説明

輝度向上部材用ポリエステルフィルム

【課題】 基材として使用されるポリエステルフィルムの表面に塗布された液晶の配向を高度に制御することができ、当該液晶にムラやスジ状の欠陥が生じることを防止することができる、優れた特性を有する輝度向上部材用フィルムとして好適なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 積層構造のポリエステルフィルムであり、少なくとも一方の最外層表面の水滴接触角が30〜55°であることを特徴とする輝度向上部材用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度向上部材用として好適なポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶関連部材で輝度向上の役割を果たすものには、輝度上昇フィルムとして、BEF(Brightness Enhancement Film:3M社製)や反射型偏光フィルム、DBEF(Dual BrightnessEnhancement Film:3M社製)が知られており、携帯電話から液晶TVまで幅広く使われている。これらのフィルムによると、例えば、液晶TVにおいて、バックライト光量やライトの本数、LEDの個数が減らせるという、環境的なメリットがある。
【0003】
しかし、これらのフィルムは、価格が高いこと、供給の安定性等の懸念点がある。これらの代替製品の検討がなされているが、輝度上昇フィルムとして満足できる特性を有するフィルムはまだ完成していない。
【0004】
BEFやDBEFのように輝度向上を達成するためには、いくつか方法がある。例えば、ポリマー表面の形状を鋳型で付与することで光の反射を利用する方法(BEF)、フィルムに超積層構造を付与させる方法(DBEF)、また、入射してそのまま透過しない光のリサイクルを利用する様々なネマッチック液晶やコレステリック液晶などをポリマーに塗布、配向させる方法がある。
【0005】
ポリマーに液晶を塗布する方法が価格や供給安定性の点で優位であるが、ポリマー表面とその接する液晶との配向制御が鍵となる。
【0006】
通常、ネマチック液晶やコレステリック液晶などの配向性を有する液晶を塗布する部材としてはポリイミドが一般的であり、その鍵となるのは、配向制御のために行う表面処理、例えば、ラビング処理であるが、代替フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合、表面処理後の、例えば、ラビング処理後の液晶塗布時に、ポリイミドとの配向性の違いから、液晶が上手く配向できないことや、ムラ状やスジ状の外観欠陥が生じることなどが問題となる。
【0007】
これらの問題は基材となるポリエステルフィルムの最表面の状態が鍵となり、特別な表面状態を作り出すことで解決できる。例えば、製膜条件を工夫することで結晶化度を変更すること、また、表面の硬さを含有粒子の種類とその含有量を工夫することでフィルムの表面硬さを変更すること、でラビング処理が最大限効果的にでき、液晶が上手く配向することができる。
【0008】
しかし、クリーン度の高いポリエステルフィルムの生産現場でのラビング処理は、チリ等発生の原因となる。また、工程数が増え、生産性が悪いという問題、さらに、ラビング処理は非常に緻密で微調整が難しいために歩留まりが悪いという問題が生じる。
【0009】
そこで、塵等が発生しないインラインの非接触で処理均一性を持つラビング処理に変わる、配向性液晶が塗布できる方法、例えば、電気的処理や光的処理等が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−26831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶を塗布した際の配向を制御でき、ムラやスジ状の欠陥の生じない、輝度向上部材用フィルムとして好適なポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、積層構造のポリエステルフィルムであり、少なくとも一方の最外層表面の水滴接触角が30〜55°であることを特徴とする輝度向上部材用ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステルフィルムによれば、液晶を塗布した際の配向を制御でき、ムラやスジ状の欠陥の生じない、輝度向上部材用フィルムとして好適に利用することのできるポリエステルフィルムを安価にかつ歩留まり良く提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルフィルムを構成する、ポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムにおいて使用するポリエステルは、生産コストの削減や工程作業容易化を追及した結果、ホモポリエステルであることが好ましい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
【0017】
本発明におけるポリエステルフィルムの中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こしやすくなり、生産性の面で問題になることがある。
【0020】
さらに本発明におけるポリエステルフィルム中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0022】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0023】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
【0025】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムは、後工程で配向液晶塗布が必要であるために、表面濡れ性等の表面条件が重要な要点となる。本発明の必要な表面条件は、極端に低い表面水滴接触角、つまり表面濡れ性の高いことが必須である。その変更方法としては、電気的表面改質かコーティングによる機能付与が考えられる。しかし、本発明におけるポリエステルフィルムにおいて、コーティングは好ましくない。この輝度向上部材用途ポリエステルフィルムでは、後工程において、液晶を塗布する工程があり、当該工程では、リオトロピックとサーモトロピックによる方法を用いることが一般的であり、リオトロピック方法では、溶剤を用いるために、コーティング層の成分が溶解された後、成分凝集などを引き起こし、フィルム面状にムラなどの表面不具合を生じてしまう可能性が高い。本発明では、コロナ処理を用いることが好ましい。
【0028】
本発明では、コロナ放電処理においてコロナ強度の指標として放電量と放電度を以下のとおり定義する。すなわち、放電電極の長さをL(m)、放電電極の放電面積をS(cm)、フィルム送り速度をV(m/分)、放電電力をP(W)とすると、放電量と放電度は次式で表される。
放電量(W/m/分=P/(L×V))
放電度=P/S(W/cm
【0029】
