説明

輸液ポンプ

【課題】電池を装着して動作させようとする場合に、接触不良が発生した時に、無音状態で停止してしまうことを防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができる輸液ポンプを提供する。
【解決手段】電池Bから電源供給を受けて輸液送り部の動作を制御する制御部100と、輸液送り部が輸液動作に入る前に、電池Bの接触不良により、制御部100が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値未満である場合には、音声で警報を報知する主警報出力装置89と、制御部100が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値以上である場合には、音で警報を報知する副警報出力装置88を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内に薬液を注入するための携帯型の輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に薬液を投入するために使用する医療機器としては、例えば輸液ポンプが知られており、この輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入するのに広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成した携帯型の輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の携帯型の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
具体的には、該着脱式のカセットのケース内に可撓性の輸液チューブ(以下、「チューブ」と言う。)を導入し、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、輸液チューブに蠕動様運動を与えて、輸液チューブから薬液を所定の流速(mL/h)で注液を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した在宅で使用するような携帯型の輸液ポンプは、商用電源と内蔵電池の2系統の電源供給手段により動作させる病院等で使用される据え置き型の輸液ポンプと異なり、患者が携帯型の輸液ポンプにより輸液動作をする際には、主に電池をケースの電池ボックス内に取り付ける。
患者が電池を取り付けるために携帯型の輸液ポンプのケースの電池蓋を開けて、使用した電池を出して新しい電池を装着する場合に、患者は電池の交換作業が不慣れであることから、電池を電池ボックス内に確実に装着しようとして何度も出し入れすると、電池の電極が電池ボックスの電気端子に接触したり離れたりする接触不良現象を繰り返して起こすことがある。
【0006】
電源回路周りで異常状態が起きた場合、その故障状態によっては、無負荷状態に近い状況ではCPU(中央処理部)に対して動作可能な電圧を供給できるが、スピーカを駆動して警報を患者に対して音声で通知しようとすると、スピーカに大きな電流を流す必要があるため、CPUに供給される電圧の降下が起きる。この場合、電圧が動作可能電圧を下回ると、CPUはリセットされる。CPUがリセットされた場合、警報の通知作業は通常停止するため、負荷がなくなり電圧が回復し、CPUが再度起動しだすこととなる。CPUが起動すると再度警報を通知しようとするため電圧が降下することとなり、何度もリセット動作が繰り返されて、携帯型の輸液ポンプでは、ブザーが鳴動しない無音状態で停止してしまう。このように輸液ポンプの動作が異常で停止してしまうにもかかわらず、その異常状態を通知する警報を、患者に対して通知することができないという問題があった。
これを解決するには、警報の負荷がかかっても電圧が降下しないだけの電気容量を電池と別にハードウェアとして確保しておくことも考えられるが、そのためには大きな電池を別途踏査することや、大容量のコンデンサを積んだりすることとなり、携帯型ポンプにあるにもかかわらず、大きさや重量が大きくなるので患者の負荷が上がってしまったり、それら追加の部品のコストがあがってしまう問題がある。
そこで、本発明は、電池を装着して動作させようとする場合に、電池を何度も入れなおしたりすることに起因する無音状態での停止を防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができ、電圧が降下しないだけの電気容量の大きな電池を必要とせず、大容量のコンデンサを必要としない輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の輸液ポンプは、ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、前記ケースに配置されて電源用の電池を着脱可能に収容する電池収容部とを有する輸液ポンプであって、前記電池から電源供給を受けて前記輸液送り部の動作を制御する制御部と、前記輸液送り部が輸液動作に入る前に、前記電池収容部における前記電池の接触不良により、前記制御部が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値未満である場合には、前記制御部からの指令により、音声で警報を報知する主警報出力装置と、前記瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値以上である場合には、前記制御部からの指令により、音で警報を報知する副警報出力装置と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、電池を装着して動作させようとする場合に、接触不良が発生した時に、輸液ポンプが無音状態で停止してしまうことを防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができる。すなわち、制御部が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値未満である場合には、比較的消費電力の大きい主警報出力装置が患者に対して音声で警報を報知できる。また、制御部が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値以上である場合には、主警報出力装置に比べて消費電力の小さい副警報出力装置が患者に対して音で警報を報知できる。
【0008】
好ましくは、前記主警報出力装置は、スピーカであり、前記副警報出力装置は、圧電ブザーであることを特徴とする。上記構成によれば、スピーカと、このスピーカに比べて消費電力が比較的小さい圧電ブザーを配置すれば、輸液ポンプの異常を患者に対して報知できる。
【0009】
好ましくは、前記制御部は、予め定めた前記エラー判定閾値を記憶するメモリを有することを特徴とする。上記構成によれば、制御部は、メモリから予め定めたエラー判定閾値を読み出して,制御部の瞬間停止発生回数と比較することで、主警報出力装置と副警報出力装置のいずれを報知に用いるかを決めることができる。
【0010】
好ましくは、前記薬液を送るための薬液配管を有し、前記ケースに着脱可能に配置された状態で前記輸液送り部により前記薬液配管には蠕動様運動が与えられるカセットを有することを特徴とする。
上記構成によれば、カセットを用いる輸液ポンプの動作異常を音声または音で報知でき、輸液ポンプが無音状態で突然停止してしまうことを防げる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電池を装着して動作させようとする場合に、接触不良が発生した時に、無音状態で停止してしまうことを防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。
【図3】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
【図4】輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】電池ボックスの構造例を示す斜視図である。
【図6】制御部のCPUとその周辺の構成要素を示す図である。
【図7】不揮発性メモリ部における利用内容例を示す図である。
【図8】輸液ポンプの瞬間停止の検出方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。図2は、図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。図3は、図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
図1から図3に示す輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能なカバー12を有しており、該カバー12を、ヒンジ13を中心として回動可能として開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図2と図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する解除ボタン16,16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、図1において横方向に「停止−開始」のスライド操作をすることができる。符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
【0016】
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知するようになっている。
図1に例示するように、後筐体44内には、ブザーのようなサブ警報出力装置(副警報出力装置)301と、スピーカのようなメイン警報出力装置(主警報出力装置)300が配置されている。サブ警報出力装置301は警報内容を警報音で報知でき、メイン警報出力装置300は警報内容を音声により報知する機能を有する。メイン警報出力装置300が音声で警報内容を報知する際に消費される電力は、サブ警報出力装置301が音で警報を報知する際に消費される電力に比べて大きい。
【0017】
図2と図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、カセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができるようになっている。
本体11のカセット収納部15内には、図1から図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
【0018】
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが図2の矢印方向の回転することにより、順次図3に示すチューブ21を順次押圧して、チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するためのチューブ21に対して圧接し、このチューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0019】
