説明

輸送用コンテナ

【課題】 コンテナの内張材の耐用年数を長くする。
【解決手段】 保冷用トラック1のボディ(コンテナ)3を、金属製の外壁部(ハウジング)31と、この外壁部31の内面全体に設けられた断熱材32と、この断熱材32の内面全体にわたって設けられた内張材33とから構成する。内張材33は、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂)、HIPE樹脂(ハイデンポリエチレン樹脂)又はPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)を発泡させてなる板材によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、輸送用コンテナに関する。この発明において輸送用コンテナとは、例えば貨車やトラック等に積載される独立した形態のコンテナのみならず、保冷車のボディのように、トラック等のシャシに固定状態で設けられたボディの形態ものをも含む。
【背景技術】
【0002】
一般に、保冷車のボディ(コンテナ)は、鉄又はアルミニウム等の金属からなるハウジングと、このハウジングの内面全体にわたって設けられた断熱材と、この断熱材の内面全体にわたって設けられた内張材とから構成されている。内張材は、ボディの内部の美観を向上させるとともに、ボディの内部に収容された物品及び断熱材を保護するためのものであり、従来はベニヤ板によって構成されていた。
【0003】
ベニヤ板は、内張材として再利用することができない。このため、従来の保冷車のボディを大量に生産すると、木材資源の枯渇を招き、ひいては環境破壊を招くという問題があった。
【0004】
そこで、この出願の出願人は、下記特許文献1に記載されているように、内張材としてポリスチレン樹脂を発泡させてなる板材を用いた。ポリスチレン樹脂からなる内張材は、廃棄することなく、内張材として再利用することができる。したがって、環境破壊を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−224394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリスチレン樹脂からなる内張材は、耐寒性が低いため、保冷車に用いた場合には耐用年数が短いとい問題があった。また、強度が低く、摩擦抵抗が大きいため、搬送すべき物品が内張材に衝突したり擦過したりすると、簡単に傷が付いてしまい、この点からも耐用年数の低下を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、第1の発明は、ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、上記内張材としてABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴としている。この場合、上記ABS樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にすることが望ましい。
上記の問題を解決するために、第2の発明は、ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、上記内張材としてHIPE樹脂(ハイデンポリエチレン樹脂=高密度ポリエチレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴としている。この場合、上記HIPE樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にすることが望ましい。
上記の問題を解決するために、第3の発明は、ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、上記内張材としてPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴としている。この場合、上記PP樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にすることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有する第1、第2又第3の発明によれば、ABS樹脂、HIPE樹脂又はPP樹脂を発泡させてなる板材が、ポリスチレン樹脂を発泡させてなる板材に比して耐寒性が大幅に高い。したがって、輸送用コンテナの耐用年数を長くすることができる。しかも、この発明に係る板材からなる内張材は、強度が高い上、摩擦抵抗が小さいので、搬送すべき物品が内張材に衝突したり、擦過したとしても、簡単に傷が付くことがない。したがって、コンテナの耐用年数をより一層長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を保冷用トラックのボディに適用したものである。保冷用トラック1のシャシ2には、搬送すべき物品を冷凍状態で収容するためのボディ(コンテナ)3が設けられている。ボディ3は、長手方向を前後方向に向けて配置された断面四角形の箱状をなす本体部3Aと、この本体部3Aの後端開口部を開閉する一対の扉3B,3Bとを有している。
