粒体を99.8重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0041】
[評価方法]
得られたそれぞれの表面補修材を、ALCパネル(幅300mm×長さ1000mm×厚さ100mm)の中央部に予め設けておいた引っ掻き傷(幅1mm×深さ1mm×長さ300mm)を補修した。このとき、表面補修材が、ペースト状の場合はヘラを用いて、また、固形状の場合はその先端部分を傷部分に擦り込むことにより、表面補修材を引っ掻き傷の奥深くまで充填した。そのときの充填作業の状況で容易に充填できた場合を「○」、容易ではないが充填できた場合を「△」、完全には充填できなかった「×」とした。
【0042】
補修したパネルを3時間自然乾燥させたのち、その補修部分とその周囲との色違いの有無を、パネル表面から1m、2mとそれぞれ離れて目視により観察した。
【0043】
次に、パネル表面を水で濡らし、補修部分とその周囲との色違いの有無を、パネル表面から1m離れて目視により観察した。なお、撥水を添加した補修材は、撥水パネルを使用し補修した。補修部分が識別できない場合を「○」、注視することにより識別される場合を「△」、容易に識別される場合を「×」とした。
【0044】
さらに、濡れたパネル表面をドライヤーで30秒間強制乾燥させたときの、表面補修材のパネル表面からの剥離状態を確認し、剥離がない場合を「○」、剥離が一部で確認できた場合を「△」、大部分の補修場所で剥離が確認できた場合を「×」とした。
【0045】
総合評価は、それぞれの項目ごとに「○」は2点、「△」は1点、合計が10点を「○」、9〜8点「△」、項目中に「×」があるかまたは7点以下の場合を「×」とした。
【0046】
以上の実施例および次の比較例の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
[比較例1]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。このALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.68mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0049】
[比較例2]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを呼び寸法75μmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体をサイクロン式の粉砕機で粉砕し補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.006mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0050】
[比較例3]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を99.8重量%とメチルセルロースを0.2重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0051】
[比較例4]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を70重量%とメチルセルロースを30重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0052】
[比較例5]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で35重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0053】
[比較例6]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で180重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0054】
[比較例7]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水と有効成分の固形分が1重量%のシリコン系エマルジョンの撥水剤を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0055】
[比較例8]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水と有効成分の固形分が20重量%のシリコン系エマルジョンの撥水剤を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0056】
[比較例9]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものを、棒状(直径10mm、長さ50mm)に手で整形した後に70℃の乾燥炉で15時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が1重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様にALC色(白色)であった。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0057】
[比較例10]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものを、棒状(直径10mm、長さ50mm)に手で整形した後に70℃の乾燥炉で1時間乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が50重量%となったALC色(白色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側は乾燥しALC色(白色)をしているものの、中深部は濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0058】
[比較例11]
ALCパネル加工機の集塵粉を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。
このALC粉粒体を98.5重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で60重量%の水を添加し混練することでペースト状のものを得た。これを棒状(直径10mm、長さ50mm)に整形した後に20℃の無風の室内で6時間自然乾燥させて、固形成分に対して外割で含水率が55重量%となった濡れ色(亜麻色または象牙色)の棒形状の固形状表面補修材を得た。
