説明

軽量繊維シートおよび繊維製品

【課題】軽量性と防透性に優れた軽量繊維シート、および該軽量繊維シートを用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】目付けが290g/m以下の繊維シートであって、該繊維シートに、異型度が2.0以上であり、かつ単繊維横断面において、横断面積S1と外接円面積S2との比S1/S2が0.65以下である異型断面短繊維が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量性と防透性に優れた軽量繊維シート、および該軽量繊維シートを用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維などの繊維材料を用いた繊維シートは、家屋・鉄道車両・航空機・自動車等、様々な用途に使用されており、それぞれの用途で最も適したタイプのものが使用されている。特に近年では、自動車の構成材料については燃費向上のためにあらゆる材料についてその一層の軽量化をはかることが強く求められており、自動車内装材についてもその例外ではない。ところが一方、内装材は軽量化と併せて、裏材が透けて見えないよう防透性も同時に求められるが、軽量化をはかると防透性が損われるという問題があった。
【0003】
かかる対策として、一般に合成繊維に用いるポリマーは透明であることが多く、合成繊維で形成された繊維製品は透けやすいという欠点があることから、一般に酸化チタンなどの光隠蔽剤を含有せしめることにより、遮光性の高い繊維とする方法が採られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、光隠蔽剤をポリマーに少量添加しただけではでは十分な遮光性や透け防止の効果が得られないおそれがあった。逆に多量に光隠蔽剤をポリマーに添加すると、得られる繊維の風合いが硬くなるおそれがあり、また、配合した高濃度の光隠蔽剤により、その後の工程通過時に走行糸が接触する装置部品が著しく摩耗するおそれがあった。さらには光隠蔽剤の比重が大きいため繊維の軽量性が損われるおそれもあった。
【0004】
また、繊維内部に中空部や空隙を設けたりする事で光の乱反射を増加させ、遮光性、軽量性を具備させる提案がなされている。例えば、特定量の微粒子、蛍光白色顔料を中空複合繊維に含有させることが提案されている(特許文献2参照)。かかる方法においては、十分な軽量性、遮光性を発現させるためには中空率を高める必要があり、結果的に中空部の割れが発生しやすく、また、中空部が繊維軸方向に連続して存在するため外力によって潰れやすくなり、軽量性、遮光性とも損なわれるおそれがあった。
【0005】
以上のように、軽量性と防透性とは通常相反する性質であり、軽量性と防透性とを兼備した繊維シートはこれまであまり提案されていない。
なお、本発明とは全く異なる課題を達成するためではあるが、異型断面繊維を用いた繊維シートは知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−94623号公報
【特許文献2】特開平11−350256号公報
【特許文献3】特開平10−273861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、軽量性と防透性に優れた軽量繊維シート、および該軽量繊維シートを用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、異型断面短繊維を用いて繊維シートを構成すると、軽量であるにもかかわらず優れた防透性が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明によれば「目付けが290g/m以下の繊維シートであって、該繊維シートに、下記(1)および(2)の要件を同時に満足する異型断面短繊維が含まれることを特徴とする軽量繊維シート。」が提供される。
(1)異型断面短繊維の単繊維横断面において、異型度が2.0以上である。
ただし、異型度とは、単繊維横断面の外接円直径と内接円直径との比である。
(2)異型断面短繊維の単繊維横断面において、横断面積S1と外接円面積S2との比S1/S2が0.65以下である。
【0010】
その際、前記異型断面短繊維の外接円直径が10〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、前記異型断面短繊維の繊維長が30〜100mmの範囲内であることが好ましい。また、前記異型断面短繊維がポリエステル繊維からなることが好ましい。また、前記異型断面短繊維が、着色剤を含有するポリマーからなることが好ましい。また、繊維シートが、前記異型断面短繊維を含むウエブを絡合加工したものであることが好ましい。また、繊維シートの平均密度が200kg/m以下であることが好ましい。また、繊維シートの防透度が1.6以上であることが好ましい。
【0011】
ただし、360〜830nmの波長領域について繊維シートの透過率を、分光光度計を用いて測定し、得られた透過率曲線から該波長域における透過率の積分値T1を求め、この透過率の積分値T1と該繊維シートの密度Mより、単位密度当たりの非透過率((100−T1)/M)を算出し、防透度と定義する。
【0012】
また、本発明によれば、前記の軽量繊維シートを用いてなる、天井材、壁材、床材、カーペット、居住空間の間仕切り、および自動車内装材からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量性と防透性に優れた軽量繊維シート、および該軽量繊維シートを用いてなる繊維製品が得られる。特に自動車分野においては、コストダウンおよび燃費の向上の両方が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の繊維シートは有機繊維からなる繊維材料を用いたシートであって、その目付けが290g/m以下(好ましくは10〜290g/m)である。かかる目付けが290g/mよりも大きいと、軽量性が損われ好ましくない。
【0015】
また、本発明の繊維シートには、下記(1)および(2)の要件を同時に満足する異型断面短繊維が含まれる。
(1)異型断面短繊維の単繊維横断面において、異型度が2.0以上(好ましくは2.1〜4.0)である。
