説明

輸液バッグ包装体および包装袋

【課題】外装袋のシーラント層を輸液バッグに融着しないようにして、輸液バッグを外装袋から簡単に取り出すことができる輸液バッグ包装体を提供する。
【解決手段】包装袋に輸液を密封して形成される輸液バッグ2と、この輸液バッグ2を封入する外装袋3とから構成され、包装袋は、ポリプロピレンフィルムで形成され、外装袋3は、外層4をポリエステル樹脂層で形成し、シーラント層7を超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に輸液を密封した輸液バッグを外装袋に封入して形成される輸液バッグ包装体および輸液バッグ包装体の外装袋に適した包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等で使用される輸液バッグには、高カロリー栄養液の輸液を包装袋に密封して形成されるものと、ビタミン類やアミノ酸を含む輸液を包装袋に密封して形成されるものがある。輸液バッグに用いられる包装袋は、ポリ塩化ビニルフィルムから形成されている。
【0003】
輸液バッグを封入する外装袋は、延伸ポリプロピレンフィルム/エチレンビニルアルコール共重合体フィルム/低密度ポリエチレンフィルムの積層フィルムから形成されるもの、ポリエステルフィルム/延伸ナイロンフィルム/アルミニウム箔/無延伸ポリプロピレンフィルムの積層フィルムから形成されるもの、透明蒸着ポリエステルフィルム/延伸ナイロンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルムの積層フィルムから形成されるものがある。積層フィルムの内層であるシーラント層は、通常の分子量のポリプロピレン樹脂層により形成されている。
【0004】
輸液バッグは、包装袋を水蒸気が透過しやすいポリ塩化ビニルフィルムで形成しているので、輸液から発する水蒸気が包装袋を通り抜け、包装袋に封入された輸液の濃度が変化してしまうという問題がある。
【0005】
このような輸液バッグの包装袋の問題を解消するために、輸液バッグの包装袋を水蒸気バリヤ性にすぐれたポリプロピレンフィルムにより形成し、輸液から発する水蒸気が包装袋を通り抜けないようにし、包装袋に封入された輸液の濃度が変化しないようにした輸液バッグを開発されてきた。
【0006】
病院等の保管時における輸液バッグの汚染を防ぐために、加熱減菌された輸液バッグを外装袋に密封した輸液バッグ包装体として病院等に搬送されるのが通常である。この場合、加熱減菌された輸液バッグを外装袋に密封する際、加熱減菌された輸液バッグに汚染が生じることが懸念される。
【0007】
加熱減菌された輸液バッグを外装袋に密封する際の汚染を確実に防ぐために、加熱減菌処理前の輸液バッグを外装袋に密封して形成される輸液バッグ包装体を加熱減菌処理することで、外装袋に密封された輸液バッグを加熱減菌する方法が採用されることもある。
【0008】
輸液バッグ包装体に用いられる外装袋のうち、ポリエステルフィルム/延伸ナイロンフィルム/アルミニウム箔/無延伸ポリプロピレンフィルムの積層フィルムから形成された外装袋や透明蒸着ポリエステルフィルム/延伸ナイロンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルムの積層フィルムから形成された外装袋は、バリヤ性および耐レトルト性がよいので、加熱減菌処理するのに適しているが、延伸ポリプロピレンフィルム/エチレンビニルアルコール共重合体フィルム/低密度ポリエチレンフィルムの積層フィルムから形成された外装袋は、バリヤ性を有しているが耐レトルト性に欠けるので、加熱減菌処理するのに適していない。
【特許文献1】特開平9−117489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記輸液バッグ包装体は、輸液バッグの包装袋をポリプロピレンフィルムで形成し、外装袋のシーラント層を通常の分子量のポリプロピレン樹脂層で形成すると、輸液バッグを外装袋を取り出した後の輸液の濃度を維持することはできるものの、加熱減菌処理するときに、包装袋のポリプロピレンフィルムおよび外装袋のシーラント層が溶融し、輸液バッグと外装袋が融着してしまい、輸液バッグを外装袋から簡単に取り出すことができないという問題がある。
【0010】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、外装袋を取り出した後の輸液バッグの輸液の濃度を維持するとともに、、加熱減菌処理するとき、輸液バッグと外装袋が融着することがなく、輸液バッグを外装袋から簡単に取り出すことができる輸液バッグ包装体および輸液バッグ包装体の外装袋に適した包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の輸液バッグ包装体は、包装袋に輸液を密封して形成される輸液バッグと、この輸液バッグを封入する外装袋とから構成され、包装袋は、ポリプロピレンフィルムで形成され、外装袋は、外層をポリエステル樹脂層で形成し、シーラント層を超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層で形成し、輸液バッグと外装袋が融着することがなく、輸液バッグを外装袋から簡単に取り出すことができる。
【0012】
本発明の包装袋は、外層がポリエステル樹脂層であり、シーラント層が超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層である積層フィルムから作られている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、輸液バッグの包装袋をポリプロピレンフィルムで形成し、輸液バッグ包装体の外装袋のシーラント層を超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層とすることで、輸液バッグの輸液の濃度を維持するとともに、加熱減菌処理するとき、輸液バッグと外装袋が融着することがなく、輸液バッグを外装袋から簡単に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による輸液バッグ包装体の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明による輸液バッグ包装体1は、図1に示すように、高カロリー栄養液のような輸液またはビタミン類やアミノ酸を含む輸液を包装袋に密封して形成される輸液バッグ2と、この輸液バッグ2を封入する外装袋3とから構成されている。