これを長さ方向の中心より2つに切断し、その断面を目視で観察したところ、外側から中深部まで一様に濡れ色(亜麻色または象牙色)をしていた。
固形状表面補修材の含水率は、得られた固形状表面補修材を、さらに105℃の乾燥炉で12時間乾燥し、絶乾状態にすることで求めた。
【0059】
[比較例12]
ALCパネル加工機の集塵粉60重量%とこれを強制的に炭酸化した集塵粉38重量%を105℃の乾燥炉で12時間乾燥させ絶乾状態にした。これを1.18mmのふるいで篩い、ふるい通過分のALC粉粒体を補修材の原料とした。
これの平均粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定したところ0.15mmであった。また、これの炭酸化率は35%であった。このALC粉粒体を99.8重量%とメチルセルロースを1.5重量%混合したものに、外割で70重量%の水を添加して混練することによりペースト状のALC用の表面補修材を得た。
【0060】
[実験結果]
実施例1〜19の表面補修材は、粒径が0.5mm以下のALC粉粒体を80〜99.7重量%、および0.3〜20重量%であるメチルセルロースを含有しているため補修部分乾燥後には、パネル表面から1m離れた場所より目視で観察してもパネル内の補修部分を認識することはできなかった。
【0061】
実施例1〜19の表面補修材は、パネル表面を水で濡らしても引っ掻き傷の補修部分は無補修部分と同様な濡れ色(亜麻色または象牙色)を示し、パネル表面から1m離れた場所より目視で観察しても、その周囲との色違いが認識されなかった。
また、撥水剤含有品は、撥水剤をALC粉粒体とメチルセルロースの合計の重量に対して外割りで2〜10重量%混合された補修材を使用した補修部は無補修部分と同様に濡れ色(亜麻色または象牙色)を示さず周囲との色違いが認識されなかった。
さらに、これらの表面補修材は容易に充填できて、乾燥後もパネル表面から剥離することはなかった。
【0062】
実施例13〜18の固形状表面補修材は、固形状であることより使い勝手がよく建て込み現場での最終仕上げに利用できる。実施例13〜14では、外側も中深部も硬いため、小さな引っ掻き傷の補修に有効であり、また乾燥もいらない。実施例17〜18では外側も中深部も柔らかいため、大きな傷の補修に有効であり、乾燥もペースト状のものに比べ早い。実施例15〜16では、外側が硬く、かつ中深部が柔らかいため、強度が十分であって折れ難いとともに、大きな傷の補修にも有効である。
【0063】
一方、比較例1では表面補修材中に粒径が1mmを超えるALC粉粒があるために充填しずらく、完全に引っ掻き傷を埋めることができなかった。
比較例2では、ALC粉粒体の粒径が微細すぎ、この配合ではパサパサになり充填しづらく、剥離も発生した。また、補修部の色が黒ずみ色違いが生じた。これはALC粉粒体中の珪石の結晶までも粉砕したためであると推測する。
比較例3ではメチルセルロースの過少により剥離が発生し、比較例4では原因は不明であるが補修部が黒ずみ色違いが生じた。また、メチルセルロースの多量混合はコストアップになり現実的ではない。
比較例5では水が過少であるため表面補修材がパサパサになり引っ掻き傷の奥深くにまで表面補修材を充填できなかった。比較例6では水が過多であるため、表面補修材が充填しづらく、また乾燥後に補修部分が痩せ補修部が目立った。
比較例7では撥水剤が過少であるため、補修部が濡れ色(亜麻色または象牙色)を示し無補修部分と色違いが生じた。
比較例8は性能的には問題はないがコストが高いため現実的ではない。
比較例9では水が過少であるため、表面補修材が硬すぎるため充填しづらく、また剥離も認められた。
比較例10,11では水過多により棒形状が維持できずに充填中に壊れた。
比較例12では、補修部が黄色になり、水濡れ時に特に目立った。
【0064】
なお、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によればパネル表面の引っ掻き傷などに対して適正な補修がなされるようになり、ALCパネル業界における貢献は絶大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.03〜0.5mmであり且つその絶乾状態における軽量気泡コンクリート粉粒体が80〜99.7重量%(A)と、有効成分の固形分が0.3〜20重量%(B)である水溶性接着剤とからなる固形成分((A)+(B)=100重量%)に対して、外割で2〜150重量%の水を含有している軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項2】
前記軽量気泡コンクリート粉粒体は、JIS Z 8801の呼び寸法が1.18mmのふるいを通過した粉粒体である請求項1記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項3】
前記軽量気泡コンクリート粉粒体は、炭酸化率が30%以下である請求項1または2記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項4】
前記水溶性接着剤は、メチルセルロースである請求項1〜3の何れか一項に記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項5】
前記請求項1〜4の何れか一項に記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材の固形成分に対して、外割で40〜150重量%の水を含有しているペースト状の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項6】
前記請求項1〜4の何れか一項に記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材の固形成分に対して、外割で2〜40重量%の水を含有している固形状の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。
【請求項7】
前記請求項5または6記載の軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材の固形成分に対して、外割で2〜10重量%の有効固形成分の撥水剤を含有している軽量気泡コンクリートパネル用の表面補修材。

【公開番号】特開2011−57507(P2011−57507A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209265(P2009−209265)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000185949)クリオン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】