輸液ポンプ
【課題】医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる輸液ポンプを提供する。
【解決手段】チューブ装着部50に装着された輸液チューブ200の上流側200Aを挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部54を有し、上流側の輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aを斜めに案内する傾斜案内部54Tを有し、上流側の輸液チューブガイド部54は、開閉カバー5が閉じた状態でも露出されている。
【解決手段】チューブ装着部50に装着された輸液チューブ200の上流側200Aを挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部54を有し、上流側の輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aを斜めに案内する傾斜案内部54Tを有し、上流側の輸液チューブガイド部54は、開閉カバー5が閉じた状態でも露出されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬剤等を送液するための輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して薬剤の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。輸液ポンプは本体と開閉扉とを有している。輸液ポンプの上には所定の薬剤バッグ(輸液バッグ)が配置され、本体と開閉扉との間には、薬剤バッグから下げた輸液チューブを挟みこんで、この輸液チューブを本体内に収容して開閉扉を閉じることで保持している。
輸液ポンプの本体内では、定位置にセットされた輸液チューブの外周面が、本体内の複数のフィンガと開閉扉の内面との間に挟まれている。この輸液ポンプは、送液駆動部の複数のフィンガが個別駆動されることで、複数のフィンガが輸液チューブの外周面を長さ方向に沿って順次押圧して薬剤の送液を行う蠕動式輸液ポンプである(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液ポンプでは、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において上から下に向けて垂直に通して保持している。
これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプが提案されている。このように、輸液チューブを輸液ポンプの本体において水平方向に通して保持する構造を採用しようとするのは、輸液チューブが輸液ポンプの本体内を上から下に向けて垂直に通っている輸液ポンプとは異なり、複数の輸液ポンプを上下位置にスタックした状態で重ねて保持しても輸液チューブが邪魔にならないという利点があるからである。例えば、輸液ポンプの本体に対して向かって右側部分に輸液チューブの上流側が配置され、輸液ポンプの本体に対して向かって左側部分に輸液チューブの下流側が配置されるように予め決められている場合には、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置すれば、送液駆動部が駆動することで、薬剤が上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って送液でき、患者に対して正しく送液できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブが輸液ポンプの本体において水平方向にセットされるので、医療従事者(使用者)が輸液チューブの上流側と下流側とを間違えて輸液ポンプの本体に対して水平方向に沿って逆方向にセットする可能性がある。
【0006】
すなわち、医療従事者が誤って輸液チューブを本体に対して逆方向に配置してしまい、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置してしまうと、薬剤は正しい方向とは逆の方向に送液されてしまうので、薬剤が患者に対して正しく送液することができない。
このため、医療従事者が輸液チューブを輸液ポンプに装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着できることが要望されている。
【0007】
そこで、本発明は、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる輸液ポンプを提供することを目的とする。さらに、複数の輸液ポンプをラックや輸液スタンドを使用したり、またはラックや輸液スタンドを使用しないで上下方向にスタックした状態で使用できる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の輸液ポンプは、本体の下部分に配置されて、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と、前記横方向に沿った回転軸を中心にして開閉可能であり、閉じることで前記チューブ装着部と前記送液駆動部を覆う開閉カバーと、前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの上流側を挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記輸液チューブの前記上流側を斜めに案内する傾斜案内部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記開閉カバーが閉じた状態でも露出されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる。すなわち、医療従事者は輸液チューブの上流側がこの傾斜案内部側にセットされることを、視覚的に確認することができ、輸液チューブの上流側を急激に曲げないようにして保持することができる。また、この傾斜案内部が開閉カバーにより覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部を直接目視することで、輸液チューブの上流側を傾斜案内部側に配置すれば良いことを確認できる。
【0009】
好ましくは、前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの下流側を保持する下流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記上流側を挟んで保持する突起を有し、前記下流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記下流側をはめ込む溝部であることを特徴とする。
上記構成によれば、輸液チューブの上流側と下流側はそれぞれ保持できるので、輸液チューブは、チューブ装着部に正しく装着でき、開閉カバーを閉じても輸液チューブは開閉カバーに挟まれてしまうことが無い。
【0010】
好ましくは、前記輸液チューブの前記上流側の前記開閉カバーの側面部は、斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、開閉カバーを閉じても上流側の輸液チューブガイド部を常に露出させることができるので、輸液チューブの上流側が上流側の輸液チューブガイド部に装着されていることを目視で確認できる。
【0011】
好ましくは、前記本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、チューブ装着部への輸液チューブの装着を行って、開閉カバーを閉じることができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】図1と図2に示す輸液ポンプの開閉カバーを開いて輸液チューブを装着するためのチューブ装着部を示す斜視図。
【図4】図3に示す輸液ポンプをV方向から見た正面図。
【図5】開閉カバーのダブルフック構造部の構造例を示す図。
【図6】第1輸液チューブガイド部と気泡センサの付近を示す正面図。
【図7】図4に示す気泡センサの好ましい構造例を示す図。
【図8】気泡センサにおけるガイド溝部の第2案内面の形成位置を示す図。
【図9】本発明の実施形態と比較例における超音波の伝播例を示す図。
【図10】上流閉塞センサと下流閉塞センサの構造例を示す分解斜視図。
【図11】上流閉塞センサと下流閉塞センサにそれぞれ対向する第1押圧部材と第2押圧部材の支持構造を示す図。
【図12】輸液ポンプの電気的な構成例を示す図。
【図13】本発明の別の実施形態を示す図。
【図14】図1と図2に示す複数台の輸液ポンプと別のシリンジポンプを、設定スタンドに搭載した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。 図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図である。
【0015】
図1と図2に示す輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入を、1〜9999mL/h,1〜9999mLの範囲で、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる輸液装置である。この輸液ポンプ1は、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤を選択して、その選択した薬剤を送液するために用いられる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0016】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pに対して設定入力された注入速度(mL/h),注入量(mL)に応じて正確に送液することができる。薬剤は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有しており、取手2Tは水平方向であるN方向に伸ばしたり水平方向であるT方向に収納したりすることができる。この本体カバー2は、本体ともいい、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。このように、本体カバー2が防沫処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0017】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1と図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。この表示部3は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。
表示部3は、例えばポリエステル膜で表面がおおわれており、艶がある。これに対して、操作パネル部4の表面は、例えば艶消し処理が施されている。本体カバー2の上部分2Aは、本体カバー2の上半分の部分である。本体カバー2の下部分2Bは、本体カバー2の下半分の部分である。本体カバー2の周囲部分もしくは一部分には、好ましくは本体カバー2の表面色とは異なる色、例えば黄色や赤色のシール材を貼ったり、塗装をすることで、ポンプの目印を表示することができる。このポンプの目印が設けられることで、複数台の輸液ポンプ1を積み重ねて使用したり、あるいはこの輸液ポンプ1と他の種類のポンプ例えばシリンジポンプ等を積み重ねて使用する場合には、各ポンプの境目が視覚的に明確になるメリットがある。
【0018】
図2では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、流量(mL)の表示欄3E等が表示されているが、図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に警告メッセージを表示することもできる。
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えば、内部にLEDを含み、赤色,緑色,オレンジ色のいずれかで、光拡散剤を介して発光・表示して輸液ポンプ1の動作状態を示すために、本体カバー2から2mm程度ドーム状に突出したパイロットランプ4A、設定流量(mL/h)より早い注入速度で薬液を注入するための早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。電源スイッチボタンは操作パネル部4とは別の位置に配置されている。
【0019】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、蓋部材としての開閉カバー5が回転軸5Aを中心として回転し、本体カバー2の内面が上面を向くようにR方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5はX方向に沿って長く形成されている蓋である。開閉カバー5の内面側であって、下部分2Bのチューブ装着部50には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200をセットして、この開閉カバー5を閉じることで、輸液チューブ200はX方向に沿って水平に装着できるようになっている。
図2に示すように、開閉カバー5の表面には、好ましくは必要に応じて、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。輸液チューブ設定方向表示部150は、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を有する。
【0020】
これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、例えばシール材に印刷されたものであり、これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、開閉カバー5の表面に貼り付けられている。
図2に示すように、薬剤バッグ表示部151は、輸液チューブ200の薬剤バッグ170側が開閉カバー5において向かって右側部分にくることを目視で確認するために配置され、患者側表示部152は、輸液チューブ200の患者P側が開閉カバー5において向かって左側部分に位置されることを目視で確認するために配置されている。そして、送液方向表示部153は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい方向の送液方向(T方向)を明示するために配置されており、薬剤バッグ表示部151から患者側表示部152に向かっているT方向に沿った矢印である。この輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の表面側に、後付けで貼り付けても良い。
なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向はT方向と平行であり輸液ポンプ1の左右方向で、Y方向は輸液ポンプ1の前後方向である。
【0021】
図3は、図1と図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50を示す斜視図である。図4は、図3に示す輸液ポンプ1をV方向から見た正面図である。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、輸液ポンプ1の本体部1B側に設けられており、チューブ装着部50は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50は、図2に示すように開閉カバー5を、回転軸5Aを中心としてCR方向に閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
このように、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3にカラーで表示される、輸液チューブ200の装着状況の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、右側位置の第1輸液チューブガイド部54と左側位置の第2輸液チューブガイド部55と、開閉カバー5を有している。チューブ装着部50には、チューブクランプ部270が配置されている。
【0022】
図3と図4に示す開閉カバー5の構造例を説明する。