【0010】
本体部3Aは、図3に示すように、三層構造をなしており、外側から内側へ向かって順次配置された外壁部(ハウジング)31、断熱材32及び内張材33によって構成されている。
【0011】
外壁部31は、鉄、アルミニウム等の金属板からなるものであり、前後方向に長い断面四角形の箱状に形成されている。外壁部31の後端部は、物品を出し入れするために開口している。外壁部31は、シャシ2の上面部に載置固定されている。
【0012】
断熱材32は、例えば発泡スチロール等の発泡材から構成されている。勿論、発泡材以外のものを用いてもよいが、いずれの場合にも断熱材32は、平板状に形成されている。そして、多数の断熱材32が外壁部31の内面全体にわたって取り付けられている。したがって、断熱材32は、全体としては外壁部31と同様に後端が開放された断面四角形の箱状になっている。断熱材32は、可能であるならば、外形状が外壁部31の内形状と同一である箱体として全体を一体に形成してもよい。
【0013】
内張材33は、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂)を発泡成形してなるものであり、平板状に形成されている。そして、多数の内張材32が断熱材32の内面全体にわたって取り付けられている。したがって、内張材33も、全体としては後端が開口した断面四角形の箱状に構成されている。各内張材33の厚さは、均一にしてもよいが、必要とされる強度及び断熱効果を考慮し、配置される箇所に応じて変えてもよい。例えば、下部に配置されて床部として使用される内張材33の厚さを厚くし、側壁部内面又は天井内面を構成する各内張材の厚さは薄くしてもよい。内張材33は、可能であるならば、外形状が断熱材32全体によって構成される箱体の内形状と同一である箱体として全体を一体に形成してもよい。
【0014】
内張材33を構成するABS樹脂の発泡体の発泡倍率(ABS樹脂の発泡体全体に対する容積比。つまり、発泡体全体の容積/ABS樹脂の容積)は、1.2〜3.5倍にするのが望ましい。これは、ABSの発泡倍率を1.2〜3.5倍にすると、内張材33の強度をベニヤ板の強度とほぼ同一にすることができるからである。逆に、発泡倍率を1.2倍以下にすると、内張材33の硬度が過度に高くなってしまい、ボディ3内に収容された物品の保護作用を期待することができなくなってしまうとともに、内張材33の断熱効果が小さくなってしまう。一方、発泡倍率を3.5倍以上にすると、高い断熱効果が得られるものの、内張材33の強度が低くなってしまい、内張材33、特に床材として用いられる内張材33が早期に破損し、その耐用年数が短くなってしまうからである。
【0015】
扉3Bは、全体が平板状をなしている点において箱状をなす本体部3Aと異なっているが、断面構造は本体部3Aと同様である。すなわち、扉3Bも、外壁部、断熱材及び内張材によって構成されている。扉3Bの外壁部、断熱材及び内張材は、本体部3Aの外壁部31、断熱材32及び内張材33とほぼ同一に構成されている。そこで、扉3Bの外壁部、断熱材及び内張材については、その説明を省略する。なお、一対の扉3B、3Bは、本体部3Aの後端開口部の左右両側部に水平方向へ開閉回動可能に取り付けられている。
【0016】
上記構成のボディ3においては、本体部3Aの内張材33及び扉3Bの内張材としてABS樹脂を発泡させてなる板材が用いられているので、木材を必要としない。しかも、ABS樹脂は、内張材33として再利用可能である。したがって、木材資源を枯渇させたり、廃棄物によって自然環境を悪化させたりすることを防止することができる。
【0017】
また、ABS樹脂を発泡させてなる内張材33は、ポリスチレン樹脂を発泡させてなる内張材に比して、耐寒性が高い。したがって、ボディ3の耐用年数を長くすることができる。しかも、内張材33は、ポリスチレン樹脂からなる内張材に比して強度が高いのみならず、摩擦抵抗が小さいので、ボディ3内に収容すべき物品が内張材33に衝突したり、擦過したりしたとしても、それによって傷つけられたり、破損したりすることが少ない。よって、ボディ3の耐用年数をより一層長くすることができる。
【0018】
上記のような効果は、ABS樹脂からなる内張材33に代えて、HIPE樹脂又はPP樹脂を発泡させてなる内張材を用いて得られる。HIPE樹脂又はPP樹脂を用いる場合にも、その発泡倍率を1.2〜3.5倍にするのが望ましい。これは、ABS樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にすることと同様の理由によるものである。なお、内張材33に代えてHIPE樹脂又はPP樹脂からなる内張材を用いる場合、ボディの構造は、ABS樹脂がからなる内張材が用いられたボディ1と同様である。
【実験例】
【0019】