ただし、異型度とは、単繊維横断面の外接円直径D1と内接円直径D2との比D1/D2である。なお、内接円直径は内接する最大直径であり、表1に、十字断面、H断面、異型中空断面、丸断面、三角断面、真円中空断面の場合について、外接円および内接円を測定する箇所を破線で図示する。
(2)異型断面短繊維の単繊維横断面において、横断面積S1と外接円面積S2との比S1/S2が0.65以下(好ましくは0.1〜0.6)である。
【0016】
ここで、前記異型度が2.0未満の場合は、繊維シートを光が透過しやすくなるため十分な防透性が得られず好ましくない。また、前記比S1/S2が0.65よりも大きい場合も繊維シートを光が透過しやすくなるため十分な防透性が得られず好ましくない。
【0017】
前記異型断面短繊維の具体的な単繊維横断面形状としては、前記(1)および(2)を同時に満足する限り特に限定されないが、十字断面、H断面、扁平断面、くびれつき扁平断面などが好ましい。
【0018】
その際、異型断面短繊維の単繊維横断面において、巾が最も狭くなる位置の巾H1(表1に例示する。)と外接円直径D1との比H1/D1(広がり度)が0.3以上であることが好ましい。かかる比巾H1/D1が0.3よりも小さい場合は、異型断面短繊維が最密充填され易いため低密度の繊維シートが得られにくくなるおそれがある。
【0019】
前記異型断面短繊維の外接円直径としては10〜100μmの範囲内であることが好ましい。該外接円直径が10μmよりも小さいと、工程安定性が損われるおそれがある。逆に該外接円直径が100μmよりも大きいと防透性や外観の均一性が不十分となるおそれがある。
【0020】
前記異型断面短繊維において、その繊維長が30〜100mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が30mmよりも小さいと工程安定性が損なわれるおそれがある。逆に、該該繊維長が100mmよりも大きいと、繊維が1方向に配列しやすくなり防透性が損なわれるだけでなく、工程安定性も損なわれるおそれがある。なお、繊維長を30〜100mmの範囲内とするには、常法により繊維トウをカットするとよい。
【0021】
前記異型断面短繊維の繊維種類は特に限定されないが、リサクル性、繊維強度、また、後記のように着色剤を容易に練り込む上でポリエステル繊維が好ましい。
ここでいうポリエステルとしては、主としてポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリ乳酸(PLA)およびステレオコンプレックスポリ乳酸が好ましく、なかでもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
【0022】
また、前記異型断面短繊維が、着色剤を含有するポリマーで形成された、いわゆる原着繊維であると防透性が向上し好ましい。特に、前記異型断面短繊維が着色剤を含有するポリエステルで形成されることが好ましい。原着繊維を使用した場合、より色の深みが向上し好ましい外観となる。
【0023】
ここで、ポリマー中に含有される着色剤は公知のいずれの着色剤でも使用することができ、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄等の無機系顔料、フタロシアニン系、アゾ系、ペリノン系、ペリレン系、アントラキノン系等の有機系顔料、さらにカオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化ケイ素等も使用することができる。また該着色剤の添加方法も公知のいずれの方法でも添加可能である。
【0024】
例えばポリエステルの場合、ポリマーの重合工程で加える方法、マスターペレット化したのち染着剤を含有しないベースポリエステルと混練する方法、染着剤と液状ポリエステルとをあらかじめ混合した液状の添加剤組成物を紡糸直前の溶融ポリエステル流中にギアポンプ等で計量しながら注入添加した後、静的あるいは動的混練分散を行う方法等があげられる。なかでも紡糸装置の汚染や取り扱い性、コスト等を考慮するとマスターペレットによる方法が好ましい。
【0025】
なお、前記異型断面短繊維を形成するポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤(酸化チタン)、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0026】
また、前記異型断面短繊維に捲縮が付与されていると防透性がさらに向上し好ましい。その際、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
【0027】
本発明の繊維シートは前記の異型断面短繊維だけで構成されることが最も好ましいが、他の繊維を含有していてもよい。その際、他の繊維の含有量としては繊維シート重量対比50重量%以下であることが好ましい。また、かかる他の繊維としては、リサイクル性の上で前記のようなポリエステル繊維が好ましいが、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、共重合ポリエステル系ポリマーなどの熱接着性成分を繊維表面に配した熱接着性複合短繊維や、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、天然繊維、炭素繊維ないしそれら短繊維の混綿体などでもよい。
【0028】
本発明の繊維シートにおいて、シートの組織は特に限定されず織物や編物でもよいが、繊維の配向をランダムとし防透性を高める上で、不織布が好ましい。
本発明の繊維シートは、例えば以下の製造方法により製造することができる。すなわち、まず、前記の前記異型断面短繊維を用いて常法によりウエブを得る。その際、該ウエブには前記異型断面短繊維が50重量%以上含まれていると、防透性と軽量性が向上し好ましい。
【0029】
次いで、前記ウエブに絡合加工を施すことにより、目付けが290g/m以下の繊維シートを得る。その際、絡合加工の方法としては、ニードルパンチ法、ケミカルボンディング法、エアスルー法、スパンレース法、エアレイド法などが例示される。なかでも、軽量性に優れた繊維シートを得る上でニードルパンチ法が好ましい。
【0030】