図3と図4に示すように、開閉カバー5は、輸液ポンプ1を軽量化するために、薄い成型樹脂部材により作られている板状の部材であり、この軽量化を図るために、開閉カバー5には、電気スイッチ等の電装部品は装着されていない構造になっている。これにより、開閉カバー5の重量を軽減できるとともに、チューブ装着部50側から開閉カバー5側への電気配線を省略して構造を簡単化することができる。
図3と図4に示すように、開閉カバー5は、チューブ装着部50を、回転軸5Aを中心としてCS方向とCR方向に沿って開閉カバー5の内面が上面を向くように開閉可能に覆うことができるようにするために、2つのヒンジ部2H、2Hにより本体カバー2の下部2Vに対して支持されている。2つのヒンジ部2H、2Hは、係合締付け部を構成するための複数の押え部としての第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにそれぞれ対応して配置されている。
【0023】
図3と図4に示すように、開閉カバー5の表面側には、右上部分に開閉操作レバー260が設けられている。開閉カバー5の内面側には、輸液チューブ押さえ部材5Cと、係合部材5D、5Eが設けられている。この輸液チューブ押さえ部材5Cは、X方向に沿って長く矩形状かつ面状の突出部として配置されて蠕動式の送液駆動部60に対面する位置にある。輸液チューブ押さえ部材5Cは、送液駆動部60に沿ってX方向に平坦面であり、開閉カバー5をCR方向に閉じることで、送液駆動部60との間で輸液チューブ200の一部分を押し付けて挟むようになっている。
医療従事者は、表示部3に表示されている表示内容を確認しながら、輸液チューブ200を輸液ポンプ1の本体の下半分の部分に水平方向に沿ってセットでき、輸液チューブ200がチューブ装着部50にセットされた後に、開閉カバー5は輸液チューブ200を覆うことができる。
【0024】
図3と図4に示すように、開閉カバー5の閉止状態を緊密に保持するための係合締付け部としての2つのフック部材5D、5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かることにより、開閉カバー5は、図2に示すように、本体部1Bのチューブ装着部50を閉鎖した状態を強固に保持することができる。この2つのフック部材5D、5Eと、本体部1B側の固定部分1D、1Eは、開閉カバー5の係合締付け部としてのダブルフック構造部300を構成している。フック部材5Dは第1フック部材であり、フック部材5Eは第2フック部材である。
なお、係合締付け部としては、本実施形態のようなフック構造に限らず、カバー側に止め雄ネジ、本体側に雌ネジ複数のボルト締付け構造や、締めつけ力を調整できる挟持構造等、本体側から動作時に開閉カバーに加えられる力に対向して、閉止状態をしっかり保持できるものであれば種々の構造を採用できる。
【0025】
図5は、開閉カバー5のダブルフック構造部300の構造例を示している。
図5(A)に示すように、開閉カバー5の内面側5Iには、フック部材5Dが基部301から突出して設けられ、フック部材5Eが基部302から突出して設けられている。この基部301は、開閉カバー5の右端部側の近くの位置に配置され、基部302は、開閉カバー5の左端部側に配置されている。図4に示すように、チューブ装着部50では、フック部材5Dとフック部材5Eの間の位置に対応して、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、チューブクランプ部270が配置されている。しかし、チューブ装着部50では、気泡センサ51と上流閉塞センサ52は、フック部材5Dよりもさらに右側の位置に対応して配置されている。
【0026】
図5(A)から図5(C)に示すように、開閉カバー5をCR方向に閉じて、フック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。フック部材5Dは、ほぼC字型の部材であり、回転軸303により開閉カバー5の基部301に取り付けられている。フック部材5Eは、ほぼC字型の部材であり、回転軸304により開閉カバー5の基部302に取り付けられている。
フック部材5D、5Eは、例えば金属製の連結部材305と2つのピン306,307により連結されている。開閉操作レバー260の一端部は、このピン206を用いて基部301に連結されている。このため、医療従事者が開閉操作レバー260をRR方向に回すことで、フック部材5D、5Eは、連結部材305により連動することでRT方向に同時に回転する。
【0027】
フック部材5D、5Eは、図5(A)に示すように、医療従事者が開閉カバー5をCR方向に押して、図5(B)に示すように開閉カバー5によりチューブ装着部50を閉じる際には、図5(B)に示すように開閉操作レバー260をRR方向に回転操作すれば、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かる。
逆に、図5(C)に示す状態から図5(B)に示すように、医療従事者がチューブ装着部50を開けようとする際には、図5(C)から図5(B)に示すように、開閉操作レバー260をRS方向に回転操作すれば、フック部材5Dとフック部材5Eは、RU方向に回転して本体部1B側の固定部分1D、1Eからそれぞれ同時に離脱する。このため、医療従事者が開閉カバー5を開けることにより、チューブ装着部50を露出させることができる。
【0028】
図4に示すチューブクランプ部270は、開閉カバー5を開けることにより、輸液チューブ200の途中部分をクランプして閉塞させることができる。また、開閉カバー5を閉じた状態では、輸液チューブ200は閉塞されない状態となる。チューブクランプ部270は、左側の固定部分1Eの近傍であって、左側のフック部材5Eの位置に対応するチューブ装着部50の位置付近に配置されている。
【0029】
図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。
【0030】
このように、水平方向に保持された輸液チューブ200は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、そしてチューブクランプ部270に沿って配置されるようになっている。
【0031】
図6は、第1輸液チューブガイド部54と気泡センサ51の付近を示す正面図である。
図6と図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tを有している。2つの突起54B,54Cは、輸液チューブ200を水平方向にセットする際に、輸液チューブ200の上流側200Aを着脱可能に挟んで保持するために、本体部1Bに形成されている。
傾斜案内部54Tは、2つの突起54B、54Cから、図7において斜め右上方向(上流側に向かって徐々に上昇するように傾斜して)形成された下向き段部であり、輸液チューブ200の上流側200Aを斜めに案内する部分である。
この傾斜案内部54Tは、水平方向からの角度αは、好ましくは25〜35度、特に好ましくは30度の傾斜角で、水平方向の長さLは13〜18mm、特に好ましくは15mm、高さHは、13〜18mm、特に好ましくは15mm、幅Wが6〜8mm(好ましくは7mm)、底面がR3.5mm、深さ5.4mmで形成されている。
水平方向からの角度αは、35度を越えると、2つの2つの突起54B,54C部で折れ曲がりやすくなるとともに輸液ポンプ1の高さ方向の寸法が大きくなり、輸液チューブ200を装着する作業がやや難しくなる。水平方向からの角度αは、25度より小さいと、水平方向の長さLが長くなり、輸液ポンプ1の幅方向の寸法が大きくなる。
また、幅Wが8mmより大きいと、輸液チューブ200が傾斜案内部54Tに挟まらなくなり、幅Wが6mmより大きいと、輸液チューブ200は、傾斜案内部54Tで押しつぶれた状態になる。
このような傾斜案内部54Tを設けることにより、医療従事者は輸液チューブ200の上流側200Aをこの傾斜案内部54Tである段部に押し付けるようにセットするだけで、輸液チューブ200Aの上流側が正しくセットされたことを視覚的に確認することができる。これにより、輸液チューブ200の上流側200Aを急激に曲げないようにして保持することができる。また、この傾斜案内部54Tが開閉カバー5により覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部54Tを直接目視することで、輸液チューブ200の上流側200Aを傾斜案内部54T側に配置すれば良いことを確認できる。
【0032】
図4に示すように、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bの一部分を着脱可能に挟んで保持するために、本体部1Bの側面部分1Sに形成された溝部分である。
図4に示す第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200を開閉カバー5とチューブ装着部50との間に挟み込んで潰してしまうことが無いように、チューブ装着部50内に確実に装着できるようにするために設けられている。
図1と図2に示すように、開閉カバー5の右側の側面部5Kは、斜め左上方向に向かって傾斜して形成されている。これにより、開閉カバー5を閉じて状態であっても、開閉カバー5が第1輸液チューブガイド部54の2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tの上にかぶらないようにしている。これにより、開閉カバー5を閉じた状態であっても、医療従事者は、2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tを露出させて、輸液チューブ200の上流側200Bの装着状態を、目視で確認できる。
【0033】
図4に示す気泡センサ51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡センサ51は、軟質塩化ビニル製などの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬剤中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの発信部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬剤に当てることで、超音波の薬剤における透過率と超音波の気泡における透過率が異なることから、超音波センサの受信部は、その透過率の差に基づく出力差を検出して気泡の有無を監視する。
【0034】
図7は、図4に示す気泡センサ51の好ましい構造例を示している。図7(A)は、開閉カバー5がチューブ装着部50を覆う直前の状態を示し、図7(B)は、開閉カバー5がチューブ装着部50を覆った状態を示し、図7(C)は、気泡センサ51の付近を示斜視図である。
図7(A)と図4に示すように、開閉カバー5の内面側の気泡センサ51に対応する位置には、突起320が設けられている。図7(A)と図7(C)に示すように、気泡センサ51は、プラスチック製のセンサ本体部330と、超音波発振素子331と、超音波受信素子332を有している。
センサ本体部330は、チューブ装着部50の表面50Sに形成されている設定用の穴部329内にはめ込むことで固定されている。センサ本体部330は、中央部分341と上側保持部342と下側保持部343を有している。中央部分341は、上側保持部342と下側保持部343の中央位置にあり、上側保持部342と下側保持部343は、穴部329内にはめ込んで固定されている。中央部分341と上側保持部342の隙間361には、超音波発振素子331が固定されている。中央部分341と下側保持部343の隙間362には、超音波受信素子332が固定されている。超音波発振素子331と超音波受信素子332は、Y方向に平行にあるように設定されている。
【0035】
図7(A)に示すように、超音波発振素子331の一端部331Aは、チューブ装着部50の表面50Sから間隔D1に位置に配置されている。超音波受信素子332の一端部332Aは、チューブ装着部50の表面50Sから間隔D3に位置に配置されている。間隔D1は、例えば3.9mmであり、間隔D1>間隔D3である。超音波受信素子332の他端部332Bは、間隔D1と間隔D2を加えた間隔D4の位置に配置されている。超音波発振素子331の他端部331Bは、間隔D4と間隔D5を加えた位置に配置されている。間隔D2は、例えば3.2mmである。
【0036】
このように、超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置、すなわち超音波の屈折分だけY1方向にずれた位置に配置されている。超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置に配置するのは、第1案内面351がX方向とY方向により形成される面と平行であるが、第2案内面352がY方向に対して角度θだけ傾斜しているからである。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHが第2案内面352で屈折して伝播しても、超音波HHは超音波受信素子332により確実に受信できる。
【0037】
図7(A)に示すように、センサ本体部330は、輸液チューブ200を案内して保持するガイド溝部350を有している。このガイド溝部350は、第1案内面351と第2案内面352と底部分353を有している。第1案内面351は、Y方向とX方向により形成される平面であり、超音波発振素子331と平行に形成されている。これに対して、第2案内面352は、Z方向に対して角度θで傾斜して形成された傾斜面である。つまり、第2案内面352は、超音波発振素子331と超音波受信素子332に対して平行には形成されていない。この角度θの例としては、65〜75度、好ましくは70度である。この角度θが65度よりも小さいと、センサ本体部330のZ方向の厚みDFが大きくなってしまうので、好ましくない。また、75度より大きいと、開口部が狭くなり、輸液チューブ200をセンサ本体330にガイドしづらくなる。
第2案内面352は、X方向に沿って形成されている平坦面である。このように、第2案内面352がY方向とZ方向に対して傾斜面であると、異なる直径を有する各種の輸液チューブ200をガイド溝部350に入れて保持する際に、ガイド溝部350は輸液チューブ200の異なる直径に対応して保持できる。輸液チューブ200の直径の範囲の例としては、例えば3.3mm〜4.5mmの範囲である。
【0038】
図8は、ガイド溝部350の第2案内面352の形成位置について示している。図8(A)は、本発明の実施形態におけるガイド溝部350の第2案内面352の好ましい形成例を示しており、図8(B)は、比較例として好ましくないガイド溝部の形状を示している。
図8(A)は、本発明の実施形態におけるガイド溝部350の第2案内面352の好ましい形成例では、傾斜面である第2案内面352が第1案内面351よりも下側、即ち、回転軸5Aに対して近位側に位置されている。開閉カバー5の突起320が、回転軸5Aを中心として、CR方向に回転してガイド溝部350内に入り込むと、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320とガイド溝部350の第1案内面351と第2案内面352の間に、潰されないようにして保持することができる。
【0039】
これに対して、図8(B)は、比較例の好ましくないガイド溝部1000の形状では、傾斜面1002が平坦面1001よりも上側即ち、回転軸5Aに対して遠位側に位置されている。この比較例では、開閉カバー5の突起320がCR方向に回転してガイド溝部1000内に入り込むと、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320と傾斜された傾斜面1002との間に挟まれて潰れてしまう恐れがある。
このように、輸液チューブ200が突起320と傾斜された傾斜面1002との間に挟まれて潰れてしまうことを防ぐために、本発明の実施形態では、図8(A)に示すように、開閉カバー5のヒンジ部2H(開閉カバー5の回転軸5A)側に近い方の案内面である第2案内面352が傾斜面となっていて、ヒンジ部2H側には遠い方の案内面である第1案内面351はY方向に沿った平坦面となっている。
【0040】
図7(A)に戻ると、ガイド溝部350の底部分353は、第1案内面351と第2案内面352の交わる部分に形成されており、凸部371と凹部372を有している。凹部372の位置は、凸部371の位置に比べて、さらにY1方向側に形成されており、凹部372の位置は、超音波発振素子331の他端部331Bの位置よりも、さらにY1方向側に設定されている。