図1から図3に示す閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20のチューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内において図2に示すC方向に沿って突出している。しかし、図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、チューブ21内が閉塞されてチューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液がチューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0020】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性のチューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0021】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性チューブ(輸液チューブともいう。)である。該チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。チューブ21は、薬液管路の一例である。
【0022】
図3に示すように、チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19からチューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されており、該露出部24はカセット20の一部を切欠き、チューブ21の一部を外部に露出させている。このチューブ21の露出部24には、ロータユニット31のチューブ押圧部31R(図2を参照)が押圧されることで、図3に示すように蠕動様運動がチューブ21に付与されるようになっている。
【0023】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、図3に示すように、カバー12を矢印A方向に閉じた際には、ヒンジ13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12を閉止した状態においては、カバー12の当接部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33に挟まれて固定されるとともに、チューブ21はロータユニット31側に押圧されている。
【0024】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、チューブ21の一部を押し潰してチューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
【0025】
図3のように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部はチューブ21から離れる。これにより、チューブ21は開放されてチューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rの動きにより患者に対してチューブ21を通じて薬液を送液できる。このとき、送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、電池を入れた状態で約320gである。
【0026】
次に、図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20のチューブ21が配置されている。後筐体44には、ジャック78と電源回路80が配置されている。しかも、電池(乾電池もしくは充電池)Bが後筐体44の電池ボックス内に着脱可能に配置される。ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されている。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0027】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、ギア31Gを介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路81と制御部100とショックセンサ200に電気的に接続されており、モータ駆動回路81と制御部100に対して電源供給を行う。
【0028】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、チューブ21が閉塞されてチューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液がチューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、その状態を制御部100に通知する。制御部100はCPU110を有しており、メモリ部111は、制御部100のCPU111に電気的に接続されている。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)と、不揮発性メモリ部330をも含んでいる。
【0029】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
サブ警報出力装置301は、ブザー回路90に電気的に接続され、メイン警報出力装置300は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0030】