また、通常の染色加工、さらには、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
かくして得られた繊維シートには前記異型断面短繊維が含まれるので、該繊維シートは、軽量であるにもかかわらず優れた防透性を有する。ここで、繊維シートの防透度としては1.6以上(好ましくは1.6〜3.0)であることが好ましい。
【0031】
ただし、360〜830nmの波長領域について繊維シートの透過率を、分光光度計を用いて測定し、得られた透過率曲線から該波長域における透過率の積分値T1を求め、この透過率の積分値T1と該繊維シートの密度Mより、単位密度当たりの非透過率((100−T1)/M)を算出し、防透度と定義する。
【0032】
また、かかる繊維シートにおいて、繊維シートの平均密度が200kg/m以下(より好ましくは10〜100kg/m、特に好ましくは10〜60kg/m3)であると、優れた防透性が得られ好ましい。本発明の繊維シートは低目付けなので、繊維シートの密度が高くなると、光が透過しやすく防透性が損われるおそれがある。また、低密度であると、製造工程通過性や製品の耐久性にも優れる。
【0033】
次に、本発明の繊維製品は、前記の繊維シートを用いてなる、天井材、壁材、床材、カーペット、居住空間の間仕切り、および自動車内装材(天井材、カーシート表皮材、フロアーマットなど)からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。ここで、かかる繊維製品は前記の繊維シートのみを用いて構成されてもよいし、裏面に樹脂バッキング加工、さらには、形態安定性向上や吸音性アップ等のために裏面層に各種不織布シート、織編物、ウレタンフォーム、フィルム等を貼り合わせることも問題ない。
【0034】
かかる繊維製品は前記の繊維シートを用いているので、軽量性と防透性に優れる。特に自動車分野においては、コストダウンおよび燃費の向上の両方が期待できる。
なお、前記繊維シートは、これらの繊維製品に限定されることなく、他の用途にも用いられることはいうまでもない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例をあげて本考案を詳細に説明するが、本考案はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0036】
(1)異形度
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面出しを行った包埋ブロックを作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、倍率1000〜20000倍の任意の倍率で単繊維の横断面を観察し、得られた写真をデジタル化した。該断面写真において単繊維横断面における外接円の直径D1と、内接円の直径D2の比(D1/D2)を算出し、異形度とした。
【0037】
(2)面積比
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面出しを行った包埋ブロックを作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、倍率1000〜20000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、得られた写真をデジタル化した。該断面写真において上述した条件で単繊維横断面における断面積S1と外接円の面積S2の比(S1/S2)を算出し、面積比とした。
【0038】
(3)広がり度
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面出しを行った包埋ブロックを作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、倍率1000〜20000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、得られた写真をデジタル化した。該断面写真において上述した条件で短繊維横断面における外接円の直径D1と最も低くなるように設定した高さH1の比(H1/D1)を算出し、広がり度とした。
【0039】
(4)厚さ、目付、密度
JIS K6400により測定した。
【0040】
(5)防透度
分光光度計を使用し、360〜830nmの波長領域について透過率を測定した。各試料において測定箇所を違えて4 回測定した結果を平均して得られた透過率曲線から該波長域における透過率の積分値T1を求めた。この透過率の積分値T1および試料の密度Deから単位密度当たりの非透過率({100−T1}/De)を算出し、防透度とした。
【0041】
[実施例1]
口金として表1に示す十字断面繊維を形成しうる口金を用い、着色剤(DIC社製、製品名MC−034、MC−059、MC−083)を含有したポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が表1に示す十字型であり、異形度2.0、面積比0.65、広がり度0.71、繊維径23μm、繊維長51mmの異形短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け151gr/m、厚さ3.0mm、平均密度50kg/mの軽量繊維シートを得た。該繊維シートにおいて、防透度は1.94と十分高く、防透性に優れるものであった。
【0042】
[実施例2]
口金として表1に示すH断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が表1に示すH型であり、異形度2.5、面積比0.53、広がり度0.74、繊維径25μm、繊維長51mmの短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け153gr/m、厚さ3.1mm、平均密度49kg/mの繊維シートを得た。該軽量化繊維シートにおいて、防透度は1.95と十分高く、防透性に優れるものであった。
【0043】
[実施例3]