図9(A)は、図7(A)に示す本発明の実施形態における底部分353の凹部372を有している場合の超音波の伝播例を示している。図9(A)に示すように、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることにより回り込むことを阻止することができる。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることから回り込んで伝播せず、ノイズが超音波受信素子332に受信されてしまうことがないので、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下することを防げる。
【0041】
これに対して、図9(B)は、比較例として底部分353において凹部372が設けられていない場合の超音波の伝播例を示している。図9(B)では、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が無いことから回り込んで超音波受信素子332に受信されてしまう。このように超音波HHが回り込んで伝播して超音波受信素子332に受信されてしまうと、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下してしまうおそれがある。
【0042】
図4を参照すると、図4に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、同じ構成である。輸液チューブ200が閉塞する場合としては、例えば送液しようとする薬剤の粘度が高いか、薬剤の濃度が高い等の場合である。
【0043】
図10は、上流閉塞センサ52(下流閉塞センサ53)の構造例を示す分解斜視図である。チューブ装着部50の表面50Sには、穴部400が設けられている。この穴部400には、プラスチック製の枠部材401がはめ込まれており、枠部材401は長方形の開口部402を有している。プラスチック製のスライダ403は、穴部400内の収容穴部404内に挿入されており、基部405と先端部406とスプリング407を有している。この開口部402には、スライダ403の先端部406がはめ込まれている。スプリング407の一端部は基部405に取り付けられ、スプリング407の他端部は収容穴部404内の突起409に取り付けられている。収容穴部404の内面には、ホール素子410が配置されている。基部405には、2つのマグネット411,412が配置されている。
これにより、枠部材401を穴部400に装着し、基部405は例えばコイルスプリングであるスプリング407を保持しながら、開口部402と収容穴部404内に挿入するだけで、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、チューブ装着部50の表面50Sに対して簡単に装着することができ、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の組み立て作業性を向上できる。
【0044】
一方、図4に示すように、開閉カバー5の内面側には、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の対応する位置に、それぞれ押圧部材452、453が設けられている。押圧部材452、453の支持構造440は、同じ構造であり、図12に示している。図12は、この押圧部材452、453の支持構造440を示す。押圧部材452は第1押圧部材であり、押圧部材453は第2押圧部材である。
図11(A)と図11(E)に示すように、押圧部材452、453の支持構造440は、付勢部材としてのスプリング441と、支持部材442と、2つの抜け止め部443を有している。押圧部材452(453)は、筒部分444を有しており、2つの抜け止め部443は筒部分444の左右反対側の位置に形成されている。この筒部分444内には、スプリング441の一端部から途中部分までが収容され、スプリング441の他端部は支持部材442の突起445にはめ込まれて保持されている。これにより、組立作業者は、押圧部材452(453)は、スプリング441の力に抗して、図11(B)に示すようにM方向に押すことができる。
【0045】
図11(A)に示すように、支持部材442は、表面板442Aには長方形の穴部442Cを有し、この穴部442Cには、筒部分444を通すことで、押圧部材452(453)は支持部材442内にはめ込むようになっている。
図11(B)に示すように、組立作業者は、押圧部材452(453)をスプリング441の力に抗してM方向に押したままで、図11(C)に示すように90度だけJ方向に回転する。そして、組立作業者は、図11(D)に示すように各抜け止め部443を、開閉カバー5側の係合部分460にはめ込む。これにより、押圧部材452(453)は、支持部材442において図11(D)に示す状態を維持して回転しないようにして、スプリング441の力に抗してM方向押すことができるとともに、押圧部材452(453)は、支持部材442においてスプリング441の力によりM1方向に復帰できる。
【0046】
図11に示すように、上述した押圧部材452、453の支持構造440を採用することで、押圧部材452,453は、支持部材442に対してはめ込んで90度だけ回転させた後は、抜け止め部443により押圧部材452,453は飛び出すことがなく、スプリング441を介して簡単に取り付けることができるので、押圧部材452、453の組み立て作業性を向上できる。コイルスプリングであるスプリング441は、押圧部材452、453の筒部分444内に内蔵させるようにして配置することができるので、スプリング441を含む押圧部材452、453を、支持部材442に対して組み立てる際の作業性が良好である。図12(D)に示すように、押圧部材452、453の支持構造440の支持部材442は、簡単な構造であり高さHGを抑えることができるので、図12(F)に示すように開閉カバー5の内面側に簡単に配置できる。
【0047】
医療従事者が、図3に示すようにチューブ装着部50に輸液チューブ200をセットした後に、図2に示すように開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の第1押圧部材452と第2押圧部材453が輸液チューブ200の一部を上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができる。このため、製造上の公差のため、外径に若干バラツキがあったり、製造メーカーの異なる輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53は、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。
【0048】
図11(F)に示す開閉カバー5が図2に示すように閉じると、図10に示すように輸液チューブ200は、押圧部材452(453)とスライダ403の先端部406の間において、スプリング407,441の各付勢力により挟まれて保持される。もし、輸液チューブ200が閉塞して輸液チューブ200の直径が変わると、先端部406が輸液チューブ200の直径の変化に追従してY方向に移動する。このため、マグネット411,412がホール素子410に対して相対的に移動することで、ホール素子410は磁束の変化を検出して、制御部100に磁束の変化の信号を送ることができる。
図10に示すように、スプリング441の中心軸方向とスプリング407の中心軸方向は一致しており、スプリング441,407は、押圧部材452(453)と先端部406の間に輸液チューブ200を挟むことで、輸液チューブ200の直径方向に沿って輸液チューブ200に対して加圧力を与えることができる。このため、閉塞センサ52,53は、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。
【0049】
製造上の公差のため、外径に若干バラツキがあったり、製造メーカーの異なる輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の第1押圧部材452と第2押圧部材453が輸液チューブ200の一部を上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができるので、上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53は輸液チューブ200の閉塞状態を検出できる。
輸液チューブ200は、ある一定のチューブ内圧が作用した場合であっても、輸液チューブ200周辺の温度が変化するのに伴って、その膨らみ量も変化する。輸液チューブ200として使用される一般的な塩化ビニール製チューブやシリコンチューブは、温度が高くなると軟化し、逆に、温度が低くなると硬化する傾向がある。このため、一定のチューブ内圧が作用していても、温度が高くなると輸液チューブ200は膨らみ易くなり、逆に、温度が低くなる輸液チューブ200は膨らみ難くなる。
このため、好ましくは、輸液ポンプ1の使用環境温度を検出するためにサーミスタ等の温度センサ(不図示)を設け、温度センサで検出した使用環境温度を例えば20〜40℃の間で5℃毎に閉塞圧検知の閾値(閉塞センサ52,53を形成するスライダ403の移動量の閾値)を変更することで、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。例えば、一定圧の時の20〜25℃の時のスライダ403の移動量を1として、15〜20℃の時のスライダ403の移動量を0.99、10〜15℃の時のスライダ403の移動量を0.98、5〜10℃の時のスライダ403の移動量を0.97、25〜30℃の時のスライダ403の移動量を1.01、30〜35℃の時のスライダ403の移動量の1.02として閾値を変更する。こうすることで、輸液チューブ200が膨らみ易くなったり、膨らみ難くなってもそれに対応して輸液チューブ200内の閉塞圧をほぼ一定のレベルで検知できる。
【0050】
以上説明したように、図2に示すように開閉カバー5を閉じると、輸液ポンプ1のチューブ装着部50側から、閉じた状態の開閉カバー5の内面側に対して、力が加わることになる。
【0051】
このような本体部1Bの複数の箇所から開閉カバー5の内面側に力が加わるのではあるが、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。これにより、上述した開閉カバー5に対する加圧力は、フック部材5Dとフック部材5Eにより受け止めることができ、開閉カバー5はこの2か所で支えるので、開閉カバー5が反ったり、あるいは変形することが無い。
【0052】
図12は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図12に示すように、送液駆動部60は、後で説明するが、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば6個のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、6個のカム62A〜62Fに対応して6個のフィンガ63A〜63Fを有している。6個のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0053】
図12に示す制御部100の指令により、駆動モータ61の出力軸が回転すると、6個のフィンガ63A〜63Fが順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200はT方向に沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材5Cに対して押し付けられることから、輸液チューブ200内の薬剤を、T方向に送液することができるようになっている。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面をT方向に沿って順次押圧して輸液チューブ200内の薬剤の送液を行う。複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点をT方向に移動させることで、輸液チューブ200をしごいて薬剤を移送する。
【0054】
図12に示すように、輸液ポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0055】
図12に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Sと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0056】
図12に示す送液駆動部60の駆動モータ61の出力軸61Aが制御部100の指令により回転され、複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動をさせることにより、輸液チューブ200をしごいて薬剤をT方向に移送する。
図2は、輸液ポンプ1と、薬剤バッグ170と、輸液ポンプ1に対して正しい送液方向であるT方向に沿ってセットされた輸液チューブ200を示している。図2に示すように、輸液チューブ200の一端部はクレンメ179を介して薬剤バッグ170に接続され、輸液チューブ200の他端部は患者P側の留置針172に接続される。薬剤バッグ170内の薬剤171は、送液駆動部60の駆動により、輸液チューブ200と留置針172を通じて正しい方向であるT方向に送液されることで患者Pに投与される。
【0057】
図12に戻ると、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、図2に例示する情報内容や警告メッセージを表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警報内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警報を音により告知することができる。スピーカ131は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音声により警告を発する警告手段の一例である。ブザー132は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音により警告を発する警告手段の一例である。
【0058】
図12において、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2は、輸液チューブ200の上流側200Aの内圧の大きさを示す信号である。下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200の下流側200Bの内圧の大きさを示す信号である。
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬剤を送液できない状態を検出することができ、制御部100に出力されるアラームである。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、輸液用の留置針や輸液チューブ200の詰まっている場合、輸液チューブ200がつぶれているまたは折れている場合、高粘度の薬剤を使用している場合等である。
【0059】
図12において、制御部100は、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬剤データベース(DB)160に接続されており、薬剤データベース160に格納されている薬剤情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬剤情報MFを基にして、例えば図2に示す表示部3には薬剤情報MF等を表示することができる。
図13において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
【0060】
次に、上述した輸液ポンプ1を使用する際の動作を説明する。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する前に、図2に示す開閉カバー5の上に配置された輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認する。すなわち、図2に示すように、医療従事者が輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対してT方向に沿って正しくセットできるようにするために、まず、医療従事者は、図2に示すように、開閉カバー5上の輸液チューブ設定方向表示部150の薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認する。