図4のブロック図に示すように、輸液ポンプ10は、ショックセンサ200と内部バッテリ201を有している。
図4に示すショックセンサ200は、本体11に加わる衝撃力を検出すためのセンサであり、例えば本体11の前筐体49内に配置されている。内部バッテリ201は、電源オフ時にショックセンサ200に電源を供給するためのバックアップ用のバッテリであり、例えばボタン電池である。
【0031】
図5は、輸液ポンプ10の電池ボックス900を示す斜視図である。
図5に示す電池収容部としての電池ボックス900は、図1にも示す後筐体44側に設けられており、電池ボックス900には、蓋部材901がヒンジ902を用いてRR方向に開閉可能に取り付けられている。この電池ボックス900内には、2本の電池Bが着脱可能に装着できる空間903を有している。この空間903内には、電池Bを正しく装着すると電池Bのマイナス電極とプラス電極がそれぞれ接触し、電気的に直列になるように電気端子960,970が配置されている。これらの電池Bは、乾電池あるいは充電電池である。シール材950が、後筐体44の表面であってこの電池ボックス900の周囲の4辺の溝部分905に固定されている。従って、シール材950が蓋部材901により押し潰されることで、薬液等の液体が、電池ボックス900の内の電池B等の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。このため、輸液ポンプ10は、内部故障を起こさずに薬液を注入する輸液動作を行うことができる。
【0032】
図6は、図4に示す輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図において、制御部100のマイクロコンピュータのようなCPU110と、このCPU110に電気的に接続されている周辺の構成要素について示している。
図6において、電池Bは、電源回路80を介して制御部100のCPU110に電気的に接続されている。また、不揮発性メモリ部330と外部タイマ199がCPU110に電気的に接続されている。外部タイマ199は、例えばRTC(リアルタイムクロック)であり,この外部タイマ199の電源供給は、バックアップ電池198によりバックアップされている。
メイン警報出力装置(主警報出力装置)300が、音声回路91を介してCPU110に電気的に接続されている。サブ警報出力装置(副警報出力装置)301が、ブザー回路90を介してCPU110に電気的に接続されている。メイン警報出力装置300は、圧電ブザーに比べれば消費電力が大きい例えばスピーカであり、サブ警報出力装置301は、消費電力がスピーカに比べて小さい例えば圧電ブザーである。
【0033】
図7は、不揮発性メモリ部330における利用内容例を示している。
図7に例示するように、不揮発性メモリ部330の記憶内容400としては、保存順序が古いものから新しいものが記憶されており、ログNo.1、ログNo.2、・・・、ログNo.(n―2)、ログNo.(n―1)、ログNo.n(nは整数)を示している。例えば、1件のログNo.nの記憶内容401としては、「イベント番号」402、「保存時刻」403、「不正リセット回数」404を含んでいる。
【0034】
例えば、「イベント番号」402の意味としては、「電源ON」500と、「起動完了」501と、そして「その他、各種イベント」502を含んでいる。「電源ON」500では、輸液ポンプの装置起動シーケンス開始時に保存されるログにおいて、このログ保存時に不正リセット回数を「インクリメント」する。「起動完了」501では、起動シーケンスが正常に完了した時に保存されるログにおいて、このログ保存時に不正リセット回数を「0にクリア」する。「その他、各種イベント」502では、適時、装置状態が変化した時に保存されるログにおいて、不正リセット回数は、直前に保存されたログの値を「継続」する。
【0035】
次に、図1に示す輸液ポンプ10の瞬間停止の検出方法について、図8のフロー図を参照して説明する。図8は、輸液ポンプ10の瞬間停止の検出方法の例を示している。
患者が、図1から図3に示す携帯型の輸液ポンプ10を在宅で使用して薬液の送液を行おうとする場合には、図1に示す開始停止スイッチ17をスライド操作する前に、患者は、図5に示す2本の電池Bをケースの電池ボックス900内に取り付ける。電池Bを電池ボックス900内に取り付けることで、起動スイッチが無くても自動的に輸液ポンプ10の制御部100は起動を始めることができる。
そこで、患者がこの携帯型の輸液ポンプ10の後筐体44側に設けられた蓋部材901を開けて、すでに使用した電池Bを電池ボックス900から外して、新しい電池Bを電池ボックス900内に確実に装着して、制御部100を起動する必要がある。しかし、患者は電池Bの交換作業が不慣れである場合には、電池Bを電池ボックス900に正しく装着しようとして、電池Bを電池ボックス900に対して何度も出し入れすることがある。このように電池Bを何度も出し入れすると、電池Bの電極が電池ボックス900内の電気端子960,970に接触したり離れたりする接触不良現象を繰り返して起こしてしまうことがある。
【0036】
電源回路まわりの異常状態の場合に、故障状態によっては、無負荷状態ではCPUに対して動作可能な電圧を供給できるが、スピーカを駆動して警報を患者に対して音声で知らせようとすると、スピーカに電流を流す必要があるためにCPUに供給する電圧が降下してしまい、CPUには動作可能な電圧が供給できずに、CPUのリセット操作が繰り返されてしまう状態となる。このため、この種の電池を使用する携帯型の輸液ポンプでは、CPUが何度もリセット操作されて瞬間停止が起こり、携帯型の輸液ポンプの動作は直ちに停止してしまう可能性がある。