本発明において、ポリエステルフィルム表面へのコロナ放電処理は、放電量が通常5〜60W/m2/分、好ましくは15〜45W/m2/分、さらに好ましくは25〜35W/m2/分である。また、放電度は、通常3〜36W/cm2、好ましくは9〜27W/cm2、さらに好ましくは15〜21W/cm2である。コロナ放電量が5W/m2/分未満、放電度が3W/cm2未満であると、コロナ放電処理した効果が乏しい傾向があり、配向液晶が外観良く塗布できないといった不具合が生じることがある。コロナ放電量が60W/m2/分、放電度が36W/cm2を超えると、濡れ性効果がそれ以上に上がることはなく、また、大きな電圧によりフィルムが溶融して外観不良を引き起こしたり、穴が開いたりする等の不具合が生じるおそれがある。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、コロナ処理による表面改質効果を評価する1つの方法として、水滴接触角の測定が推奨される。ラビングによる表面処理後のフィルム表面水滴接触角の値は表面コロナ処理前と比較して減少する傾向がある。これは、コロナによりフィルム表面に酸素元素が挿入され、親水性効果が付与されるために値が極端に下がってしまうからである。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムの表面処理後の水滴接触角の値は、表面処理前と比較して好ましくは30〜55°の値が良く、より好ましくは、35〜50°、さらに好ましくは40〜45°である。ラビング処理後の水滴接触角の値が55°を越えて高い値ならば、液晶の配向がままならず、外観不具合に繋がることがある。さらに、30°よりも低い値はコロナ処理効果に限界があるため、考えにくく、生産性が悪くなる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0033】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0034】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0035】
(3)ポリエステルフィルムの透過率測定
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりポリエステルフィルムの全光線透過率を測定した。次のような基準で評価した。
○:88.7〜88.8%の範囲内の透過率
△:88.0〜88.6%の範囲内の透過率
×:88.0%より低い透過率
【0036】
(4)ポリエステルフィルムのヘーズ(濁度)測定
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりポリエステルフィルムのヘーズを測定した。次のような基準で評価した。
○:1.8%より値が低い
△:1.8〜2.0%
×:2.0%より値が高い
【0037】
(5)表面コロナ処理強度
インラインのコロナ処理装置(春日電機(株)製コロナ表面処理装置 HFSS−1001型)を用いてフィルム表面のコロナ処理を行った。コロナ処理強度の指標については、放電量(W/m/分)と放電度(W/cm)で表し、以下の式にて算出した。
放電量=P/(L×V)
放電度=P/S
【0038】
(6)表面処理後のフィルムの表面水滴接触角測定
温度23℃ 湿度50%RHで、表面コロナ処理前後のポリエステルフィルムと蒸留水との接触角を、協和界面化学(株)社製接触角計CA−DT−A型を用いてそれぞれ測定した。接触角は、コロナ処理前後のポリエステルフィルムについて、それぞれ左右2点、試料数3で計6点測定し、平均値を求め接触角とした。尚、水滴の直径は1.5mmで、滴下後1分後の数値を読み取った。
【0039】
コロナ処理後のフィルムの表面水滴接触角について、次のような基準で評価した。
○:40〜45°
△:30〜39°、もしくは、46〜55°の値
×:55°を超えた値、もしくは、30°より値が大きく減少
【0040】
(7)表面処理後フィルムへの液晶塗布後の見た目評価
コロナ処理後のフィルムについて、配向性液晶が配向可能かどうか、一般的な液晶を用いることで検査した。以下基準に従って評価を行った。
○:ムラやスジがなく表面形状も綺麗なもの
△:ムラやスジが見えるもの
×:液晶配向膜が配向できていないもの、もしくは、表面形状がひどいもの
【0041】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0042】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径2.0μmのエチレングリコールに分散させたモース硬度5のシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0043】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ92%、8%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、熱固定温度235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層を有する厚さ250μm(表層12.5μm、中間層225μm)、固有粘度0.61のポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムについて、春日電機株式会社製の表面コロナ処理装置を用いて、放電量16W/m2/分、放電度9W/cm2となるように表面コロナ処理を行った。得られたポリエステルフィルムは、表面水滴接触角が44°で、見た目では傷や曇りが処理前と変化なく綺麗なものであった。さらに、このコロナ処理後のポリエステルフィルムについて、クロロホルムに溶かした配向性液晶を塗布し、乾燥後に液晶層が0.03g/mとなるように調整した。得られたコロナ処理、液晶層塗布後のポリエステルフィルムを目視で評価したところ、スジやムラは認められずに綺麗なものとなっていた。なお、上記液晶層を構成する化合物例は以下のとおりである。
【0044】
(化合物例)
・ネマチック液晶(ZLI−2293:Merk)
・キラルドーパント(MLC−6248:Merk)
・光重合性液晶(RM257:Merk)
・QtT(Quarter Thiophene:クォーターチオフェン)
上記化合物は、下記の参考文献中に記載がある。
参考文献:K.AMEMIYA et.al.,Applied Physics,Vol.44,No.6A,2005,pp.3748−3750
【0045】
実施例2〜5:
実施例1において、片側表面へのコロナ処理の放電量、放電度を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。作製したポリエステルフィルムは表1に示すとおりであった。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例1〜5:
実施例1において、片側表面へのコロナ処理の放電量、放電度を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。作製したポリエステルフィルムは表2に示すとおりであるが、得られたコロナ処理、液晶層塗布後のポリエステルフィルムを目視で評価したところ、スジやムラは認められるなどの不具合を生じた。比較例5では、電圧が強すぎるため、表面に穴が開いた。
【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリエステルフィルムは、輝度向上部材用として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造のポリエステルフィルムであり、少なくとも一方の最外層表面の水滴接触角が30〜55°であることを特徴とする輝度向上部材用ポリエステルフィルム。