【0061】
しかも、図2に示すように、この傾斜案内部54Tが開閉カバー5により覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部54Tを直接目視することで、輸液チューブ200の上流側200Aを傾斜案内部54T側に配置すれば良いことを容易に確認できる。
そして、医療従事者は、開閉カバー5を開けて、輸液チューブ200の上流側200Aを本体部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側に配置し、輸液チューブ200の下流側200Bを本体部1Bにおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側に配置すれば良い。
【0062】
医療従事者は、図4に示す輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、チューブクランプ部270、そして第2輸液チューブガイド部55に沿ってT方向にセットできる。その後、図1と図2に示すように、開閉カバー5を閉じて、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、そして送液駆動部60と、チューブクランプ部270を覆う。これにより、輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に沿ってセットでき、送液駆動部60を駆動することにより、薬剤は輸液チューブ200を通じてT方向に沿って送液できることになる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分の表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー5の上部分の表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0063】
このように、医療従事者が開閉カバー5を閉じると、すでに説明したように、輸液ポンプ1の本体部1Bのチューブ装着部50側から開閉カバー5側に対して、次のような付勢力が加わる。図6に示すチューブクランプ部270の操作部材273が突起部275により押されることにより、スプリング274の力が開閉カバー5側に加わる。図4に示す輸液チューブ200の一部分が、輸液チューブ押さえ部材5Cと送液駆動部60との間に挟まれることによる反力が開閉カバー5側に加わる。そして、図11に示すように、輸液チューブ200が押圧部材452と先端部406の間と押圧部材453と先端部406の間の両方に挟まれることにより、2つのスプリング407,441の力が開閉カバー5側に加わる。
【0064】
このように、本体部1Bの複数の箇所から開閉カバー5の内面側に力が加わるのではあるが、図1と図2に示すように開閉カバー5を閉じた状態では、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。これにより、上述したように開閉カバー5を閉じた状態で発生する開閉カバー5に対する加圧力は、2か所のフック部材5Dとフック部材5Eにより受け止めて開閉カバー5を本体部1B側に確実に固定できる。このため、開閉カバー5が本体部1Bの複数の箇所から受ける力により撓んだり、反ったり、変形することが無く、開閉カバー5は確実にチューブ装着部50を覆うことができる。
【0065】
図2に示すように開閉カバー5を閉じた状態では、図4に示す右側のフック部材5Dは、開閉カバー5の開閉操作レバー260の付近の位置に設けられており、フック部材5Dは、右側の押圧部材452からの押圧力と、輸液チューブ押さえ部材5Cにおける押圧力に対応して開閉カバー5を閉じた状態に保持できる。図4に示す左側のフック部材5Eは左側の押圧部材453からの押圧力と、左側の操作部材273からの押圧力に対応して開閉カバー5を閉じた状態で保持できる。
このように、開閉カバー5を閉じると、輸液チューブ押さえ部材5Cが送液駆動部60に対して輸液チューブ200を当てて、かつ開閉カバー5の突起275はチューブクランプ部270を押して輸液チューブ200の一部を閉塞させるが、この際に開閉カバー5が輸液チューブ押さえ部材5Cからの受ける力とチューブクランプ部270から受ける力は、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにより受け止めることができるので、開閉カバー5が撓むことを防止できる。しかも、開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5は第1押圧部材452と第2押圧部材453からも力を受けるが、これらの力は第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにより受け止めることができるので、開閉カバー5が撓むことを防止できる。
【0066】
図2に示すように、輸液チューブ200がX方向に沿って正しく装着して開閉カバー65を閉じると、図9(A)に示すように、開閉カバー5の突起320が、回転軸5Aを中心として、CR方向に回転してガイド溝部350内に入り込む。これにより、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320とガイド溝部350の第1案内面351と、回転軸5A側の傾斜面である第2案内面352との間において、潰されることなく保持することができる。このように輸液チューブ200が突起320と傾斜された第2案内面352の間に挟まれても潰れてしまわないようにできるのは、図4に示す開閉カバー5のヒンジ部2H(開閉カバー5の回転軸5A)側に近い方の案内面である第2案内面352が傾斜面となっていて、ヒンジ部2H側には遠い方の案内面である第1案内面351はY方向に沿った平坦面となっているためである。
【0067】
図8(A)において、直径が異なる複数種類の輸液チューブ200の内の何れのサイズの輸液チューブが輸液ポンプ1のチューブ装着部50に装着されても、開閉カバー5を閉じると気泡センサ51に輸液チューブ200の一部を潰すことなくガイド溝部350内に挿入することができ、輸液チューブ200内の気泡を検出できる。すなわち、チューブ装着部50に輸液チューブ200をセットして開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5の突起320が、気泡センサ51のガイド溝部350内に入り込んで、輸液チューブ200の一部をガイド溝部350の第1案内面351と第2案内面352の間に保持させることができる。開閉カバー5の回転軸5Aから遠い側の第1案内面351は超音波発振素子331と平行な面であり、開閉カバー5の回転軸5Aに近い側の第2案内面352は傾斜した面であるので、開閉カバー5が回転軸5Aを中心に回転して閉じる際に、開閉カバー5の突起320は第2案内面352との間で輸液チューブ200の一部を挟み込むことが無く輸液チューブを潰すことが無い。このため、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0068】
また、図7(A)に戻ると、ガイド溝部350の底部分353には凹部372が設けられているので、超音波の伝播例を示す図9(A)を参照すると、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることにより回り込むことを阻止することができる。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることから回り込まず、ノイズが超音波受信素子332に受信されてしまうことがないので、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下することを防げる。このように、凹部372は、超音波発振素子331の他端部331Bの位置よりもY1方向側にさらに深く形成され、超音波発振素子331からの超音波HHがガイド溝部350内の輸液チューブ200の一部を通らずにセンサ本体330内を伝播して超音波受信素子332に受信されることを阻止する。このため、超音波受信素子332にノイズが入るのを防ぎ、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0069】
さらに、図7(A)に示すように、超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置に配置するのは、第1案内面351はX方向とY方向により形成される面と平行であるが、第2案内面352がY方向に対して角度θだけ傾斜しているからである。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHが第2案内面352で屈折しても、超音波HHは超音波受信素子332により確実に受信できる。すなわち、第2案内面352が傾斜していても、超音波発振素子331からの超音波HHは、第1案内面351と輸液チューブ200の一部を通って第2案内面352を経て超音波受信素子332により受信でき、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0070】
図13(A)は、図1〜図4に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5におけるフック5D、5Eの配置例を示している。開閉カバー5には、フック5Dが右側の位置に配置され、フック5Eが左側の位置に配置されているので、開閉カバー5の高さ寸法を小さくして、できる限り大きな表示部3を配置することができる。開閉カバー5の内側には、電気スイッチや電気配線をしない構造を採用しているので、開閉カバー5の重量を抑制でき、開閉カバー6を薄くしても開閉カバー5の撓みを抑制でき、しかも開閉カバー5の開閉操作が容易になる。
【0071】
これに対して、図13(B)に示す本発明の別の実施形態では、輸液ポンプ1の開閉カバー5のフック5Dは、開閉カバー5の最も右側に配置され、フック5Eは、開閉カバー5の最も左側に配置されている。
図13(C)に示す本発明の別の実施形態では、輸液ポンプ1の開閉カバー5のフック5Dは、開閉カバー5の最も右側に配置され、フック5Eは、開閉カバー5の最も左側に配置され、しかももう1つのフック5Nが開閉カバーの中央位置に配置されている。このように、開閉カバー5には、少なくともフック5Dが右側の位置に配置され、フック5Eが左側の位置に配置されているが、さらに開閉カバー5の中央位置に小さなフック5Nを追加して配置することも可能である。これにより、開閉カバー5はさらに強い力で本体部1B側に固定できる。
なお、開閉カバー5において、X方向に関して中央位置にだけ1つの大きなサイズのフックを設けると、開閉カバー5の高さ寸法が大きくなるので、輸液ポンプ1のサイズが大型になるおそれがある。また開閉カバー5において、X方向に関して右側位置にだけ1つのフックを設けると、送液駆動部60が輸液チューブ200をしごく動作をすると、開閉カバー5が撓んでしまうので良くない。
【0072】
図14は、図1と図2に示す複数台の輸液ポンプ1を、設定スタンド70に搭載した例を示しており、必要に応じて複数台の輸液ポンプ1を同時に使用することができる。輸液ポンプ1は、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向にセットすることができるので、複数第の輸液ポンプ1は輸液チューブを上から下向きに垂直方向にセットする場合に比べて、上下方向に並べて重ねて配置できる。
このように、同じ種類の複数台の輸液ポンプ1を重ねるようにして配置したり、輸液ポンプ1と、この輸液ポンプ1とは異なる種類のポンプ、例えばシリンジポンプ1100を積み重ねて配置する際には、輸液ポンプ1の本体カバー2の周囲部分もしくは一部分と、シリンジポンプ1100の本体カバー2の周囲部分もしくは一部分には、好ましくは本体カバー2の色とは異なる色、例えば黄色や赤色のシール材を貼ったり、塗装をすることで、ポンプの目印770を表示することができる。これにより、ポンプの目印770が設けられることで、複数台の輸液ポンプ1を積み重ねて使用したり、あるいは輸液ポンプ1と他の種類のポンプ例えばシリンジポンプ等を積み重ねて使用する場合には、医療従事者が各ポンプの境目を視覚的に明確に認識できるメリットがある。
輸液ポンプ1では、医療従事者が、輸液チューブを本体の下部分に装着して開閉カバーにより輸液チューブを覆う際に、開閉カバーが撓むことを防止して、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる。すなわち、開閉カバーがチューブ装着部と送液駆動部を閉じる際に、開閉カバーがチューブクランプ部から力を受けても、少なくとも第1フック部材と第2フック部材より、開閉カバーが撓むことを防止できるので、送液駆動部が駆動しても薬剤を送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0073】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図1と図2に示す例では、輸液チューブ200は、チューブ装着部50により水平方向であるT方向に沿ってセットされているが、これに限らず、例えばチューブ装着部50は、輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bにかけて所定の角度分下がるように傾斜して横方向にセットするような構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1・・・輸液ポンプ、1D、1E・・・固定部分(ダブルフック構造部)、2・・・本体カバー(本体ともいう)、2A・・・本体カバーの上部分、2B・・・本体カバーの下部分、3・・・表示部(警告手段の一例)、4・・・操作パネル部、5・・・開閉カバー(蓋部材)、5C・・・輸液チューブ押さえ部材、5D・・・フック(第1フック、ダブルフック構造部)、5E・・・フック(第2フック、ダブルフック構造部)、50・・・チューブ装着部(ライン装着部ともいう)、51・・・気泡センサ、52・・・上流側閉塞センサ、53・・・下流側閉塞センサ、54・・・第1輸液チューブガイド部(上流側の輸液チューブガイド部)、54T・・・傾斜案内部、54B、54C・・・突起、55・・・第2輸液チューブガイド部(下流側の輸液チューブガイド部)、60・・・送液駆動部、100・・・制御部、200・・・輸液チューブ(輸液ラインともいう)、260・・・開閉操作レバー、270・・・チューブクランプ部、300・・・ダブルフック構造部、305…連結部材、320・・・開閉カバーの突起、330・・・気泡センサのセンサ本体部、331・・・超音波発振素子、332・・・超音波受信素子、350・・・気泡センサのガイド溝部、351・・・第1案内面、352・・・第2案内面、372・・・気泡センサの凹部、441・・・押圧部材のスプリング(付勢部材)452・・・押圧部材(第1押圧部材)、453・・・押圧部材(第2押圧部材)、X・・・水平方向(横方向)、T・・・正しい送液方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬剤等を送液するための輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して薬剤の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。輸液ポンプは本体と開閉扉とを有している。輸液ポンプの上には所定の薬剤バッグ(輸液バッグ)が配置され、本体と開閉扉との間には、薬剤バッグから下げた輸液チューブを挟みこんで、この輸液チューブを本体内に収容して開閉扉を閉じることで保持している。
輸液ポンプの本体内では、定位置にセットされた輸液チューブの外周面が、本体内の複数のフィンガと開閉扉の内面との間に挟まれている。この輸液ポンプは、送液駆動部の複数のフィンガが個別駆動されることで、複数のフィンガが輸液チューブの外周面を長さ方向に沿って順次押圧して薬剤の送液を行う蠕動式輸液ポンプである(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液ポンプでは、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において上から下に向けて垂直に通して保持している。
これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプが提案されている。このように、輸液チューブを輸液ポンプの本体において水平方向に通して保持する構造を採用しようとするのは、輸液チューブが輸液ポンプの本体内を上から下に向けて垂直に通っている輸液ポンプとは異なり、複数の輸液ポンプを上下位置にスタックした状態で重ねて保持しても輸液チューブが邪魔にならないという利点があるからである。例えば、輸液ポンプの本体に対して向かって右側部分に輸液チューブの上流側が配置され、輸液ポンプの本体に対して向かって左側部分に輸液チューブの下流側が配置されるように予め決められている場合には、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置すれば、送液駆動部が駆動することで、薬剤が上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って送液でき、患者に対して正しく送液できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブが輸液ポンプの本体において水平方向にセットされるので、医療従事者(使用者)が輸液チューブの上流側と下流側とを間違えて輸液ポンプの本体に対して水平方向に沿って逆方向にセットする可能性がある。
【0006】
すなわち、医療従事者が誤って輸液チューブを本体に対して逆方向に配置してしまい、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置してしまうと、薬剤は正しい方向とは逆の方向に送液されてしまうので、薬剤が患者に対して正しく送液することができない。
このため、医療従事者が輸液チューブを輸液ポンプに装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着できることが要望されている。
【0007】
そこで、本発明は、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる輸液ポンプを提供することを目的とする。さらに、複数の輸液ポンプをラックや輸液スタンドを使用したり、またはラックや輸液スタンドを使用しないで上下方向にスタックした状態で使用できる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の輸液ポンプは、本体の下部分に配置されて、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と、前記横方向に沿った回転軸を中心にして開閉可能であり、閉じることで前記チューブ装着部と前記送液駆動部を覆う開閉カバーと、前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの上流側を挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記輸液チューブの前記上流側を斜めに案内する傾斜案内部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記開閉カバーが閉じた状態でも露出されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる。すなわち、医療従事者は輸液チューブの上流側がこの傾斜案内部側にセットされることを、視覚的に確認することができ、輸液チューブの上流側を急激に曲げないようにして保持することができる。また、この傾斜案内部が開閉カバーにより覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部を直接目視することで、輸液チューブの上流側を傾斜案内部側に配置すれば良いことを確認できる。
【0009】
好ましくは、前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの下流側を保持する下流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記上流側を挟んで保持する突起を有し、前記下流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記下流側をはめ込む溝部であることを特徴とする。
上記構成によれば、輸液チューブの上流側と下流側はそれぞれ保持できるので、輸液チューブは、チューブ装着部に正しく装着でき、開閉カバーを閉じても輸液チューブは開閉カバーに挟まれてしまうことが無い。
【0010】
好ましくは、前記輸液チューブの前記上流側の前記開閉カバーの側面部は、斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、開閉カバーを閉じても上流側の輸液チューブガイド部を常に露出させることができるので、輸液チューブの上流側が上流側の輸液チューブガイド部に装着されていることを目視で確認できる。
【0011】
好ましくは、前記本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、チューブ装着部への輸液チューブの装着を行って、開閉カバーを閉じることができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、医療従事者が輸液チューブを装着する際に、医療従事者が目視で確認しながら容易に輸液チューブを正しい方向に装着することができ、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】図1と図2に示す輸液ポンプの開閉カバーを開いて輸液チューブを装着するためのチューブ装着部を示す斜視図。
【図4】図3に示す輸液ポンプをV方向から見た正面図。
【図5】開閉カバーのダブルフック構造部の構造例を示す図。
【図6】第1輸液チューブガイド部と気泡センサの付近を示す正面図。
【図7】図4に示す気泡センサの好ましい構造例を示す図。
【図8】気泡センサにおけるガイド溝部の第2案内面の形成位置を示す図。
【図9】本発明の実施形態と比較例における超音波の伝播例を示す図。
【図10】上流閉塞センサと下流閉塞センサの構造例を示す分解斜視図。
【図11】上流閉塞センサと下流閉塞センサにそれぞれ対向する第1押圧部材と第2押圧部材の支持構造を示す図。
【図12】輸液ポンプの電気的な構成例を示す図。
【図13】本発明の別の実施形態を示す図。
【図14】図1と図2に示す複数台の輸液ポンプと別のシリンジポンプを、設定スタンドに搭載した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。 図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図である。
【0015】
図1と図2に示す輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入を、1〜9999mL/h,1〜9999mLの範囲で、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる輸液装置である。この輸液ポンプ1は、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤を選択して、その選択した薬剤を送液するために用いられる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0016】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pに対して設定入力された注入速度(mL/h),注入量(mL)に応じて正確に送液することができる。薬剤は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有しており、取手2Tは水平方向であるN方向に伸ばしたり水平方向であるT方向に収納したりすることができる。この本体カバー2は、本体ともいい、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。このように、本体カバー2が防沫処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0017】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1と図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。この表示部3は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。
表示部3は、例えばポリエステル膜で表面がおおわれており、艶がある。これに対して、操作パネル部4の表面は、例えば艶消し処理が施されている。本体カバー2の上部分2Aは、本体カバー2の上半分の部分である。本体カバー2の下部分2Bは、本体カバー2の下半分の部分である。本体カバー2の周囲部分もしくは一部分には、好ましくは本体カバー2の表面色とは異なる色、例えば黄色や赤色のシール材を貼ったり、塗装をすることで、ポンプの目印を表示することができる。このポンプの目印が設けられることで、複数台の輸液ポンプ1を積み重ねて使用したり、あるいはこの輸液ポンプ1と他の種類のポンプ例えばシリンジポンプ等を積み重ねて使用する場合には、各ポンプの境目が視覚的に明確になるメリットがある。
【0018】
図2では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、流量(mL)の表示欄3E等が表示されているが、図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に警告メッセージを表示することもできる。
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えば、内部にLEDを含み、赤色,緑色,オレンジ色のいずれかで、光拡散剤を介して発光・表示して輸液ポンプ1の動作状態を示すために、本体カバー2から2mm程度ドーム状に突出したパイロットランプ4A、設定流量(mL/h)より早い注入速度で薬液を注入するための早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。電源スイッチボタンは操作パネル部4とは別の位置に配置されている。
【0019】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、蓋部材としての開閉カバー5が回転軸5Aを中心として回転し、本体カバー2の内面が上面を向くようにR方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5はX方向に沿って長く形成されている蓋である。開閉カバー5の内面側であって、下部分2Bのチューブ装着部50には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200をセットして、この開閉カバー5を閉じることで、輸液チューブ200はX方向に沿って水平に装着できるようになっている。
図2に示すように、開閉カバー5の表面には、好ましくは必要に応じて、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。輸液チューブ設定方向表示部150は、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を有する。
【0020】
これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、例えばシール材に印刷されたものであり、これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、開閉カバー5の表面に貼り付けられている。
図2に示すように、薬剤バッグ表示部151は、輸液チューブ200の薬剤バッグ170側が開閉カバー5において向かって右側部分にくることを目視で確認するために配置され、患者側表示部152は、輸液チューブ200の患者P側が開閉カバー5において向かって左側部分に位置されることを目視で確認するために配置されている。そして、送液方向表示部153は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい方向の送液方向(T方向)を明示するために配置されており、薬剤バッグ表示部151から患者側表示部152に向かっているT方向に沿った矢印である。この輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の表面側に、後付けで貼り付けても良い。
なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向はT方向と平行であり輸液ポンプ1の左右方向で、Y方向は輸液ポンプ1の前後方向である。
【0021】
図3は、図1と図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50を示す斜視図である。図4は、図3に示す輸液ポンプ1をV方向から見た正面図である。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、輸液ポンプ1の本体部1B側に設けられており、チューブ装着部50は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50は、図2に示すように開閉カバー5を、回転軸5Aを中心としてCR方向に閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
このように、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3にカラーで表示される、輸液チューブ200の装着状況の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、右側位置の第1輸液チューブガイド部54と左側位置の第2輸液チューブガイド部55と、開閉カバー5を有している。チューブ装着部50には、チューブクランプ部270が配置されている。
【0022】
図3と図4に示す開閉カバー5の構造例を説明する。
図3と図4に示すように、開閉カバー5は、輸液ポンプ1を軽量化するために、薄い成型樹脂部材により作られている板状の部材であり、この軽量化を図るために、開閉カバー5には、電気スイッチ等の電装部品は装着されていない構造になっている。これにより、開閉カバー5の重量を軽減できるとともに、チューブ装着部50側から開閉カバー5側への電気配線を省略して構造を簡単化することができる。
図3と図4に示すように、開閉カバー5は、チューブ装着部50を、回転軸5Aを中心としてCS方向とCR方向に沿って開閉カバー5の内面が上面を向くように開閉可能に覆うことができるようにするために、2つのヒンジ部2H、2Hにより本体カバー2の下部2Vに対して支持されている。2つのヒンジ部2H、2Hは、係合締付け部を構成するための複数の押え部としての第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにそれぞれ対応して配置されている。
【0023】
図3と図4に示すように、開閉カバー5の表面側には、右上部分に開閉操作レバー260が設けられている。開閉カバー5の内面側には、輸液チューブ押さえ部材5Cと、係合部材5D、5Eが設けられている。この輸液チューブ押さえ部材5Cは、X方向に沿って長く矩形状かつ面状の突出部として配置されて蠕動式の送液駆動部60に対面する位置にある。輸液チューブ押さえ部材5Cは、送液駆動部60に沿ってX方向に平坦面であり、開閉カバー5をCR方向に閉じることで、送液駆動部60との間で輸液チューブ200の一部分を押し付けて挟むようになっている。
医療従事者は、表示部3に表示されている表示内容を確認しながら、輸液チューブ200を輸液ポンプ1の本体の下半分の部分に水平方向に沿ってセットでき、輸液チューブ200がチューブ装着部50にセットされた後に、開閉カバー5は輸液チューブ200を覆うことができる。
【0024】
図3と図4に示すように、開閉カバー5の閉止状態を緊密に保持するための係合締付け部としての2つのフック部材5D、5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かることにより、開閉カバー5は、図2に示すように、本体部1Bのチューブ装着部50を閉鎖した状態を強固に保持することができる。この2つのフック部材5D、5Eと、本体部1B側の固定部分1D、1Eは、開閉カバー5の係合締付け部としてのダブルフック構造部300を構成している。フック部材5Dは第1フック部材であり、フック部材5Eは第2フック部材である。