【0037】
そこで、図8のステップS1では、図6に示すCPU110が起こす瞬間停止(瞬停)発生回数を、図6の不揮発性メモリ部330に予め変数として「瞬間停止(瞬停)発生回数」を設定しておく。この予め設定しておく「瞬間停止発生回数」の具体的な回数としては、例えば3回である。
図8のステップS2では、図6に示すCPU110は、不揮発性メモリ330から図7に示す最新ログを読み出す。ステップS3では、図6に示すCPU110が外部タイマ199から「現在時刻」を読み出す。ステップS4では、最新ログが存在しない場合には、ステップS5に移り、ステップS5では、「瞬間停止発生回数」を「0クリア」にして、ステップS9に移る。
【0038】
そうでなく、ステップS4において、最新ログが存在する場合には、図6に示すCPU110は、ログの「保存時刻」403から「現在時刻」までの経過時間を求める。ステップS7では、図6に示すCPU110が、経過時間≧瞬間停止判定時間であると判断した場合には、患者(ユーザ)操作による再起動がなされた判断して、ステップS5に移り、ステップS5では、「瞬間停止発生回数」を「0クリア」して、ステップS9に移る。
図8のステップS7において、図6に示すCPU110が、経過時間<瞬間停止判定時間であると判断した場合、すなわちCPU110が不正リセットされて瞬間停止したと判断すると、ステップS8において、図7の瞬間停止回数に図7のログの「不正リセット回数」404をセットし、ステップS9では、図6のCPU110は瞬間停止回数をインクリメントする。
ステップS10では、図6の不揮発性メモリ部330にログを保存する。このログの保存例としては、「イベント番号」402=電源ON、「保存時刻」403=現在時刻、そして「不正リセット回数」404=瞬間停止発生回数(瞬停発生回数ともいう)となる。
【0039】
予め、エラー判定の閾値が、図6の予め不揮発性メモリ部330に記憶されている。このエラー判定の閾値は、CPU110が受ける瞬間停止発生による不正リセット回数の具体的な値であり、例えば不正リセット回数は3回である。しかし、不正リセット回数は2回あるいは4回以上であっても良い。
そこで、図8のステップS11では、図6のCPU110は、「不正リセット回数」404=瞬間停止発生回数と、予め定めたCPU110におけるエラー判定の閾値と、の関係が、「瞬間停止発生回数≧エラー判定の閾値」であると判断した場合には、ステップS12に移る。
ステップS12では、CPU110は、瞬間停止発生が確定したものとして、図6に示すサブ警報出力装置301を動作させて、すなわち例えば圧電ブザーを動作させることにより、「瞬間停止発生」を報知するブザー音を出力する。これにより、CPU110の不正リセット操作が予め定めた回数以上繰り返されて、CPU110が予め定めた回数以上瞬間停止現象を起こして、携帯型の輸液ポンプの動作は直ちに停止しまうことを、患者に対してブザー音で報知することができる。
【0040】
この場合には、ステップS11において、図6のCPU110は、「不正リセット回数」404=瞬間停止発生回数と、予め定めたCPU110におけるエラー判定の閾値との関係が、「瞬間停止発生回数≧エラー判定の閾値」であるので、すなわち、CPU110が予め定めた回数以上瞬間停止現象を起こしてしまっているので、消費電力の大きいメイン警報出力装置300であるスピーカを動作させて報知するのではなく、消費電力が小さいサブ警報出力装置301を動作させて、すなわち例えば圧電ブザーを用いて患者に対して警報音で報知するようになっている。これにより、より少ない消費電力の圧電ブザーを用いて、患者に対して確実に音で警報を報知できるので、電池Bを装着して動作させようとする場合に接触不良が発生した時に、輸液ポンプが無音状態で停止してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
一方、図8のステップS11において、図6のCPU110は、「不正リセット回数」404=瞬間停止発生回数と、予め定めたCPU110におけるエラー判定の閾値との関係が、「瞬間停止発生回数<エラー判定の閾値」であると判断した場合には、ステップS13に移る。
ステップS13では、図6のCPU110は、誤判定防止の猶予期間を経た後に、起動シーケンスを実行して、輸液ポンプ10のセルフチェック等を行う。
【0042】
そして、ステップS14では、ステップS13において輸液ポンプ10のセルフチェックの結果、輸液ポンプ10が正常起動しなかった場合には、ステップS15において、図6に示すメイン警報出力装置300を動作させて、例えばスピーカを動作させることにより輸液ポンプ10の「異常内容」を音声で出力する。このような場合には、スピーカを動作させる電圧が保持されているので、CPU110は、メイン警報出力装置300を動作させて輸液ポンプ10の「異常内容」を、音声で患者に対して報知することができ、図6に示すメイン警報出力装置300は、音声回路91の音声ICに記憶された音声ガイドを患者に対して報知できる。
これにより、圧電ブザーに比べると消費電力の大きいスピーカを用いて、患者に対して輸液ポンプ10の「異常内容」を、確実に音声で警報内容を確実に報知できるので、電池Bを装着して動作させようとする場合に接触不良が発生した時に、輸液ポンプが無音状態で停止してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