【0016】
輸液バッグ2の包装袋は、輸液からでる水蒸気が包装袋を通過して外部に放出することを防ぐために、ポリプロピレンフィルムから作られている。
【0017】
輸液バッグ2を封入する外装袋3は、図2に示すように、厚さ12マイクロメートルのポリエステルフィルム4と厚さ15マイクロメートルの延伸ナイロンフィルム5と厚さ9マイクロメートルのアルミニウム箔6と厚さ70マイクロメートルの超高分子量のポリプロピレンを含む無延伸ポリプロピレン樹脂層7を積層した積層フィルム8から作られている。
【0018】
超高分子量のポリプロピレンを含む無延伸ポリプロピレン樹脂層7は、超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂を原料として成膜したフィルムを2液反応型接着剤を介してアルミニウム箔6に貼り合わせることで形成される。また、無延伸ポリプロピレン樹脂層7は、超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂を押出し成形手段によりアルミニウム箔6に接合することもできる。
【0019】
シーラント層7に含まれる超高分子量のポリプロピレンは、通常の高分子量のポリプロピレン樹脂より分子量が相当量大きい共有結合されたポリプロピレンである。超高分子量のポリプロピレン樹脂は、通常の高分子量のポリプロピレン樹脂に比較して、耐摩耗性にすぐれ、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する。ここで、超高分子量とは、分子量が100万以上のものをいう。シーラント層7は、少なくとも5重量%、好ましくは100重量%超高分子量のポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0020】
外装袋3は、無延伸ポリプロピレン樹脂層7が接するように2つ折りした積層フィルム8または無延伸ポリプロピレン樹脂層7が接するように重ね合わせ2枚の積層フィルム8を、開口端を残して縁部をヒートシール加工することで形成される。外装袋3は、両側縁にノッチを形成することで、開封を容易にすることが好ましい。
【0021】
外装袋3に用いられる積層フィルム8は、厚さ12マイクロメートルの透明蒸着ポリエステルフィルムと厚さ12マイクロメートルの透明蒸着ポリエステルフィルムと厚さ15マイクロメートルの延伸ナイロンフィルムと厚さ70マイクロメートルの超高分子量のポリプロピレンを含む無延伸ポリプロピレン樹脂7を接着剤を介して積層したものであってもよい。
【0022】
本発明による輸液バッグ包装体1は、輸液バッグ2に封入された輸液を加熱減菌処理するために、図示しないオートクレーブ装置を用いて120℃〜125℃の温度で30分〜45分加熱減菌処理される。
【0023】
本発明による輸液バッグ包装体1は、包装袋をポリプロピレンフィルムで形成し、外装袋3のシーラント層7を超高分子量のポリプロピレンを含む無延伸ポリプロピレン樹脂層で形成しているので、シーラント層7の表面が粗面となり、輸液バッグの輸液を加熱減菌処理するとき、外装袋3のシーラント層7が輸液バッグ2に密着することがなく、したがって、輸液バッグ2と外装袋3が融着することがなく、しかも、外装袋3のシーラント層7は摩擦係数が小さい特性を有するので、輸液バッグ2を外装袋3から簡単に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による輸液バッグ包装体の平面図である。
【図2】本発明による輸液バッグ包装体の外装袋を構成する積層フィルムの斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 輸液バッグ包装体
2 輸液バッグ
3 外装袋
7 ポリプロピレン樹脂層
8 積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋に輸液を密封して形成される輸液バッグと、この輸液バッグを封入する外装袋とから構成され、包装袋は、ポリプロピレンフィルムで形成され、外装袋は、外層をポリエステル樹脂層で形成し、シーラント層を超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層で形成したことを特徴とする輸液バッグ包装体。
【請求項2】
外装袋のシーラント層は、分子量が100万以上のポリプロピレン含むポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の輸液バッグ包装体。
【請求項3】
外装袋のシーラント層は、分子量が100万以上のポリプロピレンを少なくとも5重量%含むポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の輸液バッグ包装体。
【請求項4】
外装袋のシーラント層は、分子量が100万以上のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂を原料として成膜したフィルムを2液反応型接着剤を介して貼り合わせることで形成されることを特徴とする請求項1に記載の輸液バッグ包装体。
【請求項5】
外層がポリエステル樹脂層であり、シーラント層が超高分子量のポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂層である積層フィルムにより作られたことを特徴とする包装袋。
【請求項6】
シーラント層は、分子量が100万以上のポリプロピレン含むポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする請求項5に記載の包装袋。
【請求項7】
シーラント層は、分子量が100万以上のポリプロピレンを少なくとも5重量%含むポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする請求項4に記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236757(P2007−236757A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65622(P2006−65622)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】