なお、係合締付け部としては、本実施形態のようなフック構造に限らず、カバー側に止め雄ネジ、本体側に雌ネジ複数のボルト締付け構造や、締めつけ力を調整できる挟持構造等、本体側から動作時に開閉カバーに加えられる力に対向して、閉止状態をしっかり保持できるものであれば種々の構造を採用できる。
【0025】
図5は、開閉カバー5のダブルフック構造部300の構造例を示している。
図5(A)に示すように、開閉カバー5の内面側5Iには、フック部材5Dが基部301から突出して設けられ、フック部材5Eが基部302から突出して設けられている。この基部301は、開閉カバー5の右端部側の近くの位置に配置され、基部302は、開閉カバー5の左端部側に配置されている。図4に示すように、チューブ装着部50では、フック部材5Dとフック部材5Eの間の位置に対応して、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、チューブクランプ部270が配置されている。しかし、チューブ装着部50では、気泡センサ51と上流閉塞センサ52は、フック部材5Dよりもさらに右側の位置に対応して配置されている。
【0026】
図5(A)から図5(C)に示すように、開閉カバー5をCR方向に閉じて、フック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。フック部材5Dは、ほぼC字型の部材であり、回転軸303により開閉カバー5の基部301に取り付けられている。フック部材5Eは、ほぼC字型の部材であり、回転軸304により開閉カバー5の基部302に取り付けられている。
フック部材5D、5Eは、例えば金属製の連結部材305と2つのピン306,307により連結されている。開閉操作レバー260の一端部は、このピン206を用いて基部301に連結されている。このため、医療従事者が開閉操作レバー260をRR方向に回すことで、フック部材5D、5Eは、連結部材305により連動することでRT方向に同時に回転する。
【0027】
フック部材5D、5Eは、図5(A)に示すように、医療従事者が開閉カバー5をCR方向に押して、図5(B)に示すように開閉カバー5によりチューブ装着部50を閉じる際には、図5(B)に示すように開閉操作レバー260をRR方向に回転操作すれば、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かる。
逆に、図5(C)に示す状態から図5(B)に示すように、医療従事者がチューブ装着部50を開けようとする際には、図5(C)から図5(B)に示すように、開閉操作レバー260をRS方向に回転操作すれば、フック部材5Dとフック部材5Eは、RU方向に回転して本体部1B側の固定部分1D、1Eからそれぞれ同時に離脱する。このため、医療従事者が開閉カバー5を開けることにより、チューブ装着部50を露出させることができる。
【0028】
図4に示すチューブクランプ部270は、開閉カバー5を開けることにより、輸液チューブ200の途中部分をクランプして閉塞させることができる。また、開閉カバー5を閉じた状態では、輸液チューブ200は閉塞されない状態となる。チューブクランプ部270は、左側の固定部分1Eの近傍であって、左側のフック部材5Eの位置に対応するチューブ装着部50の位置付近に配置されている。
【0029】
図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。
【0030】
このように、水平方向に保持された輸液チューブ200は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、そしてチューブクランプ部270に沿って配置されるようになっている。
【0031】
図6は、第1輸液チューブガイド部54と気泡センサ51の付近を示す正面図である。
図6と図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tを有している。2つの突起54B,54Cは、輸液チューブ200を水平方向にセットする際に、輸液チューブ200の上流側200Aを着脱可能に挟んで保持するために、本体部1Bに形成されている。
傾斜案内部54Tは、2つの突起54B、54Cから、図7において斜め右上方向(上流側に向かって徐々に上昇するように傾斜して)形成された下向き段部であり、輸液チューブ200の上流側200Aを斜めに案内する部分である。
この傾斜案内部54Tは、水平方向からの角度αは、好ましくは25〜35度、特に好ましくは30度の傾斜角で、水平方向の長さLは13〜18mm、特に好ましくは15mm、高さHは、13〜18mm、特に好ましくは15mm、幅Wが6〜8mm(好ましくは7mm)、底面がR3.5mm、深さ5.4mmで形成されている。
水平方向からの角度αは、35度を越えると、2つの2つの突起54B,54C部で折れ曲がりやすくなるとともに輸液ポンプ1の高さ方向の寸法が大きくなり、輸液チューブ200を装着する作業がやや難しくなる。水平方向からの角度αは、25度より小さいと、水平方向の長さLが長くなり、輸液ポンプ1の幅方向の寸法が大きくなる。
また、幅Wが8mmより大きいと、輸液チューブ200が傾斜案内部54Tに挟まらなくなり、幅Wが6mmより大きいと、輸液チューブ200は、傾斜案内部54Tで押しつぶれた状態になる。
このような傾斜案内部54Tを設けることにより、医療従事者は輸液チューブ200の上流側200Aをこの傾斜案内部54Tである段部に押し付けるようにセットするだけで、輸液チューブ200Aの上流側が正しくセットされたことを視覚的に確認することができる。これにより、輸液チューブ200の上流側200Aを急激に曲げないようにして保持することができる。また、この傾斜案内部54Tが開閉カバー5により覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部54Tを直接目視することで、輸液チューブ200の上流側200Aを傾斜案内部54T側に配置すれば良いことを確認できる。
【0032】
図4に示すように、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bの一部分を着脱可能に挟んで保持するために、本体部1Bの側面部分1Sに形成された溝部分である。
図4に示す第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200を開閉カバー5とチューブ装着部50との間に挟み込んで潰してしまうことが無いように、チューブ装着部50内に確実に装着できるようにするために設けられている。
図1と図2に示すように、開閉カバー5の右側の側面部5Kは、斜め左上方向に向かって傾斜して形成されている。これにより、開閉カバー5を閉じて状態であっても、開閉カバー5が第1輸液チューブガイド部54の2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tの上にかぶらないようにしている。これにより、開閉カバー5を閉じた状態であっても、医療従事者は、2つの突起54B,54Cと、傾斜案内部54Tを露出させて、輸液チューブ200の上流側200Bの装着状態を、目視で確認できる。
【0033】
図4に示す気泡センサ51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡センサ51は、軟質塩化ビニル製などの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬剤中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの発信部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬剤に当てることで、超音波の薬剤における透過率と超音波の気泡における透過率が異なることから、超音波センサの受信部は、その透過率の差に基づく出力差を検出して気泡の有無を監視する。
【0034】
図7は、図4に示す気泡センサ51の好ましい構造例を示している。図7(A)は、開閉カバー5がチューブ装着部50を覆う直前の状態を示し、図7(B)は、開閉カバー5がチューブ装着部50を覆った状態を示し、図7(C)は、気泡センサ51の付近を示斜視図である。
図7(A)と図4に示すように、開閉カバー5の内面側の気泡センサ51に対応する位置には、突起320が設けられている。図7(A)と図7(C)に示すように、気泡センサ51は、プラスチック製のセンサ本体部330と、超音波発振素子331と、超音波受信素子332を有している。
センサ本体部330は、チューブ装着部50の表面50Sに形成されている設定用の穴部329内にはめ込むことで固定されている。センサ本体部330は、中央部分341と上側保持部342と下側保持部343を有している。中央部分341は、上側保持部342と下側保持部343の中央位置にあり、上側保持部342と下側保持部343は、穴部329内にはめ込んで固定されている。中央部分341と上側保持部342の隙間361には、超音波発振素子331が固定されている。中央部分341と下側保持部343の隙間362には、超音波受信素子332が固定されている。超音波発振素子331と超音波受信素子332は、Y方向に平行にあるように設定されている。
【0035】
図7(A)に示すように、超音波発振素子331の一端部331Aは、チューブ装着部50の表面50Sから間隔D1に位置に配置されている。超音波受信素子332の一端部332Aは、チューブ装着部50の表面50Sから間隔D3に位置に配置されている。間隔D1は、例えば3.9mmであり、間隔D1>間隔D3である。超音波受信素子332の他端部332Bは、間隔D1と間隔D2を加えた間隔D4の位置に配置されている。超音波発振素子331の他端部331Bは、間隔D4と間隔D5を加えた位置に配置されている。間隔D2は、例えば3.2mmである。
【0036】
このように、超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置、すなわち超音波の屈折分だけY1方向にずれた位置に配置されている。超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置に配置するのは、第1案内面351がX方向とY方向により形成される面と平行であるが、第2案内面352がY方向に対して角度θだけ傾斜しているからである。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHが第2案内面352で屈折して伝播しても、超音波HHは超音波受信素子332により確実に受信できる。
【0037】
図7(A)に示すように、センサ本体部330は、輸液チューブ200を案内して保持するガイド溝部350を有している。このガイド溝部350は、第1案内面351と第2案内面352と底部分353を有している。第1案内面351は、Y方向とX方向により形成される平面であり、超音波発振素子331と平行に形成されている。これに対して、第2案内面352は、Z方向に対して角度θで傾斜して形成された傾斜面である。つまり、第2案内面352は、超音波発振素子331と超音波受信素子332に対して平行には形成されていない。この角度θの例としては、65〜75度、好ましくは70度である。この角度θが65度よりも小さいと、センサ本体部330のZ方向の厚みDFが大きくなってしまうので、好ましくない。また、75度より大きいと、開口部が狭くなり、輸液チューブ200をセンサ本体330にガイドしづらくなる。
第2案内面352は、X方向に沿って形成されている平坦面である。このように、第2案内面352がY方向とZ方向に対して傾斜面であると、異なる直径を有する各種の輸液チューブ200をガイド溝部350に入れて保持する際に、ガイド溝部350は輸液チューブ200の異なる直径に対応して保持できる。輸液チューブ200の直径の範囲の例としては、例えば3.3mm〜4.5mmの範囲である。
【0038】
図8は、ガイド溝部350の第2案内面352の形成位置について示している。図8(A)は、本発明の実施形態におけるガイド溝部350の第2案内面352の好ましい形成例を示しており、図8(B)は、比較例として好ましくないガイド溝部の形状を示している。
図8(A)は、本発明の実施形態におけるガイド溝部350の第2案内面352の好ましい形成例では、傾斜面である第2案内面352が第1案内面351よりも下側、即ち、回転軸5Aに対して近位側に位置されている。開閉カバー5の突起320が、回転軸5Aを中心として、CR方向に回転してガイド溝部350内に入り込むと、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320とガイド溝部350の第1案内面351と第2案内面352の間に、潰されないようにして保持することができる。
【0039】
これに対して、図8(B)は、比較例の好ましくないガイド溝部1000の形状では、傾斜面1002が平坦面1001よりも上側即ち、回転軸5Aに対して遠位側に位置されている。この比較例では、開閉カバー5の突起320がCR方向に回転してガイド溝部1000内に入り込むと、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320と傾斜された傾斜面1002との間に挟まれて潰れてしまう恐れがある。
このように、輸液チューブ200が突起320と傾斜された傾斜面1002との間に挟まれて潰れてしまうことを防ぐために、本発明の実施形態では、図8(A)に示すように、開閉カバー5のヒンジ部2H(開閉カバー5の回転軸5A)側に近い方の案内面である第2案内面352が傾斜面となっていて、ヒンジ部2H側には遠い方の案内面である第1案内面351はY方向に沿った平坦面となっている。
【0040】
図7(A)に戻ると、ガイド溝部350の底部分353は、第1案内面351と第2案内面352の交わる部分に形成されており、凸部371と凹部372を有している。凹部372の位置は、凸部371の位置に比べて、さらにY1方向側に形成されており、凹部372の位置は、超音波発振素子331の他端部331Bの位置よりも、さらにY1方向側に設定されている。
図9(A)は、図7(A)に示す本発明の実施形態における底部分353の凹部372を有している場合の超音波の伝播例を示している。図9(A)に示すように、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることにより回り込むことを阻止することができる。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることから回り込んで伝播せず、ノイズが超音波受信素子332に受信されてしまうことがないので、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下することを防げる。
【0041】
これに対して、図9(B)は、比較例として底部分353において凹部372が設けられていない場合の超音波の伝播例を示している。図9(B)では、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が無いことから回り込んで超音波受信素子332に受信されてしまう。このように超音波HHが回り込んで伝播して超音波受信素子332に受信されてしまうと、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下してしまうおそれがある。
【0042】
図4を参照すると、図4に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、同じ構成である。輸液チューブ200が閉塞する場合としては、例えば送液しようとする薬剤の粘度が高いか、薬剤の濃度が高い等の場合である。
【0043】
図10は、上流閉塞センサ52(下流閉塞センサ53)の構造例を示す分解斜視図である。チューブ装着部50の表面50Sには、穴部400が設けられている。この穴部400には、プラスチック製の枠部材401がはめ込まれており、枠部材401は長方形の開口部402を有している。プラスチック製のスライダ403は、穴部400内の収容穴部404内に挿入されており、基部405と先端部406とスプリング407を有している。この開口部402には、スライダ403の先端部406がはめ込まれている。スプリング407の一端部は基部405に取り付けられ、スプリング407の他端部は収容穴部404内の突起409に取り付けられている。収容穴部404の内面には、ホール素子410が配置されている。基部405には、2つのマグネット411,412が配置されている。