口金として表1に示す異形中空断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が表1に示す異形中空型であり、異形度2.9、面積比0.57、広がり度0.77、繊維径24μm、繊維長51mmの短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け151gr/m、厚さ2.8mm、平均密度54kg/mの繊維シートを得た。該軽量化繊維シートにおいて、防透度は1.72と十分高く、防透性に優れるものであった。
【0044】
[実施例4]
口金として表1に示す十字断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が十字型であり、異形度2.0、面積比0.65、広がり度0.71、繊維径23μm、繊維長51mmの異形短繊維(グレー色に着色)であった。この該異形短繊維50重量%と、通常のポリエチレンテレフタレート(着色剤を含有しない。)からなる丸断面短繊維(繊維径18μm、繊維長51mm、グレー色に着色)50重量%とを用いてブレンド、カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維50%混合のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け155gr/m、厚さ2.8mm、平均密度55kg/mの軽量化繊維シートを得た。該繊維シートにおいて、防透度は1.65と十分高く、防透性に優れるものであった。
【0045】
[比較例1]
口金として通常の丸断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が丸型であり、異形度1.0、面積比1.0、広がり度1.0、繊維径18μm、繊維長51mmの短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け183gr/m、厚さ3.2mm、平均密度57kg/mの繊維シートを得た。該繊維シートにおいて、防透度は1.58と低かった。
【0046】
[比較例2]
口金として表1に示す三角断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が三角型であり、異形度1.9、面積比0.68、広がり度0.74、繊維径20μm、繊維長51mmの短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け154gr/m、厚さ2.6mm、平均密度59kg/mの繊維シートを得た。該繊維シートにおいて、防透度は1.53と低かった。
【0047】
[比較例3]
口金として表1に示す真円中空断面繊維を形成しうる口金を用い、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸、延伸を行った後、常法によりカットし短繊維とした。得られた短繊維は、横断面形状が真円中空型であり、異形度2.8、面積比0.88、広がり度1.0、繊維径22μm、繊維長51mmの短繊維(グレー色に着色)であった。カーデイング、クロスレイヤーにより該異形短繊維のウェブを形成し、次いでニードルパンチを施し、目付け152gr/m、厚さ2.4mm、平均密度63kgr/mの繊維シートを得た。該繊維シートにおいて、防透度は1.41と低かった。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本考案によれば、軽量性と防透性に優れた軽量繊維シート、および該軽量繊維シートを用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付けが290g/m以下の繊維シートであって、該繊維シートに、下記(1)および(2)の要件を同時に満足する異型断面短繊維が含まれることを特徴とする軽量繊維シート。
(1)異型断面短繊維の単繊維横断面において、異型度が2.0以上である。
ただし、異型度とは、単繊維横断面の外接円直径D1と内接円直径D2との比D1/D2である。
(2)異型断面短繊維の単繊維横断面において、横断面積S1と外接円面積S2との比S1/S2が0.65以下である。
【請求項2】
前記異型断面短繊維の外接円直径が10〜100μmの範囲内である、請求項1に記載の軽量繊維シート。
【請求項3】
前記異型断面短繊維の繊維長が30〜100mmの範囲内である、請求項1または請求項2に記載の軽量繊維シート。
【請求項4】
前記異型断面短繊維がポリエステル繊維からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の軽量繊維シート。
【請求項5】
前記異型断面短繊維が、着色剤を含有するポリマーからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の軽量繊維シート。
【請求項6】
繊維シートが、前記異型断面短繊維を含むウエブを絡合加工したものである、請求項1〜5のいずれかに記載の軽量繊維シート。
【請求項7】
繊維シートの平均密度が200kg/m以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の軽量繊維シート。
【請求項8】
繊維シートの防透度が1.6以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の軽量繊維シート。
ただし、360〜830nmの波長領域について繊維シートの透過率を、分光光度計を用いて測定し、得られた透過率曲線から該波長域における透過率の積分値T1を求め、この透過率の積分値T1と該繊維シートの密度Mより、単位密度当たりの非透過率((100−T1)/M)を算出し、防透度と定義する。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の軽量繊維シートを用いてなる、天井材、壁材、床材、カーペット、居住空間の間仕切り、および自動車内装材からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。

【公開番号】特開2010−275674(P2010−275674A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131956(P2009−131956)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】