図8のステップS16では、さらにCPU110の瞬間停止が発生して、CPU110の不正なリセットが発生した場合には、ステップS1に戻って、ステップS1からステップS16を繰り返す。
図8のステップS14に戻り、ステップS13において輸液ポンプ10のセルフチェックの結果、輸液ポンプ10が正常起動した場合には、輸液ポンプ10が正常動作中であるので、ステップS17では、図6の外部タイマ199から「現在時刻」を読み出す。そして、ステップS18では、不揮発性メモリ部330にログを保存する。このログの例としては、「イベント番号」402=起動完了、「保存時刻」403=現在時刻、そして「不正リセット回数」404=0となる。その後、ステップS19では、輸液ポンプ10は、輸液動作に移り、輸液動作が完了したら終了する。
【0044】
上述したように、本発明の実施形態の輸液ポンプ10では、メイン警報出力装置300としては消費電力の大きい例えばスピーカを用いており、サブ警報出力装置301としてはスピーカに比べると消費電力の小さい例えば圧電ブザーを用いている。メイン警報出力装置300のスピーカは、音声回路91の音声ICからの音声ガイドを患者に対して報知できる。
患者が輸液ポンプ10により輸液動作に入る前に、すなわち患者が、図1に示す開始停止スイッチ17をスライド操作して輸液の開始動作をする前に、電池Bの装着の不慣れにより電気的な接触不良が発生して、図6に示すCPU110が、予め定めた回数以上の回数不正にリセットされて瞬間停止が起こった場合に、スピーカのようなメイン警報出力装置300の消費電力に比べて小さい消費電力の圧電ブザーのようなサブ警報出力装置301を動作させて、患者に対して警報を報知する。
これにより、患者が気付かない内に輸液ポンプ10が無音状態で停止してしまうことを防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができ、電圧降下によるCPU110の繰り返しリセット動作を防止することができる。
【0045】
本発明の輸液ポンプ10では、電池Bを装着して動作させようとする場合に、接触不良が発生した時に、輸液ポンプ10が無音状態で停止してしまうことを防いで、患者に対して異常を知らせる警報を確実に通知することができる。すなわち、制御部100のCPU110が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値未満である場合には、比較的消費電力の大きいメイン警報出力装置300が患者に対して音声で警報を報知できる。また、制御部100のCPU110が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値以上である場合には、メイン警報出力装置300に比べて消費電力の小さいサブ警報出力装置301が患者に対して音で警報を報知できる。
【0046】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図1に示すように、メイン警報出力装置300とサブ警報出力装置301は、後筐体44側の内側に配置しているが、これに限らずメイン警報出力装置300とサブ警報出力装置301は図1に示す前筐体49の表面側あるいは側面側に配置しても良い。
【符号の説明】
【0047】
10・・・輸液ポンプ(医療機器の一例)、11・・・本体(ケースともいう)、21・・・チューブ(薬液管路の一例)、31・・・輸液送り部としてのロータユニット、44・・・後筐体、49・・・前筐体、100・・・制御部、110・・・CPU、199・・・外部タイマ、300・・・メイン警報出力装置、301・・・サブ警報出力装置、330・・・不揮発性メモリ部、900・・・電池ボックス(電池収容部)、B・・・電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、前記ケースに配置されて電源用の電池を着脱可能に収容する電池収容部とを有する輸液ポンプであって、
前記電池から電源供給を受けて前記輸液送り部の動作を制御する制御部と、
前記輸液送り部が輸液動作に入る前に、前記電池収容部における前記電池の接触不良により、前記制御部が繰り返してリセット動作して瞬間停止を起こした瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値未満である場合には、前記制御部からの指令により、音声で警報を報知する主警報出力装置と、
前記瞬間停止発生回数が、予め定められたエラー判定閾値以上である場合には、前記制御部からの指令により、音で警報を報知する副警報出力装置と、
を有することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記主警報出力装置は、スピーカであり、前記副警報出力装置は、圧電ブザーであることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記制御部は、予め定めた前記エラー判定閾値を記憶するメモリを有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記薬液を送るための薬液配管を有し、前記ケースに着脱可能に配置された状態で前記輸液送り部により前記薬液配管には蠕動様運動が与えられるカセットを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の輸液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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