これにより、枠部材401を穴部400に装着し、基部405は例えばコイルスプリングであるスプリング407を保持しながら、開口部402と収容穴部404内に挿入するだけで、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、チューブ装着部50の表面50Sに対して簡単に装着することができ、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の組み立て作業性を向上できる。
【0044】
一方、図4に示すように、開閉カバー5の内面側には、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の対応する位置に、それぞれ押圧部材452、453が設けられている。押圧部材452、453の支持構造440は、同じ構造であり、図12に示している。図12は、この押圧部材452、453の支持構造440を示す。押圧部材452は第1押圧部材であり、押圧部材453は第2押圧部材である。
図11(A)と図11(E)に示すように、押圧部材452、453の支持構造440は、付勢部材としてのスプリング441と、支持部材442と、2つの抜け止め部443を有している。押圧部材452(453)は、筒部分444を有しており、2つの抜け止め部443は筒部分444の左右反対側の位置に形成されている。この筒部分444内には、スプリング441の一端部から途中部分までが収容され、スプリング441の他端部は支持部材442の突起445にはめ込まれて保持されている。これにより、組立作業者は、押圧部材452(453)は、スプリング441の力に抗して、図11(B)に示すようにM方向に押すことができる。
【0045】
図11(A)に示すように、支持部材442は、表面板442Aには長方形の穴部442Cを有し、この穴部442Cには、筒部分444を通すことで、押圧部材452(453)は支持部材442内にはめ込むようになっている。
図11(B)に示すように、組立作業者は、押圧部材452(453)をスプリング441の力に抗してM方向に押したままで、図11(C)に示すように90度だけJ方向に回転する。そして、組立作業者は、図11(D)に示すように各抜け止め部443を、開閉カバー5側の係合部分460にはめ込む。これにより、押圧部材452(453)は、支持部材442において図11(D)に示す状態を維持して回転しないようにして、スプリング441の力に抗してM方向押すことができるとともに、押圧部材452(453)は、支持部材442においてスプリング441の力によりM1方向に復帰できる。
【0046】
図11に示すように、上述した押圧部材452、453の支持構造440を採用することで、押圧部材452,453は、支持部材442に対してはめ込んで90度だけ回転させた後は、抜け止め部443により押圧部材452,453は飛び出すことがなく、スプリング441を介して簡単に取り付けることができるので、押圧部材452、453の組み立て作業性を向上できる。コイルスプリングであるスプリング441は、押圧部材452、453の筒部分444内に内蔵させるようにして配置することができるので、スプリング441を含む押圧部材452、453を、支持部材442に対して組み立てる際の作業性が良好である。図12(D)に示すように、押圧部材452、453の支持構造440の支持部材442は、簡単な構造であり高さHGを抑えることができるので、図12(F)に示すように開閉カバー5の内面側に簡単に配置できる。
【0047】
医療従事者が、図3に示すようにチューブ装着部50に輸液チューブ200をセットした後に、図2に示すように開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の第1押圧部材452と第2押圧部材453が輸液チューブ200の一部を上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができる。このため、製造上の公差のため、外径に若干バラツキがあったり、製造メーカーの異なる輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53は、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。
【0048】
図11(F)に示す開閉カバー5が図2に示すように閉じると、図10に示すように輸液チューブ200は、押圧部材452(453)とスライダ403の先端部406の間において、スプリング407,441の各付勢力により挟まれて保持される。もし、輸液チューブ200が閉塞して輸液チューブ200の直径が変わると、先端部406が輸液チューブ200の直径の変化に追従してY方向に移動する。このため、マグネット411,412がホール素子410に対して相対的に移動することで、ホール素子410は磁束の変化を検出して、制御部100に磁束の変化の信号を送ることができる。
図10に示すように、スプリング441の中心軸方向とスプリング407の中心軸方向は一致しており、スプリング441,407は、押圧部材452(453)と先端部406の間に輸液チューブ200を挟むことで、輸液チューブ200の直径方向に沿って輸液チューブ200に対して加圧力を与えることができる。このため、閉塞センサ52,53は、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。
【0049】
製造上の公差のため、外径に若干バラツキがあったり、製造メーカーの異なる輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の第1押圧部材452と第2押圧部材453が輸液チューブ200の一部を上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができるので、上流側閉塞センサ52と下流側閉塞センサ53は輸液チューブ200の閉塞状態を検出できる。
輸液チューブ200は、ある一定のチューブ内圧が作用した場合であっても、輸液チューブ200周辺の温度が変化するのに伴って、その膨らみ量も変化する。輸液チューブ200として使用される一般的な塩化ビニール製チューブやシリコンチューブは、温度が高くなると軟化し、逆に、温度が低くなると硬化する傾向がある。このため、一定のチューブ内圧が作用していても、温度が高くなると輸液チューブ200は膨らみ易くなり、逆に、温度が低くなる輸液チューブ200は膨らみ難くなる。
このため、好ましくは、輸液ポンプ1の使用環境温度を検出するためにサーミスタ等の温度センサ(不図示)を設け、温度センサで検出した使用環境温度を例えば20〜40℃の間で5℃毎に閉塞圧検知の閾値(閉塞センサ52,53を形成するスライダ403の移動量の閾値)を変更することで、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。例えば、一定圧の時の20〜25℃の時のスライダ403の移動量を1として、15〜20℃の時のスライダ403の移動量を0.99、10〜15℃の時のスライダ403の移動量を0.98、5〜10℃の時のスライダ403の移動量を0.97、25〜30℃の時のスライダ403の移動量を1.01、30〜35℃の時のスライダ403の移動量の1.02として閾値を変更する。こうすることで、輸液チューブ200が膨らみ易くなったり、膨らみ難くなってもそれに対応して輸液チューブ200内の閉塞圧をほぼ一定のレベルで検知できる。
【0050】
以上説明したように、図2に示すように開閉カバー5を閉じると、輸液ポンプ1のチューブ装着部50側から、閉じた状態の開閉カバー5の内面側に対して、力が加わることになる。
【0051】
このような本体部1Bの複数の箇所から開閉カバー5の内面側に力が加わるのではあるが、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。これにより、上述した開閉カバー5に対する加圧力は、フック部材5Dとフック部材5Eにより受け止めることができ、開閉カバー5はこの2か所で支えるので、開閉カバー5が反ったり、あるいは変形することが無い。
【0052】
図12は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図12に示すように、送液駆動部60は、後で説明するが、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば6個のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、6個のカム62A〜62Fに対応して6個のフィンガ63A〜63Fを有している。6個のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0053】
図12に示す制御部100の指令により、駆動モータ61の出力軸が回転すると、6個のフィンガ63A〜63Fが順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200はT方向に沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材5Cに対して押し付けられることから、輸液チューブ200内の薬剤を、T方向に送液することができるようになっている。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面をT方向に沿って順次押圧して輸液チューブ200内の薬剤の送液を行う。複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点をT方向に移動させることで、輸液チューブ200をしごいて薬剤を移送する。
【0054】
図12に示すように、輸液ポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0055】
図12に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Sと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0056】
図12に示す送液駆動部60の駆動モータ61の出力軸61Aが制御部100の指令により回転され、複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動をさせることにより、輸液チューブ200をしごいて薬剤をT方向に移送する。
図2は、輸液ポンプ1と、薬剤バッグ170と、輸液ポンプ1に対して正しい送液方向であるT方向に沿ってセットされた輸液チューブ200を示している。図2に示すように、輸液チューブ200の一端部はクレンメ179を介して薬剤バッグ170に接続され、輸液チューブ200の他端部は患者P側の留置針172に接続される。薬剤バッグ170内の薬剤171は、送液駆動部60の駆動により、輸液チューブ200と留置針172を通じて正しい方向であるT方向に送液されることで患者Pに投与される。
【0057】
図12に戻ると、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、図2に例示する情報内容や警告メッセージを表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警報内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警報を音により告知することができる。スピーカ131は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音声により警告を発する警告手段の一例である。ブザー132は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音により警告を発する警告手段の一例である。
【0058】
図12において、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2は、輸液チューブ200の上流側200Aの内圧の大きさを示す信号である。下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200の下流側200Bの内圧の大きさを示す信号である。
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬剤を送液できない状態を検出することができ、制御部100に出力されるアラームである。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、輸液用の留置針や輸液チューブ200の詰まっている場合、輸液チューブ200がつぶれているまたは折れている場合、高粘度の薬剤を使用している場合等である。
【0059】
図12において、制御部100は、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬剤データベース(DB)160に接続されており、薬剤データベース160に格納されている薬剤情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬剤情報MFを基にして、例えば図2に示す表示部3には薬剤情報MF等を表示することができる。
図13において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
【0060】
次に、上述した輸液ポンプ1を使用する際の動作を説明する。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する前に、図2に示す開閉カバー5の上に配置された輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認する。すなわち、図2に示すように、医療従事者が輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対してT方向に沿って正しくセットできるようにするために、まず、医療従事者は、図2に示すように、開閉カバー5上の輸液チューブ設定方向表示部150の薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認する。
【0061】
しかも、図2に示すように、この傾斜案内部54Tが開閉カバー5により覆われずに露出しているので、医療従事者はこの傾斜案内部54Tを直接目視することで、輸液チューブ200の上流側200Aを傾斜案内部54T側に配置すれば良いことを容易に確認できる。
そして、医療従事者は、開閉カバー5を開けて、輸液チューブ200の上流側200Aを本体部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側に配置し、輸液チューブ200の下流側200Bを本体部1Bにおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側に配置すれば良い。
【0062】
医療従事者は、図4に示す輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、チューブクランプ部270、そして第2輸液チューブガイド部55に沿ってT方向にセットできる。その後、図1と図2に示すように、開閉カバー5を閉じて、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、そして送液駆動部60と、チューブクランプ部270を覆う。これにより、輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に沿ってセットでき、送液駆動部60を駆動することにより、薬剤は輸液チューブ200を通じてT方向に沿って送液できることになる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分の表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー5の上部分の表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0063】