次に、この発明の上記効果を確認するために行った実験例を説明する。第1の実験例では、内張材がポリスチレン樹脂、ABS樹脂、HIPE樹脂、PP樹脂でそれぞれ構成された試験用の第1〜第4の保冷トラックを用意した。勿論、第1〜第4の試験トラックは、内張材の材質が異なる点を除き、同一に構成されている。第1〜第4の試験トラックについては、それぞれ10台づつ用意した。そして、各第1〜第4のトラックをほぼ同様な環境下で使用したところ、内張材の平均寿命が、ポリスチレン樹脂が用いられた第1試験トラックではほぼ5年であった。これに対し、この発明に係る内張材が用いられた第2、第3、第4試験トラックでは、内張材の平均寿命が10年〜12年であり、従来のものに比して平均寿命が2倍以上になった。
【0020】
また、第2の試験例は、この発明に係る第1試験片と比較対象たる従来の第2試験片とのシャルピー衝撃試験を行ったものである。第1試験片は、ABS樹脂を1.5倍に発泡してなるものであり、長さ、幅及び厚さがそれぞれ80mm、10mm及び5mmに設定されている。一方、第2試験片は、PS樹脂を2.3倍に発泡してなるものであり、長さ、幅及び厚さがそれぞれ80mm、10mm及び5.5mmに設定されている。そして、各試験片につき、試験片の流れ方向(圧延方向)及びこれと直交する方向(幅方向)のシャルピー衝撃値(KJ/m)を常温(25°C)及び零下40°Cでそれぞれ測定した。その結果は次のとおりである。なお、測定結果は、各試験片10個の平均値である。
第1試験片の常温での衝撃値は、流れ方向が9.7であり、幅方向が6.1であった。また、第1試験片の零下40°Cでの衝撃値は、流れ方向が8.5であり、幅方向が5.5であった。したがって、零下40°C時の常温時に対する強度低下割合は、10〜13%程度である。
一方、第2試験片の常温での衝撃値は、流れ方向が2.1であり、幅方向が1,9であった。また、第2試験片の零下40°Cでの衝撃値は、流れ方向が0.9であり、幅方向が0.8であった。したがって、零下40°C時の常温時に対する強度低下割合は、50%以上である。
このように、この発明に係る試験片は、従来の試験片に比して、常温時及び零下40°C時の強度が数倍優れている。また、常温時から零下40°Cにしたときの強度低下が従来の試験片の強度低下の1/4〜1/5である。よって、この発明によれば、輸送用コンテナの強度及び耐寒性を従来のものに比して大幅に向上させることができ、それによって耐用年数を大幅に長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係るボディ(コンテナ)を有する保冷用トラックの一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同トラックを後方から見た図である。
【図3】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
3 ボディ(コンテナ)
3A 本体部
3B 扉
31 外壁部(ハウジング)
32 断熱材
33 内張材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、
上記内張材としてABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴とする輸送用コンテナ。
【請求項2】
上記ABS樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にしたことを特徴とする請求項1に記載の輸送用コンテナ。
【請求項3】
ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、
上記内張材としてHIPE樹脂(ハイデンポリエチレン樹脂=高密度ポリエチレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴とする輸送用コンテナ。
【請求項4】
上記HIPE樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にしたことを特徴とする請求項3に記載の輸送用コンテナ。
【請求項5】
ハウジングと、このハウジングの内面に設けられた断熱材と、この断熱材の内面に設けられた内張材とを備えた輸送用コンテナにおいて、
上記内張材としてPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)を発泡させてなる板材を用いたことを特徴とする輸送用コンテナ。
【請求項6】
上記PP樹脂の発泡倍率を1.2〜3.5倍にしたことを特徴とする請求項5に記載の輸送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−12827(P2009−12827A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178051(P2007−178051)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(507182911)株式会社泰成企画 (5)
【Fターム(参考)】