このように、医療従事者が開閉カバー5を閉じると、すでに説明したように、輸液ポンプ1の本体部1Bのチューブ装着部50側から開閉カバー5側に対して、次のような付勢力が加わる。図6に示すチューブクランプ部270の操作部材273が突起部275により押されることにより、スプリング274の力が開閉カバー5側に加わる。図4に示す輸液チューブ200の一部分が、輸液チューブ押さえ部材5Cと送液駆動部60との間に挟まれることによる反力が開閉カバー5側に加わる。そして、図11に示すように、輸液チューブ200が押圧部材452と先端部406の間と押圧部材453と先端部406の間の両方に挟まれることにより、2つのスプリング407,441の力が開閉カバー5側に加わる。
【0064】
このように、本体部1Bの複数の箇所から開閉カバー5の内面側に力が加わるのではあるが、図1と図2に示すように開閉カバー5を閉じた状態では、図5(C)に示すようにフック部材5Dとフック部材5Eは、本体部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かるようになっている。これにより、上述したように開閉カバー5を閉じた状態で発生する開閉カバー5に対する加圧力は、2か所のフック部材5Dとフック部材5Eにより受け止めて開閉カバー5を本体部1B側に確実に固定できる。このため、開閉カバー5が本体部1Bの複数の箇所から受ける力により撓んだり、反ったり、変形することが無く、開閉カバー5は確実にチューブ装着部50を覆うことができる。
【0065】
図2に示すように開閉カバー5を閉じた状態では、図4に示す右側のフック部材5Dは、開閉カバー5の開閉操作レバー260の付近の位置に設けられており、フック部材5Dは、右側の押圧部材452からの押圧力と、輸液チューブ押さえ部材5Cにおける押圧力に対応して開閉カバー5を閉じた状態に保持できる。図4に示す左側のフック部材5Eは左側の押圧部材453からの押圧力と、左側の操作部材273からの押圧力に対応して開閉カバー5を閉じた状態で保持できる。
このように、開閉カバー5を閉じると、輸液チューブ押さえ部材5Cが送液駆動部60に対して輸液チューブ200を当てて、かつ開閉カバー5の突起275はチューブクランプ部270を押して輸液チューブ200の一部を閉塞させるが、この際に開閉カバー5が輸液チューブ押さえ部材5Cからの受ける力とチューブクランプ部270から受ける力は、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにより受け止めることができるので、開閉カバー5が撓むことを防止できる。しかも、開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5は第1押圧部材452と第2押圧部材453からも力を受けるが、これらの力は第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにより受け止めることができるので、開閉カバー5が撓むことを防止できる。
【0066】
図2に示すように、輸液チューブ200がX方向に沿って正しく装着して開閉カバー65を閉じると、図9(A)に示すように、開閉カバー5の突起320が、回転軸5Aを中心として、CR方向に回転してガイド溝部350内に入り込む。これにより、輸液チューブ200は、突起320により押されて、突起320とガイド溝部350の第1案内面351と、回転軸5A側の傾斜面である第2案内面352との間において、潰されることなく保持することができる。このように輸液チューブ200が突起320と傾斜された第2案内面352の間に挟まれても潰れてしまわないようにできるのは、図4に示す開閉カバー5のヒンジ部2H(開閉カバー5の回転軸5A)側に近い方の案内面である第2案内面352が傾斜面となっていて、ヒンジ部2H側には遠い方の案内面である第1案内面351はY方向に沿った平坦面となっているためである。
【0067】
図8(A)において、直径が異なる複数種類の輸液チューブ200の内の何れのサイズの輸液チューブが輸液ポンプ1のチューブ装着部50に装着されても、開閉カバー5を閉じると気泡センサ51に輸液チューブ200の一部を潰すことなくガイド溝部350内に挿入することができ、輸液チューブ200内の気泡を検出できる。すなわち、チューブ装着部50に輸液チューブ200をセットして開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5の突起320が、気泡センサ51のガイド溝部350内に入り込んで、輸液チューブ200の一部をガイド溝部350の第1案内面351と第2案内面352の間に保持させることができる。開閉カバー5の回転軸5Aから遠い側の第1案内面351は超音波発振素子331と平行な面であり、開閉カバー5の回転軸5Aに近い側の第2案内面352は傾斜した面であるので、開閉カバー5が回転軸5Aを中心に回転して閉じる際に、開閉カバー5の突起320は第2案内面352との間で輸液チューブ200の一部を挟み込むことが無く輸液チューブを潰すことが無い。このため、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0068】
また、図7(A)に戻ると、ガイド溝部350の底部分353には凹部372が設けられているので、超音波の伝播例を示す図9(A)を参照すると、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることにより回り込むことを阻止することができる。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHは、凹部372が有ることから回り込まず、ノイズが超音波受信素子332に受信されてしまうことがないので、輸液チューブ200内の気泡の検出精度が低下することを防げる。このように、凹部372は、超音波発振素子331の他端部331Bの位置よりもY1方向側にさらに深く形成され、超音波発振素子331からの超音波HHがガイド溝部350内の輸液チューブ200の一部を通らずにセンサ本体330内を伝播して超音波受信素子332に受信されることを阻止する。このため、超音波受信素子332にノイズが入るのを防ぎ、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0069】
さらに、図7(A)に示すように、超音波発振素子331のY方向に関する位置は、超音波受信素子332のY方向に関する位置に比べて、間隔D5だけY1方向にずれた位置に配置するのは、第1案内面351はX方向とY方向により形成される面と平行であるが、第2案内面352がY方向に対して角度θだけ傾斜しているからである。これにより、超音波発振素子331からの超音波HHが第2案内面352で屈折しても、超音波HHは超音波受信素子332により確実に受信できる。すなわち、第2案内面352が傾斜していても、超音波発振素子331からの超音波HHは、第1案内面351と輸液チューブ200の一部を通って第2案内面352を経て超音波受信素子332により受信でき、気泡センサ51は輸液チューブ200内の気泡を検出できる。
【0070】
図13(A)は、図1〜図4に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5におけるフック5D、5Eの配置例を示している。開閉カバー5には、フック5Dが右側の位置に配置され、フック5Eが左側の位置に配置されているので、開閉カバー5の高さ寸法を小さくして、できる限り大きな表示部3を配置することができる。開閉カバー5の内側には、電気スイッチや電気配線をしない構造を採用しているので、開閉カバー5の重量を抑制でき、開閉カバー6を薄くしても開閉カバー5の撓みを抑制でき、しかも開閉カバー5の開閉操作が容易になる。
【0071】
これに対して、図13(B)に示す本発明の別の実施形態では、輸液ポンプ1の開閉カバー5のフック5Dは、開閉カバー5の最も右側に配置され、フック5Eは、開閉カバー5の最も左側に配置されている。
図13(C)に示す本発明の別の実施形態では、輸液ポンプ1の開閉カバー5のフック5Dは、開閉カバー5の最も右側に配置され、フック5Eは、開閉カバー5の最も左側に配置され、しかももう1つのフック5Nが開閉カバーの中央位置に配置されている。このように、開閉カバー5には、少なくともフック5Dが右側の位置に配置され、フック5Eが左側の位置に配置されているが、さらに開閉カバー5の中央位置に小さなフック5Nを追加して配置することも可能である。これにより、開閉カバー5はさらに強い力で本体部1B側に固定できる。
なお、開閉カバー5において、X方向に関して中央位置にだけ1つの大きなサイズのフックを設けると、開閉カバー5の高さ寸法が大きくなるので、輸液ポンプ1のサイズが大型になるおそれがある。また開閉カバー5において、X方向に関して右側位置にだけ1つのフックを設けると、送液駆動部60が輸液チューブ200をしごく動作をすると、開閉カバー5が撓んでしまうので良くない。
【0072】
図14は、図1と図2に示す複数台の輸液ポンプ1を、設定スタンド70に搭載した例を示しており、必要に応じて複数台の輸液ポンプ1を同時に使用することができる。輸液ポンプ1は、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向にセットすることができるので、複数第の輸液ポンプ1は輸液チューブを上から下向きに垂直方向にセットする場合に比べて、上下方向に並べて重ねて配置できる。
このように、同じ種類の複数台の輸液ポンプ1を重ねるようにして配置したり、輸液ポンプ1と、この輸液ポンプ1とは異なる種類のポンプ、例えばシリンジポンプ1100を積み重ねて配置する際には、輸液ポンプ1の本体カバー2の周囲部分もしくは一部分と、シリンジポンプ1100の本体カバー2の周囲部分もしくは一部分には、好ましくは本体カバー2の色とは異なる色、例えば黄色や赤色のシール材を貼ったり、塗装をすることで、ポンプの目印770を表示することができる。これにより、ポンプの目印770が設けられることで、複数台の輸液ポンプ1を積み重ねて使用したり、あるいは輸液ポンプ1と他の種類のポンプ例えばシリンジポンプ等を積み重ねて使用する場合には、医療従事者が各ポンプの境目を視覚的に明確に認識できるメリットがある。
輸液ポンプ1では、医療従事者が、輸液チューブを本体の下部分に装着して開閉カバーにより輸液チューブを覆う際に、開閉カバーが撓むことを防止して、薬剤を輸液チューブにより正しく送液することができる。すなわち、開閉カバーがチューブ装着部と送液駆動部を閉じる際に、開閉カバーがチューブクランプ部から力を受けても、少なくとも第1フック部材と第2フック部材より、開閉カバーが撓むことを防止できるので、送液駆動部が駆動しても薬剤を送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0073】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図1と図2に示す例では、輸液チューブ200は、チューブ装着部50により水平方向であるT方向に沿ってセットされているが、これに限らず、例えばチューブ装着部50は、輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bにかけて所定の角度分下がるように傾斜して横方向にセットするような構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1・・・輸液ポンプ、1D、1E・・・固定部分(ダブルフック構造部)、2・・・本体カバー(本体ともいう)、2A・・・本体カバーの上部分、2B・・・本体カバーの下部分、3・・・表示部(警告手段の一例)、4・・・操作パネル部、5・・・開閉カバー(蓋部材)、5C・・・輸液チューブ押さえ部材、5D・・・フック(第1フック、ダブルフック構造部)、5E・・・フック(第2フック、ダブルフック構造部)、50・・・チューブ装着部(ライン装着部ともいう)、51・・・気泡センサ、52・・・上流側閉塞センサ、53・・・下流側閉塞センサ、54・・・第1輸液チューブガイド部(上流側の輸液チューブガイド部)、54T・・・傾斜案内部、54B、54C・・・突起、55・・・第2輸液チューブガイド部(下流側の輸液チューブガイド部)、60・・・送液駆動部、100・・・制御部、200・・・輸液チューブ(輸液ラインともいう)、260・・・開閉操作レバー、270・・・チューブクランプ部、300・・・ダブルフック構造部、305…連結部材、320・・・開閉カバーの突起、330・・・気泡センサのセンサ本体部、331・・・超音波発振素子、332・・・超音波受信素子、350・・・気泡センサのガイド溝部、351・・・第1案内面、352・・・第2案内面、372・・・気泡センサの凹部、441・・・押圧部材のスプリング(付勢部材)452・・・押圧部材(第1押圧部材)、453・・・押圧部材(第2押圧部材)、X・・・水平方向(横方向)、T・・・正しい送液方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の下部分に配置されて、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と、
前記横方向に沿った回転軸を中心にして開閉可能であり、閉じることで前記チューブ装着部と前記送液駆動部を覆う開閉カバーと、
前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの上流側を挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部を有し、
前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記輸液チューブの前記上流側を斜めに案内する傾斜案内部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記開閉カバーが閉じた状態でも露出されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの下流側を保持する下流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記上流側を挟んで保持する突起を有し、前記下流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記下流側をはめ込む溝部であることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記輸液チューブの前記上流側の前記開閉カバーの側面部は、斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項1】
本体の下部分に配置されて、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と、
前記横方向に沿った回転軸を中心にして開閉可能であり、閉じることで前記チューブ装着部と前記送液駆動部を覆う開閉カバーと、
前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの上流側を挟んで保持する上流側の輸液チューブガイド部を有し、
前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記輸液チューブの前記上流側を斜めに案内する傾斜案内部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は、前記開閉カバーが閉じた状態でも露出されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記チューブ装着部に装着された前記輸液チューブの下流側を保持する下流側の輸液チューブガイド部を有し、前記上流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記上流側を挟んで保持する突起を有し、前記下流側の輸液チューブガイド部は前記輸液チューブの前記下流側をはめ込む溝部であることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記輸液チューブの前記上流側の前記開閉カバーの側面部は、斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−200423(P2012−200423A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68048(P2011−68048)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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